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No.398 屋久島の新しいPR手法を考える~縄文杉だけに頼らない魅力発信を~

2016年2月8日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光



         分け入っても 分け入っても 青い山
                      ~種田山頭火~


 「屋久島は一月に35日雨が降る」という不思議な文章の一節があります。林芙美子の小説「浮雲」に描かれており、屋久島の雨の多さを表現しています。


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 彼女が屋久島滞在中に小説の構想を練り上げるために宿泊した宿は、今でも「ホテル屋久島山荘」として営業を続けています。安房川を見下ろす川岸の高台に位置し、宿泊した部屋からは、屋久島の美しい山々と静かに佇む安房の街の様子が望めます。
 夏の夕方には屋形船の灯りが印象的で、旅情をいっそう深めてくれます。



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 屋久島は白神山地とともに、1993年日本で始めて「世界自然遺産」に登録されました。春から秋にかけては、特に縄文杉や宮之浦岳の登山客で賑わいます。
 一方、登山客の増加と供に自然環境をいかに守っていくかが問われており、入山料等の徴収が議論されているところです。

 屋久島の観光の現況に触れたいと思います。世界遺産登録後屋久島への観光客は増加し、ピーク時の入込客数は40万人を超えましが、最近では30万人前後で推移しています。
 昨年は、口永良部島の噴火や桜島の噴火警戒レベルの引き上げによる風評被害等で、指宿と屋久島を巡る観光客が減少したこともあり、苦戦を強いられました。
 屋久島は世界遺産登録後、往復でも約8時間かかる縄文杉登山が一躍有名となりました。
 ゴールデンウイークや夏休みは、一日1,000人を越える登山者があり、自然破壊も懸念されています。



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 従来屋久島のPRは、縄文杉に代表される山岳観光の魅力を中心に進められてきた経緯がありますが、登山が困難であるオフ時期にいかに集客するかが課題となっています。
 そのためには、登山以外の魅力を伝えていく必要性に迫られているのではないでしょうか。
 屋久島は海岸線を一周する道路沿いに集落が点在し、集落独特の文化が育まれています。岳参りという山岳信仰や、珍しい動植物や美しい海岸景観などがあります。地元の語り部と巡る里めぐりはいかがでしょうか。



 バスで巡れる「千尋の滝」、「大川の滝」、「志戸子のガジュマル園」、「白谷雲水峡」、「屋久杉ランド」は、大雪で道路が不通にならない限り冬場でも行くことができます。



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 島の南側は、温暖で温泉が沸き、著名な露天風呂もあります。西部林道からは「世界自然遺産」登録地域の植物の垂直分布を見ることができます。
 この一帯を車で走ると、サルやシカの群れに遭遇し、屋久島ならではの景観が広がります。
 また、冬場の観光は12月~1月頃は「屋久島ぽんかん」、1月後半から~2月は「たんかん」の収穫体験が可能です。屋久島に行ったことがない人たちに、登山だけではない屋久島の魅力をいかに伝えることができるかが課題となっています。


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 新鮮な「トビウオ」や「首折れサバ」は地元でしか食べることが出来ない食材であり、是非賞味していただきたい。
 また、急峻な山肌が海岸に迫り断崖絶壁が多く、良好な釣り場やダイビングポイントに恵まれ、アウトドア派にも最適な滞在場所でもあります。



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 屋久島の動物たちとの触れ合いを題材に多くの児童文学を発表した「椋鳩十」や、屋久島の美しい自然を詩として残した「山尾山省」の足跡を語ることも、島の旅を一層興味深くするのではないでしょうか。



 屋久島空港の近くにある喫茶「樹林」には、20年の長きにわたり島内外の人々に親しまれてきたタウン誌が展示されています。


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「生命の島」という本を全巻閲覧でき、直接買うこともできます。喫茶店は、発行者の意思を継いだ奥様と息子さんが営業を続けており、仕事の合間をぬって、作者の生き様を語ってくれます。テラスで太平洋の美しい海と、屋久島の山々を望みながら、コーヒーを頂くのも至福の時間となります。
 「屋久杉自然館」では、屋久杉伐採で栄えていたころの小杉谷集落の様子を記録したビデオを見ることができ、江戸時代から昭和44年頃に廃村になるまで、屋久杉がその生活を支えていたことがよく理解できます。



