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No.355 「第30回国民文化祭」を「明治維新150周年」につなげよう~市町村の事前取組が課題~

2015年3月30日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 今年は、国、最大の文化イベントである「第30回国民文化祭」が、10月31日から16日間、県下43全ての市町村で開催されます。テーマは、「本物。鹿児島県 ~文化維新は黒潮に乗って~」、また、愛称は「ひっとべ!かごしま国文祭」となっています。 

 国民文化祭は、全国各地からアマチユアを中心とした文化団体や愛好者が集まり、各種文化活動の成果や発表・競演・交流することにより、国民への文化活動への参加の機運を高め、新しい芸術文化の創造を促すことを目的に開催されてきました。 

 鹿児島開催まで半年あまり、県民あげての盛上げが必要であり、各市町村の事前取組が 大会の成功を左右すると考えていますが、住民への浸透度は今一歩です。主要拠点にカウントダウンボードも設置されました。文化、教育、観光、農水産業、商工関連団体等が連携強化して我が町の魅力を発信し、参加者増を図らねばなりません。

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 文化イベントは、スポーツイベントに比べて市民の関心が低く、集客に苦労します。国体等代表選手が参加する大会には経費等の補助がありますが、国民文化祭は趣味を同じにする人たちの発表の場であり、自費参加が主体となっています。


 ここに国民文化祭に対する集客の厳しさがあり、いかにして各事業への参加者を増やすかが問われています。県では国民文化祭のイベントを通して、多くの人に鹿児島に来ていただく対策として、地方創生に関連した予算も計上され、団体の参加を促すことにつながると思います。

 昨年の秋田大会の経済波及効果は133億5500万円とする推計を、秋田銀行のシンクタンクである「秋田経済研究所」は発表しています。鹿児島県が誇る歴史、温泉、自然遺産、食等は、秋田県に優るとも劣らない魅力が十分揃っています。九州本島最南端の県と言う魅力も活かし、関連団体への事前のPRが何よりも大切です。

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 6月には、「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」の「世界文化遺産」登録が予定されており、鹿児島市内にある5つの関連施設が対象で、登録が実現すると、「世界文化遺産」の視察を兼ねて多くの参加者があると期待され、国民文化祭の開催にも弾みがつくことが想定されます。

 薩摩藩は、明治維新の原動力となった多くの偉人を輩出し、「旧集成館事業」や「薩摩藩英国留学生」、「郷中教育」等の歴史に触れることで、薩摩の文化の高さや先進性を学ぶことができるのではないでしょうか。また、食、祭り、くらし等地域文化を情報発進することで、行って見たい大会としての魅力付けが大切になっています。各市町村が競争と協調を図り、文化祭終了後にわが町への誘地を図る努力も求められています。

 鹿児島県は南北600キロに広がり独特の文化を育んできました。中でも焼酎は、110余りの蔵元と2000を超える銘柄があり、地域に根付いています。与論では与論献奉という独特のおもてなしの手法で接待します。

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 県議会においては、本格焼酎の産業振興とそれに関する郷土の伝統文化への理解の促進を図るため「かごしま本格焼酎の産業振興と焼酎文化でおもてなし条例」を制定し、平成26年1月1日から施行されました。参加者と住民との交流の機会を多く設け、地域ならではの「ふだん着のおもてなし」が求められています。

 一方インバウンドに目を向けると、円安やビザ取得要件の緩和、和食の「世界無形文化遺産」登録、「安全安心の国日本」への関心が高くなり、外国人が急増しています。県内在住の外国人にも、鹿児島の文化の発信者になってもらうことも大切です。本県では、ソウル、上海、台北、香港の4国際航空定期路線があり、また、市町村は姉妹都市との交流を定期的に進めており、国民文化祭を機に海外からの参加者を増やし、さらなる文化交流も深めてもらいたいと思います。

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 大会のテーマは、南に広がる鹿児島のイメージを象徴しています。県内に28の有人の離島があることは意外と知られていません。大会後に離島を訪れる参加者が多くなることが期待されます。「奄美・琉球」は、平成29年の「世界自然遺産」登録を目指しており、PRのよい機会となります。



 国民文化祭を開催することで県外の出演団体に加えて、交流の機会の場が増えることは、地域の活性化につながることが期待されます。また、地域文化の継承には後継者の養成が不可欠で、子どもやお年寄りの出演の機会をつくることが求められています。そのことで、地域の伝統文化を学ぶ、郷土愛を育てることになります。

