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No.359 上海線は鹿児島からの客をいかに増やすか~悠久の歴史に触れる旅を~

2015年4月27日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 春雨にぬれた木々の緑がいっそう鮮やかに見える季節になりました。早場米の田植えも終わり、田には一面に水が張られ、夏の頃の収穫に向け、これから雑草取りや定期的な肥料の散布が行われます。

       一点の 偽りもなく 青田あり    山口誓子

 田舎の庭先には赤、青、黒のこいのぼりや吹流しが空高く泳ぎ、学校帰りの子どもたちが立ち止まり眺めている姿が微笑ましく感じられます。日本の原風景がそこにあり、いつまでも残したい光景です。

 春は雨が多く草花の成長には恵みの雨ですが、満開の花は一夜風雨に晒されると、無残に散ってしまいます。中学校の国語の教科書に出てくる次の詩を覚えている方は多いのではないですか

                春暁     孟浩然
         春眠不覚暁        処処聞啼鳥
         夜来風雨声        花落知多少

[注釈] 春の眠りは心地よく 夜明けも知らないで寝てしまった。
    鳥のさえずりが聞こえてくる。昨夜は風雨が強かったようだ。
    せっかく満開になった花がたくさん散ったことだろう

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 ところで、4月1日から鹿児島~上海線が週4便体制となりました。定期路線があることは外国人誘致には不可欠であり、しかも増便は需要増につながります。中国東方航空系列の旅行社が商品造成に力を注いでおり、集客も好調に推移しています。

 全国的に中国人の伸びが顕著ですが、「爆買」と称される程ショッピングも旺盛であり、大きな経済効果をもたらします。中国人の買物は、かつては電気製品やデジカメ等が多かったのですが、最近では、地方の銘菓、薬、化粧品、赤ちゃん関連の衛生品等、安全・安心の日本の生活用品が大量に売れています。中国人の生活意識の変化が感じられます。

 鹿児島県は、温泉や自然景観、食等に恵まれていることや、上海に近いという利点もあり、今後も中国からの訪日客は順調に推移すると思われます。2年前に職員研修等で話題になった路線ですが、鹿児島県サイドの取組が中国側には好印象として捉えられ、今回の増便のきっかけにもなったのではと感じています。 

 ところで、海外の路線維持には双方向の利用促進が欠かせません。年内は予約状況が好調ですが、上海からの利用者に支えられているのが現状です。しかし、いつまでも一方通行では、経済状況の変化、行先の変更等で搭乗率の悪化を招くことも想定されます。鹿児島からの利用率向上を常に念頭におかねばなりません。

 小生は、1977年に初めて中国を旅しましたが、その後70回程度中国各地を訪ねました。中国の魅力について触れたいと思います。

 北には、初夏の頃のアカシヤ並木が美しく、ヨーロパの雰囲気が漂う街「大連」、日露戦争の戦場となり、司馬遼太郎の「坂の上の雲」に描かれた「203高地」のある「旅順」があります。

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 北京郊外にある「万里の長城」や「紫禁城」、「天壇公園」などはスケールが大きく、悠久の歴史を感じさせる中国ならではの醍醐味を感じます。

 内陸部には、河南省の省都「鄭州」の西部に位置し、世界遺産に指定されている「龍門石窟」のある「洛陽」がおすすめです。石窟にある『龍門二十品』は北魏時代のもので、日本の書道家はここの石窟に刻まれた字を見るために訪れます。

 「馬王堆古墳」で知られ、鹿児島市の姉妹都市である「長沙」は湖南省の省都で気候が温暖で、日系企業も多く商・工業都市として発展しています。毛沢東の生家は長沙市の南「韶山」にあり見学もできます。

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 西には、遣唐使の一員として阿倍仲麻呂が留学し、唐の時代は長安と呼ばれ、「兵馬俑」や「秦の始皇帝稜」で有名な「西安」があります。また、敦煌、ウルムチ、トルファン、カシュガルと東ヨ-ロッパへと続くシルクロードゆかりの地も必見の価値があります。

