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感動の体験が生徒の心を変える

2011年8月1日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 皆さんは中学・高校生の時の修学旅行の思い出はありますか。昼間は、名所旧跡の見学に追われ、夜は遅くまで仲間と騒ぎ、翌日のバスの中では寝てばかりだったというのが修学旅行の思い出として残っている方が多いのではないですか。

a0027_001385.jpg  今、農業や漁業の体験を組みこみ、農家に宿泊する民泊型修学旅行が人気を博しています。わずか1泊2日の滞在時間ですが、自然の中での体験や、農家の方々との交流が生徒たちの心を動かしています。
 昨年に引き続き、受け入れ農家、漁協、グリーンツーリズム協議会、市町村、地域振興局、県農政部、観光課、観光連盟など60名が参加し、今後の受け入れ態勢の改善、食中毒や安全対策、充実した体験メニューの提供などを重点に置いた研修会を開催しました。

DSC_0098.jpg  初めに、垂水漁港での漁業体験と農家民泊を組み入れた教育旅行を実施し、鹿児島への体験型旅行拡大のきっかけをつくっていただいた、奈良県生駒市の大瀬中学校の前の校長酒見宗良先生から講演がありました。鹿児島へ体験型教育旅行に切り替えた経緯や農家民泊の注意点、鹿児島の魅力について語ってもらいました。

 17年間実施してきたTDLへの修学旅行の教育的効果に疑問を感じ、地域の文化、歴史、自然を学ぶことが本来の修学旅行の目的であり、「ほんまもの体験」ができることなどが行先変更の要因でした。実施にあたっては、漁協や民泊先をこまめに下見するなど万全の態勢で臨み、実施前には鹿児島への変更に不満を持っていた一部の父兄や生徒たちも、終了後はほとんどが満足し、今では後輩たちに、鹿児島の魅力を語り継いでいるとのことです。学校の廊下には、「本物。鹿児島県」のポスターが掲示されるまでになっています。
 先生から、これからも「地産地消」など「食育」の大切さを生徒に体得させるため、地域ならではの農産物の収穫や郷土料理を味わう機会を提供してほしいという要望がありました。

DSC_0170.jpg  受け入れ農家からは、安全面で特に生徒の管理に細心の注意を払い、地域ぐるみでおもてなしの充実に努めていることが報告されました。
 一方、競合する旅館・ホテル関係者からは、民泊先からの生徒の食糧の持ち込みが多く、食中毒などの発生を懸念する声や、農家での連泊を避けて1泊は既存の宿泊施設を選ぶなど、双方がWin-Winの関係になるよう配慮すべきとの声がありました。
 民泊体験を希望する学校が増えることで、受入地域の競争も激しくなり、体験メニューの充実、ワンストップサービスの態勢づくりなども求められています。

 県内における農家民泊の実績は、受け入れが始まった4年度の360人から、11年度は1万人を超え27倍となっています。受入れ農家は700軒を超えています。鹿児島における農家民泊を支援し、情報の共有やコーディネートを務めている「かごしまグリーンツーリズム協議会」の会員は、発足時は17団体でしたが、今では32団体に増えています。(11年3月現在)
 受入地域は、南さつまから日置、さつま町、薩摩川内市、出水地区、いちき串木野、さらに伊佐、垂水地域に広がっています。今年の夏には大隅地域にも協議会が発足の予定です。漁業体験の受入れで注目をあびている垂水地域では、先日上海からの体験ツアーが訪れました。九州管内では、大分県の「安心院」、長崎県の「松浦」、佐賀県の「唐津」など特定の地域に集中していますが、鹿児島では県内全域での受入体制が確立しつつあります。

a0008_001326.jpg  民泊について提起されているのがコンプライアンスです。現在の受入家庭のほとんどが、旅館業法で定められた「簡易宿泊所営業」の許可を取っていないということです。農家の方々が食事を提供し宿泊代を請求することは違法です。昼間は農作業の体験をし、朝晩の食事は農家の皆さんと一緒に食事を作り、夜は農家の一室を借りて寝起きすることで、その対価として体験料を農家に支払うことになります。「安心院」や「松浦」の受入家庭は、簡易宿泊所営業の許可を取得しています。
 旅行エージェントの教育旅行担当者からは、簡易宿泊所営業の許可を持っている施設の要望が、学校サイドから強くなっているということでした。今は、県の農政部が作成した受入指針に基づき受入を行うということを必ず遵守しなければなりません。教育現場では、一旦問題が起こると厳しい対応が求められます。

 先日、教育旅行の質的向上や輸送計画を担当している「日本修学旅行協会」と「全国修学旅行研究協会」の関西支部を訪問しました。両支部とも新幹線の輸送計画を教育委員会に代わって担当していますが、担当者は、九州新幹線の全線開業に加えて、震災の影響もあり、九州への仕向地変更を模索している学校が多いという話を伺いました。
 仕向地変更の最大の課題は、連合体輸送による経費の軽減と乗り換えなしで鹿児島まで輸送を確保することであり、JR西日本、九州に対して要望を行っています。平成24年度の実施分から少しでも適用できれば一気に鹿児島への教育旅行が増加します。

DSC_0092.jpg  鹿児島県は、農業・漁業体験だけでなく、知覧や鹿屋での平和学習、鹿児島市内の歴史学習、桜島や霧島の自然学習、内之浦や種子島での科学体験、屋久島の環境学習とどこの地域にも負けない体験プログラムが可能です。

 鹿児島県は第一次産業が盛んであり、地域への交流人口を増やすことで、農漁村で働く人の生きがい作りにもなります。生徒たちのうれしい笑顔をみると、受け入れて良かったと感じ、そしていつも新鮮な感動の体験を提供し続けることが、学校現場から選ばれる地域になるのではないでしょうか。

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