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No.346 プロサッカーのキャンプ誘致を地域活性化に活かそう~今年も鹿児島ユナイテッドFCの支援を~

2015年1月26日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

       君ならで 誰にか見せむ わが宿の 軒端ににほふ 梅の初花
                                   源実朝 ~金槐和歌集~

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 大寒が過ぎ、あぜ道には「ふきのとう」が芽を出し、開聞山麓では黄色い絨毯を敷いたような満開の菜の花畑に、薩摩富士と呼ばれる開聞岳が一段と美しく映えています。「菜の花マラソン」と「菜の花マーチ」が開催され、全国から訪れた参加者が一足早い春を楽しんでいました。

 奄美大島では、ヒカンザクラが満開となり、「奄美観光桜マラソン」が2月1日に開催されます。出水平野に越冬していたツルの北帰行が昨季より16日早く始まり、鹿児島は春近しという感じです。

 プロサッカーのキャンプインです。県内では韓国のチームを含めて、昨年より4チーム増の18チームが、鹿児島市、霧島市、指宿市、薩摩川内市、さつま町でキャンプを張ります。Jリーグのジュピロ磐田、清水エスパルス、浦和レッドダイヤモンズ、柏レイソル、京都サンガFC等が永年にわたり県内でキャンプを行っています。鹿児島市の友好都市である松本市を本拠地とする、「松本山雅FC」がJ1に昇格しましたが、今年も鹿児島でキャンプを行います。

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 宮崎県ではJ1、J2,J3合わせて21チームが県内各地域でキャンプを行います。今年初めてJリーグ開催に先がけて、宮崎、鹿児島でプレシーズンマッチの新規大会「ニューイヤーカップ」の開催が決定しました。鹿児島では、J1浦和、清水、J2磐田、熊本の4チームによる総当たりで競います。

 プロリーグの試合が複数見られることは、鹿児島では珍しく例年になく賑わうのではないでしょうか。サッカーのキャンプ地としては、宮崎県と鹿児島県が定着してきた感があり、観光客誘致に活かせばなりません。

 プロチームがキャンプを行うことは、地域に大きな経済効果をもたらします。選手の宿泊、飲食に伴う費用は大きなものがあり、また多くの取材陣が訪れます。キャンプ地レポートとして定期的に全国に放送されることから、知名度アップにもつながります。週末には一流選手のプレイを見るため県外からのファンや観光客が訪れます。キャンプを受け入れている地域では、最大限の歓迎を持って受け入れる体制づくりが求められます。

 また、プロの選手は、練習後や休日には街に出かけたり、ゴルフを楽しんだりします。キャンプ期間中は、練習だけでなく、キャンプ地の住民との交流会やサッカー教室等を開くなど交流を深めています。キャンプしているチームには、郷土出身者もいます。親子で出かけて、日ごろはなかなかできないふれあいを深めることがチームにとっても大きな支えとなり、ファンづくりとなります。

 鹿児島県は子供の頃からサッカー熱が高く、高校サッカーの全国大会では、優勝、準優勝校を輩出しています。また、ワールドカップに出場し、日本チームの司令塔である遠藤保仁選手は桜島町の出身であり、先日から始まった「アジアカップ」でも大活躍しています。ヨーロッパのチームでは、南さつま市出身の大迫勇也選手が活躍しています。彼に続く選手が生まれることが期待されます。

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 昨年JFLの鹿児島ユナイテッドFCが誕生し、年間で第3位と健闘しました。J3、J2、J1とチームのJリーグへの昇格には時間を要しますが、今年も昨年以上の支援体制が必要です。特に鹿児島でのゲームでは応援に出かけて欲しいと思います。そのことがサッカーファンの増加につながり、応援ツアー催行、物販の販売等地域に経済効果をもたらすことにつながります。

 ところでプロサッカーチームのキャンプを増やすには、冬芝の完備されているグランドが不可欠です。県内には自治体や学校の統廃合で遊休地となっているグランドが多くあります。ぜひ冬芝の育成に取り組み、プロを呼べる施設を作り上げて欲しいものです。5年後には国体や東京オリンピックが開催予定であり、事前キャンプ等の誘致には欠かせない条件です。県内には豊富な温泉が湧き、練習後の休養には最適な地域が多くあります。官民あげてのキャンプ誘致活動が求められます。

