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No.350 心遣いは日々の行動のディテールに宿る~感動を与え、享受できる人に~

2015年2月23日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 皆様の職場には日頃から多くの訪問客があると思いますが、帰るとき出口までお送りする機会はどれだけありますか。

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 日頃顧客と接していると、様々な送りの場面に出会います。顧客をエレベーターまで案内し、扉が閉まるまで頭を垂れることはよくあります。駅のホームで顧客を見送るときは、ドアが閉まり電車が動き出して、電車が見えなくなってからホームを離れることが大切ではないかと感じます。

 ところで宿泊施設では、以前は玄関に宿泊する方の名前をボードに書くことで歓迎の意を表していました。最近では個人情報保護法の関係もあり、団体以外は宿泊者名を書かない施設が増えています。

 宿泊施設の支配人に尋ねると、迎えの時より送る時に、より気を遣うということです。送迎という言葉がありますが、また来館して宿泊していただくリピーターにするには、両方とも大事ですが、特に送りの時の印象が大事ではないでしょうか。

 お客様を送る際、バスやタクシー、マイカー等に乗車される時に「ありがとうございました」と頭をさげ、車が見えなくなるまで手を振ってくれる旅館があります。

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 お客さんは朝までお世話になったこともあり、出発した後、自然と振り返り宿に向かって頭を下げることがあります。従業員が手を振っていると申し訳ない気持ちとともに、素直にうれしい気持ちになるものです。



 日頃から見送りの際、顧客に手を振る習慣を徹底している旅館の経営者から伺った話です。

 お客様が下見に来られて帰られる際に、従業員はいつもの通り「良かったら是非お泊りにお越しください」と挨拶し、車が見えなくなるまで手を振ってお送りしました。下見に来られたご夫婦は、車内から後ろを振り返ると、予約もしていないのに手を振ってくれていたとのことでした。

 夫婦はその姿に感動し、この旅館なら間違いはないだろうと車を引き返して来て、宿泊したいと申し出たとのことです。実際に宿泊された際、きめ細かなサービスと季節感あふれる食事の内容に感激し、その後ずっとその旅館のファンになっているとのことです。

 「人が見ていない場所でこそ、一生懸命に業務に励むことが大切である。」と日頃から従業員に話していると言います。この施設は、従業員全員が同じような心がけを持ち、「おもてなしの心」で仕事に取り組んでおり、そのことがお客様への評価として表れていると思います。当旅館は今でも人気旅館として多くの顧客の支持を得ています。

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 指宿市役所の職員の皆様は、毎日欠かさず「いぶすきのたまて箱」の列車に手を振って乗客を歓迎しています。「ナニコレ珍百景」でも放映され話題となりましたが、継続していることが立派です。



 家庭でも、日頃から来客をもてなすことには慣れているとは思いますが、家に主人が不意の客を連れてきて戸惑うことがあるのではないでしょうか。夜更けに客が帰ると、玄関を出た後灯りを「バチッ」と、すぐ消してしまうことも多いのではないかと思います。

 家族に連絡もなく客をつれてきた夫が悪いのは理解できます。客にとってみると玄関を出た後すぐに灯りが消えると、自分は招かざる客ではなかったかと寂しい気持ちとともに、申し訳ない心が残るのではないでしょうか。

 お客様はマンションの玄関を出て、しばらくしてから訪問先を振り返ることがよくあり、玄関に灯りがついていると気持ちがなごみます。玄関から道路に出て客を見送り、歩き出して客が見えなくなってから帰路の無事を祈って頭を下げ、家の中に入り灯りを消すぐらいのおおらかな気持ちを持ちたいものです。

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 ところで卒業や入学、社会人のスタート、異動の時期が近づきました。かつてあまり目立たなかった友人が、いつの間に責任ある立派な地位に就き、驚かれることもあるのではないでしょうか。友人は学生時代に増して、日々勉学や仕事に精進し努力したおかげではないでしょうか。

何気ない「温かく思いやりのしぐさ」は、日々の行動のディテールに宿るのではないでしょうか。 卒業や入学、異動の時期を迎え、恕の心を持って日々友人たちとの絆を深めることも大切です。人の成功をうらやむより心から祝福できる器量を持ちたいものです。

          友が皆 我より えらく見ゆる日よ
                          花を買いきて 妻と親しむ

          こころよく 人をほめて みたくなりにけり
                           利己の心に 倦めるさびしさ
                                      ~石川啄木~

