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2012年を飛躍の年に ~停滞が許されない鹿児島の観光~

2012年1月4日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

明けましておめでとうございます。先行き不透明感がぬぐえない日本経済ですが、昨年の鹿児島の話題は、なんと言っても九州新幹線の全線開業でした。
鹿児島県は九州の最南端に位置し、何かにつけて不利性をかこっていましたが、「鹿児島中央駅」が新幹線最南の終着駅になり、また、新大阪駅から直通の新幹線が運行され、時間短縮効果が顕著となりました。
開業日前日に東日本大震災が発生し、スタートは厳しい状況でしたが、GW前から動きが活発となり、11月までは前年を上回る観光客が訪れています。(県の観光統計)

地区別にみますと、霧島地域は新燃岳噴火で心配されましたが、回復基調にあり、'11年のリクルートの調査で「温泉地満足度」が1位になるなど全国的に注目されており、今後の取組みが期待されます。
指宿地域は、「指宿のたまて箱」効果もあり、大河ドラマ「篤姫」が放映された平成20年を超えています。しかし、乗換えの利便性もあり多くの観光客が訪れていますが、サービスの低下が顕著となりクレームが寄せられているのも事実です。

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今年については、やはり新幹線への取組強化が第一であります。既にJR九州から3月のダイヤ改正が発表され、鹿児島にとっては大きな朗報となりました。「みずほ」が2本(1往復)、「さくら」が16本(8往復)増便され、全体として「みずほ」が10本(5往復)、「さくら」が35本(17往復)で、1.5倍増となり関西地域がさらに便利となります。

旅行エージェントから、直通列車を利用した企画商品が造成しづらいという声が寄せられていただけに、増便は大きな集客が見込めます。
これから、新幹線沿線だけでなく、関西一円の京都、滋賀、奈良、和歌山や、四国の高松地域でのPRが必要になってきます。また、岡山、広島、山口地域からの教育旅行の誘致にも力を注ぐべきです。

リピーター対策としては、新幹線停車駅から新たなルートの設定が必要です。
出水駅から伊佐~霧島への、川内駅から入来~蒲生、甑島等への誘客の重要性が増していると思います。

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南薩地域や大隅地域は、「食」の魅力を前面に鹿児島中央駅との連携が誘客につながります。開業効果で一番の恩恵を受けている指宿は、今年が正念場です。「篤姫」放映後の反動を教訓に、種子・屋久や大隅地域、南薩地域と連携し、宿泊基地としての誘客を図るべきです。

霧島地域は、新燃岳の噴火が懸念されますが、「満足度全国1位」の温泉地としての魅力と、アクセスの良さをPRすべきです。

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「霧島屋久国立公園」が分割され、「霧島錦江湾国立公園」が誕生し、メディア効果も発揮されます。「霧島アートの森」や「「みやまコンセール」を訪ねるカルチャーツーリズムの提案も霧島ならではの旅です。


鹿児島市は、今や日本を代表する都市型観光の魅力を備えた街です。歴史、自然、温泉に加え、食の魅力が観光客の滞在を可能にしています。
また、日帰り客を宿泊させるには、駅から天文館、照国神社から城山、桜島への回遊性を高め、滞在したくなる街づくりが求められます。中央駅に集中しすぎる観光客を天文館周辺に誘導するためには、エンターテイメント施設の構築や早すぎる閉店時間を改善するなどの取組が必要です。

今日本の国内旅行は成熟しており、大きな伸びは期待できず、今後の人口減少を考慮すると外国人の誘致は欠かせません。

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3月から中華航空が台北~鹿児島間に週3便の運航を予定しています。
台湾とはこれまで30年にわたってチャーター便を運行してきた経緯があり、しかも西郷菊次郎の縁で鹿児島との交流は長く、固定客もいます。


