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No.367 宇宙へ飛び立つ島の魅力を語る~噴火の影響を種子島と屋久島の魅力でカバー~

2015年6月29日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

浦田海水浴場.jpg

 種子島は、九州本島最南端の佐多岬から南東約40Kmの洋上に位置する島です。周囲166km、長さ58km、最大幅12km、島の最高地点は282mと比較的平坦な細長い島で、鹿児島空港から35分、鹿児島港から高速船で1時間45分と本土に近く、屋久島にも30分で行くことができます。種子島の魅力について触れたいと思います。

 かつてポルトガル人が鉄砲を伝えた島として、中学校の社会科の教科書に登場します。1575年織田信長と徳川家康の連合軍が、当時最強の騎馬隊と恐れられていた武田軍団を3000挺の鉄砲で三段打ちを行い、壊滅させた戦いがあります。「長篠の戦い」と呼ばれ、信長が「天下人」として足固めにした戦です。

 鉄砲が、日本の歴史を変えるほどの武器となった物語は、戦国の時代を語る際には必ず語られます。種子島では、イベントの開始やクルーズ船が寄港した際、火縄銃の発砲が行われており、参加者を楽しませます。

 種子島開発総合センター(鉄砲館)には、1543年に伝わったポルトガル銃や国産第1号銃が展示されています。もっと観光客に展示内容をPRした方がいいのではないでしょうか。また、施設のネーミングも代えることで来館者が増えるのではないでしょうか。

 また、世界一美しいといわれるロケット基地があることも種子島の魅力です。島の東南端の海に囲まれたまばゆい景勝の地に、「種子島宇宙センター」があります。

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 同敷地内にある「宇宙科学技術館」では、実物大のモデルを通して、宇宙開発におけるさまざまな分野を楽しみながら理解できるよう展示内容も工夫されていて、子供たちが宇宙に興味を持つことができる貴重な施設です。


 打ち上げがない時期には、発射場の近くの施設を見学できる無料バスがあります。本番の打ち上げの迫力は想像を絶するものがあり、宇宙ケ丘公園からは、発射の瞬間を望むことができます。気象条件等で延期になることが多いので、余裕を持った行程が必要です。

 千座(ちくら)の岩屋は、太平洋の荒波で削られてできた洞窟であり、千人が座れる広さがあることから、その名前が付いたといわれます。周辺の白砂が映えて、洞窟の中から望む夕日は格別です。天気が良く波静かな日は、変化していく夕方の空に、星が輝き始め幻想の世界に浸ることができます。

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 種子島には遠浅のビーチが数多くあり、太平洋の荒波が打ち寄せる鉄浜海岸などは、絶好のサーフポイントとなり、近年では全国から若者たちが訪れています。昼はサーフィンを楽しみ、夜は飲食店で働いている若い男女も多く見かけ、サーフィンの仲間が集う聖地となっています。

 また、西之表市内から15分程度で行ける浦田海水浴場は、日本の海水浴場88選の一つに選ばれており、青い海とビーチが広がる静かな入り江の中にあります。キャンプ施設も整っており、夏場は多くの家族連れが訪れ、海水浴客で賑わいます。

 その他「よきの海水浴場」は、開聞岳、屋久島、硫黄島等を望むことができる絶好のポイントです。これからも美しい白砂の海岸線を守って欲しいと思います。時折、ハングル文字で書かれたビン類や木材の破片が漂着することも多く、清掃作業が大変です。自然を守ることの大切さを改めて感じます。今年の夏は種子島の海で海水浴やサーフィン、キャンプ等をお楽しみください。

 今年は「第30回国民文化祭・かごしま2015」が県下全域で開催されますが、西之表市では「華道の祭典in種子島」と「黒潮文化交流の祭典」が開かれます。鹿児島県内在住の華道17流派と種子島の華道家が一堂に会して華道展を開催し、全国から訪れる多くの方々に「華道」に親しんでもらい、おもてなしの心で交流が図られるものと期待されます。

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 華道の祭典の会場の一つが、赤尾木城文化伝承館「月窓亭」です。「月窓亭」は、大日本池坊総会頭職を務めた羽生(はぶ)道則などを輩出した名だたる名家である羽生家の屋敷であり、明治以降においては、歴代種子島家当主が居住するなどたいへん由緒ある建物です。

