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No.330 免税店の設置で県産品の販売拡大を~外国人旅行者向け消費税免税制度の変更を活かそう~

2014年9月29日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 2013年の訪日外国人旅行者数は、1036万人で悲願の1千万人を達成しました。全体の76.7%がアジアからの旅行者です。国別では、韓国、台湾、中国、香港、タイの順となっています。8月は22.4%増の111万人で、1月からの累計は25.8%増の863万8千人となり好調を維持しています。

 訪日客が伸びている要因として、ビザの緩和、円安、LCCの就航、和食の世界無形文化遺産登録による日本ブーム、東日本大震災から3年半が経過していること等があげられます。このまま推移すると、年間では1200万人程度となり、2020年の2000万人達成も現実味を帯びてきました。

 鹿児島県の2013年の訪日外国人の宿泊者数は21万人余りで、26.3%増となっています。台湾、香港が大きく伸び、韓国や中国からは竹島や尖閣諸島問題もあり減少しました。

 2014年は、台湾、香港が引き続き順調で、中国は回復基調で、韓国は旅客船沈没事故等の影響もあり減少傾向でしたが、冬場のゴルフ客等の回復が期待できます。7月の観光動向調査によると、宿泊客は15.5%増の12,158人となっています。このまま推移すると、今年は過去最高の外国人宿泊者数になるのではと想定しています。

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 ところで、外国人旅行者向け消費税免税制度について、今年の10月1日から、消耗品(食品・飲料、化粧品、薬品等)が新たに免税対象となり、全品目が免税対象となります。

 これにより各地の銘菓、酒、米、調味料、薬、伝統工芸品といった地域ならではの特産品も免税販売が可能となることから、訪日外国人の旅行消費を促し、地域経済の活性化とリピーターの創出に繋がるものと思います。対象品目の拡大に加えて、手続きも簡素化されます。

 今回の制度改正を鹿児島においても最大に活かす取組が求められます。国では2020年の東京オリンピックに向け、全国各地の免税店を10,000店規模へ倍増させることを目標に、さらなる免税手続きの利便性の向上等に取り組むこととしています。

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 県内には現在14店舗の免税取扱店がありますが、デパート、量販店、電気店等に限られており、今後取扱店舗の拡大が求められます。これから免税店設置を申請するにあたっては、態勢づくりも求められます。外国語表記、中国語や英語を話せるスタッフの養成や異文化への理解、Wi-Fiの設置等が不可欠です。

 現在免税店を扱う店舗は、鹿児島市内に集中しています。今後の免税店設置については、貸切バスが駐車できる郊外の大型店、道の駅、土産品を置いている食事店、散策中に立ち寄れる中心市街地、宿泊者に便利なホテル等が、適しているのではないでしょうか。

 先日上海の有力企業グループの幹部と会う機会がありました。グループ内に旅行部門を持ち、今年はすでに長崎県を中心に、九州へ1200人の訪日客を取り扱っています。幹部によると、今後九州に送客しやすい要件の一つとして、多種品目を扱う免税店が身近な場所にあることが不可欠と語っていました。

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 上海の人々が今日本に行って買いたいものは、安全安心の食材が一番である。電気製品やデジカメはすでに大衆に普及しているとのことでした。富裕層も増加し健康・長寿に関心があり、日本の美味しいブランド米、調味料、粉ミルク、薬品、化粧品等に人気があると言っていました。

 米は日本より4倍も高く、宿泊先で食べた美味しい米を手に入れたいという旅行者のニーズが高くなっていると語っていました。また赤ちゃんがいる世帯や老人層は、粉ミルクや薬品等を重宝しています。自国の製品より日本産のブランドを信用している姿が感じられます。

 このように中国からの観光客は、行程の中で生活用品が買える免税店への立ち寄りを望んでいます。人口や経済発展を考えると、鹿児島への訪日客は、今後上海からが一番伸びるのではと考えています。その意味でも上海線の利用促進を図りたいものです。

 また、福岡空港からの入国者が鹿児島を観光し、最後にショッピングを楽しみ、鹿児島空港から出国し易い環境を整えることが経済効果をもたらします。そのためには新幹線の片道切符の大幅な割引をすべく、JR九州との交渉も求められます。