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 首都圏でのエージェントの調査では、屋久島は日本にある19の世界遺産の中で一番行きたい場所に選ばれています。最近では欧米からの個人客も増加しています。
 登山の魅力だけではなく、屋久島全体の魅力を情報発信し語る必要があります。町と観光協会では島をPRするパンフレットを全面的に改訂する準備に入っています。


 登山に集中しがちなPRを、生活や文化、地域住民の生業を通して屋久島全体の魅力を訴える紙面に変えていく予定です。



 3年後には「奄美・琉球」が世界自然遺産登録を目指しており、2つの自然遺産をつなぐツアーも期待されます。
 屋久島観光の復活が鹿児島の観光の新たな一ページを切り開くチャンスとなることを信じてやみません。



No.397 徳之島3町で統一した景観保護の取組を~世界自然遺産効果の島全体への波及を~

2016年2月1日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光



 県内は5年ぶりの厳しい寒波に見舞われ、奄美大島では115年ぶりに降雪が観測されるなど、交通機関や市民生活に大きな影響が出ました。週間天気予報の徹底もあり大きな事故が発生しなかったことは幸いでしたが、日曜日には飛行機や船、高速道路がほとんどストップし、観光客の皆様の移動に大きな支障をきたしたのではないでしょうか。


 「第24回いぶすき菜の花マーチ」も2日目は大雪に見舞われましたが、予定通り開催され、小生も日本全国から参加したウオーカーと一緒に歩きました。吹雪の中で、寒さが身に染みましたが、ゴールするとボランティアの方々によるスープや茶節の味噌汁等のおもてなしがあり疲れも吹き飛びました。
 「菜の花マラソン」と「菜の花マーチ」は全国的に人気が定着していますが、官民あげての協力体制、おもてなしの心が地元に根付いている成果だと感じます。


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 2月に入りプロ野球はキャンプINです。サッカーはすでに1月中旬からキャンプがスタートしています。プロのキャンプと言えば野球は沖縄、サッカーは宮崎がメインとなっていますが、県内でもサッカーがJ1、J2、J3、なでしこリーグ、韓国Kリーグ、中国スーパーリーグを含めて17チーム、プロ野球が千葉ロッテのファーム、釜山ロッテジャイアンツの2チームで、合計19チームがキャンプを行います。
 県では、抽選で各エリアの特産品やチームグッズが当たる「キャンプ地めぐりスタンプラリー」を実施しています。熱気あふれる練習が繰り広げられる春季キャンプ地を訪ねて皆さんも応援してください。


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 ところで、シドニーオリンピックの女子マラソンで金メダルを獲得した高橋尚子選手は、世界陸上やアジア大会、オリンピックの事前合宿を徳之島で行っていました。
 天城町の練習コースの道路沿いに「尚子ロード」と書かれた記念碑と「シドニーオリンピック優勝」をたたえる碑が建立されています。
 徳之島はマラソンに適したアップダウンのコースが多く、また温暖な気候に恵まれ、都市圏からの陸上競技の合宿地として人気があります。今春も元旦の「ニューイヤー駅伝」で活躍した実業団チームが合宿を行いました。


 徳之島と聞けば長寿の島、子宝の島として知られギネスブックに長寿世界一と認定された泉重千代さん(享年120歳)、本郷かまとさん(享年116歳)が生まれ育ったところです。


 徳之島は3町からなり人口は3万余りで、主要産業はサトウキビ栽培、ジャガイモ、牛の飼育等第一次産業が中心です。3年後の世界自然遺産登録をめざして、観光振興への取り組みが問われているところです。


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 このたび、3町の役場職員を対象とした「景観セミナーIN徳之島」が開催され講師として参加しました。
 徳之島子宝空港に降り立って車を進めると、まず驚かされるのが自動販売機の多さです。約100メートルの間に3台もある地域もあり、島の人の話によると人口100人当たりの設置台数は日本一とのことです。


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 農作業の休憩時間の飲物は、持参するのではなく自動販売機で買って飲むことが習慣となっています。自動販売機はサトウキビ畑、家の前、駐車場、墓地の前、公園の入口とあらゆる場所に設置されています。
 生活に根付いているとはいえ、観光地では自動販売機を木の枠で囲み、周りの景観に配慮するなどの取組が必要です。


