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No.333 武家屋敷を活かす新たな取組~着物姿であなたも、しばしお姫様に~

2014年10月20日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 出水市は鹿児島県の最北端に位置し、自然や歴史、豊富な農水産物等魅力ある市です。秋になると上場高原では、コスモスが青く澄んだ青空の下に赤やピンクの可憐な花をつけ、絨毯を敷き詰めたような光景に出会います。


 11月になるとシベリアから冬の使者、ツルが飛来しその数は毎年10,000羽を超えます。訪れる人々は幸せを託し、ツルは多くの感動を与えてくれます。年が明け水ぬるむ頃になると、ツルは群れをなし別れを惜しむかのように荒崎の田畑の上空を何度も旋回し、北へ飛び立っていきます。永年に渡ってツルを保護してきたことが、飛来地として選ばれておりまさに「鶴の恩返し」のようです。

 出水市では、外国人へのグリーンツーリズムの取組に力を注いでおり、シンガポールや香港の学生の農家民泊が人気です。出水平野には恵まれた田園地帯が広がり、農家も日頃から研修を行うなど受け入れ態勢の充実に努めています。

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 今の時期みかんの収穫体験が人気です。新幹線が停車し博多駅から1時間余り、外国人の誘客には適した地域ではないかと思います。ビザの緩和、円安、免税制度の拡大など外国人の誘客には追い風が吹いています。日本人の国内旅行が伸び悩む中、外国人による交流人口拡大は不可欠となっています。

 出水駅を通る「肥薩おれんじ鉄道」も人気です。特に東シナ海に沈む夕日は圧巻であり、ぜひ乗車して体験していただきたい。また東アジアの観光客に人気の「おれんじ食堂」や「おれんじカフェ」も一度は乗って味わってください。

 また、出水市は全国第2位の鶏卵の生産地です。それを活かした新ご当地グルメ「いずみ親子ステーキごはん」は、2011年2月の発売以来25,000食を超えました。「出水の食」として知名度も上がっています。

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 ところで出水市には、南九州市の知覧、薩摩川内市の入来麓と並んで「国の重要伝統的建造物群保存地域」が残されています。島津氏は、軍備と地方行政の目的から外城制度を設けました。藩内の102の外城でも規模の大きかったのが、出水の麓です。

 碁盤の目のように整然と区切られた道路、玉石を積んだ風格あるたたずまい。風雪を耐えた生け垣や武家門に、武の国薩摩の威厳がただよいます。薩摩の玄関口だけに、時の支配者たちは出水に大きな力をそそぎました。

 地頭仮屋の御仮屋門(現在は出水小学校正門)は、江戸時代初期に島津家17代義弘が、帖佐から移させたものといわれています。いにしえの鼓動が聞こえる、歴史に、文化に、時を越えた浪漫が感じられる地域です。NHKの大河ドラマ「篤姫」の撮影が武家屋敷でも行われました。

 いま、その武家屋敷を活用し、日本の伝統文化を体験できる新たな取組が人気を博しています。それは着物文化との融合です。その概要は下記の通りです。

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 タイトルは、「着物で武家屋敷を歩こう会」、家庭で眠っていた着物と帯に命をあたえませんか!着た着物と帯はお持ち帰り!!です。期日は、平成26年11月30日(日)【小雨決行】で、参加費は1人5,000円(着付料を含む)。持ち帰りができる着物と帯は先着順に選ぶことができます。履物、足袋、長襦袢のレンタル料も含まれています。途中武家屋敷の中で庭園を鑑賞しながら、お茶、お菓子のおもてなし、琴の演奏もあります。




 実行委員会は、鹿児島まちの駅連絡協議会北薩ブロック、出水異文化交流の会、NPO法人さわやか出水女性の集い「さわやか出水来て喜テサロン」で、後援として出水市、出水商工会議所、鶴の町商工会、他NHKや民放各社等12団体が参画しています。

