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「観光客誘致は「ご当地愛」の構築から」 〜観光プロデューサーズコラム〜


                2010年6月28日
  
       
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫 英光 


 大手情報会社201006272038263681.jpg「じゃらんリサーチセンター」が発刊している「とーりまかし」に、全国の「ご当地愛」研究のデータが紹介されています。調査の内容は、47都道府県の性・年代別の人口比にあわせてスクリーニング調査を実施し、18才までに住んでいた地域を「ご当地」と呼び、ご当地に今も住んでいる人を?地元定着者、首都圏在住の地方出身者を?上京者、と分けて分析しています。 

 地元定着者への調査では、地元への愛着を感じる「ご当地愛ランキング」では、1位が沖縄県、続いて北海道、京都府、福岡県、宮城県、となり鹿児島県は6位となっています。
 
愛着の対象で見ると沖縄県では、「人情に厚い」「気候が良い」に加えて「方言・なまり」「郷土料理」など地域文化が入っており、北海道では、圧倒的に自然に関する項目が上位になっています。京都では、神社仏閣や街並みの景観だけでなく「四季の変化」が美しいことを上げています。鹿児島県では、温泉がスゴイと思っており、「のんびり」「義理人情あり」の性格の良さも自慢しています。皆様の意見はいかがですか。

  地元定着者201006272043223646.jpgと上京者に対して、「ご当地」については、「何が知られていると思うか」、「何に愛着を感じるか」を尋ねています。「愛着を感じるテーマ別ランキング」では、鹿児島県は「温泉」と「甲子園・高校サッカーなど学生スポーツ」が2位、「地酒」が3位、「方言・なまり」が5位となっています。意外と低いのが「祭り・イベント」や「郷土料理」、「ご当地グルメ」となっており、祭りや伝統芸能のPR不足、農業県鹿児島の食材の活用方が問われていると感じます。 

 上京者に対しての「地元に愛着を感じるか」の調査では、1位が沖縄県、2位が福岡県、3位が北海道で、鹿児島県は13位となっており、地元定着者より愛着度が低くなっています。鹿児島の魅力を体感することなく、上京している人が多いのではないでしょうか。 

 また、全P1020598.jpg国的には地元定着者では、「気候」、「住環境・教育環境」など暮らし安さに関心が高く、上京者では、「神社、仏閣、城、文化遺産」に加えて、「海の幸」「郷土料理」といった食、地域の文化に関する項目が高くなっています。地元にいると意外に気づかない地域のくらしが、首都圏に出るとその良さに気づくということは、日常に根付いた言葉や文化、郷土出身者の活躍が影響しているのではないでしょうか。首都圏の人には、一段と魅力的に感じられる地域の良さを、観光の商品に組み入れる必要があると思います。 

 ところで鹿児島県は、南北600キロに及び、これは鹿児島市から大阪市までの距離であり、多彩な観光資源に恵まれています。魅力的な離島が多いのにかかわらず、訪ねる人は少ないと思います。また、錦江湾を挟んで大隅半島と薩摩半島に分かれており、相互の交流も十分ではありません。まず県民が郷土の良さを知ることが大切と感じています。地域に行って、ここの地域の売りはなんですかと尋ねると、我が町には何もありませんと応える人が多く驚きます。やはり地域の人が、我が町を誇りに思わないところに誰が来てくれるのでしょうか。景観とか、温泉、歴史だけが観光の対象ではありません。地域に住む人、生活、文化そのものが観光素材です。域内の交流を進めて、地域への愛着を深めimg_hanjiro_main.jpgる必要性を感じています。 

 ところで、伊佐市出身の榎木孝明さんが企画・主演した映画「半次郎」の完成試写会が開かれ、製作に携わった関係者で賑わいました。この映画は、榎木さんが13年間構想を温めたもので、2カ年の製作期間を要し、逞しく美しい日本人の精神文化を問う渾身の作品です。幕末から西南の役までの半次郎(桐野利秋)の活img_hanjiro_2_3.jpg躍を描いたもので、薩摩が舞台となっており、美しい錦江湾と桜島が幾度となく出てきます。
 
鹿児島をこよなく愛する榎木さんの思いが込められており、観光のPRにも役立つのではないかと期待しています。また、県では鹿児島での勤務者の中から「薩摩大使」を任命しており、鹿児島の宣伝にも一役買ってもらっていますが、やはり地元定住者が地域の魅力を情報発信してくれることが、より誘客に結びつきます。 

 来年の3月には、九州新幹線が全線開業しますが、郷土を離れて都会に住んでいる人たちに声をかけ、家族、友人、知人を誘って多くの観光客が来てくれることを期待しています。そして、鹿児島を訪れた方々が、日本にこんな素晴らしい県があったことを認識してくれることを願っています。      

