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No.429 人の行動を見抜く感性を養う~相手の心に寄り添うことの大切さ~

2016年9月26日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


 秋の気配を日々感じるようになりました。繊細な四季の変化は、日本人の美的感受性を高め、紅葉の名所には多くの観光客が訪れるものと思います。


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 澄んだ秋空に子供たちのにぎやかな声が響きます。マスゲームのにぎやかな音楽、かけっこのピストルのスタート音、応援団を鼓舞する太鼓の音などまさに運動会シーズン真っ盛りです。子供たちの小学校時代の良き思い出として、しっかりと心に刻まれることでしょう。
 小学校の運動会は、夫婦兄弟だけでなく、祖父母等親戚総出で応援に行きたくなる行事です。やはり、ひたむきに一生懸命走り競技に打込む姿が、感動を呼びます。


 先日心温まる話を聞く機会がありました。講演で印象に残ったA航空会社のCA(キャビンアテンダント)のSさんの話を紹介します。旅の楽しみの一つに目的地までの列車や飛行機の旅があります。機内での客室乗務員の心温まる対応が、あるご夫婦にとって忘れられない旅となりました。


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 離陸前の出来事です。飛行機が出発する際は、乗務している複数のキャビンアテンダントが、お客様のシートベルトのチェックを行い、「全員が着用完了」の連絡があり次第、飛行機は動き出します。
 しかし、その日はなかなか完了の連絡が入りません。チーフパーサーであるSさんが客席を回ると、一人のCAが困り果てた顔でお客様を説得しています。


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 ご夫婦連れの方で、奥様が大きな可愛らしい人形を胸に抱いていて、その人形ごとシートベルトをしてしまっているため、安全確認が出せないでいるのです。いくらお願いしても理解してもらえません。その姿を見て、Sさんはお客様の席まで行き腰を下ろしてお客様と同じ目線で、奥様の目を見ながら次のように言いました。
 「お母様のお子様はおとなりの空席に座らせてあげましょう。そしてお子様にもシ-トベルトをかけてあげましょう。」とその言葉を聞いた奥さんは「わかりました」と素直に隣の席に人形を置きました。
 こうして人形にもお母様にもシートベルトを着用していただき、飛行機は無事離陸することが出来ました。


 後日、航空会社に人形を抱いていた奥さんのご主人から丁寧なお礼状が届きました。
手紙には「妻は子供を亡くし、それ以来、あの人形を片時も離さなくなり、どこに行くにも、肌身離さず持って行っているのです。飛行機に搭乗した日、あなたに『お人形』ではなく、『お子様』と言っていただいたことが妻は嬉しかったようです。本当にありがとうございました」と書かれていました。
 「お子様」という一言がお客様の心を動かしたのです。


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 CAのSさんが「お子様にもシートベルトをかけてあげましょう」と言ったのは、ちょっとした機転だと思います。複雑な事情があるとは考えが及ばなかったものの、人形を強く抱きしめている奥様のただならぬ様子から、Sさんは何か「強い思い」を感じ取ったのではないでしょうか。
 よく、自分から見てつまらないことに意地を張る人を見かけます。でもそのことは本人にとっては、「つまらないこと」ではなくて、やむにやまれぬ何らかの事情から意地を張っているのかも知れません。
 人は誰にでも、他人にはうかがい知ることができない深い事情があるものです。その事情がわからなくても、その人の意地を許容してあげる心の広さを持ちたいものです。


 相手の心に寄り添うことで、かたくなな心を開くことができるかもしれません。Sさんのとっさの落ち着いた行動をまねることは、多くの人にとっては難しいことですが、ただ規則を主張するだけでは、問題解決はさらに難しくなるように感じます。


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 TDL(東京ディズニーランド)のオープン間もない頃の話です。熟年夫婦がレストランで夫婦二人の食事のほかに、お子様ランチを一緒に注文しました。従業員は不思議に思いましたがチーフと相談して、子供用のテーブルと椅子を用意して、お子様ランチを提供しました。ご夫婦はTDL側の配慮に涙ぐんで感謝の気持ちを表わしました。3人で来たかったTDLでしたが、夫婦の宝である子供さんを亡くされて、約束の旅行に連れてくることが叶わず、写真での淋しく悲しい旅だったのです。
 レストラン従業員の温かい配慮があり、子供さんと一緒の思い出多い旅行になったと後日お礼状が届いたとのことです。


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 ところで、「プロが選ぶ日本のホテル・旅館」の総合部門で35年連続第一を獲得しているのが石川県和倉温泉の「加賀屋」です。従業員を大切にする会社としても知られています。従業員教育も徹底しており、客室係はお客様の到着時の行動から、旅行の目的を察知して、それにふさわしい対応をとっさに取ることで顧客に感動を与えています。
 記念の旅行には、特別の一膳を用意します。また、家族の思い出の旅行であると知ると、参加できなかった故人のために「陰膳」を準備してお客様を感動させています。


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 今「顧客満足」は当たり前であり、「琴線に触れる対応」を実践することで「顧客感動」をもたらすことが重要です。
 「もの」の価値の行き着く場所は「価格競争」になりがちです。「もの」を「こと」に変えて取り組むことが、「価格」を超えた「感動」を生みます。「こと」に必要な要素は、人の心であり、ホスピタリティの原点です。


 最後に、観光客の地域・施設の最終的評価は、そこに住み、働く「人」です。一度訪れた観光客が、「友人に鹿児島の魅力を紹介したい」、「あの従業員のいるホテルにまた泊まりたい」等と認識していただくよう、「おもてなしの心」を定着させたいものです。
参考:夜、眠る前に読むと心が「ほっ」とする50の物語 西沢泰生



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秋来ぬと 目にはさやかに 見えねども
風の音にぞ おどろかれぬる

         藤原敏行 ~古今和歌集~


No.428 旅行は日本を元気にする~被災地に人が行くことよりも、人が行かなくなることが問題~

2016年9月20日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


               古  城 作詞:高橋掬太郎 作曲:細川潤一

松風騒ぐ丘の上 古城よ独り何偲ぶ
栄華の夢を胸に追い
ああ仰げば侘し 天守閣
崩れしままの石垣に 哀れを誘う病葉や
矢弾のあとの ここかしこ
ああ往古を語る大手門
甍は青く苔むして 古城よ独り何偲ぶ
たたずみおれば 身にしみて
ああ空行く 雁の声悲し


 熊本大震災から5ヵ月が過ぎ、被災地は復興に向けて動き出しています。熊本県のシンボルである熊本城は城全体の倒壊は免れたものの、大きな被害を受けました。国の支援を受けて元の美しい姿に再建したいものです。
 熊本城の再建工事の見学ツアーも公開されています。「古城」の歌の「主人公」のモデルは、上杉謙信と言われていますが、確証はありません。歴史を感じる重みのある歌ですが、作詞者、作曲者の手を離れると、曲の魅力はそれぞれ人の想いにゆだねましょう。


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 ところで、里山の木々の葉も少しずつ色付き始め、柿の実も熟してきました。鹿児島の秋の代表的な作物であるサツマイモも、焼酎の原料として出荷が始まっています。
 秋の観光シーズンを迎え、鹿児島空港や鹿児島中央駅では観光客の姿が多くみられます。夏休みはファミリー層が中心でしたが、秋は熟年にとって代わります。


 この世代は子育ても一段落し、家事や仕事といった日々の暮らしにも余裕が生まれ、第2の人生を楽しみたいという願望を持つ人が増えてきます。
 高度成長期の忙しい経済・労働環境の中で、家族を支えがんばってきた人たちであり、これから「旅行を楽しむ」ことも一つの選択肢ではないかと思います。


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 国民生活の中で旅行のニーズは高く、特に「家族旅行」を楽しみたいという層が増えており、その中でも特に「夫婦二人で」と言う人が多くいます。
 「夫婦の旅」をしたい理由として、「リラックス・ゆったりする旅ができる」、「結婚記念日、ハネムーンの場所をもう一度訪ねたい」、「妻への感謝と絆を確かめる」などをあげています。


 性・年代別で見てみると、特に男性は50代以上になると急激に「夫婦二人で」旅をしたいという気持ちが高まるようです。20代~40代では男女の差はありませんが、50代以上では、男性に比べると女性は「夫婦二人で」旅をしたいという人は少なくなります。


 女性は旅行中のショッピングや食事に関心が高いことから、妻の言い分を十分理解してあげることが、旅の大切なポイントではないかと思います。そのことでご夫婦旅行の回数も増えることにもなるのです。


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秋の観光の目玉は紅葉ですが、日本列島は10月の北海道から12月の九州まで、3ヵ月間楽しむことができます。紅葉の名所と言えば摩周湖周辺、十和田湖、八幡平、日 光、高尾山、黒部峡谷、香嵐渓、京都、宮島、寒霞渓、耶馬溪、秋月城址、曾木の滝公園などです。
 外国人が秋の京都に心を躍らせるのは、歴史ある建造物の中に木々や池が巧みに配置され、朝夕掃き清められた庭園や紅葉のコントラストが特に美しいことがあるのではないでしょうか。 


 また地方を走る観光列車で巡る旅も日本の秋を堪能できます。田んぼには、たわわに実った稲穂が垂れ、一面黄色じゅうたんを敷き詰めたように、美しい光景を作りだしています。渓谷沿いの木々も赤や黄色に紅葉し、青い川の流れに映しだされる光景は、まさに日本の原風景を表しています。インバウンドが好調なのは、「日本食」、「おもてなしの心」等に加えて、日本の四季の美しさに魅了されるからではないでしょうか。


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 鹿児島県は南北600キロに及ぶ広い県で、28の有人離島があり多彩な観光資源に恵まれています。
 日本第2位の泉源を誇り、多様な温泉があります。また、「世界自然遺産」と「世界文化遺産」の2つの世界遺産を持つ唯一の県です。


 本格的な人口減少時代を迎え、インバウンドの拡大や新たな需要開拓が求められます。 今まであまり知られていない地域資源にストーリー性を加えて商品化することや、外国人に日本の伝統文化を提供し、体験していただく取組が求められます。


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 出水市の「着物で散策が話題の武家屋敷」や「1万羽を超す世界一のツル」、さつま川内市の「奇岩・断崖絶壁の島甑島」、伊佐市の「東洋のナイヤガラと呼ばれる曾木の滝公園」、日置市の「薩摩焼のふるさと美山」、姶良市の「日本一の大クスのある蒲生八幡神社」です。


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 大隅地域では「垂水市の夫婦が30年がかりで育てた千本イチョウ園」、鹿屋市の「由緒ある皇室の御陵である吾平山上稜」、南大隅町の「神秘な美しさを誇る雄川の滝」、「整備が進む佐多岬」等です。
 指宿市の「口コミサイトで人気のたまて箱温泉」、南九州市の「ユニークな参拝スタイルが話題の窯蓋神社」、「生態が面白いタツノオトシゴハウス」、南さつま市の「遣唐使が船出し、鑑真上陸の地坊津」「郷中教育の原点である『いろは歌』で有名な竹田神社」等です。
 県民が訪れてSNS等でPRしていただきたい。


 「はやとの風」、「いぶすきのたまて箱」、「おれんじ食堂、おれんじカフェ」等の観光列車も熟年層を引き付けます。全国的にはまだ認知度が低く、著名な観光地・宿泊地と連携することで新たな誘客につながります。


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 また離島は鹿児島の売りの一つです、奄美大島や加計呂麻島、与論島には、他県に負けない美しいエメラルドグリーンのビーチがあります。ゆったりと滞在でき、「一つ上の」「ちょっと贅沢な」「上質な」旅行はいかがですか。


 一方では、体験できる価値ある情報の発信が欠かせません。薩摩焼やガラス工房、屋久杉工芸店で、おそろいの皿やグラスづくり、木製品作りの体験も興味をそそるのではないでしょうか。


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 秋は味覚の秋と呼ばれ、各地の旬の食材も豊富となり、旅の楽しみが増えます。
「黒豚」、「黒牛」、「黒さつま鶏」、「焼酎の黒」、「黒糖焼酎」等は、かごしまがイニシアティブを発揮できる食材であり、もっとキラーコンテンツとして魅力を高めねばなりません。
 特に大都市圏でのさらなる認知度アップの取組が重要です。有楽町の「アンテナショップ」からの情報発信が不可欠です。


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 日本人の国内旅行は成熟し、今後大きな成長は期待できませんが、その中でも比較的ゆ とりのある熟年層はまだまだ開拓の余地があります。
 今回の「九州ふっこう割」の申込者は、この層が一番多くなっています。


 平成23年3月には東日本大震災、平成28年4月には熊本地震が発生しました。
 被災地では多くの市民が被害にあったことから、日本人の心に一番大切なのは家族や夫婦の絆が大切であるということが改めて認識されました。
 日本は地理的に自然災害が発生しやすい国ですが、災害が発生するたびに被災地域への旅行自粛という現象が起こります。
日本人の心配りと言うか、ある意味では憐みの感情が先に立つように感じます。


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 しかし被災地に人が行くことよりも、人が行かなくなることの方が深刻です。
「九州ふっこう割」が導入され、九州各地は観光客の動きが活発になっています。これからが秋の観光シーズン本番です。多くの観光客が訪れることで経済効果が生まれ、地域は活性化します。是非皆さんも旅行に出かけましょう。「九州ふっこう割」は12月まで続きます。


 最後に機内で下記のナレーションを聞いたことのある方は多いのではないでしょうか。
身震いするほどの感動を覚える美しい日本語の文章です。空の上でも夜の底が美しく感じられます。


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遠い地平線が消えて、深々とした夜の闇に心を休める時、はるか雲海の上を音もなく流れ去る気流は、たゆみない宇宙の営みを告げています。
満天の星をいただく、はてしない光の海を豊かに流れゆく風に心を開けば、きらめく星座の物語も聞こえてくる、夜の静寂の、なんと饒舌なことでしょうか。
光と影の境に消えていった、はるかな地平線も瞼に浮かんでまいります。・・・・・・・・
                  ~「ジェット・ストリーム」のナレーションから~


No.427 NHK大河ドラマの放映が決定~県民一体となって万全の受入態勢を整えよう~

2016年9月12日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


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 鹿児島県は、南北約600キロメートルに及ぶ広大な県土の中に、美しい豊かな自然や良好な景観、良質で豊富な温泉、個性ある歴史・文化、伝統工芸、豊かな美味しい食の魅力など、多彩で優れた観光資源に恵まれています。九州新幹線全線開業、海外航空路線の増加など交通体系が整備されつつある中で、観光振興による経済への波及効果は大きいものがあります。
 県では、市町村、観光関係事業者、観光関係団体が一体となり「観光立県かごしま」を目指し、様々な取組を進めてきました。
 豊富な観光資源を活かすべく、イベントの開催や誘客キャンペーン等を推進してきています。
 一方では、台風、桜島や新燃岳の噴火、地震、水害など常に自然災害と背中合わせであり、厳しい環境に置かれているのも事実です。


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 このような中、NHK大河ドラマは1年間放映されることで、地域の魅力が発信され観光への波及効果は絶大であり、平成2年の「翔ぶが如く」では鹿児島県を訪れた県外観光客は過去最高になりました。
 しかし、放映以後バブル景気の崩壊等もあり、県外観光客の入込みは低迷を続けていました。
 平成13年の夏の鹿児島県観光誘致促進協議会(誘致協)の会合の席で、もう一度鹿児島を舞台とした大河ドラマを誘致し、観光客の復活を目指そうという活動がスタートしました。


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 これまでの大河ドラマに関する誘致活動に触れたいと思います。
 誘致活動の目的は、「鹿児島を舞台としたドラマ」の制作を実現し、その放映効果を活かし、鹿児島の魅力を全国に向け情報発信し、イメージアップを図るとともに地域の発展に努めることでした。
 平成13年9月、まず県、鹿児島市、県観光連盟、鹿児島商工会議所、誘致協の5団体合同で「大河ドラマ」制作についてNHKへ最初の陳情を行いました。
 その後、誘致に当たっては県民あげての要望であるということが重要と考え、官民一体となった組織が設立されました。
 平成15年12月には、県内外で集めた345,530名の署名と一緒に「NHK大河ドラマ」要請書をNHK側に提出しました。
 毎年要請活動を続け、くしくも平成18年8月に、平成20年の大河ドラマは「篤姫」と発表され、県民あげて喜びに沸きました。


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 現在NHKの大河ドラマ「真田丸」は、35話(9/4)が終了した時点で平均視聴率は、17.21%となっています。「篤姫」は年間視聴率が24.5%であり、「篤姫」の視聴率の高さが際立っています。
 従来から、西郷隆盛と大久保利通が鹿児島での歴史観光の中心でしたが、今は小松帯刀と篤姫のゆかりの地を訪ねる人も多くなっています。
 一方、篤姫人気を支えた要因は、女性の支持があったからであり、鹿児島の魅力が、女 性たちに旅行に行ってみたい地域になるきっかけにもなりました。観光地はやはり女性に支持されることが大切です。


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 篤姫の放映効果は県内の随所に表れました。指宿市今和泉地区など県下各地にボランティアガイドが誕生し、現在県内では43団体、995名が活躍しています。
 鹿児島市では、まち歩きルートの選定と観光ボランテイアガイドの育成が進み、「維新ふるさと館」周辺の整備や「鹿児島まち歩き観光ステーション」の設置も篤姫効果の一つです。
 指宿のボランティアガイド協会は番組終了後解散の予定でしたが、今では、駅での出迎えやホテルへの出前ガイドも行うなど活動の領域が広がっています。
 地域全体で観光客を温かく迎える態勢ができたことは、地域づくりの大きな指針となっています。
 また、県民が鹿児島の歴史に興味を持つきっかけとなり、地域資源の売り出し方に、ストーリー性を語ることの大切さを教えてくれました。


 九州経済研究所(旧鹿児島経済研究所)は、平成20年10月に「篤姫」放映効果が、観光施設の集客や、土産品代、宿泊費など関連産業への波及分を含めて262億円と試算し、公表しました。大河ドラマの放映効果がいかに大きいかが如実に表われています。


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 九州新幹線が全線開業して博多駅~鹿児島中央駅間が1時間17分となり、また、2つの世界遺産を持つ唯一の県の知名度を活かし、県全域に観光客を広げることが課題となっています。
 「篤姫」終了後も、次の大河ドラマの実現に向けて、県、市、県議会、観光連盟、鹿児島商工会議所を始め経済界5団体、青年会議所、誘致協等12団体が一体となり「大河ドラマを誘致する会」を結成して、誘致活動を進めてきました。
 この度、平成30年の大河ドラマは西郷隆盛が主人公の「西郷どん」(せごどん)に決定という一報を受けて、長年の苦労が実ったと関係者一同歓喜の声が上がりました。


 西郷隆盛が活躍した時代は、江戸時代末期から明治維新誕生前後で、近代国家建設がスタートする時期です。将来への不安感がぬぐえない現在の世相ですが、平成30年は明治維新150年という節目の年であり、ドラマを通して新しい国づくりへの展望が開かれることを期待したい。特に明治維新は鹿児島にとって、他県よりプライオリティーが発揮できる年にしなければなりません。


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 日本近代化の礎になったものは、島津斉彬候の先見性、教育、人材育成と登用、地理的ハンディを乗り越えた改革へのエネルギーにあったのではないでしょうか。また、西郷隆盛は、歴史上人気のある人物の一人です。「敬天愛人」、「子孫に美田を残さず」等に代表される彼の生き方には、学ぶことが多いのではないでしょうか。また、西郷隆盛は、奄美大島、徳之島、沖永良部島での生活を余儀なくされていますが、その足跡を辿ることで奄美群島をPRするチャンスにもなります。「奄美・琉球」が世界自然遺産に登録されると弾みがつくと思います。黒糖焼酎や鶏飯等ブランド化も進めなければなりません。


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 また、明治維新誕生には多くの薩摩の偉人たちが活躍しました。その足跡を学ぶ意義は大きく、熊本地震の影響で減少している教育旅行回復への好材料にしなければなりません。
 昨年7月に世界文化遺産に登録された旧集成館事業など「明治日本の産業革命遺産」が日本の近代化に果たした役割を再認識させる機会にもしなければなりません。


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 最後に、大河ドラマは1年間放映される国家的プロジェクトであり、いかにして鹿児島のイメージアップと誘客に結び付けていくか真価が問われます。
 日本の人口が減少していく中で、地域への交流人口の拡大は不可欠であり、大河ドラマの放映を機に鹿児島の新たな魅力を創り上げたいものです。
 大河ドラマの放映決定を受けて、「篤姫」の時と同様に、2年後に向け官民一体となった番組制作等への協力態勢を構築していきましょう。



           旅人の 袖吹きかえす 秋風に

           夕日さびしき 山のかけはし

                 藤原定家 ~新古今和歌集~


No.426 Iターン者の発想が地域を変える~頴娃地域の活性化に頑張る人たちにエールを送る~

2016年9月5日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


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 県が進める「魅力ある観光地づくり事業」は各地域の魅力創出に役立っています。今、地域資源にストーリー性を加えて旅行商品化し、エージェント等とタイアップして誘客を図っているのが、南九州市頴娃地域です。従来からお茶の産地として知られ、天下の絶景番所鼻公園、目の前には雄大な東シナ海を望む大野岳がそびえ、日本の原風景がいたるところに残っています。


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 まず、パワースポットとして人気が高まり、多くの参拝客が訪れているのが釜蓋神社です。海に突き出た朱塗りの神社の両岸は、白波が押し寄せ旅情をかきたてます。
 頭の上に釜蓋を乗せて鳥居から賽銭箱までの約10mを歩ききったら願いが叶うというユニークな願掛けが人気となり、また、勝負・武の神が祀られていることから、大会前にはスポーツ選手も多く参拝しています。


 この神社が有名になったのは、テレビ番組の「ナニコレ珍百景」で紹介されたのが始まりです。その後ロンドンオリンピックで準優勝した女子サッカーチーム「なでしこジャパン」の選手が、大会前にこの神社に参拝していたことがスポーツ紙で報道され、一気にその人気に火が付きました。


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 今では、プロサッカー選手や、県内外のスポーツ団体の参拝がたえません。また、多くの旅行エージェントの企画にも取り上げられています。
 7~8年前まではほとんど無名に近かった釜蓋神社が、多くの参拝客を呼ぶようになったのは、珍しい参拝スタイルとともに、神社のストーリー性が面白くメディアで取り上げられたことが大きいと思います。行ってみたくなる演出が求められます。


 アクセスに恵まれているとは言えない島根県の出雲大社が、パワースポットとして人気があり続けているのは「縁結び」というキーワードです。
 情報発信の在り方が重要になっています。


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 また、釜蓋神社から10分の所にある「タツノオトシゴハウス」も人気の施設です。
 この施設は日本で唯一のタツノオトシゴ専門養殖場です。映像を通しての出産シーンや、生簀の中で生き生きと動き回るタツノオトシゴの生態を詳しく説明してくれます。若いカップルや熟年の女性グループが多く、経営者の加藤紳さんのユーモアあふれる説明に笑い声が絶えません。
 竜の容貌を持ち、夫婦仲がよく、オスが子供を身ごもるという珍しい生物で、そのことが観光客の話題となり、「タツ年」の2012年頃から観光客の目に留まり、最近では車のCMにも取り上げられ、新たな需要開拓につながっています。


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 また、近くにある番所鼻自然公園も見所の一つです。「薩摩富士」と呼ばれる開聞岳から登る日の出は特にすばらしく、都会人には特に感動を与えます。
 江戸時代に日本各地を歩いて測量し日本地図を作った伊能忠敬が、『けだし 天下の絶景なり』と、日本一の絶景として称賛した場所で石碑も建てられています。海を見下ろす公園にある「幸福の鐘(吉鐘)」は、下にはタツノオトシゴをモチーフにしたハート型のかわいいオブジェが作られ、ここからの景観も絶景です。
 ストーリー性が魅力的に形作られており、思わずカメラに納めたくなります。
 松林に囲まれた「いせえび荘」で、開聞岳の雄姿を眺めながら食べる「いせえび料理」も格別です。ぜひお訪ねください。


 360度のパノラマが広がる標高466mの大野岳も見ごたえがあります。
 展望台まで続く108段の「茶寿階段」を登ると、「還暦」や「喜寿」、「米寿」などの記載があり、楽しみながら登れる場所です。東シナ海、桜島、佐多岬を一望でき、空気が澄んでいると遠くに屋久島、硫黄島を望み、四季折々の眺望が楽しめます。


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 ところで、従来この地域は知覧や指宿、坊津への通過場所に過ぎず、番所鼻に食事に来る人ぐらいしか目だった観光客はいませんでした。
 頴娃の活性化には魅力ある地域づくりが重要と考え、業種や、官民の枠を超えた組織が結成され、地域一体での魅力発信に取組んでいるのが、「NPO法人頴娃おこそ会」です。地域の若者から年配者まで定期的に会合を開き、地域づくりの勉強会や先進地視察を行っています。農村風景を大事にし、地域の特産品、海の生物、茶畑や開聞岳の景観、地域の人々の日々の暮らしをうまく取り込み、融合させて訪れる人々を感動させる仕掛けづくり・地域づくりを実践しています。
 Iターン者の加藤潤さんは、タツノオトシゴハウス経営者の兄であり、地域の中心メンバーの一人として活動しています。


 特に、頴娃地域の茶畑は美しく、農道も整備されドライブにも最適であり、途中に美味しいお茶を飲むことができる休憩施設や体験メニューもそろっています。まさにグリーンティリズムの推進には最適の地域です。「茶寿会」のメンバーが茶摘み体験やランチバイキングができる施設を運営し、地域総力戦で魅力発信に努め誘客を図っています。
 宿泊施設が少ない中で、滞留人口を増やすことが地域経済の発展には不可欠です。
 近くにある石垣地域の古民家再生や商店街の魅力づくりも進められています。県民にいかに来てもらうかが当面の課題です。


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 ところで、この地域から30分あまりの場所には坊津があり、遣唐使が船出したところとして知られています。かつて、日本三津とうたわれ、古来仏教文化が伝来して栄え、また中世から続いた交易港として多くの船が出入りしました。 坊津は、酒造メーカーのCMの舞台に、また、風光明媚な「秋目」はショーン・コネリー、浜美枝が共演した「007は二度死ぬ」のロケ地になり、鑑真和上上陸記念碑近くに「007撮影記念碑」が建立されています。往年の映画ファンには訪ねてみたい地域です。
 ゆっくりと歩きながらいにしえ人の行き交った石畳や、石垣が残る路地、蔵屋敷等を巡るのも坊津の魅力です。 


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 番所鼻一帯は、鹿児島市から知覧、指宿からのルートに加え、坊津に出かける人の休憩地点としての位置づけができます。観光客に境界はなく、知名度の高い地域とも連携し、ルート上立ち寄りたくなる地域としての更なるブラッシュアップが求められます。



 最後に、地域づくりには「よそ者、若者、ばか者」の発想が重要です。加藤さんのような都会で育った「よそ者」の視点での地域活性化が、今求められているのではないでしょうか。



          涼風の 曲がりくねって 来たりけり

                           ~小林一茶~

No.425 「第9回かごしま観光人材育成塾」の開催について~明治維新150周年を鹿児島の魅力発信の機会に~

2016年8月29日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


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 甲子園球場での高校生の熱い戦いも終わり、朝夕の涼しさに秋が近いことを感じます。
 えびの高原はススキの穂が色づき始め、出水市の上場高原のコスモスも後1カ月で花を咲かせるのではないでしょうか。
 熊本地震で大きな影響を受けた鹿児島の観光ですが、九州新幹線が通常ダイヤに戻り、利用客の動きも活発になってきました。「九州ふっこう割」や高速道路が安く利用できる「九州観光周遊ドライブパス」の導入もあり、これから九州各地の観光地は賑わいを見せるものと期待が高まります。


 鹿児島市内の「とんかつ」や「ラーメン」の専門店の前には、ガイドブックを持った若者たちが列をなしています。やはり街に観光客の姿があれば、活気が感じられます。
 9月に入ると、筑紫地区連合中学校の修学旅行が始まります。震災対策で市内の「維新ふるさと館」、「いおワールドかごしま水族館」、「平川動物公園」、「黎明館」が無料となり、自由散策で多くの生徒が入場してくれることを期待しています。


 ところで、九州新幹線全線開業から5年が経過して、新幹線は県民にも定着してきています。鹿児島にとって新幹線は大動脈であり、これからも持続的に誘客を図ることが問われています。2年後の2018年は明治維新150周年になります。
 鹿児島県にとって明治維新150周年は、他県よりプライオリティを発揮できる年にしなければなりません。


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 ところで、これから鹿児島が観光客誘致をいかに進めるか、取り巻く環境や課題について理解を深めるべく、観光アカデミー事業の一環として、「第9回かごしま観光人材育成塾」を開催します。
 地域づくりや情報発信の手法、世界文化遺産や明治維新150周年に向けての鹿児島の課題、先進地の取組を学ぶことで誘客に繋げる手法が学べるのではないでしょうか。


 講師と講座の内容について簡単に紹介します。

 第1講座は、県観光交流局の米盛観光課長が、「観光かごしまの現状」について講演します。県が取組んでいる事業の現況や今後の課題等についての講座です。熊本地震対策や4年後の東京オリンピック、国体の開催をにらんだ観光戦略の一端が語られるのではと楽しみです。


