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No.308 開成所開設から薩摩藩英国留学生へ~明治維新の基礎づくりに人材教育の重要性を知る~

2014年4月21日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 つい先日まで県民の心をしばし楽しませてくれた桜は、いつの間にか葉桜となりましたが、街かどの花壇にはスイトピーやツツジの花が咲き誇り、道行く人を楽しませてくれます。



 また、新緑が美しくなり、ピンクや赤色の様々な花が鮮やかで、鶴丸城の城壁も池に一段と鮮やかに映り、日本の美しい四季の移ろいを感じられます。温もりが心地良く感じるこの時期は、中学校時代に習った次の詩が浮かびます。

                   春 暁       孟浩然
            春眠不覚暁 【春眠 暁を覚えず】
            処処聞啼鳥 【処処(しょしょ) 啼鳥(ていちょう)を聞く】
            夜来風雨声 【夜来(やらい) 風雨の声】
            花落知多少 【花落つること 知る多少(いくばく)】
【注釈】
春の眠りは心地よく、夜が明けたことを知らずにぐっすり眠り込んでしまった。
気がつけば外では鳥のさえずりが聞こえてくる。天気もよさそうだ。
夜更けから風雨が強かったので、満開の花がたくさん散ったことだろう。

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 ところで2018年(平成30年)は明治維新から150周年の節目を迎えます。明治維新の立役者となった偉人を多く輩出しているのが、薩摩藩の中心地であった鹿児島市です。鹿児島市では、2012年から2018年までの期間に、「明治維新150年カウントダウン事業」として、明治維新までの激動の時代を歩んできた薩摩藩の足跡を振り返るイベントなど様々な取組を推進しています。 


 今年は開成所開設から150年になります。開成所は元治元年(1864)年6月に、科学や軍事に関する人材育成のために設立された洋学校で、島津斉彬が在任中に計画し、蘭学者石河確太郎に設立準備を命じていたものです。

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 場所は琉球館の海岸通りにあったとされ、現在の小川・滑川市場の付近と推定されます。学習科目は陸海軍砲術、兵法、地理学に航海術、測量、医学に至るまで多岐にわたってい ました。当時の様子を残す跡はありませんが、ここで教授をしていた郵便制度の創設者である前島密を評したポストが、桜島海岸通りの交差点に立てられています。



 翌年(1865年)薩摩藩は、国禁を犯して15名の若者と随行者4名を英国に派遣します。「薩摩藩英国留学生」と呼ばれており、優秀な人材が集まる開成所からほとんどが選ばれ、その中にただ一人薩摩藩以外で土佐藩を脱藩した「高見弥一」もいました。

 また、「開成」という名は、歴史的に謂われある名辞であるため、校名に「開成」を冠する中学・高校があります。優秀な学生が集まることで知られる東京の「開成高校」は32連続東京大学合格者がトップとなっています。

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 留学生たちは、帰国後は官界、実業界で活躍し、近代日本の礎を築く活躍をします。畠山義成は、出航からロンドン到着直後の様子をまとめた「畠山義成洋行日記」を遺しています。1866年にはフランスに渡り見聞を広めています。帰国後「岩倉使節団」にも招集されました。その後文部省に出仕し、東京開成学校(現在の東京大学)初代校長として、日本の大学の基礎作りに貢献しています。


 町田久成は、維新改革の流れの中で、多くの美術品の破壊や海外への流出を惜しみ、博物館事業の重要性を認識し、博物館創設事業に携わり、東京帝室博物館(後の東京国立博物館)の初代館長に就任しました。

 森有礼は中国大使や初代文部大臣を務め、教育制度の改革を行います。村橋久成は、戊辰戦争の際砲隊長として活躍し、その後北海道開拓使となり、サッポロビールの生みの親として語り継がれています。

 留学当時13歳と最年少であった長沢鼎は、その後アメリカに渡り生涯を過ごし、広大なぶどう園の経営とぶどう酒製造に尽くし、ワインの帝王と称されました。鹿児島でもナガサワワインとして親しまれています。随行者の五代友厚は、初代大阪商工会議所会頭に就任し、商都大阪の経済発展に寄与します。寺島宗則は外務大臣として活躍します。 