参考:じゃらんリサーチセンター発行 「とーりまかし・第20号」          映画:「半次郎 HANJIRO」のパンフ

「列車を活用した旅行商品造成のすすめ」 〜観光プロデューサーズコラム〜


                                 2010年6月21日 

          

        鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫 英光

  JR九img_hanjiro_2.jpg州主催による平成22年度下期商品造成のための説明会が指宿で開催され、九州各地の旅行エージェント19社45名の企画担当者が参加しました。 

 鹿児島県としても、エージェントの皆さんに鹿児島の新しい情報の提供や商品造成支援の具体策を説明できる絶好の機会と捉え、国内誘致部長と参加しました。県内の情報として、「龍馬伝」の主役である坂本龍馬とお龍さんの新婚旅行の地である霧島市塩浸温泉に、龍馬公園がオープン、映画「半次郎」とロケ地のPR,指宿市の縁結びの島「知林ヶ島」に幸せの鐘Chirin’s BELLが完成し2010061922383831012.jpgたこと、「かごしま よかとこ旅」の発行、桜島のよりみちクルーズや甲突河畔の「観光交流センター」の設置、最近のかごしまの食の話題、そして開業イベントの目玉である「全国都市緑化かごしまフェア」の開催概要について説明を行いました。特に、商品造成支援策については、企画担当者の関心が高かったと思います。 

 JR九州からは、来年3月の九州新幹線全線開業を控え、九州内の観光列車のネットワーク、新幹線の概要やフィーダーアクセス商品の説明があり、開業が身近になったなと感じられる雰囲気でした。 

 ところ100-0008_IMG_1.jpgで、日本経済新聞の「NIKKEIプラス1」が4月に行った「初夏に乗りたい行楽列車」ベスト10に、JR九州の「SL人吉」が1位に、「特急海幸山幸」が4位、「特急ゆふいんの森」が6位、「いさぶろう・しんぺい」が9位と、4つの列車がランクインしています。いずれの列車もデザイナーの水戸岡悦治氏がデザインしたものです。原色の外観、天然木、革といったさまざまな素材が使われており、このようなデザインが女性ファンの増加につながっていると思います。懐かしさだけでなく、より洗練された雰囲気の列車が求められており、その代表が、郷愁とデザイン性の両方を兼ね備えた「SL人吉」です。これらの列車と、新幹線を組み合わせたファースト&スローな列車の旅が、今後益々注目されるのではないかと思います。昨年度は、肥薩線と新八代〜鹿児島中央駅間の「ぐるっと一周 肥薩きっぷ」が、前年の2倍の売上げになったということで、沿線の風景や駅弁の魅力と合わせて列車の旅が見直されていると感じます。 

 全線開業P1030048_1.jpg時には、鹿児島中央駅から指宿駅間に観光特急列車の運行が計画されており、「さくら」から乗り換え、錦江湾沿いを走るレトロ調の列車の姿は話題になると思います。 そして翌日は、指宿から高速船で種子・屋久に行くツアーに関心が高まり、離島ブームが起こるのではと期待がふくらみます。 

 これからエージェントでは、今回の説明会で提供された素材を活用した旅行商品造成がはじまりますが、団体型、個人型商品の中に、添乗員付きやフリープランなど各社のアイデアを組み込んだ多くの企画商品が、展開されます。インタ100-0096_IMG.jpgーネットをはじめ、情報入手の方法は多岐に渡っていますが、エージェントがつくる商品は、座席の確保、旅行条件の明確化など、顧客の安全・安心の確保に努力しており、素材を提供する機関、自治体などは、大いに提携すべきと考えています。JR商品の造成箇所は、今までのJR券の発売認可会社に限定されており、それほど多くありません。その意味でも、地域情報を売り込むターゲットとなるエージェントは明確であり、双方にメリットのある商品造成のためには、顧客が求めるオンリーワンの情報提供が必要になります。 

 九州新幹線の時間、料金、座席枠等の発表は12月頃と予定されており、旅行商品の価格設定をしてエージェントの店頭に並ぶのは、1月の後半になると思います。キップの売出しは、1か月前から始まります。エージェントの商品造成に県内の情報をR0014152_1.jpg反映させるために、遅くとも12月の前半までに各社に説明する機会をつくる予定です。新幹線の停車駅からのアクセスやルートを明確にし、加えて地域での体験型メニューをつくり、滞在できる環境づくりに努め、誘客を図る必要があります。エージェントの企画担当者との有効的な人間関係づくりを構築し、継続的な商品づくりに活かしていかねばなりません。

