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No.454 これからのかごしまに求められるものとは ③地域総力戦で魅力創出を

2017年3月27日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


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 甲突川河畔をウオーキングしていると、春の草花が至る所に見られ、水辺に映る姿が疲れた体を癒してくれます。あと数日で河畔の桜は開花し、木々の下では新入社員の歓迎の宴が開かれることでしょう。
 鹿児島市は明治の偉人を多く輩出し、歴史のある風光明媚な街として知られています。目の前に美しい錦江湾があり、時々噴煙を上げる桜島は一日に何回も姿が変わると言わ れます。


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 また、県内で収穫される日本一の農水産物が集まり、多彩な飲食店があり観光客を楽しませています。温泉も豊富で、県庁所在地では日本一の源泉数で、都会の魅力も集積された都市ではないでしょうか。県内各地域と連携し誘客態勢を確立してほしい。


 これからも多くの観光客が訪れ、特に外国人には滞在拠点として選ばれていくと感じています。


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高砂の 尾上の桜 咲きにけり
外山のかすみ 立たずもあらなむ
      権中納言匡房 ~百人一首より~


 本格的な人口減少時代を迎え、交流人口拡大による地域活性化は地域経済にとって至上命題です。これからのかごしまの観光振興を考えるとき、地域資源を点検し、「地域総力戦」の気概で街づくりに取り組む必要性があります。その背景を探り、課題を整理したいと思います。


 日本では平成20年に観光庁が発足しました。世界の国々が早くから観光振興に力を入れてきた中で、日本は産業としての位置づけが低く取組が遅かったと感じています。今では観光の重要性が認識され、首相自ら観光振興の大切さを語る機会が多くなっています。


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 高度成長期からバブル期頃まで、国民の旅行意欲の高まりやエージェントの努力もあり、有名観光地や大型温泉地は隆盛を極めました。
 しかし最近は旅行形態が団体旅行から個人旅行へシフトし、しかも自分の趣味や趣向を求める旅行のスタイルが主流となり、モノの消費(遊び)からコト消費(体験)に変化し、従来型の観光地は苦戦を強いられています。


 平成28年の実績で見ると、県内の宿泊施設に宿泊した人の内約7割が個人客です。今まで団体旅行やエージェントに頼りがちな経営姿勢から、地域が魅力創出を図り情報発信して集客できる取組が求められる時代となっています。温泉や有名な観光地があるからと言って、観光客を簡単に呼べる時代ではないと断言しても過言ではありません。


 首都圏に近く交通アクセスに恵まれた熱海温泉では、バブル絶頂期の平成元年には726軒あった宿泊施設が平成23年には6割減の313軒に、宿泊客数は、416万人から246万人と4割も減少しています。首都圏の人口4千万人を抱えながら厳しい現実があります。


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 これからかごしまに人を呼ぶには魅力ある地域づくりが大きな課題です。
 まず、「良好な景観の保持」を地域ぐるみで取り組むことが魅力を創出することになります。再開発事業では、「渓谷」、「古木」、「白砂青松」、「伝統的建物」などの自然景観を残すことを第一に考えねばなりません。自然は地域の宝です。箱物づくりから地域の自然、歴史、文化、生活を経済活動と結びつけ、「地域特性」を生かした街づくりへ変革することです。


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 「美山地区」は、案内看板の色や形を統一して表示するなど景観の保護に努めており、陶芸や直売店、温泉などの魅力が口コミで広がり近隣からの観光客が増加しています。
 外国人は日本の伝統文化に惹かれます。出水の「着物で武家屋敷散策」は毎回定員オーバーするほどの盛況です。歴史資源を活用し、ストーリー性を持った商品開発が求められます。


 次に、農水・商・工・教育等地域連携の重要性が問われます。地域を越えて「食」、「祭りやイベント」、「歴史ストーリー」、「特産品」、「市場や直売店」等有機的につなぐことで、地域の魅力付けが図られます。観光に県境はありません。