 先日東京で開催されたトラベルマートでPRしたところ外国人にも大好評でした。過去2回の開催では外国人の参加もあり、日本文化にふれる良い機会となっています。

 出水の武家屋敷は、重要伝統的建造物保存群地域というブランド価値が付加されていることから、そのストーリーを語ることでお客様を地域に誘客できます。加えて日本の伝統的文化のひとつである着物で散策し、途中お茶とお菓子の提供、琴の演奏という演出が参加者の満足度を高めます。

 武家屋敷の一角には、地産地消の食事店や大阪の著名なシェフが経営するレストランもあり、観光の後ゆっくり寛げます。帰りに特産品や焼酎等を買っていただければ、地域にとってメリットが享受できます。

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 武家屋敷という観光資源を活用し、今回のイベントが旅行商品になるための要素が整っています。観光客が着物姿で歩き、お茶や琴という日本の伝統文化を体験できることが商品の価値となります。それをメディアに情報提供、発信することで誘客につなげることがプロモーションです。

 家庭に眠る雛人形、こいのぼり、地域の神社・仏閣、伝統芸能等を旅行商品として売り出す際の参考になるのではないでしょうか。

〈参考〉出水市観光パンフレット(発行:出水市産業振興部観光交流課)
「第3回着物で出水武家屋敷を歩こう会」チラシ

 最後に武家屋敷には次の歌が似合います。あなたも着物姿で武家屋敷を散策しませんか。

                   「わたしの城下町」

             作詞:安井かずみ 作曲:平尾昌晃

          格子戸を くぐりぬけ  見上げる 夕焼けの空に
          誰が歌うのか 子守唄  わたしの城下町
          好きだとも いえずに  歩く川のほとり
          行きかう人に なぜか目をふせながら 心は燃えてゆく

          家並が とぎれたら お寺の鐘が聞こえる
          四季の草花が 咲き乱れ わたしの城下町
          橋のたもとに ともる 灯りのように
          ゆらゆらゆれる 初恋のもどかしさ きまずく別れたの

No.332 『第30回国民文化祭・かごしま2015』を御存じですか~各市町村の事前取組が成功への近道~

2014年10月14日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 秋田県で第29回国民文化祭が始まりました。国民文化祭は、各種の文化活動を全国規模で発表、競演する機会を提供することにより、国民への文化活動への参加の機運を高め、新しい芸術文化の創造を促すことを目的に開催されてきました。

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 来年の第30回大会は、鹿児島県で開催されます。鹿児島の国民文化祭の特徴は、県下43全ての市町村で何らかの文化的行事が開催されることです。特に離島での開催は、観光をかねて参加することができ、参加者が増えるのではと期待が膨らみます。

 開催期間は、2015年の10月31日(土)~11月15日(日)までの16日間で、テーマは、「本物。鹿児島県 ~文化維新は黒潮に乗って~」となっています。愛称は、「ひっとべ!かごしま国文祭」で、ロゴマークもすでに発表されており、関心の度合いも少しずつですが浸透しているのではないでしょうか。

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 『本県で国民文化祭を開催する意義として、県民一人ひとりが、企画・運営に主体的に携わり、常に進取の気性に富み、異文化とのふれあいを通じて先人が創り上げてきた誇るべき鹿児島の風土や文化芸術に触れ親しむなかで、我々が「違い」に寛容で、進取と含羞の心を併せ持つ「鹿児島県民」であることへの誇りを共有し、再認識することです。』
―第30回国民文化祭基本構想―

 開催まで1年あまり、県民あげての盛上げが必要であり、各市町村の取組強化が大会の成功を左右します。出演者を増やし、地域の魅力を発信する機会と捉えねばなりません。文化イベントは、スポーツイベントに比べて市民の関心が低く、人を集めることに苦労します。

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 また、国体等代表選手が参加する大会であれば出張経費等の補助がありますが、国民文化祭は趣味を同じにする人たちの発表会の場であり、自費参加が主流となっています。ここに国民文化祭に対する集客の厳しさがあり、各事業の参加者をいかに増やすかが、問われます。 