 作家司馬遼太郎や多くの著名人が訪れており、庭から見る月は、名前にふさわしくまさに絶景です。

 中種子町では、アーティスト河口洋一郎氏を迎えて、「CGアートフェスティバル」が、南種子町では、広田遺跡ミュージアムと宇宙科学技術館を舞台に「黒潮が育んだ古代文化と宇宙芸術展」が開催されます。古いものと新しいものがコラボすることで、鹿児島の新しい観光文化資源の創出になるのではないでしょうか。

 種子島と屋久島を比較すると、入込客は屋久島が9千人程度多くなっています。(26年度熊毛支庁統計)種子島空港はジェット機が就航できる体制が整いましたが、乗降客が低迷しているのが現状です。大都市圏からの新たな路線の開拓や海のない県からのチャーター便の誘致が重要であり、また、世界遺産の島として知名度の高い屋久島との連携が欠かせません。

 種子島では新鮮な魚介類、日本でいちばん早く収穫されるお米、糖度の高い安納芋など豊富な農水産物が獲れます。大都市圏からのSSH校や私立学校をターゲットにした体験型教育旅行、温暖な気候を活用したスポーツ合宿誘致が求められます。種子島の宇宙科学と屋久島の世界自然遺産は、他県にない教育資源です。

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 現在、口永良部の新岳の噴火で、島民全員が12km 離れた同じ町内の屋久島に避難しています。噴火の影響で夏場の屋久島の予約状況が今一歩です。梅雨が明け本格的な夏が訪れると、海と山のシーズン到来です。是非屋久島の魅力を発信して風評被害を一掃していかねばなりません。

 まもなく「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」の世界文化遺産登録も決定するものと思います。鹿児島としては、反転攻勢をかけるきっかけにし、そして秋の国民文化祭に向けて勢いを付けなければなりません。

 「鉄砲が伝来し、ロケットが打ち上げられる島」種子島、「世界自然遺産の島」屋久島は隣接していることを国内外の人々にPRし、夏場の誘客につなげたいものです。

   風そよぐ ならの小川の 夕暮れは
   みそぎぞ夏の しるしなりける  ~藤原家隆~小倉百人一首より

No.366 霧島と鹿児島市の中間に位置する条件を活かせ~立ち寄りたくなる街づくりへ~

2015年6月22日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 姶良市は、姶良町、蒲生町、加治木町の旧3町が合併して、平成22年3月に誕生した人口75,000人あまりの県下5番目の市です。

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 有識者らで創る「日本創生会議」は、国立社会保障・人口問題研究所が2014年に公表した将来推計人口を基に、子どもを産む中心の若者女性について、2010年と比較した30年後の数を試算をしています。それによると、県内では全市町村が少なくなりますが、姶良市は奄美大島の龍郷町に次いで減少数が小さくなっています。

 県都である鹿児島市に近くアクセスに恵まれ、住宅環境等に恵まれていること等がその要因にあげられるのではないでしょうか。

 姶良市には、歴史的遺産等県内最多を誇る文化財や、錦江湾を眺望できる多くの絶景スポット、手作り工房、多彩な民家レストラン等が点在していますが、意外とその魅力が浸透していません。

 この度、県と観光連盟では「鹿児島発広域観光周遊ルート」を開発すべく、「姶良方面」のコースを宿泊施設、エージェント、自治体、メディア関係者等53人で視察しました。

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 姶良市の魅力と課題について整理したいと思います。初めに白砂青松が素晴らしい重富海岸を訪ねました。かつてゴミが散乱し、海岸は荒れ放題でしたが、「NPO法人くすの木自然館」や地域の皆様方の努力で、美しい渚が復活しています。

 今では海岸の定期清掃も行われており、バードウォッチング、ネイチャートレッキング、干潟の観察会等も開催できるほどに整備されています。これから、保護と保全に万全を期し、利用者との調和を図り環境共生型の場づくりに努めてもらいたい。

 また、戦国武将「島津義弘」のゆかりの地です。初陣の地である「岩剣城址」や晩年を過ごし、その生涯を閉じた終焉の地「加治木島津屋形跡」や「精矛神社(くわしほこじんじゃ)」などゆかりの史跡が点在します。

 「山田凱旋門」は、現存する石造りの凱旋門では唯一のもので、明治39年(1906年)に建設されたものです。凱旋門の近くには、山田の出身で日露戦争を前に司令長官を更迭された日高荘之丞翁の記念碑が建てられています。

