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なぜ今修学旅行の誘致が必要か

平成24年2月27日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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鹿児島では例年桜が満開となる頃が新学期の時期と重なり、校門で桜の花を背景に写真を撮る親子の姿が見られます。桜前線が北海道まで到達するのは5月のGW明けとなり、日本列島の四季の長さを感じます。
教育現場が落ち着く4月の後半から、日本独特の学校行事の一つである春の修学旅行のシーズンが始まり、6月の中旬まで続きます。

昨年3月の九州新幹線全線開業により、今年は鹿児島への修学旅行が増加しています。今まで九州の他の地域に行っていた学校が、時間短縮効果で鹿児島に行先を変えているのではないかと思います。

九州の横軸より縦軸の時間が短くなり、特に関西から以西の学校が博多まで集約臨時列車で来て、九州新幹線の定期や臨時列車に乗り換えるコースが目立ちます。片道新幹線を利用し、鹿児島中央駅からバス利用で県内1泊、他県に1泊して学校までバス利用というコースもあります。

なぜ今修学旅行の誘致が必要なのか、その理由を学校現場のニーズと併せて誘致の観点から考えてみたいと思います。

学校は3年もしくは6年置きに行先を変える傾向があります。それはマンネリ化を防ぎ、先生方が新しい旅行先を求めていることや、教育課程の変更等が大きな要因です。 その際、目新しい施設がオープンしアクセスが整備されると行先として選ばれるチャンスが訪れることになります。

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九州新幹線の全線開業で、大きな時間短縮が図られた鹿児島に注目が集まっているのは、新大阪から集約臨時列車や相互直通の「さくら」が増発されることが大きく、25年度以降はさらに鹿児島方面へ行先を変える学校が増加するのではと期待しています。

特に修学旅行専用列車の設定は、運賃・料金が軽減されしかも一般客との混合がなく安心して生徒の管理ができます。先日もある大手エージェントの教育旅行支店長会議が霧島で開催され、鹿児島への誘致を誓っていました。 今まさに鹿児島としては修学旅行誘致のチャンスと捉え、関係団体が連携しPRを強化すべきです。

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最近の教育旅行のニーズは、物見遊山的な旅行から農業・漁業などの体験、火山や震災などの自然学習、街を歩きながらの歴史・文化の探訪、原爆や戦争に関する資料を通しての平和学習、ゴミ問題や水質汚染についての環境学習等さまざまであり、複数のカリキュラムを取り入れる学校が増えています。

体験型修学旅行においては、農業・漁業体験を組み込む学校がほとんどです。大分県の安心院、長崎県の松浦や平戸、佐賀県の唐津が人気を博していますが、NPO法人エコ・リンク・アソシエーションの下津代表によると、23年で、11,300人を扱い、24年は16,000人、25年は20、000人に迫る勢いです。出水市でも、NPO法人環不知火プランニングと連携し、24年はすでに11校の予約が入っています。

県内全域での取り扱いが始まっているのが大きな特徴で、他県との差別化を図り、新たな需要先の開拓も求められています。 そのためには、他県にないユニークな体験メニューの提供、また、受入側の安全面に対する意識を向上させ、体験学習における安全性を確保することが何よりも重要です。

鹿児島県では、農山漁村生活体験学習に係わる取扱指針を平成21年3月に作成しました。生徒の宿泊先の多くは、登録許可をもつ民宿ではなく、体験をする農家、漁家であり、料理はみんなで作るというのが絶対的なルールです。また、保健所の指導により、手洗いの励行、絶対に生ものを出さない、火を通すなど保健衛生面での格段の配慮が必要です。農業体験では、農機具などでけがや事故にあわないような最善の注意が必要です。

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受入農家等には農林漁業体験、調理、家での団らん等の機会を併せて提供する事が求められています。特に生徒が感動するのは、夕食後の農家の人との団らんの時間です。都会の生徒の多くは、家庭での両親との会話が少なく、民泊先での温かい心のふれあいに涙する生徒が多く、子供達の情操教育にも役立っているのではと感じます。

ところでグリーンツーリズムが浸透するにつれてホテル経営者は、民泊先にお客が取られると危惧してきました。しかし、行程の中でもう1泊は、温泉地でのホテル宿泊がほとんどです。新しい需要開拓で相乗効果がもたらされるという考えに立つべきと思います。一度鹿児島を訪れた子供達は、成人したらまた来てくれるリピーターにもなります。温かいおもてなしで、子供達に大きな感動をもって帰ってもらいたいものです。

新幹線の開業で永続的に安定した利用客を確保するためには、京都に代表されるように修学旅行生を誘致することが、一番の安定策です。鹿児島県は、教育旅行のニーズに対応できる環境が九州のどの地域よりも揃っていると思います。そのためには、地域での人材の確保、宿泊代として収受できる簡易宿所の登録推進、温泉地・ホテル等との連携などが必要と感じます。

教育旅行を受け入れる施設としてのメリットも大きいものがあります。修学旅行は、2年前に決定し、しかも人員の変動も少なく不況時でも安定した顧客であり、経営の見通しも立ちます。個人旅行が主流の中で、数少ない大型の団体旅行であり、一度受けると数年続くのも大きなメリットの一つです。

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国内旅行はここ20年減少傾向であり、修学旅行の誘致競争も激しくなっています。新幹線の全線開業のメリットを活かし、多くの地域から県下全域への誘客を図るチャンスとしたいものです。

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