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 地域資源をブランド化するには、地域の皆さんに親しまれ、浸透していることが第一であり、「優位性」、「品質保証」、「稀少価値」等差別化戦略が不可欠です。
 消費の主役は女性であり、その女性を呼び込む仕掛けが必要です。誘客にあたって、「発表会」、「お茶会」、「生け花展」、など美的感覚をくすぐるイベントを同時に開催することも方策の一つです。女性は満足度が高ければリピーターになりやすく、持続的に経済効果をもたらすことにもなります。「安全・安心の提供」がキーワードではないでしょうか。


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 地域の住民が参画できるまちづくりを進めることも大切です。観光は地域の人が我が町に誇りを持つことから始まります。飲食店では「地産地消」を推進することで、多くの分野で経済効果が生まれます。又宿泊施設などでは囲い込みをやめて、観光客を積極的に外に出すことで市民とのふれあいが生まれ、かごしまの魅力を再確認できる場となります。


 県内出身者が地元の食材を提供している「かごっまふるさと屋台村」に学ぶことが多くあります。ふるさと意識を高める店づくりが人気の要因です。イベントや祭りでは、子供や高齢者にも活躍してもらう場を提供することで後継者養成にもつながります。


 また、バリアフリーの推進や環境に優しい街づくりを目指さなければなりません。高齢化社会を迎えて、心のバリアを取り除くことが大切です。健常者と障がい者が一緒に旅行する場を提供することで、地域にとっても大きなメリットがあり、社会貢献上当然推進しなければなりません。


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 屋久島ではマイカーの乗り入れの規制や入山協力金の取組が進んでいます。又ウミガメの産卵地では、砂浜への立ち入りを規制するなど卵の保護に力を注いでいます。
 出水市やさつま町の宮之城地域では、地元産の竹を使った「灯りのイベント」を開催して好評を博しています。使われた竹は、観光客に無料でプレゼントされており一石二鳥の効果があります。これからは「観光振興」と「バリアフリーと環境保全」の両立を図ることで魅力ある観光地になると思います。


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 地域をまとめるコーディネーターの存在が重要になっています。
今地域活性化のために、多くの省庁が支援策を発表していますが、その一つがDMOの推進です。地域の団体をまとめて事業を進めるにはマーケティングやマネージメント能力が求められます。箱物作りや一時的なイベントに頼りがちな観光地から、個性ある地域がこれから脚光をあびます。成功している地域に学ぶことも重要です。


 4月より観光交流局が「PR・観光戦略部」となり、様々な産業を取り込んだ観光振興が期待されます。生活・文化など埋もれた資源を磨き、商品化する等「地域総力戦」で誘客に努め、持続可能な地域づくりを皆さんで創り上げていきたいものです。


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 最後に3月31日付で、3期9年間務めた鹿児島県観光プロデューサーの職を辞することになりました。観光の有用性を多くの県民に理解してもらうため、平成20年の5月から書き始めたコラムも、今回が最後となりました。正月休みにかかった都合9回を除いて毎週配信できたことは、皆様からの叱咤激励のおかげと深く感謝致しております。
 これからも何らかの形で地域づくりに貢献できればと考えています。
長い間拙稿にお付き合いいただきありがとうございました。


         幾山河 越えさり行かば 寂しさの
         終(は)てなむ国ぞ 今日も旅ゆく
                      ~若山牧水~

                 感 謝


No.453 これからのかごしまの観光に求められるものとは ②外国人宿泊者100万人を目指して

2017年3月21日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


          かかる世に かかる旅路の 幾度か
          あらんも国の 為とこそ知れ
                       ~畠山養成~
*薩摩藩英国留学生の一員で東京大学の前身である東京開成所の初代校長を務める


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 社会人の転勤シーズンとなり、マンション周辺の道路には引っ越し業者の車が列をなしています。住み慣れた地を離れるのは一抹の寂しさを感じますが、転勤先での出会いが新たな出発になることを期待します。
 ところで、国の2016年宿泊旅行統計が発表されました。それによると鹿児島県の宿泊者総数は、721万人となり9.5%、5年ぶりの減少となりました。外国人は48万7千人で8.03%増となっています。


 鹿児島における外国人誘致の課題について整理したいと思います。
2016年の訪日外国人旅行者数は累計で21.8%増の2403万9000人となり、待望の2000万人を突破しました。


