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「九州新幹線全線開業  〜吉松地域の活性化について〜」 〜観光プロデューサーズコラム

2011年2月28日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫 英光

800px-Yoshimatsu_Station.jpg  鹿児島県商工会連合会は、地域の商店街の活性化に必至に取り組んでいます。今全国どこの地域でも、かつて賑わった商店街がシャッター通りとなり、人通りも少なく後継者もいないなど街の再生が問われています。

 今回訪れた吉松駅は、肥薩線と吉都線が交差する交通の要所として栄えてきました。しかし周辺の人口減、高速道路の開通、新幹線の開通などで鉄道の利用者が激減し、駅前商店街への人の流入が激減し、今では数店舗が営業しているだけの寂しい駅前となっています。地域の皆様と駅前の活性化について懇談する機会に恵まれ、商店街の再生について議論しました。

2011022700042722230.jpg 吉松地域の課題とは

(1)鉄道の街の賑わいをいかに復活させるか。鉄道へのこだわりが重要である。

(2)熊本、宮崎県との県境を活かし、イベントの開催による3県との交流促進を図る。

(3)新幹線と肥薩線の魅力を活かし、速さと+ローカル線の活用により湧水町地域への誘客には、SLやブルートレインの運行が最適である。

(4)観光客に地域の産品をどのようにふれさせるか。地域全体に経済効果を持続させるには。特産品の開発が不可欠である。

(5)地域活性化には、若者が定着できる雇用の確保が重要である。

(6)吉松駅周辺には、珍しい泉質をもつ温泉が多い。秘湯として売りだす価値がある。

CIMG6282.jpg  今後の吉松駅前商店街の活性化については

(1)「一気にかごしま。」効果を吉松地域へ。駅を核に各地域を繋ぎ、商店街を四季折々の魅力付けの中心とし花、祭り、食やイベントの開催を行う。また、吉松駅、嘉例川駅、霧島温泉駅、横川駅のスタンプラリーの展開で回遊性を促進する。
 ・若者(高校生)を中心とした「市」や吉松駅OBの集いを開催し、駅の応援団を結成することも活性化に繋がる。映画やCMの舞台に売り込むことも方策である。

(2)湧水町の名前を活かし、地域の自然や四季折々の魅力を情報発信する。他の地域にない祭りの仕方や、雛人形の展示やこいのぼりを泳がせる魅力づくりが必要。
 ・地域の農産物を活用した加工品の販売
 ・調味料やスイーツの限定販売例:幸田の棚田で取れたお米、丸池湧水で炊いたご飯

(3)地域への教育旅行の誘致促進
 ・農業体験を組み入れた教育旅行の誘致や日帰り収穫体験のプログラム化で地域への集客を図る。

(4)イラストマップにお店、地域の特産品を落とし込み、田舎流のおもてなしには、店先に木製の椅子を置き、お花を飾るなどの工夫が必要である。

DSCN2817.jpg (5)駅から商店街の端までの店の運営状況、空き店舗、駐車場等の利用状況を把握し再開の予定のない店舗は、積極的に貸し出すことが必要。
観光客を呼ぶには、食、小物、地域産品で手作りのお土産品が必要。
休日は商店街を歩行者天国に変え、散策できる街に。テラスや椅子を配置し、古民家やかやぶき屋根の施設をそのまま活用する。

(6)地域の情報をいかに伝えるか。旅番組、朝のワイドショーの中継。人の存在がポイントイントであり「よそ者」、「若者」を積極的に活用する。

(7)観光客が、食事をとり散策できる商店街に。肥薩線を利用して、吉松駅で下車して観光バスに乗る団体もある。町内で取れる農産物の直売店を設置し、休憩施設を設けるなどして、立ち寄りなど滞在時間を可能にすることが求められている。

170t.jpg  商店街の活性化には方程式はありませんが、人が集まるところには何らかの魅力があり、それは「食」、「イベント」、「買物」、「温泉」、「人の存在」等ではないかと思います。オンリーワンの情報をメディアを通していかに発信するかが鍵です。地域で汗をかく人が必要であり、その輪を広げなければなりません。九州新幹線の開業効果をぜひ吉松地域に波及させたいものです。

 議論の中でこのままでは、駅前商店街はみんなシャッターが閉まることも想定されるという厳しい意見も出され、商店街をなんとかしようという気持ちが伝わってきました。吉松駅は、北薩の交通の要所であり、「いさぶろう」「しんぺい」号、「はやとの風」の始発・終着駅です。乗換客には停車時間が短く、商店街への誘因は困難ですが、地域産品の販売や周辺の温泉を紹介するなどの取組強化が求められます。