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 第2講座は、株式会社 トラベルジップ代表取締役 大泉敏郎氏です。現在、本県の観光サイト「本物。の旅かごしま」について、ご指導いただいているのが大泉氏です。大泉氏の指導・助言によりホームページへのアクセス回数は飛躍的に伸びています。
 今回は、「観光収入を増やす工夫と新規客&リピート客のバランス」について情報発信、また見たくなるホームページのあり方等について、革新的な提案がなされるものと思います。各自治体で広報や観光宣伝を担っている人には最適な講座と思います。


 第3講座は、沖縄観光コンベンションビューローの目島部長の「沖縄観光の実情や国内観光客の誘客・受入について」先進地としての革新的な取り組みが語られると思います。
 2018年度には「奄美・琉球」として世界自然遺産登録を両県で目指しています。両県の連携強化も求められています。


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 第4講座は、県の世界文化遺産総括監の田中完氏が「明治日本の産業革命遺産」の魅力について語ります。登録から1年が経過しましたが、県民にその価値が十分浸透しているとは言えません。観光客誘致にいかに取り組むか、課題について学びたいと思います。


 第5講座は、オフィスフィールドノート代表砂田光紀氏が「明治維新150周年に向けて鹿児島をどうデザインしていくか」と題して講義します。砂田氏は、いちき串木野市の「薩摩藩英国留学生記念館」を総合プロデュースされ、入館者数はすでに10万人を突破しています。明治維新150周年に向けて、夢のある楽しい話が語られるのではないでしょうか。


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 第6講座は、昨年の大河ドラマの舞台である萩市から萩市観光協会の岡本専務をお迎えして先進地の取組を語ってもらいます。今、「薩長土肥」連合で明治維新150年に向けて、共同宣伝や相互誘客を進めています。「花燃ゆ」の放映を機会に山口県には多くの観光客が訪れており、誘致の秘策が語られるものと思います。


 第7講座は、維新ふるさと館の特別顧問である福田賢治氏による「維新期の人材育成」についての講義です。薩摩の郷中教育やなぜ多くの偉人が育ったのか、興味ある話が聞けるのではないでしょうか。


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 第8講座は、鹿児島県漁業協同組合連合会の代表理事専務の宮内和一郎氏が「"いお・かごしま"魚食普及拡大推進の取組について」と題して、鹿児島の魚の魅力や消費拡大について、観光の視点から参考になる講義がなされるものと思います。


 人材育成塾の講師の方々は豊富な経験を持ち、それに裏打ちされた講義は、皆さんの活動に必ず役立つものと信じます。また、夜学塾は、参加者同志や講師陣とのコミニユケーションの場であり、講座で聞けないより具体的な話が聞けると思います。


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 地域づくり・観光地づくりには、まず人材の育成が重要と考えています。今まで人材育成塾を受講した方の多くが、地域活性化に努力していることは、鹿児島の観光にとって大きな財産となっています。
 地域資源を磨きストーリーを加えて旅行商品化し、どのような手段で情報を発信し、誘客に繋げることができるかが今問われています。
 全国的にDMO(Destination Marketing/Management Organization)設立の動きが活発になってきました。地方創生を担う人材が育って欲しいと願っています。


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 海外航空路線が増便され外国人が急増し、また、クルーズ船も過去最高となり急がれる受入態勢等の整備、熊本地震の影響で他方面に移った修学旅行の再誘致等、転換期を迎えている鹿児島の観光です。この講座が人材育成とさらなる地域活性化につながることを期待し、多くのことを学ぶ機会になることを期待します。



           親は子を 育ててきたと 言うけれど
           勝手に赤い畑のトマト

                        ~俵万智~


No.424 「奄美・琉球」の世界自然遺産登録に向けて~まず県民が奄美群島を訪れましょう~

2016年8月22日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


 奄美諸島は、鹿児島の南380~580キロメートルの海上に点在する島々で、奄美群島とも呼ばれて、奄美大島、加計呂麻島、請島、与路島、喜界島、徳之島、沖永良部島、与論島の8つの島があります。


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 世界的にもまれな亜熱帯性降雨林をはじめ、温帯林の特徴を残す山地林から河口域のマングローブ林、熱帯性植物からなる海岸植生、砂浜からサンゴ礁までバラエティーに富んだ景観美を示しています。環境省は「奄美・琉球」の世界自然遺産候補地として、奄美大島、徳之島、沖縄本島北部、西表島の4島を軸に対象地域を検討しています。
 早ければ2017年度に国連教育科学文化機関(ユネスコ)へ推薦し、2018年度中の世界自然遺産登録を目指しています。


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 奄美・琉球が世界自然遺産に登録されると、県内では屋久島に次いで2箇所目となり、鹿児島県の知名度が飛躍的に上がるのは確実です。国内では白神山地(青森、秋田県)、知床(北海道)、小笠原諸島(東京都)に次いで5件目の世界自然遺産登録地となります。
 また、昨年7月、「旧集成館事業」等3件が「明治日本の産業革命遺産」として世界文化遺産に登録されており、鹿児島県は現在2つの分野の世界遺産を持つ唯一の県です。


 日本で最初に世界自然遺産に登録された屋久島は、その後観光客は増え続け、2007年度には屋久島への入込客が40万人を超え最高となりました。ここ3年間(2012年~2014年)の屋久島への入込客数は30万人前後で推移していますが、今でも日本人が行きたいNO1の世界遺産となっています。(首都圏のエージェントの調査による)
 また、縄文杉登山は、登山家の憧れの地として人気が定着しています。


 一方では、登山者の増加に伴い縄文杉の展望デッキ、登山道やトイレなどの整備は常に必要で、植生の荒廃、し尿処理問題等が大きくクローズアップされています。
 現在、入山者に対する入山料の徴収が検討されており、来年以降実施されると思います。やはり山の自然を守るためには、受益者負担で協力を求めていくことが好ましい取組と思います。自然保護と観光振興の狭間で屋久島は、世界自然遺産の島を守りながらいかに経済的価値を求めていくかが問われています。
 また、旅行エージェント等を通して、募集段階での自然保護の遵守等の告知徹底が必要です。


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 奄美群島はこれから「世界自然遺産登録」に向けて、エコガイドの養成や登録制度、自然を守る取組等、屋久島を参考に進めていく必要があります。「世界自然遺産登録の意義」や「観光客増加への対応」等地域住民への細かい情報発信も求められます。
 長い年月をへて育まれた奄美群島の豊かな自然、「アマミノクロウサギ」等貴重な動植物の保護とともに、観光客への自然保護に対する意識向上、地域住民との共生をいかに図っていくかが問われています。


 また、沖縄と差別化したPR戦略が求められます。奄美は手つかずの美しい海や森林地帯が多く、多種にわたる動植物が生息していることから、自然の生態系を保護しながら観光客にいかに見せるかが重要です。
 また、春先は本土に比べて花粉が少ない島であることから、ヘルスツーリズムの推進も欠かせません。 


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 名瀬港は大型クルーズ船の寄港が容易であり、登録後は外国人観光客が増加することから、受入体制の充実も求められます。
 奄美群島は、すでに世界自然遺産に登録されている「白神山地」、「知床」に比較すると、温暖な気候に恵まれ1年中行くことができます。また、「小笠原諸島」は飛行機の定期便がなく、東京から船で24時間かかります。同じ離島でありながら奄美大島と徳之島は、飛行機の定期便もありアクセス的には優位性があります。


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 ところで「世界自然遺産」に登録された際には、その効果を奄美大島と徳之島の2島にとどまらせるのではなく、群島全体にメリットをもたらすことが重要です。県外の方だけでなく、多くの県民も奄美群島の位置や魅力を知りません。まず県民が訪れて奄美群島の魅力にふれて欲しい。
 また奄美群島出身者の県人会は、関西、関東、鹿児島等多く組織されており、その人たちを通じてのPRもお願いしたい。
奄美群島が一体となり魅力をPRして、群島の知名度アップと経済的浮揚に繋げる必要があります。DMOの設立も予定されており、機能強化がまず求められます。


 大陸、琉球、日本文化の接点に位置した奄美の島々には、多彩な伝統文化、風俗、歳時、食文化などが残り、旅人を楽しませてくれます。伝統的祭りである八月踊りは、太鼓のリズムに合わせて唄い、観光客も踊りの輪にすぐ入ることができます。


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 また、各地に残る島唄は、集落に伝わる物語を唄にしたもので、どこか哀愁漂う旋律は心に響きます。奄美の島々は、今まで大きな開発がされず、「金作原原生林」、「井之川岳」、「昇竜洞」、「犬の門蓋」、「百合ヶ浜」等手つかずの自然が残る貴重な島であり、都会の人にとってはまさに秘島です。加計呂麻島は、映画「男はつらいよ」の最終ロケ地に選ばれました。


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 小生が始めて奄美大島を訪れたのは47年前でした。当時1500トンクラスの船は名瀬港まで12時間かかりましたが、デッキまで人があふれ、美しい海に憧れて若い女性層が奄美群島を訪れていました。
 現在、成田空港からLCCのバニラ・エアが就航し、大都市圏から気軽に行けるようになりました。奄美群島の各島間、また沖縄と奄美群島を結ぶ航空運賃の低廉化も実現しています。


 世界自然遺産登録後は、年代層を問わず世界各国から多くの人が奄美群島を訪ねることが予想されます。周到な準備を進めたいものです。
 世界自然遺産登録が奄美に大きな変化をもたらすとともに、交流人口が増大し新たな産業や雇用が生まれます。県民あげて盛り上げをはかりたいものです。 



            夏の月 薄らにかかり 砂浜の
            貝の葉めきて なつかしきかな

                      ~与謝野晶子~


No.423 夏休みの行事は子供の成長を育む~ラジオ体操で早起きの習慣を~

2016年8月8日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


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 お盆が近づき、空港や駅は家族連れの姿が目立ちます。今年は「九州ふっこう割」が導入され、宿泊地にもようやく客足が戻っているという感じです。
これから帰省と旅行を兼ねたファミリー層が一段と多くなって欲しいと願わずにはいられません。また、熊本地震で落ち込んだ観光客を回復させるためには、秋以降の旅行商品の売れ行きが気になります。


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 参議院選挙も終わり世の中が落ち着いたことから、熟年層の旅行需要を取り込むことが重要になっています。
「九州ふっこう割」は熊本県と大分県の割引率が高く設定されており、鹿児島としてはどちらかの県を周遊ルートに入れることで、旅行商品の値ごろ感が出てきます。特に鹿児島にない「祭り」や「自然景観」等を入れることが必要ではないかと思います。


 例年になく猛暑が続き、電気店のクーラーの売り上げが順調とのことです。やはり日本は四季がはっきりしており、その季節の普通の姿が経済活動にも良い傾向として表れると感じます。
冬は寒く夏は暑い方が、経済活動はうまく回転していくように感じられます。


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 ところで、毎年夏は節電の必要性が叫ばれていますが、クーラーを付けっぱなしにして寝ている家庭が多いと思います。昔は扇風機だけでクーラーのある家は少なく、田舎の家では虫対策として、蚊帳を吊って寝ていました。
家族全員で蚊帳の中に一緒に寝て、朝起きると自分が反対方向に動いて寝ていたことに気づき、思わず笑い出したものです。苦しいと言うより家に温かさがあり、どこの家庭でも見られた光景ではなかったかと思います。


       垂乳根(たらちね)の 母がつりたる 青蚊帳を
       すがしと居寝つ  たるみたれども
                          ~長塚節~


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 ところで、朝6時過ぎになると、私の住まいの真向かいにある松林に囲まれた公園から、小学生の元気な声が聞こえてきます。
「全国の皆さんおはようございます。」とラジオから流れるかけ声とともに、付き添いの親や小さな子供まで一斉にラジオ体操が始まります。私もベランダ越しに子供の動きに合わせて、一緒にラジオ体操をするのが毎朝の日課となっています。


 親の実家に帰省した都会の子供たちも参加しており、故郷の夏休み行事を楽しんでいるようです。子ども達は体操が終わると記録簿にチェックを受け、公園で遊び、PTA係の誘導で横断歩道を渡り、家路に急いで帰ります。地域の皆さんの協力体制が、子ども達の朝のラジオ体操を支えていると感じます。親たちが頑張れば続けられる夏休みの行事ではないでしょうか。


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 我々の小学生のころは、どこの地域でも毎朝見られた光景でした。集落単位で広場に集まり、先輩と一緒にラジオ体操をしたことが懐かしく思い出されます。体操が終わると、記録簿にスタンプを押してもらい、夏休みも終わりに近づくと皆勤賞をもらうことが何よりも楽しみでした。今では集団でこのようなラジオ体操をする姿は珍しくなりましたが、子ども達の夏休みの思い出づくりに役立ち、朝のすがすがしい空気に触れることで早起きの習慣も身に付くものと思います。残したい日本の原風景がそこにあります。


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 世間では「いじめ」や「校内暴力」、「親子の争い」等が問題になっていますが、子供の頃から集団生活の中での規律や支え合う心、我慢する心を育むことは大事なことと思います。
また、お盆には故郷に帰り先祖の墓に一緒に手を合わせて、先代からずっとつながっている命の大切さを教えることは、大事な経験にもなります。


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 子供たちが多くの体験を味わうことが成長の糧となります。夏休みも後半ですが、海水浴、親子サマーキャンプ、合宿等に積極的に参加し、思い出づくりの一つに加えませんか。

皆さん今年の猛暑を、乗り越えましょう。



        子供らが 鬼ごとをして 去りしより
          日ぐれに遠し さるすべりの花
                        ~島木赤彦~
*鬼ごと「鬼ごっこ」のこと


次回のコラムは、8月22日になります。


No.422 「九州ふっこう割」事業で鹿児島を元気に他県との連携も誘客につながる

2016年8月1日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


 熊本地震により、県内の宿泊施設や観光施設などはキャンセルが相次ぎ、地域経済に大きな影響を落としています。
 観光庁では、九州への観光客を早急に呼び戻すため、国内客などを対象とした割引旅行商品の販売を旅行会社と連携して行うことを発表しました。


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 「九州ふっこう割」旅行商品造成事業の助成金(補助金)は、Ⅰ期として7月1日から9月30日、Ⅱ期は10月から12月となっています。
 旅行需要期である夏休み及び秋の旅行シーズンの開始後、初期段階での需要回復を加速するため、7月及び9月を中心に思い切った割引率の設定が可能となっています。
 九州7県のうち、熊本・大分両県の割引率が大きく、鹿児島県にとっては、旅行商品価格面から考慮すると、2つの県と連携した商品企画も重要になるのではないでしょうか。


 通常ダイヤに戻った九州新幹線は最速で、新大阪から3時間42分、広島から2時間21分、博多から1時間17分で、観光客誘致には大きな武器となります。
 観光客の楽しみは地域の食であり、農業県かごしまにとっては、観光客との接点を増やし購買を促進することが、地域に大きな経済効果をもたらします。
 食のイメージは、観光客の心を惹きつける重要な要素であり、「本物。鹿児島県」を前面に旅行需要喚起を図ることが一番必要と感じます。 


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 今、観光客が求めているものは、地域のオンリーワンの情報です。「今だけ、ここだけ、あなただけ」の情報をタイムリーに発信して行くことが重要であり、商品企画に活かさなければなりません。


 各自治体の取組も活発になっています。人口減少や高齢化、産業や経済の低迷などで地域の活力の低下が顕著となっており、その打開策として観光振興による交流人口拡大に力を注いでいます。DMOの立ち上げやトップセールスの展開など誘致競争も熱が入ってきました。地域資源を磨き積極的に旅行会社に売り込んでいただきたい。


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 たとえば、出水市には、毎年秋から冬にかけて1万羽を超えるツルが飛来し、縁起の良いツル見学に毎年多くの観光客が訪れていますが、最近では、「着物を着て武家屋敷散策」がメディアでも取り上げられ、地域資源を活用した新たな取り組みとして注目を浴びています。今回の旅行商品に是非オンリーワンの企画として売り込んで欲しい。
 また、滞在時間を増やし地域に経済効果をもたらす取組として、グルメやスイーツ、お土産品等新商品の開発が求められています。


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 新幹線の時間短縮効果を活かし、いかに遠くに行かせるかも課題であり、その仕向け地は離島や大隅地域と考えています。
 珍しい地形がみられる甑島、世界で一番美しいといわれるロケット基地のある種子島、世界自然遺産の島屋久島、そして平成30年度に世界自然遺産登録を目指す奄美群島です。


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 特に種子島は、高速船だけでなく、定期便のない地域からチャーター便を活用した利便性のある商品企画が、遠隔地の割高感払拭となります。夏は海や登山など離島の魅力を体験できる絶好の機会です。また、種子島、屋久島は指宿と連携した取組が欠かせません。
 大隅地域は、錦江湾を渡るということがアクセス面で大きなネックですが、食や九州本島最南端佐多岬の魅力をPRすることが不可欠です。


 「肥薩おれんじ鉄道」は熊本と鹿児島両県の人々の生活・文化をつなぎ、また、美しい田園地帯と東シナ海を望みながら走る列車は日本の原風景を提供し、旅情をかきたてる人気のローカル路線です。新幹線と観光列車の組み合わせは売りの一つです。
 おれんじ食堂やスイーツ列車への女性客、外国人のさらなる誘客が求められます。


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 東アジアから九州への入込観光客は、海外からの交通アクセスが充実している北九州・中九州方面がメインです。福岡から1時間17分で来ることができる鹿児島への誘客には、コストの軽減化が不可欠です。
 甑島、桜島、天然砂蒸し温泉、屋久島、奄美など他地域にない魅力や鹿児島の安全性について、富裕層などブロガー対策も欠かせません。


 観光客は施設の魅力ではなく、地域の魅力に惹かれます。観光は農林水産業、商業、工業、土木、建築、福祉、教育関連等多くの分野と関連があり、総合産業としての位置づけが必要です。


 県内全域で観光客を温かくお迎えするなど、地域総力戦で取り組む必要があります。観光で来られた方々が、「日本の中に鹿児島というすばらしい地があって良かった」、「また来たい」と感じられる魅力ある地域であり続けることが大切です。


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 九州新幹線全線開業から5年5ヶ月が過ぎましたが、熊本地震で一時不通となり、改めて新幹線の重要性に気付く事にもなりました。
人吉や天草との連携、黒川温泉や熊本城の修復現場視察と鹿児島泊など多彩な旅行商品が出てくることを期待します。
 また、今回の制度を活用して鹿児島を訪れた観光客が、いつもと変わらない桜島の美しい景観や、世界遺産、温泉、食、マリンスポーツ、トレッキング等で楽しんでいる日常の姿を、積極的に全国に向けて発信することが、鹿児島への流れを加速します。
 「九州ふっこう割」を広域に活用し、鹿児島の観光再生のきっかけにしたいものです。



       夏のかぜ 山よりきたり 三百の
                牧の若馬 耳ふかれけり
                       ~与謝野晶子~
 


No.421 故郷を誇りに思う人に~あなたの好きな街の魅力とは~

2016年7月25日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


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 入道雲が青空高く映え、本格的な夏の到来です。高校球児が待ちこがれた夏の全国高校野球大会も、まもなく阪神甲子園球場で開幕します。故郷の応援を背に、県代表の活躍に期待したいものです。


 先日鹿児島中央駅前の広場で、和歌山県から観光に来られたというご夫婦に、声をかけられました。 鹿児島は初めての様子で、「観光したいのですが、どこかお奨めの場所はありませんか」と尋ねられました。私は、「まず城山に行き、そこから鹿児島市街地と錦江湾に浮かぶ桜島の遠望を見てください。その後船で対岸に渡り、湯之平展望所からの桜島の豪快さと生きている火山の姿を見てください」と言いました。


 また、翌日のコースとして鹿児島の歴史を知ってもらうため、明治維新の原動力となった偉人を育んだ資料が展示されている「維新ふるさと館」や「仙巌園」をすすめ、そしてまち歩きの魅力を伝えました。シティビューに乗り市内の名所を巡ることもできますよと案内しました。県外観光客には、まず鹿児島市のシンボル桜島と歴史を知っていただくことが大切だと考えているからです。


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 仕事がら旅行先では地域のことを、よく自分の足で確かめるよう心掛けています。チェックイン前や早朝に時間があると散策を楽しみます。街並みや看板、観光地表示に自然と目が向きます。 良い景観や落ち着いて趣のある掲示板などはカメラに収めて、景観セミナーなどの勉強会で活かしています。早朝は人が少ない分、街の雰囲気がよくわかります。河畔でジョギングしている人から朝の挨拶が返ってくると訪れてよかったと思います。一方、ゴミが散乱している街もあり、がっかりすることも多くあります。やはり整備の行き届いている公園や、挨拶したら人の声が返ってくる街はうれしいですね。


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 ある日の電車の中での光景です。週刊誌を夢中で読んでいる30歳前後の母親に、5歳ぐらいの女の子が聞いていました。「ママはわたしのこと好き」と。すると母親は、「わかりきっていることをなんで聞くの」と強い口調で一言。子供は悲しそうな顔をしていました。子供に声をかけられたら強く抱きしめて、頬ずりしながら「世界で一番好きだよ」と言ってあげれば子供はどんなに喜んだことかと思いました。何気ない対応が子供の成長にとっては重要なことです。五感の大切さを学びたいものです。


 旅先で初めて降りた駅でタクシーに乗り、運転手さんに「観光したいのですが、どこかお奨めの場所はありませんか」と聞くと、「わが町には観光するような場所はありません」とそっけない言葉が返ってくると愕然とします。その町を訪ねたことを後悔し、最初から気が重くなります。せめて食の名店でも教えてくれれば、印象が違うのにと思うことでした。観光客が降り立つ駅や空港、タクシー、連絡バス等接遇の大切さが問われます。


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 全国1200軒の民家に宿泊しながら地域の生活・文化を研究し、民俗学者として知られた宮本常一という作家がいました。生まれ育った山口県周防大島の人々に見送られて故郷を離れるとき、父親からこれだけは忘れぬようにせよと、十カ状のメモを取らされました。 その中の三つを紹介します。


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 一つは、駅に着いたら街全体が見渡せる一番高い所へ登って見なさい。そして方向を知り、目立つものを見なさい。峠の上で村を見おろすことがあったら、お宮の森やお寺や目につくものをまず見て、家のあり方や田畑のあり方を見、周囲の山々をじっくり見ておくこと。そして山の上で目をひいたものがあったら、そこは必ず行って確かめることだと。駅や神社・仏閣など主要な施設がどのような位置にあるのか、その街の成り立ちを十分理解しなさいということかもしれません。


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 二つ目は、金があったらその土地の名物や料理を食べておくのがよい。その土地の暮らしぶりや生活の高さがわかるものだと。地域で受け継がれている食の大切さを教えています。
 三つ目は時間にゆとりがあったらできるだけ歩いてみることだと。多くの住民に会い、話を聞くことでいろいろなことが教えられると。歩くことで集落のつながり、家の造りや生垣、生業等が理解できるようになると。旅の暮らしの中で身につけた父なりの人生訓ではないでしょうか。着地型観光の参考にしたいものです。


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 みなさんは他県の友人に、わが町のお勧めの場所を聞かれたとき、何をまず紹介しますか。そのためには故郷の良さを自ら確かめることです。
住民がまずわが町を知り愛することが、観光客に満足を提供できる一歩になるのではないでしょうか。熊本地震の影響で観光客が激減しています。一人一人のお客さまを大事にすることは当たり前のことです。一期一会の心で観光客を迎え、また来たいと思っていただける鹿児島づくりに努力していきたいものです。


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夏河を 越すうれしさよ 手に草履

             ~蕪村~


No.420 平成30年の修学旅行誘致に向けて~教育旅行にふさわしい体験メニューを前面に~

2016年7月19日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


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 例年ですと、5月、6月は鹿児島中央駅のコンコースには中学生の明るい声が響き、関係者が横断幕で出迎えるなど賑わいを見せるのですが、今年は閑散としていました。
 熊本地震の影響でほとんどの学校が、他方面への変更を余儀なくされたことが大きな要因です。平成30年に向けて、鹿児島へ再び来ていただく努力がもとめられています。


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 ところで平成27年の修学旅行入込状況調査がまとまりました。
 本県への修学旅行等の入込状況は、学校数(延学校数)は724校で、延宿泊数の前年の751校と比較すると27校減少し、人数(延宿泊者数)は、96,700人で前年の100,799人と比較すると4,099人の減少となりました。
 地区別では、霧島地区、種子屋久地区がそれぞれ4,000人あまり減少となり、延宿泊者数の前年割れの大きな要因でした。口永良部島新岳の噴火、桜島の噴火警戒レベルのアップ、霧島の大型修学旅行受入施設の廃業等が影響しています。
 風評被害が無ければ、1万人は確保できていたのではと悔やまれます。


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 これからの鹿児島への修学旅行誘致の取組について述べたいと思います。
 まず自然災害に対する情報発信の在り方です。県内には桜島、霧島、口永良部、硫黄島、諏訪瀬島など多くの火山がありますが、常に話題になるのは桜島の動向です。
 桜島の情報については、大きな噴火があるたびに観光誘致への影響を憂慮しますが、桜島は常に噴火する山であることを前提に、日ごろからの防災訓練や最新の火山対策等を発信していくことが、重要と考えます。桜島には5,000人の住民が住み、噴火時でもいつもと変わらぬ生活を送っています。
 快晴の日に噴火した桜島の姿に観光客は感動します。噴火している姿が日常であることを積極的に発信し、一方では安全対策がきちんとなされていることもしっかりとPRしていかねばなりません。


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 次に、修学旅行にはTDLやUSJ、ハウステンボス等エンターテイメント性の施設が人気となっているのは事実です。鹿児島県にはこれらの娯楽的要素の施設はありません。
 その観点からこれからも鹿児島の売りとしては、「本物。鹿児島県」を前面に、修学旅行の本質にこだわることが重要と考えます。農業県第3位の鹿児島を全面に出し、県内全域での「農業体験と民泊」、ブリ、カンパチ、クロマグロ養殖生産量日本一を誇る漁業の「えさやり体験」、明治維新の舞台を巡る鹿児島市での「歴史学習」、知覧や鹿屋での「平和学習」、桜島や霧島での火山・防災に関する「自然学習」、世界自然遺産屋久島での「環境学習」、種子島や内之浦での先端技術を知る「科学学習」等他県に負けないカリキュラムになっています。
 最近は、クラスごとの選択メニューや複数のカリキュラムを取り入れる学校が増えています。学校のニーズに合うユニークな体験メニューの提供、また、受入側の安全面に対する意識を向上させ、体験学習における安全性を確保することも求められています。



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 平成30年は明治維新150周年になりますが、鹿児島県はどの県よりもプライオリティを発揮できる年です。偉人を育くんだ土壌や情報収集力、人材育成等他藩に先駆けた取組等を修学旅行誘致に活かしたいものです。
 また、集約列車活用による修学旅行について、直通列車を増やす等輸送体系の充実を求めていかねばなりません。誘致の重点地域として、京都府、大阪市、西宮市、姫路市、岡山市、広島市、山口市、呉市、福岡市、佐賀市など新幹線沿線地域の中学校連合をターゲットに営業展開していく必要があります。


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 農家民泊が人気ですが都会の生徒さんの多くは、家庭で親との会話が少なく、民泊先での農家の方々との温かい心のふれあいに涙する生徒が多く、子供達の情操教育にも役立っているのではと感じます。鹿児島でのもう1泊は、市内や温泉地でのホテル宿泊がほとんどです。農家民泊と既存の宿泊施設との摩擦が懸念されますが、新しい需要開拓という視点に立ち、「競争」と「協調」の姿勢が相乗効果をもたらすと思います。


 日本独特の学校行事の一つである修学旅行は、春と秋の2シーズンに集中していますが、分散化を進めることでより良い修学旅行が提供できるのではないでしょうか。
 筑紫地区はオフ期の9月に実施しており、29年まで18校が鹿児島を旅行先に選んでいます。しかも県内に2泊することから、宿泊代、交通費、昼食、入場料、おみやげ代を含めると、一人当たり30,000円程度の消費額が想定され、経済効果も1億円を超します。


 6月には関西地域のエージェントを行政、宿泊施設、観光施設と一緒にセールスを行いました。また、8月には全修協、日修協の主催で関西の先生方の鹿児島への招聘事業を行う予定です。
 関東地域からは飛行機利用が多く、従来鹿児島に来ている学校を訪問して、引き続きの来鹿を要請する予定です。
 また、学校PTAなどに出席して、直接父兄に説明する機会を設けてもらうよう学校側にも働きかけています。
 鹿児島の実情(自然災害への安全対策、修学旅行先としての魅力)をいかに保護者に伝えられるかが、復活の鍵と捉えています。


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 最後に、受入施設も大変苦労を重ねていることを理解していただきたい。到着すると、非常口の説明や貴重品を預かり、夜の見回りと息付く暇がないほど24時間安全面に配慮しています。また、学校によっては、翌朝までに生徒が持参した水筒にお茶を入れる作業が待っています。水筒を洗い、中に入れる作業は早朝から始まり大変な重労働です。しかも無料になっているのが実情です。生徒さんに、せめて宿泊施設での買物許可を与えて欲しいと思います。旅行エージェントも何とかご協力を願えればと思います。


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 今年鹿児島から行先を変更した学校について再度来てもらうためには、今以上の継続的な営業努力が必要です。修学旅行の誘致は熾烈を極めており、常に新しい情報の提供、鹿児島ならではの体験メニュー、おもてなしの心を提供しなければなりません。
 平成30年に向けて官民挙げて誘致に頑張りたいものです。