定期便の運行は、台湾だけでなく、ソウル便、上海便を加えて東アジアをにらんだ新たな展開が可能です。また、宮崎や福岡を結んだあらたなコースの設定と誘客が可能となりました。落ち込んでいるインバウンドの回復に大きな力となるように、現地エージェントとの連携強化に努めています。

ところで、観光庁は、震災対策として東北地域への誘客や支援に動きます。最大のマーケットである首都圏の消費者の選択肢を広げるためにも、我々はこの地域で最大のPRに努めていく必要があります。すでにエージェント対策を進めている機関もあります。
また、北九州地域も鹿児島にとっては重要な地域であり、JR九州を利用した商品企画に力を注いでいます。地域ごとの戦略を立てて誘客に努めていきたいと考えています。

2012年は、辰年(たつ年)です。「辰」の字は「振るう」の意味で、陽気が動き草木が伸長する状態を表し、辰年は成長や発展の年だとされています。動物は竜(龍・たつ・りゅう)が割り当てられています。

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竜は想像上の動物で、空を飛ぶ巨大な爬虫類のようなイメージがあります。竜に関することわざとして「登竜の門」がありますが、急流の「竜門」を魚が登りきると竜になるという伝承からきています。竜のように上昇気流でどんどん行きたいものです。 参考:出典『ウィキペディア』

昨年の前半は、鳥インフルエンザや新燃岳噴火で苦戦しましたが、今年はGW頃までは今の勢いが続くと考えられます。
その後の展開が重要になっており、新幹線開業1周年企画、季節ごとの鹿児島の魅力や行きやすくなる離島の情報の発信、旅行エージェントとの商品造成による共同キャンペーン、WEB販売の強化等を進めるなど、持続的な観光客誘致が必要となってきます。
また、県民が自分の地域だけでなく他の地域の魅力も語り、まちを想う人をいかに増やせるかがこれから最も大切なことです。

今までの新幹線開業では、2年目から観光客が減少していますが、鹿児島は同様な停滞は許されません。鹿児島に来られた方々に、「鹿児島はすばらしかった。ぜひ友人に勧めたい」と心に残る「感動」と「感激」を与え、リピーターを増やすことが何よりも大切です。一期一会の心で観光客をおもてなしすることを職場、地域で定着させることも重要です。

2012年が皆様にとって素晴らしい年になりますよう心からお祈りいたします。

2011年を振り返る

2011年12月26日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

今年も残り1週間となりました。話題の多かった2011年を振り返ってみたいと思います。

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今年鹿児島の最大の話題は、九州新幹線の全線開業でした。
九州新幹線の整備計画決定から38年、3月12日6時58分、N700系の新型車両「みずほ600号」は、満員の乗客を乗せ、新大阪に向けて出発しました。

鹿児島県は九州の最南端に位置し何かにつけて不利性をかこっていましたが、「鹿児島中央駅」が新幹線最南の終着駅になることから、開業前から大きな話題となっていました。

しかし、開業日前日に東日本大震災が発生し、スタートは厳しい状況でしたが、県内の観光地では4月の後半から動きが活発となり、11月まで前年を大きく上回る観光客が訪れています。 関西や中国地域からの伸びが顕著であり、鹿児島が初めての方が多いのではないかと思います。

地区別では、離島や大隅地域は十分ではありませんが、特に指宿地域は、「指宿のたまて箱」効果もあり、大河ドラマ「篤姫」が放映された平成20年を超える数字となっています。 新燃岳噴火や東日本大震災の影響から完全に回復基調にあると言えます。今後も誘客のため官民一体となった取組が求められます。

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1月に新燃岳が噴火し、霧島温泉地区は、夏頃まで大きな影響が残りました。メディアがトップニュースで連日放映し、風評被害を打ち消すため、県や観光連盟では大都市圏のエージェントや、福岡、鹿児島のメディア等を訪問し、霧島温泉地域の正常な姿も報道していただくよう要請を行いました。