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 今年の7月20日、船出したいちき串木野市羽島に「薩摩藩英国留学生記念館」がオープンします。会館の中には、留学生の足跡をたどる資料も展示される予定です。会館の完成を期に、多くの小・中・高校生が遠足等で訪れて、海外への夢を掻き立てて欲しいと思います。

 各市町村で青少年の翼、青年の船等の海外派遣事業が盛んですが、参加者のその後の成長の軌跡を検証することも必要です。個人情報保護の関係で、個人情報を求めることは難しくなっていますが、学校の選択や社会人生活に役立っていること等海外派遣の重要性を語り繋げていく必要性を感じます。

 日本へのインバウンド数が昨年1千万人を超え、今年に入ってからも昨年以上の伸びとなっています。日本人の国内旅行が増えない中で、各県とも外国人誘致に力を注いでいます。

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 一方、海外に興味を示さない若者が増えているのも事実です。県民が外国の生活や文化を経験することは重要なことであり、視野を広めるべく、若い内に海外に出掛ける仕組みづくりや海外でのカリキュラム取得を可能とする等支援態勢整備の必要性を痛感します。

 海外修学旅行やホームスティの積極的な推進、留学生の受け入れ拡大やその人たちを活用した日本文化の海外への発信等も求められます。また、日本は人口の少子、高齢化時代に入り、地域の活性化には海外との交流人口の拡大が不可欠です。

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 最後に、「旧集成館事業」等5つの構成資産が、2015年度中に「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」として世界文化遺産登録を目指しています。薩摩が日本の近代化に果たした役割を世界にPRする時です。

 その基礎作りに貢献した「開成所」や「薩摩藩英国留学生」の偉業を学ぶことで、人材教育の大切さを知る機会にもしたいものです。

        資料:鹿児島市【明治維新150年カウントダウン事業】付録より

No.307 新航路開設で新たな需要開拓を~沖縄と差別化された情報の発信が誘客につながる~

2014年4月14日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 鹿児島から南へ約380キロの洋上に浮かぶ奄美大島、県の離島で一番大きな島で、鹿児島市から中心都市名瀬港まで、約12時間の船旅が楽しめます。エメラルドグリーンの海には、サンゴ礁がいたるところに見られ、熱帯魚の群れがひときは美しく観察できます。

 奄美群島には亜熱帯の植物やルリカケスやオオトラツグミ、アカヒゲ等の天然記念物、特別天然記念物のアマミノクロウサギなど固有種の動物が多く生育し、その生態系の貴重さが、世界自然遺産登録の候補地ともなっており、2016年度中の正式登録を目指しています。

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 レジャー・リゾート路線を展開するLCC,バニラエアが7月1日より、成田~奄美大島間に新路線を開設することを発表しました。首都圏から奄美大島への定期航空路線の就航は、羽田~奄美大島路線以来であり、大きな期待がかります。運航機材はエアバスA320-200型が1日1往復予定されています。

 A320型は座席数が160~180席で、グループの予約が可能となり、観光客誘致に弾みがつくのではないでしょうか。

 就航に当たり代表取締役社長の石井知祥氏は、「成田空港から奄美大島まで片道、約2時間半。手つかずの美しい自然が残り、その豊かさを後世に伝えるべく、世界自然遺産登録をめざしているリゾートです。

 この度『奄美群島振興交付金制度』が創設され、その中で『交流需要喚起対策事業』との連携を前提に今回の就航を決定した。地域の皆さまと一緒に奄美大島の魅力をより多くの方にお届けしたいと思います」と抱負を語られました。奄振事業が大きな役割を果たしていると思います。

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 奄美群島への誘客について従来ネックになっているのが、航空運賃の高さです。現在東京から奄美大島と沖縄への片道普通運賃を比較すると、距離的に短い奄美大島が5,400円高くなっています。さらに旅行エージェントの2泊3日のフリータイムの商品で比較すると、2万円以上奄美の商品が高くなっています。

 沖縄への観光客が伸びている理由として、沖縄(那覇)へは全国20の空港から路線があり、競合路線が多いことや、米軍基地が多くあることから、振興策の中で航空運賃への支援策が充実し、運賃が割安になっていることも大きく影響しています。(3月末現在)