           風わたる 見よ初夏の あを空を
           青葉がうへを やよ恋人よ
                     ~若山牧水~


No.419 「六月灯」に誘われて~ふるさと意識が高まる夏祭り~

2016年7月11日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


           荒海や 佐渡によこたふ 天河
                         ~芭蕉~


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 鹿児島では7月に入ると、夏の風物詩「六月灯」が各地の神社やお寺で開催されます。盆踊りなどの行事が少ない鹿児島では、地域の人が集まりやすい夏の行事です。
 境内や通りに灯籠が奉納され、微笑ましい子供連れの家族、会社帰りのグループや御揃いの浴衣姿の若者が手をつないで歩き、時折心地良い夜風が吹き抜け、しばし涼に浸れます。8月上旬頃まで、各地の神社仏閣で日を違えてほぼ毎夜開かれています。


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 中でも鹿児島市の照国神社の六月灯は、7月15日、16日の2日間にわたって開催されます。境内には企業や商店街の奉納した大小1000個あまりの灯篭が献燈され、沿道にはたくさんの夜店が並び、毎年多くの市民、観光客で賑わいます。照国神社は島津斉彬公が祀られており、隣に並ぶ久光公、忠義公の銅像にも手を合わせたいものです。


 六月灯は長年開催されてきた祭りながら、地域の六月灯は県外観光客には意外と知られていません。また、旅行企画でも六月灯の見学が入ったツアーはほとんどありません。熊本地震で観光客が低迷していますが、割引券付旅行商品などで地域を訪れた観光客に、夜の楽しみとして是非おすすめください。
 新幹線も通常運行ダイヤに戻っています。観光客も地域の伝統行事に参加できる機会となり、夏の風物詩を肌で感じて欲しいと思います。


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 2年前に公開された「六月灯の三姉妹」映画も記憶に残っています。撮影場所はほとんどが県内で行われ、実際の六月灯のシーンがふんだんに登場します。ビデオでもう一度鑑賞し、近くで開催される六月灯にお出かけください。映画の主役になった気分に浸れるのではないでしょうか。


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   子供の頃は近くの神社の「六月灯」に出かけ、浴衣を着、親に連れられて、金魚すくいや綿菓子などを食べた懐かしい記憶はありませんか。
 特に子供の頃から地域の伝統行事に触れさせる機会を作ることは、必ずやふるさとへの愛着心を育て、郷土愛の構築に繫がると思います。


 ところで、日本各地には、博多祇園山笠、精霊流し、灯籠まつり、八月踊り、東北四大祭り、ねぶた祭り、郡上踊り、阿波踊り、よさこい祭り、おわら風の盆等有名な夏祭りがあります。伝統的祭りは、地域の人々の生活や風習に育まれ、いやがおうにも郷土意識が高揚する日本の行事になっています。
 また、8月の旧盆の時期をはさんだ夏祭りは、帰省の時期と相まって、懐かしい人との再会など感慨深いものがあります。


 しかし、地域によっては若者が少なくなり、祭りの開催そのものが難しくなっていますが、地域の守り神の象徴である神社・お寺では、集落の人総出で準備しているのが最近の祭りの姿ではないでしょうか。人口の減少は、地域の祭りの存続も危うくしているのが実情であり、なんとか後世に伝えていきたいものです。


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 県内でも夏から秋にかけて、「八月踊り」、「十五夜行事」、「アラセツ行事」、「川内大綱引き」「おはら祭り」、「弥五郎どん祭り」、「流鏑馬」など各地を代表する祭りが開催されます。
 最近の祭りは、厳粛な行事というよりも華やか行事になっており、屋台(縁日広場)、山車、特設舞台での歌謡ショーや、アニメのヒーローを中心としたキャラクターショーなどが行われています。
 祭りは子供や女性の出番を増やすことで、後継者の養成にもなり、また近隣の市町村にもPRし多くの人を集めることが、祭りの賑やかさを演出することになります。


 また、地域産品の展示即売会も開かれ、街が一体となり活性化の一翼も担いつつ、地域づくりにも役立っています。時代とともに祭りのスタイルが変わっていくのも仕方のないことです。伝統をいかに守って行くかが大切です。


 地域の活力が低下し、交流人口の拡大が不可欠となっています。伝統的祭りの開催は同郷の人が集まり、故郷を見直す良い機会となります。
 皆様も故郷の祭りに家族揃って出かけませんか。


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 最後に、富山市八尾町で毎年9月1日~3日に開催される「おわら風の盆」は、越中おわら節の哀切感に満ちた旋律にのって、坂の多い道筋で無言の踊り手たちが洗練された踊りを披露します。町内会の盆踊りが、今では全国的に有名な祭りになり約25万人の観光客が訪れます。
 高橋治の小説『風の盆恋歌』:新潮社版が発表されると「おわらブーム」に火がつき、石川さゆりが同名の歌謡曲を歌って、ふだんは人口2万人の街が観光客であふれ、隣県の宿泊地も満室になります。
 是非踊りの雰囲気を味わいにお出かけください。


No.418 明治維新150周年を活かす~大河ドラマ放映で鹿児島の魅力を伝える機会に~

2016年7月4日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 NHKの大河ドラマ『真田丸』が人気を博し、真田家ゆかりの地「上田市」及び周辺の観光地には多くの観光客が訪れています。これから夏休みを迎えることから、涼しい信州の地は人気となり、古戦場跡や歴史資料館には、山岳観光を兼ねて多くの観光客が予想されます。ドラマも半分が過ぎ佳境に入り、日曜日の夜が待ち遠しい人が多いのではないでしょうか。

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 鹿児島を題材とした大河ドラマは、1990年に放映された司馬遼太郎原作の「翔ぶが如く」が最初でした。西郷隆盛と大久保利通を主人公に、幕末の動乱期から明治維新誕生後の国造り等が題材となり人気を博し、その年、県の宿泊観光客数は900万人を超え、今まで最高の人員となっています。

 2008年には、鹿児島が舞台となる2作目の「篤姫」が放映され、多くの観光客が鹿児島を訪れました。

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 「篤姫」は、ホームドラマ風の演出が興味をそそり、親しみやすいキャラクターと相まって、国民的な人気ドラマとなりました。特に女性が歴史ドラマを身近なものとして捉え、視聴率アップにつながったと思います。
 ドラマでは、先見性に優れ、旧集成館事業を始めとして近代日本の将来を見据えた改革に取組んだ島津斉彬が、養女篤姫を徳川家に嫁がせる思いや、幕府との関係等が興味深く描かれていました。
 篤姫人気を支えた要因は、女性たちの支持があったからであり、また、温泉、食、自然、歴史等が魅力となり、旅行に行ってみたい地域に選ばれるきっかけになったのではないでしょうか。

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 また、小松帯刀や篤姫は今までその功績があまり知られていませんでしたが、大河ドラマの放映で脚光を浴びることとなりました。
昨年の朝ドラ「あさが来た」では、五代友厚が一躍ブームとなり、薩摩の新たなヒーロー誕生となりました。産業会館近くの公園の銅像前には、若い女性の姿が目立ちます。
 観光地のブームづくりには女性の支持が欠かせません。

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 大河ドラマの放映効果は県内の観光の随所に現れました。指宿の今和泉地区ではボランティアガイドが誕生し、多くの観光客を案内しました。今では指宿駅や宿泊施設でのおもてなし部隊としても活躍しています。
 地域全体で観光客を温かく迎える態勢が出来たことは、地域づくりへの大きな指針となりました。
 中央駅から歩いて5分の距離にある「維新ふるさと館」周辺の整備が進んでいます。列車の待ち時間に散策できるコースとして人気が定着しています。また、四季を通して、偉人誕生地周辺ではイベントが開催され、入館者の伸びにつながっています。

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 大河ドラマは1年間放映されるため、その舞台となった地域は知名度が上がり、旅行エージェントの商品にも取り上げられ、全国から多くの観光客が訪れます。今、鹿児島では、「翔ぶが如く」、「篤姫」に続く大河ドラマの放映について、要望活動を進めています。
 2018年が明治維新150周年にあたることから、大河ドラマ誘致を図るべく、維新誕生に尽力した偉人を輩出した薩摩の魅力を情報発信しています。薩摩の情報収集力、人材育成と登用、旧集成館事業の推進、「明治日本の産業革命遺産」の世界文化遺産登録と、鹿児島は話題が豊富です。

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 最後に、大河ドラマ誘致については、20001年から誘致活動を初め、2003年には県、市、経済界、誘致協等からなる「NHK大河ドラマを誘致する会」が発足しました。全国では30を超える都道府県が大河ドラマの誘致を進めており、誘致活動は熾烈を極めています。

 関係者でNHKに陳情に行くたびに、関連の資料を持参して鹿児島のPRを行っています。ぜひ3作目の大河ドラマを誘致し、鹿児島の観光を始め、地域の活性化につなげたいものです。官民あげての盛り上がりと受入態勢の充実が求められます。
 地域間競争は激化しており、しかも熊本地震の影響で各地の観光施設は厳しい経営環境に立たされています。常に新しい話題を提供し続けることが誘客にとって重要ではないでしょうか。
 懐かしい日本の童謡です。涼しい海を思い出してください。

               海
                日本の童謡・唱歌/作詞・作曲:不詳

   松原遠く消ゆるところ     白帆(しらほ)の影は浮かぶ
   干網(ほしあみ)浜に高くして かもめは低く波に飛ぶ
   見よ昼の海 見よ昼の海
   島山闇に著(しる)きあたり  漁火(いさりび)光淡し
   寄る波岸に緩(ゆる)くして  浦風軽(かろ)く 沙(いさご)吹く
   見よ夜の海 見よ夜の海


No.417 「薩摩藩英国留学生記念館」入館者10万人達成を寿ぐ~ストーリー性のある展示が人気に~

2016年6月27日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


          黄鶴楼送孟浩然之広陵
          黄鶴楼にて孟浩然の広陵に之くを送る
                       ~李白~

       故人西辞黄鶴楼   故人西の方黄鶴楼を辞し
       烟花三月下揚州   烟花三月揚州に下る
       孤帆遠影碧空尽   孤帆の遠影碧空に尽き
       唯見長江天際流   唯だ見る長江の天際に流るるを

『注釈』
我が友の孟浩然が西の地の黄鶴楼を去って花霞の広陵へと下って行く。
名残を惜しんで楼の上から見送ると、舟の帆はみるみる遠ざかりついには碧い空に吸い込まれてしまい、あとにはただ茫々たる長江が天の鏡に向かって流れているのを見るばかりだ。
※(参考)ビジネスマンが泣いた「唐詩」100選 :佐久協
「元二の安西に使いするを送る・・・王維」、「友人を送る・・・李白」とともに小生が大変好きな詩で、友人を心から送る詩です。


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 いちき串木野市の東方に、標高516mに達する冠岳があります。今から約2,200年前、中国の秦の始皇帝から命を受けた方士の徐福は、串木野の冠岳を訪れその景色の素晴らしさに、自らの冠を解いて頂上に捧げました。そのことからこの地を冠岳と呼ぶようになったとの説があります。また、霊峰冠岳は南九州古代山岳仏教発祥の地であり、真言密教開祖の地であります。串木野市制施行50周年を記念して、2,000年に石像としては日本一の徐福(高さ6m)が建立されました。桜の咲く4月や紅葉の11月頃は特に山の景観が美しくなり、多くの観光客が訪れます。


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 ところで串木野駅から10分の位置にある羽島海岸に造られた「薩摩藩英国留学生記念館」の入館者数が5月21日、オープンから1年10カ月で10万人の大台に達しました。
 多くの小・中・高校生も遠足等で訪れており、海外への夢を掻き立ててくれているのではないでしょか。



 当初目標は年間2万3千人であったことから、当館の人気ぶりが伺えます。船出した羽島の地は関係者以外にはあまり知られておらず、地理的にも不便な位置にあることから集客が懸念されていました。市・観光協会・商工会議所等の前広なPR戦略、貴重な資料、ストーリー性を前面に出した展示が共感を呼んでいるものと思います。また、博物館の総合プロデューサーである砂田光紀さんの手腕が大きく貢献していると思います。


 留学生たちの足跡をたどる時、忘れてならないのが、元治元年(1864年)6月に開設され、科学や軍事に関する人材育成のために設立された洋学校「開成所」です。
 島津斉彬が在任中に計画し、蘭学者石河確太郎に設立準備を命じていたものです。


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 元時冶2年(慶応1年、1865年)薩摩藩は、国禁を犯して15名の若者と随行者4名を英国に派遣します。「薩摩藩英国留学生」と呼ばれており、優秀な人材が集まっていた開成所からほとんどが選抜されています。
 留学生たちは、帰国後は官界、実業界で活躍し、近代日本の礎を築く活躍をします。
 畠山義成は、帰国後「岩倉使節団」にも招集されました。その後文部省に出仕し、東京開成学校(現在の東京大学)初代校長として、日本の大学の基礎作りに貢献しています。
 町田久成は、維新改革の流れの中で、多くの美術品の破壊や海外への流出を惜しみ、博物館事業の重要性を認識し、東京帝室博物館(後の東京国立博物館)の初代館長に就任しました。


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 森有礼は中国大使や初代文部大臣を務め、教育制度の改革を行いました。
村橋久成は、戊辰戦争の際砲隊長として活躍し、その後北海道開拓使となり、サッポロールの生みの親として知られています。鹿児島にサッポロビールのファンが多いのもうなずけます。
 留学当時13歳と最年少であった長沢鼎は、その後イギリスから渡米し、生涯をアメリカで過ごし、広大なぶどう園の経営とぶどう酒製造に尽くし、ワインの帝王と称されました。鹿児島県民にも「ナガサワワイン」として親しまれています。


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 随行者の一人である五代友厚は、初代大阪商工会議所会頭に就任し、商都大阪の経済発展に寄与しました。NHKの朝の連続テレビ小説「あさが来た」では、五代ブームが起こるほどの人気ぶりでした。大阪商工会議所の玄関には彼の銅像が立っていますが、鹿児島市内の産業会館前の公園にも銅像があり、若い女性ファンが訪れカメラに収めています。


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 ところで2018年は明治維新から150周年という節目の年になります。
明治維新の立役者となった偉人を多く輩出したのが薩摩藩です。薩摩藩中興の祖と言われる島津忠良公がつくった「いろは歌」や、「郷中教育」という薩摩独特の教育システムも青少年の人材育成の源といったと言えます。その精神は今でも十分活かされています。
  鹿児島城下では、西郷隆盛、大久保利通、小松帯刀らの偉人を輩出していますが、その要因は第11代薩摩藩主島津斉彬の情報収集力、先見性、人材発掘と人の登用ではなかったのではないかと思います。


 日本へのインバウンドが昨年2千万人を超え、今年に入ってからも昨年以上の伸びとなっています。日本は少子・高齢化時代に入り、地域の活性化にはインバウンドによる交流人口の拡大も不可欠です。


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 一方、海外に興味を示さない若者が増えているのも事実です。県民が海外の生活や文化を経験することは重要なことであり、視野を広めるべく、若い内に海外に出掛ける仕組みづくりや海外でのカリキュラム取得支援強化等の必要性を痛感します。
 海外修学旅行やホームスティの積極的な推進、留学生の受け入れ拡大や日本文化の海外への発信等も求められます。夏休みになると、各市町村では青少年の翼、姉妹都市交流等の海外派遣事業が盛んですが、これらの事業に参加した者が学校の選択やその後の社会人生活に役立っていること等、海外派遣の重要性を語りついでいく必要性も求められています。


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 最後に、「旧集成館事業」等3つの構成資産が、「明治日本の産業革命遺産」として世界文化遺産に登録されました。2018年は、薩摩が日本の近代化に果たした役割を世界にPRできる絶好の機会です。薩摩藩英国留学生の偉業を学ぶことで、人材育成の大切さを知る機会にもしたいものです。
 「薩摩藩英国留学生記念館」では10月24日まで、五代友厚に関する特別展が開催されています。羽島のボランティアガイドさんも来訪者を温かくお迎えし、地域ぐるみの活動が定着しています。


 「薩摩藩英国留学生記念館」10万人達成は一つの通過点であり、これからも留学生の足跡を多くの人に伝え、羽島地域が常に話題となるスポットであり続けることが求められています。



         君が田と 我が田と並ぶ 畔ならぶ
         我が田の水を 君が田へ引く
                           ~良寛禅師~

No.416 震災対策のお得旅や割引付旅行プラン等の有効活用を~家族旅行や暑気払い旅行に~

2016年6月20日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

          噴水が 輝きながら 立ち上がる
          見よ天を指す 光の束を
                    ~佐々木幸綱~


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 鹿児島市役所前にある「みなと大通公園」の入り口には、平らな面に数十の穴があけられている一角があり、そこは定期的に水が上がる噴水となっています。
 柵が無いため下着姿で子供たちは水の出る近くまで行き、ゆっくりとちょろちょろ上がる噴水や、時々高く上がる噴水に戯れて楽しそうです。噴水の傍では、母親が日傘をさしてハラハラしながらわが子を見つめています。


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 海が恋しい季節となりました。あと1か月で夏休みです。かつて夏休みは家族で海水浴に出かけ、海や隣接するホテルのプールで泳ぐ親子の姿がよくみられましたが、最近では海で泳ぐ子供たちの姿もあまり見られなくなっています。


 夏休みの体験は、幼い頃の思い出として脳裏に焼き付いています。海や野山など自然の中での体験は、子供の成長にとって大切ではないでしょうか。



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 間もなく梅雨明けです。熊本震災はいまだに九州の観光に大きな影響をもたらしています。九州新幹線は臨時運行ですが、宿泊パックや夏休み企画商品がエージェントの店頭に揃ってきており、夏休みにかけて回復が期待されます。
 政府も国を挙げて九州観光の復活に努めており、メディアでのPR活動や「割引付旅行プラン助成制度」が、いよいよ7月からスタートしますので夏から秋に向けて鹿児島観光の回復への期待が高まります。
 また、海外向けの大規模な誘客プロモーションも実施され、正確な情報発信がなされますと一時落ち込んでいるインバウンドの回復も期待されます。


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 ところで熊本震災で減少した観光客をいかに取り戻していくか、これから地域にとっても、各施設も大きな課題です。梅雨が明けると最大の需要期である夏休みが近づくことから、誘致対策を急がねばなりません。


 鹿児島県では、6月1日から「鹿児島お得旅事業」が展開されています。また、エージェントとタイアップした商品企画や地域で使える商品券を提供している自治体もあり、各施設も工夫を凝らしたアイデアの提供が必要です。
 夏休みのターゲットは家族・ファミリー層の取り込みです。ほとんどが、列車、マイカーやレンタカーが中心となります。家族が動きやすく、今まで訪ねていない場所など興味をそそる地域資源の提供も不可欠です。


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 今の旅行者の多くは、インターネットを検索して情報を入手し、予約サイトで宿泊する地域や宿を選択しています。また、宿泊先だけを決めて、翌日の行程は宿に着いてから決める方もいます。宿泊先のフロントで「半日自由時間があるのですが、どこかお奨めの場所や食事店はありませんか」などを尋ねる旅行者が多くなります。情報サイトの充実や宿泊施設の従業員の方々は、地域を知ることの大切さが問われています。


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 夏は家族向けの企画を充実させなければなりません。近くに子供の自然体験ができる場所があると喜ばれます。星空観察、昆虫の採取できる山林、トレッキングのできるコースの設定、海辺での貝殻集めなどが興味を引き付けます。
 また、観光客を宿泊施設だけにとどめるのではなく、地域の生活文化にふれさせることも大切です。昔懐かしい縁日の開催や夜家族で出かけられる地域のイベントも不可欠です。
 そして感動のおもてなしは、リピーターとなり、あらたな客を創り出します。


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 ところで、宿泊者の1年間の動向を霧島地区で例にとると、宿泊者の県内シェアは7月が45%、8月は35.8%を占めています。九州全体では5割を超えており、地元や隣県、九州内にもっと目を向けるべきです。指宿地区も同様なことが言えます。


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 県内には28の有人離島がありますが、隣県からの誘客にも力を入れるべきです。サンゴ礁や白砂の海岸が続く海、原生林などは夏が最大の売りです。豪快なサーフィンのできる種子島や奄美の海岸、屋久島の世界自然遺産、縄文杉や宮之浦岳登山、奄美群島の多様な生態系は来訪者を魅了します。離島の最大の魅力は本土にないスケールの大きい大自然であることです。また、奄美では居酒屋などで食事していると、六調や島唄の調べにいつのまにか仲間にひき込まれていきます。


 若者にはお手頃な価格で行ける船旅がお奨めです。満天の星空を眺めながら夜を楽しんでいると、明け方には名瀬港に着きます。国立公園と世界自然遺産登録を目指す島としての魅力が若者の心を捉えるものと思います。


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 夏休みを最需要期と捉え、県内や隣県から誘客を図るため、「鹿児島県お得旅事業」や国の「割引付旅行プラン助成制度」を有効に活用して積極的な商品造成と情報発信に努め、地域活性化につなげたいものです。
「暑気払い」や「農閑期のお疲れツアー」、「同窓会」、「帰省した人との親睦旅行」、「周年旅行」などにもいかがですか。


 これから九州観光の再生を図るべく、7県が連携し大幅な割引付旅行プランを活用した事業が推進されます。鹿児島県としては、昨年実施した「国内旅行やインバウンドに対するお得旅キャンペーン」を上回る成果を残したいものです。
*旅行商品及び割引等については各エージェントにお問い合わせください。



          椰子の実 島崎藤村~「落梅集」より~

      名も知らぬ遠き島より   流れ寄る椰子の実一つ
      故郷の岸を離れて     なれはそも波に幾月
      旧の樹は生ひや茂れる   枝はなほ影をやなせる
      われもまた渚を枕     孤身の浮き寝の旅ぞ
      実をとりて胸にあつれば  新たなり流離の憂ひ
      海の日の沈むを見れば   激り落つ異郷の涙
      思ひやる八重の潮々    いづれの日にか国に帰らん

*伊良湖岬に滞在していた柳田國男が、浜にたどり着いた椰子の実の話を島崎藤村に語り、その後藤村がその話を元に創作したものです。渥美半島の西端の田原市日出町に記念碑があります。ぜひお訪ねください。

No.415 旅のパートナーは異日常を共有できる人と~あなたは誰と旅しますか~

2016年6月13日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 2015年の国内旅行に於ける日本人の延べ宿泊者数は4億3,908万人泊(前年比+2.4%)でした。総人口で割ると日本人は1年間に3.1泊していることになります。
 円安等により海外旅行から国内旅行へのシフト、北陸新幹線の開業、TDLやUSJの人気が続いていること等があげられます。せめて日本人が毎年5泊すれば、さらなる大きな経済効果が見込めます。

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 一方、日本人の海外旅行者数は、1,621万人で前年比95.9%と2年連続で前年を割り込んでいます。円安やパリ、中東での相次ぐ爆発事故などがあり、旅行の手控え感が顕著となり、特にヨーロッパへの海外旅行者が減少したことなどがあげられます。

 日本へのインバウンド客の伸びは、日本人の海外旅行者数を大きく上回りました。特に東アジアの中国、韓国、台湾、香港からが顕著ですが、ここ数年タイ、マレーシャ、シンガポール、インドネシア等からも増加傾向にあります。
 LCCの就航、免税品目と店舗の拡大、日本食の世界無形遺産登録、日本文化への憧れ、安全・安心な国日本の魅力が浸透していることなどがあげられます。

 しかし鹿児島にとっては多くの課題があります。急激な個人旅行拡大に対応すべく外国語表記の充実、市中でのコンシェルジュ機能の充実、通訳案内士の確保、爆買だけでなく観光も加えたツアーの充実、北九州方面から南九州を周遊できる割引切符の導入などです。

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 また、東名阪に集中している外国人を九州まで誘致するには、大都会にない九州の大自然や温泉、食、農村や海の美しい景観、観光列車などオンリーワンのPRが必要です。
 九州観光推進機構や各県と連携して、九州の明確なコンセプトを前面に出しPRすることで、ゴールデンルートとの差別化が図られると思います。

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 ところで先日初めての海外旅行で、ハワイ旅行から帰った夫婦を訪ねました。楽しかった土産話を聞くためです。
 ところが、旅行の話になると奥様が開口一番「二度と主人とは旅行には行きません」と不機嫌な様子、会話を聞いていると夫と旅行に行っても楽しいことは一つもなかったと。

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 「朝早くからごそごそ起きだして、日本宿に泊まったかのようにお茶を催促する」、「観光地では、見学することもなくバスから下車せず寝ている」、「フリータイム中に二人でショッピングに行くと、退屈そうで早く済ませろと急がせる」、「夜は日本から持ち込んだ焼酎を部屋で晩酌して、外食に行く気配もない。」等々日本での生活とほとんど変わらず、異国情緒を楽しむ気配も感じられなかったという奥様の怒りが良く理解でき、これでは何のために海外旅行に行ったのか今後が思いやられます。

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 旅行業界で各種のアンケート調査を取っていますが、「誰と旅行をしたいですか」の問いには、夫婦を含めて「家族」で旅したい人は8割を超え、夫婦で過ごしたい方は4割を占めています。人気の高い「家族」との旅ですが、その中でも特に「夫婦二人で」と答えた人を性・年代別で見てみると、特に男性は50代以上になると急激に「夫婦二人で」旅をしたいという気持ちが高まるようです。20代~40代では男女の差はありませんが、50代以上では、男性に比べると女性は「夫婦二人で」旅をしたいという人が少なくなります。
 「夫婦の旅」では「リラックス・ゆったりする旅」や「結婚記念日、ハネムーンの場所をもう一度訪ねる旅」、「家族の絆を確かめる」などがその理由となっています。
夫が妻の考え方を理解し、歩調を合わせられるかが、楽しい旅のポイントではないかと思います。

 仕事がら研修会に講師として参加する機会が多いので、参加者によく質問することがあります。「退職したら誰(妻または夫、子供、友人、一人旅)と旅をしたいですか」と。 年代で多少の違いはありますが、男性の8割は妻と行きたいと手をあげ、女性は子供、友人と続き、御主人との旅行を望む人は3割にも満たない。

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 女性は年齢を重ねるごとに自立心が強く、自分の時間を大切にし、積極的に行動し旅を楽しみたいという傾向が表れています。夫婦旅行の行先は女性が主導権を握り、日頃の趣味や買物などの消費行動にも表れています。
 昼間のバイキングレストラン等を見ると、女性の姿であふれています。
男性は定年を迎えると、家に引きこもりがちで、妻への依存心が一層強くなる傾向があるのではないでしょうか。

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 高度成長期に粉骨砕身働き、社会を支え、バブル崩壊期には人事面で苦労を強いられた多くの「団塊の世代」が退職し、これから旅行を楽しんでもらいたいものです。
 自分が家族を支えたという自負心が一番強い世代ですが、世の中の仕組みやものの考え方についても弾力的にならないと生きていけません。
 今消費を握っているのは女性です。女性に支持されない地域や商品は淘汰されていきます。旅行においても、自分の我を通すのではなく「牛に引かれて善光寺参り」のごとく妻の行動に合わせる余裕が欲しいと思います。

 そう言う自分もなかなか実践できませんが、海外旅行に誘ってもらう条件は、「異文化を理解する余裕を持つ」ことかもしれません。
 1年に数回は旅に出て、国内外の観光地を訪ねてはいかがですか。もちろん夫婦同伴で。

         「夏の思い出」江間章子作詞 中田喜直作曲

160613_10.jpg 夏が来れば 思い出す はるかな尾瀬 遠い空
霧のなかに うかびくる やさしい影 野の小径
水芭蕉の花が咲いている
夢見て咲いている水のほとり
石楠花色に たそがれる はるかな尾瀬 遠い空
*6月下旬~7月中旬ごろの尾瀬沼の遊歩道や水芭蕉の群落が目に浮かびます。

夫婦で一度は訪れたい場所です。


No.414 田舎の魅力にふれる旅~古民家でおもてなし~

2016年6月6日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 日置市の吹上浜公園の東側に、九州最大級の「ホテイアオイ」の群生地である正円池(しょうえんのいけ)があります。6月の正円池は、池全体が緑と薄紫色に埋め尽くされます。

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 植物名の由来は、葉柄の部分が七福人の布袋様のお腹に似ているために、その名がつけられたと言われています。
 ホテイアオイは水草の一種でミズアオイ科、別名はウオーターヒヤシンスとも呼ばれ、原産地はアメリカです。開花最盛期は6~7月ですが9月頃にも花を咲かせます。池の小さな橋を渡り山際の遊歩道を進み、気が付くと少しずつ湖面の情景が変化してきます。
 浮草は風が吹くたびに移動するので、刻々と湖の姿を塗り替えています。毎日その姿を変えるため、一日として同じ風景は見られない。ホテイアオイの花言葉は「揺れる想い」。
 ゆったりと時間の流れに身をまかせませんか。これからが花の見ごろです。
                参考:かごしまよかとこ100選:四季の旅より

 ところで、日置市は吹上町、日吉町、伊集院町、東市来町の旧4町が合併してできた市で、鹿児島市に隣接し人口は5万人弱で、美しい自然と歴史、温泉、窯元等が各地に点在する魅力ある市です。

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 吹上地区には古民家を改築したレストラン、窯元、雑貨店、カフェ等が揃い日本の原風景を眺めながら食事を楽しむことができます。「砂の祭典」の見学の帰りに、今話題の古民家レストランを訪ねました。
 国道から3分あまり、きれいに整備された田舎道の先に、100年以上前に建てられた民家の屋根がくっきりと表れます。「ひる膳 多宝庵」は、改装の設計をオーナー自ら担当しました。周りの山々の緑と水が張られた田んぼの景観が美しい山村の雰囲気を醸し出しています。門構えはお寺の山門を感じさせるような大きな屋根があり、木の板に書かれた店の名前が来訪者を迎えてくれます。