今後の噴火に備えて、県、関係自治体、連盟等連携を密にし、迅速な報道等への対応が必要と感じています。

九州新幹線全線開業の最大のイベントである第28回全国都市緑化かごしまフェア「花かごしま2011」は、66日間の会期中に、目標の80万人を上回る約96万人が訪れました。

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今回の「花かごしま2011」では、多くの県民がこのイベントに参画し、特に各エリアの会場や街角にさまざまな花壇が設置され、観光客だけでなく地域住民も花に対する興味をいっそう抱いたと思います。今後花作りに興味を持つ人が増え、花壇や垣根に花が咲き誇る場所が増えることが期待されており、そのことで地域は魅力が確実にアップします。 


学生を中心とした農家民泊も順調に伸びています。民泊は、2004年が360名でしたが、今年は約10,000人の受入となり、修学旅行の仕向地として鹿児島の人気が高まっています。県内では受入可能な家庭は、現在2町12市におよび、782家庭にもなっており、県全体に広がっていることがあげられます。

ところで、民泊について提起されているのがコンプライアンスです。現在の受入家庭のほとんどが、旅館業法で定められた「簡易宿泊所営業の許可」を取っていないということです。一旦問題が起こると厳しい対応が求められます。法的な対応を着実に進めていくことがこれから一番重要な事です。

教育旅行の誘致にとって、鹿児島には大きな朗報がありました。JR西日本とJR九州による修学旅行専用列車の設定がなされることとなり、25年度関西地域から25校5,200名の新たな需要開拓ができました。これからも学校のニーズに応えるべく体験メニューづくりが欠かせません。

修学旅行は、行先を決定すると数年続くのが普通であり、地域全体の学校が同調することもあり、安定的顧客にもなります。修学旅行は、一度に多くの生徒が動き、不況時でも実施され、取消しがなく、受入機関にとっては経営の見通しが立てられるなど安定した顧客といえます。これからも誘致に力を注ぎたいと思います。

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毎年着実に伸びているスポーツキャンプ・合宿を誘致すべく、10月には大阪、京都で誘致のためのセミナーを開催しました。県内の14の自治体が参加し、2日間で関西地区の20大学から52団体119名の参加がありました。


学生のスポーツ合宿は、プロに比べて宿泊施設や運動施設の条件が厳しくなく、十分に運動ができる環境が整っていることが大切であり、大隅地域などはもっと伸ばせる条件がそろっていると思います。

熊本・宮崎・鹿児島の3県とJRグループ6社では10月1日から12月末まで、デスティネーションキャンペーン(DC)を展開しています。3県が誇る「温泉」、「自然」、「観光列車」、「伝統」、「美味」等の観光素材が前面に出て、PR効果も高まり、新幹線を利用して全国から多くの観光客が訪れています。

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また、JR九州は来年3月末日まで、DCと連動して「列車でめぐる極情の旅 南九州キャンペーン」も展開しており、温かい南九州に途切れることなく多くの観光客が訪れるものと思われます。

新幹線の開業に合わせて、各自治体がバスを走らせるなど2次交通の整備が進み、開業効果を広げる取組が進んでいます。「あいらびゅー号」、「新幹線リレーバス」、「ちらんシャトルライナー」、「鹿児島市内まち巡りバス」、「ディスカバリーIBUSUKI号」、「霧島連山周遊バス」等です。

桜島にも新しいバス路線が誕生しました。「サクラジマ アイランドビュー」です。桜島に渡ってからの2次交通が課題となっていただけに、観光客にとっては、「よりみちクルーズ」を組み合わせることで、海からと陸上から見る桜島の景観が違った印象として残ると思います。

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また、2010年3月から休止していた山川~根占航路が1年5か月ぶりに再開しました。大隅半島への観光が便利となりました。誘客対策として、大隅地域レンタカー無料プランの事業もスタートしました。

