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女性が支持する観光地の魅力とは

2009年6月29日

 

 九州の「リクルートじゃらん」が、毎年実施している九州の観光地人気ランキングで、常に上位にランクしているのが、大分県の「湯布院温泉」と熊本県の「黒川温泉」です。女性の圧倒的な支持を得ていることが上げられます。その理由はどこにあるのでしょうか。2つの温泉地の魅力を検証したいと思います。

 

yufuin_64_s.jpgまず湯布院温泉です。由布院盆地の中央に位置するこの地は、朝霧に包まれた景観や四季折々の農村風景が旅情を誘います。金鱗湖から由布院駅にかけての一帯に、多くのしゃれたカフェやレストラン、ギャラリーそして小物の店が散在し女性の客をひきつけます。特に地元で取れた農産物を活用した食事や調味料、おみやげ物はまさに「地産地消」を実践しており、地域への貢献も大きな額となっています。地域内の観光関連産業による波及効果が推計409億円であり、そのうち318億円が町内で循環しており、その総額は湯yufuin_70_s.jpg布院町時代の町内総生産のほぼ6割に相当しています。各宿泊施設では、調理人の方々が共同でメニューを開発しており、観光客を楽しませてくれます。又、定期的にゆふいん音楽祭や映画祭などの知的興奮を伴うイベントや、牛喰い絶叫大会、ウオーキング大会など観光客参加型行事も開催され、滞在に繋がっています。

 

次に黒川温泉です。渓谷沿いに20数軒の宿泊施設がありますが、雑木林の景観が癒し効果を高めています。又、大きな看板が温泉の入口にあり、集約して施設の位置を紹介しており、景観に配慮した美しい街のたたずまいを見せています。黒川温泉は「黒川温泉全体が1つの旅館であり、道路は廊下で、各旅館がお部屋」のコンセプトのもと、地元の小国杉で作った「入湯手形」を温泉客に買ってもらい、各施設の露天風呂を使える仕組みを構築しています。1枚の手形で3箇所入ることができ、15箇所入れば敢闘賞を、24箇所入ればパーフェクト賞を与えるリピーター対策を採っています。又、各施設が隣接しているところが多く、入浴後時間をかけてお化粧する必要も無く、気軽に他の施設に行けるのも女性の支持を得ていると思います。地元で取れた産物で食事、調味料、スイーツに工夫を凝らし、小物のお土産品にも女性が手に取って買いたくなるものを提供しており、黒川温泉の人気を支えています。                          

 

2つの箇所に共通していることがいくつかあります。まず女性に人気のある食への安全・安心の配慮がなされていることです。「地産地消」を推進し、地元への経済効果をもたらしていることです。また施設には植物が至るところに配置され、大きな露天風呂を備え開放的な雰囲気を醸し出しています。地域全体の魅力アップに努めており、滞在して飽きない街づくりの原点がそこにあります。

 

人気が定着するまでには、両地域とも街づくりに信念を持って取り組んで来たリーダーの存在が欠かせません。景観保護や建物規制、文化の発信など長年にわたって取り組んできた成果が街の魅力につながっています。これからの観光地は、地域全体の魅力付けと「地産地消」の推進、おもてなしの心の醸成など地域のブランド化が重要です。

 

今消費の主役は女性です。女性はブームの火付け役にもなります。人気を持続するには観光客の信頼に応えることであり、その意味で今後の観光地づくりに示唆を与えているのが2つの温泉地と思います。 

                      

               

〜なんこ遊び〜を復活させよう

2009年6月22日        

  

 

子供の頃正月や祭りの宴席で大人たちが、木の棒を手に隠して、面白い言葉で数当てをし、焼酎を楽しく飲みながら親睦を図っている光景がよく見られました。いまではあまり目にする機会は少なくなりましたが、南九州に古くから伝わる「なんこ遊び」です。

 

なんこは対戦する二人が向き合い、固い樫の木でつくられた10センチ程度のなんこ珠を3本後ろ手に隠して持ち、その何本かを右手に移して畳の上(なんこ盤)に突き出し、合計数を予想して言い、互いに手を開いて持っている本数を見せ合い、勝ち負けを決める遊びです。負けた方が、事前に盃に盛られた焼酎を飲むことになります。

 