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 部屋に入ると予約客でほぼ満席の状態で、9割が女性で男性は夫婦連れのみです。
10種類近くの料理が個別の皿に盛られ、器はほとんど日置市内の窯元から調達しているとのことでした。人気のランチは、旬の野菜をたっぷり使い、地元の食材にこだわり、健康に配慮されていると感じます。

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 店内には、日置市内の工房でつくられた小物、茶わんやコーヒーカップ、花瓶、刺繍など女性が手に取って買いたくなる手作りのものが並べられています。
 古い柱時計、障子の格子にはめ込まれた和紙で作った四角い刺繍、光沢のある黒い柱、 天井には頑丈な梁が幾つも使われており、建物の歴史を感じます。

160606_10.jpg  経営者の泊さんの話によるとほとんどの日が女性で、滞在時間は1時間30分ぐらいで3時間いるグループも珍しくないとのことです。消費の主役はやはり女性です。
 庭から望む小高い丘は伊作城跡で遊歩道が整備されています。中心に本丸である亀丸城跡が残されています。伊作島津家の居城があった場所で、10代当主忠良、関ヶ原の戦いで知られる義弘、その兄弟の義久・歳久・家久がここで生まれ育ったと伝えられています。
 今も城内には数十の椎の巨木がそびえ、島津家の重要な人物たちが生まれ育った荘厳さを表すかのようです。

 車で3分の場所にある吹上温泉は、西郷隆盛や小松帯刀も療養に訪れた湯治の湯として親しまれてきました。「みどり荘」や「中島温泉旅館」等は常連客も多く、温泉通には知られた秘湯です。食事の後に是非お立ち寄りをお奨めします。

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 日置市で忘れてならないのが、薩摩焼の発祥の地であることです。関ヶ原の戦いで名を馳せた島津義弘が、朝鮮出兵の際に連れ帰った陶工の手で窯が開かれ、薩摩焼が誕生しました。1603年、陶工たちは苗代川(美山)に移り、薩摩焼を伝承、今なお多くの窯元が並ぶ、県内随一の陶芸の里となっています。司馬遼太郎の小説「故郷忘じがたく候」は美山が舞台で、14代沈寿官氏が登場します。美山の町は整備され多くの県外観光客も訪れます。また、市内には24の窯元があり春と秋には窯元祭りが開催され、陶芸ファンが多く訪れます。

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 今回訪ねた古民家レストランは吹上にありますが、日置市内には道の駅、農水産物の直売所、工房、パワースポット、廃線巡り等一日楽しく過ごせる場所が点在しています。
 日置市商工会では「ひおき古民家遊楽里めぐり」というパンフを作り、訪れた方に相互のお店の良さをPRしています。地域に経済効果をもたらすことを第一に各店が取り組み、地域の結束でリピーターを創出しています。地域づくりの要諦です。

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 海が青く輝き、日本三大砂丘の吹上浜が夏の訪れを感じさせます。熊本地震の影響が続き県内の観光地は苦戦しています。みなさまが住んでいるところから近い場所に、楽しい工房や小物店、オープンカフェ等が次々に誕生しています。地元メディアも地域の特色ある食事店や匠の人などを良く取り上げて、放送しています。

 田舎の魅力は自然だけでなく、美味しい食、人の心の温かさが随所に残っていることです。人が動くことで地域は元気になります。日置市を訪ね、日本の原風景にふれてください。必ずや感動を覚える機会に遭遇できると思います。

          ふるさとを 離れて行く日
          もう一度 確かめたくて 乗る市内バス
                        ~俵 万智~

No.413 ありがとうの言葉を素直に言える人に~自ら感動を享受できる心を養う~

2016年5月30日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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打ちしめり あやめぞかをる ほととぎす
鳴くや五月の 雨の夕暮れ

新古今和歌集 ~藤原良経~




 旅先でおなかの調子が悪くなり「掃除中でしばらくお待ちください」と張り紙があるのに、無理にお願いして駅のトイレを借りた経験をした方は、少なからずおられるのではないでしょうか。
 用を済まして出てきたときに、「ありがとうございました」と素直に挨拶はできましたか。
 掃除をしている職員の方から、「清掃中にすみません。大丈夫ですか。気を付けて旅を続けてください」と言われ恐縮し、つい「ありがとう」と言う言葉を忘れてしまいがちです。

 人は日々の行動において「ありがとうございます」と素直に言える習慣を身に付けていると、とっさのときに挨拶として出てくるのではないでしょうか。

 先日、幼稚園児を連れた妊婦の女性が、電車に座っていました。次の電停で杖をついた老人が電車に乗ってきました。すると園児は隣のお母さんに相談することもなくさっと立って、老人のもとに行き手を引っ張って自分の席に案内していました。
 お年寄りからお礼を言われて、園児は逆に「ありがとう」という言葉を発していました。

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 お母さんもびっくりした様子でしたが、乗り合わせている人たちは園児の行動に驚いて席を立つ人や、気まずい顔をしながらも、そのまま座り無関心の人と様々でした。
 おそらく園児は、お母さんからお年寄りや体にハンディキャップがある人がいたら、車内では席を譲るように教えられているのだろうと感心して見ていました。


 このように親切な行動がとっさにできる人がいる反面、無関心の人がいるのも残念です。
 朝夕の通勤の中でもよく見かける風景です。二人掛けの椅子に足を開いて一人で席を占領している若者、窓側にかばんを置き通路側に座って席を譲らない学生、横にハンドバッグと袋を置き化粧をして席を占領している女性、二人椅子のまん中で居眠りをしている婦人等腹立たしい光景を数多く見受けます。

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 旅先でもいろいろな人に会います。駅の案内所、タクシードライバー、バスの運転手、宿泊先のメイド、観光地でのボランティアガイドなどその対応は場所によって、千差万別です。
 見知らぬ土地では、そこに住んでいる人の案内や応対が旅の印象を左右します。駅や空港に着いてまず尋ねる場所は案内所です。親切に案内いただくとその後の旅が楽しみですが、不愉快な対応をされると何しにこの地に来たのかと後悔が先に立ちます。

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 観光客が受けた接遇についてのクレームがよく新聞の投書欄に掲載されますが、常識を疑う行動に驚かされます。観光に従事している人は、お客様から仕事をいただいているという考え方に立つべきではないでしょうか。
 お客様に特別に接するのではなく通常の接し方で十分です。当たり前のことを当たり前に応対することが求められます。

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 人から親切にされ、また、感動した場面に遭遇したら心からその喜びを表すことが大切だと思います。
 人からうれしい言葉をかけられたら素直に喜ぶ姿勢を示すことで、相手にそのことが伝わります。感動体験を自分だけに終わらせるのではなく、相手にまた、お返しする心を育まねばなりません。
 感動体験を多く経験した人間は、心豊かな人となり相手も尊敬し、周りに人が集まります。そのことで自分も成長していくのです。

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 交通機関を利用して降りる際、駅の改札口の人、社内外での清掃会社の人、新聞配達、郵便や宅急便を届けてくれる人たち等日々接している人に心から「ありがとう」の言葉を発してもらいたい。
 「ありがとう」はすばらしい言葉です。
 職場や家庭で「ありがとう」の言葉が自然に出てくる環境を育てたいものです。

 桃李(とうり)もの言わざれども 下(した)自(おのずか)ら蹊をなす
                            ~史記より~

No.412 イベントの設定日に配慮を~経済波及効果を考える~

2016年5月23日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 雨に洗われた山々の緑が、一段と美しく感じられる時期となりました。先日まで青空に元気よく泳いでいたこいのぼりの姿が消え、垣根ではアジサイの花の蕾が雨を待ちこがれています。
 例年は、毎日鹿児島中央駅で関西からの中学校の修学旅行を出迎えますが、今年はその機会がほとんどありません。熊本地震の影響で、行先変更や延期等でキャンセルになっている学校が多いことがあげられます。

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 余震が落ち着いたら、また、鹿児島へ戻っていただくように関係機関への営業強化や情報提供の必要性が求められます。なんといっても修学旅行は、学校のもっとも大きな行事であり、一度に多くの学生が動くことから数年がかりの準備となります。
 受け入れ施設では3年前から予約が入り、一般団体と比較して人員減や取り消しが少なく、経営的にもありがたい顧客であるだけに、今回の地震は大きなショックです。
 今回の地震の影響は、九州全域に及んでおり、国を挙げての支援が必要です。

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 県内はこれから梅雨に入り、宿泊施設ではお客様が一番少ない時期に入ります。かつて鹿児島では、田植えが終わると、農家の人々は近隣の温泉地に出かけて疲れをいやす旅行が盛んで、温泉地は賑わっていました。
 しかし、農家も「ハウス栽培」や年間を通じて収穫される野菜等が増え、農閑期が少なくなっています。温泉地では農閑期の人たちを待つ姿勢から、新しい顧客の開拓が必要になっています。
 食やスイーツに工夫を加えて、滞在時間の延長や周辺の魅力を盛り込んだ企画を作り、近隣の職場や老人クラブ、女性グループ団体、同窓会組織など比較的動きやすい組織への提案も必要ではないでしょうか。従業員の多い宿泊施設では、社員の家族割引などの施策を提供することで、新たな顧客紹介にも繋げてほしい。

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 梅雨が明けると、最大の需要時期である夏休みがやってきます。夏休みは、家族の帰省、お盆、伝統行事、花火大会等が開催されることから宿泊者が一番見込める期間です。
 夏の観光の目玉と言えば花火大会であり、日本三大花火大会は、「秋田県大曲全国花火競技大会」、「茨城県土浦全国花火競技大会」、「新潟県長岡まつり大花火大会」で、首都圏などから多くの観光客を集めます。県内の花火大会は、7月から8月の後半の夏休みに集中しています。全国的に見ると9月、10月、11月、12月のオフ時期に開催しているところもあります。
 花火大会にあわせて近隣の観光地を巡る人が増えています。しかし、花火大会は日程が集中するため数カ所の大会しか見ることができないのが現状です。

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 宿泊施設を多く抱える観光地では、花火大会の開催日が他の行事と重ならないよう配慮いただければ、宿泊客が分散され助かります。
 お盆の近くに設定すると、帰省客とお盆休暇等でファミリー層が増え予約で満員になっているので、花火大会目当ての観光客を泊めることができず、地域にとっても大きな損失です。例年、お盆時期について宿泊施設は集客に苦労しません。むしろそのあとの週末の集客に苦労しています。

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 大会を移動させることは、お盆時期に続いて、花火大会見学目的の顧客を開拓でき、新たな経済効果が見込めます。
 宿泊者が見込める時期を外して、開催日を決定する勇気も必要です。夏はインターハイや中学校体育大会、海のイベント、伝統行事と比較的早めに日程が決まります。
今年の開催日の変更は厳しいと捉えていますが、来年以降についてはイベントの開催等を調査して、日程の再考も必要ではないでしょうか。

 一方、花火大会やマラソン大会等は公的空間を利用し、公共交通機関、医療態勢等に大きな影響があることから各機関との十分な調整も必要です。
 各機関の意見を調整し市民生活に重大な支障がなければ、期日の設定は弾力的に考えていただきたい。特に今年は震災が発生したこともあり、観光地、宿泊施設、飲食店、農水産業者等多くの分野に影響が出ています。
 被害を少しでも取り戻すべく、今年は魅力的なイベントの創出も考慮しなければなりません。

 熊本地震から40日が過ぎ、被災地も復興に向けて動きだし、熊本の人気キャラクター「くまもん」も活動を再開しました。観光にも灯りが見え始めています。
 県内への観光客が激減し大きな打撃を受けたのも事実ですが、幸いにも施設への被害はありません。鹿児島の元気な姿を伝えていくことも、熊本を勇気づけます。
 県内各地の花火大会では、夜空に咲く夢と希望を与える大輪のお花畑を提供し、観光客を喜ばせたいものです。

 最後に規制概念に囚われず弾力的な考え方で取り組むことが、今後の地域活性化には必要ではないでしょうか。

        紫陽花や  はなだにかはる  きのふけふ
                         ~正岡子規~

No.411 現状を正しく伝えることが第一~熊本支援に皆様の協力を~

2016年5月16日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

        人間に与える詩    ~山村暮鳥~

   そこに太い根がある   これをわすれているからいけないのだ
   腕のような枝をひき裂き 葉っぱをふきちらし
   がんじょうなみきをへし曲げるような大風のときですら
   まっ黒な地べたの下で
   ぐっとふんばっている根があると思えばなんでもないのだ
   それでいいのだ そこにこの壮麗がある
   樹木をみろ 大木をみろ
   このどっしりとしたところはどうだ
                   『風は草木にささやいた』より

  「熊本地震」から1ヶ月が過ぎ、新幹線や九州自動車道が復旧して、関西や北部九州からの観光客も少しは戻りつつあります。しかし今回の地震により、九州各県の宿泊施設の予約取り消しは約52万泊にもなり、観光業界のみならず地域経済に大きな影響を与えています。県内では105,035泊のキャンセルが発生しています。 (調査対象は県内の157施設:4月14日以降から5月11日までの報告分)

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 修学旅行への影響も大きく、余震が続いていることや関西からの新幹線集約列車が運行できないこともあり、延期もしくはキャンセルになっていることなどがあげられます。修学旅行は行先が1回変わるとふたたび戻ってくるのに数年かかることもあります。
 対策としては、まず大阪にある「日修協」や「全修協」を訪問することが重要です。両協会は関西地域の校長会と連携して、各学校の行先の調査、修学旅行の輸送計画、日程調整など担当していることから、「かごしま」が通常と変わらない状況を伝えて、引き続き鹿児島を旅行先として選択していただくよう要請を行わねばなりません。

 先日観光関係者が集まった会議の中で、地元エージェントの皆様から、県内の学校も行先として中九州や北部九州が多いことから、変更を余儀なくされているという実情も寄せられており、早急な対策が迫られています。宿泊施設ではゴールデンウイーク以降予約状況が前年同期に比べてかなり下回っています。

 県内で地震による取り消しなどの影響を受けていないのは奄美地域です。やはり消費者は安全を第一に考えて行先を選定しており、今後も予約が増えると想定されます。大阪、成田、羽田から直行便があり販促を強化する必要があります。世界自然遺産登録を目指している地域であり、沖縄と違った魅力を企画に取込む必要性があります。

 今九州観光推進機構では国内外へのPRを強化していますが、自治体や各観光関連団体でも現状を的確に伝えることが求められています。昨年5月の口永良部島新岳の噴火の際は、12km離れた位置にある屋久島は噴火の影響はほとんどないにもかかわらず、観光客が減少しました。

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 桜島の噴火警戒レベルが4(避難準備)に引き上げられた際も、観光客が訪れる場所は規制地域外にあるにもかかわらず、風評被害に苦しみました。
 鹿児島市と桜島は錦江湾をはさんで一番近いところでも4km離れていること、また、桜島には約5000人の人が住み、常に噴火と対峙しながら生活をしていること等県外の方々は実情をほとんど知らず、影響が大きかったと思います。今回の地震による鹿児島の自然被害はほとんどなかったという事実は正確に伝えることで、消費者への不安感を取り除くことになります。

 2つの大動脈が復旧し、鹿児島へ観光客が来ることができるアクセスは整いました。鹿児島の通常の姿を伝えるべくイベントや四季折々の自然の姿、市民生活などメディアやSNSなどを通して発信していくことが大切です。

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 また、昨年世界文化遺産に登録された「旧集成館事業」を中心とする「明治日本の産業革命遺産」は、薩摩の先見性を伝えるすばらしい観光資源です。日本の近代化の礎ともなった施設を、改めてPRする時期ではないでしょうか。

 エージェント向けには、海外や国内の主要都市圏を中心に説明会を開催しており、ある程度鹿児島の状況について理解は深まっていると思います。海外は現在4路線が就航していますが、日本での災害に敏感な上海とソウルに対して、観光庁、九州観光推進機構などと連携しより詳細な情報発信と関係者の招請活動が必要です。
 海外メディアの直接招聘や有力ブロガーによる発信を強めることも必要です。エンドユーザーにいかに鹿児島の真の姿を伝えるかが大切なことです。

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 これからの鹿児島は梅雨を迎え、観光客が減少する時期となります。一般の旅行が低迷している中で、特にメディアによる募集ツアーの集客状況の勢いが感じられません。心理的に鹿児島への旅行が敬遠されていることから、思い切った商品企画、価格等もカンフル剤となります。
 一方ではマイカー、レンタカーなどを利用する個人の観光客が増えていることから、それを促進する施策を計画しています。話題の観光施設や地域の食、直売店等立ち寄りたくなる情報も必要です。

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 ところで心配されていた筑紫地区中学校19校、4000名が今年も9月に鹿児島を訪れ、来年度も鹿児島に行くという連絡がありました。行程の変更はあったものの、予定通り実施されることになりほっとしています。校長会等に定期的に出席し、桜島の安全対策等も説明してきた成果だと捉えています。
 これからも、学校や父兄の皆様が心配する懸案事項に対して、資料等を配布することで鹿児島の魅力や安全対策などを理解していただく努力が欠かせません。

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 誘客活動は大都市圏ばかりが注目されますが、まず地元の方が出かけることで地域の魅力を知る機会にもなります。近隣の客は、リピーターにもなります。
 鹿児島県観光誘致促進協議会、旅館関連団体、各エージェントの組織を活用しこれから域内キャンペーンを推進します。各施設に「熊本地震」に対しての募金箱を設置しています。是非ご協力をお願いいたします。
 そのことで地域を元気にし、少しでも熊本県の支援に繋げられたらと願っています。

No.410 まず域内旅行で遅れを取りもどそう~影響は長引く、不退転の覚悟で~

2016年5月9日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 4月14日熊本地方でマグニチュード(M)6.5、17日には(M)7.3の地震が発生し、その後、阿蘇地方や大分県中部でも(M)5クラスの地震が起きました。鹿児島市内でも両日大きな揺れを観察し、地震の怖さを実感しました。
 国内では、1995年1月17日の阪神・淡路大震災、2011年 3月11日の東日本大震災以来の大きな地震で、熊本市周辺、南阿蘇地域で大きな被害が出ています。改めて自然の驚異に驚かされました。

 今度の震災により、博多駅と鹿児島中央駅を結ぶ「九州新幹線」が13日間、また、「九州自動車道」も15日間不通となり、2つの主要幹線のストップは地域経済に大きな痛手となりました。一日も早く遅れをとり戻したいものです。

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 九州観光推進機構では「九州は一つ」をスローガンに国内外での観光客誘致に取り組んでおり、今後も連携強化してPRに努めなければなりません。
 今回の地震で熊本城、阿蘇地域、湯布院といった九州を代表する地域が被害にあいましたが、広域の観光を考えると大きな痛手であり、今後南九州3県の誘致戦略も見直しが想定されます。

 県内の観光地は、震災による道路や建物などの崩壊はありませんでした。日頃と変わらない姿はきちんと発信していかねばなりません。
 九州各県を訪れる外国人観光客は、7割が東アジアの国々からですが、地震等の災害にはすぐに反応します。中華人民共和国駐福岡総領事館は、震災後熊本県への旅行見合わせ、九州の他の県には渡航に慎重を期すよう求める注意を喚起しました。鹿児島への影響も出てきています。 
 海外とは直行便が4路線あることから、SNSなど活用して個別に情報を発信することで、少しでも取り消しを減らせたらと思っています。

 例年だと本格的な観光シーズンを迎え、特に修学旅行生が動く時期ですが、キャンセルや変更が増えています。新大阪からの直通列車が完全に復旧することが不可欠であり、その際は引き続き鹿児島へのコースを選択してもらうよう働きかけを強めねばなりません。

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 オフ期への変更の場合は宿泊、運輸機関等の料金を割り引くなどの前広な対応が学校現場の信頼につながるのではないでしょうか。そのことが修学旅行実施時期の平準化のきっかけになるかもしれません。

 一方、一般の旅行先としては、当面九州方面を避けて、北海道、東北、北陸、沖縄、離島等になることが想定されます。
 鹿児島としては、手をこまねいて回復を待つことは許されません。県内の主要宿泊・観光施設は、日々取り消しが拡大し、このまま推移すると地域経済への影響が拡大します。地域全体の空き状況やイベント、直売店、旬の食などの情報発信も強化しなければなりません。

 大都市圏の東京、大阪とは飛行機の便数が多く、特に関東方面からは充実しており、商品造成がしやすい条件がそろっています。また、九州新幹線が復旧しJRのパック商品の販売が期待されます。

 また、県内には28の有人離島があり、福岡から屋久島と奄美大島、大阪から屋久島と奄美大島、羽田、成田から奄美大島へ、それぞれ航空便で結ばれており、誘客しやすい環境にあります。これからの季節、山や海の美しさが一番輝く時期であり、世界自然遺産の登録地と候補地があることや体験メニューも多くPRに事欠きません。

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 大都市圏からの航空路線を活かし、その後県内各地、離島に誘客できる強みも活かさねばなりません。他県と競合しない魅力が誘致につながります。
 関西からの誘客には、新幹線を利用した商品の遅れを取り戻すことを念頭に、「さんふらわあ」の活用も考えられます。志布志港から佐多岬や「鹿屋バラ園」、内之浦ロケット基地など大隅地域への誘客に活用したいものです。

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 地震が収束すれば、九州全体での誘客キャンペーンの推進も必要ですが、実行には時間がかかることが想定され、こういう時こそ県民の皆様の協力が必要です。
 2015年の鹿児島県内の宿泊者総数に占める九州7県の割合は約45%であり、福岡県が11%、鹿児島県民のシェアは21%です。県内の利用者が一番です。(85施設の抜粋調査)

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 域内旅行の機会を増やすことは宿泊者を増やすことになり、県民が地元の魅力を認知して、PR効果を発揮します。
 夏休み前までは厳しい状況が想定され、宿泊・観光施設では、県民の利用促進のため期間限定で何らかのサービスを提供したらいかがでしょうか。施設も自ら動かねばなりません。

 鹿児島県は南北600キロに及び、豊かな自然、多くの泉質を持つ温泉地、歴史、農水産物、2つの世界遺産、2つの宇宙基地、D&S列車など豊富な観光資源があります。

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 今回の震災の影響は、従来の水害、台風、桜島の風評被害等に比べて、はるかに大きいと捉えています。県、各自治体、観光団体が連携してこの危機を乗り越えねばなりません。エージェントの商品造成に対しては、コンパクトで売り易く、消費者へのメリットを明示するなど緊急に販売できる態勢づくりも考慮に入れる必要があります。

 熊本、大分県が完全復旧して始めて鹿児島の観光も再生できます。それまで県民が観光の持つポテンシャルを認識し、自ら情報発信に努めていただくことを期待します。



                旅上   ~萩原朔太郎~

  ふらんすへ行きたしと思へども   ふらんすはあまりに遠し
  せめては新しき背広をきて     きままなる旅にいでてみん。
  汽車が山道をゆくとき       みづいろの窓によりかかりて
  われひとりうれしきことをおもはむ
  5月の朝のしののめ        うら若草のもえいづる心まかせに。
                        「純情小曲集」より

No.409 日本の旅館文化を守ることの大切さ~旅館は厳しい経営環境に立たされている~

2016年4月25日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光



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 高度成長期からバブル期にかけて旅行は団体が主流で、貸切バスに揺られて名所旧跡を巡り、夜は温泉地の旅館に宿泊して宴会を楽しんだ方が多いのではないでしょうか。
 好景気に後押しされて、新しい施設のオープンや増改築が目立ち、宿泊者の増加は地域経済にとって大きな支えとなりました。



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 しかし、その後低成長時代が続き団体旅行も激減し、また国民の生活スタイルが洋風化して個室化が進み、日本の伝統文化を守ってきた日本旅館を利用する人が減少しています。
 現在日本旅館協会(2013年に国際観光旅館連盟と日本観光旅館連盟が合併)に加盟している施設数は、2015年で2991軒です。合併前の2012年には3855軒ありましたが、3年間で864軒も減少しています。
 大きな要因として、国民の旅行スタイルの変化に加え、宿泊者の減少や後継者不足による廃業、他の利用施設への転換、倒産などがあげられます。


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 全国の主要ホテルの2016年の平均客室利用率は、インバウンドが好調なこともあり79.2%の高利用率を確保しています。一方旅館は3名~5名の定員の部屋に、2名もしくは1名入っており、主要旅館の定員稼働率は36.0%であり、厳しい経営を強いられています。旅行形態は団体から個人旅行に変化しており、ホテルやビジネスホテルは、シングル、ツインと分けられそれぞれの料金体系が明確になっていますが、旅館は部屋の構造上、宿泊者数に合わせた料金体系を明確にすることが難しく、適正な料金の収受ができていないのが実情ではないでしょうか。
 旅館経営の厳しさがここにあります。ホテルに比べて人手がいるのは旅館です。それなりの料金を取らないと、なお一層経営は厳しいものとなります。


 また、ここにきて、旅館経営が厳しくなっている要因として、1995年に策定・施工された「建築物の耐震改修の促進に関する法律」が、大型施設の維持管理に大きな負担を強いていることです。2013年に二度目の改正が行われ、不特定多数の人が利用する建物のうち大規模なものについては耐震診断を行い報告することを義務付け、その結果が公表されることになりました。


 耐震診断が義務付けられるホテル・旅館は、1981年5月31日以前に新築工事に着手した建物で、階数3以上かつ床面積5,000平方メートル以上で、防災拠点建築物や避難路沿線建築物として指定された施設が対象です。


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 診断結果を報告することを義務づけていますが、耐震改修については努力義務とされています。診断の結果は行政がホームページで公表し、改修工事をした施設には日本建築防災協会が適合マークを交付することとなっています。
 修学旅行の受入に当たっては、学校からの入札の仕様書に「適合マーク取得の施設」と条件が加えられると、選定に有利に働くことから大きな武器ともなります。


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 一方では、適合マークのある施設が少ないことは、修学旅行を誘致する際地域全体での誘客が制限されることになり、地域への影響は大です。
 このたびの、熊本、大分両県で発生した大地震で、宿泊施設も大きな被害を受けました。耐震改修への義務化が強化されるのではと懸念されます。公的支援や一定期間の猶予等政治的決断が求められます。


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 旅館は夕方のチェクインから翌朝の出発まで、安全管理が求められます。また、夕食、寝具の準備、部屋の夜回り、朝食の準備などを考慮すると、一定の従業員の確保は不可欠です。しかし宿泊者は季節変動があり、オフ時期を考えると常用雇用の人員にも限度があるのも事実です。従業員が少ない中での営業力確保も大きな課題です。
 労働環境も夜が遅くて朝も早く、人が休んでいる間に仕事があることから、若者が集まりにくい状況もあります。待遇改善も大きな課題です。


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 消費者の皆様も旅館の現状を理解して、日本の伝統文化を守るべく、適正な価格維持にご理解をお願いしたいと思います。
 特にエージェントの皆様には価格設定にご配慮いただき、ウインウインの関係を構築していただきたいと願っています。旅館の応援者になることが自らの企業を維持発展させることになるのではないでしょうか。


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 外国人観光客が急増しており、その受け入れ態勢の充実には旅館文化も欠かせません。日本旅館は、湯茶の接待、大浴場、浴衣、料理によって違う皿、部屋に飾られる花、清潔な布団など日本独特の文化を提供しています。外国人にとっては一度にさまざまな日本文化に触れることができることから、和室旅館に宿泊することを好みます。
 大都市圏に集中している外国人を鹿児島に呼ぶためには、鹿児島ならではの体験メニューや食、おもてなしの心、温泉等旅館の素晴らしさを提供したいものです。


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 昔の文人墨客たちは、日本各地を旅行しながら旅館に滞在し、多くの作品を発表しました。尾崎紅葉、島崎藤村、夏目漱石、若山牧水、川端康成、横光利一、太宰治、林芙美子、与謝野鉄幹、井上靖、有吉佐和子らです。


 文豪志賀直哉は兵庫県にある城崎温泉にある「三木屋」という旅館を定宿としてこよなく愛し、そこで名作『城の崎にて』を生み出しました。
施設は木造3階建ての建物と300坪の庭園があり、古風な雰囲気の中にも風格を感じさせる創業260有余年の老舗旅館です。


 その三木屋という旅館を舞台に、今も変わらない城崎温泉の外湯めぐりの様子も描かれているのが次の有名な小説です。旅館の雰囲気と城崎温泉の情緒が絡み合い懐かしい光景が浮かんできます。日本の原風景には、旅館が似合います。



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 「城崎では彼は三木屋というのに宿った。俥で見て来た町のいかにも温泉場らしい情緒が彼を楽しませた。高瀬川のような浅い流れが町のまん中を貫いている。その両側に細い千本格子のはまった、2階3階の湯宿が軒を並べ、ながめはむしろ曲輪の趣に近かった。
 また、温泉場としては珍しく清潔な感じも彼を喜ばした。一の湯というあたりから細い道をはいって行くと、桑木細工、麦藁細工、出石焼き、そういう店が続いた。ことに麦藁を開いてはった細工物が明るい電燈の下に美しく見えた。
 宿へ着くと彼はまず湯だった。すぐ前の御所の湯というのに行く。大理石で囲った湯槽の中は立って彼の乳まであった。強い湯の香に、彼は気分の和らぐのを覚えた。
 出て、彼はすぐに浴衣が着られなかった。ふいてもふいても汗がからだを伝わって流れた。彼は扇風機の前でしばらく吹かれていた。そばのテーブルに山陰案内という小さな本があったので、彼はそれを見ながら汗のひくのを待った。・・・・・・・・・・・・・・」                     小説『暗夜行路』 志賀直哉著より