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 春休みになると、関西や福岡県からの学生のスポーツ合宿団体が多くなります。特に関西地域からは、「さんふらわあ」を利用して多くの学生が訪れます。自治体の支援制度や大隅地域の利便性が合宿の誘致に役立っています。鹿屋体育大学との連携も重要になっています。

 鹿児島が誇る温泉、食の魅力、練習会場のPR、おもてなしの心の醸成、宿泊に対する自治体の補助制度の充実を図り誘致を強化しなければなりません。

 最後に県観光課では、「キャンプ地めぐりスタンプラリー」を実施しています。チームグッズやキャンプ地の自治体の特産品が当たります。今年はキャンプ地を訪ね、観光地巡りや温泉に浸る等地元の人にも触れる機会をつくり、鹿児島の魅力を再認識してください。春はそこまで来ています。              

                      早春賦
             作詞:吉丸一昌 作曲:中田章
       春は名のみの  風の寒さや  谷のうぐいす  歌は思えど
       時にあらずと  声もたてず  時にあらずと  声もたてず
                          *歌の舞台は信州安曇野です。

No.345 鹿児島のラーメンの魅力とは~地域で愛され続ける食べ物に~

2015年1月19日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 日本人が好きな食べ物の一つにラーメンがあります。どんぶり一杯に作り手の想いが込められ、又食べたくなる後味の良さ、それがラーメンの魅力です。

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 1週間に一度は必ず昼食として食べる人、宴会の後の締めとしてお気に入りの店に立ち寄る人、出張先で必ずご当地のラーメンを探して食べる方等、日本人はラーメンファンが多いのではないでしょうか。


 市場や屋台などで食べることができ、地域の生活を感じることができる食べ物です。ラーメンの特集を取り上げている情報誌もよく見かけます。こだわりのスープが話題となって行列のできるラーメン店がありますが、その経営者はまさにラーメンづくりに命を懸けているように感じます。

 ところで鹿児島は10万人あたりのラーメン店の数は、山形、栃木、新潟、秋田県に次いで全国第5位で、九州ではNO1です。鹿児島のラーメンには、地域の特産品を活用して新たに開発されてものもあり、薩摩川内市のきびなご、いちき串木野市のマグロ、加世田のかぼちゃ、志布志のハモ、枕崎のかつおラーメン等です。いずれもそこに行かなければ食べられないラーメンです。

 全国的には、札幌ラーメンや福島県の喜多方、九州の博多、久留米、熊本ラーメンが有名ですが、鹿児島のラーメンはまだまだ知名度が低いのではないでしょうか。
 鹿児島のラーメンは
① 茶うけに食べ放題の漬物が出され店が多くあります。
② 太い麺が多く、料金は他県に比べて少々高めの設定です。
③ スープは半濁でにごっているものが多く、キャベツ、もやし、メンマ、しいたけ等具が多いことがあげられます。

 従来から鹿児島の食と言えば、黒牛、黒豚、黒さつま鶏、クロマグロ等に代表される黒シリーズやカンパチ、うなぎ等を主としてPRしてきました。今後はB級グルメとしてもっとPRをしていきたいと考えています。

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 この度県内の民放局が主催する「第1回鹿児島ラーメン王決定戦」が、実施されることになりました。前段として、県民10,000人アンケートによる上位30店舗を発表するイベントが開催され、観光に活かすべくコメンテーターとして参加しました。

 県内各地域で集めた様々な人のアンケート結果により30店舗が選ばれましたが、小生はその中で13社のラーメンしか食べたことがなく、鹿児島のラーメンの広がりを感じました。また、故郷の志布志から1社が15位以内に入り、よく行く店であるためホッとしているところです。

 来る2月21日(土)~22日(日)鹿児島本港区のウォーターフロントパークで、上位15店舗が出店して、来場者による投票で第1回の鹿児島ラーメン王が決定します。本大会にも「ラーメンデーターバンク会長 大崎裕史」さんも参加されますが、アンケート調査で選ばれた上位15社が一堂に会することは、他県でも例のないことで多くの来場者で賑わうのではないでしょうか。第一回鹿児島ラーメン王決定戦を契機として、県民が鹿児島のラーメンの魅力を再認識する機会になることを期待しています。