 今回のバニラエアの就航により航空運賃の低廉化が図られることが、観光客の誘致に大きな効果を発揮するものと思います。東京からの便はビジネスの需要が高く、搭乗率も安定しており、観光客の誘致には不都合な点もありました。今回の就航は、関東地域から広く誘客が可能となったことが大きなメリットです。

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 次に成田空港という国際空港がもたらす効果も大きいものがあります。奄美群島は「奄美・琉球」として2016年度の世界遺産登録を目指しています。世界遺産登録を目指す島として世界中で注目されており、海外からの誘客が成田乗り継ぎで可能となります。

 課題としては、奄美群島の魅力が県内外にあまり知られていないことであり、今後いかに情報発信を強化して認知度を高めるかが重要な点です。

 おりしも昨年奄美群島は本土復帰60周年の節目の年を迎え、メディアで取り上げられた機会も増えてきました。また今年は、大島高校が21世紀枠として選抜高校野球大会に初出場し、優勝チームに大敗しましたが、はつらつとしたプレーが話題となりました。しかも島出身者だけのチームであり、そのことも併せて島の存在が大きく取り上げられたことも大きかったと思います。

 これから沖縄とは違う魅力をいかに消費者に届けるかです。奄美の自然は手つかずの自然が至るところに残り、その生態系が注目されています。また、どこか哀愁漂う旋律が心に響く島唄は、集落に伝わる民話が原点となっており、各集落で唄い継がれ、居酒屋では宴が深まると、だれともなくサンシンの音で興が始まります。

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 鶏飯、油ソーメン、ヤギ料理等を中心とした郷土料理、奄美でしか作れない黒糖焼酎、伝統職人が作りだす大島紬、国の重要無形民俗文化財に指定されている「ショチョガマ」、「平瀬マンカイ」「諸鈍シバヤ」など奄美独特の風習を伝える祭りは、都会の人々には興味津津に映るのではないでしょうか。




 就航が7月1日であることから、夏に向けて若者へのマリーンスポーツのスポットの提供や、大学生のゼミ旅行などの誘致も欠かせません。手つかずの自然が残る奄美の海は、どこにもまして素晴らしいと自負して憚りません。体験型の交流プログラムの充実も求められます。奄美海峡にある近畿大学水産試験場は、クロマグロ研究施設として見学も可能です。

 ところで平成26年度中には奄美市から古仁屋までトンネルが全通し、45分で行くことができます。空港からは2時間程度で加計呂麻島まで行くことができ、奄美本島南部地域の観光が便利になります。

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 古仁屋の対岸に位置する加計呂麻島は戦跡が多く、文学者島尾俊雄の代表作「死の棘」や「出孤島記」の舞台となっています。また、「寅さんシリーズ」の最後の撮影地であり、昨年はNHKの土曜ドラマ「島の先生」の舞台にもなりました。


 加計呂麻島の魅力と世界自然遺産地域をセットでPRすることで滞在客も増加するものと思います。空港からのレンタカーや小型バスの利便性を図ることが重要です。

 現在日本人の国内観光は成熟しており、従来の物見遊山を中心とした観光地は苦戦を強いられています。最大の需要がある首都圏地域から、自然豊かな奄美大島への利便性を確保することは永年の課題でした。その意味で今回のバニラエアの就航は、奄美大島にとって飛躍できる大きなチャンスとなりました。

 空港に近い龍郷町は都会からのIターン者がペンションや、エコガイド等で生活を営んでいます。利便性が高くなることから、首都圏の人々に冬場の温かい気候や花粉症が少ないことをPRし、「2地域2居住」をすすめることも定住促進につながります。

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 奄美群島観光物産協会が設立されて2年が経過しました。群島全体の観光地、物産等を点検し、首都圏のお客さまが行きたくなる、沖縄と違ったより斬新な情報発信を提供しなければなりません。首都圏で奄美の物産を手掛けるバイヤーに話を聞くと、奄美の物産は人気が高いという。それは自然豊かな未知の島の物産で、安全・安心が魅力となっているように感じます。