*休日が続くため、次回は5月9日に配信します。楽しい連休をお過ごしください。

No.408 最近の観光マーケットから~ゴールデンウイークは地元にめを向けよう~


熊本、大分 両県で発生した地震により、大きな被害を受けた地域・皆様に
心より御見舞を申し上げますとともに、一日も早い復旧をお祈り致します。


2016年4月18日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光



 先日まで賑わいを見せていた桜の名所は、嵐が去ったかの如く静かとなりましたが、新緑に覆われた木々は一段と鮮やかに感じられます。


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 今日本で一番人気の観光特急列車「ななつ星in九州」は、「肥薩おれんじ鉄道」を通るコースに運行がかわり、沿線の駅では思い思いの歓迎風景が見られました。これから毎週木曜日、鹿児島中央駅から串木野、川内、薩摩高城、阿久根、出水と北上していきます。薩摩高城駅では、東シナ海に沈む夕日を見て近くの海岸を散策してもらうために、30分間停車します。列車の豪華さとともに各駅でのおもてなしが注目されます。新しい観光の始まりです。


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 茶どころ鹿児島では間もなく新茶の季節となり、茶畑にあかねたすきに菅の笠をかぶった女性の姿も見られるようになります。南九州市の頴娃地域では、お茶摘み体験や茶を使った創作料理が楽しめるグリーンティーリズムが人気となっています。地域資源を活用し、都会では体験できない新しい取り組みが、来訪者に感動をもたらしていると感じます。


 ところで、鹿児島県の宿泊客数は、新幹線全線開業の平成23年からこの5年間毎年伸びていますが、鹿児島市内、霧島、指宿地域で、全体の65%を占めています。これらの地域から県内各地にいかに広げるかが重要であり、地域資源を掘り起こし磨き上げ商品化し、プロモートして誘客に結びつける取組が大きな課題です。従来の待ちの姿勢では顧客は離れていくばかりで、積極的な販促活動が重要となっています。


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 時間短縮効果や「鹿児島中央駅」が南の終着駅となっていることから、新幹線利用客は安定しており、その客を誘導すべく各自治体も交流人口を増やす取組に力を入れています。
 伝統食、直売所、古民家、古刹、世界遺産、ローカル鉄道など地域資源を活用した旅行商品化も進められています。
 昨年発生した口永良部新岳の噴火や一時的な桜島の噴火警戒レベル引き上げ等の影響は、まだ残っていますが、風評被害を一掃すべくPRや販促活動に力をそそがねばなりません。
 インバウンドは引き続き好調ですが、株価低迷等もあり国内景気は不透明感が漂っています。


 さらに今年は地震や参議院選挙やリオオリンピックがあり、国内旅行は停滞することが予想されます。一方北海道新幹線開業は、誘客にとってマイナスではなく北の大地に新幹線が到達したことを受け、プラス要素として捉えることが大切です。夏休みには日本列島を縦断する若者の利用が増えるのではないでしょうか。
 新幹線はこれから6年間新しい開業がない中で、南の終着駅がある鹿児島の魅力をもっと前面に出したPRを行い、常に新しい需要を開拓することも求められます。


 まもなく、ゴールデンウイークがやってきますが、今年は5月2日と6日を休むと10連休となります。この時期の需要はファミリー層が中心で、滞在先で何ができるかが顧客の選択肢の一つになることから、地域の旬な情報発信が求められます。


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 県内の宿泊施設を取材すると、5月1日、2日、5日、6日、8日の5日間は空室がある施設が多くみられます。多くの方がこれから休暇計画を立てるため、休みを取って行きたくなる地域の情報を提供しなければなりません。ファミリーで体験できるメニュー、平日や連泊することでのメリット等を明示することが宿泊者を増やすことになります。申し込みも間近が増えており、宿泊日の滞在メニューにメリハリをつけることも新たな需要を開拓します。(4月11日現在)


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 県民の皆様が地域の魅力を体感し、発信することが一番の誘客対策になります。鹿児島中央駅に新幹線が着くと観光客の目に飛び込んでくるのが、最近頻繁に噴火している桜島です。
 桜島の島民約5000人は、噴火時でも普段の生活を営んでいることを伝えていくことが安心感を与えます。桜島の噴火している美しい景観を、観光客に提供することが感動をもたらします。湯之平展望所からの景観や温泉堀体験、埋没鳥居等の火山の遺跡、寄り道クルーズ等の魅力も一緒に伝えたいものです。


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 昨年7月に「明治日本の産業革命遺産」が世界文化遺産に登録され、中でも長崎市の軍艦島はブームとなっています。全国8県11市23の構成資産はシリアルノミネーションであり、そのスタートは鹿児島の「旧集成館事業」です。「世界自然遺産」と「世界文化遺産」という2つの世界遺産を持つ唯一の県であり、県民自らが遺産の価値を理解して語らないと、観光客は増加していかないと思います。多くの県民に文化遺産を見る機会を提供しなければなりません。


 2年後には明治維新150周年を迎えます。明治維新150周年は、薩摩の偉人たちが果たした役割を考えると、鹿児島がその優位性を発揮でき観光も飛躍させるチャンスになります。


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 その2018年に照準を合わせ、鹿児島を題材にした大河ドラマの制作をNHKに働きかけています。朝の連続テレビ小説「あさが来た」では薩摩出身の五代友厚が人気となり、彼の誕生地や銅像は新たな観光地になっています。メディアの発信効果は多くの分野に経済効果ももたらします。
 2008年の大河ドラマ「篤姫」では小松帯刀にスポットが当たりました。大河ドラマは例年6月頃に発表される予定ですが、決定すれば、世界文化遺産の認知度向上、教育旅行の誘致に弾みが付きます。厳しい環境のなかで、次につなげたいという大きな想いがあります。


 一方では、観光PRの手法も多様化しています。パンフレット、広告、大都市圏での説明会、メディアの招聘事業、ホームページ等で鹿児島の魅力を発信してきました。 価値ある情報を拡散させ、ムーブメントをつくるためには、B→Bに加えてB→Cも重要になっています。個人のフェイスブックやブロガー、ツイッター、ユーチューブ、動画など多様な媒体を使ってコアの層への情報発信を強化していかなければいけません。作り手の思いやストーリー性を交えながら生活者が共感を抱く情報発信が求められています。


 また、最近の旅行スタイルは団体旅行から個人旅行にシフトして、滞在先では地元の人がよく行く飲食店や生活文化に触れることを望んでいます。「地理的表示保護制度」も導入され、地域がよりわかりやすい商品提供も求められます。県民の皆様がふるさとの良さに気づくことが重要であり、そのことが自信をもって遠来の客をおもてなしすることに結びつきます。


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 県内でもこれから、「志布志お釈迦祭り」、「2016吹上浜砂の祭典in南さつま」等様々なイベントが開催されます。そこに行けば何が体験できるのか、周辺の食の魅力や宿泊情報など「生活者にとって価値があり得する情報」が必要です。


 今年のゴールデンウイークは、地域の生活文化に触れる旅行の計画を立てませんか。鹿児島の新たな魅力に気付く機会になります。
 観光地では人が動くチャンスを逃さず、長時間滞在していただくメニュー提供や宿泊したくなる取組が必要ではないでしょうか。



             絶 句

    江碧鳥逾白 山青花欲然 今春看又過 何日是帰年


        江碧(みどり)にして 鳥逾(いよいよ)白く

        山青くして 花燃えんと欲す

        今春看(みすみす)又過ぐ

        何れの日か 是れ帰る年ぞ

                  ~杜甫~
※杜甫の代表作で不遇な時代、望郷の念を読んだ詩です。


No.407 名前が表す地域の良さとは~地理的表示保護制度を活かせ~

2016年4月11日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 海外旅行に行くと、各地の免税店で高級なブランド品を買う日本人の姿が良くみられます。旅の楽しみは食とショッピングが大きな要素です。
 ブランド(BRAND)とは、もともとアルプス地方で放牧されている羊などの家畜に押す「焼印」(BURNED)に由来しており、他人の羊と区別するために使われ、現代では他の類似品との違いを明確にするために使われています。生活者が他との比較において優位性を認める記号であり、かつその記号に象徴される世界観であると定義されています。


 ブランドはそれを利用する人たちがその価値を認め、広がりを持つものであり、認証マークやネーミングを作ったからといって、ブランドになるものではありません。また、地域ブランドとは、地域で作られる産品と地域そのものがお互いの相乗効果で優位性を発揮し、他との差別化が図られたものです。


 昨年の6月、農林水産省は風土や伝統が育んだ特色ある地域産品を保護することを目的に「地理的表示保護制度」をスタートさせました。全国的に見ると「○○牛」や「○○みかん」、「○○鶏」等は現在でも、地理的にわかり易い名前がついています。
今回の制度の目指すメリットは
 ① 地域ブランド産品として差別が図られて価格に反映することができます。地域ブランドの保護・活用により交流人口を増やし、農山漁村・地域の活性化につながります。
 ② 不正使用に対して行政が取締りを行うこととなっており、生産者にとっては、訴訟などの負担がなく、自分たちのブランド保護が可能となります。
 ③ 品質が守られることから、その産品のみが市場に流通することから、消費者の利益の保護にもなります。
 ④ 真の日本の特産品として海外展開に寄与できることから、農林水産物・食品の輸出促進にもつながります。
 等があげられます。


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 登録された産品には「GⅠマーク」がつけられ、産品の確立した特性と地域の結び付きが見られる真正な地理的表示産品で証となるものです。「GⅠマーク」は日本の地理的表示保護制度のものであることをわかりやすくするため、大きな日輪を背負った富士山と、水面をモチーフに日本国旗の日輪の色である赤や伝統・格式を感じる金色を使用し、日本らしさを表現しています。


 現在12の地理的表示産品が登録されています。
 皆様がよく知っている産品では、神戸ビーフ、夕張メロン、八女伝統本玉露、くまもと県産い草、三輪素麺、鹿児島の壺造り黒酢などです。
(2016年3月31日現在)


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 登録された「鹿児島の壺造り黒酢」は、健康食品として多くの製品に使われており、鹿児島県福山産として、桜島を背景に壺畑や生産者の顔がメディアで紹介されます。
 観光ルートにも入っていますが、多くの観光客に来訪してもらい黒酢を使った料理や江戸時代から続く作り手の想いを聴いていただきたい。そのことが持続的な販売拡大につながります。保護制度登録の優位性を活かすことが重要です。


 鹿児島においても、農水産物の登録品目を増やし、地域の活性化に繋げる取組が必要です。選ばれる地域・商品になるためには、地域でつくられる産品が、他にない独自性や優位性、品質保証、希少価値を発信しなければなりません。


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 また、生活・文化が凝縮された産品として価値を高めることで、生活者の心を捉え買いたくなるものになります。
 農業産出額第4位の優位性を活かし、鹿児島茶、六白の黒豚、桜島大根、種子島の安納いも等に加え、枕崎や山川のかつおの本枯れ節などが地理的表示を明確にできるものではないでしょうか。地域イメージを活かし誘客につなげる取組が求められます。


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 一方では、地域内でどのように流通させるかも課題であり、足元も固める必要があります。空港や駅の売店、ホテル、飲食店など多様な店舗での流通を図らねばなりません。コアの層にも価値ある情報を届けるWEBでの展開も欠かせません。情報を拡散させ、ムーブメントを起こし、生活者自らを動かすことが重要です。


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 また、今消費を引っ張っているのは女性です。「美」、「食」、「健康」「本物」、「痩せる」、「美味しい」などがキーワードです。評価は口コミで伝わり納得すれば消費につながります。
 作り手の生産にかける熱い思いを伝えることで共感を呼び、消費を促すことから、商品の物語化が求められます。売り方ではアナログ化された販売手法も買い手の心を動かします。


 一方で、人口減少や高齢化が顕著となり、家族構成は一人や夫婦だけの世帯が日本全体の60%を超え、消費のサイズは小さくなっています。かつて外国の産品に農薬が混入し、日本でも食の偽装があり、生活者は食の安全面には特に敏感になっています。


 一度に大量の買物より、少量で品質の良いものを買う傾向が強くなっています。何度も買ってもらうためには、商品の小分けや生産地、ストーリーを語るなど販売側の努力も必要になっています。


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 今回の地理的表示保護制度のコンセプトを活かすには、地域色をいかに出せるか、いかに安全・安心の良い商品を提供できるかです。農山漁村の活性化に結び付けるべく顔の見える表示を明確にしたいものです。



      汽車の窓 はるかに北に ふるさとの
           山見え来れば 襟を正すも
                    ~石川啄木~

※参考:農林水産省ホームページ:地理的表示保護制度
   

No.406 鹿児島版DMOの定着にむけて~地域づくりの中心に成りうるか~

2016年4月4日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 先週末は花見や夜桜見物で、楽しい時を過ごされた方が多かったのではないでしょうか。満開の桜も散り始め今週末には葉桜となりそうです。
 職場では新しい部署の歓迎会も終わり、本格的に新年度のスタートです。日本では年度初めに人の異動等もあることから送別会や歓迎会が開かれており、あらたな気持ちで業務をスタートできるのではないでしょうか。
 熱い思いをもって社会人になった若者も迎えました。先輩の皆様方の温かいご指導をお願いしたい。

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 鹿児島県の28年度予算では観光関係の予算が大幅に増額され、農業とともに基幹産業としての役割が益々期待されています。
 観光庁では、観光地域づくりの舵取り役を担う新しい法人が設立されることを期待しています。それは、「観光地経営」の視点にたって観光地域づくりを行う組織・機能「DMO」(Destination Marketing / Management Organization)です。

 「日本版DMO」には、マーケティングに基づく観光戦略の策定・推進や、地域内の団体や住民等の幅広い合意形成など、観光事業のトータル的なマネージメントを担う役割が求められています。登録候補法人は、広域連携DMO2件、地域連携DMO11件、地域DMO11件の24件が予定されています。(平成28年2月28日現在)

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 エリアでの観光地経営が求められる背景には、現在の旅行スタイルの変化があげられます。高度経済成長期からバブル全盛期頃までは団体旅行が主流であり、大都市圏での営業力を活かし旅行エージェントが多くの客を集客し送客してくれました。観光地や温泉地では慰安旅行や招待旅行客であふれ、連日多くのお客で昼夜賑わいを見せていました。発地型観光の典型的な姿であり、地域や観光関連施設は大きな努力を求められることもなく、旅行エージェント頼りで経営が十分成り立っていました。

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 しかしバブル崩壊後団体旅行は減少していき、旅行スタイルは個人旅行へと変化し、ニーズも複雑・多様化して、体験や交流を求める観光客が増加しています。
 エージェントだけの送客に頼るのではなく、地域自らが地域資源を活用した商品化をすすめ、情報発信し集客できる態勢づくりが求められてきています。着地型観光の推進が不可欠になっています。

 一方で、地域は旧来の受入態勢からなかなか脱却できず、着地型観光の推進は一部の地域以外を除いて、十分な成果が上がっていないのが現状です。また、急増している外国人対策も急がれ新しい地域づくりが求められています。

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 そこで、観光立国推進会議は昨年6月「観光立国実現に向けたアクションプログラム2015」を決定し、2020年に向けた訪日外国人の増加を目標に掲げ、その一つに「日本版DMO」の確立をあげています。
 「まち・ひと・しごと創生基本方針2015」では、「欧米の先進事例も踏まえ、望ましい機能を備えた日本版DMOを早急に育成する」こととされています。
 地域の風土・文化にあった組織をつくりあげることで、地域を活性化させるビジネスモデルの形成を目指すものです。

 今回の候補法人登録予定24件に、県内では「地域DMO」として(株)薩摩川内市観光物産協会があがっています。今後登録を目指す地域もありますが、これから登録にあたっての課題や方向性について整理したいと思います。

 現在、地域で観光業務に携わっている組織には、宿泊観光施設、運輸、商工業、農林水産業、観光協会、旅館組合、NPO法人等がありますが、それぞれが独立している組織であり、会費や自治体の補助金で運営されています。

 地域でのDMOの設立にあたり、各団体で行っている日々の活動を分析し、一つにまとまって地域づくりを行うことについて、多様な関係者の合意形成が重要です。
 地域全体の宿泊・観光施設の現状や観光資源など現在のマーケットを明らかにして、どのような需要があり、年間のいくらの収益が見込まれるのか経営の見通しを予測する必要があります。各種データの収集・分析を行うことで戦略策定も可能となります。マーケティングが次の行動を生み出します。
 設立当初は国の支援金等を受けられますが、組織の維持・発展には経営の黒字化が不可欠です。

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 次に人材の発掘です。新しい組織の設立には中核となる人材の登用が欠かせません。地域資源を磨きあげ新しい着地型商品づくりやプロモーション、ランドオペレーター機能の仕組みづくり、地域を俯瞰しコーディネートできる人材が求められます。特に設立から3年間ぐらいは組織の調整が一番大切であり、運営を軌道に乗せることでその後の展開も可能となります。
 そして地域の運営会社として新たな雇用を生み出すことが重要と考えます。

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 現在、地域の取組として成果をあげているのが、長崎県の小値賀町の「株式会社小値賀観光まちづくり公社」があげられます。都会から移り住んだ劇団出身のTさんが2004年に移住して取り組みを始めて、何もない島に年間宿泊客約1万4000人が訪れるようになりました。民泊受入70軒が生まれ、公社には20人の雇用も生まれています。10年間でIターンの移住者が120名にもなっています。地域資源を活用した滞在メニューが交流人口の拡大につながっています。アメリカの高校生も毎年訪れています。
 1人のリーダーが島民の意識改革と合意形成を取り付け、島の魅力を磨き、価値ある島へと変革させたのです。観光協会・自然学校・民泊組織を1つにまとめて予約を1本化したことが大きいと感じます。

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 これから県内でDMOを設立するには、離島が一番取り組み易いのではと感じます。入込客は、船や飛行機に限定されており、入口で観光客を把握しやすくワンストップで予約ができる仕組みづくりが可能になるからです。

 候補地としては、屋久島、甑島、与論島、奄美大島などが取り組みやすいと思います。屋久島を例に取ると、「世界自然遺産登録地」という価値が一定の入込客を呼び込みます。

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 登山ガイド、宿泊、レンタカー等の手配、オプショナルツアーの企画販売、来年から始まる入山協力金の徴収受託、特産品の販売など総合的にプロデュースすることで、一定の収益や雇用の確保も見込まれます。
 他の島も魅力ある観光資源があり、体験メニューの商品化もすでに進んでいます。
 またグリーンツーリズムに特化している地域は、教育旅行をすでに受け入れていることから、他の地域資源と組み合わせることで、組織の拡大が図られると感じます。

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 いずれにしても、持続できる組織であり続けるためには、十分なマーケティングと人材の育成、戦略的な組織運営が鍵となります。単なる組織統合と費用削減の観点だけでは、展望は開けないと感じます。
 DMOの登録はスタートしたばかりです。十分な議論を重ね将来的には、補助金なしで運営できる会社に育てる長期的な戦略が求められます。(株)薩摩川内市観光物産協会に続く「鹿児島版DMO」が登録されることを期待します。

    親馬の 道をいそげば きりにぬれて
             子馬も走る いななきながら
                        ~橋田東声~


 ※参考:観光庁「日本版DMO」とは

No.405 旅人は花の魅力に誘われる~フラワーツーリズムの推進~

2016年3月28日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光



        宿りして 春の山辺に 寝たる夜は
                夢のうちにも 花ぞ散りける
                      紀貫之~古今和歌集~


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 桜の開花宣言が続き、鹿児島は今週末が見ごろとなります。北国ではいまだ降雪があり、厳しい寒さが続いているところもあります。日本の中でこれほど気象の差があるのかと感じます。
 桜前線は例年、5月上旬に北海道に上陸し、松前城や五稜郭公園の桜が話題となります。


 桜は奈良、平安の時代から多くの短歌や随筆、物語集、日記等の中で取り上げられています。源氏物語、万葉集、土佐日記、古今和歌集、新古今和歌集、徒然草などがあります。

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 江戸時代には、松尾芭蕉、与謝蕪村、小林一茶の俳句に多く詠まれています。また明治以降文人墨客にも愛され多くの文学作品に描かれ、映画やテレビドラマでは欠かせない情景となっています。


 アメリカ合衆国の首都ワシントンD.C.のポトマック河畔の桜並木は、世界の名所の一つに数えられます。ここの桜は、明治45年(1912年)当時の東京市長であった尾崎行雄氏が贈ったもので、毎年3月末から4月のはじめにかけて、盛大な「桜まつり」が開催され、多くの人が訪れます。在米の日本人は特に楽しみにしているイベントです。是非一度お訪ねください。


 日本は四季がはっきりしており、そのことが美しい国土を創り出し、桜の魅力もその恩恵を受けていると感じます。桜の開花予想についてはソメイヨシノの木が対象となっており、全国54地点(沖縄・沖縄地方をのぞく)の開花日を発表しています。気象庁の発表では、今年の鹿児島での開花予想日は29日となっています。


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 全国に桜の名所は数多くあり、日本の「三大桜」と言えば、福島県の三春滝桜、山梨県の山高神代桜、岐阜県の根尾薄墨桜です。桜の木の大きさや形、花の咲いている姿が特に印象に残ります。
 他にも北海道の松前城や五稜郭公園、東北の弘前城公園、角館、東京の新宿御苑や上野公園、長野県の高遠城址公園が有名です。西日本では豊臣秀吉が最晩年に1300人の招待者を集めた醍醐寺、岡崎公園、吉野山、大阪造幣局、福岡舞鶴公園、熊本城、一心行の大桜、都城市の母智ヶ岡公園などが有名です。


 弘前城公園には約2600本の桜がありますが、特にお堀端の枝垂れ桜が有名で、水辺に映える夜桜見学がおすすめです。毎年4月下旬から5月上旬に開かれる「弘前さくらまつり」は、200万人を超える観光客が訪れ、必見の価値があります。
翌日は「津軽鉄道」に乗り、金木町の太宰治の生家である「斜陽館」や、鹿児島出身の彫刻家中村晋也氏製作の「太宰治銅像」や文学碑がある芦野公園を訪ねる旅はいかがですか。


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 戦時中は、桜は戦争に行く兵士の激励や戦争で亡くなった人々の弔いの花として崇められていました。軍歌にも歌われています。
 これほど桜が慕われるのは色鮮やかさと木全体の彩り、開花から散るまでの期間が短く、ぱっと咲いてぱっと散る清らかさが日本人の心を捉えるのでしょう。
 また桜の開花は、入学式や社会人のスタートの時期と重なり、思い出に残る花として一緒に写真に納まる光景が見られます。


 県内でも桜の花を背景に見る仙巌園からの桜島、石垣から垂れ下がる桜並木を牛車や着物姿で巡る出水の武家屋敷、特攻隊員の想いに心をはせながら歩く知覧特攻記念館前の桜並木、伊佐市の忠元公園や曾木の滝公園など、県内の名所を訪ねませんか。


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 数年後に鶴丸城の御楼門が復元されます。お堀端の桜は石垣とともに風情を醸し出し風格を感じます。完成の暁には、ライトアップして夜まで開放することで、鹿児島の桜の名所の一つとして話題になるのではないでしょうか。そのことが中心市街地への回遊性をもたらします。


 桜の名所の開花日は、旅行商品の企画には重要なポイントとなります。桜は開花から満開、葉桜へと長くて2週間程度で推移するため、予測が難しく短期間での販売を余儀なくされます。
 特に開花日は雨や気温の差で早まったり遅くなったりで、商品を造成する側にとっては天気が気がかりとなります。京都の桜見学ツアーは特に人気があり、首都圏から京都へは、新幹線貸切列車による商品が多く販売されます。


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 ところで、これからの季節は皆様の地域でも、桜以外に、芝桜、藤、つつじ、ジャカランダ、あやめ、アジサイ等次々に様々な花が咲きます。その美しい姿を観光資源として捉え、食、歴史遺産、直売店、イベント等を組入れて、地域全体の魅力付けをして商品化することが重要です。商品化したものはエージェント等の企画に反映させる努力も必要です。


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 魅力付けには、花のストーリーを語ることが重要です。100年前の卒業記念に植えた木に咲く花、友好の証として他の地域から送られた小さな苗を育てて、毎年多くの花を咲かせている藤の木、夫婦で苦労しながら育て、家の周辺一帯が芝桜に包まれた光景等、そこに至るストーリーがお客様の共感を呼びます。
 ホームページやフェイスブック等での情報発信や、メディアが取り上げたくなる話題作りが欠かせません。前広に地域の人を絡めた情報発信が大切です。


 県内をドライブしていると、あちこちの山に白やピンクの花をつけた山桜を見ることができます。人が植えたわけでもなく、肥料も与えていないのにこの時期になると決まったように美しい花を咲かせます。自然の移ろいは素晴らしい景観を創り出します。


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 道路沿いに花を植栽して四季折々の魅力づくりを進めている長島町は、フラワーツーリズムを推進しており、多くの来訪者を創出しています。町民の積極的参加も地域づくりの参考になります。花の魅力は人を動かし、旅人の心を癒してくれます。


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 自然に咲き誇る花や植栽した公園の多種の草花、それに伝統の食等を加えて地域全体の魅力をもっとPRし、交流人口の拡大に活かしたいものです。




      春霞 たなびく山の 桜花
           見れども飽かぬ 君にもあるかな
                      紀友則~古今和歌集~

No.404 ふるさとの魅力を語れる人に~若者の旅立ちを祝す~

2016年3月22日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光



 秋に植え厳しい冬の寒さを乗り越えたチューリップが、温かい陽気に誘われいつの間にかつぼみとなり、開花間近という状況です。今週には桜の開花宣言が発表されます。
 官公庁や企業では人事異動の季節です。新聞発表や友人から、昔のクラスメイトの動向 を知り、複雑な心境になられる方も多いのではないでしょうか。


       石川啄木の短歌です。
           友がみな 我よりえらく見ゆる日よ
                  花を買い来て 妻としたしむ


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 周りの友人たちが立身出世し、自分がひとり取り残されたように感じる時期にもなります。花でも買って帰り、妻と友人の栄達を心からお祝いしてあげようという素直な心境にもなりたい。
 なんとなくわびしく切なくほろりとくる歌です。皆さんもこのような感情を持ったことはありませんか。


 人事とは、企業やトップから本人に与えられる最大のメッセージではないでしょうか。与えられた場所で精一杯努力することが重要と考えます。若い人たちは多くの人々との出会いや困難を経験して成長していくものと思います。


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 高校、大学の卒業式が終わり多くの若者がふるさと鹿児島を離れる季節となりました。
 若者にとっても旅立ちの季節で、家族や友人との別れがつらくなります。
 数年前関東地方を旅したとき、駅の待合室の掲示板に次のような張り紙がありました。
 「ご卒業おめでとうございます。永年当社をご利用いただき感謝申し上げます。寒い冬の朝、雨の日、風の日重いかばんを持っての通学大変だったと思います。ふるさとを離れてもこの地を忘れず、帰郷の際はご利用をお待ちしています。異郷の地でのご活躍を心からお祈りいたします。」
 学生さんたちへの心温まるメッセージが託されています。


 ところで、最近地元の高校から国公立大学に進学する生徒さんに、お祝い金を支給する自治体があります。少子化等で高校の統合・再編や廃校になる学校もあり、何とか地元の学校に通って欲しいという切ない願いが表れています。先日発表された県内の公立高校の志願状況を見ると定員割れの学科が多くあったのも事実です。これからもこのような状況が続くことが想定され、教育現場でも少子化の流れは深刻です。


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 旅立ちの姿は各地域で異なりますが、離島の多い鹿児島では送別にあたっては、格別の想いが託され盛大な別れのシーンが見られます。甑島では、1年前から5年後の成人式に向けての焼酎作りも始まり、「島立ち」と言う記念ボトルがつくられます。



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 交流人口の拡大は地域活性化には欠かせません。旅立つ若い皆様にもふるさとの魅力を是非知ってもらいたい。鹿児島県は南北600キロに及び、多彩な観光資源に恵まれています。
 昨年は、口永良部島の新岳噴火、桜島が膨張しているという報道もあり、風評被害等で教育旅行の取消し、企画旅行等の不振もあり前年割れが懸念されましたが、先日発表された2015年の鹿児島県の宿泊者総数は、787万人で5年連続前年を超えました。地方創生事業のふるさと割引旅行券、奄美振興事業、外国人に対する特典キャンペーン、貸切バス助成、風呂マラソン等の取組が新たな需要喚起につながったと感じています。


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 今年に入り外国人は引き続き好調ですが、国内旅行は4月以降厳しい状況が予想されます。
 「世界自然遺産」と「世界文化遺産」の2つの世界遺産を持つ鹿児島の魅力を発していかねばなりません。奄美大島は、バニラ効果や世界自然遺産登録を2年後にひかえ、メディアでの発信も多く、来島者が増えています。