 是非おすすめしたいのが、シルクロードの分岐点として栄え、オアシス都市と知られる敦煌です。井上靖の小説「敦煌」の舞台である「漠高窟」や砂山が美しくラクダで巡る「鳴砂山・月牙泉」、日本でも送別会で披露されることが多くある王維の唐詩「送元二使安西」で有名な「陽関」があります。

 南には、少数民族が住む「昆明」があり、カルスト地形の奇岩が立ち並ぶ「石林」が世界的に知られています。また、昔からの中国の貿易の拠点であり春秋の交易会が開かれる「広州」、水彩画の世界に浸り「漓江下り」が美しい「桂林」など、魅力ある都市が中国には点在しています。

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 上海近郊では、日本企業が多く進出している「蘇州」が有名です。日本では除夜の鐘で知られ、張継の「楓橋夜泊」に詠われた寒山寺が有名です。上海は中国一の商業都市で、近代ビルが立ち並び日々変化している街に世界中から人が集まっています。

 ところで、日本と中国との間には、様々な政治的問題が絡んでいますが、観光はそれを乗り越えねばなりません。日本と中国は長い歴史の中で多くの往来があり、様々な文化を育んできました。平成14年当時は、県内の30校余りの公立高校が中国への修学旅行を実施していました。その後同時テロの発生で行先が変更になりましたが、今では1学年の定員も少なくなり定期便で輸送できます。海外修学旅行の復活を望んでいます。

 これから秋にかけて、中国への観光はベストシーズンとなります。中国東方航空は上海を基点に中国全土に広く就航しており、乗継も便利です。

 日本人の国内旅行は成熟しており、人口減少等を考えると日本人の宿泊客の大きな伸びは期待できず、外国人誘客が大きな課題になります。昨年の訪日外国人総数は1,341万人で、中国人は240万で前年比83.3%の伸びとなっています。

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 中国の人口の数等を考えると、これからも中国人観光客は、ますます増加すると予測され、鹿児島は地理的条件からも他県に比べて恵まれています。4便体制の維持には県民の利用が欠かせないと考えています。3000年の歴史に刻まれた中国各地に足を延ばし、悠久の歴史に触れてください。

 まもなくゴールデンウイークがやってきます。楽しい休日をお楽しみください。次回は連休明けの5月11日(月)から配信します。

No.358 ゴールデンウイークはどこに行きますか~県内の魅力に触れる機会に~

2015年4月20日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 桜島が連日噴煙を上げ爆発回数も350回を超え、活発な動きを見せており、年初には風評被害で観光客の減少が見られました。最近はPRの強化や皆様の口コミ効果もあり、少しずつですが現状が理解されてきており、落ち着いている感じです。 外国人観光客の姿が顕著です。

 これから風向きが変わり、鹿児島市方面への降灰が多く見られるようになります。冬から春にかけては大隅方面へ、夏から秋は鹿児島方面へと気象の変化に左右されます。

 県外観光客は、近い場所にある桜島が噴火し、灰が降る光景に驚き、偶然の自然現象に感動しカメラを向けています。垂水市では火山灰を缶に詰めて売り出しており、記念に買い求める人もいます。負の遺産をプラスに変えている事例です。自然現象は変えることはできませんが、見せ方によっては大きな観光資源となります。

 ゴールデンウイークが近づきました。4月29日が水曜日にあたるために、30日と5月1日を休めば、8日間の休みとなります。例年ゴールデンウイークは、近場への家族旅行が増えるのが特徴です。県内には家族で楽しめるイベントとして、「第5回夢追い長島花フェスタ」、「2015吹上浜砂の祭典」、「かのやばら祭り2015春」等があります。

 長島花フェスタは、今年が長島町合併10周年に当たることから、例年にも増してフラワーロードが整備されています。長島町の町づくりは、集落単位で花づくりが推進されており、至る所に美しい花壇が見られます。また、サンセットの丘、川床ふれあいの郷会場では、広い花畑のじゅうたんが見られます。

