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No.445 相手によい印象をもたらす言葉~感謝・感動を育む環境づくり~

2017年1月23日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


     生命(いのち)噴く 季(とき)の木草の ささやきを
     聞きて眠りあう 野の仏たち
                              ~生方たつゑ~


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 暖かさが続くと草花が芽をだし、冬の眠りから解放されたように日々伸びていきます。周辺の野山が美しいことで知られる信州安曇野や京都嵯峨野の道沿いには石仏が多くあり、通りすがりの観光客が自然と手を合わせる光景が見られます。この時期になると、よく歌われるのが「春よ、来い」です。

    作詞:松任谷由美 作曲:松任谷由美

    淡き光立つ俄雨、いとし面影の沈丁花 溢るる涙の蕾から
    ひとつ ひとつ香り始める それは それは 空を越えて
    やがて やがて 迎えに来る
    春よ 遠き春よ 瞼閉じればそこに
    愛をくれし君の なつかしき声がする


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 北国からは厳しい寒さの便りが届きますが、鹿児島では菜の花が咲き、ツルの北帰行も間もなく始まり、春はそこまで来ています。
 プロ野球のキャンプインまで10日です。今年もキャンプ見学を兼ねて全国から南九州に多くの観光客が来てくれることを願っています。


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 ところで、初めて訪れた地で観光客がよく利用する乗り物がタクシーや観光バスです。案内所の対応や運転手の観光客への対応が街の第一印象となります。
 先日急用があり、鹿児島中央駅までタクシーを利用しました。乗車したあと運転手さんが発した「中央駅ですか」という言葉に違和感を覚えました。行先を確認するために言った言葉ですが、近距離であったために運転手は機嫌が悪く、こちらも少々不愉快に感じました。
 行先を確認するのであれば「中央駅ですね」という言葉が返ってくれば、客は気持ちが和らぎます。乗った本人は近距離で申し訳ない気持ちがあるのに、運転手の一言が車中の雰囲気をいっそう悪くします。
 一方では、近距離ですみませんと言うと「5分間で620円稼げるのはありがたいことです。いつでも利用してください」と、逆に感謝の言葉を述べる運転手がいる会社もあります。


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 また、全国を旅していると「本日は当社のバス(電車等)をご利用いただきありがとうございます。」というアナウンス流れる会社があります。「本日も当社のバスをご利用いただきありがとうございます」という挨拶があると、初めて利用するのに何回も乗車している印象を受け、優越感を覚えます。
 航空会社は、各社とも「本日も○○をご利用いただきありがとうございます。」というアナウンスがあります。


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 「か」と「ね」、「は」と「も」の使い方次第で利用者が受け取る印象は随分違います。たかが一字ですが、お客様が心地良い感じで受け取ります。
 今まで各種団体の「おもてなし研修」を実施して、「挨拶」、「笑顔」、「丁寧さ」などの大切さを訴えてきました。あらためて一つの言葉の大切さをかみしめたいものです。


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 ところで、宿泊施設では送迎ということを大切にしており、お迎えの時より送る時により気を遣っておられます。あるホテルで社長さんから直接聞いた感動の話を紹介します。 ある夫婦が宿泊先に決めていないけど部屋の下見をさせてくださいと来店され、メイドさんが丁寧にお部屋を案内しました。
 その間ご夫婦が脱いだ履物は綺麗に磨いて並べて置き、いつでも履けるように準備をしました。お客さんは別に部屋に不満があったわけではないですが、他のホテルも見たいと言って帰られ、従業員は宿泊した際のお客様と同じように手を振って車をお送りしました。


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 ところが数分すると夫婦の車が引き返してきて、やはり泊めてくださいとお願いされたとのこと。後で予約された理由を伺ったところ、車内から後ろを振り返ると予約もしていないのに見えなくなるまで手を振ってくれており、夫婦はその姿に感動し、このホテルなら間違いはないだろうと宿泊先に決めたとのことです。実際に宿泊されたとき、きめ細かなサービスに感激し、その後ずっとそのホテルのファンになっているとのことです。


 家庭でも良く経験することです。家に不意の客が来て、しかも長居されて夜更けに客が帰ることがあります。
 客が帰った後玄関の電気をすぐ消してしまうことが普通ではないかと思います。客にとってはすぐに玄関の電球が消えると、長居したことの後ろめたさとともに、自分は招かざる客ではなかったかと寂しい思いで帰ると思います。