今回のコラムが350回目となりました。
いつも拙稿にお付き合いいただき感謝申し上げます。 

No.349 桜島噴火の風評被害を最小限に~皆様のネットワークの活用で的確な情報発信を~

2015年2月16日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 最新の桜島の情報について、山の膨張が見られるなど活動が活発化しているということが、全国的にメディアで放映されました。この火山情報が発表されたこともあり、鹿児島への入込み客減が懸念されており、観光面については正確な情報発信が問われています。

 鹿児島中央駅の案内所には、「桜島へ渡れますか」と訪ねる旅行者が増えていると職員が語っていました。昨年発生した御嶽山噴火事故が影響しており、噴火と報じられただけで観光客は敏感になっていることが伺えます。

 2011年1月の新燃岳噴火の際も、霧島連山の状況が連日マスメディアで報道されたこともあり、霧島地域のホテル・旅館は危険地域から離れているにもかかわらず、キャンセル等が相次ぎました。観光客の減少は、多くの業種に影響があり、地域経済にも大きな打撃となりました。

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 噴火や地域の状況を細かく知らせるために、県、霧島市、県観光連盟、霧島市観光協会等で連携し、旅行エージェント、マスコミ等を直接訪問し、道路の規制や周辺の山への登山の可否、通常と変わりなく営業している霧島温泉の情況報告を行い、送客支援と適切な報道のお願いをしました。

 関東地域からは鹿児島へのツアーも多いことから、首都圏のメディアツアーを主に扱っているエージェントに対して、企画募集展開の強力な要請も行いました。また、鹿児島市内のテレビ局や新聞社も訪問し同様のお願いをしました。

 桜島についても、今まさに風評被害をいかに食い止めるかが問われています。桜島は鹿児島の観光のシンボルであり、城山の展望台に立つと目の前にその雄姿が真っ先に飛び込んできます。桜島について県内の人はその位置関係はよく解りますが、県外から訪れる観光客は、錦江湾をはさんで鹿児島市に以外と近いことや、時々噴煙を上げる活火山の麓に人々が住んでいることに驚きます。また、湯之平展望所から間近に見える桜島の豪快な山肌にも驚かされます。

 桜島は、これまで幾多の噴火を繰り返し、大正3年の大爆発の時には流れ出した溶岩流は、大隅半島と陸続きとなりました。作家梅崎春生は自らの戦争体験にもとづき、小説「桜島」を書いています。

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 また、林芙美子の文学碑がある古里温泉は、彼女の母が育ったところです。桜島は永年の噴火で火山灰の土壌が堆積し、農作物や果樹を作るには困難をきわめますが「世界一大きい桜島だいこん」や「世界一小さい桜島小ミカン」が収穫されます。


 最近では桜島の自然を活用した「溶岩でのピザ焼き」や「温泉掘り」など体験観光が注目を浴びてきています。「NPO法人桜島ミュージアム」では、桜島を一つのフィールドとして捉え、桜島の真の魅力を観光客が自ら「楽しむ」ことができるような体験プログラムが用意されています。

 桜島から「地球の成り立ち」や、「防災への備え」を学ぶことができ、自然学習のカリキュラムとして取り入れる学校が増えています。火山活動を続けている山の姿は生きた教材です。平成25年9月24日には「桜島・錦江湾ジオパーク」として日本ジオパークに認定されました。

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 桜島には6000人近くの住民が生活しており、火山の近くにこれほどの人々が住んでいる地域は、世界どこにもありません。桜島は天気の良い日は、7回その姿が変わると言われます。鹿児島市民は、借景としてその姿を毎日見ていますが、もし桜島がなければ、鹿児島市は味気ない街になるかも知れません。溶岩や噴煙を上げる山をゆっくり望みながら錦江湾を巡る「よりみちクルーズ」も人気となっていますので、桜島のすばらしさを多くの県外客にPRしてもらいたいものです。

 霧島市のあるホテルでは、今年春の修学旅行が1校取り消しとなりました。霧島は桜島の絶景が望め、しかも離れた場所にあります。火山情報に対して父兄の不安の声が寄せられて、行先が変更になりました。正確で安心感を与える情報を継続して発信することが重要になっています。鹿児島市のメインの観光地である「かごしま水族館」の1月~2月の入館者が伸び悩んでいます。桜島桟橋のすぐ近くにあり、フェリーの乗船者数が入館者の動向にも影響を与えます。