 そのためには、地域の自然や食、特産品、周辺の観光地などを定期的に関係団体にPRして、行きたくなる開催地としての魅力を情報発進することが重要です。さらに、参加者との交流の機会を設ける等地域ならではの「ふだん着のおもてなし」の醸成が求められます。また、各市町村のトップの理解と担当者の集客に対する意気込みが問われます。

 鹿児島県は南北600キロに及び、言葉、食、祭り、暮らし等独特の文化を育みました。県内には、113の蔵元と2000を超える銘柄がありますが、いろいろな焼酎の飲み方や「なんこ遊び」等は鹿児島ならではの文化です。与論に行くと、与論献奉という独特のおもてなしの手法で接待されます。

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 今、和食が世界無形文化遺産に登録される等、日本文化への関心が高くなっています。県内には多くの外国人が住んでおり、鹿児島の文化の発信者になってもらうことが大切です。海外航空路線は4都市へ、また各市町村は海外の姉妹都市との交流を定期的に進めており、今回の国民文化祭に海外から友人を呼ぶことで、鹿児島の文化を知ってもらういい機会になります。

 2015年、「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」が「世界文化遺産」登録をめざしています。鹿児島市内にある5つの関連施設がイコモスの調査を受けました。登録が実現すると、国民文化祭の開催にも弾みがつき、観光を兼ねて多くの参加者があると期待されます。

 薩摩藩は多くの偉人を輩出し、明治維新の原動力になりました。「郷中教育」や「薩摩藩英国留学生」、「近代化産業遺産群」等の歴史を学ぶことで、薩摩の文化を感じることができます。大会参加者に薩摩の文化を認識してもらえる絶好の機会としなければなりません。

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 今回の大会は離島の市町村も会場となります。大会のスローガンに、「文化維新は黒潮に乗って」の言葉がありますが、鹿児島大会のイメージを象徴しています。県内に28の有人の離島があることは意外と知られていません。大会後に離島を訪れる参加者が多くなるのではないでしょうか。

 また、地域文化の継承には後継者の養成が不可欠であり、子どもやお年寄りのために出演の機会をつくってあげなければなりません。また、地域文化を掘り起こし、学ぶ機会を提供することは郷土愛を育てることになります。

 最後に国民文化祭開催を機に、鹿児島に新しい文化を根付かせるいいチャンスにしなければなりません。機会あるごとに祭典の意義、大会への参画を促すことが求められます。プレイベントや来年の大会を意識した事業プログラムもあり、大会への関心を高める取組が進みつつあります。各県の新聞社やテレビ局が主催している「カルチャーセンター」へのPRも誘因効果をもたらします。出演団体が増えることで人が集まり交流の機会ができることは、地域の活性化に繋がります。

 第30回国民文化祭の成功に向けて、県民一人ひとりが参画意識を持って、おもてなしのこころで迎えたいものです。

       妹の小さき歩み いそがせて
             千代紙(ちよがみ)買いに 行く月夜かな
                                      ~木下利玄~

No.331 個人旅行と外国人受入態勢の確立を~旅行形態の変化にいかに対応するか~

2014年10月6日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

        名も知らぬ山のふもと邊(べ)過(よ)ぎむとし
                        秋草のはなを摘みめぐるかな
                                       若山牧水

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 10月に入り北海道では紅葉が盛りとなり、阿寒湖、摩周湖の周辺では国道沿いの木々が赤、黄色の鮮やかなトンネルとなり、観光客がしばし車を止めて撮影する姿が見られます。道東では10日のマリモ祭りが終わると冬支度の準備です。紅葉はこれから十和田湖、八幡平、奥日光と南下し、京都が美しい紅葉に包まれるのは例年11月の中旬頃です。特に洛北の紅葉は必見の価値があります。

 県内で近年話題となっている垂水の「千本イチョウ」は11月下旬から12月上旬までで見られます。紅葉情報に注意しながら、ぜひ平日にお尋ねください。ライトアップもなされる夜のイチョウ園の景観も見事です。 