 このようにハンディが大きい奄美大島に、LCCが飛ぶことが大きなインパクトとなり観光客には行きにくい島だからこそ、行きたくなる場所になるのではないでしょうか。 観光客の増加に対する「おもてなしの心」の充実も大切です。就航が待ち遠しい路線です。

No.306 消費税アップに伴う旅行需要の冷え込みをいかに乗り切るか~商品企画と積極的なPRを展開しよう~

2014年4月7日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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桜花 時は過ぎねど 見る人の

    恋(こ)ふる盛(さか)りと 今し散るらむ

                万葉集~作者不詳~


 消費税が上がる前の駆け込み需要で、今年の春休みは例年になく交通機関や宿泊施設は混雑していました。満開の桜は、週末の強風と大雨にさらされ無残な姿となり、楽しみにしていた今年の桜の宴は、幻に終わりました。ぱっと咲いて惜しまれながら散る桜は日本人の心に残ります。これから桜前線は北上し、ゴールデンウィークの頃には北海道に上陸し、松前城や五稜郭は花見客でにぎわいます。

 ところで4月1日に消費税が8%となり、一時的に消費が冷え込むことが予想されます。これから旅行シーズンを控えて観光客の出足が懸念されますが、各エージェントの企画担当者の話によると、4月の商品は売れ行きが悪く、軒並み前年を割っています。

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 今年のゴールデンウィークは、5月に4連休があり後半は好調に推移しています。これから新年度の行事が終わり、ゴールデンウィークの話題がでてくるとお客様の動きも活発になってくるのではないかと思います。昨年は伊勢神宮や出雲大社の式年遷宮、東京ディズニーランド30周年、NHK大河ドラマ「八重の桜」の放映等があり、4月~7月は南九州への入込は低迷しました。今年に期待したいと思います。


 県内の話題を紹介すると、4月2日から甑島に川内港から高速新造船の運行が開始され、新たなスポットとして賑わいを増すのではないでしょうか。断崖絶壁の岩や奇岩、美しい長目の浜、ニシノハマカンゾウやカノコユリが咲き、ウミネコが生息する島は自然そのものが魅力です。

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 例年ゴールデンウイーク期間の大型イベントである「吹上浜砂の祭典」が、連休期間の1週間から5月2日~31日まで長期に渡って開催されることから、県内外からのバスツアー等が増えるものと予想しています。連休中は団体の部屋が取りにくく、平日に期間が延長されたことが好材料となり、バス旅の企画も増え、指宿方面が混んでくるのではないでしょうか。エージェントの商品企画に取り込んでいただく必要があります。

 また、修学旅行の農家民泊が増加しており、農漁業体験の途中に砂の芸術作品を見せる時間を作って欲しいと願っています。南薩摩地域はこのイベントを活かして、自分の地域への誘引効果をもたらして欲しいと思います。

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 新燃岳噴火が落ち着いた霧島地域は、新緑やミヤマキリシマが美しい時期となります。えびの高原周辺の池めぐりも大いに宣伝しなければなりません。今年は、国立公園「霧島」指定80周年の節目の年です。霧島地域の温泉は、泉質や色など多種多様な湯が湧出する日本屈指の温泉郷であり、温泉の魅力を前面にPRが必要です。

 連泊を可能とするには、宿泊地周辺の市町村との連携が欠かせません。特に「悠久の森」や「桐原の滝」、「溝ノ口洞穴」、「関之尾滝」等曽於市、都城市との連携が欠かせません。翌日の行程を宿泊客に具体的に説明できるように、職員に対して日頃からの研修等が必要ではないでしょうか。一方韓国の人にはオルレのコースが人気となっています。

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 海外路線が4つに増えて外国人の誘客が一段と便利になりました。3月30日から就航した香港路線は、予約状況が好調であり、これから1年先まである程度の集客が期待されます。FITが増える中で、レンタカーやレストランの外国語対応、鹿児島らしい体験メニュー等受入態勢の整備が求められます。

 ゴールデンウイークから急激に増えるのが、屋久島への登山客です。縄文杉や宮之浦岳への登山が多くなり、宿泊施設は、ホテルや旅館だけでなく、民宿までいっぱいとなりテントでキャンプする人が増加します。決められた場所でのキャンプ、また、トイレのし尿処理問題も決められたルールを徹底して守って欲しいと思います。旅行エージェントの皆さまにも、来島者に対して屋久島登山の注意事項を徹底してもらいたいと思います。