地方によっては違いますが、数字の言い方がおもしろいことです。たとえば次のような言い方をします。

   0本・・・・おてぱら。おいやらん(誰もいない)

   1本・・・・天皇陛下(国の象徴で一人)。富士山(日本一の山)

   2本・・・・げたんは(下駄の歯)。ふうふ。ふたご、じゃん

   3本・・・・犬の小便(犬は片足を上げて3本てするから)。
                    げたんめ(下駄の穴)

   4本・・・・かやんついて(蚊帳の吊り手)。
                    くいまんタイヤ(車)

   5本・・・・かたて(指)。オリンピック(五輪の輪)

   6本・・・・いっぺ。けねじゅ(家族全部)

などです。

 また、相手が何本持っているかを当てる遊びもあり、ひとしこ(同じ)、あにょ(兄のことで1本多い)、おとっ(弟のことで1本少ない)などの言い方をします。

 

  ところで「なんこ遊び」は、昔は祝宴の中では必ず見られた光景でしたが、今ではほとんど見かけなくなりました。その要因はいくつかあげられます。核家族化が進み、親戚、地域の人が一緒に集まる機会が少なくなっています。それに併せて、昔は家庭で行っていた祝い事を、レストランなどでする機会が増え、場所や時間的制約も受けることで、楽しい笑い声を気兼ねなく出すこともできなくなっています。又地域の伝統祭事も高齢化が進み、行事の後に必ずおこなっていた宴会も減ってきており、なんこ遊びを伝授することも難しくなっています。地域コミュニティの崩壊が、伝統的遊びにも影響しています。

 

 今指宿地域の宿泊施設では、観光客になんこ遊びを楽しんでもらうという取り組みを行っています。宴席の最中に大広間でなんこ遊びを取り入れて宿泊客を喜ばせています。ルールは簡単ですので、すぐに宴席で実践できます。若者同士が不慣れな手つきでなんこ棒を出す姿は滑稽であり、仲間の笑いを誘います。次から次に選手が交代し、座は一変に盛り上がっていき、焼酎の量も増えていきます。又外国人に教えると、手のしぐさや数字の言い方に特に興味を示し、伝統的日本文化の遊び方をみずから体験し、お土産に道具を買って帰るとのことです。

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ひところに比べると、焼酎のブームも去り需要が足踏みしている中で、なんこ遊びを定着させ焼酎の新たな楽しみ方を提供し、焼酎のファンを開拓して売り上げにつなげたい思いがあります。又、特産品の薩摩焼の一つである「黒じょか」に焼酎を入れ盃につぐという伝統的飲み方を教えることで、お土産としてセットで買ってもらうことにもつながります。

 

なんこは漢字では「南交」と書き、南方と交易が盛んであった薩摩藩が取引の祭、接待の一つとして活用した高尚な遊びと言われています。県外の方がみえた時、なんこ遊びを教えることで交流も深まり、思い出に残ります。

 地域での祭事が減り、地域住民の寄り合う機会が少なくなり、ますます地域の伝統文化は忘れられていきます。また宿泊施設での宴席の後は、カラオケ遊びと変わっています。南九州の伝統的遊びである「なんこ遊び」を復活させ、焼酎文化の新たな復活を目指したいものです。

                   参考  焼酎文化の遊び〜なんこ

離島の魅力-不利性を優位性に変える取組

2009年6月15日
  
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  先月の30日、三島村の硫黄島で薪能「俊寛」が上演され、ツアー客や島民ら約400名が幽玄な舞を堪能しました。今回は国土交通省の支援のもとで、通常は鹿児島港発着の船が、新しい航路開設の実証実験事業の一環として、枕崎港から出港しました。

 

硫黄島は、平家討伐を企てたとされる俊寛が流罪となり、一生を終えた島です。今回の能の会場は、自然の切り立った崖を背景に、芝生が美しい島のグランドに特設の舞台が設けられ、かがり火と柱松が演出効果を高めていました。太鼓、小鼓、笛の音が自然の風と調和し、又、夜空には月が輝き、なんともいえない雰囲気を醸し出していました。

薪能のストーリーは、俊寛という人の悲運の物語ですが、島の自然や人々のたたずまいと、梅若玄祥さんの迫真の演技が加わり、俊寛のその時代に我々を引き戻しているようでした。2時間余りの公演でしたが、本土から来たツアー客をはじめ島民も皆満足そうでした。