 名産品の「ふかしじゃがいもの」の試食も楽しめます。黒之瀬戸大橋を渡ると、そこはフラワーアイランドであり、島一周のドライブコースも楽しめます。道の駅等では、取れたての魚を味わうことができ、お土産物として地産品が豊富です。帰りに近隣の阿久根駅や出水の武家屋敷等も訪ねてはいかがですか。

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 南さつま市で開催される「砂の祭典」は、金峰町の「砂丘の杜きんぽう内特設会場」が舞台であり、今年は「ハッピードライブ」がテーマです。メインの砂群は、8m級1基と6m~2m級25基で、夕刻に開催される音と光のフンタジー(5月1日~6日)は必見の価値があります。小学生、中学生、国内選手権大会の砂像群や体験コーナーもあり、子供連れにも楽しい時間が過ごせるのではないでしょうか。

 見学後はいにしえの趣を感じさせる大当の石垣群や、歴史の町坊津まで行くことをおすすめします。輝津館(きしんかん)の展示品をみると、密貿易で栄えた頃の文化財があり脈々と息づく先人たちの足跡を知ることができます。坊津一帯の海は漁場に恵まれ、太公望にも人気です。

 大隅半島での大きなイベントの一つが、4月25日~5月31日に開催される「かのやばら祭り2015春」です。かのやばら園は、8haの広大な敷地に5万株の色とりどりのばらが咲き誇り、日本最大級のばら園です。園内では切り花の体験もできます。

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 また、「薔薇カレー」や「ばらソフト」を食したり、ショッピングも楽しめます。近くの公園からは鹿屋航空基地を望むこともでき、帰りに史料館の見学がおすすめです。戦時中の特攻基地の様子や、日本の防衛体制の概要も知ることができる施設です。

 4月25日~26日には「2015エアーメモリアルinかのや」が開催され、多くの入場者が見込まれており、体験搭乗や現役の航空機も真近で見学できます。大隅半島へは、アクセス等不便性もあり、県民が行く機会が少なく大隅の魅力が浸透してないのが残念です。イベント見学の機会に周辺を観光することで、大隅地域の魅力に触れる絶好の機会になるのではないでしょうか。

 九州本島最南端の佐多岬は取り付け道路が無料化されたこともあり、行き易くなりました。沿線の神川の大滝、雄川の滝、パノラマパーク西原台、内陸部にある花瀬の渓谷等は薩摩半島にはない魅力があります。大隅側の錦江湾しおかぜ街道を下りながら、錦江湾に沈む夕日や開聞岳の雄姿も格別です。道の駅等も随所にあり、地元産品が揃っています。是非、大隅地域に足をお運びください。

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 ところで、「観光かごしま大キャンペーン推進協議会」では、「かごしまフロ(風呂)マラソン」のスタンプラリーと「桜島七十七景」眺望スポットを大募集しています。フロマラソンは県内5地域の温泉を巡る企画ですが、大分県に次いで第2位の温泉県鹿児島の魅力を県民の皆様にまず体験していただきたい。



 桜島七十七景は、鹿児島最大の観光資源である桜島の魅力を再認識し、桜島の絶景とともに、地域の自然、歴史、食、特産品等を一緒にPRし、新たな誘客に繋げるものです。今年のゴールデンウイークの予定が無い方は、ぜひこの企画にチャレンジしてください。各地のイベントに参加する楽しみも増えるのではないでしょうか。

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 ゴールデンウィークに観光客を呼ぶには地元の人たちも知恵を出し合い、工夫をこらしたメニューづくりが必要です。ターゲットとしてまず鹿児島市からの誘客に力を注ぐべきです。地域資源を点検し、磨き、地域のブランド力を高める取組が今強く求められています。地域の人たちが住んでいる何気ないまちの日常生活や祭り、イベント、特産品、食等新たな視点と感性で商品価値を創り出し、需要拡大を図りたいものです。


 参考資料:①かごしまフロ(風呂)マラソン、②桜島七十七景眺望スポット大募集

No.357 広告の規制や看板の統一がまちの魅力を醸し出す~これから街づくりに欠かせないものとは~ 

2015年4月13日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 1週間前まで県内の観光地を彩っていた桜の花が、風雨にさらされ、いつのまにか葉桜となり、変わって山の新緑が一段と美しい季節となりました。自然の移ろいは早いものです。