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 マンションの知人を訪ねた後、階下に降りて道路に出て曲がり角で訪問先を振り返ることがよくあります。その際玄関に灯りがついているとほっとします。
 訪問客を玄関から道路に出て見送り、歩き出して客が見えなくなってから帰路の無事を祈って頭を下げ、家の中に入り灯りを消すぐらいの配慮ができる人になりたいものです。


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 松下電器(現在名はパナソニック)の創業者である松下幸之助の経験談です。
「苦しかった時代に来店されたお客様に、電気製品を一生懸命説明したら、買ってくれた。そうしたら、心も手も震えてな。その時のお客さんの顔は今でも覚えとる。お客さんが店を出ていく時、後ろ姿に思わず手をあわせたな」という話をよくしていました。
 この時の「ありがたい」という強烈な気持ちが、松下幸之助の商売の原点ではないかと思います。
参考:『ひとことの力―松下幸之助のことば』(江口克彦著、東洋経済新聞社)

 我々も日々の生活の中で、「後ろ姿に感謝する」心がけが大切です。
真のおもてなしの心の実践は「日々のディテールに宿る」のではないでしょうか。


No.444 西郷隆盛ゆかりの地を訪ねて~多くの歴史伝説と美しい自然が広がる龍郷町~

2017年1月16日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


        菜の花や 月は東に 日は西に
                     ~与謝蕪村~


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 温かい陽気に恵まれ、14,118人が駆け抜けた「第36回いぶすき菜の花マラソン大会」が無事終わりました。
 1月21日、22日に開催される「第25回いぶすき菜の花マーチ」は韓国からの参加者を含めて、1万人を超えるウォーカーが開聞山麓、魚見岳周辺を歩きます。指宿路は沿線が菜の花の黄色いじゅうたんとなり、春の訪れが近いことを知らせてくれます。


 ところで、2018年NHK大河ドラマは「西郷どん」に決定し、県内での本格的な撮影がスタートします。
 ドラマの原作は林真理子、脚本は中園ミホさんと今話題の女性が担当します。女性の視点で西郷隆盛がどのように描かれるのか今から楽しみです。昭和40年代の始めに起きた若い女性の「奄美ブーム」の再来を期待したい。


 西郷隆盛は生涯3度奄美群島での生活を強いられ、最初に住んだのが奄美大島本島に位置する今の龍郷町です。
 安政の大獄が起こり西郷隆盛へも捕縛命令が出されますが、薩摩藩は幕府の目を逃れさせる処置として、安政6年(1859年)年六石の扶持付きで奄美大島行きを命じました。
 島では農民たちの窮状に心を痛め、自分の扶持米を分け与え、また、役人と交渉し過酷な生活を和らげるなどの努力を積み重ねました。
 また、子ども達に読み書きを教え、島民との交流を深めています。次第に地域の人々に慕われるようになり、龍郷一の名家である龍家の一族の娘である愛加那さんと結婚しています。龍郷で2児が生まれ長男菊次郎は、後に台湾宜蘭庁長や京都市長を務めています。西郷隆盛は龍郷で3年暮らしますが、時代は西郷を必要としており薩摩に戻されることになるのです。


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 ゆかりの地として「西郷南洲謫居跡」があります。謫居跡では、ゆかりの品や西郷の手植えした桜、勝海舟から送られた碑文があり、子孫の方が丁寧な説明をしてくれます。また、近くには龍郷へ到着した際、その船のとも綱を結んだ松(西郷松といわれる)がありましたが、立ち枯れとなり平成23年に伐採されました。現在根元からは幼木が育っており、西郷の精神を引き継いでいるかのように感じられます。


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 西郷隆盛が住んでいた龍郷町の魅力に触れたいと思います。
 龍郷町は、奄美大島の東部に位置し東側は旧笠利町、西側は旧名瀬市であり、奄美空港まで20分、奄美市の中心街まで30分と交通の便利な位置にあります。島外からの移住者やUターンが目立ち、県内でも若者の人口減少が少ない町の一つです。若者が定住できるのは、ペンションやプチホテルの経営、マリンスポーツのガイド等がそれを可能にしています。手広海岸はサーフィンの聖地としてもっとPRが必要です。