 九州新幹線開業時には、出水駅、川内駅、鹿児島中央駅など新幹線停車駅を起点とした多くの旅行商品が発表されることを期待したいものです。    

参考:日本経済新聞 2010年4月10号「NIKKEI プラス1」

「鹿児島の魅力ある将来「観光産業興し」を語る 〜観光プロデューサーズコラム〜

                                   2010年6月14日

      鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫 英光
                                                                     鹿児島の2010061310441230683.jpg光の将来を語る「鹿児島観光フォーラム」が、140名の参加のもと、盛大に開催されました。このフォーラムは、鹿児島県観光連盟、日本経済新聞メディアプロモーション、日本経済新聞社西部支社販売部の3社の共同主催であり、全国旅行業協会鹿児島県支部の後援を得て、九州新幹線全線開業を見据えた観光の現状と将来について考えるフォーラムでした。 

 最初は、観光庁の観光地域振興課長の笹森秀樹氏による「日本の観光産業の魅力と将来について」と題した講演でありました。

 笹森課長の発言要旨は(数値は平成20年1月〜12月 確定値)
 ?延べ宿泊者数で見ると、鹿児島県は全国で21位、九州では福岡県に次いで2位、外国人宿泊者数は24位、九州では5位となっており、特に外国人について、東アジアからの誘客促進が課題である。
 ?鹿児島県の宿泊者は、地元が16.2%で一番多く、次いで東京都、福岡県、大阪府となっており、地域構成比では九州全体で50%を超えており、関東地区、関西地区と続き、中四国地区からが少なく、新幹線全線開業を捉えて誘客を強化する必要がある。
 ?ぜひ行ってみたい県の希望調査(日経リサーチ調査)では、4位となって九州では一番関心度が高く、鹿児島の観光のポテンシャルの高さが表れており、今後の販促強化や情報発信の工夫が必要である。
 ?日本の人口は、これから20年後には東京都分が、九州では福岡市分の人口分が減P1000923_1.jpg少し、消費も確実に縮小していく。交流人口の拡大による地域活性化が不可欠である。
 ?旅行の形態は、団体旅行から個人旅行にシフトし、滞在型の観光地づくりが求められている。農山漁村交流促進事業や観光圏整備事業との連携を図り、新しいプログラムづくりが欠かせない。地産地消を推進するためには、都市と農村の新たな関係を構築することが必要であり、そのことが持続的な事業展開につながっていく。
 ?観光地づくりには、体験メニューの造成、情報発信やホスピタリティの向上のための研修会の開催など、地域を担う人材の育成が必要である。 
 
 これからの観光振興の在り方についての示唆に富んだ多くの課題を提起していただきました。鹿児島に行きたい人が多いということは、新幹線全線開業という話題性に加えて、今後の商品企画、情報発信の方法、大都市圏でのプロモーションの手法について期待が大きいと捉え、格段の努力が必要だと考えています。
 また、鹿児島県は全国第二位の農業県であり、観光客が求める安全・安心の食材を提供する機会を増やし、地域経済に貢献していかねばならないと思います。

  後半は、肥薩おれんじ鉄道の古木圭介社長をコーディネーターに、「鹿児島の魅力ある将来 観光産業興し」として4人のパネリストによるディスカッションが開かれました。全国旅行業協会鹿児島県支部の中間支部長からは、隠れた素材を活用し、地域の人が主役となり、ストーリー性を加えた「魅旅」の取組の事例が発表されました。旅行者のニーズの高い着地型メニューづくりが着実に進んでいると感じました。 

 JR九州リテール鹿児島支店長の中村image_cut_1.jpg氏からは、鹿児島中央駅長として新幹線部分開業時に取り組んだおもてなしの心の実践例や、JR屋久島ホテルのオープン前後の社員接遇教育の一端が報告されました。鹿児島中央駅が、九州一のすばらしい接遇の駅として認められた背景には、中村氏の「すべてはお客様の視点で、目配り、気配りが大事である。」という姿勢が裏打ちされていると感じました。 

 笹森課長からは、休暇の分散化や中国人への個人ビザ取得の緩和など、観光客を誘致しやすい環境づくりに努めている観光庁の施策が報告されました。日本人の労働時間は、先進国では長く、時間短縮の仕組みづくりが、宿泊増加につながると思2010061310443830514.jpgいます。 
 小生もパネラーの1人として、観光振興に対する取組が各自治体で増えていることや、人材教育の必要性、情報発信の工夫や教育旅行におけるグリーンツーリズム、漁業体験、体験民泊の整備等への対応を急ぐべきであると話しました。 