 「世界文化遺産」登録、来年の「薩長同盟150周年」、鹿児島を舞台とした2017年の「NHK大河ドラマ」の誘致、そして、2018年の「明治維新150周年」につなげる国民文化祭にしなければなりません。「第30回国民文化祭」の成功が、これからの鹿児島にとっても重要なインパクトになるイベントであることを認識し、県民一人ひとりが参画意識を強く持ち「おもてなしの心」で迎えたいものです。

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 『木曽路はすべて山の中である。あるところは岨(そば)づたいに行く崖の道であり、あるところは数十間の深さに臨む木曽川の岸であり、あるところは山の尾をめぐる谷の入口である。一筋の街道はこの深い森林地帯を貫いていた。』
              夜明け前:島崎藤村

*小説「夜明け前」の冒頭の部分です。今では観光地となっている馬籠と妻籠が舞台です。
*鹿児島大会では、「最南端佐多岬旅の文学フェスティバル」が南大隅町で開催されます。

No.354 離島の活性化に若者の発想を生かす~変わらない美しい自然と人々の温かさ~

2015年3月23日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 先日、奄美海運が運航する新造船「フェリーきかい」の就航記念披露会に出席しました。新造船は2,500総トン型で、旅客定員196名、トラック18台、乗用車11台、コンテナ60個を積む能力があり、従来の船よりも高速運行が可能となりました。


 バリアフリー化や各種の設備を整え、鹿児島~喜界~名瀬~古仁屋~平土野~知名の奄美群島の各港を結びます。小生の学生時代の頃に比べると、離島航路は船の大きさ、設備、スピード等格段の進化を遂げています。

 40数年前から訪れている離島の魅力について触れたいと思います。鹿児島県は南北600kmに広がり、また、28の有人離島が点在し、独特の文化や日本では珍しい生態系が見られます。昭和47年に沖縄が日本に復帰するまで、与論島が日本の最南端の島であり、都会から女子大生を中心に多くの若者が訪れていました。昭和45年の奄美航路の利用者は、約35万人で43年の3.5倍にも達し、離島ブームの到来を感じさせてくれました。

 高校時代から地理という科目が好きで、将来は高校の社会の先生を夢見ていました。大学入学後、迷いなく入部したのが「地理学研究会」でした。部員は20名足らずでしたが、各県出身の旅好き仲間が集まり、アルバイトの資金で、休みの度に離島の生活・文化の調査を兼ねて合宿を行っていました。   

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 奄美航路の船はデッキまで人が溢れるほど混んでおり、佐多岬を過ぎ、大海に出ると大きく揺れましたが、夏場は潮風に吹かれながら満天の星空を眺め、ざこ寝した思い出が懐かしく思い出されます。早朝の名瀬港は荷降し作業や出迎えの人でごった返し、「島育ち」の曲が流れ、今とは考えられないほど賑わっていました。

 南海の海はコバルトブルーに輝き、ズーニーブーの「白いサンゴ礁」という曲が若者の心を捉えて、与論の浜辺では水着姿の若者が闊歩し、民宿も多く誕生し、商店街はさながら与論銀座の様相を呈していました。

 我々のクラブ活動は離島の人口動態、経済、生活等の調査が目的であることから、自治体は、集落の公民館等を好意的に宿舎として提供してくれました。農家を訪ねると、黒砂糖やお茶でおもてなしを受け、島の人々の温かさに胸が熱くなり、日本にこんなに素晴らしい地域があるのだと部員で語り合ったことが懐かしく思い出されます。

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 昭和44年の沖永良部島での調査では、発見されてまもない「昇竜洞」を見学することができました。十分整備されていない洞窟の中は、裸電球が付けら島の住民が案内役をかってくれました。昇竜洞の美しさにただ目を見張るばかりで、今ではケイビングツアーのメッカとして全国的に知られるようなりました。

 研修先として次の訪問地の与論島に渡る計画でしたが、南方海上で台風が発生し急遽台風を避けて帰ることになり、島の西側の伊延港に移動して、沖合に停泊している船にはしけで渡り帰途につきました。当時から伊延港は避難港としての役割を果たしていました。離島の生活環境の厳しさに触れた出来事でもありました。

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 屋久島合宿では、安房からトロッコの軌道を小杉谷まで15キロを5時間かけて歩きました。縄文杉(当時は大岩杉)や大王杉は今ほど有名ではなく、途中の小杉谷荘(今は廃業されている)が、宮之浦岳登山客で賑わっていました。