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 3月26日に北海道新幹線が「新函館北斗駅」まで開通します。北海道では新幹線南の終着駅「鹿児島中央駅」まで行く片道新幹線利用の弾丸ツアーが人気となっています。
 北海道新幹線開業後、これから6年間は新たな新幹線開業はなく新幹線の話題も少なくなります。九州新幹線を利用した商品企画やコンサートツアー、2つの世界遺産をつなぐツアー、教育旅行の新規市場開拓等の取組が不可欠です。
 地域資源を磨きストーリー性のある感動をもたらす商品化が求められます。


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 学校を巣立ち、県外に出て行く皆さん、是非ふるさと鹿児島を忘れず、一人ひとりがPR大使の役割を果たして欲しい。皆様の口コミが鹿児島の魅力を確実なものとします。いつかまた、鹿児島で生活してくれることを期待しています。皆様の将来に幸せあれと祈りたいと思います。


       元二の安西に使ひするを送る  ~王維~

    渭城の朝雨  軽塵を潤おし  客舎青青柳色新たなり
    君に勧む   更に尽くせ   一杯の酒
    西の方陽閑を 出づれば    故人無からん

    *王維とその友人であった元二と呼ばれる人物との別れを読んだ句です。
    *「陽関」は前漢時代に建設された、かつてのシルクロードの重要な関所です。

No.403 市民が支えるマラソン大会に~鹿児島市の情報発信に生かす~

2016年3月14日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光



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 鹿児島は明治維新にあたり多くの偉人を輩出しましたが、その鹿児島市の中心市街地を駆け抜ける記念すべき第一回目の「鹿児島マラソン 2016」が開催されました。
 11,854名の参加者があり、ウオーターフロント地区、天文館、西郷隆盛銅像前、鶴丸城跡、そして、世界文化遺産に登録された旧集成館事業の建物がある仙巌園を横目に見ながら、島津義弘侯ゆかりの地である姶良市重富を折り返すコースの沿道では、ボランティアや多くの市民が声援を送りました。


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 今全国各地で、地域活性化に繋げるべく市民マラソン大会が開催されており、隣の熊本や福岡での大会には多くの参加者があります。
 鹿児島マラソンは市内の中心街に加えて国道10号線を走ることから、錦江湾に浮かぶ桜島や日豊本線沿いの風光明媚な景観が、ランナーの励みになったのではないでしょうか。



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 前夜には招待選手、ゲストランナーの石原良純さん、宮下純一さん、往年の名ランナー荒木久美さん、千葉真子さん、郷土出身のタレント国生さゆりさんを迎えて、レセプションが開催され大会を盛り上げました。
 大会当日は曇天が予想されていましたが、スタート時点から雨や風もなく、参加者には心地良いコンディションの中での大会になったのではないかと思います。



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 小生はコース沿いにある天保山シーサイドブリッジで友人の応援をしました。先頭から最後尾まで40分程かかり、12,000人近くが走ることのすごさを肌で感じました。
 ランナー達はゴール後、市内で銭湯に入り疲れを癒していました。鹿児島市は県庁所在地で泉源数が日本一であり、参加者にも良いPRができたのではないでしょうか。



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 約5,000人が県外選手で家族を含めると1万人近くの宿泊者があり、飲食店は賑わいを見せていました。中央公園ではおもてなしのイベントが開催されており、足湯や特産品の販売、飲食店も列をなし多くの市民も訪れていました。



 ところで、大会開催に伴い市内を中心に長時間公共交通機関がストップし、道路規制も行われ移動に不便を感じた方も多かったと思います。このようなビッグイベントの実施は、市民の協力無しには開催できません。2年前から様々な課題を調整しながら大会開催にこぎつけました。



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 今回は各所でボランティアの姿が目に付きました。折り返し地点では姶良市の皆さんが、名物の加治木まんじゅうやキャンディ、湯茶等の接待で選手を元気づけました。2つの市が連携して取組んでいる大会であり、来年につながる好印象をもたらしました。
 1月の「いぶすき菜の花マラソン」が35回も開催できているのは、多くの市民ボランティアに支えられていると感じます。


 今年は大きな行事や、イベントが少なく観光客誘致にとっては苦戦が予想されます。桜島、霧島の硫黄山の風評被害を払拭するべく情報発信に努めていますが、十分とはいえません。マラソン大会の開催や市民の通常の生活ぶりを伝えることが、一般消費者に安心感を与えます。特に桜島がある鹿児島市での開催は、参加者に対して火山に関する不安感を少しは取り除くイベントになったのではないでしょうか。


 2月のはじめに韓国を1週間訪問し、25のエージェントを訪問しました。企画担当者からは桜島の情報を常に発信することが、集客に結びつくと念押しされました。今回も韓国や台湾、香港等から100名余りの参加者がありました。国際大会への一歩を踏み出すチャンスにしなければなりません。
 鹿児島は九州本島最南端に位置する県であり、冬でも暖かくスポーツイベント誘致には好条件がそろっています。また、温泉、歴史、世界遺産、新幹線や国際線のある空港、豊富な食等に恵まれており、来訪者を楽しませる要素にも事欠きません。



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 今回のマラソン大会のように市民生活に大きく関わるイベントは、前広な準備と告知が必要です。大きな混乱もなく開催できたことは、関係者に加えて市民の皆様の理解があってこそと思います。伝統的祭りや四季折々の美しい景観を求めて、一度に多くの観光客が訪れる地域は、市民が日常生活を送る上で一定の負荷がかかっているのは事実です。市民に理解を求める努力も欠かせません。そのことが「おもてなしの心」を醸成すことにつながります。


 本格的な人口減少時代を迎えて交流人口の拡大は不可欠です。マラソンに参加する人は、自分で時間をつくりお金を払ってくれる有難い観光客でもあり、リピーターになる可能性が大です。今大会開催がもたらす経済効果も大きいものがあるのではないでしょうか。


 一方では市民マラソン大会が多くの県で開かれるようになっており、集客も厳しくなっています。鹿児島県が持つ多くの観光資源を活かして同伴者を増やすと共に、また走って見たいという魅力あるマラソン大会として定着させることが重要です。


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 今回は第1回大会ということで参加者が集まり易かったということもいえます。来年以降も多くの参加者が集まるよう今年の問題点を分析し、改善していきたいものです。大会関係者のご苦労に心から敬意を表します。



        梅が香に のっと日の出る 山路かな
                      ~松尾芭蕉~


No.402 九州新幹線全線開通5周年を迎えて~開業時の熱気を忘れない~

2016年3月7日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光



 2011年3月11日東北地域を襲った大震災は、死者15,894人、行方不明者2,563人と未曾有の自然災害となりました。また、福島第一原発の事故も重なり、ふるさとから遠く避難生活を余儀なくされる住民もあり、被災地域の復興の厳しさも感じます。政府による力強い支援と、東北地域の一日も早い復興を祈りたいと思います。『死者、行方不明者数は2016年1月8日現在』


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 ところで、翌日の3月12日は九州新幹線の全線開業日でした。重大な自然災害が発生したこともあり、開業日のイベントはほとんど中止になりました。
 多くの関係者が見送る中一番列車は鹿児島中央駅を無事出発しました。最速で博多駅まで 1時間17分、新大阪駅までは3時間42分となり、時間短縮が日帰り旅行を可能にしています。長年に亘る要望が実現し、開業時の皆様の喜びにあふれた顔が忘れられません。


 県では、各自治体、経済団体、メディア、キャリア、エージェント等による「新幹線効果活用プラン」を策定し、開業効果を県内全域に広げる取組を推進してきました。 
 交流人口を増やすことで、観光客が「本物。鹿児島県」の魅力に触れる機会が増え、消費拡大や持続的な観光客誘致に結びついています。


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 全線開業にあわせて、JR九州や各自治体、民間企業等も2次交通の整備にも取り組んできました。観光特急「指宿のたまて箱」、肥薩おれんじ鉄道の観光列車「おれんじ食堂」、「おれんじカフェ」、鹿児島中央駅~鹿屋間直行バス、鹿児島中央駅~志布志港までの「さんふらわあライナー」、「あいらビュー号」、出水~天草ロマンシャトルバス、山川~根占航路の再開等地域への利便性を図るべくアクセスの改善もなされてきています。


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 新しい取組も生まれています。「頴娃のグリーンティリズム」、「枕崎の出汁ツアー」、「甑島や入来の地域おこし隊」、「長島町のフラワーツーリズム」、「着物で出水武家屋敷を歩こう」、「垂水の千本いちょう園」、「薩摩藩英国留学生記念館」、「桜島ミュージアムのジオツアー」、「地域グルメの開発」、「鹿児島市や各地域のボランティアガイドによる着地型観光」、「グリーンツーリズムを活用した教育旅行」等観光客の誘致につながっています。


 様々な取り組みの成果もあり、宿泊客数は開業から5年間毎年伸びてきました。
 平成27年の宿泊客総数は787万人で過去最高となり福岡県に次ぎ第3位となっていますが、外国人宿泊客数は第5位に甘んじています。福岡空港への入込客は、交通アクセスが充実している北部九州、中九州方面がメインです。
(全宿泊施設の宿泊者総数:平成23~27年観光庁統計)


 九州新幹線を利用して鹿児島への誘客を進めるには、南九州周遊切符や新幹線特定便の割引拡大等移動コストの軽減化が求められます。先般韓国を訪問した際エージェントからは、九州へのリピーター客は南九州に行きたい意向が強く、時間短縮と旅費軽減を強く言われました。
 日本人の国内旅行は成熟し大きな伸びが期待できない中で、インバウンドの拡大に必死で取り組まねばなりません。


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 2年後には「明治維新150周年」を迎えることから、鹿児島にゆかりのある人物や維新を題材とした大河ドラマの誘致を進めています。
 幕末から明治維新に至るストーリーは、薩摩を抜きにしては語れません。鹿児島をPRする絶好の機会と捉え、前広な情報発信が求められます。合わせて案内板の整備や外国語表記の充実等街づくりが重要になっています。


 また、安定的な顧客維持には教育旅行の誘致が欠かせません。関西や北九州地域から新幹線集約臨時列車の利便性とメリットを強調し、鹿児島が誇る歴史、自然、温泉、宇宙、平和教育や、農林水産業を活用した民泊体験メニューの優位性をPRしていくことが求められます。
 桜島の風評被害が懸念され、行く先を変更する学校もでています。正しい情報発信が安全・安心を確実なものとします。引き続き教育委員会、校長会、修学旅行関連団体への営業を強化しなければなりません。


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 今の旅行形態は団体旅行から個人旅行への流れが加速し、趣味や体験を望む観光 客が増えています。地域資源を点検し、ストーリー性のある商品化を進め、エージェントの旅行企画への参画やメディアでの発信が重要になっています。


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 顧客を捉えるのは、本物の心に響くストーリーです。地域の商品をPRするには、「その商品はどのようにして生まれて、どのように育ててきたのか」が重要であり、消費者に共感をもたらすことが、持続できる地域にもなります。
 鹿児島県は「世界自然遺産」と「世界文化遺産」を有する唯一の県であり、新幹線で鹿児島まで来て、2つの遺産を巡る行程が容易にできることも強調しなければなりません。


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 観光は、多くの分野と関連がある総合産業として位置づけ、経済効果を創出し雇用を拡大することが重要です。鹿児島が誇る農水産物、伝統工芸、郷土芸能など地域文化に触れる機会を提供することが鹿児島の魅力となります。それを発信する動画サイトの充実も求められています。


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 「鹿児島はすばらしかった。また行きたい。」と心に残る「感動」と「感激」を与え、リピーターを増やすことが大切です。
 指宿市役所の皆様は、近くを走る「指宿のたまて箱」号に旗を振って歓迎しています。まさに「一期一会の心」のおもてなしが定着しています。


 3月26日に北海道新幹線が「新函館北斗駅」まで開通しますが、これから約6年間新しい新幹線の開業はなく、話題も乏しくなりがちです。
 「鹿児島中央駅」が南の終着駅であることをもっとPRして、北海道から鹿児島までの日本列島縦断の旅を若者にもっとPRしたいものです。


 新幹線は「魔法の杖」ではありません。全線開業時の喜びと熱い思いを忘れず、誘客対策に取り組まねばなりません。自ら行動して地域を動かす努力が求められる5周年とし、新たな目標に向かって挑戦したいものです。



      何となく 汽車にのりたく 思ひしのみ
            汽車を下りしに ゆくところなし
                       ~石川啄木~



No.401 本物は顧客を裏切らない~品質と味は保証します。値は少し張りますが~

2016年2月29日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


 寒さが和らぎ、一足早い春を求めて県外からの観光客の姿が目に付くようになりました。鹿児島中央駅近くの黒豚の店の前に並んでいる若者に声をかけると、卒業旅行で鹿児島を旅行していると話してくれました。友人から鹿児島に行ったら黒豚が美味しいと薦められたという。まさに口コミの効果です。


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 鹿児島県は全国第3位の農業県であり、中でも黒豚、肉用牛、鶏(鶏卵、ブロイラー)、かつお節、うなぎ、ぶり類、クロマグロ、さやえんどう、そらまめ、かんしょ等は第1位の生産量を誇ります。鹿児島県は農業と観光振興を主要政策に掲げており、先日発表された平成28年度の予算概要にもそれが反映されています。
 また、「食」の魅力は人が旅行の行先を選択する際に重要な判断基準になっています。
「本物。鹿児島県」の魅力をPRし、それを来訪者に提供することが観光客の満足度を高め、リピーターを創出することになります。


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 特産品である「かごしま黒豚」には次の定義があります。
 鹿児島県黒豚生産者協議会の会員が、県内で生産・肥育出荷・と畜したバークシャー種であること。肥育後期にはさつまいもを10~20%添加した飼料を出荷直前の60日前から与えて、かつ、出荷時に1頭当りの拠出金を納めた場合認められています。
 「かごしま黒豚」という名称は1999年に商標登録されています。
 黒豚と呼ばれるバークシャー種は、一般的には、六白と呼ばれる白い部分が顔面、体の後ろ・4本の足の先端部の6ヶ所にあります。


 並んでまで食べたくなる黒豚の生産には、これまで苦難の歴史がありました。県内で生産される豚は、昭和30年代前半まではほとんど黒豚でした。しかし黒豚は飼育期間が長く生まれる子供も少ないために、生産者は経済効率が良い白豚に飼育を移し、昭和50年頃には黒豚は全体の2%近くまで生産量が落ち込みました。


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 その頃、黒豚こそがかごしまが誇る宝物であるとして、昭和53年に黒豚料理「あぢもり」を天文館にオープンさせたのが、現在の佐藤光也社長です。
佐藤社長は黒豚の魅力に若いころから注目し、「黒豚料理」を鹿児島のブランド品に育て上げた張本人です。
 オープンして経営危機にも直面しましたが、そこを家族一丸となって乗り越えました。肉質にこだわり食べ方に工夫を凝らすなど、黒豚の美味しさが認知されるまでには20年の年月を要しました。
 黒豚に対する熱い思いをもってPRを続けてきたことが、今の人気を生み出したと思います。


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 社長の出身地は北海道ですが、サラリーマン生活をやめ、奥様のふるさとである鹿児島に移り今の店を始められました。
 学生時代は東京6大学に属する大学で応援団長を務められ、神宮球場では名物の団長として名を馳せました。時には10数キロもある校旗を持ち、神宮のスタンドが興奮のるつぼと化す伝統の早慶・慶早戦を指揮していたとは、謙虚で紳士な装いからは想像もできませんが、経営者として語る言葉には黒豚復活にかけた熱い思いを感じます。


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 今でこそ黒豚料理を掲げている店はたくさんありますが、「あぢもり」を始めた頃は1軒だけで、生みの苦しみを味わう日々でした。黒豚の味を知ってもらうためにCMを作りラジオで流し、試食会を何回も開いていくうちに、昭和60年前後から首都圏を中心に黒豚ブームが起こり、その魅力が知られるようになりました。
 平成元年には自らテレビに出演し、黒豚のおいしさや食べ方を消費者に直接呼びかけたこともありました。


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 平成9年から10年にかけて、全国のタウン誌を発行している会社や多くの観光関連団体を訪ね、黒豚料理の美味しさや食べ方を精力的にPRしてきました。学生時代の応援団長が黒豚の応援団長へ衣替えした感じです。まさに学生時代の経験がフットワークの良さとして表れ、黒豚の認知度を高めることになったのではないでしょうか。


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 また、ここまでくるには、大学やサラリーマン時代に築いた人脈の助けがあり、そのことへの感謝の念を忘れません。毎朝神棚の前では、影日向に支えてくれた50人ほどの名前を読み上げ頭を下げてから、仕事を始めることが日課となっています。
 『後ろ姿に感謝する』という言葉がありますが、社長は常にお客様の意見を大事にされており、今の隆盛は「お客様に感謝する」経営姿勢が支えていると感じます。


 黒豚料理店が県内で増えていることは、鹿児島の黒豚生産農家の大きな励みにもなります。今は国内だけでなく、海外からの来店客も増えています。海外メディアの取材やファムトリップに対して、懇切丁寧な情報発信の場を提供いただいており、海外での認知度向上にも大変寄与しています。香港では黒豚のことは「しゃぶしゃぶ」と呼ばれています。 1993年には黒豚しゃぶしゃぶの発祥の店として「黒しゃぶ」を商標登録しています。


 鹿児島を訪れた観光客が、「黒豚を食べたい」とタクシーのドライバーに尋ねると、「品質と味は保証します。値はちょっと張りますが」と「あぢもり」を紹介すると、「そこの店へお願いします」と言う客がほとんどです。


 口コミサイト「トリップアドバイザー」では、鹿児島市の2771軒のグルメ・レストランで第3位となり、黒豚料理店では1位となっています。まさに一度食べた人の舌は正直です。本物だけが感動をもたらし、リピーターの創出につながっています。


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 鹿児島県のPRキャラクターの「グリブー」は黒豚がモデルであり、今では子供が7人生まれてグリブーファミリーは9人となり、各種イベントで食や観光のPRに頑張っています。
 グリブーファミリーにあやかり、黒豚を扱う店舗が増え、観光客が本物の美味しい「黒豚料理」に出会える機会をどんどん提供したいものです。
みなさんも黒豚しゃぶしゃぶ発祥の店「あぢもり」に是非足を運び、一度本物の味をご堪能ください。



     けふもまた こころの鉦を 打ち鳴らし
               打ち鳴らしつつ あくがれて行く
                          ~若山牧水~

      参考 ①かごしま黒豚:ウィキペディア ②LEAP12月号

No.400 県と県都のさらなる連携強化を~無駄を省き相乗効果を高めるために~

2016年2月22日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光



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 鹿児島のシンボルである桜島が142日ぶりに噴火し、爆発的噴火の瞬間がテレビや翌日の新聞で報道され、国内外に大きな衝撃となって伝わったのではないでしょうか。
 日本人は御嶽山の噴火事故以来火山活動に敏感であり、しかも桜島の久しぶりの爆発的噴火ということで、大きなニュースになったと感じています。県民は比較的冷静で通常の姿に戻ったと捉えており、風評被害を少なくするべく情報発信に努めているところです。


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 鹿児島中央駅に新幹線が到着すると、初めて鹿児島を訪れた観光客が驚くのが錦江湾に雄大にそびえ噴煙を上げる桜島の姿です。
 桜島は5千人あまりの住民が普通の生活を営み、また、災害に備えて日頃から安全対策の徹底や避難訓練も行われています。今まさに、湯の平展望所からの雄大な景観、有村海岸での温泉掘り、袴腰での日本一の足湯等、火山がもたらす恩恵を観光客が間近で楽しんでいる姿を発信していかねばなりません。


 平成27年の8月に桜島の警戒レベルが引き上げられたこともあり、鹿児島地区への入込客が心配されましたが、年間の鹿児島地区の宿泊者総数は伸びています。
(鹿児島地区の22施設が対象:平成27年観光動向調査『サンプル調査』:鹿児島県観光交流局発表)


 鹿児島県は九州本島最南端に位置していることからアクセスが課題でしたが、九州新幹線全線開通で新大阪駅以西からの時間短縮が顕著となり、「新幹線南の終着駅」効果が鹿児島市への集客効果を高めています。乗継が便利な観光特急「指宿のたまて箱」は、運行からまもなく5年目を迎えますが今でも高乗車率を誇っています。


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 鹿児島市は、自然、歴史、温泉、錦江湾や桜島、伝統的祭り、世界文化遺産、食、アクセスの利便性等国内屈指の観光資源に恵まれた県都です。
 鹿児島を訪れる観光客は、まず1泊目は2食付の温泉地に、2泊目は1泊朝食型の宿泊施設が多い鹿児島市内に泊まり、夕食は外で食べるというスタイルが主流となっています。


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 鹿児島中央駅から徒歩5分のところにある「かごっまふるさと屋台村」は外国人にも人気で、地域の産品を活用した食や焼酎の提供、おもてなしの心等、観光客誘致の条件整備がなされており、店作りが成功している場所です。さらに日本文化が味わえる場所として、体験メニューや県内各地域の情報発信基地、外国語表記を増やすなどの取組が求められます。


 また、平成27年度は海外クルーズ船がマリンポートに51隻寄航予定で、中国からのショッピング目的の観光客が増えており、宿泊客は台湾、香港、韓国、中国の順となっています。
 クルーズ船誘致に新八代港や油津港も力を入れており、県、市、民間組織による受入態勢充実が求められます。


 ところで、多くの自治体が地方創生の柱に観光振興を掲げており、地域間の誘致競争も激しくなっています。まちづくりや国内外へのPRなど、相乗効果を発揮すべく県と県都の連携がこれまで以上に重要になっています。


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 鹿児島市のシンボルとするべく鶴丸城御楼門の復元に向けて、経済界が中心となり募金活動を推進してきました。目標金額に目途がついたことから、県と鹿児島市も協力し平成32年頃には完成の予定で整備が進められています。
 一帯は鶴丸城址を中心に博物館、美術館、かごしま近代文学館、黎明館等県と市がそれぞれ管轄する施設が集まっており、まさに文化ゾーンといわれる地域です。今後の街づくりは、そこから中央公園、天文館通り、いづろ通り、ウオーターフロント地域への回遊性が求められます。


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 特にウオーターフロント地域の再開発には、市電の延伸、MICEが誘致できる施設の建設、商業施設、港湾の整備等昼夜を問わず人が集まりやすい魅力ある拠点づくりが不可欠です。国、県、市の合意なしには推進できないプロジェクトです。少子高齢化の進行や人口減少が顕著となる中で、百年の体系を見据えた街づくりが重要と考えます。


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 次に国内外に対するPR態勢の強化です。鹿児島県のイメージアップを図り、持続的に誘客に繋げる取組が求められます。九州観光推進機構では、九州の認知度向上に努めていますが、海外での認知度は大都市圏に比べるとまだ低いのが現状です。九州への誘客を図り、そこから鹿児島に誘致するためのPR活動が不可欠です。


 県と県都は「かごしま」という同じネーミングであり、相手側が覚えやすい地名です。海外路線網や九州新幹線終着駅のメリットを活かすべく、一緒にPRすることで相乗効果が発揮できます。鹿児島地域の宿泊者総数は、平成26年実績で県全体の約40%を占め、年々その比率は高くなっており、観光客を県内に広げる取組は、鹿児島市の観光施策も大きく影響を及ぼします。


 海外のJNTO事務所やエージェントを訪問すると、日々日本の自治体が個々に訪れることから、対応に苦慮していると語っています。せめて県と県都は一緒に来てくれたらとJNTOの職員は言います。鹿児島県は、「世界自然遺産」と「世界文化遺産」を有する唯一の県であり認知度を高めるチャンスです。 


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 物産展などについては県、市が一緒に出店し、観光もPRすることで県都の認知度も高まると思います。自治体も高齢化の進行や人口減少に伴い財政状況は厳しくなっています。費用対効果も考え、より有効的な宣伝手法が求められます。


 海外へは週4路線12便が就航していますが、300便余りが就航している福岡空港からの誘客をいかに進めるが鹿児島のインバウンドの課題です。平成26年観光庁の統計では、九州内での鹿児島県の宿泊者総数は第2位ですが、外国人だけに限ると第5位であり、北部九州からのシャワー効果をもたらすためには、交通費の軽減化や他県にない魅力ある商品開発が課題です。県、市、経済団体等が連携しJR九州への働きかけも重要です。


 県と県都の連携にあたっては大胆な決断も必要です。平成30年は「明治維新150周年」の記念すべき年であり、近代日本の建設に尽力した多くの偉人達は、薩摩が輩出しました。その使命感と行動力に学ぶとき、鹿児島が一つになることの大切さを改めて感じます。


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 大河ドラマ「篤姫」放映時には県の観光課に、鹿児島市、霧島市、指宿市から人が派遣され、「鹿児島市観光未来戦略」作成にあたっては県の観光課も参画しました。県と県都鹿児島市が観光振興において連携することで県内への影響力も増し、その必要性は益々大きくなっています。

 これからの人口減少と高齢化社会を見据えて極力無駄を排除し、「小異を捨てて大同に就く」選択肢も必要ではないでしょうか。



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 山路を登りながら、こう考えた。
 智に働けば角が立つ。
 情に棹させば流される。
 意地を通せば窮屈だ。
 兎角に人の世は住みにくい。
 住みにくさが高じると、安い所へ
 引き越したくなる。
 どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生まれて、画が出来る。
 人の世を作ったものは神でもなければ鬼でもない。
 やはり向う三軒両隣りにちらちらするただの人である。
                     夏目漱石 ~草枕~



 今回のコラムで400回を迎えました。毎回拙稿にお付き合いいただき心から感謝申し上げます。
 47都道府県や多くの国々を旅した経験を観光振興に活かすべく、これからもコラムで伝えていきたいと考えています。ご指導方よろしくお願いいたします。
                 (2月21日 出張先韓国釜山にて) 


No.399 ボランティアガイドの支援態勢強化を~活動の領域が広がり人材育成が重要に~

2016年2月15日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光



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 熊本県の北に位置する山鹿市には、江戸時代に建てられ歌舞伎の興行が行われる「八千代座」、由緒ある酒蔵「千代の園」、西南戦争ゆかりの寺である「光専寺」等があり、通りにはこうじ屋、米蔵、せんべい屋が並び懐かしい風情が残ります。また、隣の植木町の田原坂は、明治10年官軍と薩軍による日本近代史上最大の内戦となった西南戦争の舞台となった場所です。


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 「九州観光ボランティアガイド研修会in熊本・山鹿」が、九州7県から85団体220名が参加して盛大に開催され、鹿児島県からは県としては最高の21団体54名が参加しました。事例発表会や分科会では、「ガイドが地域で果たす役割」や「ガイド団体のネットワークづくり」、「外国人観光客への対応」、「世界遺産など地域資源を生かす取組」、「ガイド(団体)の現状とこれから」等について、これまでの成果や課題について真剣な議論が展開されました。


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 はじめに「長崎さるく博'06」をプロデユースされた茶谷幸治氏が「おもてなし外国 人観光客へのガイドについて」と題して基調講演を行いました。
長崎さるく博は、県民を中心に延べ1000万人を超える人々が運営やまち歩きに参加しました。また、博覧会の最大の効果は、長崎県民が住んでいる街の魅力に気付く機会になったと言っています。
 同様なイベントは、歴史的遺産が多くアクセスに恵まれている鹿児島市内でも開催が可能ではないでしょうか。
 自ら街を歩くことで今まで知らなかった魅力を発見し、それを語る市民や機会が増えることから、多額の宣伝費用をかけるより効果があると感じます。


 ここ数年インバウンドが急激に伸びており、外国人の受入態勢充実が求められています。
 外国語表記の看板やパンフレットの作成、簡単な外国語での挨拶の仕方、習慣を学ぶ研修会等の開催も必要です。


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 2015年の外国人宿泊者総数は40万に迫る勢いであり、今後も増加が見込まれます。県内各地域では、まち歩き等に日本人と一緒に観光する外国人の姿が目立つようになっています。
 英語や片言の日本語で質問をする人も珍しくなくなり、どのようにおもてなしするかが 問われています。外国語表記もあるパンフレットを渡し、手振り身振りでも案内に努力し、笑顔を絶やさないことが相手の心を動かします。
 なぜ自分の地域に来てくれたかその疑問に応えるためには、地域のことを分かりやすく説明することで満足を与えられるのではないでしょうか。


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 ところで最近の旅行形態は、団体旅行から個人旅行への流れが顕著であり、しかも地域の生活、文化に触れる旅が多くなっています。博物館・美術館、歴史探訪、地元商店街や食のルーツ等を語ることで観光客も地域への興味をそそることにもなります。
 ボランティアガイドさんの案内する領域が広がり、加えて地域のおもてなし力が問われています。ガイドをする上では事前の準備が大切であり、予約を受けた団体については、出発される地域の歴史や食の魅力等を把握して、最初の挨拶でふれると親近感が高まります。


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 専門的な知識の羅列では、参加者は飽きてしまいます。客の表情を伺い、案内の内容を変え、場所によっては説明の濃淡をつけることも相手に対する配慮と考えます。
 また、最近は熟年の参加が増えており、観光ルート沿いの病院やトイレの場所、休憩場所等も頭にいれておくと緊急の際に助かります。地元産品の魅力を語ることで、後のお土産品購入や飲食など消費行動にもつながります。


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 日常活動の運営には一定の予算も必要ですが、実情は会員のボランティア活動に支えられています。多くの団体で課題となっているのが、ガイド料金や参加者保険の収受です。  日常の連絡体制、研修会の経費や参加者の万一の事故等を考えると、ガイドの有料化は不可欠と思います。有料化することで、案内マップの充実や他の団体との交流も促進されることになります。交通費の支給等は不可欠であり、運営費用の蓄積が組織運営には欠かせません。
 ボランティアガイドの組織がうまく機能するためには、会員のスキルアップの機会を増やして日常の勉強会を増やす取組や、案内の機会をできるだけ均等に入れ込むことが大切です。