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 秋名地区のアラセツ行事である「ショチョガマ・平瀬まんかい」の祭りは、国の重要無形文化財に指定されています。
 旧暦8月の最初の丙(ひのえ)の日のアラセツ(新節)に行われる「ショチョガマ」の祭りは、夜が明けかかる頃から始まり豊年を祈る祭りです。
「平瀬マンカイ」は夕方の満潮に合わせて祭りを行いますが、海の彼方(ネリヤ)の神々への祈願です。礼拝で祭りが終了すると、浜に下りて八月踊りを行います。
 2つの祭りは、同日の早朝と夕方に行われることから、秋名地区の集落は一日中祭り一色となります。是非見学して欲しい祭りです。


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 空港から20分のところにある「大島紬村」は、ハイビスカスやブーゲンビリアなどの美しい花や自然に囲まれ、大島紬ができるまでの行程を見学・体験ができ、試着ができることも魅力のひとつです。観光客にぜひお勧めしたいスポットの一つです。


 円集落の県道にある「かがんばなトンネル」に入る夕陽は格別です。春分前と秋分後の数日間、トンネルに夕陽がすっぽりと入ることが解り、時期が来ると多くの人がカメラを据えてその瞬間を狙っています。今では町の名所のひとつになっています。 


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 島の特産である「黒糖焼酎」の工場が3か所あり、黒糖を主原料に作られた風味豊かな香りは、旅人のおみやげとして重宝がられています。今、黒糖焼酎は奄美の人の長寿と関連する研究成果が発表され、話題となっています。見学コースとしても組み入れやすい場所にあります。
 郷土料理としては、「鶏飯」が有名です。皆さんもぜひご賞味ください。


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 1963年にヒットした「島のブルース」と言う曲をご存じの方は多いと思います。この曲を作曲した渡久地政信氏は、沖縄で生まれて龍郷町で育っています。奄美出身者の心の愛唱歌として唄い踊り継がれています。その歌碑が、龍郷町の美しい海を眺める海岸の丘に建立されており、ボタンを押すと歌が流れ、島の人々が今にも踊り出すような雰囲気を醸し出しています。


 昨年11月、奄美大島本島の1市2町2村が一つとなって、「あまみ大島観光物産連盟」というDMOが設立されました。広報・宣伝・商品販売が強化されるのに伴い、西郷隆盛が愛加那さんと暮らした場所として、龍郷町の魅力が全国にPRされることを期待します。


 西郷隆盛は薩摩に戻った後藩主と対立し、徳之島、さらに沖永良部への遠島を命ぜられ厳しい島での生活を余儀なくされます。
 しかし、島の人々に与えた教育や文化面の影響は大きく、又。西郷自身の人格形成にも大きな影響をもたらしたのではないでしょうか。
 今年は奄美群島の国立公園化が予定され、2018年度中には奄美と徳之島の一部が世界自然遺産登録を目指しています。


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 また、3月26日より関西空港から奄美空港行きのLCCの就航が決定し、加えて島は大河ドラマ放映で大きな転換期を迎えます。西郷隆盛のストーリー性が話題となることで、今まであまり知られていなかった奄美の魅力がメディア等で発信され、誘客につながり持続できる観光地になることを期待しています。
 『参考』龍郷町町勢要覧:龍郷町ホームページ


       はてもなく 菜の花続く 宵月夜
               母が生まれし 国美しき
                       ~与謝野晶子~


No.443 2017年を足固めに次の3年に繋げる取組を~厳しい年を地域総力戦で戦う気概を~

2017年1月10日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


          あらたまの 年の若水 くむ今朝は
          そぞろにものの 嬉しかりけり
                       ~樋口一葉~


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 明けましておめでとうございます。年末年始は休日が少なく、あわただしく1年が始まった感じです。
 2017年の干支は丁酉(ひのととり)で、動物で言えば酉年です。酉のつく年は商売繁盛に繋がると考えられてきました。酉(とり)は「取り込む」に繋がると言われ、そこから運気もお客を取り込めるということです。
 また、酉の由来について「果実が極限まで熟した状態」のことで、そのことから「物事が頂点まで極まった状態にある」のが酉年と言われています。


 ところで、今年のかごしまの観光を取り巻く環境は、大型イベントや周年行事も少なく大変厳しいと捉えています。酉が飛び跳ねるごとくフットワークを持ち、例年以上に活動することが誘客に繋がるものと思います。