 昭和45年、自然保護運動の高まりの中でヤクスギ伐採も終わり、営林所や家族が住んでいた小杉谷集落、そして小杉谷小・中学校も廃校となりました。訪ねた頃は校門跡に残された記念碑や、生徒たちが走り周った校庭に残る僅かのグランドが、賑わっていた時代を物語っていました。今では雑草が生え、昔を知るすべもありません。

 林芙美子の小説「浮雲」は屋久島が舞台ですが、自然の美しさは46年前とあまり変わっていないと思います。平成5年日本で初めて「世界自然遺産」に登録され、多くの観光客が訪れていますが、今の自然環境を守って行くことが、屋久島の価値を高めることになると信じています。

 その後も喜界島、奄美本島、徳之島、甑島、種子島、新島と休みの度に各島を訪れ、美しい海、人々の温かい心に触れすっかり離島のファンとなりました。離島の魅力を国内外の人々にPRしたい思いで就職活動を行い、結果として旅行エージェントに籍を置くこととなりました。

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 営業活動で離島を訪ねることも多く、修学旅行の添乗では、生徒を港から沖合の定期船迄、漁師の協力も得て小さなはしけで運ぶこともありましたが、今では港の改修で大型フェリーの接岸が可能となり、浴場や個室を備えた豪華船となり、隔世の感があります。

 仕事で多くの国々や全都道府県を訪ねましたが、鹿児島の離島の魅力は世界に誇れるものがあると思います。今年秋には「第30回国民文化祭」が、全市町村で開催されます。全国から多くの参加者が離島を訪れることを期待しています。

 2017年に「奄美・琉球」が「世界自然遺産」登録を目指しており、登録後は屋久島と奄美群島をつなぐ新たな観光ルートの誕生が期待されています。奄美群島全体の観光振興につなげたい思いです。

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 離島の島々は国防の観点からも、住民が暮らし続けていける環境を保っていくことが重要なことです。人口減が顕著となり、交流人口の拡大が不可欠となっています。今離島の自治体にとっても、大学とコラボして、商品開発や情報発信に努めることが地域活性化につながるのではないでしょうか。

 スポーツ合宿、ゼミの研修先、避暑地としての役割も果たせるものと思います。学生時代の貴重な離島体験が今でも役立ち、私の人生の原点は、大学時代のクラブ活動にあると思っています。

      春の岬  旅の終りの  かもめ鳥
                        浮きつつ遠く なりにけるかも
                               ~三好達治(『測量船』)~

No.353 甑島(こしきしま)が新たに国定公園に~多様な海岸景観が観光客を魅了する~

2015年3月16日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 薩摩川内市の西に位置する甑島は、多様な海岸景観をはじめとした景観等が評価され、「甑島国定公園」として、3月16日誕生します。国定公園は、日本において国立公園に準ずる景勝地として自然公園法に基づいて、自然の保護と利活用を目的に指定される「自然公園」の一種です。 今回の指定は国内で57カ所目、鹿児島県内では、奄美群島、日南海岸に続き3カ所目の国定公園となります。


 甑島周辺沿岸が日本の重要湿地500に、鹿島断崖に見られる特異な地質構造である「甑島の白亜紀―古第三紀層」が日本の地質100選にされています。また、「甑島の鹿の子断層」が日本の地質構造100選に選定されるなど、その自然環境は高く評価されています。

 薩摩川内市の川内港から「高速船甑島」で40分で上甑島の里港に到着します。高速船は、JR九州の観光列車を手掛けている水戸岡鋭治さんデザインによるもので、話題性に富み多くの利用客で賑わっています。

 甑島は、上甑、中甑、下甑3島などからなり、現在中甑島と下甑島を結ぶ架橋が平成29年の開通を目指して工事中であり、完成後は島が一つに結ばれてさらに魅力が増すのではないでしょうか。

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 最初に船が着く里港は里の中心地です。里は島の中では、平坦地が多く美しい入り江と自然が造った景勝地がいたるところにあります。里はトンボロと呼ばれる地形の上に発展した町で、海底の砂礫が海岸流によって運ばれ、波の作用によって水面上にあらわれたものです。函館市も同じような地形の所に発展した町です。

 里町には、丸い石を丹念に積み重ねた玉石垣の美しい街並みが残っており、昔の風情が感じられる通りがあります。その石垣から四季の花々が顔を出し観光客を和ましてくれます。上甑島の「長目の浜」は、およそ4キロにわたって延びる砂州とその内陸部に並ぶ、なまこ池、貝池、鍬崎池という3つの池からなる甑島有数の景勝地です。