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 日高荘之丞に纏わるヒストリーは、興味あるものです。ボランティアガイドさんが案内の中で少し触れられましたが、日露戦争の開戦を控えて、山本権兵衛海軍大臣は、日高荘之丞を更迭し、東郷平八郎を司令長官に推挙します。


   薩摩の軍人である山本の決断に、明治天皇から「なぜ日高を東郷に代えたのか」と直に下問があり、山本は「東郷は運のいい男ですので」と奏答したといわれています。同じ薩摩出身の3人の中で何があったかは知るすべもありませんが、ガイドさんの話には自然と引き込まれていきます。

 山田の凱旋門で聞くのも、歴史を遡り旅が楽しくなります。小生も司馬遼太郎の「坂の上の雲」の中で興味を惹かれた部分です。その後の3人の足跡も興味深いものがあります。是非小説をお読みください。

 山田地域では9月中旬になると、県道40号線沿いに様々な工夫を凝らした「かかし」が展示され、道行く人を楽しませます。童謡「かかし」の一説に出てくる「山田の中の一本足のかかし」を彷彿させます。凱旋門と一緒に秋にもお訪ねください。たわわに実を付けた稲穂が美しくみられる地域です。日本の原風景が至る所に残っています。

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 ところで、今では歴史的遺産となっている道を御存知ですか。薩摩国と大隅国の国境にある「白銀坂」、江戸時代から地方街道の要所で多くの人が往来していた「掛橋坂」、西南戦争の際には6000人の薩摩兵士が熊本へ向かった「龍門司坂(たつもんじざか)」があり、「姶良の三坂」と呼ばれています。白銀坂には「布引の滝」があり、ウォーキングの途中の疲れを癒してくれます。

 龍門司坂は、大河ドラマのロケ地としても知られています。近くの「龍門の滝(りゅうもんのたき)」は、大雨の後の流れ落ちる水量と音の豪快さには圧倒されます。

 旧蒲生町には、くすの巨木で知られる「蒲生八幡神社」があります。幹回りが24.2mあり昭和63年に日本一の巨樹と認定されました。神社周辺には、武家門通りが残されており、途中の「御仮屋門」は、1826年に再建されたもので蒲生地頭仮屋の正門で、現存している門としては数少ない貴重な門です。

 蒲生町では公開されている武家屋敷を散策し、フォンタナの丘「かもう」の温泉で疲れをいやし、地元食材を堪能してください。

 町の活性化には、今も続く「カモコレ」の着地型イベントや、春の桜、紅葉の時期等に武家屋敷を活用したお茶会や生け花、月見の宴等を開催して、地元や鹿児島市から気軽に人を呼ぶことが得策ではないでしょうか。

 姶良市は鹿児島市や鹿児島空港に近く、お客様を誘致しやすい位置にありますが、素通り客が多いのではないでしょうか。週末のイベントやPR態勢を強化して、もっと各施設の認知度を高め、経済効果をもたらすことが重要です。四季折々の花の名所や直売店が多く、民家レストランが充実していることも女性層を惹きつけます。

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 また、野球場が充実していることから、学生スポーツの練習会場としての魅力が高まっています。宿泊施設の不足は歪めませんが、年間を通して稼働できるかが課題であり、従来ある施設の利用率を高めることが第一です。学生は練習時間の確保と食事が重要であり、宿泊施設の豪華さではないと思います。温泉施設も十分であり、泊食分離も検討の余地があります。


 今後も、県内最大の人が住む鹿児島市からのリピーター創出に力を注ぐべきと考えます。特に鹿児島市内に泊まった観光客に日帰りコースの提案や、エージェントの商品企画では空港に行く最終日の行程に組み込んでもらう努力が必要です。途中立ち寄りたくなる仕掛けが必要であり、しゃれた小物店や、カフェ等散策しても飽きない街づくりが求められています。

 最後に、姶良市のボランティアガイドさんが作詞した「姶良音頭」が市の魅力をかたっています。

               姶 良 音 頭
        作詞:後藤典五  作曲:橋口真由美

一番 アイラサーアイラサー           *冒頭 各番共通
      桜島から煙があがりゃ 晴れた青空かすみがかかる
      今日は東か南の風か ここはよかとこ元気なまちよ
      さあさおいでよ 姶良の街へ     *最後も各番共通
      みんなそろって アイラブユー

