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若者の旅立ちを見送る

2012年3月26日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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新年度を控えて鹿児島中央駅や鹿児島空港で、若者を見送る横断幕や胴上げのシーンを見る機会が多くなりました。4月の始めにかけては転勤者の送迎の宴も開かれ、夜の街も賑わいを増します。

甑島では島内に高校がないため、中学生は卒業と同時に島から旅立ちます。これを甑島では「15の島立ち」といい、子どもたちを励ます会を開いて見送ります。

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また、卒業生は三年になると、自らの手で芋を植え、その芋でできた焼酎は『島立ち』と名付けられ、年間800本しか製造されない幻の焼酎となっています。卒業生が5年後に二十歳になって帰ってきたときに最初に飲むのがその時の芋で作った焼酎『島立ち』です。甑島にはこのような心温まる絆が未だに残っています。
子ども達が辛いとき、悲しいとき島のことを忘れずがんばって欲しいと願わずにはいられません。

この度甑島を舞台に、阿久根市出身の光岡洋さんが歌う「島立ちの春」という曲が発売され、話題となっています。その2番に若者を応援する歌詞があります。

    俺も十五で島立ちしたが 倅(せがれ)もこの春 島を立つ
            海は広いが、世間も広い デッカイ男になって来い
                 笑顔がかわいいヨオー  嫁でもつれて来い

里港の乗降場の正面に♪島立ちの春♪の歌碑が造られ、3月13日島の中学校の卒業式の日に合わせて、3年生や光岡さんも参加して除幕式が開かれました。

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今、九州新幹線全線開業で大都市圏から島を訪れる観光客が増えています。「長目の浜」、「鹿島断崖」、「帽子山展望所」、「瀬尾の観音三滝」、「ナポレオン岩」等の名勝や「Dr.コトーのモデルの医師」、「釣りバカ日誌」、「孤島の野犬」等の舞台となった甑島をぜひおたずね下さい。
          参考―薩摩川内市観光協会「こころ」

ところで中国では、旅立ちのときには盛大な宴を催して送る習わしがあり、また、多くの詩人が惜別の歌を残しています。次の詩は日本でも良く知られています。

          送友人  ~友人を送る~ 〈李白〉

   青山横北郭      青山 北郭に横たわり
   白水遶東城      白水 東城を遶る
   此地一為別      此の地 一たび別れを為し
   孤蓬萬里征      孤蓬 萬里に征く
   浮雲遊子意      浮雲 遊子の意
   落日故人情      落日 故人の情
   揮手自茲去      手を揮って 茲自り去れば
   蕭蕭斑馬鳴      蕭蕭として 斑馬鳴く

  解釈
     北のかた、緑濃き山たたなわり、まちの東、水白き川は流れる。
     われらここに別れを告げ、飛ぶ枯草の君は遠く旅立つ。
     白雲は出で立つ君の胸にただよい、落日はのこるぼくのはらわたを灼く。
     手をふってゆかんとすれば、ひゅうひゅうと駒はいななき。
                  引用:高島俊男『李白と杜甫』講談社学術文庫

市街地の様子や自然の植物などの情景が浮かんで来るようです。別れに際しての心理描写がとても美しく歌われています。人は別れに際して初めて友人の大切さに気づくものです。

この春大学生になる方々に、将来に対する心構えについて話をしたいと思います。

これからは、国とか社会にあまり過剰な期待を求めることは厳しいと思います。タイの洪水被害で分かったと思いますが、日本の多くの有力企業は今積極的に海外に生産拠点を移しています。日置市にあるパナソニックも(鹿児島から)撤退をします。
企業は今生き残りをかけて、工場の海外移転や統廃合、ドラスティックな人員削減等をやってきます。震災や原発の稼動の問題もあり、日本はこれから高度成長期のような右肩上がりの急激な経済の発展は望めず、低成長が常態化すると私は見ています。

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アメリカのケネディ大統領は、就任式でアメリカ国民に問いました。「祖国があなたに何をしてくれるかではなくて、あなたが祖国のために何ができるかということを考えて欲しい」と、自立の重要性を説いています。

また、進化論を唱えたダーウィンは、「この世の中で生き延びるのは強い生き物ではない、頭が良い生き物でもない、やはり変化に対応できる生き物だけが、この世の中で生き延びる。」と変化に敏感に対応できることの大切さを問うています。人は自動扉に頼るのではなく、自らの手でドアを開ける努力が必要です。

夏休みや試験休みを利用して一ヶ月間ぐらい、海外一人旅をして、外から日本を見ていただきたい。特に東アジアの成長が著しく、鹿児島県にとっては今後の展開が一番必要な地域です。

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また、我々が住む鹿児島県は、南北600kmに及ぶ広い県であり、「本物。鹿児島県」の素晴らしさを知るために、ぜひ離島まで足を延ばし自分自身の目でその素晴らしさを確かめてほしいと。そこに自分の将来像や生き方、就職関係のヒントが浮かぶと思います。

そして、最後にお願いしたいのは、勉強の大事さ、それはやはり一日四回の飯を食べていただきたい。朝ご飯、昼ご飯、晩ご飯、そして、読書という習慣を身に付けていただきたい。読書をすることで、日々の情報に流されず自らの判断力や弾力的な考え方が蓄積されると信じます。

先ほども述べましたように、これからも日本経済は厳しい状況が続くと予想しており、簡単に安定した就職口が見つかるとは思いません。大いに勉強して、判断力を養い変化に対応できる強い人間に成長して欲しい。それくらいの厳しい覚悟でぜひ臨んで欲しいということを旅立ちにあたって伝えたいと思います。

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