 今回全品目に消費税免税制度が拡大されたことで、県産品の販売拡大を図ることで、地域の活性化につなげねばなりません。食料品では、早場米、醤油・味噌、黒酢、調味料、干物、黒砂糖、郷土銘菓、焼酎、水、薬品、健康補助食品等、又富裕層は、ガラス工芸品、薩摩焼、屋久杉製品、薩摩錫器等にも関心を持つのではないでしょうか。

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 鹿児島を訪れた外国人が、「免税店シンボルマーク」に気づいて来店したら、気軽に応対できる店を増やして行く必要があります。訪れた地域に免税店がなければ、購買のチャンスを逸し、2度と鹿児島を訪問する機会を絶ってしまいます。


 日本の人口は確実に減少して行くことから、観光交流人口増大による地域活性化は不可欠です。観光庁の資料によると、定住人口1人減少分を外国人観光客11人でカバーできると試算しています。

 県内各地域に、外国人がゆっくりショッピングできる免税店を増やすことが、外国人誘客の一つになるのではないでしょうか。

No.329 第7回かごしま観光人材育成塾」の開催について~まちづくり・観光地づくりに求められるものとは~

2014年9月22日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 天候不順が続いた今年の夏も終わり、朝夕の涼しさに秋の気配が濃くなり、えびの高原ではススキの穂が色づき始めています。九州新幹線全線開業から3年半が経過し、開業効果が一段落しているものの、週末の観光地は多くの観光客で賑わっています。

 鹿児島市内の食の有名店には、ガイドブックを持った若者たちが列をなし、修学旅行生は、天文館のかき氷店で「白くま」を食べている姿が印象的です。そのまちに観光客の姿を見れば、元気さがわかるような気がします。

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 ところで、九州新幹線全線開業後二次交通の整備や新たな地域づくり、情報発信が功を奏し、従来通過地点であった地域に観光客が訪れるなど変化が起きています。一方では個人旅行が主流となった今、それに十分対応できなくなった施設が厳しい状況におかれる可能性があります。

 今年も、これからの地域づくりや情報発信を担う人材育成を目指し、「第7回かごしま人材育成塾」を開催します。地域づくりやおもてなし、情報発信、地域資源を活用した特産品等の開発、よそものから見た地域おこし等、鹿児島が今後取り組むべき課題について学ぶ6つの講座を開催します。

 講師と講座の内容について簡単に紹介します。

 第1講座は、県観光交流局の倉野観光課長が、「観光かごしまの現状」について講演します。県が毎年取組んでいる「魅力ある観光地づくり事業」の現況や今後の重点課題の一つである「プロスポーツの振興」等についての講座です。プロスポーツについては、「キャンプ誘致」や6年後の東京オリンピック、国体の開催をにらんだ戦略の一端が語られるのではと楽しみです。

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 第2講座は、「株式会社まちづくり計画研究所 代表取締役 今泉重敏」さんによる【まちづくり仕掛けのハウツー】です。今泉さんは、かつて福岡県久山町の職員を10年間経験された後独立され、今では九州における地域づくり、まちづくりの"のぼせもん"仲間のネットワークの代表世話人として活躍されています。


 首長、議員、地域づくりリーダー、女性団体等の、約1万人の人的ネットワークを持つ、笑顔のバイタリティあふれるまちづくりコーディネーターです。自治体の総合計画、観光ビジョン、中心市街地の活性化計画、過疎地活性化計画、小学校単位のまちづくり協議会等の将来ビジョンの策定等、これまで150以上のプランを策定した経験の持ち主です。自治体の多くの職員の皆さまに聞いていただきたい講義です。

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 第3講座は、「第30回国民文化祭におけるおもてなし」です。来年10月31日~11月15日まで開催されるこの大会は、日本における文化の最大の祭典です。県内全ての市町村文化行事が開催されることから、県全体としておもてなしのレベルアップが求められます。


 講師の中村朋美さんは、地元メディアの元アナウンサーとして活躍され、温泉、焼酎、美術・工芸、食等にも造詣が深く、常にお客様の視点で語りかける姿勢は、誰もが信頼を寄せています。社会貢献活動にも積極的に取り組まれています。「おもてなしの極意」や鹿児島の新たな観光の在り方について示唆に富んだ話が聞けるのではと思います。