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 鹿児島はラーメンスープの素となる豚や鶏の全国屈指の生産県であり、味に対しての評価は高いものがあると思います。また、干シイタケ、煮干し、昆布、かつお節、野菜などからも出汁をとっています。その手法はマル秘としている店が多いのも事実です。

 各地域に永年にわたって支持されているラーメン店があります。40年前のことですが小生が大学生のころ、アルバイトの帰りに先輩が「ごはん付きで100円のラーメン」をおごってくれましたが、その美味しかった味を忘れません。今でもその店は天文館で営業を続けており、夜遅くまで酔客が訪れているのを見ると多くのファンに支えられている店だと感じます。

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 名山町の産業会館の近くには、昼になると行列ができるラーメン店があります。経営者の「いらっしゃいませ」の明るい笑顔が何よりも入りやすい雰囲気を作っています。「おもてなしの心」が伝わり、デパート帰りの買物客やサラリーマン、離島帰りのリュックを背負った観光客の姿も見られます。皿一杯のお漬物が、ラーメンが出来上がるまでの時間の長さを忘れさせてくれます。

 今年秋には「第30回国民文化祭」が県内全市町村で開催され、全国から参加者が集まります。各地域で鹿児島のラーメンを食べる機会を提供していただきたい。新幹線全線開業から3年10ヶ月経ちますが、食の魅力が観光客誘致につながっています。最近では、鹿児島に替え玉が特徴である博多ラーメンも進出し、競争も激しくなっています。気軽に食べられるラーメン店が近くにあることは観光客の楽しみの一つです。

 最後に、県内には103の焼酎の蔵元があり、銘柄は2,000種類を超えています。ラーメンも地域の皆さまに愛され続けて欲しいと思います。今回の決定戦は、桜島が望めるすばらしい場所で開催されます。多くの方が会場に足を運んでいただき、大会を盛り上げていただきたいと思います。

No.344 地域創生に求められるもの ~地域資源を活用し、新事業の創出と雇用拡大を~

2015年1月13日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 昨年の総選挙で自民党が圧勝し、安倍政権が再スタートしました。政策の目玉に地域創生を掲げており、人口減に苦しむ地方にとっては待ったなしの重要課題となっています。

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 日本創成会議が発表した将来の人口推計によると、2040年までに人口の再生産を担う20~39歳女性の割合が5割以下に減り、「消滅」の危機がある自治体が全国で約896あり、県内でも43の自治体のうち30の市町村がその危機にあると予測しています。

 地域の人口減に一定の歯止めをかけるためには、地域資源を活用し、新事業を創出して「若者の雇用拡大」による定住人口の確保や、Uターン・Iターン者などの受入拡大が不可欠となっています。

 鹿児島県は、28の有人の離島があるなど南北600キロにも及びます。県の基幹産業は農業と観光ですが、農業は後継者不足等もあり地域の人口減少に歯止めがかからないのが実情です。農・水産業の6次産業化を進め、定住人口を増やす取組が求められています。 

 人口減が進む自治体の中で、若者が比較的に多い離島の2つの町を紹介します。

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 はじめに奄美群島にある「龍郷町」です。龍郷町は県全体で、20代~30代女性の減少率が一番少ない町です。奄美空港と奄美市中心部との中間にあり、島外に行くには便利な距離に位置しています。観光的には美しい海岸線に恵まれ、手広ビーチは日本有数のサーフィンの聖地です。西郷隆盛が幕末に3年間過した家が残されており、歴史ファンが訪れます。

 また、秋名集落で開かれる「ショチョガマ」、「平瀬マンカイ」は、山と海で同日に奉納される神聖なアラセツ(新節)行事で、南方文化を色濃く反映した祭りで必見の価値があります。龍郷町には都市圏から若者が移り住み、マリンスポーツ、エコツアー等の会社を立ち上げ、観光客相手の体験メニューを提供し、ペンションやレストランを経営して生活を営んでいます。

 隣接する奄美市の奄美空港は東京や成田、大阪等大都市圏と結ばれており、そのメリットを活かして、人・もの・情報の交流をすすめ、翻訳業務やIT関連のプログラム作りなどの事業を立ち上げている起業家もいます。インターネットの普及により、活動の場が必ずしも都会でなくても地方でも可能となっています。