アクセスに恵まれない大隅半島にとってもっとPRして、地域の活性化に繋げて欲しいと思います。

ところで、今年一番苦戦したのが外国人の誘客です。年初は順調に伸びていましたが、東日本大震災と原発事故で状況は一変し、日本全体としてインバウンドの回復は見られません。
10月に、香港、広州、深セン地域でエージェントへの営業活動を展開しましたが、各社は、円高で日本のランドフィーが上がっており、九州新幹線のインバウンド料金の適用拡大や、「かごしま水族館」など中国人が関心の高い入場施設料金を特別に割り引いて欲しいという要望がありました。また、ショッピングができる場所の紹介や案内業務の充実も挙げていました。
ほとんどの旅行商品の1日当たりの滞在費は、かなり厳しい条件が課せられており、現状の旅行商品は、安値志向がかなり強いのが事実です。

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魅力ある鹿児島の観光への期待は高く、中国の富裕層をはじめとして東名阪などゴールデンルートに向かっている人たちを誘客するためには、各旅行社との信頼関係づくりがまず重要だと感じています。今後国内旅行の伸びが期待できない中で、外国人特にアジアからの誘客は重要になってきます。

JNTOの調査によると、外国人観光客の訪日動機は、自然景観、ショッピング、温泉となっており、鹿児島はそれに十分対応できます。

3月25日から中華航空が、週3便就航することになりました。ソウル、上海、台北と定期便が3路線となり、東アジアに向けた新たな展開が可能となりました。鹿児島は、南に開かれた国際空港として、福岡空港や九州新幹線と結び大きな飛躍が期待されます。県民も大いに利用し、物流の促進も図られるものと思います。

ところで、宿泊施設、運輸機関、入場施設、お土産品店、飲食店は、新幹線の開業特需で潤っていますが、観光客からは多くのクレームが寄せられているのも事実です。 「接遇が事務的で笑顔がない」、「電話で問い合わせたが冷たく断られた」、「質問しても答えがない」、「近くまで乗ろうとしたら断られた」、「中央駅西口の混雑がひどい」等です。
これではリピーターになるどころか、鹿児島の悪評が口コミで広がっていきます。各企業のトップの方々も、自らのこととして改善して欲しいものです。

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「おもてなしセミナー」を県内各地で開催していますが、研修に参加するだけに終わらせるのではなく、現場で「おもてなしの心」を定着させなければ意味がありません。観光施設の評価は、最終的には人(従業員)の評価だと思います。


新幹線の開業効果は、来年のGW頃までは続くものと想定しており、その後が正念場です。離島や北薩、南薩、大隅地域への新たな商品企画と首都圏や瀬戸内海沿線での販売促進が重要であり、「篤姫」放映後の二の舞にならないよう努力したいものです。

県民の方々が、霧島、鹿児島市、指宿、屋久島等のメインな観光地だけでなく、それぞれの地域の魅力を語ることで開業効果を広め、持続的に観光客が訪れる「観光立県鹿児島」になるものと思います。地域を想う人をいかに増やすかが大切です。

最後に今年も毎週コラムを配信できました。ありがとうございました。
来年は1月4日からスタートします。良いお年をお迎えください。

地域ならではの「新・ご当地グルメ」開発でまちおこしを

2011年12月19日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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最近B級グルメの祭典が、日本各地で開かれています。
6回目を迎えた今年の「B-1グランプリ」は、兵庫県の姫路市で開催され、「ひるぜん焼きそば好いとん会」がゴールドグランプリに輝きました。

B―1グランプリの出展者は飲食店でなく、まちおこし団体の方々であり、まちを大いにPRして活性化に繋げていくことを目的とした「まちおこし」イベントです。
B級グルメとは地元ですでに定着しているものを言い、一方、「新・ご当地グルメ」は新しくこれから開発するので、商品、価格、流通や販売、広告宣伝・販売促進のマーケティングを一からやることになります。

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「第4回かごしま観光人材育成塾」には、「新・ご当地グルメ」の仕掛け人である「リクルートじゃらんリサーチセンター エグゼクティブプロデューサー」のヒロ中田さんを講師に迎えました。中田さんによると「新・ご当地グルメ」には明確なコンセプトがあり、その7カ条について