 最後に古木社長から、新幹線はあくまでも人を運ぶ手段であり、停車駅からどのように誘客するかは、地域の取組にかかっている。観光施設や運輸機関、そこ携わる従業員ひとりひとりが、おもてなしの心をもって観光客に接することが大切であると話されました。 

 
今回のフimg_325_1_0318111642.jpgォーラムに予想を上回る参加者が集まったことは、新幹線開業への関心が高まっていることと、地域のかかえる問題解決には、観光による交流人口の増大が欠かせないという考えが浸透しつつあると感じました。

 新幹線開業効果を県内全域にもたらすため、県では「増やす」、「広げる」、「活かす」視点で観光客誘致に取り組んでいます。 

 観光客誘致に当たっては、地域全体の魅力付けが必要であり、観光は、農業、水産業、商業、工業、土木・建設業、教育など多くの分野に波及効果があります。新幹線は、魔法の杖ではありません。100年に一度のビッグイベントを、地域総力戦で取り組みたいものです。

「よりみちクルーズ」の定期便化をめざして〜観光プロデューサーズコラム

 

                     2010年6月7日

          鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫 英光

 桜島フェリyorimichiHPtop.jpgーの「よりみちクルーズ」が5月19日から運行され、好調なスタートを切っています。第2回の5月26日は、定員450人対して200人以上上回る希望者が詰めかけ、一時混乱し、急きょ整理券を配った程の人気ぶりでした。  

 運航コースは、鹿児島港から神瀬灯標、大正溶岩沖を通り、45分かかって桜島港に到着します。桜島と錦江湾の魅力を海上から身近に感じることができる絶好のコースではないかと思います。途中に見える神瀬は、干潮時には海面に現れ、満潮時には海中に沈む瀬です。薩英戦争時にはイギリス艦の侵攻に備えて周囲に石を積み台場を築きましたが、その後激しい潮流と波浪に浸食され昔の面影はありません。しかし白色の円形コンクリート造りの神瀬灯標が、船の往来の「道しるべ」になっています。鹿児島市民や桜島に住む人でも、神瀬の近くに行った人は少なく、今回のクル2010060700074829658.jpgーズの人気の高さにつながっています。  

 今後10月と11月に合わせて6回の運航が予定されていますが、夏休みの多客期や休日に実施すればもっと集客できるのではないかと思います。クルーズの料金は、船の滞在時間が3倍かかるのに、現在の桜島フェリーと同一金額であり、人の料金だけアップしても、乗客は納得するのではないかと思います。運行回数が多くなれば、旅行社の新たな商品企画にも反映でき、鹿児島への入込が増えるのではないかと思います。 運行に当たっては、通常の乗船ルートとの区別、乗務員や船の配置等課題は多いと思いますが、ぜ2010060700013630300.gifひ増便に向けて関係者の努力をお願いしたいと思います。  

 ところで、関西中国地域である情報誌が行った調査によると、新幹線開業時に、南九州3県で行きたい場所のトップにあげているのが、桜島となっています。大河ドラマ「篤姫」の放映や噴火のたびにメディアで話題になっていることもあげられます。しかしながら、近くに住む鹿児島市民の多くは、桜島に渡っていないのではないかと思っています。やはり地元の人が桜島の素晴らしさを知り、PRすることが必要と感じます。錦江湾を間に、雄大な桜島の景観は、初めて鹿児島を訪れた観光客が感嘆の声を上げます。桜島には、足湯の新設や湯之平展望所の改装、赤水広場の整備、オールナイトコンサート記念モニュメント「叫びの肖像」などが揃い、観光地づくりが進んでいます。また、今着地型メニューの造成や、地場産品を活用した新商品の開発もすすめられています。  

 将来的には錦江湾をクルーズしながらランチを味わい、袴腰に着いたら定期観光バスと連動させ、桜島の一周や体験メニューで桜島の魅力を体感して欲しいと思います。そのため2010060700163130660.jpgには、定期的な運動体制の確立が何よりも必要であり、そのことが団体での予約につながり、安定的なお客の確保につながります。便が少なく観光客が乗れないということは、避けなければなりません。  

 ところで博多駅から鹿児島中央駅まで80分となり、新幹線が開業しても日帰り観光客が多くなるのではと懸念されています。毎日噴火し、火山灰に見舞われる地域は大変な影響を受けていますが、観光客は噴煙を上げる姿に感激します。鹿児島市の目の前にそびえる桜島を、我々は観光かごしま最大の財産としてとらえるべきです。桜島の滞在時間を増やすことで、宿泊にも結びつきます。ぜひ多くの人を桜島に渡らせるために、よりみちクルーズの更なる充実を望みたいものです。そのことが桜島や錦江湾の活性化にもつながると確信します。

 参考資料:鹿児島市船舶部 (桜島フェリー)