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 第4講座は、日本一の鰹節の産地である枕崎市で、新たな食文化に取り組む中原水産株式会社常務の中原晋司氏による【出汁(だし)による地域活性化】です。日本食がユネスコの世界無形文化遺産に登録され、日本の伝統的食材が脚光を浴びています。



 枕崎の漁師が船上で食べる丼飯からヒントを得た「枕崎鰹船人めし」は、県内の地域グルメのNO1を決める「Show 1グランプリ」で2年連続1位に選ばれました。中原常務は、特産の鰹節で街を活性化したいと出汁の魅力を日々PRし、新商品開発にも取り組むとともに、海外での営業活動も始めています。枕崎を「出汁のふるさと」としたいと言う大きな夢が語られると思います。食の関係者にぜひ聞いてもらいたいテーマです。

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 第5講座は、株式会社 トラベルジップ代表取締役 大泉敏郎氏による【観光業界・観光客のトレンドとWebサイト活用方法】です。現在県・連盟のホームページについて、ご指導いただいているのが大泉氏です。大泉氏の指導・助言により連盟のホームページへのアクセス回数は飛躍的に伸びています。


 顧客が求める情報はどこにあるのか、また見たくなるホームページのあり方について、革新的な提案がなされるものと思います。各自治体で広報や観光宣伝を担っている人の最適な講座と思います。是非参加ください。

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 最後の第6講座は、薩摩川内市の甑島で「地域おこし協力隊」として活躍されている関美穂子さんによる、【「ヨソの目」が地域に入ることって?~地域おこし協力隊の事例紹介~】です。地域おこし協力隊とは簡単に述べると、「都会の若者を地方に呼んで、地域活動をしてもらいながら地域力を維持強化していきましょう」、という事業で総務省の人材活性化・連携交流室の事業の一つです。

 関さんは大学卒業後、エージェントで海外旅行のツアー企画造成、予約や担当され旅行業務には精通してこられました。日頃から地域が主体の着地型観光に興味を持っており、薩摩川内市が公募していることを知り、採用された一人です。現在下甑島に暮らしながら、特産品開発や旅行商品の企画等に取り組んでいます。

 よそものの視点で捉えた甑島の魅力をどのようにして商品化し、PRして販売していくのかそのサクセススト-リーが聞けるのではないかと思います。甑島には、水戸岡鋭治氏設計による、観光高速船が就航し話題の島となっています。島の魅力とともに彼女の活躍ぶりに拍手を送りたいと思います。

 今回から、講座の選択も可能となりました。どの講師の方々も豊富な経験を持ち、それに裏打ちされた講演は、皆さんの活動に必ず役立つと信じます。また、夜学塾は、参加者同志や講師陣とのコミュニケーションの場であり、講座で聞けないより具体的な話が聞けると思います。

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 地域づくり・観光地づくりには、まず人材の育成が重要と考えています。今まで人材育成塾を受講した方の多くが、それぞれの地域で頑張っていることは、鹿児島の観光にとって大きな財産となっており、7回連続で受講を申し込んでいる方もいらっしゃいます。

 九州新幹線全線開業から3年半、転換期をむかえている鹿児島の観光です。この講座が人材育成とさらなる地域活性化につながることを期待し、多くの受講者が参加されることを期待します。

No.328 拠点地域からの広域観光周遊ルートの商品化を~観光客をいかに広げるか~

2014年9月16日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 赤とんぼの群れ飛ぶ姿が夕日に映え、秋の訪れを感じます。登下校の子供たちはジャージ姿が多く見られますが、運動会の練習の帰りでしょうか。また、味覚の秋を迎え、店頭には栗や柿の実が並び、北国では紅葉が始まります。

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 1年の内で一番観光客が動く時期になりました。鹿児島県内には年間680万人もの宿泊者がありますが、約70%が鹿児島市、霧島地区、指宿地区の3地域に集中しています。(観光庁2015年統計)今後の鹿児島の観光を考えるとき、この3地域からいかに観光客を広げるかが大きな課題となっています。