二番 白銀坂を踏みしめ登りゃ 重富干潟に鳥舞い踊る
      山田の案山子と凱旋門が 笑顔で迎える明るいまちよ

三番 蔵王岳から朝日が昇りゃ 滝のしぶきに希望もはねる
      つなぐ歴史の龍門司坂  史跡が息づく文化のまちよ

四番 八幡さまの鳥居を抜けりゃ 遙かロマンの風ふきわたる
      武家門並ぶ石垣通り 大楠見守る緑のまちよ

五番 姶良カルデラ錦江湾は ふるさと自慢でひときわ光る
      姶良加治木と蒲生の街が 手と手をつないで栄えるまちよ

参考『ウィキペディア』

No.365 心から快適な船旅を楽しむために~非常口の確認や船内のルールを守り安全な旅を~

2015年6月15日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 クルーズ船の旅が人気です。平成26年に県内の港に入港したクルーズ船は70回、乗船客数は約74,900人で、25年に比べると入港数で16回、客数で41,300人それぞれ増加しています。


 クルーズ船社への定期セールス、香港とマイアミで開催されたクルーズコンベンションへの参加、クルーズ船のファムツアー受入等の努力が実を結んでいます。今年はすでに72回の入港が予定されており、前年実績を超えるのは確実です。
(5月31日現在:観光課調査)

 日本ではクルーズ人気が高まり、日本近海だけでなく海外に出かけて、地中海クルーズやアラスカクルーズ等を楽しむ人が増えています。

 大型客船と言えば、昨年韓国で発生した「セウォル号」の沈没事故を忘れてはなりません。多くの修学旅行生がなくなりました。日本でもかつて、青函連絡船や宇高連絡船の事故で多くの乗船客がなくなっています。今では最新の安全対策が義務付けられており、最近は大きな事故は発生していません。

 ところで中国の三峡下りのクルーズを経験された方が多いと思います。長江の流れに乗り、峡谷が織りなすパノラマが、乗船客を喜ばせます。船上から眺める光景は、幻想的で風景画の世界に入り込んだような感覚を覚えます。

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 「三国志」の物語は、世界中から多くの人々をこの地に誘います。国語の教科書に登場する次の漢詩は、唐の時代の詩人「李白」が書いたもので、1500年前の世界に浸り、美しい光景が浮かんでくる詩です。


             早発白帝城      李白

     朝辞白帝彩雲間    朝に辞す白帝彩雲の間
     千里江陵一日還    千里の江陵一日にして還る
     両岸猿声啼不住    両岸の猿声啼いて住(や)まざるに
     軽舟已過萬重山    軽舟已に過ぐ 萬重(ばんちょう)の山

  [文略]       朝早く白帝城を出発する

   朝早く朝もやに映える白帝城を出発する。
   千里先の江陵へは、一日の行程である。
   舟が行く両岸の崖からは、悲しい猿の声が聞こえ旅情をさそう。
   軽やかな私の舟は、幾重にも重なる山並みを見ながら、通り過ぎて行く

 白帝城は長江の上流に位置し、川の両岸は延々200キロの峡谷が続き、切り立った崖からは猿の鳴き声が聞こえ、静粛の川の流れに美しく響きます。白帝城は「三国志」にも登場しますが、蜀の劉備玄徳が、自分の死後のことについて、部下の諸葛孔明に託した場所としても有名であり、内部にはその様子を紹介している塑像があります。今島となった白帝城には毛沢東が揮毫したこの詩の記念碑があります。

 三峡は、雄大な嬰塘(くとう)峡、秀麗な巫(ふ)峡、険峻な西陵(せいりょう)峡からなっていますが、見上げるほどの絶壁や山肌に驚くと思います。

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 しかし三峡ダム工事が進み、長江三峡地区の水位は、2003年に標高135メートルに、そして2009年の竣工後には、最終水位が標高175メートルまで上昇しました。 流域の景観が大きく変わり、有名な古桟道跡が水没し、また三国時代の皇帝である劉備玄徳が死んだ白帝山は「白帝島」に変わってしまいました。

 しかし先日、この三峡下りを楽しんでいた456名が乗った「東方乃星」というクルーズ船が転覆し、400人以上が死亡するという大事故が発生しました。漢詩や歴史小説で有名な地をクルーズ船で巡る旅は、中国でも人気が定着していただけに残念です。