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 大都市圏での通勤時間や事務所維持費等を考慮すると、交通アクセスに恵まれた地域に仕事場があることは、定住しやすい環境にあるのではないでしょうか。冬でも温かい地域であり「2地域2居住」を推進することで、人口減対策にもなります。

 奄美群島は「琉球・奄美」として世界自然遺産の暫定リストに登録されており、2017年度中の正式登録を目指しています。登録後は多くの観光客が訪れるものと予想され、新たなビジネスが生まれるものと思います。若者の雇用拡大が期待され、立地条件を活かした取組が人口増につながります。

 次に世界自然遺産地域がある「屋久島町」は、龍郷町、姶良市、霧島市に次いで、20代~30代女性の将来人口減少率が少ない町です。今では世界からクルーズ船や観光客が訪れます。やはり世界遺産というブランドが大きな魅力となっています。日本人が行ってみたい「世界遺産」の中で第一位に選ばれており、今後も一定の観光客が訪れるものと思います。エコツアーガイド、レストラン、お土産品店、民宿経営と全国から様々な人が移り住んでいます。

 県民に意外と知られていないのが、平内地区に2005年に開校した「屋久島おおぞら高校」です。通信制の高校で年間を通して千数百人の高校生が来島し、スクーリングを受けています。屋久島という素晴らしい自然は、一度学校をやめた生徒たちの受入環境に適しています。キャンパスでは全国から集まった若者が生き生きとした姿で学んでいます。

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 卒業後屋久島で観光関連の仕事に就いたり、大学卒業後屋久島に戻ってくる学生もいます。 また、豊かな自然や温泉、安価な住宅事情が魅力となり、リタイヤした人が移り住んでいます。テレビの旅番組で放映されることも多く、これからも都市圏からのIターン者を迎え入れる魅力を持っています。

 自然環境への取組のPRや、外国語表記、通訳エコガイドの充実等を図ることで、これからインバウンドの誘致に弾みがつくのではないでしょうか。大都市圏から外国人を呼べる地域の魅力を備えており、雇用の拡大にもつなげられます。

 若者が減少していくと、活力が低下し新しい商品開発や情報発信が遅れがちになります。都会に住む大学生の新鮮な発想を地域活性化に活かすべきです。地域は大学との連携を深めることで、地域資源を活用した商品開発や販路拡大が可能となります。大学は年間のカリキュラムに、地域連携事業を組み入れることで、入学者や就職増などメリットが享受できます。

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 素晴らしい日本の地域文化を国内外の人にPRするのが、観光の役割の一つです。持続できる観光地づくりには、そこに住む人が地域の文化をしっかりと守り、住民にとっても居心地の良い場所でなければなりません。若者が観光に興味を持ち、雇用の拡大が図られることです。

 海外航空路線の拡大や円安、ビザ要件の緩和等により外国人も急激に増えてきました。FITが増加しており、外国語の案内表示、銀聯カードの拡大、WiFiの整備、免税店の拡大等改善すべき多くの課題もあります。外国人の受入態勢強化には、若者同士の交流が重要になっています。

 鹿児島では、今年「第30回国民文化祭 かごしま2015」が全市町村で開催され、全国から参加者が集まることが期待されます。地域の「文化力」が問われます。子供や若者の出番を増やし、地域の魅力を発信する機会としなければなりません。

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 最後に観光は地域の農林水産業、商業、工業、土木、建築、教育関連等多くの分野と関連があり、総合産業として位置づけ、雇用拡大につなげることが重要です。市町村を繋ぐ観光地の整備や着地型商品の充実、地域産品の充実等が、広域観光ルート定着の鍵となります。

 龍郷町と屋久島町に見られるように地域資源を活用した事業を展開し、若者が定住しやすい環境を作り、若者の雇用拡大と、交流人口の拡大につなげることが「地域創生」には不可欠ではないでしょうか。

       田児の浦に うちい出て見れば 白妙の
                    富士の高嶺に 雪はふりつつ
                               山部赤人 ~万葉集~