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 今年の見通しや課題について整理したいと思います。
 国内旅行を展望すると、宿泊施設や貸切バスの予約状況が例年ほどの勢いがありません。
 特に第1四半期の1月~3月は厳しい経済環境に置かれています。各地のマラソン大会やウオーキング大会等イベントへの誘客を図らねばなりません。
 第2四半期の4月~6月は、昨年4月の熊本地震の落ち込みを考慮すると、前年を超えるものと思われます。風評被害が残る鹿児島の観光ですが、「元気です!かごしま」(仮称)などのキャンペーンの推進が必要ではないでしょうか。修学旅行は昨年より若干戻りますが、2019年以降へ繋げる取組をしなければなりません。
 第3四半期の7月~9月は、昨年最大50%の割引のある「九州ふっこう割」が適用されたこともあり、その反動等で厳しさが予測されます。
 第4四半期は、大河ドラマ「西郷どん」の話題が浸透していき、回復してくると期待しています。
 年間を通して浮き沈みのある1年になるのではないかと捉えており、各種キャンペーンの推進や大河ドラマ「西郷どん」の事前PRを展開し、誘客に努めねばなりません。


 インバウンドについては引き続き好調に推移するものと思われます。香港線が2月5日から週10便体制となります。福岡空港は16便で、両空港を繋ぐコース設定が容易となり相互にメリットが発揮できます。北部九州からの外国人の誘客には、新幹線の博多発割安企画乗車券の導入が不可欠です。現在展開している「JR九州レールパス」を活用した割引商品の完売を図ることが、次の展開に繋がります。


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 昨年の訪日客数は2400万人余りで122%の伸びとなり、県内の外国人宿泊者数も過去最高となる見込みです。円安基調や増便効果で、今年も堅調に推移するものと思われます。
 かごしまの伝統文化や食、温泉、美しい四季の自然美などを組み込み、体験型の商品企画が外国人の心を捉えます。
 個人旅行が主流となり、成熟した訪日市場と成りつつある香港、台湾、韓国等へは波及効果が高い個人情報サイトを活用することが求められます。


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 クルーズ船は昨年以上の寄港が予測されますが、バスの確保と経済効果をもたらすコース設定が欠かせません。
 国交省では今ランドオペレーターの法整備に取り組んでおり、法令に基づいた適正な手配が重要になっています。そのことが来訪者や受入機関にとって、鹿児島の魅力を提供でき双方にメリットがあるものと思います。
 船数増にこだわらず、旅行内容の質を求めることが重要になってきたと感じます。


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 地域別では奄美群島が注目を浴びます。今、成田からのLCCの就航や航空運賃の軽減化が図られて、関東圏からの観光客が伸びています。今年は奄美群島の国立公園化が予定されており、さらなる群島全体の魅力創出が求められます。
 また関西空港から奄美へのLCCの就航も早く実現したいものです。手つかずの美しい自然や食、島唄、祭り等生活・文化を前面に出した商品戦略が沖縄との差別化になります。


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 龍郷町は西郷隆盛ゆかりの地であり、大河ドラマ放映前にブームを起こしたいものです。
 また、2018年の世界自然遺産登録に向けて、島民の意識向上とエコガイドの養成、個人旅行増加に対応すべく、レンタカーの利便性確保、案内標識など沿線の景観整備、泊食分離に対応できる受け入れ態勢の充実が急がれます。


 屋久島へはジェット機就航による大都市圏から時間短縮効果が割高感を払しょくでき、世界自然遺産の島へ誘客を容易にします。将来的には2つの世界自然遺産をつなぐ商品も可能になるのではないでしょうか。


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 指宿は、プロが選ぶ「第30回にっぽん温泉100選(2016年)」で、第3位にランクされました。リーズナブルな宿泊料金、天然砂蒸し温泉の魅力、おもてなし等受け入れ態勢の充実、鹿児島中央駅からのアクセスの良さ等が評価されています。
 しかし人気度や「指宿のたまて箱」の乗車率が高いのに宿泊客が伸びていません。直売店、小物店、おしゃれなカフェ、週末の歩行者天国、花やフルーツの収穫体験等滞在しても飽きない地域づくりが急がれます。