①地産地消を前提とした企画開発型ご当地グルメである。
②「域内循環」、「地域活性化」など大義がある。
③地域に人を呼び込む「誘い水」的商品として位置づける。
④その地域の特産物を有効利用した「統一ブランド料理」であり、コンセプトが定められ、守るべき定義・ルールが明文化されている。
⑤コンプト・定義・ルールをきちんと守ったり、プロモーション企画を考えたりする「組織」がある。 ⑥「通年」で提供でき、お店が「複数店舗」ある。
⑦「昼食」を前提とした立ち寄りグルメである。
として位置づけています。

「いつ行っても味わえる、わざわざ食べに行く価値がある地場産食材に徹底的にこだわった企画開発型の統一ブランドおもてなしメニューで、そのメニューの品質保持のために、明確なコンセプトと定義・ルールを持ち、それを守りあう組織(チーム)を持っている」とまとめています。

今人気となっている日南市の「日南一本釣りカツオ炙り重」を担当された中田さんが、鹿児島で初めて、出水市の新・ご当地グルメを手掛けました。
出水市は、15年連続万羽ツルが飛来し、その数は世界一であり、また、大河ドラマ「篤姫」の放映効果や九州新幹線の全線開業で、武家屋敷等の人気も高まっています。しかし、従来から、観光客が食事する地元ならではのメニューが少ないと指摘されていました。

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出水市は、鶏肉・鶏卵生産量が日本第2位を誇る「鶏のまち」です。そのことを訴求するために新たに開発したのが、「親子」をテーマにしたご当地グルメ「いずみ親子ステーキごはん」です。
定義として、地元で生産された新鮮で安全・安心な鶏肉と鶏卵、すなわち「親子」を美味しく食べるには、シンプルに焼いて食べる(鶏肉)、そして生玉子として食べる(鶏卵)。このシンプルな親子の組み合わせに、親サラダ(チキンサラダ)と子スープ(たまごスープ)をつけた、これまでになかったまったく新しい親子メニューです。
産地ならではの、出水に行かないと味わえない新・親子メニューが誕生したのです。

16のルールがありますが、中田さんが決めた7カ条を厳守しています。2011年の2月26日にデビューし、市内6カ店で食べることができ、現在までに6,800食売れています。これからは、観光客にいかに浸透させるかが課題となっています。

中田さんは、「新・ご当地グルメを成功させるために大切なことは、人、資金、そして商品が売れることであり、何よりも組織づくりが肝心である。10年は続けられる組織の確立が必要である。」と言っています。

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認知されるには約5年はかかり、その間キャンペーンやさまざまなイベントでの出店も必要であり、資金的な裏付けも重要です。
認知度0からのスタートであり、魅力的で地域ならではの商品をつくることが求められます。そこで生まれた必然性、ストーリー性、つまり論理的に説明しやすく満足度の高い商品が求められます。

また、「新・ご当地グルメ」は、地域に人を呼び込む誘い水的商品として位置づけています。商品はあくまでも一つの点(コンテンツ)であり、それをきっかけに、地元の観光施設、温泉、旧跡、そして飲食店、宿泊施設、駅と結びつけ、地域全体の魅力づくりの要素にもなります。

PR効果を高めるため、メディアで取り上げていただくと同時に、まず地元で浸透させる営業力も必要です。そこの地域が魅力あると感じた時、初めて観光客が訪れ販売も増えていきます。旅先で客がもっとも求めるものは地元ならではの食です。

食は、農家、漁師、農協や漁協、商工会議所、商工会、飲食店等が絡んでおり、多くの担い手が関係します。地域の食をテーマにした新商品開発が、新たな「まちおこし」にもつながります。皆様の地域でも、ご当地グルメ開発に取り組まれたらいかがですか。