No.343 2015年を「明治維新150周年」に向けて飛躍の年に~鹿児島の伝統・文化をPRする機会に~

2015年1月5日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 明けましておめでとうございます。今年の干支は「未」で、動物にあてはめると羊になります。十二支の中でも牛や馬と並んで人に馴染みのある動物です。干支の由来については、未は字義が「味」(み:あじ)であり草木の果実がいよいよ熟し、丁度滋養溢れた状態になることを指しており、後に羊の字があてられました。

 羊はめでたい善良な動物であり、同じ行動を取って大勢で暮らすことから、群の漢字は羊から作られました。群れをなす羊は、家族の安泰を示しいつまでも平和に暮らすことを意味しています。 年末年始は最大で9連休となり、海外旅行や温泉地で正月を過された方も多いのではないですか。初詣に行かれて今年の幸せを祈願されたことと思います。羊の群れるごとく鹿児島の観光が順調に進むことを祈りたいと思います。

 昨年末に総選挙があり、観光業界にとってもあわただしい年越しでした。インバウンドが好調で、年間で1,300万人を達成しました。要因として、「円安」、「和食」や日本の伝統的文化財が海外に紹介されその魅力が浸透してきたこと、LCCの就航による航空運賃の軽減化、免税品の拡大、ビザ取得要件の緩和等に伴い東アジアから訪日しやすくなったことなどがあげられます。鹿児島でも、インバウンドは好調に推移しており、さらなる誘致体制の強化が求められます。

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 交流人口拡大を目指して、各自治体が誘客に努力していますが、今年の取組や課題について述べたいと思います。観光客を県内全域に広げることが、今大きな課題です。連泊やリピーター創出につなげるべく、まず次の3つの施策を展開します。


 ①主要観光地域(指宿・霧島・鹿児島)発の広域観光周遊ルートの整備
 ②源泉数全国2位を誇る本県温泉地の優位性を生かした「風呂マラソン」の展開
 ③鹿児島のNO1の観光素材である桜島の再評価と眺望スポットをめぐる「桜島七十七 景ルート」の選定を行います。  

 昨年は、拠点地域からの周遊ルートづくりのために、関係者のモニターツアーを実施して課題等を整理しました。今年は、具体的ルートの設定と商品化、PRと受入体制の充実について推進していきます。

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 地域では「吹上浜砂の祭典」が、今年も約1カ月間開催されます。告知期間もあることから、例年以上の集客が期待できます。南薩摩地域で民泊を受け入れている家庭では、「砂の祭典」見学を組み込み、生徒さん達に珍しい砂像づくりを体験させ、思い出づくりの一端を担って欲しいと思います。また、学校行事やバスツアーの企画、遠足等への売り込みも急がれます。

   入館者が3万人を超えた「薩摩藩英国留学生記念館」は今年が正念場です。近代日本の原動力となった若き薩摩人の偉業について、「明治維新」とセットでPRしていくことが、その価値を高めます。留学生にちなんだ飲料やグッズ、地域産品を活かした新たな製品開発が地域経済への貢献になります。

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 離島については、アクセスの利便性が観光客の誘致につながります。奄美空港へのバニラエアの就航は、新たな需要開発につながりました。加えてオンラインのない空港からのチャーター便を増やし、時間的短縮を図ることで旅費の割高感を払しょくできると思います。

 時間にゆとりのある熟年層にはクルーズを、若者には夏の美しい海や大学のゼミのフィールドとして売り込まねばなりません。甑島の変化に富んだ地形、種子島の宇宙センター、屋久島の世界自然遺産、「琉球・奄美」の世界自然遺産候補地等が離島の魅力を引き出すことになります。

 スポーツツーリズムの推進も求められます。スポーツ合宿は「さんふらわあ」の利便性が定着し、大隅地域が特に増加しています。今後はサッカーのキャンプ誘致も必要であり、プロが使用できるサッカー場の整備が求められます。2020年には、東京オリンピック開催が決定しており、事前キャンプ誘致等も過熱していきます。

 今年も関西地域から集約臨時列車で5,500人、筑紫地区から3,500人の中学生が訪れます。垂水漁協での餌やり体験、知覧、鹿屋での平和学習、桜島の火山・自然学習、鹿児島市の歴史探訪等が優位性を発揮しています。県内全域に、約1000軒の農家民泊の供給が広がる中で、「簡易宿所営業」の取得を強力に進めていかねばなりません。