 4月から指宿港と対岸の根占港を20分で結ぶ海上タクシーが運行されます。大隅地域を翌日の行程に組みこんだ企画が宿泊に繋がります。
 指宿港から種子島、屋久島に行く航路の存在を、エージェントの社員でも知らない人が多いのに驚きます。認知度を高める努力が必要です。


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 大隅地域は佐多岬の整備が2018年に終わり、「さんふらわあ」の新造船も就航することから認知度を高める取組が必要です。
 昨年12月20日、肝付町の内之浦宇宙空間観測所から「イプシロン2号」が打ち上げられ、日本各地から見学者が訪れました。
 大隅半島の不便な場所にありながら、本土でロケットの発射を直接見ることができるという貴重な体験が、多くのバスツアーを呼び込みました。展望所では地域の食や特産品を販売するなど経済効果をもたらす取組を行い見学者を歓迎しました。
 これからの地域活性化の参考となります。「エアメモリアルin鹿屋」、「かのやばら祭り」、「お釈迦祭り」等イベントの実施に当たっては、第一次産業との連携が特に重要ではないでしょうか。


 霧島温泉は泉質に恵まれ多くの温泉ファンが訪れます。えびの高原をもっと活用して滞在客を増やして欲しい。


 出水の武家屋敷を着物で巡るツアーや鹿児島市内での寿司握り体験、甑島のブルーツーリズムも人気を博しています。お客様が「体験価値」を味わうことが、「感動消費」に繋がります。


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 ところで、2018年NHK大河ドラマは「西郷どん」に決まり、ポスターやパンフ等を大都市圏の店頭に早めに掲示することで、誘客に弾みが付きます。
 また、キャリアやエージェントの女性社員の招聘事業も早めに実施すべきです。ドラマの原作者と脚本家は今をときめく二人の女性です。女性の視点で鹿児島への商品企画を展開しなければならない1年となります。


 放映前に鹿児島への誘客を図ることで、「薩摩の先見性を知ることができ、あらためて鹿児島の凄さを知った。放映の来年もまた来たい」「日本に鹿児島県があってよかった。」と心に残る「感動」と「感激」を与え、リピーターを創造することが何よりも重要です。


 今年を足固めの年と位置付け、様々な仕掛が必要であり、そのことで来るべき明治維新150年周年や、3年先までの見通しが描けるのではないでしょうか。需要を先取りして、再販に繋げる取組が今年は問われます。地域総力戦で取り組む覚悟が必要です。


 最後に今年のキーワードは、「離島」、「インバウンド」、「女性を動かす商品企画」と感じます。2017年が皆様にとって素晴らしい年になりますよう心からお祈りいたします。


         新しき 年の初めは 弥年(いやとし)
         雪踏み平し 常かくにもが
                        大伴家持 ~万葉集~


No.442 2016年を振り返る~災害後の情報発信と商品企画の在り方に工夫を~

2016年12月26日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


 今年も残り1週間、熊本地震の大きな揺れがまだ記憶に新しい所ですが、被災地では確実に復興に向けて強く歩みだしています。
 阿蘇地域の道路や鉄道の復旧はまだですが、主要幹線道路は開通し、通常の生活に戻っています。ここ数年日本列島の各地で起きた災害を見ると、今後どこでも起きる可能性があると日頃から備えの心が必要です。


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 ところで、年初から今年の鹿児島の観光は厳しいと言ってきましたが、1年を簡単に振り帰ってみたいと思います。県の観光動向調査[抜粋]によると、宿泊客は1月~2月は前年を超え、3月~6月は前年割れで、特に4月~6月が地震の影響で大きな落ち込みとなりました。7月から「九州ふっこう割」が導入され7月~9月は前年を超え、10月から再び前年割れとなっています。その中で外国人は4月~6月を除いて前年を超えており、過去最高の宿泊客になるものと推測されます。


 特に香港線にLCCの香港エクスプレス航空が就航し、新たな需要開拓につながっているのではないでしょうか。来年2月からはさらに週1便増便され、香港だけでも10便体制となります。香港エクスプレスは福岡空港に週16便就航し、両空港を繋ぐ観光ルート設定が可能となり相乗効果が発揮されます。