172t.jpg  宿泊した鶴丸温泉は、吉都線の鶴丸駅のホームから30Mで、駅長も兼ねているということで全国的に珍しい場所です。温泉がモール泉で、古代の植物が地下に眠りその植物からの成分が温泉に溶け、コーヒー色のお湯がとても珍しいものでした。鶴丸という駅を活用した入場券を作り、志望校を目指す受験生に提供することも知名度を上げる方策ではないかと思います。女将さんは地域の衰退に危機感を感じており、移住者には物心両面の支援を行いたいと語ってくれました。

 吉松駅周辺には、珍しい泉質を持つ温泉が点在しています。鄙びた温泉情緒をぜひあじわっていただきたいと思います。早朝に女将さんの見送りを受け、地域で頑張る人をなんとかしたいという思いにかられながら、鶴丸駅を後にしました。

「地域ならではのグルメを観光に活かす」 〜観光プロデューサーズコラム〜

平成23年2月21日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫 英光

B-1.jpg  県内の商店街グルメナンバーワン決定戦「S−1グランプリ」本大会が、2月12、13日の両日、鹿児島市内で開催されました。初代グランプリには、大隅の志布志中央商店街の「背白ちりめん三昧丼」が選ばれました。地方大会得票率、本大会各日の得票数いずれもトップの成績でした。大会には県内10商店街・通り会と招待ゲストとして「富士の宮やきそば」と「久留米の焼き鳥」の県外団体が参加。人気のB級グルメも参加していることもあり、2日間で延べ2万1千人が来店するほどの人気で、昼過ぎには完売のものもありました。

   グランプリに輝いた「背白ちりめん三昧丼」は、地元の志布志湾で取れるチリメンジャコを使った、釜揚げ・かき揚げ・きんぴらの三種が一度に味わえる丼です。地元では知られたメニューですが、あまり浸透していません。県民にもっとPRし、観光客にも広めるためには、統一したロゴマーク、食材の選定、作り方を徹底し、ストーリー等を添えるなどしてブランド化への徹底を図って欲しいと思います。また、商店街の「まち歩きマップ」に取扱店を記入し、相乗効果をもたらすよう工夫が必要です。

G5AnB6LhlHoJ.jpg  ところで、全国的にB級グルメによる地域起こしが活発になっています。国内旅行が成熟している中で、観光客が地域ならではの「食」を求めている姿があります。観光客は旅行先では、1泊目は宿泊先で、2泊目は宿泊施設以外で食べる傾向が顕著になっています。これからも地域の食材を、地域で提供できるしくみ作りが必要です。

2011022100575010979.jpg  鹿児島県は指折りの農業・水産県であり、農業産出額は4、151億円(平成20年実績)、海面漁業・養殖業生産額は853億円(平成19年実績)にもなり、ともに全国第4位となっています。  新幹線全線開業で訪れる観光客に、「本物。鹿児島県」の農水産物をいかに提供するかが求められています。今まさに食の安全・安心が問われており、旅行の途中に気軽に立ち寄れる「道の駅」などの直売店が注目されています。直売店の食材は、生産者の顔が見えることが購買者の心を捉えていると思います。顔写真が掲示されており、産品に作り手の熱意が感じられ、値段も自ら付ける等一層親近感が高まります。農家や漁師にとって規格外の食材は販売できず、今までほとんど廃棄処分でしたが、直売店では出荷することができ生産意欲向上にもつながっています。顧客は、最初はツアー等で店の存在を知り、その後日常の顧客になっています。

2011022100550310979.jpg  また、ホテルでは積極的に県産品の食材を提供し、翌日は農業体験をして昼食を取るなど地元産品に触れる機会を増やし、連泊につなげている地域や、飲食店では、地場産品応援のシンボルである「緑の提灯」を掲げる店が増えています。

   今個人旅行が主流となっており、観光客が気軽に立ち寄りたくなる店舗には、四季折々の草花を植え、生簀に地元の海で取れる魚を泳がせたり、景観に配慮するなど雰囲気づくりが必要です。また、地域の特産品を加工した調味料や干物、スイーツ、ジャム、などを販売し、地域を感じる品揃えが求められます。都市と農村・漁村との交流事業を進めることで、都市生活者が応援団となり、産品の定期購入者となり持続的な経済効果をもたらします。一方では、地域住民との交流の時間も増やし地域全体の活性化に繋げて行く姿勢も大切です。