 また、島全体として観光地の看板の大きさ、色合い、文字、材質などを統一することで、島の調和が図られるのではないでしょうか。交差点では一つの看板に行先案内をわかり易く表示し、徳之島の美しい海、緑豊かな農村風景など自然を壊さない工夫が必要です。


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 犬の門蓋(いんのじょうふた)、犬田布岬、ムシロ瀬等の海岸線は奇岩や絶壁が続き、観光的魅力に優れています。駐車場からの距離や、観光客の安全面に配慮し崖の近くに転落防止の看板設置も必要です。




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 島の北にある「金見岬ソテツトンネル」は枯れたソテツの枝を定期的に伐採することで、海まで続く美しい景観が維持されるのではないでしょうか。
今、外国人に一番人気の場所は、赤い鳥居が続く京都の「伏見稲荷大社」です。



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 伊仙町の阿権集落は住民、事業者、行政の連携がうまくいっている地域です。サンゴの石垣群、古民家の活用、道路沿いの看板の規制等みごとな景観が残っています。散策の途中には、地産地消の食事を提供する民家レストランがあり、おかみさんが食材のストーリーを語ってくれます。ぜひお尋ねしたい場所です。



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 ところで徳之島と言っても県外の人にはどこにあるか、また何が有名なのか知る人は少ないと思います。これから 徳之島3町の観光振興に求められるものは、これぞ徳之島という誰もがすぐピンとくるような地域資源を発掘し、磨きをかけPRして提供することです。
 合併した3町の観光協会の機能を強化し、動きやすい人材の配置や、四季折々の魅力を発信しなければなりません。島ならではの特産品のPRとブランド力強化も欠かせません。 


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 徳之島は国内では数少ない闘牛大会が開催される場所です。約400年前から開催される伝統行事で、島中が熱気に包まれ観光客もその迫力に圧倒されます。地域ぐるみで太鼓や笛を鳴らして応援する姿は、島で生活する人のエネルギーを感じます。
 牛の育て方や戦いまでのストーリーを記載した看板の設置や闘牛大会をプロデユースする人を前面に出したPRも重要です。


 温暖な気候、海等を活用したスポーツ合宿、野球、マラソン、トライアスロン等も誘客に結び付きます。
 また、「奄美・琉球」の世界自然遺産登録候補地としての知名度を活かし、奄美群島全体での誘客に寄与することも求められます。
 2年後には明治維新150周年を迎えます。明治維新の立役者西郷隆盛が一時住んだ島でもあります。


 最後に長寿、子宝の島としてそれを生み育てる生活・文化をPRし、来訪客が感動するおもてなしを提供することで、また訪れたい島になると思います。
 美しい景観を守り人々の暮らしを持続的に発信していくことが大切です。
 心に響くストーリーが何よりも求められる時代になっているのではないでしょうか。  


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菜の花が しあはせさうに 黄色して

              ~細見綾子~



No.396 アーティストの公演誘致を~地域全体への経済効果創出が可能に~

2016年1月25日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光



 雪不足でスキー場のオープンが危ぶまれていましたが、1月中旬の寒波襲来でほとんどのゲレンデが滑走可能となり、営業にこぎつけられたことは嬉しいことです。
 10年ぐらい前までは、県内の高校修学旅行の行先として北海道、信州方面へのスキーが多く、添乗によく行ったことが懐かしく思い出されます。南国育ちの生徒たちは、初めてのスキーに悪戦苦闘しながら楽しんでいました。最近は北海道のニセコや新潟県の苗場スキー場には多くの外国人が訪れています。


 一方、昔に比べて暖冬による雪不足が顕著となりスキーができる期間が短くなり、リフト会社、ゲレンデ近くのホテルの経営も厳しくなっています。先日軽井沢の近くでスキーバスの横転事故が発生し、多くの死傷者が出たことはまことに痛ましいことです。気軽に参加できるバス旅行が減少するのではと懸念されています。
 観光バスの安全性が改めて問われることとなり、点検業務や乗務員の労務管理がさらに強化されるのではないでしょうか。


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 バス会社では、運転手の高齢化とともに、新たな運転手の確保が厳しくなり、インバウンドが急増する中で貸切バスの運行そのものが喫緊の重要課題となっています。
 鹿児島のマリンポートには1月1日からクルーズ船が入港し、60台近くのバスで受入に当たりました。今後も運転手さんの安全面の徹底をお願いする次第です。