 ところで県内を訪れる観光客の宿泊動向を見ると、全体の70%がグループ、個人客となっており団体旅行が減少していることがあげられます。かつて宴会を伴った団体の招待旅行や報奨旅行が激減し、また、金融機関が実施していた積立旅行や簡保旅行も見られなくなりました。

 国民生活も豊かになり、日々生活する中で近隣の温泉に出かけたり、各地域の料理等を味わう機会も増え、団体旅行で出かける必要性も少なくなっているのではないでしょうか。今では修学旅行が数少ない大型団体です。鹿児島県では九州新幹線全線開業を好機と捉え、誘致に力を注いでいます。

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 先日会った霧島温泉のある支配人の話によると、最近は卒業の周年旅行や還暦同窓会等が増えており、昔の絆を大切にする世代がそれを支えています。ホテルでは、専任の担当者を配置し、記念旅行の盛り上げを図っているということです。時代の変化を読み取り、それにいかに態勢を整えるかが大切です。

 ところで日本旅館は従来の1泊2食だけでなく、1泊朝食や素泊まりも受入れている施設もあり、伝統的日本の文化をいかに守っていくかが問われています。鹿児島に来る観光客は、2泊3日が主流ですが、1泊は温泉地、2泊目は鹿児島市内のシティホテルというコースが人気であり、2日目は街にでて、夜は地元料理を食べるという観光客もいます。鹿児島中央駅前にある「ふるさとかごっま屋台村」に行くと、そのような旅人によく出会います。

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 一方ビジネスホテルでは、じゃらんや楽天など場貸しサイトに部屋を提供し販売するシステムを導入している施設もあります。全国展開しているホテルが、資金力を武器に安売り攻勢をかけています。特に地元資本のホテルは厳しく、地域ならではの「おもてなし」やサービスの提供が勝ち残り戦略の一つです。

 日本の国内旅行は成熟し、個人旅行も多様化しています。温泉地域の施設では、バブル時代に造った大きな部屋は効率が悪くなっており、小部屋に分割し、露天風呂付きの部屋やレストランの席数を増やすなど個人旅行に対応できる仕組みづくりが求められます。

 また、翌日宿泊客が半日程度でも滞在できるメニューや地域の魅力づくりが必要であり、第一次・二次産業をもっと商品企画に活かすべきです。グリーンツーリズム、ブルーツーリズム、ものづくり、産業遺産、伝統工芸、食品、祭り、伝統行事、蔵元ツーリズム等です。従業員自ら地域を回り、地域の観光資源を宿泊者にPRできることが、連泊やリピーターの創造に繋がります。 

 一方地域は、人口が急激に減少していくことから交流人口の拡大も不可欠です。現在訪れている観光客が、地域にどの程度の経済効果をもたらしているか、データの分析が必要です。県内でもいくつかの市町村が日帰り観光バスを運行して、誘客に努めています。

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 集客できている要因はバス料金が安価であることも大きな理由ですが、参加者がどの程度地域で買物をし、リピーター化に繋がっているか、地域の活性化の視点で定期的に分析する必要があります。いつまでも税金を投入するだけでは、議会や住民の理解は得られません。きちんと経済効果の分析や参加者の声を、今後の街づくりに活かすことが大切ではないかと思います。

 また、今後は外国人の受入態勢づくりが不可欠です。2013年訪日外国人が1千万人を超え、これからも東アジアを中心に増加することは確実です。最近鹿児島市内で、ガイドブックを持った台湾や香港、韓国のグループに良く出会います。クルーズ船が入港すると欧米系の方は、夫婦で電車やシティビューで市内見学をしています。

 現在の受け入れ状況は、宿泊代や食事代が安く、必ずしも受入サイドにメリットばかりではありません。適正な価格設定が重要であり、地域間、関係機関の連携も大切になっています。

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 「ななつ星in九州」の乗客は富裕層が多く、鹿児島が誇る高級食材や、伝統的工芸品のPRも欠かせません。10月1日から免税品が全品目に適用され、免税店の設置も地域には必要になっています。