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 九州各県の空港別の外国人入国者の数です。福岡空港が139万2千人、長崎空港3万4千人、大分空港2万8千人、熊本空港2万5千人、佐賀空港3万7千人、宮崎空港3万7千人、鹿児島空港6万7千人で、福岡空港が全体の72%であり、九州のゲートウェイの役割を担っています。
 港の入国者で特徴的なことは博多港が18万3千人に対し、長崎県対馬の厳原港が7万8千人、比田勝港が13万7千人と、両港で21万5千人と主に韓国人の入国者があります。国境に近いという利点を活かし外国人が訪れています。


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 一方、九州各県の外国人延べ宿泊者数は、福岡県が267万人、大分県84万6千人、 長崎県74万3千人、熊本県51万4千人、宮崎県25万人、佐賀県24万人となっています。
 九州を訪れる外国人は全体の65%余りが韓国人となっており、台湾や中国、香港を加えると約85%が東アジアからの人で占められています。


 鹿児島空港の入国者数に比べて、佐賀、宮崎県を除く他県の宿泊者が多いのは、福岡空港や博多港に降り立った客が、大分県、長崎県、熊本県を周遊し宿泊に繋がっていることが大きな要因です。
 鹿児島までシャワー効果が十分及んでないことがあげられます。福岡県に来た外国人を、いかにして鹿児島まで足を延ばしていただくかが最大の課題となっています。


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 大きなネックになっているのがアクセスの問題で、九州新幹線の料金をいかに軽減できるかではないでしょうか。
 今、JR九州と鹿児島県が協力して、南九州に割安で行ける「JR九州レールパス南部九州版」の改定版を販売しています。機内でのPRやエージェントでの販売にも力を注いでいますが、観光客に浸透するには時間がかかっています。
 東アジアからも個人旅行が主流になりつつあり、今回の販売目標を達成することが次につながります。リピーターにぜひ活用してもらうべくさらなるPRが必要です。


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 次に鹿児島への誘客には、季節波動に合わせてプログラムチャーターやオフライン空港からのLCCの就航が得策です。鹿児島空港の利用時間が延長されたこともあり、冬場の釜山やタイ、ベトナムからのプログラムチャーターの運行が求められます。需要の大きい香港からは、LCCの就航による新たな顧客開拓ができていると感じます。
 日本の伝統文化を体験できるメニューや安全・安心食の提供が、富裕層の誘致にもつながります。地域資源を活用して、いかにモノからコト消費に繋げるかが大きな視点です。


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 クルーズ船が増加しています。経済効果が疑問視されますが、将来を見越してリピーターにするべく長い目で見る必要があります。
 また、富裕層を対象としたクルーズ船を中心市街地に寄港させ、観光客が歩いて、いずろ通り、天文館地区、鶴丸城周辺を散策できることでにぎわいの創出が可能となります。
 御楼門の建立に合わせて、周辺の道路整備を行い回遊性のある街づくりが求められます。


 一方ではアウトバウンドを増やすことが重要です。県民のパスポート取得率は45位前後であり、鹿児島からの利用者がこのままで推移すると、定期便の維持が危ぶまれます。
 双方向の人・ものの交流が実現できないと路線維持や新たな航路拡充は厳しくなります。


 方策として若者のパスポート取得を促進しなければなりません。平成12年から15年にかけては、県内公立高校の修学旅行先は7割が海外でした。
 現在では90%が国内に変わっています。若いうちに海外に目を向けさせる意味でも高校生の海外修学旅行を復活させ、これを機にパスポートを取得してもらい、将来のリピーターにつなげたいものです。


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 2020年は明治維新150周年です。1865年に薩摩藩留学生は英国に旅立ち、帰国後多くの分野で活躍し、日本の近代化に貢献しました。
若いうちに海外に行く価値をもっと見直したいものです。
 今後も、インバウンドとアウトバンウドは両輪と捉え推進していかねばなりません。


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 次に情報発信の重要性です。外国人旅行者はインターネットを活用して行先の情報を検索しています。SNSでの拡散が欠かせず、国別の有力ブロガーの招聘や、公式サイトでの鹿児島の尖った季節ごとの情報が必要です。
 温泉は九州の定番になりつつあり、他県と違う温泉の売りだし方を考えねばなりません。温泉に入る習慣がないタイなどについては、工夫が必要です。
 花や紅葉、朝日夕日の絶景や美しい砂浜が続く海岸等東アジアにない景観が誘因効果をもたらします。