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 今旅行先として注目されるのが大隅地域です。お薦めのスポットを紹介します。 岬までの取り付け道路が無料化された佐多岬は、昨年10月の無料化以来観光客が増加しています。九州本土最南端の岬が整備され、かつての賑わいが戻りつつあります。晴れた日の展望は絶差に尽くしがたい景観が広がります。開聞岳、種子島、屋久島、硫黄島を洋上はるかに望めます。


 南大隅町の雄川の滝や諏訪神社、パノラマパーク西原台などの景勝地も一緒に回ることをお薦めします。また錦江町の「神川の大滝」、「花瀬公園」はこれから川岸の緑が一段と鮮やかになり、見ごろを迎えます。

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 海上自衛隊鹿屋航空基地では、「エアーメモリアルinかのや2014」が開催されます。南九州最大のイベントであり、今年は基地内見学ツアーも新たに開かれます。史料館の庭に展示されている飛行機の数々は、子供たちにとって最高の思い出づくりになるのではないでしょうか。

 おりしも、鹿屋航空基地が登場する映画「永遠の0」がヒット中であり、過去最高の人出が予想されます。会場周辺での地域産品の展示販売の強化が求められます。

 近くにある「かのやばら園」では8haの敷地に5万本のばらが植栽されており、6月1日までばら祭りが開催されます。出口にあるショップが混雑するため、見学の途中に中でお土産品を買える施設の設置が不可欠です。

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 また、宇宙基地のある肝付町の内之浦では、4月12日から5月4日まで「春のえっがね丼祭り」が開催されます。全店統一の価格2,500円で販売されます。宇宙基地見学と一緒に地元で獲れた新鮮なえびを堪能してください。錦江湾側から田代~内之浦と抜ける国道448号は、景観が素晴らしく県内一のドライブコースと思います。

 ところで、ゴールデンウイークの宿泊客の主流は近隣の客で、しかも家族旅行等は出足が遅い傾向にあります。メディア等でゴールデンウイークの人出の予想やイベント情報等が発表されると、急に予約が増えるなどこれから動きが活発となります。タウン誌や大型商業施設等で県内の人たちへの情報発信を強化してもらいたい。

 宿泊施設では空き情報を前広に把握して料金体系を換えるなど、臨機応変の対応が望まれます。特に4月後半の需要が鈍いと捉えておく必要があります。 国民が楽しみにしているゴールデンウィークまで1カ月余り、準備怠りなく需要を吸収できる態勢づくりが望まれます。

No.305 環境にやさしい宿泊者に~日本型宿泊スタイルからの脱皮を~

2014年3月31日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 春休みに入り、若い観光客の姿が目に付くようになりました。卒業旅行でパワースポットや、露天風呂巡りなどを楽しんでいるのではないでしょうか。 鹿児島県は南北600キロに及び、鹿児島市から大阪市までの距離に相当します。


 大分県に次ぐ第2位の泉源数があり、多彩な泉質を含む温泉地が点在しています。また屋久島の世界自然遺産や、二つのロケット基地は他県にない魅力です。近代化日本の礎を築いた偉人を多く輩出し、歴史遺産も鹿児島市内を中心に整備されており、まち歩きなどにも最適です。

多様な生態系が見られる奄美群島は、2016年度「奄美・琉球」として世界自然遺産を目指しています。近代化遺産群と奄美が世界遺産に登録されると、飛躍的に観光客が伸びると思われます。

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 平成25年、鹿児島県における宿泊客数は703万人で、前年比102.3%の伸びとなり、観光客の約80%が鹿児島市、指宿地域、霧島地域に宿泊しています。(暫定値) 宿泊観光客の増加に伴い、ゴミ処理、汚水対策、ペットポトル、空き缶対策など宿泊客が残した廃棄物の処理に、各自治体は多額の費用がかかり、その対策に頭を悩ましているのも事実です。観光客が滞在する宿泊箇所での環境対策が今必要になってきています。