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 霧島高原の「まほろばの里」の芝桜が満開となり、紫の絨毯を敷いたような光景は、自然の色の美しさとともに、周りの緑の木々とのコントラストが見事です。切子制作や焼き物の体験もでき、家族で楽しめる施設です。長島町では沿道の至る所に植えられた花が開花し、ドライブを楽しませてくれます。「夢追い長島花フェスタ」も始まりました。是非皆さんでお出かけください。


 これから家々の庭から「こいのぼり」が高く泳ぐ姿が見られ、地方に出かける楽しみが増えます。最近では、川岸にポールを立てて、家庭で眠っている「こいのぼり」を泳がせている地域もあり、美しい日本の原風景がいたるところに見られるのはうれしい限りです。

 また、おぼろに景色がかすむ様子は日本の春の風景です。下の唱歌が浮かんできます。
          朧(おぼろ)月夜   作詞:高野辰之  作曲:岡野貞一
  1 菜の花畠に   入り日薄れ   見渡す山の端(は)  霞ふかし
      春風そよふく  空を見れば   夕月かかりて    にほひ淡し

  2 里わの火影(ほかげ)も  森の色も   田中の小路を  たどる人も
      蛙(かわず)のなくねも  かねの音も  さながら霞める  朧月夜

   歌の場所は、現在の長野県飯山市の付近で、作詞者の高野辰之が小学校に通う途中に見 た菜の花畑を思い出して作詩したと言われています。

  与謝野晶子は春の情景を菜の花に託して次の歌を詠んでいます。
      「はてもなく 菜の花つづく 宵月夜 母が生まれし 国美しき」

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 ところで海外で感動する光景に、広告や看板がなく、ゴミが無くて落ち着いた美しい雰囲気を醸し出している観光地があることです。オランダのチューリップ畑、スイスのアルプスへの登山電車の沿線風景やドイツのロマンチック街道、アメリカやカナダのロッキー山脈周辺、バンフなど景観に配慮したまちづくりが施されています。

 日本でも景観法が施行され、その対象は多岐にわたっています。基本理念には、《良好な景観は国民共通の資産》であると位置づけられており、地域の自然、歴史、文化等、地域の特性や特色を伸ばす必要性が指摘されています。

 景観を守ることは、観光まちづくりの根本をなすものと考えます。いちき串木野市と、日置市が景観法に基づく景観行政団体となったことから、両市の景観づくりが動き出しており、市民向けのセミナーも開催されました。

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  「薩摩藩英国留学生記念館」がある羽島は150年前、19名の留学生が船出した港であり、その雰囲気を復活すべく整備が始まりました。また日置市の「美山地域」は、薩摩焼発祥の地であり、博物館、古民家、工房、竹林等があり、落ち着いた街の雰囲気が魅力です。

 電柱の地中化、駐車場の整備、看板等の規制などに取り組み、県を代表する景観保護モデ地域として発展していくことを望みたい。鹿児島市内から30分余り、観光客誘致には便利な場所です。

 鹿児島市は錦江湾をはさんで、目の前に雄大な桜島がそびえ、その景観は世界に誇れるものです。しかし、いつのまにかその雄姿がさえぎられるポイントが増えており、高さ制限の必要性を感じます。

 県内の有名な観光地でも、旗の林立や派手な商品広告にがっかりさせられることがあります。看板の大きさ、字体等を統一する等、公共空間や公的施設を整備する際には配慮が必要です。

 全国的に景観形成に積極的に取り組んで成功している事例として、「伊勢市」、「川越市」、「彦根市」、「松本市」、「長野県の小布施町」などが上げられます。これらの街は、屋外広告物の表示・掲出の制限等を行っています。歴史や自然を活かしたまちづくりを促進するため、市街地の建物の高さを制限し地域の特性を活かした取り組みを進め、観光客誘致に努めています。