3C1R1586.jpg  ところで、団塊の世代の大量退職時代を迎え、田舎暮らしを希望する人も増えています。新たなチャレンジとして、古民家や漁師の家を活用した民宿やレストランを始める人も出てきています。県全体として、グリーンツーリズムやブルーツーリズムへの取組の動きが活発となってきました。平成23年度には、県外から1万人を超える学生の農業・漁業体験と民泊の予約が入っており、教育旅行の受け皿としての産業の価値が高まっています。

 新幹線全線開業で増える観光客に、「本物。鹿児島県」の食材に触れる絶好の機会を提供することで、地域の新たな魅力を再認識することにもなるのではないでしょうか。地域グルメの展開は、地域全体で比較的取り組み易い事業と思います。来年はもっと多くの商店街が参加することを期待します。

「霧島地域へのご支援を」 〜観光プロデューサーズコラム〜

2011年2月14日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫 英光

 

2011021311295619406.jpg  霧島連山の新燃岳は、1月26日以降噴火を繰り返し、新燃岳河口から4kmの範囲で立入規制区域となっています。この噴火による降灰は現在、宮崎県の高原町や都城市を被い、地域住民は大変厳しい生活を強いられています。

 一方、霧島地域のホテル・旅館は降灰の影響は無いものの、2月1日の新燃岳噴火の空振により窓ガラス等が破損しましたが、宿泊客等には何事もなく、直ちに復旧を行い、安全を期しながら、通常通り営業を行っています。

 ところが、新燃岳噴火の状況が連日マスメディアで報道されていることから、宿泊等のキャンセルが相次ぎ、2月7日現在で宿泊が約2万人、日帰りが1900人にのぼっています。また、韓国のお客様に人気のあるゴルフやトレッキングのツアー等が相次いでキャンセルとなっています。

    まさに風評被害が、大きな取り消しとなって表れています。観光は多くの分野に波及効果があることから、地域経済にも大きな影響を与えています。

D-0808_IMG_2.jpg  噴火の状況や宿泊施設の運営状況を理解していただくため、2月1日に福岡市で開催した旅行商談会で、福岡地区の旅行会社等20社に対し霧島地域の情報提供を行いました。

  10日には鹿児島県、霧島市、鹿児島県観光連盟で福岡市内の旅行エージェント、マスコミ、韓国観光公社、ハナツアー等13社の事務所を訪問し、道路の規制や登山への影響、通常と変わりなく営業している霧島温泉の情況報告を行い、送客と適切な報道への要請を行いました。

   旅行エージェントからは、地元支店と連携し情報把握を行い、定期的にイントラで社内での情報発信に努めているとの報告がありました。また、九州域内では実情は理解できても、噴火のシーンが連日報道されている状況下では、東京、関西地域などからの完全なツアー再開には少し時間がかかるのではとの指摘もありました。

2011021311292219084.jpg  韓国最大の旅行社であるハナツアーは、11日から鹿児島へのツアーを再開するとの報告があり、ほっとしているところです。

 あるメディアの報道担当者は、噴火の実情はきちんと伝える一方、地域経済に大きな影響を及ぼしている出来事であり、雲仙普賢岳の時の経験を活かし、ホテルの運営状況等についても適切に報道していきたいと語りました。

 ところでこのような自然災害が発生した場合、迷惑を掛けるのではと地域を訪れることをためらう人が多くなります。風評被害で観光客が減っている時こそ、観光や温泉を楽しむことで、地域経済に少しでも貢献することが、相手にとっては大きな励みになると思います。また、各種団体の会議を霧島地域で開催することは、地域の真の姿を知ることとなり、ぜひ取り組んでいただきたいと思います。又、ある旅行エージェントの企画担当者は、霧島地域への社員研修を実施し、実情を見て販売につなげていく機会を作りたいと語っていました。また、ネットを活用した商品造成を緊急に始めるという会社もありました。

 旅行エージェントは、全国にネットワークがあり、迅速に情報を伝達できる強みがあります。霧島地域のPRを心からお願いしました。

IMG_2638.jpg  鹿児島県観光連盟では、新燃岳火山状況、降灰、道路状況、登山、イベントの開催状況等について、関係者と連絡を取りながら、ホームページで適宜発表しています。年度末には、歓送迎会が多くなります。ぜひ霧島地域での開催をお願いしたい。県民の皆さんには、今こそ観光客が激減している霧島地域へ出かけていただき、真の姿を県外の方々に伝えて欲しいと思います。九州新幹線全線開業まで1ヶ月を切り、旅行エージェントの南九州への商品もほぼ出揃い、新幹線企画が店頭に並んでいます。100年に一度のビッグイベントは、鹿児島全体で祝ってこそ、喜びの輪が広がると思います。厳しい状況が続いている霧島地域へのご支援を何卒よろしくお願いいたします。