 欧米系の観光客は、小さいころから環境への対応をきちんと学びその習慣が定着しており、自然の大切さや環境に負荷を与えない行動ができていると感じます。一方日本人の宿泊パターンは、非日常を求めて、過度の快適さと利便性を追い求める宿泊スタイルになっており、環境に負荷を与えているように感じます。また、宿泊施設の過度のサービスが、環境悪化を招いているようにも感じます。

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 エコホテルの定着を目指している施設が多くなっているのも事実ですが、宿泊者と事業者が環境を守るという同じ考え方に立ち、実現可能な項目から着手する必要に迫られています。2005年には京都議定書が締結され、日本も本格的に環境対策に力を注いでいます。これから東アジアからの観光が急激に伸びることが予想されることから、環境対策を徹底していくことの重要性が問われています。

 宿泊者とそれを受け入れる施設の実情や、100ルームの部屋を持つホテルの支配人から聞き取り調査等を行い課題について整理しました。

1.宿泊者がもたらす環境問題については、
 ・宿泊者は平均して、滞在中に2回以上入浴し、泡立ちの良いシャンプーやリンス等を大量に使用し、化粧品、ヘアケア、歯磨きなど化学物質を含んだものを水と一緒に流す。大浴場で月平均63リットルのシャンプーが使用される。
 ・一人平均3枚以上のタオルを使用し使用後の洗濯に使う洗剤も膨大となる。
 ・夕食、朝食は平均して20%程度を残し、残飯として処理される。食後の使用済皿は、 洗浄に多量の洗剤が必要になる。
 ・使い捨ての歯ブラシや、煙草の吸殻、飲み食いの残飯処理に時間がかかる。チェックアウト後1晩で約20袋のゴミが収集される。
 ・宴会中のクーラー、電気のつけっぱなしが多く見られる。
 ・貸切バスやマイカー利用者が到着時に大量のゴミを持ちこむ。
  等が施設の抱える環境問題です。

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2.環境に負荷を与えない取組としては
 ・化学物室を含まない石鹸の提供も必要である。
 ・連泊のお客様にはタオル、シーツの連続使用をお願いし理解してもらう。
 ・生ごみは肥料や飼料にして再利用を考える。
 ・宿泊者への啓蒙運動を推進する。(環境への取組の理解、水や電気はまめに消す)

3.宿泊者への理解を深める方策としては
 ・分別収集のお願いをする。連泊においてはタオル、シーツは連続使用とする。
 ・宴会等部屋不在時の電気を消すことを了解してもらう。
 ・洗面道具(歯ブラシ、洗髪用のグッズ等)はフロントに置き、必要な方のみ渡す。

4.地域・業界の取組としては
 ・環境問題は一施設だけで取組んでも限界がある。地域全体で取り組むことに意義がある。実現可能なものから宿泊者、従業員の理解の元にすすめる必要があります。
 ・宿泊施設は、夕方のチェックインから翌朝まで安心して滞在できるよう常に警備等に配慮しています。また2度の食事の提供、片づけ、布団敷など重労働です。それに対する対価としての宿泊代があまりに安く設定されているように感じます。双方が満足できる料金体系が必要であり、そのことで環境対策にも取り組むことができます。

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 交流人口の拡大が不可欠な今、経済効果を追求すれば、消費の拡大を促し環境問題が惹起されることは当然です。従来日本人の宿泊スタイルは顧客の要望に応じて、過度のサービスを提供してきたと感じます。そのことがゴミ問題や水の汚染、有害物質の氾濫などが生活や健康に悪影響を与えています。

 余暇活動を享受できることは、素晴らしいことであり、周りの環境に配慮した行動が 求められる時代になってきたのではないでしょうか。自然と地域住民、観光客が共生で きる環境づくりが必要であると感じます。

No.304 ムスリム市場への取組~相手の慣習を理解することから~

2014年3月24日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 2013年の訪日外国人は、過去最高の1,036万4千人となり、前年比24.0%の伸びとなりました。中でも東南アジアからの訪日外国人が急増しています。主な要因として査証免除や緩和、経済発展に伴う中間層の増大、LCCの就航、円安による日本への旅行の割安感があげられます。