 県内では、武家屋敷群の残る「出水」、「入来」「知覧」は、「伝統的建造物群保存地区」として広告や旗等を制限しており、四季折々の魅力が醸し出されます。

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 宿泊地では各ホテルの標識や位置を、ひとつの看板にまとめることで十分と考えます。インターネットの普及やカーナビを装置した車が多くなり、目的地の検索は容易になっており、「黒川温泉」、「由布院温泉」はすでに実施しています。


 景観を維持していくために、地域の体制やまちづくりをどのようにすすめていくか、市民を交えた議論も重要です。今まで景観の重要性について考える機会や、その背景も希薄であったと思います。

 県内には28の有人の離島がありますが、広告のない島があっていいのではないでしょうか。全国的に注目されることで、住民の意識も変わりPRにもなります。

 子どもの頃から景観保護の重要性を、学校教育で教えることも大切です。美しい景観が地域の誇りであることを認識し、地域の景観形成についてどのようにして合意形成を進めていくか、先進地を研究する必要もあります。美しい景観を、先祖代々まで残していくことが、我々の責務であると考えます。

No.356 地方創生事業で誘致間競争は激化する~持続可能な地域が勝ち残る~

2015年4月6日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 今年の鹿児島の桜は予想に反し、全国で一番早く開花となり、満開の桜の下で、美しい日本の春を楽しんでいる方が多いのではないでしょうか。桜前線はこれから日本列島を北上し、北海道に上陸するのは5月になります。桜は日本人が最も愛する花の一つです。

 六歌仙の一人である在原業平は、桜を次のように詠んでいます。
「世の中に 絶えて桜のなかりせば 春の心は のどけからまし」
                             ~古今和歌集より~

 この世の中に全く桜の花がなかったならば、春を迎える人の心は、おだやかでいられるだろう。と訳されますが、実際は美しい桜があるせいで、いつ咲くだろうか、いつ散ってしまうだろうかと、どうか散らないでほしいと心配しながら過している。という意味に解釈されています。「美しい花よどうぞ散らずに、このままずっと咲いいてほしい」と、はかない桜の命を惜しむ思いをこめており、裏返しの意味で表現した歌です。

 平安時代の歌人で、江戸時代の松尾芭蕉が最も影響を受けたと言われる「西行法師」は
「願わくは 花の下にて春死なん そのきさらぎの望月の頃」
と詩っています。

 情熱の詩人「与謝野晶子」は
「清水へ 祇園をよぎる桜月夜 こよひ逢ふ人 みなうつくしき」
と夜桜に映える京都の街や行きかう人々の楽しい姿を詠んでいます。日本人の心が伝わってくる情緒豊かな詩ではないでしょうか。

 また、桜は文部省歌や校歌、歌謡曲にも多く取り上げられています。「弘前城のしだれ桜」、「福島県三春町の滝桜」、「岐阜県根尾村の薄墨桜」、「伊那市の高遠城址公園の桜」は全国的に知られた桜の名所です。

 桜前線を追うように桜のツアーも北上していきます。2ヵ月間に渡り、花のツアー企画ができるのも、桜の花だけだと思います。これほどまでに日本人の心を惹きつける桜の魅力とはなんでしょうか。冬の寒さに耐え、土筆が芽を出す頃美しく咲いて、ぱっと散るところが、日本人の心を捉えます。

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 アメリカ合衆国の首都ワシントンD・Cのポトマック河畔の桜並木は、世界の名所の一つになっています。1912年当時の尾崎行雄東京市長がプレゼントして植えたもので、今では盛大に「桜まつり」が開催され、「桜の女王」が選ばれる等全米から観光客が訪れます。

 ところで、観光庁より「宿泊旅行統計調査」の平成26年年間値(暫定値)が発表されました。調査によると、鹿児島県の延宿泊者数は7,584千人泊で、3,57%増となり、うち外国人は、269千人泊で25,28%増となっています。(全施設を対象にした実績)

 九州内における延宿泊者数の順位は、福岡県に次いで第2位となり、平成25年からこの位置をキープしています。4回の台風襲来や大きなイベントがない中で、前年を超えることができたことは、関係者の誘客の努力に加えて、鹿児島県の魅力が定着しつつあると感じています。