 この度、鹿児島地域発の広域観光周遊ルートのコースとして、いちき串木野・薩摩川内方面のモニターツアーを実施し、宿泊・観光施設、キャリア、エージェント、県、市、地域振興局等から56名の参加がありました。主な観光地の魅力と課題について整理したいと思います。

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 2018年(平成30年)は明治維新から150周年の節目を迎えますが、維新の立役者となった偉人を多く輩出しているのが薩摩藩です。1865年薩摩藩は、国禁を犯して15名の若者と随行者4名を英国に派遣します。いわゆる薩摩藩英国留学生です。その生徒の多くは開成所で学んだ若者で帰国後は官界、実業界で活躍します。

 留学生の足跡を見学できる施設として、いちき串木野市にオープンしたのが、「薩摩藩英国留学生記念館」で、その施設を最初に訪ねました。地元の田畑市長の出迎えを受け、記念館の設計から展示物まで手がけた砂田光紀プロデューサーの案内で、館内の見学を行いました。

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 留学生の苦難の渡英やその後の活躍のストーリーは、近代日本の成長に大きな足跡を残していると感じます。また、渡英前に過した羽島の人々との交流は、日本を離れる留学生たちの心の支えになったのではないでしょうか。


 留学生の中で村橋久成は、戊辰戦争の際砲台長として活躍し、その後北海道開拓使となり、サッポロビールの生みの親として語り継がれています。

 留学当時13歳と最年少であった長沢鼎は、その後アメリカに渡り生涯を過ごし、広大なぶどう園の経営とぶどう酒製造に尽くし、ワインの帝王と称されました。鹿児島でもナガサワワインとして親しまれています。

 今羽島地域では、ボランティアガイドや観光船運行の体制が整い、これからの地域づくりの支えになるのではないでしょうか。記念館前の駐車場が狭いため、シーズン中の車の誘導や団体バスの乗降に気をつけなければなりません。

 各市町村で、青少年の翼、青年の船等の海外派遣事業が盛んです。ぜひ、小・中・高校生等若い方々に見学して欲しい施設です。

 日本は人口の少子・高齢化時代に入り交流人口の拡大が不可欠であり、外国人観光客の誘客もより強く求められてきています。鹿児島の近代化遺産群が、世界文化遺産への正式登録を控えています。開成所から薩摩藩英国留学生に至る功績を学ぶことは、明治維新150年を検証することにもなります。人材育成の重要さも伝えたいものです。

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 食事施設としてマグロ船の形をモチーフに、資料館と物産館を併設したレストラン「まぐろの館」がオープンし人気を博しています。いちき串木野市は、マグロ船の船籍保有数は日本一となっていますが、マグロは主に焼津港や清水港に水揚げされます。

 まぐろの館の社長は、おいしいマグロを食べたいという顧客の要望に応えて、満を持してのオープンとなりました。北薩摩地域にこのような大型の食事施設がなかっただけに、観光ルート設定には役立ちます。県民へのPRも図らねばなりません。

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 次に訪れたのが薩摩川内市の市比野温泉地域です。かつて市比野温泉地域は、鹿児島市の奥座敷として多くの宴会や団体客で賑わっていました。今では宿泊施設は数軒のみで、昔を知る人には寂しい限りです。


 時代の流れは個人客が主流となり、それに対応することの難しさを感じます。それでも、与謝野晶子が宿泊した「みどり屋旅館」や文学碑、人気のお菓子屋があり、1時間程度の街歩きが楽しめます。

 地域おこしで始まった「よさこい祭り」は年毎に参加団体が増え、今では北薩を代表する祭りに成長しています。市比野温泉は泉質が素晴らしく、近隣のお客さまに愛されてきた温泉でもあります。昔の団体旅行全盛期のスタイルに戻るのではなく、ロマン漂う静かな温泉街の復活を望みたい。近くの道の駅「樋脇」も多くの買物客で賑わっています。入来麓武家屋敷、いむた池と一体となっての誘客が求められます。

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 入来麓武家屋敷群も整備され、美しい町並みが復活しました。清色城跡、旧増田邸、旧家入来院氏の家並みは必見の価値があります。ガイドさんの説明も楽しく、わかり易い解説でした。近くの入来小学校の子供たちが手を振り頭を下げる姿に、地域ぐるみで観光客を迎えているという「おもてなしの心」が醸成されていると感じます。