 ところで今年の7月30日~31日の2日間、鹿児島市内のほとんどの宿泊施設がすでに満員となっています。施設によっては前後の日も埋まっていますが、当初は予約が殺到する理由が分からない関係者が多かったと聞きました。


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 実は30日昼夜2回、31日昼と2日間で3回、今や日本で一番の人気アイドルグループ「嵐」のコンサートが、鹿児島アリーナで開催されます。今年8月までに全国6会場でコンサート予定されており、その1箇所が鹿児島公演です。おそらく2日間で2万人近くの観客動員が期待され、入場券の発売前にホテルの予約が先行しているものと思われます。 


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 昨年全国で開催された嵐のコンサートのうち、仙台市や福岡市では近燐の県や市町村の宿泊施設まで予約が入りました。観客は比較的若い層が多いこともあり、1泊朝食や素泊まりが多く、レストランや居酒屋等外で食事を取るケースが多く街全体の経済効果が期待されます。
 宿泊予約者が今後入場券を確保した段階で、施設によっては予約人員が大きく動く可能性があります。


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 今後の注意点について述べたいと思います。鹿児島アリーナの公式収容人員は5,700人となっています。コンサートは立見が多いことから入場者は増員されるかもしれません。現在、複数の施設を予約していることも想定され、キャンセル料がかからないギリギリの時点で不要になった予約分をキャンセルする人もいます。早めの段階で予約の意思や人数の確認、入金等を促す努力が必要です。


 予約でオーバーしている施設ではお客様に事情を説明して、ツインの部屋にはエキストラベッドを、和室では定員を増やす、小宴会場を寝室として提供する等特需への対策をこれから取組むことが重要ではないでしょうか。
 福岡では「高い料金の部屋に、間際でキャンセルがあった」と、あるホテルの支配人は語っていました。


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 公演を聴きに来る人に対する観光PRも欠かせません。多くの若者が鹿児島を訪れることで、その後離島に足を延ばす機会にもなります。甑島、種子島・屋久島、三島・十島、奄美群島等夏の美しい海をPRするチャンスです。
 また、風評被害が残る桜島の本当の姿を間近に見て、鹿児島の印象が変わるのではないでしょうか。
 若者は食欲旺盛です。外での食事が多くなることから黒牛、黒豚、黒さつま鶏、カンパチ、うなぎ、焼酎、ラーメン等かごしまの美味しい食材に触れる機会となり、その後のPRに役立つものと思います。若者の情報発信力にも期待したいものです。


 ところで「嵐」が今回のコンサートで公演する6会場の収容人員は、福井、広島、静岡会場が10,000人、横浜が17,000人、長野が18,000人となっており、鹿児島アリーナは5,700人です。


 関係者に伺うと、有名アーティストを呼ぶには10,000人以上収容できるコンサート会場での公演を希望しています。「EXILE」、「福山雅治」、「DREAMS COME TRUE」、「B'z」、「サザンオールスターズ」、「長淵剛」、「三代目 J Soul Brothers」等です。2004年桜島での「長淵剛」のコンサートは、7万人を集めました。


 主催者の営業上のメリット、入場者の経済効果を考えると、鹿児島アリーナを上回る施設の設置が求められます。
 現在アリーナ設置の構想が取り出さされていますが、大型施設は維持にも大きな費用がかかります。そのためには年間の稼動を高めることが最も重要なことです。スポーツ大会や大型コンベンション、音楽コンサート、入学式・卒業式、各種企業団体の式典等にも対応可能な使いやすく大規模の動員ができることがあげられます。


 また、短時間に多くの人の移動を可能にする為には、駅や港に近いなどのアクセスの利便性、大型バスの駐車場が確保できることが望ましく、周辺の生活者に大きな影響が及ばない場所が望ましいと考えます。


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 多くの人が集まると周辺の商店街に人が流れて滞留し消費が増えることとなり、地域の活性化にもつながります。
 1回1万人を動員できるアーティストの公演を、年数回誘致できれば大きな経済効果を生み出せるのではないでしょうか。「嵐」のコンサートを機に、アリーナの設置について県民の積極的な議論を期待したいものです。