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 クルーズ船のマリンポートへの寄港は過去最高の83回(1月~12月)となり、そのうち62回が中国の港の発着となっています。従来のような郊外の量販店での爆買いは減少しましたが、市内中心部にバスでショッピングに訪れる客が増加し、バス駐車場確保が新たな課題となっています。これからは個人旅行客が増加し、自分でスケジュールを立て、レンタカーなどで県内を巡る外国人が増加するものと思われます。
 背景には、ビザ取得要件の緩和、免税品目の拡大、日本文化へのあこがれ、中国人の所得水準の向上等があげられます。また、鹿児島は東アジアに近く、中国の港からはルート上寄港しやすい位置にあることがあげられます。


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 国は2020年に訪日客4000万人を目標にしています。これが実現すると、大都市圏だけでの受入は厳しいものがあり、受け皿として地方の役割が大きくなります。
 鹿児島における外国人宿泊客数は、2015年で41万人ですが、100万人になるのもそう遠くはないでしょう。外国語表記、従業員の外国文化への理解、簡単な会話など受け皿づくりが急がれます。


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 離島が注目されています。甑島が国定公園となりエージェントの企画が増えていますが、宿泊施設や島内の移動がネックであり、3年後の藺牟田瀬戸架橋の開通に備えて、受入態勢の充実が望まれます。


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 LCCが就航している奄美大島への観光客も伸びています。来年奄美群島の国立公園指 定、2018年の世界自然遺産登録が実現すると一気に人気が高まります。NHK大河ドラマ「西郷どん」では、奄美大島、徳之島、沖永良部島がゆかりの地であり、3つの島を結ぶルートづくりも必要になってきます。沖縄と違った自然や、食、島唄、伝統芸能等生活文化を発信することが都会の人々の心をとらえると思います。時間にゆとりのある熟年層にはクルーズ船の寄港を、若者には夏の美しい海や大学のゼミのフィールドとして売り込まねばなりません。是非体験してみたくなるメニュー作りが欠かせません。


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 「明治日本の産業革命遺産」が、世界文化遺産に登録され今年の入場者が期待されまし たが、大きな伸びとはなりませんでした。熊本地震の影響が色濃く反映しています。
 「明治日本の産業革命遺産」は鹿児島がスタートであることと、そのストーリー性を語ることで遺産の価値が高まり誘客に結び付くと思います。仙巌園で日本文化を紹介するイベントを前広にPRすることが求められます。
 オープンから3年目に入った「薩摩藩英国留学生記念館」の人気も定着してきました。 明治維新150周年が近づき、近代日本建設の若き原動力となった薩摩人の偉業が注目されることになります。若者が海外渡航の夢を高める施設であり続けて欲しいと願っています。


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 鹿児島市は、日本を代表する都市型観光の魅力を備えた街で、歴史、自然、温泉に加え、食の魅力が観光客の滞在を可能にしています。また、県庁所在地で温泉の泉源数が日本一であることは意外と知られておらず、10文字程度のキャッチコピーをつくり発信していくことが認知度を高めることになります。
 MICEの誘致に当たっては、大会運営設備の新設・拡充が不可欠であり、場所と合わせて公共交通機関の整備も重要です。


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 一方、地域では指宿が苦戦を強いられています。各施設の設備や受入態勢には問題ないと考えています。
 「指宿のたまて箱」の乗車率は好調であることから、多くの観光客が日帰り観光になっています。「砂蒸し温泉」頼みでなく、女性層、ファミリーが滞在したくなるまちづくりが必要です。駅前通りや2次交通の整備、小物店・カフェの設置、ブランド品の開発、大隅半島に渡りやすい環境整備、県内の子供たちの球技大会等の誘致が宿泊につながります。


 修学旅行は大きな影響を受けました。近畿地区から31校、5200人が訪れる予定でしたが、1校を除いてすべて取り消しとなりました。来年は26校、30年は19校と減少しており、他地域に目的を変えた学校を呼び戻すべく営業力を強化しなければなりません。


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 筑紫地区は太宰府市を除く19校全部が今年も集約列車で鹿児島を訪れました。2018年までは決定しており、その後も筑紫地区23校全部が鹿児島を選んでいただくべく努力が必要です。特に2018年は明治維新150周年にあたり、新たに学生向けの街歩きのコース等が必要です。
 農家民泊については引き続き、「簡易宿所営業」の取得を強力に進めていかねばなりません。宮崎県が態勢を整え、受け入れ学校を増やしています。