 武家茶房Monjoでの休憩時間も楽しく過すことができました。街の散策の途中に、小物店やカフェがあると助かります。地域に少しでも経済効果をもたらす仕組みづくりは不可欠です。 また、近くの大宮神社で奉納される入来神舞は、700年の歴史があり、その中で舞人が朗詠する「君が代」が国家の始まりと言われています。神社のPRと併せて駐車場、トイレ等の整備も必要です。

 薩摩川内市では、今回も地域ぐるみで歓迎幕をもって我々を出迎えてくれましたが、その取組は市全体に広がっているという好印象を受けました。

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 九州新幹線が全線開業して北薩摩地域は波及効果が少ないと指摘されていますが、地域は必死に頑張っています。それに応える為には、市や連盟ではPRやエージェントと連携した商品企画支援をもっと充実していく必要があります。


 知名度が主要3地域に比べて低いだけに、入込み客数だけにとらわれず、地域活性化の視点で捉えていく必要があります。そのことが3地域の発展にもつながるのではないでしょうか。

 これからも3地域からの観光周遊ルート定着に向けて、努力したいと考えています。いちき串木野市、薩摩川内市の方々にお礼を述べるとともに、頑張れとエールを送りたいと思います。

No.327 平成26年度の後半戦をいかに取り組むか~地域の総合力を結集した商品展開を~

2014年9月8日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

        葛(くず)の花 踏みしだかれて 色あたらし。
                   この山道を 行きし人あり  ~釈迢空~
*葛は秋の七草。日本人は葛の根からつくった葛粉を、昔から利用してきました。葛湯、くずきり、くず餅は、むかし懐かしい味です。

 二百十日が過ぎ、朝夕の涼しさに秋の気配を感じます。今年の夏は全国的に不順な天気が続き、集中豪雨による大きな被害が出ました。例年南九州地域は、水害がよく発生しますが、今年は、広島、福知山、北海道の利尻島・礼文島等が大きな被害を受けました。心からお見舞いを申し上げます。鹿児島で大水害が発生した時、全国から応援や見舞金を頂きました。今回は我々がお返しする立場です。被災地の早急の回復を祈念しています。

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 ところで、春先から宿泊客の減少が見られる鹿児島の観光ですが、夏も3度の台風の襲来でキャンセルが多く、厳しい結果になるのではないかと懸念しています。夏休みは、ファミリーの旅行が主流であることから、天候の不順は旅行の出控えにつながりました。

 また、九州新幹線の全線開通で中国地域から観光客が増加し、中でも広島県からのお客様が多かっただけに、今回の水害は今後の誘客に大きな影響があるのではと懸念しています。

 今年は大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンに、「ハリーポッター」の新しい施設がオープンしたこともあり、北部九州、中国、関西、関東地域から予想を大きく上回る入場者で賑わっています。昨年の伊勢神宮の式年遷宮効果も続いています。

 年当初より、今年の鹿児島の観光は厳しくなると予想していましたが、現状はあまり好転していません。秋から来春にかけての対策を急がねばなりません。全国主要都市での説明会では、「本物。鹿児島県」をキーワードに、従来の鹿児島市、霧島、指宿地域の魅力に加えて、近代化産業遺産群、頴娃町のお茶農家「茶寿会」による「グリーンティリズム」、本土最南端の始発・終着駅の枕崎駅や「出汁」文化、世界自然遺産の屋久島、バニラ・エアが就航した奄美大島、甑島、大隅半島の鹿屋、佐多岬、内之浦等をPRしてきました。

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 また、当連盟では、3拠点地域(指宿、霧島、鹿児島)発の広域観光周遊の新しいルートの提案を行い、新規需要開拓に努めているところです。今年度は大きなイベントもなく、大量の集客は厳しいものがあります。JRや航空会社、エージェントに対する商品企画支援もすでにスタートしています。

 10月からJR九州の、鹿児島VS大分キャンペーンがスタートします。そのテレビCMが9月1日から放送されています。大分県は、泉源数日本一でありますが、2位の鹿児島県も多彩な温泉が多く、またとないPRのチャンスです。黒牛、黒豚、黒さつま鶏、黒マグロ等食の対決も見もので、おもてなしの心を持って観光客を迎えることが地域の評価につながります。両県の相乗効果が期待されます。