 桜島火山の情報は、県内全域に影響が及ぶと捉えねばなりません。マスコミ、旅行エージェントへは特に働きかけが必要です。メディアでは、噴火が起こると過去の大きな噴火のシ-ンも報道することがあり、視聴者は爆発的噴火がまた、発生したと捉えがちです。

 桜島は現在も登山禁止の山であり、噴火警戒レベル3で半径2キロは立ち入りも規制されています。桜島は時折、噴火していますが、観光するには支障はなく、また住民はいつもと変わらぬ生活を送っています。

 県と県観光連盟では、桜島の魅力を再発見する「桜島七十七景ルート」の選定を平成27年度に行います。多くの応募をお待ちしています。

 気象庁は、3月末から桜島降灰予報をより具体的に発表することになりました。生活情報として生かすことができます。

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 最後に、スマートフォン、携帯電話、パソコンなどの情報手段をほとんどの人がお持ちと思います。友人等にぜひ桜島の状況を発信して風評被害を少しでも軽減できればと願っています。皆様のネットワークの活用で、的確な情報発信が鹿児島への観光誘致に役立ちます。よろしくお願いいたします。

No.348 観光振興への追い風を活かせ~効果を数値化し、次の展開に繋げる取組を~

2015年2月9日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 3月に入ると各自治体では27年度予算の審議が始まります。最近は観光振興に力を注ぐ自治体が増えており、多くの予算が計上されることを望みます。2008年に「観光庁」が設置されて、日本も観光振興の重要性が叫ばれており、インバウンドが2014年、1300万を超えるなど着実に成果が上がっています。

 今年は、国が地方創生に力を入れており、先日の知事の定例会見では、重要施策として第1次産業と観光産業の振興を挙げられました。本格的な少子高齢化社会を迎え、交流人口拡大による地域活性化は、自治体にとって重要な政策であり、観光振興は不可欠なものとなっています。

 観光振興あたっては、行政、経済団体、業界、民間事業者等の連携が大きな柱になりますが、一方では、それぞれの壁をいかに乗り越えるかが課題となっています。

 各自治体は税収が伸び悩む中でも、多岐にわたる町の振興が必要であり、効率的な予算執行が求められています。観光宣伝の在り方においても、遠方だけの活動に力がはいりがちです。我がまちにも博物館、美術館、温泉施設等が多くあり、利用促進には住民へのPRや、隣接する市町村との連携が欠かせません。

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 有名温泉地を持つ自治体は隣町と共同でPR活動を行うことで、他地域からの日帰り客を宿泊につなげることができます。広域連携で組織を作り、観光ルートや食、地域産品等の情報発信を行うことで大きな宣伝効果を生み出します。費用も少なくてすみ、効果が上がるのではないでしょうか。

 エージェントに対しては、ホテル等での説明会や商談会を開催することで、旅行商品造成や人脈づくりにつながりその後のセールスにも役立ちます。多くの営業マンが集まり易い場所の設定が大切です。

 例年福岡、京都、大阪で毎年スポーツ合宿誘致のセミナーを開催しており、着実に実績が上がっています。県内の多くの自治体が参加することもあり、セミナーへの大学の参加校が増えています。大学にとっては一度に自治体の施設・補助金・受入体制等の概要が解ることで、選択肢が広がります。自治体は合宿の実施時期、競技の練習メニュー、食事等が事前に把握でき、施設の有効的な活用が可能となります。

 観光振興には経済同友会、商工会議所、商工会、農協、地域づくり団体、NPO法人等民間組織との連携が重要になっています。地域のイベントを実施する場合は行政やこれらの団体の協力なしには開催できないのがほとんどです。協賛金等の収受も大きな課題となります。

 また、実施本部を立ち上げるとなると組織作りに時間がかかり、肝心の実務体制が後手に回ることがよくあります。地域全体でイベントに取り組む場合は、自治体の関係者をトップに据えて、民間のリーダーが実行委員長に就任した方がスムーズに行くのではないでしょうか。

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 指宿の「菜の花マラソン」、「菜の花マーチ」は、行政と業界の役割分担がはっきりしており、成功しているイベントと思います。現場で時間的制約を受けにくいのは、民の力ではないかと思います。組織作りに時間をかけるよりいかに動ける組織を作り上げるかが課題です。

