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「九州新幹線全線開業を1年後に控えて」 〜観光プロデユーサーズコラム〜

                                   2010年2月22日   

               鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫 英光  

 九州新幹DSC_0512.jpg線の全線開業が2011年の3月になることが、JR九州から発表されています。約1年後に迫った新幹線全線開業に向けた全県的な取組の一層の拡大を図ることを目的に、地域活性化の権威等による基調講演や、「新幹線効果活用プラン」に基づく地域でのモデル的取組等の紹介、パネルディスカッション、俳優・沢村一樹氏のトークショーを内容とする「九州新幹線全線開業シンポジウム」が2月12日に開催されました。今回のテーマは、地域の魅力づくりや「増やす」、「広げる」、「活かす」の視点で議論が行われ、約600人の参加者があり、新幹線に対する関心の高さが伺えました。

 九州新2010022201332322236.jpg幹線は、2004年3月に部分開業しましたが、開業した1年間で約323万人が利用し、3年目には1000万人を突破しています。また、駅別取扱収入ランキングでは、西鹿児島駅(開業前の名称)は開業前は6位でしたが、2005年以降鹿児島中央駅は、博多駅に次いで第2位となっており好調に推移しています。通勤・通学に利用しているエクセルパスは1000人を超え、県民の足として定着しています。
 しかし、新幹線の停車駅がある出水駅と川内駅沿線の観光客は、伸び悩んでいるのが実情です。また、鹿児島市内の商店街の人の流れに変化が起きており、天文館周辺では空き店舗も目立っています。また鹿児島中央駅に大きな商業施設がオープンし、競争に更なる拍車がかかることが想定されます。 
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 シンポジウムでは、全線開業に向けてパネラーの方から、新幹線活用方策についてさまざまな意見が出されました。マガジンハウス編集プロデューサーの島田始氏は、「1年前がなぜ重要なのか」という問題提起をし、新幹線開業後の八戸駅周辺の繁栄と衰退の流れや、瀬戸大橋の開通後の地域の荒廃、レトロを売り物にしている門司港地区の中で、かつて賑わっていた通りの現在の寂しい状況を例に、開業前の街づくりや持続的な観光振興の重要性を問うていました。印象に残ったのが、観光客には「今だけ、ここだけ、あなただけ」が「うれしい」という指摘であり、オンリーワンの情報をいかに伝えることができるかがポイントであり、また、首都圏での情報発信の重要性を語られました。
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 「観光・交通」分野では、中原部会長から、新幹線全線開業について、関西地域では7割の人が知らない、と情報不足が指摘されました。また、鹿児島中央駅西口の駐車場の確保、着地型メニューづくりの重要性、天文館周辺の商店の閉店時間の延長、県民あげてのおもてなしの向上など、受け皿づくりなどを急ぐことの必要性を述べられました。
 
 「産業」分野では県商工会連合会地域力応援コーディネーターの上水流氏が、地域の資源を活かした新特産品づくりを行い、コンクールを実施していることや、県外の主要都市等での「観光物産展」を実施してPRしている実例が紹介されました。また「鹿児島フェア」等、ホテルやレストランと連携し、鹿児島の食材を使ったメニューの定番化を促進することを今後の取組の中心として進めていく、ということを話されました。観光客のP1020111.jpg楽しみは地域の食であり、観光客との接点を増やし購買を促進することが、地域に大きな経済効果をもたらすとことにつながると思います。
 
 「まちづくり・イベント」部会の津曲会長は、部分開業の時のイベントの責任者であったことから、全線開業のイベントにおいては、外に向かって発信することに重きを置くと述べられました。地域の特色ある祭・イベントの活用・創出を図る中で、灯りやライトアップなど光の芸術文化を融合させるなど新しい演出を行うことを提案されました。また全線開業ロゴマーク・キャッチコピー、ポスターの制作、全線開業関連の総合WEBサイトが既に開設されています。各部会とも全線開業に向けてさまざまな取組が展開されています。
 会場からは、焼酎IMG_0025_3.jpgや黒豚、黒牛など鹿児島の特産品のPRが不十分との指摘がありました。いろいろなメディアを活用してPRしていますが、消費者に「本物。鹿児島県」の魅力が十分浸透していないと感じました。あらためて情報伝達の手法について、点検する必要があります。

 今後の課題を整理すると下記のようになると思います。
 ?九州新幹線が全線開業するから、黙っていても観光客が来る、ということは安易な考えである。新幹線は「魔法の杖」ではない。積極的な取組が必要である。
 
 ?日帰り観光客をいかに宿泊者に変えるか、泊まりたくなるまちづくりの仕掛けが必要
  ?時間短縮効果を生かすため新幹線の駅から遠い地域は、停車駅からのルートの設定が重要となってくる。2次交通の確保と地域間連携が重要である。
 ?地域の直売店で安全・安心の地元産品を提供し、購買と再訪に繋げることが重要である。
 ?滞在を可能にするため、地域の生活・文化に触れる着地型メニューづくりが求められる。 「よかとこ博覧会」等を開催し、地域の素材発掘と情報発信を行う必要がある。
 ?観光客は施設の魅力ではなく、地域の魅力に惹かれる。地域全体の魅力創出には、地域総力戦で取り組む必要がある。いかに「郷土愛」を育てるか。
 ?自ら汗をかき、地域をコーディネートする人材の育成が急務である。 ?時間短縮効果をPRし、北2010022201410021517.jpg部九州からの外国人の誘客が、重要課題である。
 ?観光には、おもてなしの心を住民、職場、地域で醸成することが重要である。などです。 

 今年の12月には新青森と東京が結ばれて、次は南の鹿児島が話題となり、メディアでも地域づくりの経過が取り上げられます。ぜひこの1年多くの情報を提供して話題づくりを行うことで、新幹線開業の認知度が高まることを願っています。今回のシンポジウムをスタートに、地元でも新幹線開業の機運が醸成されていくことを期待しています。そして開業後鹿児島に来られた方々が、「日本の中に鹿児島というすばらしい地があって良かった」と、感じられる魅力ある地域でありたいと願っています。100年に一度のビッグチャンスを生かすか、全線開業までに残された期間は少なくなりました。

プロフィール

奈良迫プロデューサー
鹿児島県
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奈良迫 英光
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