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 ANA南九州キャンペーン(10月~3月)、JAL鹿児島キャンペーン(11月~1月)も展開されます。各社の持つメリットを活かし、誘客に努めなければなりません。ANAは熊本、宮崎と連携した商品造成が進んでいます。路線の多い鹿児島便は有利であり、各施設は地域の情報を積極的に発信してもらいたい。JALは離島にも就航しており、屋久島や奄美大島への誘客が期待されます。冬場の温暖な気候と美しい自然、生態系をPRしたいものです。オフ時期対策として貸切バス支援も実施します。(12月~2月)

 一方外国人は台湾、香港が好調に推移しています。中国は苦戦を強いられており、先日も上海で誘客対策をかねて、主要会社の訪問を行いました。有力メディアでの発信や富裕層向けの商品提供が必要であり、上海から一番近いところの県であることもPRしなければなりません。 韓国は冬場のゴルフツアーが人気商品であり、インセンティブや招聘事業を行いながら誘客をすすめています。

 各施設においては、地域のイベントや伝統的祭り、食等を組み込んだ企画を、秋以降の対策として展開していると思います。秋のメインは時間に余裕のある熟年層であり、比較的富裕層が旅行します。平日に宿泊するメリットも打ち出すことが必要です。

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 鹿児島が誇る温泉や食、近代化産業遺産群、ローカル列車等をPRして集客に結びつけて欲しい。今年世界文化遺産に群馬県の「富岡製糸工場」が登録されましたが、予想を超える観光客が押し寄せ大混雑しています。鹿児島の世界文化遺産候補地は、現在でも見学できる利点を誘客のポイントにしてもらいたい。

 2018年は明治維新150周年に当たりますが、鹿児島は一番注目を浴びる地域となります。それまでの出来事を時代ごとに、その背景とともに語ることが必要です。いちき串木野市には、「薩摩藩英国留学生記念館」やマグロ料理が堪能できる「まぐろの館」もオープンし連日賑わいを見せています。4月から甑島へは、新造された高速観光船が就航し人気を博しています。

 年末年始にかけては、忘年会・新年会企画が定番ですが、各施設のオリジナリティを出し、例年と違う演出が必要です。また、近場のお客様が多くなることから、平日に遅い時間からでもスタートできる宴会企画も喜ばれるのではないかと思います。

 最近の旅行は、一人旅も人気です。小さめの部屋を提供できるところは、企画に活かすことをお勧めします。女子のグループには、女性が好むスイーツやアメニティグッズの提供が感動をもたらします。

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 消費税アップに伴い、消費マインドが落ちています。積極的に情報発信しないと企画倒れに終わります。WEBの展開も不可欠です。各施設は従業員の力も活用し、同級生や親せきを動かす手立ても求められます。

 エージェントやキャリアだけに委ねるのではなく、地域内の資源を点検し施設、従業員が魅力を語り、総力戦で集客に努力する時ではないでしょうか。

No.326 激化する教育旅行誘致に求められるものとは~鹿児島ならではの体験メニューの提供を~

2014年9月1日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 8月20日と21日、東京と大阪で九州観光推進機構による九州7県合同の修学旅行誘致説明会が開催され、日本修学旅行協会、全国修学旅行研究協会、エージェント、学校関係者等各会場とも120名余の出席者がありました。


 各県が教育課程に適した体験メニュー、産業革命遺産、民泊の受入態勢等のPRを行いました。現在修学旅行の行先としては、関東地域の高校は沖縄、北海道、中学校は京都・奈良方面、関西地区の高校生は沖縄、北海道、九州、中学生は沖縄、九州が主流となっています。

 説明会では、他地域から九州へ変更した学校の取組の報告がありました。都立のJ高校は、修学旅行を「進路探索研修旅行」と位置づけ、異文化体験をメインに別府の「立命館アジア太平洋大学」を行先として北部九州を選択しています。中でも英語を活用するべく、着物着付や茶道、武道等日本の伝統的文化を紹介して、多くの留学生との交流を深め将来の進路に役立てるために、修学旅行をうまく活用していると感じました。