 最後に、和食がユネスコの世界無形文化遺産に登録され、日本に興味を持つ外国人が増えています。この素晴らしい文化を国内外の人にPRする方策の一つが観光振興です。外国人観光客を鹿児島に根付かせることが地域を元気にすることと信じてやみません。

No.330 免税店の設置で県産品の販売拡大を~外国人旅行者向け消費税免税制度の変更を活かそう~

2014年9月29日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 2013年の訪日外国人旅行者数は、1036万人で悲願の1千万人を達成しました。全体の76.7%がアジアからの旅行者です。国別では、韓国、台湾、中国、香港、タイの順となっています。8月は22.4%増の111万人で、1月からの累計は25.8%増の863万8千人となり好調を維持しています。

 訪日客が伸びている要因として、ビザの緩和、円安、LCCの就航、和食の世界無形文化遺産登録による日本ブーム、東日本大震災から3年半が経過していること等があげられます。このまま推移すると、年間では1200万人程度となり、2020年の2000万人達成も現実味を帯びてきました。

 鹿児島県の2013年の訪日外国人の宿泊者数は21万人余りで、26.3%増となっています。台湾、香港が大きく伸び、韓国や中国からは竹島や尖閣諸島問題もあり減少しました。

 2014年は、台湾、香港が引き続き順調で、中国は回復基調で、韓国は旅客船沈没事故等の影響もあり減少傾向でしたが、冬場のゴルフ客等の回復が期待できます。7月の観光動向調査によると、宿泊客は15.5%増の12,158人となっています。このまま推移すると、今年は過去最高の外国人宿泊者数になるのではと想定しています。

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 ところで、外国人旅行者向け消費税免税制度について、今年の10月1日から、消耗品(食品・飲料、化粧品、薬品等)が新たに免税対象となり、全品目が免税対象となります。

 これにより各地の銘菓、酒、米、調味料、薬、伝統工芸品といった地域ならではの特産品も免税販売が可能となることから、訪日外国人の旅行消費を促し、地域経済の活性化とリピーターの創出に繋がるものと思います。対象品目の拡大に加えて、手続きも簡素化されます。

 今回の制度改正を鹿児島においても最大に活かす取組が求められます。国では2020年の東京オリンピックに向け、全国各地の免税店を10,000店規模へ倍増させることを目標に、さらなる免税手続きの利便性の向上等に取り組むこととしています。

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 県内には現在14店舗の免税取扱店がありますが、デパート、量販店、電気店等に限られており、今後取扱店舗の拡大が求められます。これから免税店設置を申請するにあたっては、態勢づくりも求められます。外国語表記、中国語や英語を話せるスタッフの養成や異文化への理解、Wi-Fiの設置等が不可欠です。

 現在免税店を扱う店舗は、鹿児島市内に集中しています。今後の免税店設置については、貸切バスが駐車できる郊外の大型店、道の駅、土産品を置いている食事店、散策中に立ち寄れる中心市街地、宿泊者に便利なホテル等が、適しているのではないでしょうか。

 先日上海の有力企業グループの幹部と会う機会がありました。グループ内に旅行部門を持ち、今年はすでに長崎県を中心に、九州へ1200人の訪日客を取り扱っています。幹部によると、今後九州に送客しやすい要件の一つとして、多種品目を扱う免税店が身近な場所にあることが不可欠と語っていました。

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 上海の人々が今日本に行って買いたいものは、安全安心の食材が一番である。電気製品やデジカメはすでに大衆に普及しているとのことでした。富裕層も増加し健康・長寿に関心があり、日本の美味しいブランド米、調味料、粉ミルク、薬品、化粧品等に人気があると言っていました。

 米は日本より4倍も高く、宿泊先で食べた美味しい米を手に入れたいという旅行者のニーズが高くなっていると語っていました。また赤ちゃんがいる世帯や老人層は、粉ミルクや薬品等を重宝しています。自国の製品より日本産のブランドを信用している姿が感じられます。

 このように中国からの観光客は、行程の中で生活用品が買える免税店への立ち寄りを望んでいます。人口や経済発展を考えると、鹿児島への訪日客は、今後上海からが一番伸びるのではと考えています。その意味でも上海線の利用促進を図りたいものです。