  うぐいすの 鳴く野辺ごとに
           来て見れば うつろふ花に 風ぞ吹きける
                     古今和歌集~読み人知らず~


No.395 「ふるさと納税」の推進で地域のブランド力アップを~「三方良し」の精神が地域に貢献~

2016年1月18日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光



 今、自治体が「ふるさと納税」の拡大に力を入れています。この制度は人口減少による過疎化、地方間格差などによる税収の減少に苦しんでいる自治体に対しての格差是正を推進するために、2008年、第一次安倍政権の時に創設された制度です。


 ふるさと納税とは、自治体への企業や個人の寄附金のことです。個人が2,000円を超える寄附を行ったときにおよそ2割程度が還付、控除される制度です。また、2015年4月1日から、確定申告が不要な給与所得者等に限り、確定申告の代わりとなる「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」を寄附自治体へ寄附する都度提出(郵送)することで住民税から控除されます。


 2015年12月現在で、県内43市町村のうち41の自治体が地元の特産品等を返礼品として送っています。
 寄附金ランキング(2015年4~9月)で見ると、大崎町が2億5796万円で第1位となり、続いて曽於市2億3782万円、鹿屋市1億6219億円、志布志市1億2850万円、屋久島町6578万円で、続いて霧島市、肝付町、長島町、瀬戸内町、いちき串木野市となっています。


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 返礼品としては、豚肉、牛肉、うなぎ、さつまいも、伊勢エビ、さつまあげ、焼酎、茶、ブリ、じゃがいも等地域特産品が選ばれており、ふるさとへの熱い思いが感じられます。市町村で金額に大きな差が出ており、取組に温度差を感じます。ちなみに全国一は、宮崎県の都城市の13億円余りで、「日本一の「肉と焼酎」に特化し、焼酎1年分、牛1頭などの知名度アップ策が実績に結びついているのではないでしょうか。
 1年間でかなりの金額になっている自治体もあります。詳しくは各市町村のホームページで確認してください。


 ところで、毎年人気が高まっている「ふるさと納税」の特徴について述べてみたいと思います。 まず、ふるさと納税を行うことで税金が控除されることです。ふるさと納税を行い確定申告した場合、その年の所得税から還付と翌年度の個人住民税から控除されます。所得税控除額、個人住民税控除額ともに2,000円を超える部分について対象となります。


 次に税金の使い道が、寄附した人が指定できることが特徴です。例えば「町の自然を守るための景観整備」、「子育て環境を整えるための環境整備」、「災害時のための放送網整備」等自分の思いを指定することができます。
 日頃住民は、各種の税金を納めていますが、支出については社会保障費、教育費、土木費等大まかな項目は広報誌等で知ることができますが詳細についてはわかりません。その意味でふるさと納税は使途を具体的に決めることができることから、自治体への参画意識が生まれるのではないでしょうか。


 また、ふるさと納税の言葉からして、生まれ故郷にしか寄附することができないと思われがちですが、複数の自治体に寄附することができます。「自分が卒業した大学のある市」、「旅先で大変お世話になった温泉のある町」、「祖父・祖母の生まれ育った村」、「毎年楽しみにしている伝統的祭りが、子供たちに引き継がれている町」等思い入れの強い自治体に寄附ができ、それぞれ返礼品をいただけます。


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 ふるさと納税の人気が高まっている要因として、それぞれの自治体が工夫をした返礼品を選べることです。日頃は手に入れることが困難な地場産品や、旬の果物、温泉施設利用券、美容品グッズ、伝統工芸品等もあります。特に地域の農林水産物は、安全・安心で生産者の顔が見えることから最近特に人気が高まっています。各自治体とも地域色を出したラインナップに努力している姿が感じられます。


 毎年大阪ドームで開かれる「かごしまファンデー」には、3万人を超える鹿児島県出身者が集まり、盛況を極めます。各市町村のブースは長蛇の列ができ、ふるさと産品が飛ぶように売れています。育ったふるさとの良さはいつまでも脳裏から離れません。
 各県人会の集まりに自治体の担当者が参加して、積極的にふるさと納税の仕組みをPRすることで浸透していくのではないでしょうか。


 初めて観光で訪れた鹿児島の各地で、感動のおもてなしを受けたお礼にと、ふるさと納税を行うきっかけづくりになる可能性もあります。多くのファンを創ることが自治体のイメージアップとなりブランド化につながっていくのではないでしょうか。