 上甑と中甑を結ぶ「鹿の子大橋」から見る夕日は、絶賛に価します。浦内湾には30キロを超えるクロマグロが、いけすの中で養殖されており、漁師の巧みな手さばきで一瞬のうちに捕獲され、内蔵を取りのぞき大きな箱に格納されていきます。

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 定期的に大都市圏の市場に出荷しています。甑島はクロマグロの養殖場としては、水温、海流、海面の深さなど好条件に恵まれた場所であり、漁場拡大が今後の地域経済への発展につながると思います。


 下甑島の入口にある鹿島海岸は、高さ200mにも及ぶ険しい断崖が続き、池矢崎、門口、鶴穴など様々な名称の奇岩や大岩が点在し大自然の威容を見せています。断崖絶壁の岩の巣には、ウミネコが生息しており、クルージングをしながら餌をやる体験ができます。船上からきびなごの餌を空中に投げると、あっという間に餌を捕まえて飛んでいきます。その姿は壮観であり学生が喜ぶ海の体験の一つになります。

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 また、市の花にも指定されている鹿の子百合の自生地もあります。初夏になると、二シノハマカンゾウが黄色い花を咲かせます。鹿の子百合はそのあとを追うように、草原一帯に、薄紅色の花がじゅうたんを敷きつめたように咲き乱れます。百合の野生の花や球根を取ることは禁じられています。

 昼食を港の近くの浜辺で、取れたてのあじやきびなご、いかなどの海の幸のバーベキューをいただくのも島ならではの醍醐味です。

 甑島で忘れてならない魚にキビナゴがあります。近海で獲れたキビナゴは、その日のホテルの朝食に並びます。刺身やちょっと火であぶることで甘みが残り、おいしく食べられます。メニューに工夫をこらし観光客に提供することで、島のブランド品にもつながります。

   数年後には中甑島と下甑島が橋で結ばれますが、完成後は里から下甑島の手打まで2時間程度となり島も大きく変貌すると思います。下甑島には、ナポレオン岩、瀬尾観音三滝等の景勝地に加えて、椋鳩十の小説「孤島の野犬」の像、「おふくろさん」の歌碑もあり、観光客にとっても魅力のコースです。また、テレビドラマ「ドクターコトー」のモデルとなった医師と診療所があり、写真を撮る観光客の姿も見られます。

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 甑島では「地域おこし協力隊」が頑張っており、関西・中国地域から新幹線と高速船を利用した観光客誘致に努めています。今後のさらなる観光客誘致を図るためには、国定公園の島として何が売りなのか、他の島にない魅力をPRすることです。


 素朴な自然を活用した体験メニューを充実させ、都会の人々と島の人々との交流の機会を増やすことが重要です。また、大学生の地理や地学のゼミ研修場所として最適な場所です。 一方では、国定公園指定を受け地域の自然を守る取組も強化しなければなりません。島を上げて国定公園指定を喜び、観光客を温かく迎える心を醸成したいものです。

                資料:薩摩川内市ホームページ、薩摩川内観光マップ

No.352 安全で快適なバス旅行を提供するために~新制度定着には、消費者への周知と理解を深める努力を~

2015年3月9日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 平成24年4月に発生した高速ツアーバス事故等により、貸切バス市場の現状について様々な問題が提起され、改善を図るべく新しい運賃・料金制度が平成26年4月から実施されました。今まで貸切バス料金は、「時間制運賃」、「キロ制運賃」、「時間・キロ選択制運賃」、「行先別運賃」を採用していました。

 今回の制度の見直しは、貸切バスの安全性向上への取組であり、それに伴い運賃制度を根本的に見直し、安全と乗務員の労働環境改善コストを反映したものです。

 新しい運賃制度の概要は下記の通りです。
1.時間制運賃とキロ制運賃を合算として計算
①時間制運賃
バスの出庫から入庫までの時間に、出庫点検・帰庫点検の各1時間ずつ合計2時間を加えて、時間制運賃を乗じることになります。(最低保障として、3時間に点検時間の2時間を加算した5時間です。)
②キロ制運賃
バスの出庫から入庫までの距離にキロ運賃を乗じます。