 

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 硫黄島は人口140名程度であり、小中学校生は20名足らずで典型的な過疎の島ですが、入出港時に子供達が西アフリカからの伝統的打楽器「ジャンベ」のリズムで歓送迎してくれた姿がとても印象的でした。島の北部には、旅人が是非一度は訪れたい温泉にあげている「東温泉」という天然の露天風呂があり、朝日や夕日を眺めながら入る風呂は格別です。又、5月中旬から6月初旬にかけては、タケノコ刈りが楽しめ、2月には椿が満開になり、9月には椿油作りが楽しめます。又落人伝説の史跡や太公望にはたまらない釣りの良場、牧場、火山、温泉など観光素材が小さな島に自然にパッケージされ、旅人を魅了します。

 

ところで県内には、28の有人の島があり、それぞれ自然の魅力や文化、歴史があり訪ねてみたい島ばかりです。しかし多くの島はアクセスが不便であり、必ずしも観光客誘致には恵まれているとは言えません。しかしあまり行けない島だからこそ都会の人にとっては、行ってみたい場所になります。島独特の祭りや食文化は観光素材として欠かせません。またユニークな海岸線、砂浜、生物、温泉などは魅力です。厳しい自然や離島というハンディの中で生きてきた島の人々の暮らしの知恵は、われわれの生活に多くの示唆を与えてくれます。

 

島に客を呼ぶ方法としていくつかの方策が考えられます。祭りや演劇などイベントを開催する場合には、限られた船便や飛行機には定員があり、大量集客は厳しくなりますがアクセスの数が限定されるので、集客管理はしやすいと思います。又、島でしか取れない産物や、島でしか咲かない花、島でしか見れない生物など希少価値を売りに、情報発信することが重要です。   


 大学とタイアップし、ゼミの講座の一つに島の生活や文化を取り上げてもらう取組や、カルチャーセンターや市民講座のカリキュラムに、島を訪れるコースを加えることで一定の入込客を確保できます。最近の旅行社の企画では、「日本の100の島を巡る旅」や「離島を訪ねる旅」が人気を博しています。

 

ところで今年は皆既日食の観測で、十島村全体で人口の倍の1500人の客が訪れます。日食が観測できる他の島々にも、多くの客が詰めかけます。

アクセスや宿泊施設の条件が不備でも、ニーズに合えば人は訪れます。島でしか体験できないものを商品化し、情報をどこに発信するかが課題です。又、島に人が来ることで島民は元気になると思います。

 

離島と言う不利性を、むしろ稀少価値として捉え、優位性に転換することが大事です、

南北600キロある鹿児島県ですが、本土の長さより離島の長さが上回ります。ぜひ今年の夏は多くの離島を訪れ、島の魅力を発見しませんか。

人は人の魅力に惹かれて旅をする

2009年6月8日

          

                                          

先日雑誌社の取材で、錦江町を訪れました。田園風景を撮影していると農家の方が、手を休めてお辞儀をして、にこやかに手を振ってくれました。

 同行した編集長がおもわずカメラを向け、鹿児島には純朴なやさしい方が多いですねと感激していました。田舎の良さは、自然の美しさだけでなく、人の魅力をも残していることです。又、旅先の魅力は、温泉や景観、美味しい食べ物があげられますが、なんといっても、人の温かさが格別です。

 

旅行者からお礼の手紙をいただきます。亡くなった恋人のお墓にお花を捧げに鹿児島を訪ねたけれども、場所がわからず途方に暮れているのを心配し、八方手をつくし探し当ててくれたタクシードライバーの方、家族旅行で足が不自由な親のために、すぐに車イスを用意し部屋まで案内してくれたホテルの方、子供が夜中に突然熱を出し、タクシーが捕まらず救急病院まで自分の車で運んでくれたホテルの警備の方など、多くの心温まるおもてなしが、鹿児島の観光を支えています。

 

中国の洪応明の「菜根譚」の教えに「天地の気、暖なれば則ち生じ、寒なれば則ち殺(さっ)す」という言葉があります。いつも温和な心持ちでいることが、自分自身や人を幸せにし、冷たい心を持っていれば、人は離れていき不幸になって行くという意味です。鹿児島を訪れる観光客を、誰もが温かく迎える土壌を築くべきです。