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出水商工会議所では、新たなブランドづくりとして、地元の食材を活用したスイーツの開発に取り組み、キャッチフレーズ、ロゴマークの制定を進めており、食の街出水のイメージづくりが進むものと期待がかかります。九州新幹線が全線開業し、博多から出水駅まで1時間程度で来ることができます。ツル見学や武家屋敷散策の後、観光客が「いずみ親子ステーキごはん」を食べたいと思うようなまちにしたいものです。


参考:①観光とまちづくり(発行日本観光協会):②いずみ親子ステーキごはん(出水市観光交流課)

感動を覚える「おもてなしの心」とは

2011年12月12日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫 英光

全国的に国内旅行が低迷する中で、鹿児島は、九州新幹線の全線開業効果により順調に観光客が増加しています。

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鹿児島は九州本土最南端の県で、これまで何かと不自由をかこっていましたが、時間短縮が大きな魅力となり南へ人の動きが加速しています。
また、鹿児島中央駅が南の終着駅になったことや、観光特急「指宿のたまて箱」の運行が話題となり、マスコミでの情報発信が増加したことなども要因としてあげられます。

鹿児島中央駅では、観光客目当てのタクシーの待機が多くなっています。乗車したタクシーの二人のドライバーの態度について紹介します。

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出張帰りで時間が無く、近くの会議場までの行先を告げると、乗った途端に「お客さん歩いた方が早いです。」と、また、小声で「2時間待ってワンメーターか。」と嘆きの恨み節。到着までの車内の冷たい無言の雰囲気、二度とその会社のタクシーに乗るものかと、しっかりドライバーの名前を確認して下車。車は急発進して去って行きました。

次は、あるホテルで打ち合わせがあり、「近いけどすみません」と告げると、「結構ですよ。3分間で600円稼げる商売はありがたいです。これからもいつでもご乗車ください。」と逆に感謝され、恐縮のあまり思わず目頭が熱くなり、下車する時千円からの「お釣りは結構です」と言ってしまいました。皆さんも経験があると思います。その後、鹿児島中央駅からの近距離はタクシー乗車を控えています。

タクシーは、観光客が駅で降り立ち初めて乗る交通機関であり、その対応が地域の印象となります。観光客は行先の位置関係がわからず、タクシーを利用します。

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先日出水を訪れた際夕刻で雨が降っていましたが、Aタクシーの乗務員は、帽子を取りきちんと挨拶をしてドアを閉め、下車の時もわざわざ車から降りてドアの開け閉めまでしてくれました。車内では地域の話題の提供や名刺を渡し「帰りの用があったら電話ください」と。さわやかな印象が残り、やはり帰りもその乗務員さんの車を利用しました。

タクシー乗務員の皆さまのマナーもずいぶん改善されています。親切な運転手が増えることが「観光かごしま」のイメージアップにつながります。

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ところで、(株)旅行新聞社が発表する「もてなし達人」に、今年は指宿のホテル秀水園の津崎世津子さんが選ばれました。津崎さんは、秀水園に勤務して約30年。今回の受賞についての喜びと日頃の仕事への心がけを次のように語っています。

「お客様が我が家に帰ってきたようにお迎えする。当たり前のことをやっているだけです」。2年前に最愛の母親を亡くされ、落ち込んでいらっしゃいましたが、「同じ時代のお客様を見て、母を思い出し、家族のような気持ちがした。だから続けるだけ続けたい。ありがたい仕事です。」とホテルの従業員としての誇りと自信が感じられます。

また、「おもてなしはこちらが構えると、かえってお客様に気を使わせる。」と常に自然体で接しているとのこと。それが「また来るね。」というファンを増やし、毎月のように指名がある。料理の好き嫌いや浴衣のサイズなど、お客様ごとにメモったノートは何冊にもなっている。お礼の手紙もすべて残してあり、「私の財産です。」と笑顔で語ってくれました。
また、通勤途中に、野原や道端に咲いている季節の花を摘み、客室のテーブルにそっと添えるという「こだわり花」という気遣いに、旅人はまた癒されます。津崎さんの接遇に、宿泊者はきっと家にいるような居心地の良さを感じるのでは思います。