 キャンペーンの中心は、今年も最大のマーケットである首都圏や関西地域、身近に来ることができる福岡地区でのPRに努めてきました。
 新幹線や九州自動車道が一時不通となった影響もあり、関西以西のお客様の誘客に大きな影響がでました。2つの大動脈の重要性を認識した年でした。


 「九州ふっこう割」の宿泊単品は好調でした。事前に予約した客が、「ふっこう割」に切り替えて予約し直したため、宿泊機関では一時混乱しました。ただツアー型の商品が少なく観光施設や食事休憩店は恩恵が少ない等課題が浮き彫りになり、昨年展開した「プレミアムお得旅」のように広く経済効果をもたらす商品展開が重要と感じました。


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 インバウンドは4泊もしくは5泊するツアーが多く、また、個人旅行が増加しており、レンタカーの乗り捨て料金の軽減、マップの多言語化等南九州3県の連携が重要になってきました。今円安傾向となり、さらに外国人が旅行しやすい環境となっています。
クルーズ船が増えていますが、寄港船増加対策にこだわらず、地域に経済効果をもたらす船の誘致が重要になってきました。それの対策として、観光ルートを設定し、船会社やランドオペレーターの営業も強化しなければなりません。


 WEB販売が急激に伸びる中で、情報化社会に対応できる新たなホームページの仕組みづくが必要となっています。また、インターネットの普及で可視化が進んでいることから、コンプライアンスの向上と迅速・正確な情報提供も求められています。


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 鹿児島県は南北600キロに及び魅力多彩な観光資源があります。県民が足元の魅力を知り、住んでいる街を誇りに思うことが誘客の第一歩になります。
 販促活動は、県外が主になりがちですが、宿泊施設等ではもっと県民向けの企画に工夫を凝らし、安定顧客を創出することが重要です。


 来年も厳しい1年になると覚悟して、エージェントやキャリアとの商品造成や明治維新150周年のプレキャンペーンの展開、「西郷どん」のPRや受入れ体制づくりにスピード感をもって取り組むことが、大きな課題です。特に女性を意識した誘客態勢づくりです。
 危機感を共有し、攻めの1年でありたいと願っています。


  年の瀬や 水のながれと 人の身は 明日待たるる その宝船
                            ~宝井其角~
 赤穂浪士の討ち入りの夕方、俳諧師の宝井其角が両国橋で大高源吾に偶然出会います。その時の落ちぶれた様子に勘違いした其角は上の句を出すと、源吾は下の句を返します。実はその日が「吉良邸」討ち入りの夜だったのです。


 今年も皆様のご協力で毎週プロデユーサーコラムを配信でき、通算442回となりました。拙稿にお付き合いいただき心から感謝申し上げます。
 2017年は1月10日よりスタートします。良いお年をお迎えください。


No.441 修学旅行の復活は不退転の覚悟で~風評被害の払拭とエージェントへのメリット提供も~

2016年12月19日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


       あますなく 小草(おぐさ)は枯れて 風に鳴る
       かなたに小さな 山の中学
                         ~木俣修~


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 筑紫地区中学校の新幹線専用列車利用による鹿児島への修学旅行が、11月30日の「春日西中学校」をもって今年も無事終了しました。連合体による修学旅行は40数年前から、「とび梅号」という愛称で親しまれた国鉄の専用列車で始まりました。
 当時は3泊4日で日豊本線を下り宮崎に1泊し、バスで霧島、鹿児島市内を巡り西鹿児島駅(今の鹿児島中央駅)から専用列車で帰るコースが主流で、福岡市内の中学校も利用していました。


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 全盛期には20万人を超える修学旅行生が鹿児島を訪れていましたが、新幹線網の整備や航空機利用が解禁されたことで行先も分散化傾向となり、今では鹿児島を訪れる生徒さんは10万人余りとなっています。少子化による生徒数減少もそれに拍車をかけています。
 一方、沖縄県への修学旅行が大都市圏を中心に伸びており、当面はその流れが続くものと思われます。


 ところで12月12日に「全国修学旅行研究協会大阪事務局」より、平成30年度の近畿地区からの鹿児島方面への「集約列車申込み状況」が発表されました。校数で19校、人員は3500人余りで、29年度より6校約1500人減少しています。
 もっとも多かった27年度は、41校約7700人が利用していましたが、28年度は熊本地震の影響で、1校を除いて30校が取り消しとなりました。風評被害が学校現場に今でも色濃く反映しています。