「九州新幹線全線開業〜おもてなしセミナーを終えて」〜 観光プロデューサーズコラム

2011年2月7日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫 英光

P1050191.jpg  九州新幹線全線開業まで33日となり、1ヶ月前の指定券の発売も秒読みとなりました。昨年の7月から県内7地区(鹿児島市、霧島市、指宿市、奄美市、西之表市、薩摩川内市、鹿屋市)で開催してきたおもてなしセミナーが終了し、合わせて804名の参加者がありました。7回とも講師は、観光ビジネスコンサルタントの西川じょうじ氏が担当され、自らの経験に基づいた話は、琴線にふれる話が多く参加者は感動していました。

 これまでにおもてなしセミナーに参加した方々が、地域、職場で中心となり、広くおもてなしの心を持って観光客に接する環境づくり努めて欲しいと思います。  西川先生は、サービスを実践するに当たっては、やっていること(作業)から、できていること(仕事)を常に意識して物事に取り組んでいかねばならないと語りました。

P1050186.jpg  日本に於ける最大の観光施設であるTDLのスタッフの意識の変化について、興味ある事例を挙げていました。TDLは、サービスのマニュアルが全従業員に徹底していることで有名であり、それを経営に取り入れている企業が多くあります。観光客をゲストとして扱い、従業員はスタッフとして奉仕する精神が末端まで浸透しています。

 観光客が写真を撮ろうとすると、スタッフが取りましょうと声を掛けてくれた場面に遭遇した方は多いと思います。オープン当時子供と行った時の写真を見ると、シンデレラ城全体を背景に家族が全員写っているが、ここ数年撮ったものは、シンデレラ城が途中で切れている家族写真がある。その写真の撮り方が作業になっているという指摘です。
 本来写真を撮るとき、シンデレラ城を背景に家族を写す場合、カメラを縦にすれば良い写真が取れる。しかしながら、最近も写真を撮ってくれる行為は従来どおりですが、カメラを縦ではなく横向きのまま使用するスタッフがいるため、シデレラ城全体が写らなくなっており、出来上がったものに感動がない。つまり写真を撮る行為が、仕事になっていないのです。 カメラを縦にし写すことへの配慮に欠けており、マンネリの怖さを指摘しています。

 また、朝食を食べる行為を例に、サービスを事と捉えることの大切さを指摘されました。
 東京にあるペニンシュラホテルの朝食は、4800円です。従業員の挨拶、雰囲気作り、マナー、どれをとっても一流です。しかし朝食の中身は、市中のファミリーレストランの500円のものとそれ程の変わりはありません。10倍の経費を掛けてもそこで食べることの価値があるからです。そこの場所で過ごす時間の価値が、顧客を惹き付けるのです。
 商売の行き着く先は価格競争になりがちですが、それにも勝るサービス、雰囲気作り、価値ある時間の提供がこれからのマーケティングの基本ではないかと思います。

IMG_0943.jpg  我々の職場でも改善しなければならないことがよくあります。
 来客があったとき「いらっしゃいませ」の声が聞こえますが、お客様の顔を見るのでもなく、ただ声を出しているだけです。来客に気づいたら仕事の手を休めて頭を下げる、電話中の社員は立って頭を下げるなどの行動が求められます。これが作業ではなく、仕事をしていることだと思います。

 ところで新幹線全線開業で多くの観光客が訪れます。県民が、温かいおもてなしの心をもってお迎えをする取組が問われます。高いお金を出して接遇する必要はありません。まず、観光客を挨拶と笑顔でお迎えすることが大切です。特に観光客が最初に降り立つ駅や案内所の従業員は、一期一会の精神で応対することが、人の心に伝わると思います。

P1040370_2.jpg  鹿児島の観光について聞かれる機会が多くなりますが、地域の歴史、文化、食などを知ることが重要です。観光客に聞かれて、「この地域には魅力的なところはありません」と応える方がいますが、わが町を誇りに思わないところには人は来ません。わが町、隣町、県内各地の魅力を伝え、周遊し泊まっていただく取組が求められます。タクシー業界でも、接遇アップの取組をする会社が増加しているのは嬉しい限りです。

 旅行者の心に残るものは人の印象(おもてなし)です。人は人に魅せられて旅に出ます。感動がリピート客になり、創客を可能にします。おもてなしセミナーで受けた感動を、単なる話題として終わらせるのではなく、おもてなしの心を実践することで今後に活かしていただければありがたいと思っています。