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 FIT対策として市中の多言語表示、市内周遊バスの同一料金化、免税店の拡大、WiFiの整備、泊食分離の推進等改善すべき多くの課題があります。
 また、入国管理のスムーズ化、市中での両替や外国語HPの充実など早急に解決しなければなりません。外国人観光客がストレスを感じない街づくりが求められます。


 これから日本は高齢化や人口減少が進み、しかも市場は成熟しています。旅行需要の主要ターゲットである熟年層にとって、年金支給の不透明感等先行きは厳しく、日本人の国内旅行の大きな伸びは期待できません。


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 鹿児島県は東アジアに最も近いというメリットを活かし、また、来年には世界遺産が3つになる見込みであることから、これを繋ぐルートの開拓が外国人誘致のキーポイントになるのではないでしょうか。
 また、世界のホテルチェーンが進出することで鹿児島のブランド効果を高めることにもなります。
 最後に、鹿児島県の外国人宿泊客を100万人の目標に取組むことが、福岡県に次ぐ知名度を上げることになると信じてやみません。


          今日もまた、幸せの鉦を 打ち鳴らし
          打ち鳴らしつつ あくがれて行く
                         ~若山牧水~


No.452 これからのかごしまの観光に求められるものとは ①各地域の課題とは

2017年3月13日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


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 高校の卒業式が終わり大学入試結果待ちの学生は、一日千秋の想いで日々を過ごし、「サクラサク」の吉報が届いていることでしょう。桜の開花日も発表され、庭先の木の開花が楽しみです。


 先日九州観光推進機構の主催により、「九州教育旅行ふっこうセミナー」が、阿蘇市で開催されました。例年は5万名もの修学旅行生を受け入れている阿蘇地域は、4月の熊本地震で甚大な被害を受け、昨年はわずか7百名の修学旅行生しかありませんでした。阿蘇地域への交通アクセスが、寸断されたことが大きな要因ですが、学校現場の地震に対する不安感が多くの取消に至ったと判断しています。
 平成31年度九州地域への修学旅行復活には、熊本の復興が第一ですが、各県連携して誘客に努める必要があります。


 ところで、県の平成29年1月分の観光動向調査が発表されました。それによると宿泊者数は、前年同期比2.7%減少し、外国人のみは17%増となっています。今年は厳しいスタートとなりましたが、新年度予算決定後は早めの仕掛けが必要と感じます。
 これから3回にわたって鹿児島の観光について、改めて課題を整理したいと思います。


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 鹿児島県は南北600キロに及び、大きく捉えると、「北薩・姶良伊佐地域」、「南薩摩地域」、「大隅地域」、「種子島・屋久島地域」、「奄美群島」、「鹿児島市内」の6つの地域に分けられます。
地域を繋ぐことで様々な魅力創出が図られ誘客にも弾みがつくと考えています。


 先ず「北薩・姶良伊佐地域」です。新幹線の駅が二つあり、誘客にはここで下車させる取組が不可欠です。今までのエージェントの商品企画を見ると8割が鹿児島空港、鹿児島中央駅、宮崎空港発着となっており、しかも似たような企画が多く魅力が薄れてきています。2つの駅を活用することで新しいコース設定ができ、消費者にも受け入れられやすくなります。


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 長島町の漁業を活かした観光、出水市の武家屋敷散策、民泊、甑島の珍しい自然景観、伊佐地域の曾木の滝等県外客に馴染みの薄い場所を組み込み、地域ならではの生活・文化を組入れたコース提案が必要です。
 霧島は温泉に恵まれ、滞在客や登山客には人気の場所ですが、国立公園の魅力が活かされていません。
 登山ルート出入口までのアクセスの整備と山の魅力を前面に、九重に負けない情報発信が欠かせません。