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 観光地は通常と変わらない生活が続いているのに、大変残念な現実がそこにあります。沖縄や信州方面に行先が変更になった学校を呼び戻すには、不退転の覚悟で臨まねばなりません。
 呼び戻す方策として、まず、鹿児島が修学旅行の行先として多くの学習素材があることをエージェントや先生方に再認識してもらう取組が重要です。
 ターゲットは、関西や中国地方からの中学生が対象となります。今夏には大阪市内で関西地域のエージェントを集めた説明会や、先生方を対象に研修旅行も実施しました。


 「日本修学旅行協会」や「全国修学旅行研究協会」など教育関連団体の組織を活用し、校長会などの会合で、集約新幹線の利便性や正確さ、料金のメリット、鹿児島県の取組等を直接出向いて説明する機会を設けてもらう努力も必要です。


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 一方、誘致には学校のニーズに応えるべく魅力あるメニューづくりが欠かせません。平和学習では語り部による迫真の講話を、桜島での火山学習では自然の息吹を感じる温泉堀り、垂水漁港での餌やりや寿司握りの実体験、鹿児島市では明治維新の息吹を感じる「まちあるき」など体験メニューは豊富です。また、グリーンツーリズムの受入は県内全域で受け皿づくりが進んでいるのも他県との違いです。
 鹿児島県は全国屈指の農業県であり、豊かな自然の中での体験や安全・安心の食材は生徒たちに大きな感動をもたらすものと確信します。


 増加している沖縄方面への修学旅行については、出発空港や時刻の変更、グリーンツーリズムなどに課題が多いとエージェントの担当者からよく聞きます。加えて沖縄は過当競争で、担当者は苦労を強いられています。
 鹿児島へ変更することでアクセスや経費面でのメリットが生まれ、エージェントの皆様の営業にも力が入ります。


 ところで、教育現場で修学旅行先を決定する際は、生徒への事前アンケートや、旅費の上限、教育的効果などが検討されます。特に最近災害が発生した地域及び隣県については、PTA等の意向で行先として敬遠されることが顕著になっています。再誘致には数年の期間を要し粘り強い営業力が問われます。


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 近年、阿蘇山、霧島、桜島、口永良部島など噴火による風評被害に悩まされてきたのも紛れもない事実であり、先日開かれた南九州3県の観光議員連盟の会議でもこの点が話題となりました。
 風評被害を減らすためには県、観光連盟、県の大阪事務所等と連携し、学校現場に対し、鹿児島の状況を的確に伝える連携強化も求められます。


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 修学旅行は、一度行先が決定すると数年続くのが通例であり、地域全部の学校が同じ行先を選択する傾向があります。そこに集約臨時列車のメリットが発揮され、新幹線の安定的顧客にもなります。
 また、景気に左右されることなく一度に多くの生徒が動き、しかも2年前には決定して取り消しや人員減が少なく、受入機関にとっては経営の見通しが立てられるなど安定した顧客といえます。


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 先見性を育み明治維新誕生の偉人を輩出した風土、2箇所の世界遺産とロケット基地があり、おもてなしの心に優れた受け入れ態勢、新幹線南の終着駅となる鹿児島中央駅から各地へのアクセスの利便性など修学旅行誘致に恵まれた環境にあります。


 各市町村が連携し教育課程の基本理念に沿ったメニューやコース設定、エージェントや先生方への招聘事業の提案、コンプライアンスと危機管理の共有など官民あげて誘致に努めないと復活は厳しいと言わざるをえません。
 今後も「鹿児島県教育旅行受入対策協議会」の機能強化に努め、不退転の覚悟で取り組む必要性を感じます。


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 最後に、修学旅行は1887年(明治20年)から、日本の教育課程の中でずっと続いてきた一大行事であり、今後もなくなることはないと思います。子供達の思い出づくりの場として、大切にされる行事であり、安心して旅行ができる環境づくりに努めたいものです。


         道のべの たき火かこめる 人びとの
         中にわけ入り あたらせてもらう
                        ~前田夕暮~


プロフィール

奈良迫プロデューサー
鹿児島県
観光プロデューサー
奈良迫 英光
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