 鹿児島市は、日本を代表する都市型観光の魅力を備えた街で、歴史、自然、温泉に加え、食の魅力が観光客の滞在を可能にしています。県都として県内全域を見据えた観光振興策が重要です。アクセスや大会設備の充実等を活かし、MICEの積極的誘致が不可欠です。アフターコンベンションの企画提案も重要であり、県内各地域の魅力が増すことが結果として鹿児島市に宿泊することになります。

 地域の隠れた観光資源の商品化には、エージェントと自治体との連携が欠かせません。着地型観光については各自治体の支援体制充実が、地域への交流人口の拡大や人材育成に繫がると考えています。一時的な観光客誘致ではなく、持続できる観光地になるべく新たな観光素材提供や情報発信が不可欠です。

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 今年の最大の関心事は「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」が、世界文化遺産に正式登録されるかです。リストに「近代化産業遺産」の鹿児島市内の5箇所が入っています。明治維新150周年と文化遺産の価値をセットでPRしなければなりません。登録後の観光客増加を見据えて早目の対策を立てる必要があります。



 10月31日から11月15日まで「第30回国民文化祭 かごしま2015」が開催されます。全市町村で開催されることから、参加者を県内各地域に呼び寄せるチャンスです。事前のPRを十分行い、それぞれの地域ならではのおもてなしを提供することが、鹿児島のファンづくりになります。各地域の「文化力」が問われる年になりそうです。

 キャンペーンの中心は、今年も最大のマーケットである関東地域や、新幹線で最速1時間17分で来ることができる福岡地区でのPR強化に努めていくことが得策と考えます。3月に北陸新幹線・金沢ルートが開通し、首都圏から北陸方面に観光客が流れると予測しています。首都圏の需要は大きく、飛行機利用の商品造成に力をいれ従来以上の販促活動が必要です。

 今後日本人の国内旅行は減少することから、外国人観光客の誘致は欠かせません。インバウンドについては上海線の利用促進やソウル線の夏場の搭乗率アップ、台湾線は宮崎線が週3便となり両県で7便体制となり、職場旅行や教育旅行の誘客対策が必要になっています。定期便の維持には双方向の集客が不可欠です。

 特に上海線については、鹿児島からの搭乗率アップが課題です。海外ではFITが増加しており、ブロガー対策や有力メディアの招聘、WiFiや外国語表記、「免税店」等の充実が求められます。インドネシア、タイ、マレーシア等ASEAN諸国からの誘客には、受入態勢やハラール認証の整備が欠かせません。

 情報化社会に対応できる新たな需要吸収の仕組みづくが必要となっています。楽天やじゃらん等とタイアップし、旬の情報提供が欠かせません。また、インターネットの普及で可視化が進む中、コンプライアンスの向上と迅速・正確な情報提供が求められます。県のホームページも刷新していますが、ワンストップで県下の情報が入手できるように、さらなる改修も求められます。

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 今年は土曜日を入れた3連休以上は6回で、昨年より少なくなることから旅行需要を喚起する取組を各機関自ら早目に展開し、季節感あふれるオンリーワンの情報発信が必要です。周辺市町村の祭りや、花、食、伝統行事等を組み込んだ、生活・文化の香りがする商品企画が求められています。

 最後に今年のNHK大河ドラマは「花燃ゆ」で幕末の長州が舞台で、薩摩が登場する機会もあるのではないでしょうか。2016年は「薩長同盟150周年」になります。山口県と連携し、広域での誘客も求められます。

 2015年が皆様にとって素晴らしい年になりますよう心からお祈りいたします。

       わが卓に めでたく白き 寒牡丹
                   ひとつ開きて 初春はきぬ
                                   ~与謝野晶子~   

No.342 2014年を振り返る~外国人観光客が顕著に、交流人口のさらなる拡大が重要~

2014年12月22日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 今年も残り9日となりました。大型台風の襲来や集中豪雨、木曽御嶽山の噴火と自然災害に見舞われた年でした。冬季オリンピックで41歳の葛西選手の銀メダル、羽生選手の金メダル獲得や、ゴルフ界では地元鹿児島出身の15歳勝みなみ選手の史上最年少優勝の活躍など明るい話題もありました。