 「南薩摩地域」はここ数年観光客が低迷しています。指宿の砂蒸し温泉に頼ってきた感があり、「指宿のたまて箱」は好調であるのに、滞在に繋がっていません。
 駅前や海岸通りの街づくりが遅れています。大隅地域や種子島、屋久島との船の航路をもっとPRしなければ復活は厳しい状況です。


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 山川にある「たまて箱温泉」は日帰り温泉サイトの人気投票で4年連続1位に輝いています。指宿に宿泊させる良い地域資源です。頴娃町の番所鼻公園、大野岳等地域資源を活用し、グリーンツーリズムのさらなる推進が必要です。


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 知覧の入込客も漸減傾向です。戦争を経験した世代が少なくなり、平和資料館の魅力を知る人も少なくなっていきます。修学旅行生も生徒数の減少で大幅な増加は厳しい状況です。武家屋敷を活用した日本文化の体験や美しい茶畑の活用など一工夫が必要です。知覧と指宿の入込客は比例しており、相互に連携して対策を急がねばなりません。


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 「大隅地域」は観光客誘致について特にアクセスが厳しい地域です。かつて新婚旅行全盛期には、宮崎からの多くの人でにぎわいました。鹿児島空港から遠く、鹿児島市内からも高速道路やフェリー代金が高く、県民にもあまり知られていない地域です。
 平成30年に「さんふらわあ」の新造船が就航することから、船旅の楽しさと共に「かのやバラ園」、「雄川の滝」、整備が進む「佐多岬」などの尖った魅力を商品企画に盛り込みたいものです。


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 また、志布志市の夏のサッカーフェスティバルには毎年1万人を超える参加者がありますが、冬場の誘致が課題です。是非天然冬芝のグランドを整備し、Jリーグレベルのチームを呼べる環境整備に努めてほしい。そのことで宮崎でキャンプを張るチームとの練習仕合やファンが動き宿泊に繋がります。


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 「種子島・屋久島地区」は、ロケット発射場や世界自然遺産といった恵まれた地域資源があります。種子島はロケット発射場の見学を目的にSSH校の誘致、農家民泊などの取組が必要です。
 屋久島は日本人が一番行きたい世界遺産の地であり、オフの誘客が課題です。集落のツアーや大川の滝、千尋の滝、白谷雲水峡など冬場にも行ける観光地があることをもってPRしなければなりません。登山者への入山協力金の制度もスタートしました。環境を守る取組を徹底することが、世界自然遺産の島としての価値を高めます。


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 屋久島空港の滑走路延長がジェット機就航に繋がり、アクセスの充実は観光客の利便性確保になります。大都市圏からの誘客には欠かせない課題です。
 空港がジェット化されれば、世界文化遺産や屋久島及び奄美の世界自然遺産を繋ぐ観光コースが可能となります。
 沖縄県の観光客が伸びている要因として、沖縄本島から先の石垣島、宮古島などへの航空路が伸びていることがあげられます。


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 「奄美群島」は、今一番注目を浴びている地域です。奄美群島の国立公園化、NHK大河ドラマ「西郷どん」放映、世界自然遺産登録と今年から大きなイベントが目白押しです。来年は一定の観光客は見込めることから今年にいかに来てもらうかが鍵となります。奄美空港と大都市圏を結ぶ航空路線は便数が少なく、多くの観光客を運ぶには限度があります。関西空港から3月26日よりLCCが就航しますが、需要が増える時期は増便が望まれます。


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 一方船の航路は充実しており、一度に多くの乗船が可能です。夏休みは長期滞在できる学生を誘客すべく、大幅な割引が必要です。かつて昭和40年代から50年の初めにかけて奄美航路は、リュックを背負った学生であふれ、第一次離島ブームがおこりました。その行く先はエメラルドグリーンに輝く美しい海岸でした。チャンスを活かしその再来を図りたいものです。


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 「鹿児島市」は、歴史、温泉、食、自然、宿泊施設、アクセス等に恵まれ景気動向や震災等にあまり左右されない観光地です。最近は外国人が増加しており、シテイビューや電車で個人旅行を楽しんでいる姿を見かけます。市内に数日滞在し、霧島、指宿、大隅半島などに行っています。
 今後は大型コンベンションのさらなる誘致やスポーツ大会の開催、オリンピック事前合宿の誘致等が求められます。