 ところで、バブル時期までの日本の有名温泉地では、大型ホテルの建設、部屋の増設と多額の投資が行なわれました。現在では個人旅行が主流となり、宴会から2次会までできるような大型宿泊施設は敬遠され、宿泊者も減少しており、施設の維持が困難となっているところも見られます。

 一方地域ぐるみで街づくりを行っている温泉地や、地元や県民に親しまれている施設はいまでも活気があります。由布院温泉や黒川温泉は、個々の施設よりも地域全体のまちづくりが重要と捉えており、食材はできるだけ地域で調達し、各施設の看板も少なくするなど地域の景観づくりにも努力しています。

 経営という面では自分の施設の売上げが優先しますが、他の施設とも連携して誘客に努めることが、地域全体の活性化になると思います。スポーツキャンプやMICE等は長期に多くの宿泊客があるため、地域全体で受け皿を整える必要があります。地域で1軒の施設が栄えるより、魅力に富んだ個々の施設が生まれることが地域全体の魅力アップにつながります。

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 日本人の国内旅行は成熟し、しかも本格的な少子高齢化時代に入り、大きな消費拡大は望めず、誘客も難しくなっています。連携を強化して動ける組織を構築し、形より実のある成果が出るよう努力したいものです。


 産業の6次産業化が言われていますが、情報も多岐に渡りそれぞれの部門の垣根を越えることは容易ではありません。今や地域総力戦の気概で取り組まないと、持続できる観光地づくりには時間がかかります。外国人の受入態勢の整備も急がれます。

 観光の戦略としては、長期的には魅力ある観光地づくりや海外クルー船、新たな地域からの教育旅行の誘致、大型コンベンションの誘致等が必要であり、短期的には年度内に開催されるイベントや、話題性のある地域をターゲットとして絞り、大都市圏、九州管内などを主に、具体的なプロモーションを推進することで需要開拓が可能となります。

 そのことで組織や役割分担、予算規模も決まってくるのではないでしょうか。無料バス等を運行して集客する手法は安易な施策ですが、費用対効果をより厳しく分析し、次に繋げる取組としなければなりません。

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 ブームに乗り一度に多くのお客様が来訪するより、継続して来てくれる観光地が求められます。情報発信を心がけ、常に注目されている地域に人は魅力を感じます。行政、業界、民間事業者等がそれぞれの壁を越えて連携した取組が求められます。 

No.347 ボランティアガイドの活躍に学ぶ~地域を越えた連携を~

2015年2月2日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 2月に入り、プロ野球のキャンプがスタートしました。宮崎県は「スポーツランドみやざき」をキャッチフレーズに、プロスポーツキャンプ誘致に努めています。今年はプロ野球7チーム、サッカー21チームがキャンプを張ります。


 その宮崎市で、「九州観光ボランティアガイド研修会in宮崎」が、九州7県から90団体200名、大会関係者27名が参加して盛大に開催され、鹿児島県からは23団体49名が参加しました。

 事例発表会や分科会では、日頃の活動報告やネットワークづくり、ガイドの資質の向上、役割等について真剣な議論が展開されました。ガイドさんたちは今回が8回目となることから、お互いなじみの方々が多く1年ぶりの再会を喜んでいました。

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 最近の旅行形態は、団体旅行から個人旅行への流れが顕著であり、しかも地域の生活、文化に触れる旅が多くなっています。街歩き、エコツアー、歴史探訪等ボランティアガイドさんの役割が求められており、加えて地域のおもてなし力が問われています。

 ガイドをする上で日頃の準備や行程での心掛けも大切な要素で、予約を受けたお客さんの地域の概況を把握して、最初の挨拶でふれると親近感が高まります。日頃から街の成り立ち、暮らし、地域の名産品店等を勉強しストーリーを加えて語ることが印象に残ります。

 特に地域の生活・文化を語ることは、観光客が地域を知る良い機会となります。専門的な知識の羅列だけでは、参加者は飽きてしまいます。客の表情を伺い、案内の内容を変え、場所によっては説明の濃淡をつけることも必要と考えます。また、最近は熟年の参加が増えており、ルート沿いのトイレの場所や病院等も頭にいれておく必要があります。

