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感動を覚える「おもてなしの心」とは

2011年12月12日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫 英光

全国的に国内旅行が低迷する中で、鹿児島は、九州新幹線の全線開業効果により順調に観光客が増加しています。

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鹿児島は九州本土最南端の県で、これまで何かと不自由をかこっていましたが、時間短縮が大きな魅力となり南へ人の動きが加速しています。
また、鹿児島中央駅が南の終着駅になったことや、観光特急「指宿のたまて箱」の運行が話題となり、マスコミでの情報発信が増加したことなども要因としてあげられます。

鹿児島中央駅では、観光客目当てのタクシーの待機が多くなっています。乗車したタクシーの二人のドライバーの態度について紹介します。

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出張帰りで時間が無く、近くの会議場までの行先を告げると、乗った途端に「お客さん歩いた方が早いです。」と、また、小声で「2時間待ってワンメーターか。」と嘆きの恨み節。到着までの車内の冷たい無言の雰囲気、二度とその会社のタクシーに乗るものかと、しっかりドライバーの名前を確認して下車。車は急発進して去って行きました。

次は、あるホテルで打ち合わせがあり、「近いけどすみません」と告げると、「結構ですよ。3分間で600円稼げる商売はありがたいです。これからもいつでもご乗車ください。」と逆に感謝され、恐縮のあまり思わず目頭が熱くなり、下車する時千円からの「お釣りは結構です」と言ってしまいました。皆さんも経験があると思います。その後、鹿児島中央駅からの近距離はタクシー乗車を控えています。

タクシーは、観光客が駅で降り立ち初めて乗る交通機関であり、その対応が地域の印象となります。観光客は行先の位置関係がわからず、タクシーを利用します。

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先日出水を訪れた際夕刻で雨が降っていましたが、Aタクシーの乗務員は、帽子を取りきちんと挨拶をしてドアを閉め、下車の時もわざわざ車から降りてドアの開け閉めまでしてくれました。車内では地域の話題の提供や名刺を渡し「帰りの用があったら電話ください」と。さわやかな印象が残り、やはり帰りもその乗務員さんの車を利用しました。

タクシー乗務員の皆さまのマナーもずいぶん改善されています。親切な運転手が増えることが「観光かごしま」のイメージアップにつながります。

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ところで、(株)旅行新聞社が発表する「もてなし達人」に、今年は指宿のホテル秀水園の津崎世津子さんが選ばれました。津崎さんは、秀水園に勤務して約30年。今回の受賞についての喜びと日頃の仕事への心がけを次のように語っています。

「お客様が我が家に帰ってきたようにお迎えする。当たり前のことをやっているだけです」。2年前に最愛の母親を亡くされ、落ち込んでいらっしゃいましたが、「同じ時代のお客様を見て、母を思い出し、家族のような気持ちがした。だから続けるだけ続けたい。ありがたい仕事です。」とホテルの従業員としての誇りと自信が感じられます。

また、「おもてなしはこちらが構えると、かえってお客様に気を使わせる。」と常に自然体で接しているとのこと。それが「また来るね。」というファンを増やし、毎月のように指名がある。料理の好き嫌いや浴衣のサイズなど、お客様ごとにメモったノートは何冊にもなっている。お礼の手紙もすべて残してあり、「私の財産です。」と笑顔で語ってくれました。
また、通勤途中に、野原や道端に咲いている季節の花を摘み、客室のテーブルにそっと添えるという「こだわり花」という気遣いに、旅人はまた癒されます。津崎さんの接遇に、宿泊者はきっと家にいるような居心地の良さを感じるのでは思います。

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ホテル秀水園は、『プロが選ぶホテル・旅館の100選』で26年連続日本一に輝き続ける料理と、2011年度国内総合評価第7位の誰もが認める折り紙付きの旅館です。
トップの経営方針が従業員に浸透しています。玄関先で仲居さんが三つ指をついて迎えてくれる旅館は、今、全国的にみても少なくなっています。

チェックイン時からエレベーターの空間への配慮、洗面所の備品、浴衣のサイズ揃え、朝食などへの気配りは、まさにサービスに限界は無いと感じられ、ずっと滞在したいという感動にかられます。ぜひ宿泊してサービスの極意を感じてください。

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ところで昨年1年間で、約1000軒の旅館が廃業しています。要因として、景気の低迷による宿泊を伴う国内旅行の減少や、加えて日本人の生活スタイルが洋風化し、出張等でもホテルなどの個室に宿泊することがほとんどで、和室を利用する機会が少なくなっていることなどがあげられます。

畳の部屋、浴衣での宴会、料理に合わせた食器での食事の提供、仲居さんの心温まる接遇など、日本の伝統文化の残る和風旅館をぜひ残していきたいものです。

企業間競争が激化する中で、これからの経営はリピーターをいかに確保するかにかかっています。今顧客にとって満足は当たり前であり、「おもてなしの心」を持って感動・感激をいかに提供できるかが新たな顧客創造につながるのではないでしょうか。

                       参考:旬刊旅行新聞「もてなし達人の宿」

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