2.料金の種類
①深夜早朝運行料金
22:00~5:00に係る運行は、その係る時間については2割を限度とした割増料金が適用されます。
②交替運転者配置料金
長距離・長時間・夜間料金運行など安全運行のために交替運転手を配置した場合に適用されます。*各運輸局が公示した料金になります。
③特殊車両割増料金
サロンカー、リフト付バス等は運賃の5割以内の割増しを限度として適用されます。
④ガイド料、有料道路、航送料、駐車料金、乗務員宿泊料などは、実費負担となります。

3.行政処分が厳しくなります。(平成26年7月から)
①バス事業者
初違反 ⇒ 20日間の車両使用禁止 再違反 ⇒ 40日間の車両使用禁止
②旅行事業者
貸切バス事業者が、届出運賃違反で行政処分を受け、旅行業者の関与が疑われる場合、地方運輸局より国土交通本省を通じて観光庁に通達され、旅行業者等に対して立入検査等旅行業法に基づく措置が講じられます。(資料:日本バス協会)

 従来から貸切バス運転手の労働環境は厳しく、早朝に車庫を出て深夜に車庫に帰ることも珍しくないことです。また、駅に団体を送った後すぐに新しい団体を乗せるなど綱渡りの業務もあり、道路渋滞などでは迎えの時間に間に合わないこともしばしばです。

 貸切バス業務は厳しい労働環境にあることから、バスの運転手の後継者不足は深刻であり、運転手の高齢化も進んでいることから、10年後は貸切バスの運転手はいなくなるのではとあるバス事業者は懸念していました。

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 今回の改正は、バスの安全な運行に欠かせない最低限のコストや運転手の労働環境を加味して設定されています。バス事業者、旅行業者のより強いリーダーシップが求められています。労働環境を改善し、雇用確保が図られることも重要です。今回の新運賃導入を契機に、事業者、バス利用者双方がメリットを享受しなければなりません。 

 ところで平成26年4月に導入された料金制度は、新規契約から適用されます。料金アップに特に影響を受けるのが、1日遠足や修学旅行の学校行事です。修学旅行は旅費の上限が各自治体で決められており、その範囲で行ける行先を選択してきました。関西・中国地域からは修学旅行の新幹線専用列車の運行が始まり、運賃・料金が半額となることから鹿児島への修学旅行が実現しました。

 今度バス旅金がアップすることから、平成27年度秋の実施分から影響が出ると思われます。旅費の上限が変わらなければ、3日間バスを活用した日程を、変更しなければなりません。対策として、1日は自由散策等を入れることで軽減が図れます。鹿児島市内のボランティアガイドを活用した「まち歩き」や、「シティビューやまち巡りバス」を利用したツアーや、農漁業体験を1日組み入れて、民泊を体験するのも対策の一つです。

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 駅から民泊先が近い出水地域では、バス代が掛からないことをメリットとして誘致対策の強化が求められます。1日遠足のバス旅行は身近な行事であり、教育委員会等を通じて、新制度について学校や父兄に広く理解を求めることも重要です。


 大都市圏から鹿児島へ来る一般の商品では、鹿児島市や指宿温泉、霧島温泉等に宿泊する企画が多くあります。価格上昇に伴い消費者の選択肢を広げるには、従来の周遊型商品に連泊とフリータイムを加えることで、旅行代金に弾力性を持たせることができ、消費者の選択肢が広がることになるのではないでしょうか。

 従来旅費を安く抑えるために、送迎等にホテルのバスを依頼しているケースがありますが、路線の認可を受けている以外は、やめるべきです。

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 外国人が急増しており、大都市圏ではバスの予約が取れない状況にあります。鹿児島県として、平成31年には外国人宿泊客を、今の約2倍の43万人を目標としています。貸切バスの確保は不可欠です。一度安価な料金で受けるとそれがベースとなり料金アップは難しくなります。

 新制度を着実に適用することが生き残りとなります。今回の新制度導入は、運転手の労働環境改善だけでなく、事業者の経営改善にもつながります。

 最後にバス旅行は楽しく、1年間に200回も参加している友人がいます。1日バスに乗り観光地を巡り、豪華昼食を食べ、お土産付きで5000円程度の旅行は気軽に参加できます。労働環境が確保されている職場で働く運転手さんこそ安全な運転ができ、参加者も安心して旅行を楽しむことができると思います。

 旅行業者にとっては、値上げにより一時的に集客が厳しくなることが予測されますが、一方では企業のメリットも増加すると考えられます。バス事業者、旅行業者、消費者の3者が理解し合う事で制度改正が定着するものと信じます。