 明治維新150周年や大河ドラマの放映を控えて、市民が街の魅力を体験する仕掛けが必要です。「長崎さるく」のようなイベントを開催し、著名人と一緒に市内の名所旧跡を歩くことで、参加者も増えると思います。そのことで市民が自らPRできるチャンスをつくることになります。市民が街の魅力を知らずして広がりはありません。


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 鹿児島県は離島が多く、しかも錦江湾を挟んで薩摩半島と大隅半島に分かれています。九州の他県より、全域に行くことはかなりの日数と費用も掛かります。それだけ地域資源も豊富で、様々なコースが設定できます。
 JR、飛行機、定期客船、クルーズ船等コースに応じてアクセスの利用頻度が違います。南北600キロに及ぶことは、観光客に何度も来ていただく可能性を備えています。 人口減少時代に入り、大幅な観光客増は厳しくなっています。県民がまず自分のふるさとを旅することが求められています。


          人はいさ 心も知らず ふるさとは
          花ぞ昔の 香ににほひける
                           ~紀貫之~


No.451 花の名所を地域誘客に活かす~フラワーツーリズムの推進を~

2017年3月6日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


         山桜 咲きそめしより 久方の
         雲居に見ゆる 滝の白糸
                    源俊頼 ~金葉和歌集~


 3月に入り一雨ごとに温かくなっている鹿児島ですが、北国では雪に覆われた地域も多く、狭い日本における気象の差に驚かされます。
南伊豆にある河津町の河津桜は全国的に早咲きの桜として有名で、2月初旬から3月初旬まで見られることから、この時期近隣温泉地への誘客の目玉になっています。


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 日本は四季がはっきりしており、そのことが美しい自然景観をつくり出し、変化に富んだ山河がもたらす自然の恵みを、私たちは様々な花や地域の食材を通して感じることができます。
 ウエザーニュースは、『さくら開花予想2017』を発表しています。
今年の桜の開花は全国的にやや遅く、3月24日に福岡などで開花が始まり、熊本城など九州の一部、高知県、東京が一番早くなっています。


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 鹿児島県は4月1日で、満開は4月10日の予想となっています。桜全線は日本列島を北上し、北海道に上陸するのは4月末頃となっています。(2月23日発表)
対象となる桜の木は、ソメイヨシノで全国700か所の予想を発表しています。
 桜の開花予想は、旅行商品の販売には重要なポイントとなります。雨や気温の差で早まったり遅くなったりで、常に緊張感を持ってのぞんでいるのが桜の旅行商品企画ではないかと思います。また、桜の名所に合わせて周辺の観光地を組み入れるツアーが多くなります。


 全国に桜の名所は数多くありますが、日本の5大桜と言えば、福島県の「三春滝桜」、埼玉県北本市の「石戸蒲桜」、山形県北杜市の「神代桜」、岐阜県本巣市の「薄墨桜」、静岡県富士宮市の「狩宿の下馬桜」です。


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 他にも北海道の松前城、五稜郭公園、東北の角館、弘前城公園、東京上野公園、長野県の髙遠城址公園、京都岡崎公園、嵐山、大阪造幣局、奈良吉野山、福岡舞鶴公園、熊本城、都城市の母智丘公園などが有名です。中でも弘前城にある2600本の桜は、長いお堀端の池に映え、ライトアップされた夜桜は幻想的な美しさで必見の価値があります。今年は震災復興の象徴となるべく、力強く生きる熊本城の桜も見たいものです。


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 県内では、日本さくら100選に選ばれている伊佐市の忠元公園、並木が美しい知覧平和会館通り、藺牟田池のほとり、鹿児島市の吉野公園、甲突川河畔などが有名です。
 桜は奈良時代から多くの歌や文学の中で取り上げられています。源氏物語、枕草子、土佐日記、万葉集、古今和歌集、新古今和歌集、奥の細道などが代表的な文献です。また近代の文人墨客にも愛され多くの文学作品や短歌、俳句の題材となっています。