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 全施設を対象とした統計ではあることから、小規模施設への入込状況も把握できます。個人旅行化が進み、また旅行ニーズが多様化している中で県内各地域への分散傾向も見られ、少しずつではありますが、受け皿づくりが整いつつあると感じます。九州新幹線開業による時間短縮効果もそれを可能にしています。



 また、「拠点地域(指宿・霧島・鹿児島)発の広域観光周遊ルートづくり」、「かごしま・風呂マラソン」、「桜島七十七景ルートづくり」、着地型メニュー等を充実させて、地域への誘客を進めなければなりません。

 外国人延宿泊者数は大きく伸びましたが、九州の中では第5位となっています。全国的には、外国人の宿泊者数は30,8%の伸びであり、4つの海外路線を持つ鹿児島としては、もっと伸びる要素があります。

 韓国人の入込数で大きな差が出ており、熊本まで来ている外国人をいかにして鹿児島まで誘致できるかにかかっています。課題は、鹿児島までの交通費であり、新幹線の特別料金の設定や福岡空港と鹿児島空港を発着としている同一キャリアを活用することで、効率的ルートの設定が可能となります。

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 上海線、香港線の増便や、新たに宮崎~香港線の就航等は追い風となります。個人旅行が増加しており、外国語表記、免税店の対応改善などさらなる誘致策が求められます。



 ところで貸切バスの新運賃制度が本格的に導入され、バス料金が30%程度アップしています。企画商品を中心に集客状況が懸念されますが、料金値上げは、乗務員の待遇改善や安全運航確保の必要条件であり、事業者、エージェントも消費者に理解してもらう努力が必要です。

 地方創生事業で、旅行商品の割引や地域商品券など、多くの県が観光客誘致にしのぎを削っています。割引のみでは一過性の客となる懸念があり、訪れる方に感動をもたらしリピーターに繋げる「おもてなし」が大切です。「本物。鹿児島県」を提供し、「一期一会」の心で対応しなければなりません。

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 今年は「世界文化遺産」登録や「第30回国民文化祭」が開催されることから誘客の目玉はそろっています。特に国民文化祭は、43市町村が競って誘客に努め、我が町をPRする機会としなければなりません。

 地域資源を点検し、ストーリー性を持った商品開発が不可欠であり、常に話題を提供し、進化し続ける地域であることをPRし、官民一体での努力が求められます。そのことが持続できる地域になる要因ではないかと思います。23年から4年連続で鹿児島県の宿泊客数は伸びています。27年も慢心することなく、誘客に努めたいものです。

No.355 「第30回国民文化祭」を「明治維新150周年」につなげよう~市町村の事前取組が課題~

2015年3月30日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 今年は、国、最大の文化イベントである「第30回国民文化祭」が、10月31日から16日間、県下43全ての市町村で開催されます。テーマは、「本物。鹿児島県 ~文化維新は黒潮に乗って~」、また、愛称は「ひっとべ!かごしま国文祭」となっています。 

 国民文化祭は、全国各地からアマチユアを中心とした文化団体や愛好者が集まり、各種文化活動の成果や発表・競演・交流することにより、国民への文化活動への参加の機運を高め、新しい芸術文化の創造を促すことを目的に開催されてきました。 

 鹿児島開催まで半年あまり、県民あげての盛上げが必要であり、各市町村の事前取組が 大会の成功を左右すると考えていますが、住民への浸透度は今一歩です。主要拠点にカウントダウンボードも設置されました。文化、教育、観光、農水産業、商工関連団体等が連携強化して我が町の魅力を発信し、参加者増を図らねばなりません。

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 文化イベントは、スポーツイベントに比べて市民の関心が低く、集客に苦労します。国体等代表選手が参加する大会には経費等の補助がありますが、国民文化祭は趣味を同じにする人たちの発表の場であり、自費参加が主体となっています。