 日頃から観光客の案内やおもてなしに尽力されていますが、九州大会は研修会の要素が強く、他県の活動を学ぶ良い機会です。今回のような大会への参加については、バス代等の支援も必要ではないでしょうか。


 また、遠方から来る観光客は広域に回り、県境の意識はありません。これからも隣県と連携し、ボランティアガイドさん仲間を紹介しあう取組がお客様を安心させることにもなります。
 地域住民も地域の魅力を知り、街角で観光客に訪ねられたら笑顔で語ることが街の魅力にもなります。人の魅力がその街の印象にもつながります。


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 2018年は「明治維新150周年」を迎えることから、維新の原動力となった薩摩の歴史を学びたいと国内外から多くの観光客が訪れるものと思います。
 着地型観光が脚光を浴びる中、地域を知るボランティアガイドさんの存在が欠かせません。
 現在、県内には47団体、920名のボランティアガイドさんが登録しています。
 来年は鹿児島大会が予定されています。
 温かいおもてなしの心で皆さんを迎えたいものです。


           ふるさとに 帰り来りて 先ず聞くは
           かの城山の 時告ぐる鐘

                            ~若山牧水~


*宮崎県延岡市の延岡城址の頂上にある「城山の鐘」は、明治11年から現在まで人の手によって1日6回市民に時を告げています。市内にはこの歌の歌碑があります。 また、近くにある可愛岳は西南戦争ゆかりの地で、明治10年8月16日西郷隆盛が明 治天皇から賜った日本でただ一つの軍服を焼却し、薩軍に解散命令を出した場所です。

No.398 屋久島の新しいPR手法を考える~縄文杉だけに頼らない魅力発信を~

2016年2月8日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光



         分け入っても 分け入っても 青い山
                      ~種田山頭火~


 「屋久島は一月に35日雨が降る」という不思議な文章の一節があります。林芙美子の小説「浮雲」に描かれており、屋久島の雨の多さを表現しています。


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 彼女が屋久島滞在中に小説の構想を練り上げるために宿泊した宿は、今でも「ホテル屋久島山荘」として営業を続けています。安房川を見下ろす川岸の高台に位置し、宿泊した部屋からは、屋久島の美しい山々と静かに佇む安房の街の様子が望めます。
 夏の夕方には屋形船の灯りが印象的で、旅情をいっそう深めてくれます。



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 屋久島は白神山地とともに、1993年日本で始めて「世界自然遺産」に登録されました。春から秋にかけては、特に縄文杉や宮之浦岳の登山客で賑わいます。
 一方、登山客の増加と供に自然環境をいかに守っていくかが問われており、入山料等の徴収が議論されているところです。

 屋久島の観光の現況に触れたいと思います。世界遺産登録後屋久島への観光客は増加し、ピーク時の入込客数は40万人を超えましが、最近では30万人前後で推移しています。
 昨年は、口永良部島の噴火や桜島の噴火警戒レベルの引き上げによる風評被害等で、指宿と屋久島を巡る観光客が減少したこともあり、苦戦を強いられました。
 屋久島は世界遺産登録後、往復でも約8時間かかる縄文杉登山が一躍有名となりました。
 ゴールデンウイークや夏休みは、一日1,000人を越える登山者があり、自然破壊も懸念されています。



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 従来屋久島のPRは、縄文杉に代表される山岳観光の魅力を中心に進められてきた経緯がありますが、登山が困難であるオフ時期にいかに集客するかが課題となっています。
 そのためには、登山以外の魅力を伝えていく必要性に迫られているのではないでしょうか。
 屋久島は海岸線を一周する道路沿いに集落が点在し、集落独特の文化が育まれています。岳参りという山岳信仰や、珍しい動植物や美しい海岸景観などがあります。地元の語り部と巡る里めぐりはいかがでしょうか。



 バスで巡れる「千尋の滝」、「大川の滝」、「志戸子のガジュマル園」、「白谷雲水峡」、「屋久杉ランド」は、大雪で道路が不通にならない限り冬場でも行くことができます。



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 島の南側は、温暖で温泉が沸き、著名な露天風呂もあります。西部林道からは「世界自然遺産」登録地域の植物の垂直分布を見ることができます。
 この一帯を車で走ると、サルやシカの群れに遭遇し、屋久島ならではの景観が広がります。
 また、冬場の観光は12月~1月頃は「屋久島ぽんかん」、1月後半から~2月は「たんかん」の収穫体験が可能です。屋久島に行ったことがない人たちに、登山だけではない屋久島の魅力をいかに伝えることができるかが課題となっています。


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 新鮮な「トビウオ」や「首折れサバ」は地元でしか食べることが出来ない食材であり、是非賞味していただきたい。
 また、急峻な山肌が海岸に迫り断崖絶壁が多く、良好な釣り場やダイビングポイントに恵まれ、アウトドア派にも最適な滞在場所でもあります。



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 屋久島の動物たちとの触れ合いを題材に多くの児童文学を発表した「椋鳩十」や、屋久島の美しい自然を詩として残した「山尾山省」の足跡を語ることも、島の旅を一層興味深くするのではないでしょうか。



 屋久島空港の近くにある喫茶「樹林」には、20年の長きにわたり島内外の人々に親しまれてきたタウン誌が展示されています。


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「生命の島」という本を全巻閲覧でき、直接買うこともできます。喫茶店は、発行者の意思を継いだ奥様と息子さんが営業を続けており、仕事の合間をぬって、作者の生き様を語ってくれます。テラスで太平洋の美しい海と、屋久島の山々を望みながら、コーヒーを頂くのも至福の時間となります。
 「屋久杉自然館」では、屋久杉伐採で栄えていたころの小杉谷集落の様子を記録したビデオを見ることができ、江戸時代から昭和44年頃に廃村になるまで、屋久杉がその生活を支えていたことがよく理解できます。



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 首都圏でのエージェントの調査では、屋久島は日本にある19の世界遺産の中で一番行きたい場所に選ばれています。最近では欧米からの個人客も増加しています。
 登山の魅力だけではなく、屋久島全体の魅力を情報発信し語る必要があります。町と観光協会では島をPRするパンフレットを全面的に改訂する準備に入っています。


 登山に集中しがちなPRを、生活や文化、地域住民の生業を通して屋久島全体の魅力を訴える紙面に変えていく予定です。



 3年後には「奄美・琉球」が世界自然遺産登録を目指しており、2つの自然遺産をつなぐツアーも期待されます。
 屋久島観光の復活が鹿児島の観光の新たな一ページを切り開くチャンスとなることを信じてやみません。



No.397 徳之島3町で統一した景観保護の取組を~世界自然遺産効果の島全体への波及を~

2016年2月1日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光



 県内は5年ぶりの厳しい寒波に見舞われ、奄美大島では115年ぶりに降雪が観測されるなど、交通機関や市民生活に大きな影響が出ました。週間天気予報の徹底もあり大きな事故が発生しなかったことは幸いでしたが、日曜日には飛行機や船、高速道路がほとんどストップし、観光客の皆様の移動に大きな支障をきたしたのではないでしょうか。


 「第24回いぶすき菜の花マーチ」も2日目は大雪に見舞われましたが、予定通り開催され、小生も日本全国から参加したウオーカーと一緒に歩きました。吹雪の中で、寒さが身に染みましたが、ゴールするとボランティアの方々によるスープや茶節の味噌汁等のおもてなしがあり疲れも吹き飛びました。
 「菜の花マラソン」と「菜の花マーチ」は全国的に人気が定着していますが、官民あげての協力体制、おもてなしの心が地元に根付いている成果だと感じます。


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 2月に入りプロ野球はキャンプINです。サッカーはすでに1月中旬からキャンプがスタートしています。プロのキャンプと言えば野球は沖縄、サッカーは宮崎がメインとなっていますが、県内でもサッカーがJ1、J2、J3、なでしこリーグ、韓国Kリーグ、中国スーパーリーグを含めて17チーム、プロ野球が千葉ロッテのファーム、釜山ロッテジャイアンツの2チームで、合計19チームがキャンプを行います。
 県では、抽選で各エリアの特産品やチームグッズが当たる「キャンプ地めぐりスタンプラリー」を実施しています。熱気あふれる練習が繰り広げられる春季キャンプ地を訪ねて皆さんも応援してください。


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 ところで、シドニーオリンピックの女子マラソンで金メダルを獲得した高橋尚子選手は、世界陸上やアジア大会、オリンピックの事前合宿を徳之島で行っていました。
 天城町の練習コースの道路沿いに「尚子ロード」と書かれた記念碑と「シドニーオリンピック優勝」をたたえる碑が建立されています。
 徳之島はマラソンに適したアップダウンのコースが多く、また温暖な気候に恵まれ、都市圏からの陸上競技の合宿地として人気があります。今春も元旦の「ニューイヤー駅伝」で活躍した実業団チームが合宿を行いました。


 徳之島と聞けば長寿の島、子宝の島として知られギネスブックに長寿世界一と認定された泉重千代さん(享年120歳)、本郷かまとさん(享年116歳)が生まれ育ったところです。


 徳之島は3町からなり人口は3万余りで、主要産業はサトウキビ栽培、ジャガイモ、牛の飼育等第一次産業が中心です。3年後の世界自然遺産登録をめざして、観光振興への取り組みが問われているところです。


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 このたび、3町の役場職員を対象とした「景観セミナーIN徳之島」が開催され講師として参加しました。
 徳之島子宝空港に降り立って車を進めると、まず驚かされるのが自動販売機の多さです。約100メートルの間に3台もある地域もあり、島の人の話によると人口100人当たりの設置台数は日本一とのことです。


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 農作業の休憩時間の飲物は、持参するのではなく自動販売機で買って飲むことが習慣となっています。自動販売機はサトウキビ畑、家の前、駐車場、墓地の前、公園の入口とあらゆる場所に設置されています。
 生活に根付いているとはいえ、観光地では自動販売機を木の枠で囲み、周りの景観に配慮するなどの取組が必要です。


 また、島全体として観光地の看板の大きさ、色合い、文字、材質などを統一することで、島の調和が図られるのではないでしょうか。交差点では一つの看板に行先案内をわかり易く表示し、徳之島の美しい海、緑豊かな農村風景など自然を壊さない工夫が必要です。


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 犬の門蓋(いんのじょうふた)、犬田布岬、ムシロ瀬等の海岸線は奇岩や絶壁が続き、観光的魅力に優れています。駐車場からの距離や、観光客の安全面に配慮し崖の近くに転落防止の看板設置も必要です。




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 島の北にある「金見岬ソテツトンネル」は枯れたソテツの枝を定期的に伐採することで、海まで続く美しい景観が維持されるのではないでしょうか。
今、外国人に一番人気の場所は、赤い鳥居が続く京都の「伏見稲荷大社」です。



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 伊仙町の阿権集落は住民、事業者、行政の連携がうまくいっている地域です。サンゴの石垣群、古民家の活用、道路沿いの看板の規制等みごとな景観が残っています。散策の途中には、地産地消の食事を提供する民家レストランがあり、おかみさんが食材のストーリーを語ってくれます。ぜひお尋ねしたい場所です。



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 ところで徳之島と言っても県外の人にはどこにあるか、また何が有名なのか知る人は少ないと思います。これから 徳之島3町の観光振興に求められるものは、これぞ徳之島という誰もがすぐピンとくるような地域資源を発掘し、磨きをかけPRして提供することです。
 合併した3町の観光協会の機能を強化し、動きやすい人材の配置や、四季折々の魅力を発信しなければなりません。島ならではの特産品のPRとブランド力強化も欠かせません。 


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 徳之島は国内では数少ない闘牛大会が開催される場所です。約400年前から開催される伝統行事で、島中が熱気に包まれ観光客もその迫力に圧倒されます。地域ぐるみで太鼓や笛を鳴らして応援する姿は、島で生活する人のエネルギーを感じます。
 牛の育て方や戦いまでのストーリーを記載した看板の設置や闘牛大会をプロデユースする人を前面に出したPRも重要です。


 温暖な気候、海等を活用したスポーツ合宿、野球、マラソン、トライアスロン等も誘客に結び付きます。
 また、「奄美・琉球」の世界自然遺産登録候補地としての知名度を活かし、奄美群島全体での誘客に寄与することも求められます。
 2年後には明治維新150周年を迎えます。明治維新の立役者西郷隆盛が一時住んだ島でもあります。


 最後に長寿、子宝の島としてそれを生み育てる生活・文化をPRし、来訪客が感動するおもてなしを提供することで、また訪れたい島になると思います。
 美しい景観を守り人々の暮らしを持続的に発信していくことが大切です。
 心に響くストーリーが何よりも求められる時代になっているのではないでしょうか。  


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菜の花が しあはせさうに 黄色して

              ~細見綾子~



No.396 アーティストの公演誘致を~地域全体への経済効果創出が可能に~

2016年1月25日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光



 雪不足でスキー場のオープンが危ぶまれていましたが、1月中旬の寒波襲来でほとんどのゲレンデが滑走可能となり、営業にこぎつけられたことは嬉しいことです。
 10年ぐらい前までは、県内の高校修学旅行の行先として北海道、信州方面へのスキーが多く、添乗によく行ったことが懐かしく思い出されます。南国育ちの生徒たちは、初めてのスキーに悪戦苦闘しながら楽しんでいました。最近は北海道のニセコや新潟県の苗場スキー場には多くの外国人が訪れています。


 一方、昔に比べて暖冬による雪不足が顕著となりスキーができる期間が短くなり、リフト会社、ゲレンデ近くのホテルの経営も厳しくなっています。先日軽井沢の近くでスキーバスの横転事故が発生し、多くの死傷者が出たことはまことに痛ましいことです。気軽に参加できるバス旅行が減少するのではと懸念されています。
 観光バスの安全性が改めて問われることとなり、点検業務や乗務員の労務管理がさらに強化されるのではないでしょうか。


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 バス会社では、運転手の高齢化とともに、新たな運転手の確保が厳しくなり、インバウンドが急増する中で貸切バスの運行そのものが喫緊の重要課題となっています。
 鹿児島のマリンポートには1月1日からクルーズ船が入港し、60台近くのバスで受入に当たりました。今後も運転手さんの安全面の徹底をお願いする次第です。


 ところで今年の7月30日~31日の2日間、鹿児島市内のほとんどの宿泊施設がすでに満員となっています。施設によっては前後の日も埋まっていますが、当初は予約が殺到する理由が分からない関係者が多かったと聞きました。


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 実は30日昼夜2回、31日昼と2日間で3回、今や日本で一番の人気アイドルグループ「嵐」のコンサートが、鹿児島アリーナで開催されます。今年8月までに全国6会場でコンサート予定されており、その1箇所が鹿児島公演です。おそらく2日間で2万人近くの観客動員が期待され、入場券の発売前にホテルの予約が先行しているものと思われます。 


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 昨年全国で開催された嵐のコンサートのうち、仙台市や福岡市では近燐の県や市町村の宿泊施設まで予約が入りました。観客は比較的若い層が多いこともあり、1泊朝食や素泊まりが多く、レストランや居酒屋等外で食事を取るケースが多く街全体の経済効果が期待されます。
 宿泊予約者が今後入場券を確保した段階で、施設によっては予約人員が大きく動く可能性があります。


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 今後の注意点について述べたいと思います。鹿児島アリーナの公式収容人員は5,700人となっています。コンサートは立見が多いことから入場者は増員されるかもしれません。現在、複数の施設を予約していることも想定され、キャンセル料がかからないギリギリの時点で不要になった予約分をキャンセルする人もいます。早めの段階で予約の意思や人数の確認、入金等を促す努力が必要です。


 予約でオーバーしている施設ではお客様に事情を説明して、ツインの部屋にはエキストラベッドを、和室では定員を増やす、小宴会場を寝室として提供する等特需への対策をこれから取組むことが重要ではないでしょうか。
 福岡では「高い料金の部屋に、間際でキャンセルがあった」と、あるホテルの支配人は語っていました。


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 公演を聴きに来る人に対する観光PRも欠かせません。多くの若者が鹿児島を訪れることで、その後離島に足を延ばす機会にもなります。甑島、種子島・屋久島、三島・十島、奄美群島等夏の美しい海をPRするチャンスです。
 また、風評被害が残る桜島の本当の姿を間近に見て、鹿児島の印象が変わるのではないでしょうか。
 若者は食欲旺盛です。外での食事が多くなることから黒牛、黒豚、黒さつま鶏、カンパチ、うなぎ、焼酎、ラーメン等かごしまの美味しい食材に触れる機会となり、その後のPRに役立つものと思います。若者の情報発信力にも期待したいものです。


 ところで「嵐」が今回のコンサートで公演する6会場の収容人員は、福井、広島、静岡会場が10,000人、横浜が17,000人、長野が18,000人となっており、鹿児島アリーナは5,700人です。


 関係者に伺うと、有名アーティストを呼ぶには10,000人以上収容できるコンサート会場での公演を希望しています。「EXILE」、「福山雅治」、「DREAMS COME TRUE」、「B'z」、「サザンオールスターズ」、「長淵剛」、「三代目 J Soul Brothers」等です。2004年桜島での「長淵剛」のコンサートは、7万人を集めました。


 主催者の営業上のメリット、入場者の経済効果を考えると、鹿児島アリーナを上回る施設の設置が求められます。
 現在アリーナ設置の構想が取り出さされていますが、大型施設は維持にも大きな費用がかかります。そのためには年間の稼動を高めることが最も重要なことです。スポーツ大会や大型コンベンション、音楽コンサート、入学式・卒業式、各種企業団体の式典等にも対応可能な使いやすく大規模の動員ができることがあげられます。


 また、短時間に多くの人の移動を可能にする為には、駅や港に近いなどのアクセスの利便性、大型バスの駐車場が確保できることが望ましく、周辺の生活者に大きな影響が及ばない場所が望ましいと考えます。


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 多くの人が集まると周辺の商店街に人が流れて滞留し消費が増えることとなり、地域の活性化にもつながります。
 1回1万人を動員できるアーティストの公演を、年数回誘致できれば大きな経済効果を生み出せるのではないでしょうか。「嵐」のコンサートを機に、アリーナの設置について県民の積極的な議論を期待したいものです。


  うぐいすの 鳴く野辺ごとに
           来て見れば うつろふ花に 風ぞ吹きける
                     古今和歌集~読み人知らず~


No.395 「ふるさと納税」の推進で地域のブランド力アップを~「三方良し」の精神が地域に貢献~

2016年1月18日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光



 今、自治体が「ふるさと納税」の拡大に力を入れています。この制度は人口減少による過疎化、地方間格差などによる税収の減少に苦しんでいる自治体に対しての格差是正を推進するために、2008年、第一次安倍政権の時に創設された制度です。


 ふるさと納税とは、自治体への企業や個人の寄附金のことです。個人が2,000円を超える寄附を行ったときにおよそ2割程度が還付、控除される制度です。また、2015年4月1日から、確定申告が不要な給与所得者等に限り、確定申告の代わりとなる「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」を寄附自治体へ寄附する都度提出(郵送)することで住民税から控除されます。


 2015年12月現在で、県内43市町村のうち41の自治体が地元の特産品等を返礼品として送っています。
 寄附金ランキング(2015年4~9月)で見ると、大崎町が2億5796万円で第1位となり、続いて曽於市2億3782万円、鹿屋市1億6219億円、志布志市1億2850万円、屋久島町6578万円で、続いて霧島市、肝付町、長島町、瀬戸内町、いちき串木野市となっています。


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 返礼品としては、豚肉、牛肉、うなぎ、さつまいも、伊勢エビ、さつまあげ、焼酎、茶、ブリ、じゃがいも等地域特産品が選ばれており、ふるさとへの熱い思いが感じられます。市町村で金額に大きな差が出ており、取組に温度差を感じます。ちなみに全国一は、宮崎県の都城市の13億円余りで、「日本一の「肉と焼酎」に特化し、焼酎1年分、牛1頭などの知名度アップ策が実績に結びついているのではないでしょうか。
 1年間でかなりの金額になっている自治体もあります。詳しくは各市町村のホームページで確認してください。


 ところで、毎年人気が高まっている「ふるさと納税」の特徴について述べてみたいと思います。 まず、ふるさと納税を行うことで税金が控除されることです。ふるさと納税を行い確定申告した場合、その年の所得税から還付と翌年度の個人住民税から控除されます。所得税控除額、個人住民税控除額ともに2,000円を超える部分について対象となります。


 次に税金の使い道が、寄附した人が指定できることが特徴です。例えば「町の自然を守るための景観整備」、「子育て環境を整えるための環境整備」、「災害時のための放送網整備」等自分の思いを指定することができます。
 日頃住民は、各種の税金を納めていますが、支出については社会保障費、教育費、土木費等大まかな項目は広報誌等で知ることができますが詳細についてはわかりません。その意味でふるさと納税は使途を具体的に決めることができることから、自治体への参画意識が生まれるのではないでしょうか。


 また、ふるさと納税の言葉からして、生まれ故郷にしか寄附することができないと思われがちですが、複数の自治体に寄附することができます。「自分が卒業した大学のある市」、「旅先で大変お世話になった温泉のある町」、「祖父・祖母の生まれ育った村」、「毎年楽しみにしている伝統的祭りが、子供たちに引き継がれている町」等思い入れの強い自治体に寄附ができ、それぞれ返礼品をいただけます。


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 ふるさと納税の人気が高まっている要因として、それぞれの自治体が工夫をした返礼品を選べることです。日頃は手に入れることが困難な地場産品や、旬の果物、温泉施設利用券、美容品グッズ、伝統工芸品等もあります。特に地域の農林水産物は、安全・安心で生産者の顔が見えることから最近特に人気が高まっています。各自治体とも地域色を出したラインナップに努力している姿が感じられます。


 毎年大阪ドームで開かれる「かごしまファンデー」には、3万人を超える鹿児島県出身者が集まり、盛況を極めます。各市町村のブースは長蛇の列ができ、ふるさと産品が飛ぶように売れています。育ったふるさとの良さはいつまでも脳裏から離れません。
 各県人会の集まりに自治体の担当者が参加して、積極的にふるさと納税の仕組みをPRすることで浸透していくのではないでしょうか。


 初めて観光で訪れた鹿児島の各地で、感動のおもてなしを受けたお礼にと、ふるさと納税を行うきっかけづくりになる可能性もあります。多くのファンを創ることが自治体のイメージアップとなりブランド化につながっていくのではないでしょうか。


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 今後ふるさと納税を増やしていくためには、納税制度のわかりやすい説明、WEBを活用した各自治体のPRや地域を感じる商品のラインナップ、地産品生産者の意欲向上など納税者、自治体、生産者それぞれがメリットを享受できることが重要です。
 多くの自治体で人口減少が顕著となり、過疎化に拍車がかかっています。高度成長期に地方から大都市圏に移り住んだ世代はリタイアしている人が多くなっていますが、ふるさと志向は強いものがあります。
 返礼品について競争に拍車がかかることは避けねばなりませんが、地域色を感じる質の高い産品を選択できるようにすることが、定期納税者を増やすことにもなります。


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 「三方良し」という近江商人の教えがあります。売り手(自治体)、買い手(生活者)、作り手(地産品の生産者)がメリットを享受し、それぞれ社会貢献できることも、「ふるさと納税」の趣旨ではないでしょうか。
 まず、みなさんも「ふるさと納税」を行い、地域との絆を深めませんか。食や伝統工芸品等の返礼品を確認することで、ふるさとの農林水産物のおいしさ、安全・安心性、地域に残るモノづくりの匠の技に改めて感動するのではないでしょうか。


 最後に、石川啄木が上野停車場を訪れて思郷の念をつのらせた情景を詠んだ一首です。新幹線上野駅コンコースの一角に歌碑があり、上野と東北の人々の心をつないでいます。



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ふるさとの 訛なつかし 停車場の
人ごみの中に そを聴きにゆく

          石川啄木~一握の砂~


※参考資料:ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」

No.394 指宿地域の宿泊客を増やすために~マーケットにマッチした商品づくりが不可欠~

2016年1月12日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光



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 鹿児島に春の訪れを告げる「いぶすき菜の花マラソン」が、約1万7千人の参加のもと今年も盛大に開催されました。沿道には満開の菜の花が咲き、ランナーたちは思い思いの衣装で指宿路を駆け抜けていきました。2週間後には「菜の花マーチ」も予定され、全国から1万人を超えるウォーカーが開聞コースと指宿コースを2日間かけて歩きます。
 全国的なイベントへと発展した要因は、官民一体となった組織運営や沿道の温かいおもてなし等地元の皆様が支えていることがあげられます。


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 指宿地域は昭和40年代の前半から50年代後半にかけて、多くの新婚旅行客が訪れ、宮崎とともに南九州ブームの牽引役としての役割を果たしました。その後新婚旅行は海外へと行き先が変わりましたが、バブル時代の招待旅行や、大都市圏から企画商品がヒットし、団体旅行を中心として賑わいました。また、大河ドラマの放映や新幹線開業という好材料に恵まれ、浮き沈みはあったものの比較的順調に推移してきました。


 しかし、鹿児島を代表する温泉地である指宿地域の宿泊客が低迷しているのが心配されます。
 指宿地域の宿泊者は、2014年の第一四半期から昨年の11月までずっと前年実績を割り込んでいます。特に昨年の7月は10.0%、8月は9.6%、11月は16.5%の大幅な減少となっています。県全体として0.8%減の中で、指宿地域は10.1%の減少です。(平成27年:県観光動向調査(サンプル調査)1月~11月)
 2015年は桜島や口永良部島噴火の風評被害が影を落としていますが、指宿地域の現状は、必ずしも火山の影響だけではなく、地域全体の魅力創出が薄れてきているのではないでしょうか。


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 昨年の12月、首都圏や関西でエージェントの企画担当者と話す機会がありましたが、指宿地域を組み込んだ企画商品が低迷していると言っていました。
 指宿温泉の売りの一つは、世界に類のない「天然の砂蒸し温泉」ですが、あまりにもそれだけに頼ってきたのではないでしょうか。
 一方では、東南アジアで誘致商談会を開催すると、「砂蒸し温泉は、別府温泉の方が知られている」という話が出て残念な思いがします。「温泉県おおいた」のPRがかなり浸透していることが感じられます。


 また、従来から指宿の宿泊は、行程の途中にある知覧の「武家屋敷」や「特攻平和会館」を訪れる観光客の宿泊先となっていました。
 戦争を経験した世代も高齢化してきて知覧を訪れる観光客が伸び悩みの状況であり、入館者も減少してその影響を受けているのも事実です。


 最近の観光は2名~3名といった個人旅行が主流となり、宿泊施設では個室が好まれ、団体客に対応してきた施設は効率が悪くなっています。
 一方では、飽食の時代になり、毎晩の会席料理は観光客に敬遠されており、街に出て地域色豊かな料理を食べる旅行スタイルが定着しています。
 指宿での砂蒸し温泉を楽しんだ後は、1泊朝食型に対応できる施設が多い鹿児島市に戻って、宿泊する人が多くなっていることも苦戦の要因として考えられます。


 観光列車「指宿のたまて箱」は乗車率が安定していることから、日帰り観光客をいかに宿泊させるかが重要となっています。
 短期的には駅前の賑わいの創出が不可欠です。観光客が降り立つ駅周辺が街の第一印象となります。宿泊したいと思わせる商店街の復活が望まれます。
 駅前商店街は空き店舗が多いことから、低料金で貸し出しIターン、Uターン者が起業しやすくなるような制度も必要ではないでしょうか。


 また温泉地には、人が集まりやすいたまり場が必要です。指宿温泉はホテルが点在しており、その意味でも駅前から歩いて行ける場所に、市場や物産館の設置が望ましいと思います。
 マーケットの主役は女性です。女性を意識した街づくりと商品企画が求められます。おしゃれなカフェ、スイーツ、小物店・雑貨屋等の設置です。

温たまらん丼_s.JPG  地域全体に経済効果をもたらす取組が重要であり、地域の食材を活用し、「温たまらん丼」に続く地域グルメの開発も求められます。
 今後、砂蒸し温泉も活かしながら、宿泊者が夜散策でき、翌日まで滞在できるメニューが必要です。魅力ある公共空間をいかに創造できるかです。


種子島宇宙センター_s.jpg

 指宿港からは、世界で一番美しいといわれるロケット基地のある種子島や、世界遺産の屋久島に高速船が就航しており、指宿を拠点に日帰り観光も可能です。種子・屋久と指宿をつなぐ高速船の認知度は低いことから、連携した共同のPRや商品企画の充実が重要になっています。


西大山駅_s.jpg

 JR最南端の駅「西大山駅」を基点に、「フラワーパーク」「長崎鼻」「開聞山麓」「池田湖」「初夏のスイカ畑」「唐船峡」等をレンタサイクルで巡るツアーや、最南端の終着駅枕崎駅までのローカル列車を活用した商品企画が滞在につながると思います。「たまて箱温泉」は目の前に絶景が広がり人気が急増している温泉の一つです。


佐多岬_s.jpg

 また指宿地域の対岸には、雄大な自然が残る大隅半島が広がっています。佐多岬の整備事業はまだ時間がかかりますが、九州本島最南端の岬の自然や地形は、最北端の宗谷岬や最東端の納沙布岬等に比べると、はるかに突端に来たという感慨に浸れる魅力があります。是非宿泊客に大隅半島の魅力を語り、渡らせて欲しい。