 選抜高校野球大会に、21世紀枠として、大島高校が鹿児島の離島から始めて選抜され、島の人々に大きな勇気を与えました。九州新幹線全線開業から3年9カ月経過し、開業効果に陰りが見える鹿児島の観光ですが、地域は必死になって誘客に努めています。2014年の取組等を振り返ってみたいと思います。

 鹿児島県全体の入り込み客は2月以降苦戦が続いていましたが、9月から回復基調にあります。県観光課が進めている「魅力ある観光地づくり事業」は、毎年10億円の予算をかけ地域づくりに貢献しており、それを活用した整備が進んでいます。

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 頴娃町地域では、官民の枠を超えた「NPO法人頴娃おこそ会」が頑張っており、定期的に会合を開き、地域づくりの勉強会や視察等を受入れています。地域づくりは、まさに人の存在が重要であると思います。


 垂水市でも、「千本イチョウ園」に加えて牛根地域の「埋没鳥居展望公園」、「宇喜多秀家候ゆかりの地」が整備されました。大隅地域は佐多岬や雄川の滝の整備が進み、新たな観光地になるのではないでしょうか。

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 北薩では、川内港から甑島へ水戸岡鋭治さんデザインによる高速観光船が就航し、多くの観光客が訪れ、ゴールデンウイーク中は昼食がとれないほど賑わいました。英国への留学生が船出したいちき串木野市の羽島には、「薩摩藩英国留学生記念館」が完成し、すでに3万人の来館者があり、人気となっています。来年が本当の勝負の年となります。


 鹿児島を訪れる観光客は、九州管内に次いで関東地域からが多いのが現状です。7月から、LCCのバニラ・エアが成田から奄美大島に就航し話題となりました。今まで羽田から1便しかなく、運賃が高くて商品企画が難しく、観光客の誘致に不便をかこっていただけに朗報となりました。

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 就航以来80%を超える搭乗率で、新たな需要開拓に繋がっています。年間を通じての誘客対策が重要です。格安航空運賃を武器に、ピーチ、ジェットスターなどが鹿児島線に就航しており、LCCの人気は定着していくものと思います。 


 着地型観光は、今まで知られていなかった地域の生活、文化、人、祭り、食等にスポットを当て、地域資源の掘り興しや人材育成等地域活性化につなげることが重要です。

 鹿児島中央駅前の「かごっまふるさと屋台村」は、来年が店舗の更新の時期であり、新たな出店も予想されており楽しみが増えます。屋台村は、25軒の個性あふれる屋台と1軒の焼酎専門店が軒を並べます。店は小規模ですが家族的な雰囲気が味わえるのが特徴で、鹿児島の食文化を堪能できる場所としての魅力が浸透し、外国人も多く訪れています。地域づくりのヒントになる施設です。

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 また、指宿枕崎線の観光列車「指宿のたまて箱」は、好調を維持しています。地域の皆様方が観光客に手を振るなど温かいおもてなしが評価されています。大雨によるがけ崩れに列車が巻き込まれる事故が発生しましたが、近くの指宿商業高校の生徒さん達が機敏な対応を行い、負傷者の救護にあたりました。



 日頃からの訓練と、おもてなし心が活かされ、乗客から多くの感謝の声が寄せられました。献身的な行動に対してJR九州より表彰を受けました。地域でのおもてなしの心が確実に醸成されつつあります。

 種子島宇宙センターから「はやぶさⅡ」が打ち上げられ、多くの見学者が訪れました。6年後の帰還に夢がふくらみます。屋久島は、JTBの調査で、日本にある世界遺産の中で日本人が一番行きたい場所に選ばれ、今後の誘客に弾みがつきます。

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 2回目の「鹿児島カレッジ」では、若者の意見を商品企画に活かすべく現地研修会を実施しました。今回は「教育旅行」をテーマにしており、新鮮なアイデアが寄せられています。今後関西、中国地域からの新たな教育旅行の商品として期待されます。


 教育旅行の誘致は確実に成果が上がっています。JR西日本とJR九州による修学旅行専用列車の設定がなされ、関西地域から34校、5,500人、筑紫地区から23校、4,520人の学生が利用しました。