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 今後ふるさと納税を増やしていくためには、納税制度のわかりやすい説明、WEBを活用した各自治体のPRや地域を感じる商品のラインナップ、地産品生産者の意欲向上など納税者、自治体、生産者それぞれがメリットを享受できることが重要です。
 多くの自治体で人口減少が顕著となり、過疎化に拍車がかかっています。高度成長期に地方から大都市圏に移り住んだ世代はリタイアしている人が多くなっていますが、ふるさと志向は強いものがあります。
 返礼品について競争に拍車がかかることは避けねばなりませんが、地域色を感じる質の高い産品を選択できるようにすることが、定期納税者を増やすことにもなります。


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 「三方良し」という近江商人の教えがあります。売り手(自治体)、買い手(生活者)、作り手(地産品の生産者)がメリットを享受し、それぞれ社会貢献できることも、「ふるさと納税」の趣旨ではないでしょうか。
 まず、みなさんも「ふるさと納税」を行い、地域との絆を深めませんか。食や伝統工芸品等の返礼品を確認することで、ふるさとの農林水産物のおいしさ、安全・安心性、地域に残るモノづくりの匠の技に改めて感動するのではないでしょうか。


 最後に、石川啄木が上野停車場を訪れて思郷の念をつのらせた情景を詠んだ一首です。新幹線上野駅コンコースの一角に歌碑があり、上野と東北の人々の心をつないでいます。



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ふるさとの 訛なつかし 停車場の
人ごみの中に そを聴きにゆく

          石川啄木~一握の砂~


※参考資料:ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」

No.394 指宿地域の宿泊客を増やすために~マーケットにマッチした商品づくりが不可欠~

2016年1月12日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光



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 鹿児島に春の訪れを告げる「いぶすき菜の花マラソン」が、約1万7千人の参加のもと今年も盛大に開催されました。沿道には満開の菜の花が咲き、ランナーたちは思い思いの衣装で指宿路を駆け抜けていきました。2週間後には「菜の花マーチ」も予定され、全国から1万人を超えるウォーカーが開聞コースと指宿コースを2日間かけて歩きます。
 全国的なイベントへと発展した要因は、官民一体となった組織運営や沿道の温かいおもてなし等地元の皆様が支えていることがあげられます。


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 指宿地域は昭和40年代の前半から50年代後半にかけて、多くの新婚旅行客が訪れ、宮崎とともに南九州ブームの牽引役としての役割を果たしました。その後新婚旅行は海外へと行き先が変わりましたが、バブル時代の招待旅行や、大都市圏から企画商品がヒットし、団体旅行を中心として賑わいました。また、大河ドラマの放映や新幹線開業という好材料に恵まれ、浮き沈みはあったものの比較的順調に推移してきました。


 しかし、鹿児島を代表する温泉地である指宿地域の宿泊客が低迷しているのが心配されます。
 指宿地域の宿泊者は、2014年の第一四半期から昨年の11月までずっと前年実績を割り込んでいます。特に昨年の7月は10.0%、8月は9.6%、11月は16.5%の大幅な減少となっています。県全体として0.8%減の中で、指宿地域は10.1%の減少です。(平成27年:県観光動向調査(サンプル調査)1月~11月)
 2015年は桜島や口永良部島噴火の風評被害が影を落としていますが、指宿地域の現状は、必ずしも火山の影響だけではなく、地域全体の魅力創出が薄れてきているのではないでしょうか。


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 昨年の12月、首都圏や関西でエージェントの企画担当者と話す機会がありましたが、指宿地域を組み込んだ企画商品が低迷していると言っていました。
 指宿温泉の売りの一つは、世界に類のない「天然の砂蒸し温泉」ですが、あまりにもそれだけに頼ってきたのではないでしょうか。
 一方では、東南アジアで誘致商談会を開催すると、「砂蒸し温泉は、別府温泉の方が知られている」という話が出て残念な思いがします。「温泉県おおいた」のPRがかなり浸透していることが感じられます。


 また、従来から指宿の宿泊は、行程の途中にある知覧の「武家屋敷」や「特攻平和会館」を訪れる観光客の宿泊先となっていました。
 戦争を経験した世代も高齢化してきて知覧を訪れる観光客が伸び悩みの状況であり、入館者も減少してその影響を受けているのも事実です。