 

ところで未知の地方都市に行った場合の最大の楽しみは、地域の食ですが、人の魅力も記憶に残ります。鹿児島には、地域ならではのいろいろな達人がいらっしゃいます。竹細工を作ったら日本一の職人、流暢な鹿児島弁で観光客を和ませる小料理屋の女将さん、様々な団体客を楽しませてくれるバスガイドさん、昔から手作りの芋焼酎造りに励む杜氏の方、錦江湾の鯛釣り名人、再び泊まりたいと思わせる接遇を実践する仲居さんなど、郷土の宝であり、まさに「ディスカバー 鹿児島人」にふさわしいと言えるでしょう。

 

まもなく国民の大移動が始まる夏休みがやってきます。人は人の魅力に惹かれて旅をします。鹿児島に再度行きたいと言う思いを抱かせる魅力ある人に、ぜひ光を当てたいものです。

 

第5回かごしまファンデーに参加して

2009年6月1日
  
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  5月24日大阪の京セラドームで「第5回かごしまファンデー」が開催され、3万2千人の来場者があり、鹿児島の各市町村、企業がブースを設置し、ふるさと産品の販売や観光PRを行いました。インフルエンザの影響で開催が危ぶまれましたが、開催にこぎ着けることができ関係者の方はほっとされたと思います。

 

各コーナーではさつま揚げ、あくまき、鶏飯、かんぱち、ラーメン、焼酎や農産物を加工した菓子類が飛ぶように売れていました。市町村によっては、市長自らはっぴを着て地元の産品を販売している姿が印象に残りました。

午前中に売り切れた品も多く、ふるさとに対する思いの強さを再認識しました。大きな紙袋いっぱいにふるさとの品を持っている人が多いのに、うれしさが込み上げてきました。

又、会場至る所で鹿児島弁が飛び交い、まるでふる里がそっくり移転したような雰囲気でした。

 

鹿児島の農産物の生産高は常に上位にランクされ、「本物。鹿児島県」のネーミングで全国展開し、人気が定着してきています。鹿児島出身者にとって、ふるさとの味は、長年体にしみついており、まさに舌の感触は忘れることができません。本物の味を求めて自然にふるさとのイベントへ足が動くのだと思います。

今食の安全・安心が問われており、あらためて鹿児島の食のすばらしさが認識されています。食はまさに地域文化の結晶であり、後世に残すべき大事な文化だと思います。今後ともふるさと出身者に、食の情報を提供する機会を増やしていかねばなりません。

 

又、会場のあちこちで「○○中学校○卒同窓会」の垂れ幕が見られましたが、ファンデーに合わせて会場を集合地として、同窓会を開催しているとのことでした。

関西地域には、学校を出て集団就職で出てきた方が多くいらっしゃいます。苦労しながら働き、居を構え今は関西の住人になっていますが、いつまでもふる里のことは、脳裏から離れないと思います。イベント開催は、産品を購入できる機会だけでなく、ふるさと意識を高揚し、ふるさと納税の促進やUターンのきっかけづくりにもなると思います。

 

関西地区でこのような大規模なふるさとイベントは他にはなく、鹿児島県人会だけとのことです。関西地区県人会の会長である京セラの稲盛会長の、ご尽力なくしては開催できないのではないかと思います。また、各地域の県人会が結束し準備、運営に当たっていることも見逃せません。60才を超えた方が多く、ふるさとへの思いを人一倍感じていらっしゃる年代と思います。

 

2年後には新幹線で大阪と鹿児島中央が4時間で結ばれ、しかも1時間に1本は直通列車「さくら」が運行されますが、関西地域では九州新幹線全線開業の認知度は低く、まだまだPR不足です。

又、ふるさとの産品を今以上にPRし消費を拡大させるため、その伝道師としての役割を県出身者の方々がつとめていただければと思います。そのことが鹿児島のそれぞれの地域でがんばっている生産者の、励みになると思います。関西県人会との交流が今以上に活発になることを期待します。

 

最後にふるさとへの郷愁を歌った短歌を紹介します。

  

    ふるさとの なまりなつかし 停車場の

   

          人ごみの中に そを聞きに行く

 

                        ― 石川啄木 ―