 日本では重慶まで飛行機で飛んで、3泊4日のクルーズが人気です。原因が解明され、ツアーが以前と変わりなく催行されることを祈っています。

 ところで、クルーズの良さは荷物の移動がなく、寄港地では観光地巡りと退屈させないスケジュールとなっています。航海中は、昼間は講演会や船上パーティ、プールなどで過ごし、夜はナイトショーやダンスパーティーが開催され、楽しい時間を過ごすことができます。女性にとっては着替えをする楽しみがあります。

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 鹿児島に寄港する外国船は、ほとんど夫婦参加となっています。日本人は急ぎ足の旅行には慣れていますが、船内で長時間滞在する旅行は苦手です。本格的なクルーズ時代を迎え、まず日本近海の短期間のクルーズ船でその良さを味わうことから始めても良いと思います。

 韓国、中国での事故を教訓にして、船の運航会社には安全対策の徹底と法令を順守してもらい、船旅をする人は自ら非常時の対応を確認し、いざという時混乱しないよう周到な準備が必要です。鹿児島市のマリンポートに入港する大型クルーズ船の船内見学をすると、必ずや船旅をしたいという衝動に駆られるのではないでしょうか。

No.364 一日も早い全員の帰島を~日頃から災害への危機管理の確認を~

2015年6月8日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 昨年の御嶽山の噴火、箱根山大涌谷周辺の火山性地震の増加、連日の桜島の爆発的噴火等日本各地で火山活動が活発になっています。

 5月29日午前9時59分に、屋久島町・口永良部島の新岳が爆発的噴火をし、噴煙は9千メートル以上に達し、火砕流が発生しました。鹿児島地方気象台は噴火警戒レベルを最高の5に引き上げ、島民は全員屋久島に避難しました。日頃から噴火に備えて避難訓練等を行ってきたことで、スムーズに島民が避難することができたのではないでしょうか。

 口永良部島は、屋久島の西方約12キロに位置する島で、全域が屋久島国立公園となっており、3か所の天然温泉を持つ火山の島です。素朴な温泉が、秘湯ファンを惹きつけます。

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 満潮前になると温泉が湧き出る「西の湯温泉」、湯が乳白色で湯治湯として親しまれてきた「寝待温泉」、湯の花が浮かぶ湯が評判の「湯向温泉」があります。数年前島を訪れた際、船に自転車を積みリュクサックを背負った東京からの若者に会いました。目的は口永良部島の温泉と言っていました。

 島では明治時代の中頃から硫黄の採掘が行なわれ、最盛期には1000人を超える人口がいましたが、たび重なる噴火で島を離れる人もあり、現在では130人あまりとなっています。

 産業としては農業と畜産が主であり、さつまいもの栽培や町営と私設の牧場が数か所あります。放牧されている牛も多く、避難者の中で餌が心配だと語っている方が印象的でした。一日も早く島に帰る日が来ることを願わずには居られません。

 鹿児島県内では桜島が日常噴火していることから、火山の報道については、慣れている市民が多いと思いますが、風評等で経済的には大きな影響が出ます。新燃岳噴火の際は、連日マスメディアで報道されて、霧島温泉では、宿泊のキャンセルが相次ぎました。また、韓国の観光客に人気のあるトレッキング、ゴルフツアー等も相次いでキャンセルとなり、地域経済にも大きな影響を与えたことは紛れもない事実です。

 昨年多くの犠牲者がでた木曽の御嶽山噴火から間もないこともあり、火山情報には敏感です。年初に、気象庁が「山体膨張と考えられる現象がみられる」という情報を発表したこと等もあり、桜島の観光クルーズ船やフェリー客が減少しています。

 桜島については、噴火は継続しているものの、そこに5千人の人が日頃と変わらない生活をしていることを県のホームページ等で全国に発信しています。

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 今回も、口永良部島の新岳が噴火したことを受けて、近隣の観光地・特に屋久島に関する情報についてホームページに掲載しました。また、海外からの問い合わせに備えて、4カ国語での標記も行いました。口永良部島と屋久島の位置関係、屋久島への交通機関は通常と変わらず運行していることを伝えています。