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ホテル秀水園は、『プロが選ぶホテル・旅館の100選』で26年連続日本一に輝き続ける料理と、2011年度国内総合評価第7位の誰もが認める折り紙付きの旅館です。
トップの経営方針が従業員に浸透しています。玄関先で仲居さんが三つ指をついて迎えてくれる旅館は、今、全国的にみても少なくなっています。

チェックイン時からエレベーターの空間への配慮、洗面所の備品、浴衣のサイズ揃え、朝食などへの気配りは、まさにサービスに限界は無いと感じられ、ずっと滞在したいという感動にかられます。ぜひ宿泊してサービスの極意を感じてください。

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ところで昨年1年間で、約1000軒の旅館が廃業しています。要因として、景気の低迷による宿泊を伴う国内旅行の減少や、加えて日本人の生活スタイルが洋風化し、出張等でもホテルなどの個室に宿泊することがほとんどで、和室を利用する機会が少なくなっていることなどがあげられます。

畳の部屋、浴衣での宴会、料理に合わせた食器での食事の提供、仲居さんの心温まる接遇など、日本の伝統文化の残る和風旅館をぜひ残していきたいものです。

企業間競争が激化する中で、これからの経営はリピーターをいかに確保するかにかかっています。今顧客にとって満足は当たり前であり、「おもてなしの心」を持って感動・感激をいかに提供できるかが新たな顧客創造につながるのではないでしょうか。

                       参考:旬刊旅行新聞「もてなし達人の宿」

好調を維持している鹿児島の観光~リピーター対策と次年度への取組強化を~

2011年12月5日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

今年のカレンダーも最後の1枚となりました。今年は年初から、鳥インフルエンザの発生や新燃岳噴火、九州新幹線全線開業前日の東日本大震災と原発事故の発生など、鹿児島の観光に先行き不安を感じさせる出来事が続きました。
特に、東日本大震災等の発生で旅行の自粛ムードが広がっておりましたが、4月の後半から回復基調となり、一部の地域を除き県全体としては宿泊観光客の増加は顕著に推移しています。

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鹿児島中央駅が新幹線の南の終着駅になったことや、指宿枕崎線に「指宿のたまて箱」という観光特急が走ることなどが話題となり、メディアでの取材も多くなりPR効果が浸透してきています。 鹿児島県は九州本土最南端の県であり、これまでなにかと不自由をかこっていましたが、今では逆にそのことが新幹線の全線開業による時間短縮効果が顕著となり、終着駅まで行って見ようという好奇心にかられ、旅行先に選ばれていることが宿泊者増加につながっているのではないでしょうか。

先日、日曜日の午後、鹿児島中央駅に出かけた際に、アミュプラザのエスカレターで右側を一直線に並ぶ中高年の女性グループに出会いました。エスカレターを降りたところで話を聞くと、関西から1泊2日の同窓会で指宿旅行に来たということでした。

感想を聞くと、「鹿児島への旅は、修学旅行や新婚旅行以来で、昔の事が思い出されて懐かしかった。鹿児島がこんなに近くなるとは思わなかった。食べ物もおいしく温泉も良かったけど、対応が今一つであった。要件を依頼しても要領を得ず待たされた。精算に時間がかかった。表情に笑顔が無いなどおもてなしの心が欠けていた。」という厳しいご指摘も受けました。
最後に「鹿児島は街で会う人々が親切であり、しかも自然が素晴らしい。桜島の噴火が出迎えてくれていい思い出ができた。」と笑顔で語ってくれました。