 ここに国民文化祭に対する集客の厳しさがあり、いかにして各事業への参加者を増やすかが問われています。県では国民文化祭のイベントを通して、多くの人に鹿児島に来ていただく対策として、地方創生に関連した予算も計上され、団体の参加を促すことにつながると思います。

 昨年の秋田大会の経済波及効果は133億5500万円とする推計を、秋田銀行のシンクタンクである「秋田経済研究所」は発表しています。鹿児島県が誇る歴史、温泉、自然遺産、食等は、秋田県に優るとも劣らない魅力が十分揃っています。九州本島最南端の県と言う魅力も活かし、関連団体への事前のPRが何よりも大切です。

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 6月には、「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」の「世界文化遺産」登録が予定されており、鹿児島市内にある5つの関連施設が対象で、登録が実現すると、「世界文化遺産」の視察を兼ねて多くの参加者があると期待され、国民文化祭の開催にも弾みがつくことが想定されます。

 薩摩藩は、明治維新の原動力となった多くの偉人を輩出し、「旧集成館事業」や「薩摩藩英国留学生」、「郷中教育」等の歴史に触れることで、薩摩の文化の高さや先進性を学ぶことができるのではないでしょうか。また、食、祭り、くらし等地域文化を情報発進することで、行って見たい大会としての魅力付けが大切になっています。各市町村が競争と協調を図り、文化祭終了後にわが町への誘地を図る努力も求められています。

 鹿児島県は南北600キロに広がり独特の文化を育んできました。中でも焼酎は、110余りの蔵元と2000を超える銘柄があり、地域に根付いています。与論では与論献奉という独特のおもてなしの手法で接待します。

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 県議会においては、本格焼酎の産業振興とそれに関する郷土の伝統文化への理解の促進を図るため「かごしま本格焼酎の産業振興と焼酎文化でおもてなし条例」を制定し、平成26年1月1日から施行されました。参加者と住民との交流の機会を多く設け、地域ならではの「ふだん着のおもてなし」が求められています。

 一方インバウンドに目を向けると、円安やビザ取得要件の緩和、和食の「世界無形文化遺産」登録、「安全安心の国日本」への関心が高くなり、外国人が急増しています。県内在住の外国人にも、鹿児島の文化の発信者になってもらうことも大切です。本県では、ソウル、上海、台北、香港の4国際航空定期路線があり、また、市町村は姉妹都市との交流を定期的に進めており、国民文化祭を機に海外からの参加者を増やし、さらなる文化交流も深めてもらいたいと思います。

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 大会のテーマは、南に広がる鹿児島のイメージを象徴しています。県内に28の有人の離島があることは意外と知られていません。大会後に離島を訪れる参加者が多くなることが期待されます。「奄美・琉球」は、平成29年の「世界自然遺産」登録を目指しており、PRのよい機会となります。



 国民文化祭を開催することで県外の出演団体に加えて、交流の機会の場が増えることは、地域の活性化につながることが期待されます。また、地域文化の継承には後継者の養成が不可欠で、子どもやお年寄りの出演の機会をつくることが求められています。そのことで、地域の伝統文化を学ぶ、郷土愛を育てることになります。

 「世界文化遺産」登録、来年の「薩長同盟150周年」、鹿児島を舞台とした2017年の「NHK大河ドラマ」の誘致、そして、2018年の「明治維新150周年」につなげる国民文化祭にしなければなりません。「第30回国民文化祭」の成功が、これからの鹿児島にとっても重要なインパクトになるイベントであることを認識し、県民一人ひとりが参画意識を強く持ち「おもてなしの心」で迎えたいものです。

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 『木曽路はすべて山の中である。あるところは岨(そば)づたいに行く崖の道であり、あるところは数十間の深さに臨む木曽川の岸であり、あるところは山の尾をめぐる谷の入口である。一筋の街道はこの深い森林地帯を貫いていた。』
              夜明け前:島崎藤村

*小説「夜明け前」の冒頭の部分です。今では観光地となっている馬籠と妻籠が舞台です。
*鹿児島大会では、「最南端佐多岬旅の文学フェスティバル」が南大隅町で開催されます。

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