         清水へ 祇園をよぎる 桜月夜
         今宵会う人 みな美しき
                      ~与謝野晶子~


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 桜は色鮮やかさと木全体に彩りを放ち、周辺の景観をも際立させる美しさがあります。 桜の開花は入学や社会人へのスタートの時期と重なり、思い出に残る花としても日本人の心を捉えているのではないでしょうか。また、百円硬貨や警察官や自衛官の階級章等にも使用され日本人には、とりわけ愛着のある花ではないかと思います。桜の前で撮影した思い出の写真をお持ちの方は多いと思います。


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 皆様の地域には立派な枝振りに多くの花を付ける桜はありませんか。
桜の開花の様子をSNS等でPRしてはいかがですか。自分の町の魅力を伝えることになります。訪れてみたいという衝動を駆りたてるためには周辺にある古民家レストランや直売店などの情報発信も必要です。タウン誌などで、まず周辺の住民や県民へのPRが必要です。 宿泊施設では翌日の行程に組み込んでもらうことで、宿泊につなげられます。


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 ところで、出水市が九州オルレのコースに認定され、2月18日に記念イベントが開催されました。米ノ津川沿いを中心に田園風景が残る大川内地区から出水麓武家屋敷群までの13.8kmのコースで、至る所に清流のせせらぎが聞こえる長閑なコースです。県内では霧島、指宿コースに続いて3か所目です。市民がまずコースを歩いてその魅力に触れることが、PR効果を発揮します。
 今、出水の武家屋敷を着物で歩くツアーも人気を博しています。今年は武家屋敷周辺の桜道を歩き、しばし殿様や姫様気分に浸ってみませんか。


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 これから県内各地で美しい花の景観がみられます。柏原海岸のルーピン畑、姶良市や霧島市にある芝桜、沖永良部島のえらぶユリ、日置市にある正円池のホテイアオイ、甑島の鹿の子百合、屋久島のしゃくなげ、加計呂麻島諸鈍のディゴの花の並木、霧島山のミヤマキリシマの群生地等観光客にお勧めできる景観が広がります。前広に旅行商品として売り出してはいかがですか。


        いにしへの 奈良の都の 八重ざくら
        けふ九重に にほひぬるかな
                    伊勢大輔 ~百人一首より~


No.450 旅育のススメ~家族で旅をしよう~

2017年2月27日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


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 梅の満開の便りが各地から届き、春がそこまで来ていることを感じます。後1カ月で春休み、子供の卒業や進級の思い出に家族旅行を計画している家庭も多いのではないでしょうか。
 皆さん幼い頃、家族旅行に行った記憶がありますか。動物園での小さな動物との触れ合い、家族で一緒に入った温泉や夕食、小川での魚釣りなど懐かしい想い出として心に残っている方が多いのではないでしょうか。
 すこし古いデーターですが、JATAが消費者モニター組織を活用して、「親子の絆と旅行」をテーマにインターネット上で実施したアンケート結果のポイントをまとめました。(※JATA 2001年調査)


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 1点目は家族旅行に行った子どもは我慢強く、行かなかった子供はキレやすいという結果がでています。
 成人するまでに20回以上、つまり平均して年に1回以上家族旅行に行った人は、「我慢強い」「思いやりがある」「協調性がある」「社交的である」など、周囲とのコミュニケーションや気配りに長けている傾向が強く、一方、成人するまでの家族旅行回数が10回に満たない人は、「頭に血がのぼりやすい」「自分勝手なところがある」「我が強い」等の選択肢で過半数を占めており、わがままになりがちな様子が伺えます。
 また、20回以上家族で旅行している人は「創造性が豊かである」という選択肢でも多くの比率を占めており、子供の情操教育に家族旅行が非常に有効であることが明らかになっています。


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 家庭内暴力やいじめ、少年犯罪の低年齢化が大きな社会問題となっている今、家族旅行の意義に注目したいものです。
 2点目は子供が家族旅行に「入学」する年齢が年々低下しており、3歳になるまでに家族で国内旅行した子供の割合が増加しています。また、卒業するのは15歳がもっとも多くなっており、ちょうど中学校を卒業する時期に家族旅行も「卒業」していることがわかります。