先日発表された県の10月の観光動向調査によると、主要宿泊施設の宿泊客数は、278,384人で前年同月比28.6%増となっています。

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特に関西・中国・北部九州などからの宿泊客の大幅な増加により、前年を大きく上回り、地区別では指宿地区が前年比170%を超え、鹿児島地区、種子・屋久地区も20%を超えるなど、平成20年以来全ての地区で対前年を上回っています。

ホテルによっては、平日も満室の日が多く、従業員の勤務体制の確保が厳しいところもあります。また、最近減少してきた団体客が例年より5割も増加しているのも特徴であり、新幹線の停車駅から貸切バスを利用した旅行が顕著となり、バスが不足する日も多くなっています。指宿地区では来年の3月ぐらいまでは、エージェントの企画が設定できないほど混んでいるホテルもあります。

しかし、このように好調な時ほど、お客様の信頼を裏切らないような対応が求められます。先日福岡で開催した商品説明会でも、主要エージェントからクレームが上がりました。
電話をしたけど愛想が無く、事務的に断られた。予約担当者においては、休前日等断るのに苦労すると思いますが、空き日や他施設への誘導などの丁寧な対応が必要です。宿泊が不可能な場合は、近隣の日帰りのコースを説明し、他の地域の宿泊をお勧めすることもお客様の印象を良くすることにもなります。
篤姫放映翌年の反動を教訓にすべきであり、行政、観光協会、観光施設それぞれの役割、取組は何なのか検証すべきではないでしょうか。

ところで、現在の各エージェントの予約状況等から判断すると、大規模な自然災害の発生や世界的な経済危機がない限り、本県の観光はゴールデンウイーク頃までは好調に推移するものと思います。各宿泊機関や観光施設等にはすでに来年に向けての取組をお願いしているところです。

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その意味からも5月以降の商品企画や新たなイベントの創出、キャンペーン等の展開が必要です。特にリピーター対策として離島を加えた商品展開や着地型メニューを組み込んだ新しい企画が求められます。


来年は、国は震災復興対策として東北への支援を強化する方針であり、観光庁ではその予算を組んでいます。エージェントもそれに呼応して、東北の地域活性化策や商品企画が増加するものと思います。鹿児島としては、それをじっとして見ているのではなく、最大の需要を擁する関東地域での販促を強化する必要があります。
また、全線開業で便利となった関西地域では、京都、滋賀、奈良、和歌山などの大阪周辺部、さらに中国・四国地域では山陰、高松、今治地域がこれからのターゲットです。

南九州3県には、7つの観光特急列車が運行され、それを目当てに新幹線を利用する方が増えています。特に今年は「指宿のたまて箱」に乗りたい方が多くいましたが、予約が取れず断念した方が多いと感じています。

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来年にもう一度来たいと思わせるためには、ローカル線を組み入れたコース、パワースポット、食の魅力の発信や、地域の新しい滞在・体験メニューが必要であり、より広範囲の連携も必要になります。
肥薩おれんじ鉄道は、今韓国の方に大人気です。新幹線の速さとローカル線のゆっくりした旅も売り込みたいものです。

ところで、来春に中華航空の台湾便の就航が予定されており、インバウンドの回復に大きな期待がかかります。上海線、ソウル線に台北線が揃うと、東アジアをにらんだ新たな展開が可能になります。国内旅行が先行き大きな期待が望めない中で、外国人誘致は不可欠です。

また、平成25年には、関西地域から新幹線集約臨時列車の運行が決定しており、多くの学生が修学旅行で南九州へ来るものと思われます。平和学習、グリーンツーリズム・ブルーツーリズム体験、環境学習、桜島などの自然学習、歴史散策など鹿児島の教育旅行の素材はどこにも負けません。安定的顧客である教育旅行の市場開拓も重要な取組です。

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持続的に鹿児島への観光客を誘致するため、今日のお客様を大事にし、次へつなげることが重要です。新規顧客の開発には、リピーターの数倍の時間と経費がかかります。 新幹線開業に沸く鹿児島ですが、気を引き締めて常に先をにらんだ展開が今必要ではないでしょうか。