 ボランティアガイドの組織がうまく機能するためには、特定の人だけに予約が集中することは、組織に亀裂を生じさせます。全員のスキルアップの機会を増やして日頃の勉強会を増やすなどの取組みが大切です。

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 日常活動に困窮している団体も多く、まさにボランティアでの活動に支えられているのが実情です。勉強会の際は会場等は自治体が無償で提供し、また、今回のような年1回の九州大会への参加については、バス代等の支援が求められます。日頃から観光客の案内やおもてなしに関わっており、その対価としては必要なことではないでしょうか。

 一方では、傷害保険を組み入れてガイド料金を収受している地域もあり、その資金でスキルアップ研修を実施している団体もあります。自己負担を減らして行く取組も必要です。

 ところで、九州観光推進機構の調査によると、首都圏女性の九州観光に対するイメージは、北海道、沖縄に比べてかなり劣っています。インバウンドが伸びており、外国人の受入体制充実も求められています。

 南九州の魅力ある観光ルートを定着させるためには、県境を越えた連携が必要になっています。遠方から来る観光客は広域に回り、県境の意識はありません。これからも隣県と協調しながら誘客に努め、一方では競争して地域を磨くことも必要ではないでしょうか。ボランティアガイドさんを活用した蘊蓄のあるツアーが人をひきつけます。 

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 指宿の「篤姫観光ガイド」さんと、対岸にある「南大隅町歴史研究会」のガイドさんが相互の地域の視察や勉強会を開くなど連携し、船上でのガイドも努めています。九州本島最南端の佐多岬への道路が無料化されたこともあり、観光客が増えていますが、アクセスが不便なこともあり、相互で案内することで観光客の利便性を図っています。

 霧島市、曽於市、湧水町は、隣県のえびの市、小林市、都城市、高原町の7市町村で「環霧島会議」を設立して、「霧島山」をキーワードに、市・町境や県境を越えて連携し、環境、観光、防災等に関わる様々な施策・事業について、お互いに知恵を出し合い、共通する課題や目的に向かって協働することにより、地域活性化を目指しています。周遊列車を運行する等の取組が成果を上げています。

 ところで旅行エージェントの南九州方面の旅行は、2泊3日のコースが一番多く、2県を回る企画が大勢を占めています。宮崎空港から日南海岸~霧島~鹿児島市内~南薩~指宿~鹿児島のコースや九州自動車道を利用して人吉~霧島~桜島~鹿児島~知覧~指宿のコースが人気です。いずれも県境を越えて広く回ります。地域から地域へ、ボランティアガイドさんの語りが観光客を楽しませます。東九州自動車道が開通し、北九州方面からの新たな観光ルートが魅力です。

 ボランティアガイドの九州大会は一巡したこともあり、今年から新たなスタートとなります。県内には51団体、928名のボランティアガイドさんが登録しています。数年後に鹿児島大会が巡って来た時は、温かいおもてなしの心で迎えたいものです。皆さんもボランティガイドさんの案内で、地域を巡るツアーに参加して下さい。地域住民が地域の魅力を知り、語ることが地域の発展に求められます。

        けふもまた こころの鉦(かね)を うち鳴らし 
                うち鳴らしつつ あくがれて行く
                    ~若山牧水~ *牧水は現在の延岡市生まれ

No.346 プロサッカーのキャンプ誘致を地域活性化に活かそう~今年も鹿児島ユナイテッドFCの支援を~

2015年1月26日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

       君ならで 誰にか見せむ わが宿の 軒端ににほふ 梅の初花
                                   源実朝 ~金槐和歌集~

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 大寒が過ぎ、あぜ道には「ふきのとう」が芽を出し、開聞山麓では黄色い絨毯を敷いたような満開の菜の花畑に、薩摩富士と呼ばれる開聞岳が一段と美しく映えています。「菜の花マラソン」と「菜の花マーチ」が開催され、全国から訪れた参加者が一足早い春を楽しんでいました。

 奄美大島では、ヒカンザクラが満開となり、「奄美観光桜マラソン」が2月1日に開催されます。出水平野に越冬していたツルの北帰行が昨季より16日早く始まり、鹿児島は春近しという感じです。