 鹿児島の温泉、ゴルフ、歴史、食に加えて、円安、免税制度の拡充等があり、鹿児島を訪れる外国人は増加しています。台湾、香港、上海からの観光客が大きく伸びており、韓国からの観光客も回復基調にあります。

 鹿児島には現在4路線が就航していますが、外国人は火山や地震については敏感に反応します。東日本大震災では、長期にわたって日本へのインバウンドが低迷しました。外国人にも早く正確な情報提供が求められます。

 ところで、これから夏休みにかけて屋久島の旅行商品が多く見られます。エージェントは全国にネットワークをもっており、迅速に情報を伝達できる強みがあります。新燃岳噴火時も地元支店と連携をとり、定期的にインターネットで社内への情報発信に努めていただきました。

 危機管理に敏感な全国の教育旅行支店や旅行商品の企画部署への正確な情報発信が特に重要です。県民の皆さんも、これからも鹿児島の正確な情報を、県外の方々に伝えて欲しいと思います。

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 「日本で最初の世界自然遺産」の島である屋久島が、今回の避難地になっています。 屋久島は口永良部島から12キロしか離れていませんが、同じ町内で安全な場所として選ばれています。屋久島の知名度の高さに加えて、自然や集落の魅力もPRしなければなりません。そのことが風評被害を少しでも軽減することになるのではないでしょうか。

 噴火から4日目の6月1日には、島民の代表と消防団、気象庁等20名余りが一時帰島し、噴火後の家の点検、家畜への餌やりなどを行いました。待ちかねていたかのように豚が小屋の塀まで登り、必死に餌を求めている姿が、いとおしく感じられました。

 出来ることならば定期的にこのような一時帰島が実現することを望んでいます。小中学生は、屋久島での新たな学校も決まり登校しています。温かい心で子供たちを励ましてほしいと思います。

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 口永良部島には、魚釣りや秘湯を求めて観光客が訪れることから、民宿で生計を営んでいる方もいます。一日も早い全員帰島が実現し、観光客の姿や港の近くにある金岳小中学校のグランドから子ども達の歓声が聞こえる日を待ち望んでいます。

 県民の皆様の物心両面のご支援が、避難島民を元気づけることになります。鹿児島県は日本列島の南に位置することから、梅雨時期の集中豪雨や台風の襲来が多く、特異なシラス土壌がもたらす風水害や、火山噴火による地震等災害が多く発生する県です。 

 今回の噴火を教訓に、県民も防災への関心を高め、災害発生時の行動を定期的にきちんと確認し、危機管理に備える必要性が高まっているのではないでしょうか。

No.363 マナーの良さは日々の行動に宿る~小学生の行動に学ぶ~

2015年6月1日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 奄美地方が全国で最初に梅雨入りし、鹿児島県本土もまもなく梅雨入りとなります。毎年のことながら梅雨末期には集中豪雨が発生し、大きな被害が出ることも多く、天気予報には十分気を付けたいものです。ここ数年は予期せぬ場所で災害が発生しています。崖の近くや川の周辺に住んでいる方は、特に注意が必要です。

 北海道は梅雨がなく、ライラックやアカシヤの木、ポプラ並木が美しくなり観光のベストシーズンがやってきます。北海道夏の最大のイベントである「第24回YOSAKOIソーラン祭り」が、6月10日から14日にかけて大通公園ほか札幌市内約20か所で開催され、札幌は若者の熱気で賑わいます。

 天才歌人、薄幸の詩人として国民から敬慕されている石川啄木は、釧路、札幌、小樽、函館等での生活を通して、多くの歌を残しています。

   東海の  小島の磯の  白砂に
               われ泣きぬれて 蟹とたわむる
               *函館市の立待岬の墓碑に刻まれている
   潮かをる 北の浜辺の  砂山の
               かのハマナスよ 今年も咲けるや
               *函館市大森浜には、啄木像と歌碑がある
   かなしきは 小樽の町よ 歌ふこと
               なき人々の 聲の荒さよ
               *小樽市相生の水天宮境内に歌碑がある

 九州新幹線全線開通後、博多や熊本、出水等への出張にはよく新幹線を利用します。九州新幹線の内装は木をふんだんに使い、落ち着いた雰囲気を醸し出しています。特に座席は幅が広く快適な旅ができるよう十分な配慮がなされています。リクライニングシートの設備も快適です。