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 また、関西の中学校は行先を変更した要因として、九州の宿泊施設は収容力が大きくフロアー貸切等ができることから、生徒の管理がしやすいと九州の良さを語っていました。また、南九州へは集約列車が運行され、時間短縮や旅費の低廉化が図られたことも理由にあげていました。

 鹿児島への誘致策の一つとして、日程や行先に制約のない私立高校や、SSH(スーパーサイエンス・ハイスクール)の指定を受けている高校へのPRが必要と感じます。種子島や内之浦の宇宙関連施設の見学や、屋久島の世界自然遺産、奄美の島々、桜島の噴火、甑島の地形等科学、自然等に関する魅力をもっと前面に出してPRすべきと認識させられました。オンリーワンの見学地、そこでしか体験できないことが差別化となります。併せて受入体制の充実も行先変更の大きな要因となります。

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 中学校については、農・漁業体験や民泊の利用が定着しつつあります。体験メニューでは、グリーンツーリズムやブルーツーリズムの本物体験が不可欠です。最近の体験学習では、長崎県松浦、五島、壱岐や熊本県天草の御所之浦での、無人島体験、魚釣り、ペーロン競争等マリン体験も人気を博しています。

 鹿児島では垂水市漁協の餌やりやカンパチのさばき方体験が人気となっています。直接生き物に触れることができることが好評であり、県内で地引網や定置網漁などの体験できる新たな場所を開発しなければなりません。 25年度から修学旅行の集約列車が運行され、関西地域から南九州を行先に選ぶ学校が増えています。

 一方学校側からは乗り換えなしの直通運行や、更なる時間の短縮等の要望が出ました。JR西日本、JR九州さんの協力が不可欠であり、引き続き要望していきたいと思います。

 先日鹿児島市内で、関係者による「体験学習メニュー意見交換会」を開催しました。本年度から鹿児島への修学旅行を実施している姫路市のH中学校の先生に南九州の魅力を語ってもらいました。

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 先生によると、「知覧での平和学習」、「球磨川でのラフティング」、「出水の民泊」が生徒たちに好評であり、特に多くの生徒の印象では、民泊のおもてなしが良かったと言ううれしい報告もありました。今後は鹿児島市での街歩きや桜島の見学等も検討したいとも語りました。

 修学旅行の誘致競争は激化していますが、学生さんと農家との感動的な触れ合い、体験をいかに多くつくることができるかが、今後の定着に向けての課題です。南さつま地域からスタートした農家民泊は、25年度は県下全域に広がり(一部離島を除く)、教育旅行の取扱が2万人を超えました。1泊2日の滞在期間、野菜や果物の収穫、家畜の世話など、日頃農家の方が行っている仕事の体験と民泊が子供達に感動を与えています。直接土に触れることが生徒たちの心を動かします。

 日頃食べているものがどのような自然環境で育ち、日々の手入れはどのようにしているのか、また収穫されたものがどのようなルートで食卓に届いているのかを肌で感じることができ、食の大切さを理解する機会になるのではないかと思います。

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 ところで民泊については過去何回も述べていますが、旅館業法で決められた「簡易宿所営業許可」を取得することが、不可欠となっています。先進地の安心院、最近脚光を浴びている宮崎県小林地域は100%取得しています。

 旅館経営者の方々は、厳しい経済環境の中で耐震対策に取り組んでいます。農家の「簡易宿所営業許可」取得も、地域ぐるみで推進しなければなりません。

 大阪での説明会で、鹿児島を民泊地に選んだ学校の先生は、宿泊箇所がクラスごとに離れすぎて、打ち合わせが十分でできなかったと改善策を求めていました。せっかく良い体験ができたのに不満を残す結果となりました。コンプライアンスの徹底は、教育現場では特に大切なことと思います。早急な対策が急がれます。

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 ところで鹿児島県は、豊かな自然と多彩な観光資源に恵まれており、中でも農業産出額も北海道、千葉県に次いで第3位で、農業は鹿児島の経済を支えている基幹産業です。 (平成23年県勢概況統計)


 これから日本は人口減少が顕著となり、農業従事者も高齢化が進み農村地域の発展は厳しいものがあります。若い世代の就農者を増やすことは厳しいことですが、都会からの交流人口を増やし、農村地域の維持・発展をめざす取組強化が求められます。

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