 最近の観光は2名~3名といった個人旅行が主流となり、宿泊施設では個室が好まれ、団体客に対応してきた施設は効率が悪くなっています。
 一方では、飽食の時代になり、毎晩の会席料理は観光客に敬遠されており、街に出て地域色豊かな料理を食べる旅行スタイルが定着しています。
 指宿での砂蒸し温泉を楽しんだ後は、1泊朝食型に対応できる施設が多い鹿児島市に戻って、宿泊する人が多くなっていることも苦戦の要因として考えられます。


 観光列車「指宿のたまて箱」は乗車率が安定していることから、日帰り観光客をいかに宿泊させるかが重要となっています。
 短期的には駅前の賑わいの創出が不可欠です。観光客が降り立つ駅周辺が街の第一印象となります。宿泊したいと思わせる商店街の復活が望まれます。
 駅前商店街は空き店舗が多いことから、低料金で貸し出しIターン、Uターン者が起業しやすくなるような制度も必要ではないでしょうか。


 また温泉地には、人が集まりやすいたまり場が必要です。指宿温泉はホテルが点在しており、その意味でも駅前から歩いて行ける場所に、市場や物産館の設置が望ましいと思います。
 マーケットの主役は女性です。女性を意識した街づくりと商品企画が求められます。おしゃれなカフェ、スイーツ、小物店・雑貨屋等の設置です。

温たまらん丼_s.JPG  地域全体に経済効果をもたらす取組が重要であり、地域の食材を活用し、「温たまらん丼」に続く地域グルメの開発も求められます。
 今後、砂蒸し温泉も活かしながら、宿泊者が夜散策でき、翌日まで滞在できるメニューが必要です。魅力ある公共空間をいかに創造できるかです。


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 指宿港からは、世界で一番美しいといわれるロケット基地のある種子島や、世界遺産の屋久島に高速船が就航しており、指宿を拠点に日帰り観光も可能です。種子・屋久と指宿をつなぐ高速船の認知度は低いことから、連携した共同のPRや商品企画の充実が重要になっています。


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 JR最南端の駅「西大山駅」を基点に、「フラワーパーク」「長崎鼻」「開聞山麓」「池田湖」「初夏のスイカ畑」「唐船峡」等をレンタサイクルで巡るツアーや、最南端の終着駅枕崎駅までのローカル列車を活用した商品企画が滞在につながると思います。「たまて箱温泉」は目の前に絶景が広がり人気が急増している温泉の一つです。


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 また指宿地域の対岸には、雄大な自然が残る大隅半島が広がっています。佐多岬の整備事業はまだ時間がかかりますが、九州本島最南端の岬の自然や地形は、最北端の宗谷岬や最東端の納沙布岬等に比べると、はるかに突端に来たという感慨に浸れる魅力があります。是非宿泊客に大隅半島の魅力を語り、渡らせて欲しい。


今インバウンドが急増しており、リピーターを創造するには多言語マップ、看板の統一、免税店の設置、砂蒸し温泉の効能、特産品のPR等が必要です。東南アジアとは地理的に近く優位な位置にあることから、富裕層をターゲットに温暖な気候、温泉、健康、食等を売り込むチャンスです。


 長期的には、温暖な気候を利用した野球、サッカー、ラグビー等のスポーツキャンプの誘致が欠かせません。プロサッカーチームの誘致には冬芝対応の球技場が不可欠です。
 また、錦江湾や外洋を活用したヨットクルーズの基地やメディカルツーリズムの推進も富裕層の誘客につながるものと期待されます。
 砂浜再生の事業がスタートしますが、長期的な取組みです。整備が終わった「熱海温泉」を視察して、その後の観光客動向を十分検証して欲しいと思います。


 最後に「第29回 にっぽんの温泉100選ランキング」が発表され、指宿温泉は昨年より一つ順位を上げて、第8位にランクされています。(「2015週刊観光経済新聞主催」による)
 温泉地としての魅力は評価されていますが、十分活かされていません。マーケットは変化しています。待ちの姿勢ではなく各施設が積極的に営業展開をし、誘客につなげる努力が今求められているのではないでしょうか。


       新しき 手袋はめて ここちよく
                冬の巷を ゆくあしたかな
                          ~尾上柴舟~


プロフィール

奈良迫プロデューサー
鹿児島県
観光プロデューサー
奈良迫 英光
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