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 先日インドネシアの高校生12名が鹿児島を訪れて、垂水市での民泊や垂水漁協のいけすの餌やり体験などを楽しみました。今後の波及効果が楽しみです。インドネシアはムスリム(イスラム教信者)が人口の87%をこえており、約2億700万人に及びます。ムスリム市場は拡大しており、2010年の統計では、世界で約16億人の人口を占めています。

 ムスリムが多いインドネシア、マレーシア、シンガポールからの2013年訪日観光客数は、50万2千人を超え、35%の伸びとなっています。今後も大きな伸びが期待されるムスリムの受け入れに当たって、留意すべき点について述べたいと思います。

 まずムスリムの受け入れに当たっては、宿泊施設などでは礼拝場所の設置が不可欠です。1日5回の礼拝が戒律となっており、男女別に礼拝と小浄ができる清潔な部屋が必要です。部屋には礼拝の方角を示すキブラの設置や、礼拝時に必要な備品の設置も求められます。先日鹿児島空港国際線ターミナルの一角に礼拝場所が設けられました。ムスリムの受け入れの一歩ができたと思います。

 また、ムスリムにはハラール(認証)の食事の提供が求められます。豚肉は厳禁であり、またそれらを原料とした調味料なども口にすることは禁じられています。料理の処理方法によっては、口にできない食事もあり十分な点検が必要です。

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 ムスリムで禁じられているのが、酒を飲むことです。食事の際だけでなく、日常も許されていません。ムスリムにとって、ハラールの食品のみを口にすることは神の教えに忠実に従うこと、すなわち信仰そのものなのです。

 また、イスラム教にはラマダーンと呼ばれるヒジュラ暦の第9月(西暦2014年では6月28日~7月27日にあたる)。この月の日の出から日没まで間、「断食」として食事を立つことが行われ、約1か月間続きます。かつて小生がモロッコを旅した時、ドライバーがラマダーンの期間に入ったら断食を実行していたのを覚えています。

 このようにムスリムの受け入れに当たっては事前に理解しておくべきことが多々あります。取扱旅行社と事前の確認を行うことが必要であり、やたらに不安がるのではなく、日々しっかりと検証していくことが大切です。

 先日、九州観光推進機構が鹿児島市で開催した「おもてなしフォーラムin九州」の分科会で、ムスリムの受け入れについての研修会もありました。福岡にあるムスリム寺院の関係者は、受け入れに当たって神経質になるのではなく、旅行者とのコミニュニケーションを図りながら楽しい旅を提供すことが大切であると語っていました。

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 ムスリム市場はASEAN地域が多く、これからも訪日が一番期待される地域です。 昨年7月1日からのビザ免除の追い風もあり、今年は、インドネシア、シンガポール、マレーシアの3国だけでも70万人を越えるのではないかと想定されます。


 ASEAN諸国の若者は、テレビ、アニメ、漫画、ドラマ、映画等に加えて、桜、紅葉、美しい清流、海等美しい日本の自然景観に憧れを持っています。また、温泉にも関心があります。湯船の中に集団で裸になる習慣がないムスリムの人々には、個室の貸切風呂での温泉の入り方や、効能等について説明する必要があります。

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 世界無形文化遺産に登録された「日本の食」にも関心を示します。鹿児島は「本物。鹿児島県」に代表される豊富な食材があり、ムスリムの観光客には喜ばれるのではないでしょうか。県内を走る観光列車「おれんじ鉄道」、「はやとの風」、「いぶすきの玉手箱」等も売りの一つです。

 ムスリム市場に対して、鹿児島が誇る火山、温泉、ロケット基地、美しい海、「日本式旅館でのおもてなしの姿や食」等を前面に、受入態勢ができるガイドブック等の制作の必要性を感じます。

 現在はASEAN諸国から鹿児島への直行便がなく、当面は上海、台北、ソウル、香港、福岡からの経由便やチャーター便に頼らざるを得ません。

 各県もムスリムの誘致に力を入れてきました。礼拝室の設置、ホテルの部屋にはメッカの方向を示すキブラ(矢印)をつける、ハラール料理の提供等、今後新たな市場としてムスリムの誘致を図るべく、基本的な受け入れ態勢の知識を深めることの大切さを感じます。

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