「鹿児島の『農家民泊』を考える」と銘打ったセミナーを3月に開きました。主催したのは、観光連盟に事務局を置く観光かごしま大キャンペーン推進協議会。なぜ観光関係団体が「農泊」? しかもセミナーの〝隠しテーマ〟は「『農』が観光を救う」なのです。いまや「食」は最重要の観光資源といって過言ではなく、その先にある「農」への関心も高まっています。日本の食糧基地と謳う農業県鹿児島への旅なら、なおさらでしょう。鹿児島ではしかし、この旅行者の志向に対応できるメニューが豊富とは言い難く、「農泊」はその象徴なのです。「観光」という言葉にはいささかの違和感が生じています。「団体」に象徴される従来型観光では旅行者のニーズに応えきれなくなっているからです。代わって趨勢となった個人旅行の時代。旅行者の視線は多彩です。温泉や自然、歴史、食などの〝定番〟も一切合切を包括した土地の暮らしに強い関心が向いています。そのことがグリーンツーリズムに代表される新潮流を生んでいます。旅行者も業界も、そして「観光かごしま」も新たな可能性を、特に「農」に求めているのです。熊本大学の徳野貞雄教授が新著の『農村(ムラ)の幸せ、都会(マチ)の幸せ』でこんな趣旨の指摘をしています。〈流通管理システムの中で、農産物は食べ物からただの「商品」に変わり、その結果の価格優先主義から、食の安全性が放棄された…〉。最近の地産地消ブームや農家レストラン、農産直売所の賑わいは、商品化の反動といえます。旅行の分野でも事情はよく似ています。パッケージツアーの〝発明〟で「旅」の「商品」化に成功し、流通が進みました。旅行代金の低価格化も進みました。利便が飛躍的に上がった一方で、「観光客」は「旅人」としての楽しみを放棄していたのかもしれません。個人旅行の時代は、「旅」の復活をさらに促進するでしょう。 2つの「脱商品化」の動きは密接につながっています。純観光の分野ではもちろん、即応した「農」のプログラムやメニューを鹿児島でももっと増やしたい。わたくしたちの大きな期待です。
[写真は頴娃町にある人気の農家レストラン。地元の人も多い。旅行者の「農」に触れたいとの想いにも応えています] (鹿児島県観光連盟 知覧哲郎)
[写真は頴娃町にある人気の農家レストラン。地元の人も多い。旅行者の「農」に触れたいとの想いにも応えています] (鹿児島県観光連盟 知覧哲郎)