No.351 若者の旅立ちを祝す~好奇心のアンテナを高く掲げて努力を~

2015年3月2日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 卒業式のシーズンとなり進学や就職で鹿児島を離れる若者が多くなります。甑島では中学3年生になると、卒業に向けてサツマイモを育てて、収穫したイモは蔵元で記念の焼酎ボトルを作り、5年後の成人式で再会した時恩師や同窓生で封を開けて皆さんで飲むという伝統行事が残されています。

 焼酎のボトルには「島立ち」と印刷されており、家庭で親が子供たちの成長を楽しみに5年間大事に保管しているそうです。島に高校がないために島外に出るしかありませんが、子供たちにとっては、島や友人との絆を保つシンボルになっているのではないでしょうか。

 唐の時代の詩人である「李白」が、友人を送る心情を書いた詩を紹介します。古代から中国国内の移動は大変であったと推測されますが、精一杯のおもてなしで人との別れを惜しんだのではないかと思います。

                  友人を送る       李 白
   青山横北郭 白水遶東城  青山北郭に横たわり 白水東城を遶る
   此地一為別 弧蓬万里征  此の地一たび別れを為し 弧蓬万里に征く
   浮雲遊子意 落日故人情  浮雲遊子の意 落日故人の情
   揮手自茲去 䔥々班馬鳴  手を揮って茲より去れば 䔥々として班馬鳴く

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[文訳]
山が青々と町の北側に横たわり、川が白く輝き、町の東方を遶っている。君はここで一たび別れを告げたなら、一本の蓬が風に翻るように万里の旅路に向かうのだ。君の心は空に浮かんだ雲のように寄る辺なく、友人である私の気持ちは、落ちかかる夕日のように切ない。さあ、いよいよ出立の時となって手を振りきると、別れ別れになる馬さえも悲しげに嘶(いなな)いた。

・・訳「唐詩」100選 佐久 協
[故人]・・旧来の友人、[遊子]・・旅人、[䔥䔥]・・馬の嘶き、[班馬]・・別れる馬

 情感がこもった友人への、惜別と激励の詩です。日本では送別に際し、激励会を開きメッセージと供に花束を渡すことが日常行われています。中国では別れを綴る詩では、友人の姿を長く見送ることができる丘陵や大河がよく舞台として登場します。

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 日本では、異動は住居と仕事内容など環境が変わり、人にとっては自分を変える大きな転機となると思います。それぞれの土地での出会いがいい経験となり、古里である鹿児島のすばらしさを、他の県に住んではじめて知る機会にもなるのではないでしょうか。


 鹿児島県は南北600キロにおよび、本土と離島との転勤も多くあり、港や空港での別れのシーンは鹿児島の年中行事の一つではないかと思います。鹿児島を離れて他県に行く人は、鹿児島の歴史、温泉、食、祭り、自然遺産、おもてなしの心などの魅力を、任地で是非多くの人に伝えてほしいものです。皆様の口コミで鹿児島の生きた情報が全国に発信され、交流人口の拡大につながることを期待します。

 ところで進学や就職していく若者の皆さんには、日頃から読書することの大切さを、身につけて欲しいと思います。日本文学や古典、歴史、経済、科学等専門分野以外も読書することで、人の生き方、考え方を学び、自分の考えに幅が生まれ、客観的な物事の判断ができるようになるのではと思います。

 総務省の調査によると、インターネットが普及し、情報の発信量は10年前の530倍にもなっています。情報は一方通行になりがちであり、より重要な情報を見逃さず、蓄積しいかに活用していくかが大切です。

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 「落日燃ゆ」、「男子の本懐」、「価格破壊」、「粗にして野だが卑ではない ~石田礼助の生涯~」、「官僚たちの夏」、「外食王の飢え」などの小説を書き、伝記小説という一つの系譜を定着させたのが作家城山三郎です。主人公が過した時代を通して、信念に基づく生き方を男のロマンとして鮮明に描いています。これからの人生の参考になるのではないかと思います。小生も好きな作家のひとりです。


 最後に、入社試験のため東京に出てきた若者に、創業者が読書の大切さを語るシーンです。小説の一部を紹介します。是非文庫本をお読みください。

 馬場は、さらにいった。「けど、勉強はしろよ」「はい」目を上げて答える高島に馬場は、「人間は、日に四度、メシを食うものだ」「はあ?」「三度は、ふつうのメシを食う。あとの一度は、活字のメシを食え。つまり、読書だ」。(「臨3311に乗れ」城山三郎著 集英社文庫)

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