 プロサッカーのキャンプインです。県内では韓国のチームを含めて、昨年より4チーム増の18チームが、鹿児島市、霧島市、指宿市、薩摩川内市、さつま町でキャンプを張ります。Jリーグのジュピロ磐田、清水エスパルス、浦和レッドダイヤモンズ、柏レイソル、京都サンガFC等が永年にわたり県内でキャンプを行っています。鹿児島市の友好都市である松本市を本拠地とする、「松本山雅FC」がJ1に昇格しましたが、今年も鹿児島でキャンプを行います。

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 宮崎県ではJ1、J2,J3合わせて21チームが県内各地域でキャンプを行います。今年初めてJリーグ開催に先がけて、宮崎、鹿児島でプレシーズンマッチの新規大会「ニューイヤーカップ」の開催が決定しました。鹿児島では、J1浦和、清水、J2磐田、熊本の4チームによる総当たりで競います。

 プロリーグの試合が複数見られることは、鹿児島では珍しく例年になく賑わうのではないでしょうか。サッカーのキャンプ地としては、宮崎県と鹿児島県が定着してきた感があり、観光客誘致に活かせばなりません。

 プロチームがキャンプを行うことは、地域に大きな経済効果をもたらします。選手の宿泊、飲食に伴う費用は大きなものがあり、また多くの取材陣が訪れます。キャンプ地レポートとして定期的に全国に放送されることから、知名度アップにもつながります。週末には一流選手のプレイを見るため県外からのファンや観光客が訪れます。キャンプを受け入れている地域では、最大限の歓迎を持って受け入れる体制づくりが求められます。

 また、プロの選手は、練習後や休日には街に出かけたり、ゴルフを楽しんだりします。キャンプ期間中は、練習だけでなく、キャンプ地の住民との交流会やサッカー教室等を開くなど交流を深めています。キャンプしているチームには、郷土出身者もいます。親子で出かけて、日ごろはなかなかできないふれあいを深めることがチームにとっても大きな支えとなり、ファンづくりとなります。

 鹿児島県は子供の頃からサッカー熱が高く、高校サッカーの全国大会では、優勝、準優勝校を輩出しています。また、ワールドカップに出場し、日本チームの司令塔である遠藤保仁選手は桜島町の出身であり、先日から始まった「アジアカップ」でも大活躍しています。ヨーロッパのチームでは、南さつま市出身の大迫勇也選手が活躍しています。彼に続く選手が生まれることが期待されます。

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 昨年JFLの鹿児島ユナイテッドFCが誕生し、年間で第3位と健闘しました。J3、J2、J1とチームのJリーグへの昇格には時間を要しますが、今年も昨年以上の支援体制が必要です。特に鹿児島でのゲームでは応援に出かけて欲しいと思います。そのことがサッカーファンの増加につながり、応援ツアー催行、物販の販売等地域に経済効果をもたらすことにつながります。

 ところでプロサッカーチームのキャンプを増やすには、冬芝の完備されているグランドが不可欠です。県内には自治体や学校の統廃合で遊休地となっているグランドが多くあります。ぜひ冬芝の育成に取り組み、プロを呼べる施設を作り上げて欲しいものです。5年後には国体や東京オリンピックが開催予定であり、事前キャンプ等の誘致には欠かせない条件です。県内には豊富な温泉が湧き、練習後の休養には最適な地域が多くあります。官民あげてのキャンプ誘致活動が求められます。

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 春休みになると、関西や福岡県からの学生のスポーツ合宿団体が多くなります。特に関西地域からは、「さんふらわあ」を利用して多くの学生が訪れます。自治体の支援制度や大隅地域の利便性が合宿の誘致に役立っています。鹿屋体育大学との連携も重要になっています。

 鹿児島が誇る温泉、食の魅力、練習会場のPR、おもてなしの心の醸成、宿泊に対する自治体の補助制度の充実を図り誘致を強化しなければなりません。

 最後に県観光課では、「キャンプ地めぐりスタンプラリー」を実施しています。チームグッズやキャンプ地の自治体の特産品が当たります。今年はキャンプ地を訪ね、観光地巡りや温泉に浸る等地元の人にも触れる機会をつくり、鹿児島の魅力を再認識してください。春はそこまで来ています。              

                      早春賦
             作詞:吉丸一昌 作曲:中田章
       春は名のみの  風の寒さや  谷のうぐいす  歌は思えど
       時にあらずと  声もたてず  時にあらずと  声もたてず
                          *歌の舞台は信州安曇野です。

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