 また、福岡空港からの入国者が鹿児島を観光し、最後にショッピングを楽しみ、鹿児島空港から出国し易い環境を整えることが経済効果をもたらします。そのためには新幹線の片道切符の大幅な割引をすべく、JR九州との交渉も求められます。

 今回全品目に消費税免税制度が拡大されたことで、県産品の販売拡大を図ることで、地域の活性化につなげねばなりません。食料品では、早場米、醤油・味噌、黒酢、調味料、干物、黒砂糖、郷土銘菓、焼酎、水、薬品、健康補助食品等、又富裕層は、ガラス工芸品、薩摩焼、屋久杉製品、薩摩錫器等にも関心を持つのではないでしょうか。

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 鹿児島を訪れた外国人が、「免税店シンボルマーク」に気づいて来店したら、気軽に応対できる店を増やして行く必要があります。訪れた地域に免税店がなければ、購買のチャンスを逸し、2度と鹿児島を訪問する機会を絶ってしまいます。


 日本の人口は確実に減少して行くことから、観光交流人口増大による地域活性化は不可欠です。観光庁の資料によると、定住人口1人減少分を外国人観光客11人でカバーできると試算しています。

 県内各地域に、外国人がゆっくりショッピングできる免税店を増やすことが、外国人誘客の一つになるのではないでしょうか。

No.329 第7回かごしま観光人材育成塾」の開催について~まちづくり・観光地づくりに求められるものとは~

2014年9月22日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 天候不順が続いた今年の夏も終わり、朝夕の涼しさに秋の気配が濃くなり、えびの高原ではススキの穂が色づき始めています。九州新幹線全線開業から3年半が経過し、開業効果が一段落しているものの、週末の観光地は多くの観光客で賑わっています。

 鹿児島市内の食の有名店には、ガイドブックを持った若者たちが列をなし、修学旅行生は、天文館のかき氷店で「白くま」を食べている姿が印象的です。そのまちに観光客の姿を見れば、元気さがわかるような気がします。

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 ところで、九州新幹線全線開業後二次交通の整備や新たな地域づくり、情報発信が功を奏し、従来通過地点であった地域に観光客が訪れるなど変化が起きています。一方では個人旅行が主流となった今、それに十分対応できなくなった施設が厳しい状況におかれる可能性があります。

 今年も、これからの地域づくりや情報発信を担う人材育成を目指し、「第7回かごしま人材育成塾」を開催します。地域づくりやおもてなし、情報発信、地域資源を活用した特産品等の開発、よそものから見た地域おこし等、鹿児島が今後取り組むべき課題について学ぶ6つの講座を開催します。

 講師と講座の内容について簡単に紹介します。

 第1講座は、県観光交流局の倉野観光課長が、「観光かごしまの現状」について講演します。県が毎年取組んでいる「魅力ある観光地づくり事業」の現況や今後の重点課題の一つである「プロスポーツの振興」等についての講座です。プロスポーツについては、「キャンプ誘致」や6年後の東京オリンピック、国体の開催をにらんだ戦略の一端が語られるのではと楽しみです。

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 第2講座は、「株式会社まちづくり計画研究所 代表取締役 今泉重敏」さんによる【まちづくり仕掛けのハウツー】です。今泉さんは、かつて福岡県久山町の職員を10年間経験された後独立され、今では九州における地域づくり、まちづくりの"のぼせもん"仲間のネットワークの代表世話人として活躍されています。


 首長、議員、地域づくりリーダー、女性団体等の、約1万人の人的ネットワークを持つ、笑顔のバイタリティあふれるまちづくりコーディネーターです。自治体の総合計画、観光ビジョン、中心市街地の活性化計画、過疎地活性化計画、小学校単位のまちづくり協議会等の将来ビジョンの策定等、これまで150以上のプランを策定した経験の持ち主です。自治体の多くの職員の皆さまに聞いていただきたい講義です。