 体験する農家民泊も順調に伸びています。県内で受入可能な家庭は約1000軒にもなり、県全体に広がっていることがあげられます。民泊について提起されているのがコンプライアンスです。農家民泊先進地の長崎県の松浦地区は、年間50,000人の受入を行っていますが、ほとんどの農家・漁家が「簡易宿泊所営業の許可」を取得しています。旅館業法で定められた許可を取得することが学校の信頼を得ることになります。

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 修学旅行は、一度に多くの生徒が動き、不況時でも実施され、取消しがなく、受入機関にとっては経営の見通しが立てられるなど安定した顧客といえます。今後は、バス料金のアップが予定されており、行先変更も考えられます。旅費の上限を考慮すると、佐賀県や山口、広島地域からの誘致に力を注ぐ必要があります。マリンスポーツの体験メニューの充実も求められます。

 また、学生のスポーツキャンプ・合宿を誘致すべく、福岡、大阪、京都でセミナーを開催しました。学生のスポーツ合宿は、宿泊施設や運動施設等の条件が厳しくなく、十分に練習時間が取れ、夜遅くまで使える施設が整っていることがあげられます。

 大隅地域は「さんふらわあ」利用による関西からの誘客がしやすく、支援策等も充実しており人気が高まっています。廃校となる高校跡地にスポーツキャンプの新たな構想がまとまり、誘致に拍車がかかるものと思います。

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 販促活動は、需要の多い首都圏対策が重要と捉えています。また、鹿児島市、霧島、指宿の3拠点地域から県内に広げる取組が必要であり、関係者によるモニターツアーを実施しました。北薩、南薩、大隅、離島地域とのさらなる連携も重要です。


 県民の方々が、それぞれの地域の魅力を語ることで観光の広域化が可能となり、持続的に観光客が訪れる「観光立県鹿児島」の確立に繫がるものと思います。地域・ふるさとに愛着を持つ人をどれだけ創るかが求められています。

 インバウンドは香港線の就航、宮崎~台湾線の増便、円安、免税品目の拡大等で追い風となり、過去最高の来訪者数となっています。官民あげて誘致策が効果をあげています。今年も韓国、上海、台北、香港、シンガポール、マレーシア、タイへ官民一体の誘致セールスを展開しました。他県と違う多様な観光資源の魅力を発信するため、メディア事業者の招聘を強化する必要があります。

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 エージェントの選択、招聘事業の絞込み、需要層にあった支援体制が必要と感じます。今後も国内旅行の大幅な伸びが期待できない中で、インバウンドの推進にあたっては、継続した人脈作りの重要性を感じています。日本全体で2014年は、1、300万人を達成すると予測されています。鹿児島でもさらなる誘客態勢が望まれます。

 市場におけるインターネットの利用は拡大して、しかも急速な変化も見られ、ネット販売は勢いを増しています。スマホ、タブレットPC、facebook等は旅行ツールとしての重要性が高まり、県のホームページの改修も定期的に実施しています。改修後のアクセス数は1日8,000件を超え140%の伸びとなっています。

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 2015年の「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」の世界遺産登録や「第30回国民文化祭・かごしま2015」の開催に向けての準備が着実に進められています。鹿児島の文化遺産を県民が学び、伝える機会にしなければなりません。

 2016年は薩長同盟150周年、2018年は明治維新150周年と続きます。鹿児島の歴史を再認識させる取組も大切です。鹿児島ゆかりの人物や歴史を題材にした大河ドラマや番組の制作を要望するため、官民一体で定期的にNHKへの働きかけを行ってきました。メディアの観光への波及効果は大きく、年間を通してしかも県全体に及ぶことです。

 2015年のNHK大河ドラマは「花燃ゆ」で、幕末の長州が舞台となることから、薩摩も関連があり、登場する機会が多くなるのではないでしょうか。観光客は西の方に向くことが予想されます。

 最後に今年も毎週コラムを配信でき、通算342号となりました。1年間ご支援いただき心から感謝申し上げます。ありがとうございました。来年は1月5日からスタートします。皆様良いお年をお迎えください。

            初雪や 水仙の葉
                      たわむまで
                             ~松尾芭蕉~

プロフィール

奈良迫プロデューサー
鹿児島県
観光プロデューサー
奈良迫 英光
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