 先日、博多まで乗車して読書していると、いきなりシートが倒れて来て置いたコーヒーがカップからこぼれて、床を汚してしまいました。前の席の乗客が、「席を倒しますが、よろしいでしょうか」と、一言あれば、床を汚すこともなかったのにと、怒りを覚えた次第です。前の席の客は、なにくわぬ顔で眠りにつきました。座席は前の客には背もたれになりますが、後ろの客はテーブルを使用することから、共通の設備である配慮の必要性を感じます。

 飛行機に乗った時にも同じようなことをよく経験します。機内は席が狭い上に、テーブルを出すと余計に身動きが取れなくなります。新聞を読んだり読書をしている人がいる場合には、一言声をかけて「椅子を倒します」と了解を求めることは、相手への気配りです。

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 電車やバスの車内でも、独りよがりでマナーを無視した大人の姿をよく見かけます。通勤バスで、二人掛けシートにハンドバッグを置いて、化粧をしている女性、スポーツバッグを横において、声をかけないと席を譲らない大学生、お年寄りが乗ってきても居眠りのふりをして、足を大きく開いて席を譲らない若いサラリーマンと朝夕の通勤途中で苛立つ光景です。

 また、空港からの最終バスに乗ると、怒りを抑えられないことがあります。満席が予想されるのに、前方の通路側の席に座って、窓側に荷物を置いて席を占領し何食わぬ顔でいる人を見かけます。人がどんどん乗り込み、補助椅子に座ろうとしているのに動こうとしません。運転手さんが乗り込んで、席を見回して荷物を動かしてくださいと催促されて、しぶしぶ席を譲っています。

 鹿児島を訪れた観光客の姿には、鹿児島でのバスの車内での第一印象が観光地の印象となります。混雑時でも座席に荷物を置いて席を占領している人もおり、ドライバーが直接マイクで「お互いに譲り合いましょう」と、声かけをすることが大切です。日本人のマナーがここまで堕落しているかと思うと残念でなりません。

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 ところで、先日はうれしい光景に出合いました。3人の小学生が中央駅からバスに乗車し立っていましたが、席が開いていたため運転手さんが「危ないですからお座りください」とアナウンスがあると、児童たちは着席しました。


 2つ目のバス停から老夫婦が乗車すると、我先にと立ち上がり、二人に席をゆずり、一人の児童も友達と一緒にずっと立っていました。老夫婦は何度も児童に頭を下げてお礼を言っていました。

 通学時の車内でのマナーについて指導がきちんとなされており、家庭や学校での躾がしっかりしているなと感じた次第で、思わず学校名を聞き、頭をなでてあげたい心境でした。外国人はハンディキャップのある人への対応や、レディファーストの心がけが定着しており、エレベーターに乗る際にそのマナーの良さが自然に出ます。

 今、公的な施設の多くは、バリアフリー化が進み入りやすくなっています。高齢化社会が急速に進展していますが、運賃の安い公共交通機関を利用せざるを得ない人がほとんどです。健常者はバスや電車等に乗車した際は、周りに気配りするなど配慮が必要です。

 ところで、県内における宿泊客数は、平成23年の新幹線全線開業以来、九州7県の中で鹿児島県だけが毎年前年を超えています。鹿児島の魅力が浸透し、全域に広がりつつあります。観光客に楽しく過ごしていただくためには、「おもてなしの心」の定着が欠かせません。

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 「指宿のたまて箱」は、沿線の住民や平日には指宿市役所の職員が列車に手を振っており、現在でも乗車率が80%を超える人気の観光列車です。そのお客様への心配りや、九州各県において観光客を温かく迎える態勢づくりができていることが、豪華観光列車「ななつ星in九州」の誕生につながったと、先日関係者が語っていました。

 今年は、県内のすべての市町村が参画する「第30回国民文化祭」が開催されます。また、「明治日本の産業革命遺産 九州山口と関連地域」が、7月には「世界文化遺産」に正式登録される予定です。多くの観光客が鹿児島を訪れることが想定されます。

 日々の行動においてマナーや気配りが自然とでき、観光客が「感動」を覚えるおもてなしを育くむために、県民一人ひとりの意識が問われています。県民がまずマナーを守る取組が重要であり、そのことが観光客への対応として現れます。 何気ない気配りは、日々の行動に宿ると思います。

プロフィール

奈良迫プロデューサー
鹿児島県
観光プロデューサー
奈良迫 英光
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