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 第3講座は、「第30回国民文化祭におけるおもてなし」です。来年10月31日~11月15日まで開催されるこの大会は、日本における文化の最大の祭典です。県内全ての市町村文化行事が開催されることから、県全体としておもてなしのレベルアップが求められます。


 講師の中村朋美さんは、地元メディアの元アナウンサーとして活躍され、温泉、焼酎、美術・工芸、食等にも造詣が深く、常にお客様の視点で語りかける姿勢は、誰もが信頼を寄せています。社会貢献活動にも積極的に取り組まれています。「おもてなしの極意」や鹿児島の新たな観光の在り方について示唆に富んだ話が聞けるのではと思います。

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 第4講座は、日本一の鰹節の産地である枕崎市で、新たな食文化に取り組む中原水産株式会社常務の中原晋司氏による【出汁(だし)による地域活性化】です。日本食がユネスコの世界無形文化遺産に登録され、日本の伝統的食材が脚光を浴びています。



 枕崎の漁師が船上で食べる丼飯からヒントを得た「枕崎鰹船人めし」は、県内の地域グルメのNO1を決める「Show 1グランプリ」で2年連続1位に選ばれました。中原常務は、特産の鰹節で街を活性化したいと出汁の魅力を日々PRし、新商品開発にも取り組むとともに、海外での営業活動も始めています。枕崎を「出汁のふるさと」としたいと言う大きな夢が語られると思います。食の関係者にぜひ聞いてもらいたいテーマです。

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 第5講座は、株式会社 トラベルジップ代表取締役 大泉敏郎氏による【観光業界・観光客のトレンドとWebサイト活用方法】です。現在県・連盟のホームページについて、ご指導いただいているのが大泉氏です。大泉氏の指導・助言により連盟のホームページへのアクセス回数は飛躍的に伸びています。


 顧客が求める情報はどこにあるのか、また見たくなるホームページのあり方について、革新的な提案がなされるものと思います。各自治体で広報や観光宣伝を担っている人の最適な講座と思います。是非参加ください。

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 最後の第6講座は、薩摩川内市の甑島で「地域おこし協力隊」として活躍されている関美穂子さんによる、【「ヨソの目」が地域に入ることって?~地域おこし協力隊の事例紹介~】です。地域おこし協力隊とは簡単に述べると、「都会の若者を地方に呼んで、地域活動をしてもらいながら地域力を維持強化していきましょう」、という事業で総務省の人材活性化・連携交流室の事業の一つです。

 関さんは大学卒業後、エージェントで海外旅行のツアー企画造成、予約や担当され旅行業務には精通してこられました。日頃から地域が主体の着地型観光に興味を持っており、薩摩川内市が公募していることを知り、採用された一人です。現在下甑島に暮らしながら、特産品開発や旅行商品の企画等に取り組んでいます。

 よそものの視点で捉えた甑島の魅力をどのようにして商品化し、PRして販売していくのかそのサクセススト-リーが聞けるのではないかと思います。甑島には、水戸岡鋭治氏設計による、観光高速船が就航し話題の島となっています。島の魅力とともに彼女の活躍ぶりに拍手を送りたいと思います。

 今回から、講座の選択も可能となりました。どの講師の方々も豊富な経験を持ち、それに裏打ちされた講演は、皆さんの活動に必ず役立つと信じます。また、夜学塾は、参加者同志や講師陣とのコミュニケーションの場であり、講座で聞けないより具体的な話が聞けると思います。

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 地域づくり・観光地づくりには、まず人材の育成が重要と考えています。今まで人材育成塾を受講した方の多くが、それぞれの地域で頑張っていることは、鹿児島の観光にとって大きな財産となっており、7回連続で受講を申し込んでいる方もいらっしゃいます。

 九州新幹線全線開業から3年半、転換期をむかえている鹿児島の観光です。この講座が人材育成とさらなる地域活性化につながることを期待し、多くの受講者が参加されることを期待します。

プロフィール

奈良迫プロデューサー
鹿児島県
観光プロデューサー
奈良迫 英光
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