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 3点目は家族旅行の主導権は息子のみの家では父親に、娘のみの家では母親となっており、家族の性別構成比の影響を受けて、男性が多数を占める家族では父親が、女性が多数を占める家族では母親が握っていると考えられます。
 また、成人した女性の家族旅行の約半数は母娘旅行で、父子旅行はほぼ皆無となっています。近年の消費動向の鍵を握っているのは母親と成人した女性であり、その絆の強さが理解できます。


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 旅行ジャーナリストの村田和子さんは、著書「村田和子式 親子の旅育メソッド」の中で、コミュニケーションがとれるようになる3歳が「旅育」デビューにはおすすめで、基礎的な脳が完成する9歳頃までは「実体験が何よりも大切」と記しています。
 また、旅行先で「こんにちは」「ありがとう」などの「挨拶をする」こと、車中では「皆が快適に過ごせるように静かにしよう」など、社会性や公共マナーを知り・学ぶことになります。
 旅行中の普段と違う世界との出会いや、子供が感ずる「なぜ?」は学びのチャンスであり、興味・関心の芽を育てる良い機会にもなるとも言っています。


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 子供の頃の海や山での体験、社会観察の機会が多いほど、その後の学習意欲や知らないことへのチャレンジ精神、外国へのあこがれ等関心度が高くなっていくのではないでしょうか。小さいころから親子のスキンシップを高め、自然体験など親子で楽しむ時間の必要性を感じます。


 少子高齢化など人口減少が続く鹿児島県にとって、観光による交流人口の拡大は、地域 活性化の重要な方策の一つです。南北600キロに及び、自然、温泉、歴史、食、離島の多さ等全国的に類のない魅力ある県です。
 しかし、学校を卒業すると県外へ出て行くため、それまでに郷土の魅力を知ることの必要性が問われているのではないでしょうか。


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 鹿児島は多くの偉人を輩出し、日本の近代化実現に大きな役割を果たしました。早くから西洋の技術を導入し、旧集成館事業は「明治日本の産業革命遺産」として「世界文化遺産」にも登録されています。
 また、郷中教育の精神から学ぶことが多くあります。出水兵児の教え、日新公のいろは歌など、今でも子供の精神修養になる教材です。薩摩藩英国留学生が残した業績を見ると、若い頃から海外にでて勉強する必要性を感じます。また、関ヶ原合戦での"島津の退き口"で知られる薩摩武士の心意気は、今でも20kmを歩いて参拝する「妙円寺詣り」として、その敵中突破の伝統が引き継がれています。


 日本で初めて世界自然遺産に登録された屋久島は、貴重な植物の垂直分布が見られ、環境保護にも努めています。
 奄美群島は、手つかずの自然や貴重な生態系が見られることから、奄美大島本島と徳之島の一部が2018年世界自然遺産登録を目指しています。


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 南北600キロに及ぶ長い県であり、特色ある「食」や「伝統芸能」などを生み育ててきました。子供たちがその魅力に触れ継承していくことが問われています。
 また、県内には先祖崇拝の精神が脈々と受け継がれています。お墓に毎日生花を飾る習慣があり、南薩地域のお墓は観光客が訪ねるほどの名所となっています。命の大切さを教える意味でも、子供の頃からゆかりの日には墓前に手を合わせることは大切なことと思います。


 「篤姫」放映時、今和泉駅周辺の子ども達がバスに手を降り、観光客に挨拶するなど、地域ぐるみの温かいおもてなしが話題となりました。おもてなしの心を小さい頃から身につけることは、人にやさしい心豊かな人格を育成します。


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最後に、「旅育」の意義・目的は、
 ①子どもの頃の体験を通して自然・環境・風土・文化を大切にする心を育む。
 ②地域を知り、地域を愛する人をつくり、郷土愛とホスピタリティの心を育む。
 ③旅を通じて家族の絆が深まり、親を含めた先人への感謝の気持ちを醸成する。
 ④異文化を知ることにより世界の国々への関心、冒険心を育む。
 ⑤子どもの頃の旅行体験が、日々のマナーや五感を刺激する機会となる。
   ことになるのではないかと思います。

 さて、春休みどこに連れて行きますか。


プロフィール

古木 圭介プロデューサー
鹿児島県
観光プロデューサー
古木 圭介
(平成29年4月より就任)
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