今インバウンドが急増しており、リピーターを創造するには多言語マップ、看板の統一、免税店の設置、砂蒸し温泉の効能、特産品のPR等が必要です。東南アジアとは地理的に近く優位な位置にあることから、富裕層をターゲットに温暖な気候、温泉、健康、食等を売り込むチャンスです。


 長期的には、温暖な気候を利用した野球、サッカー、ラグビー等のスポーツキャンプの誘致が欠かせません。プロサッカーチームの誘致には冬芝対応の球技場が不可欠です。
 また、錦江湾や外洋を活用したヨットクルーズの基地やメディカルツーリズムの推進も富裕層の誘客につながるものと期待されます。
 砂浜再生の事業がスタートしますが、長期的な取組みです。整備が終わった「熱海温泉」を視察して、その後の観光客動向を十分検証して欲しいと思います。


 最後に「第29回 にっぽんの温泉100選ランキング」が発表され、指宿温泉は昨年より一つ順位を上げて、第8位にランクされています。(「2015週刊観光経済新聞主催」による)
 温泉地としての魅力は評価されていますが、十分活かされていません。マーケットは変化しています。待ちの姿勢ではなく各施設が積極的に営業展開をし、誘客につなげる努力が今求められているのではないでしょうか。


       新しき 手袋はめて ここちよく
                冬の巷を ゆくあしたかな
                          ~尾上柴舟~


No.393 地域資源を磨き、商品化に向けて果敢にチャレンジを~鹿児島の真価が問われる年に~

2016年1月4日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光



日の出.jpg

 朝ぼらけ 有明の月と みるまでに
 吉野の里に 降れる白雪

 坂上 是則 古今和歌集 ~小倉百人一首~ 




 明けましておめでとうございます。年末年始は休日が少なく、あわただしく新しい1年が始まった感じです。
 2016年の干支は丙申(ひのえさる)で、動物で言えば申年です。
丙申の年は、これまで日の目を見なかったことが形となって現れてくる年で、これまでのがんばりが形になり、さらに成長につながる何かが生まれるともいわれます。


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 申年と言えば、歴史上の人物では戦国大名「豊臣秀吉」があげられます。織田信長の家来として仕え、「サル」と親しまれ、雑草のごとくたくましい信念を持ち、将軍まで上り詰めた出世物語は、幾度となくNHKの大河ドラマでも取り上げられました。回転の速さと行動力、天下人としての洞察力は皆様ご承知の通りです。
 今年の観光を取り巻く環境は大変厳しいと捉えており、サルのように機敏な行動で、積極的に動き回り、結果を出すことが求められる1年になると思います。


 では、今年の課題や対策等を整理していきたいと思います。
 まず、3月には北海道新幹線が開業しますが首都圏から4時間以上かかることから、北陸新幹線ほどの影響はないと捉えています。九州新幹線は全線開業から5年が経過して開業効果にも陰り見られることから、再度関西以西の沿線の販促強化が求められます。
 九州管内の大手エージェントによるキャンペーンが3月で終了しますので、引き続き山陽地域からの誘客が求められます。JR西日本やJOYロードと連携して沿線の職場旅行等を開拓し、拠点地域から県内各地域へ観光客を広げる商品造成を働きかける必要があります。


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 4月から運行される「ななつ星in九州」は肥薩おれんじ鉄道を走り、沿線のイメージアップを図るチャンスです。車内で提供される料理の食材に、地元で獲れる農林水産物を提供できるかがカギとなります。また沿線や駅等でのあたたかいおもてなしの心も欠かせません。


 肥薩線を走る「はやとの風」の乗車率が低迷しており、顧客誘致が課題となっています。嘉例川駅や横川駅の駅舎、吉松から人吉に至る日本の3大車窓、真幸駅の幸せの鐘、 ループ式軌道がみられるなど鉄道や沿線の魅力が凝縮された路線です。特に外国人にはもっとPRすることが誘客につながります。


 昨年7月に世界文化遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」については、本格的商品企画を今年から展開しなければなりません。
 自然遺産と文化遺産、2つの世界遺産をもつ唯一の県であることから「日本の近代化は薩摩から」の歴史的ストーリーを前面に打ち出しながら、日本人が一番行きたい場所に上げている屋久島の「世界自然遺産」を組み合わせ、他県にない商品を提案していくことが重要です。(2015年首都圏でのエージェントの世界遺産行先調査による)


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 今年のイベントといえば「薩長同盟150周年」、坂本竜馬とお龍さんによる「日本で初めての新婚旅行から150年」です。
 山口県と連携を強化し、相互ツアーの実施を推進し、各県イベント会場で観光コースや特産品のPRが求められます。そして、2年後の明治維新150年を見据えて、偉人の足跡を巡る商品企画も必要です。


 クルーズ船が増加して、貸切バスを活用した団体のツアー造成が厳しくなっており、航空機を利用した個人型商品が今年は増加すると判断しています。 鹿児島への入込客が多い関東地域からの商品は、飛行機利用が多く、特に東京線は、便数が多いため商品企画が可能です。JAL,ANAとの共同キャンペーンが必要です。
 また、FITに対応するため、地域直売店の割安クーポン提供、フェリー、レンタカーの乗り捨て料金の軽減化等を地域に広げる取組が急がれます。


 LCCの就航や奄振事業の活用で航空運賃が安くなった奄美大島は、首都圏からの観光客が伸びています。沖縄との差別化を図り、残された自然の美しさや食、長寿、島唄等生活・文化を前面に出すことが必要です。
 今後2018年の明治維新150年の記念すべき年に、世界自然遺産登録に向けて、島民の意識向上と体験メニューの充実などPR展開が必要です。


  急増しているインバウンドの取組強化も急がれます。まず現在就航している4路線の搭乗率の向上が第一です。利用促進の補助金を活用した学校行事、青少年の翼、修学旅行、企業視察等の取組強化です。
 熊本・宮崎・鹿児島の3県でデーリーとなった香港、台北線を活用した広域観光ルートの提案も共同で行うことが、有効的な宣伝効果をもたらし、新しいコースの認知度が高まり相乗効果が大きくなると判断します。
 福岡空港は週300便(片道ベース)運航しています。北部九州からの外国人の誘客には、新幹線の博多発割安企画乗車券の導入が不可欠です。


 地域での取組も重要です。鹿児島市は、日本を代表する都市型観光の魅力を備えた街です。歴史、自然、温泉に加え、食の魅力が観光客の滞在を可能にしています。県内各地域の魅力が増すことが結果として鹿児島市に宿泊することになります。WEB展開など県内の主要観光地と連携した取り組みが求められます。


 指宿は、今年が正念場です。種子・屋久や大隅地域、南薩地域と連携し、砂蒸し温泉からの脱却が必要です。「指宿のたまて箱」は乗車率が高いのに宿泊につながっていません。
 駅前の再開発、砂浜再生などの取組は時間がかかることから、駅前の商店街をいかに活用するかが得策ではないでしょうか。Iターン者や若者へ空き家を安くで提供するなどして、地域産品、小物、おしゃれなカフェ、週末の歩行者天国等賑わいの創出を図り、指宿のイメージを変えることが先に取り組むべき課題と思います。 


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 鹿児島県は南北600キロに及び魅力多彩な観光資源があります。これからは県民が自分の地域の魅力に気付き、生活・文化等生活者として楽しんでいる姿を発信することが求められます。県民が県内の魅力を知る機会を増やすため、域内観光の推進も図らねばなりません。「第30回国民文化祭」の意義をもう一度思い起こしていただきたい。郷土を愛する人を育てることが、将来の定住人口増大につながります。


「鹿児島はすばらしかった。また行きたい。」「日本に鹿児島があってよかった。」と心に残る「感動」と「感激」を与え、リピーターを創造することが何よりも重要です。一期一会の心で観光客をおもてなしする心を醸成することが重要です。


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 首都圏の旅行エージェントの店頭には、早くも大河ドラマ「真田丸」の放映に合わせて関連の信州方面の商品が並んでおり、ドラマの放映が進むにつれてさらに人気が高まり、GW以降夏にかけて観光客は涼しくなる信州方面に向くと考えておかねばなりません。 また、今年は参議院選挙が予定され、夏にはオリンピックがあり、人の動きが停滞します。鹿児島では大きなイベントもなくここ5年間で最も厳しい年になると想定して、果敢に挑戦する気概で取り組まねばなりません。
 2016年が皆様にとって素晴らしい年になりますよう心からお祈りいたします。


       去年今年(こぞことし) 貫く棒の  如きもの
                            ~高浜虚子~

No.392 2015年を振り返る~インバウンドが顕著な伸びに、火山の風評被害対策に力を~

2015年12月28日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


 今年も残り4日となりました。3月の北陸新幹線開業に伴い、需要が大きい首都圏、中部、関西地域から観光客の流れが金沢方面に加速され、鹿児島への入込客も減少しました。
 加えて5月の口永良部島新岳の噴火に伴う屋久島への全島民避難や、8月には桜島の警戒レベルが一時アップしてマスコミ等で大きく報道されたこともあり、観光にとっては厳しい1年でした。
 県全体の宿泊客数でみると、前年を超えたのは2月、5月、9月、10月です。(10月までの集計)
 秋以降には国の「地方創生交付金」を活用したプレミアム旅行券の発行や、県の屋久島・桜島風評被害対策の補正予算等が組まれたことによる販促施策を展開中です。
 11月には県内全市町村で「第30回国民文化祭 かごしま2015」が開催され、また大型コンベンション等もあり、秋以降少し回復基調にあります。県と観光連盟では、2015年の宿泊者数が前年を上回るべく販促活動に努めてきました。


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 ところで、日本人の国内旅行は厳しい状況ですが、外国人の宿泊者数は全国的に好調で鹿児島も例外ではありません。10月までの主要施設の累計では、2014年の実績を超えており、最終的には35万人近くまで伸びるものと想定しています。
 台湾、香港便が顕著に推移しており、あらたに釜山からのチャーター便も運航されて冬場のゴルフ客が伸びています。南九州3県で香港、台湾線はデーリー運行となり相互の誘客がしやすくなっています。共同PRの機会も必要ではないでしょうか。


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 また、クルーズ船は半日の滞在ですが、鹿児島マリンポートへの海外船籍の寄港は過去最高となり、鹿児島を訪れた外国人の数は、日帰り客を含めると40万人を超えるのではないでしょうか。今後のインバウンド客誘致には、旅行エージェントやメディア等の招聘事業の積極的取組、鹿児島のイメージを伝える情報発信の多様化、受入態勢の強化が求められます。経済効果を生み出す努力が問われます。


 県観光課が進めている「魅力ある観光地づくり事業」は、毎年10億円の予算をかけ地域づくりに貢献しており、それを活用した基盤整備が進み、地域の旅行商品化も多くなり、観光客を広げる取組につながっています。


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 地域別では鹿児島、北薩、大隅、奄美地域が前年を超え、特にLCCが就航している奄美や、個人客に対応しやすい宿泊施設が多くある鹿児島市が安定しています。
 苦戦を強いられているのが、指宿、霧島、種子島、屋久島地域です。特に指宿地域が昨年の第2四半期以降ずっと減少しています。観光列車「指宿のたまて箱」の乗車率は安定しているのに、宿泊に結び付いていません。今年の低迷の要因として、口永良部島噴火に伴う屋久島の落ち込みが、関連していると捉えています。


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 従来、指宿に宿泊して高速船での屋久島への日帰り客や、鹿児島から屋久島へ行き、帰りに指宿に泊まる客が多くありました。しかし口永良部島の噴火以来激減し、「あらためて屋久島との連携の重要性を感じた。」とある宿泊施設の社長は語っていました。
 また、開聞町の登山ガイドさんによると、口永良部島と桜島の噴火騒ぎ以来ガイドが同行する開聞岳登山者がほとんどいないということです。火山の風評被害を一日も早く収束させることの必要性を感じます。
 指宿温泉が低迷する要因を洗い出し、街づくり、宿泊体系の見直し、新たな体験メニューの開発等早急に対策を急ぐ必要性に迫られています。


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 北薩地域の出水市では着物で武家屋敷を散策するツアーが、毎回満員となる盛況ぶりです。ツアーの最後には武家屋敷にある邸宅で、お茶や生け花の作法、琴の演奏等があり、自分で選んだ着物は持ち帰ることができます。日本の伝統文化をうまく組み合わせ活かしています。思い出づくりには最適な体験メニューですので、若い女性や外国人観光客に支持されています。県内に埋もれている地域資源の点検が必要です。
 薩摩川内市の甑島(こしきしま)が国定公園に指定され、また数年後には島全体が一つにつながり観光客誘致に拍車がかかると期待されます。


 鹿児島地域では、いちき串木野市の「薩摩藩英国留生記念館」がオープンして1年が経過しましたが、すでに8万人を超える来館者があり人気が続いています。留学生のヒストリーを前面にだし、展示の工夫や地域の小中学生も参加したPR活動等地域をあげての取組が好感をもって迎えられているのではないでしょうか。


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 「明治日本の産業革命遺産」の世界文化遺産登録が実現しました。鹿児島が誇る文化遺産を学び、先見性や人材育成等薩摩の偉大さを知る機会にしなければなりません。日本の近代化は薩摩から始まったことのストーリーを語ることが誘客には不可欠です。
 2016年は薩長同盟150周年、2018年は明治維新150周年と続きます。鹿児島の歴史を再認識させる取組が大切です。
 鹿児島ゆかりの人物や歴史を題材にした大河ドラマや番組の制作を要望するため、官民一体で定期的にNHKへの働きかけを行っています。メディアの観光への波及効果は大きく、しかも県全体に及ぶことから何としても実現しなければなりません。


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 大隅地域はスポーツ合宿が安定しています。さんふらわあの新造船や佐多岬の整備計画が発表され、これからの誘致対策の後押しになります。自然や宇宙開発、スポーツ施設の充実、食の魅力についてターゲットを絞って発信することが求められます。


 奄美は、LCCのバニラ・エアが成田から就航して以来観光客が伸びています。従来羽田からの運賃が高くて商品造成が厳しく、誘客が厳しい面がありました。
 奄振事業やプレミアム旅行券との組み合わせで沖縄並みの旅行商品が造成され、美しい自然と世界自然遺産の登録を目指している島の認知度が高まっています。
 羽田からの便と合わせて2航空会社となったことも競争に拍車がかかったと言えます。今後他の島々にいかに渡ってもらうかが課題です。


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 鹿児島中央駅前の「かごっまふるさと屋台村」は、新たにリュニューアルオープンし、25軒の個性あふれる屋台と1軒の焼酎専門店が軒を並べます。家族的な雰囲気が味わえ、鹿児島の食文化を堪能できる場所としての魅力が浸透し、ビジネスマンや個人観光客、多くの外国人が訪れています。特に東南アジアの観光客は夕食を外で食べる習慣があり、それに対応できる施設があることが滞在を可能にしています。


 教育旅行は、JR西日本とJR九州による修学旅行専用列車の設定がなされ、合わせて57校、約1万人の学生が利用しました。オフ期の定期の新幹線を利用した教育旅行も増えています。引き続き鹿児島を行先として選択してもらうためには、火山の風評被害をなくする取組が重要であり、受入地域と一緒に学校現場を訪問し、安全対策等の説明が重要になっています。


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 農漁業体験や民泊が人気となっており、民泊について提起されているのがコンプライアンスです。他県は、「簡易宿所営業の許可」を取得している農家・漁家が多くなっていますので、旅館業法で定められた許可を取得することが学校の信頼を得ることになります。 宮崎県の小林地域が「簡易宿所営業の許可」を取得して営業を強化しており、受入校数が増えて鹿児島にとってはライバルとなりつつあります。


 修学旅行は、一度に多くの生徒が動き、不況時でも実施され、取消しがなく、受入機関にとっては経営の見通しが立てられるなど安定した顧客といえます。来年から、改定バス料金が適用されることから、旅費の上限に抵触する方面は行先変更も考えられます。
 佐賀県や北九州、山口、広島地域からの誘致に力を注ぐ必要があります。
明治維新150周年の関連史跡や世界文化遺産を市内循環バスで巡るなど旅費を軽減化できるコースの提案を、エージェント及び学校側にきちんと説明する必要があります。


 市場におけるインターネットの利用は拡大し、しかも情報量の選択肢が増え、ネット販売は勢いを増しています。県と観光連盟では専任の担当者を配置し、地域の旬の情報やイベント、祭り、食等の魅力を4か国語で掲載しています。海外からのアクセスが伸びています。主要観光地を抱える市町村と連携し、シームレスでワンストップサービスのできるシステム作りが重用となっています。そのことが鹿児島への誘客の第一歩につながります。


 来年は九州新幹線全線開業から6年目に入ります。大きなイベントもなく厳しい年になりますが、開業時の熱気を思い起こし、地域で様々な取り組みを行い誘客に努めなければなりません。今年、全市町村が参画した国民文化祭のように、県民挙げて「おもてなしの心」で観光客を迎えたいものです。


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 最後に今年も毎週コラムを配信でき、通算392号となりました。1年間ご拝読いただき心から感謝申し上げます。ありがとうございました。
 来年の干支はサルで、オリンピックイヤーです。飛び回るサルのごとく、軽いフッワークで精力的に活動することが求められます。


   来年は1月4日から配信します。皆様良いお年をお迎えください。


             我が春も 上々吉よ 梅の花
                             ~小林一茶~

No.390 クルーズ船の経済効果を高めるために~事前に鹿児島の魅力をいかに届けるか~

2015年12月14日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


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街をゆき 子供の傍(そば)を 通る時
     蜜柑の香せり 冬がまた来る
                ~木下利玄~



 2015年も残り2週間余り、今年の10大ニュースや流行語大賞などの発表もあり、世相を反映した出来事が選ばれています。今年の流行語大賞は「爆買い」に決定し、急増している中国人の旅行スタイルが国民に大きな印象を与えたことを表しています。


 2011年に国立社会保障・人口問題研究所が発表した鹿児島県の総人口将来推計は、2010年と比較すると2031年には25万2千人減少し、人口減少に伴う県内消費額は20年間、毎年約152億円も減少していきます。
 また、「日本創生会議」の調査報告では、子供を産む年代の若者女性の数が2040年には2010年と比較すると、県内の30市町村で半減すると指摘されています。
 人口減少は、各市町村にとって深刻な課題であり、「地方創生」の名のもとにいかに実効あるプランを作り上げていくかが課題です。持続的な経済発展には、外国人旅行者の誘致推進による交流人口の拡大も不可欠となっています。


 ところで、伊藤知事は今後の鹿児島の発展には、農業と観光の振興が最重要課題であると明言されており、交流人口の拡大に合わせて、観光客等に対する特産品の販売、国内外への販路拡大を図る取組が重要となっています。


 観光庁の試算では、定住人口の1人当たりの年間消費額(124万)は、旅行者の消費に換算すると外国人旅行者10人分、国内旅行者(宿泊)26人分、国内旅行者(日帰り)83人分にあたるとしています。少子高齢化と人口減少に対応し、地域の活性化には持続的な交流人口の増大が必要であり、外国人の誘致は不可欠となっています。


 今、インバウンドがのびている要因として、ビザ発給要件の緩和、免税品目の拡大と取扱店の増加、和食の世界無形文化遺産登録、円安等があり、2015年の年間累計では2,000万人を超える勢いです。


 県内でも誘致に向けての態勢づくりが急がれています。鹿児島県の2014年の外国人宿泊者数は26万6,000人で、前年から123.8%増加しています。国別宿泊者数は、台湾、韓国、中国、香港の順で、台湾が全体の40%を占めています。


 しかし、鹿児島県の外国人宿泊者数は、長崎県、熊本県と比較すると2分の1程度で、宿泊者全体における外国人の割合は3.5%です。福岡県8.8%、長崎県6.7%、大分県6.5%、熊本県6.9%と比較すると低くなっています。
 東アジアから九州への入込観光客は、交通アクセスが充実している北九州、中九州方面がメインで、鹿児島県まで及んでいないことが示されています。


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 鹿児島空港は4都市と結ばれ週12便なのに対し、福岡空港は22都市へ週301便もあります。博多駅から九州新幹線利用で1時間17分で結ばれていますので、わかりやすく使い勝手の良い切符の導入等、移動コストの軽減化が何よりも求められています。
 鹿児島県の今年の外国人宿泊者数の累計は、25万8,150人(1月~8月)で、前年比157.7%の大きな伸びとなっています。
 熊本空港や宮崎空港にも東南アジア路線が増えて、観光ルートに県内の観光地や宿 泊地が組み込まれていることもあり、3県との連携がますます重要になっています。


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 ところで外国人旅行客の誘致には、クルーズ船の誘致も欠かせません。クルーズ船は一度に多くの観光客を運ぶことができ、観光コースに入ると、入場施設や飲食店は多くの経済効果が期待できます。
 今年マリンポートに寄港する海外のクルーズ船は47隻(4月~12月)で、過去最高になるものと思われます。特に中国からの船が25隻となっています。多くの中国人が訪れていますが、入港後の観光コースや食事のあり方について課題も多く指摘されています。
 団体でめぐる観光バスは有料の観光施設には寄らず、昼食は車内やフェリーの中で軽食を提供されるツアーが多く消費は限られています。また、ショッピングについては、郊外の空店舗を使用した雑貨店等数店舗に集中しています。経済波及効果は運輸機関を除けば限定的ではないでしょうか。


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 せっかく鹿児島を訪れながら、観光客は鹿児島の食、特産品、おもてなし、日本の伝統文化、世界文化遺産等に触れる機会がなく、慌ただしく帰っていくだけの印象です。
 現地エージェントの手配する旅行費用に限度があると思いますが、少なくともシヨッピングや街を散策できる自由な時間を与え、鹿児島の良い印象を持って帰っていただくことで、リピーターになるのではないでしょうか。


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 また、受入を担当している6団体で構成された「鹿児島海外観光客受入協議会」の機能強化を図って、歓迎行事・案内中心の業務から、積極的に鹿児島の魅力ある観光ルートの提案や街並み、食、特産品等の魅力を、事前に参加者に告知する取組が重要です。そのことがクルーズ船寄港の際、消費を増やし経済効果をもたらす取組につながります。
 来年度は、博多港には400隻余りのクルーズ船の寄港が予定されています。鹿児島県は、九州本島の最南にあり、横浜、神戸、博多港から南に下るクルーズ船にとっては、中継基地の役割も果たせます。
 一方、ある県では経済効果が見込めない船については、寄港を断りたいという情報も伝えられています。


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 外国人が自由に楽しめるためには、市中の案内表示、アクセスの同一化、銀聯カードの拡大やWi-Fiの整備、多言語表示等受入態勢整備も不可欠です。
 今後富裕層を対象としたクルーズ船については、桜島、砂蒸し温泉、世界遺産、観光列車、食、祭りなど他地域にない観光資源のPR、招聘事業を積極的に推進し、認知度向上を図らねばなりません。


 最後にインバウンドの拡大には、まず南九州3県に就航している定期便を活用した観光客誘致が第一です。FIT(個人旅行者)が増加しており、アクセスや食等WEBでの情報提供やレンタカーの乗り捨て料金の軽減化等が重要になっています。


 次に九州最大の海外路線を持つ福岡空港からの誘客が重要であり、新幹線活用による時間短縮効果のPRやインバウンド専用のさらなる割引キップが不可欠です。航空機利用の観光客は、宿泊につながるメリットがあります。


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 それに加えて、一度に多くの観光客が乗船するクルーズ船の誘致も重要です。CIQの改善、1日という短い滞在時間の中で楽しく過ごせる魅力ある観光コースの設定、自由に散策できる多言語マップ、外国語対応可能の店の表示等安心して散策できる魅力ある情報発信が必要です。これからは経済効果をいかにもたらすかの視点で取組みたいものです。


No.391 肥薩おれんじ鉄道を活用した広域観光連携について~地域資源を磨き経済効果をいかにもたらすか~

2015年12 月21日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


          こがらしや 海に夕日を 吹き落とす
                       ~夏目漱石~


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 出水平野には今年も1万羽以上のツルが飛来し、地域の人々の温かい保護のもと、越冬の時期を楽しんでいます。
 ロ―カル列車で田舎を旅する番組が人気です。鉄道会社にとっては、イベント、伝統的祭りや食、珍しい景観をPRする機会となり、ファンを開拓するチャンスとなります。
 日本の原風景が多く残る県内でも、車内から見る東シナ海に沈む夕陽は格別に美しく、それを見るために肥薩おれんじ鉄道に乗りに来る旅人もいます。


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 肥薩おれんじ鉄道は、平成16年3月13日九州新幹線部分開業に伴い、JR九州から 八代~川内間を承継し開業しました。沿線には28の駅がありますが、駅の業務や施設管理については八代駅のみ肥薩おれんじ鉄道の直営であり、その他の有人駅はすべて業務委託駅または簡易委託駅として、沿線地域のNPO法人や財団法人が受託して管理しています。


 少子高齢化の進展で肥薩おれんじ鉄道沿線の人口が減少し、地元住民の日頃の利用も少なく現在利用者の7割は高校生の通学利用者です。
 学校の統廃合や生徒数の減少もあり利用者は減少していくことから、沿線住民の利用だけでは経営収支は厳しくなっており、他の地域からの利用客増大をいかに図るかが路線存続の大きな課題となっています。
 イベント等創出による沿線住民の利用頻度を高め、国内外の観光客を増やす取組が不可欠となっています。


 ところで最近の観光は、団体旅行から個人旅行へシフトしており、また、宴会型旅行から地域の生活文化に触れる旅行が人気となっています。温泉地や著名な観光地はすでに訪れている人が多く、その意味では国内旅行は成熟の時代へと移っており、地域へ誘客できる機会と捉えなければなりません。「おれんじ食堂」や「おれんじカフェ」の人気がそれを表しています。


 沿線の各自治体も観光振興に力を注いでいますが、単独の自治体では限界があり、連携しての誘客対策が求められています。肥薩おれんじ鉄道の沿線自治体で構成される利用促進協議会の担当者会議に、講師として参加しました。参加自治体の担当者は鉄道が置かれた危機感を共有し、今後連携して取り組む必要性を感じたのではないかと思います。


 肥薩おれんじ鉄道沿線の魅力と、今後の誘致策について述べてみたいと思います。
 まず、各駅が九州新幹線駅との併設や比較的近い場所にあることや、熊本、鹿児島空港とも東南アジア路線を持ち海外からの誘客がしやすい位置にあります。肥薩おれんじ鉄道を組み込んだコースを商品化し、和食や日本の伝統文化を組み入れることで、東南アジアの人が喜ぶ日本の美しい四季折々の自然景観やおもてなしの心を堪能できるのではないでしょうか。


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 地域資源を活用した取組みとして伝統文化の体験が人気を博し、若い女性や外国人が火 付け役となっています。出水市では着物で武家屋敷を散策するツアーが、毎回満員となる盛況ぶりです。ツアーの最後には武家屋敷にある「税所邸」で、お茶や生け花の作法、琴の演奏等があり、自分で選んだ着物は持ち帰ることができます。思い出づくりには最適な体験メニューですので、若い女性や外国人観光客に支持されています。今後肥薩おれんじ鉄道を利用してきた参加者には特典を与えるなどの差別化を図ることで、列車の魅力が浸透します。
 また、参加者に食や地域の特産品購入の機会を提供し、経済効果を生み出すことで持続できる地域となります。


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 出水市では学生への農漁業体験と民泊が人気となり、今年は2,500人を受け入れています。先日訪れた関西のある中学校の校長先生の話では、出水市での民泊の良い点として「新幹線の下車駅からすぐスタートできる」、「受入態勢が整っている」、「おもてなしの心が充実している」ことなどをあげていました。行程の一部に肥薩おれんじ鉄道を利用するコースを組み込むことで、生徒たちの新たな思い出づくりになると思います。エージェントへの働きかけが重要です。


 地域色・田舎の魅力を前面にだすことが都会の住民を魅了します。沿線の珍しい四季折々の景観、古刹、匠の人、秘湯、民泊、伝統食、古民家レストラ等「希少性」「社会性」「経済性」を鋭くアピールできる地域資源を活かし、ストーリー性を加えて商品化することで、メディアの目に止まり全国的にPRが可能となります。


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 沿線にある休耕田、古民家の活用支援等PRも欠かせません。Iターン、Uターン者の受け皿作りに努め、2地域2居住や定住促進が地域の活力となります。遠足や郊外学習等の学校行事、大学のゼミ旅行、自転車を乗せて駅を基点とするサイクリング大会等のイベントの開催も鉄道の利用促進につながります。また、阿久根市の「華の50歳組」に代表される同窓会、住民を対象とした市町村号、老人クラブ、成人式等人生の節目節目の記念号を運行するのも地域への愛着を感じる機会になるのではないでしょうか。


 今65歳以上の高齢者が四分の一を超えており、旅行需要が旺盛なこの層を取り込むためには、バリアフリー対策等の環境整備が欠かせません。駅の改修時は特に配慮が必要です。


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 最後に、来年の4月から「ななつ星in九州」の運行が予定され、肥薩おれんじ鉄道を走ります。「薩摩高城駅」では、東シナ海に沈む夕陽を乗客に見ていただくため、数分間停車することから肥薩おれんじ鉄道のイメージアップにもつながります。



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 甑島(こしきしま)や阿久根の魚、出水の海苔、エビ、果物等地域ならではの食材を乗客に提供し、感動・感激を与えることがブランド化につながります。また、看板の形や色に配慮し、沿線の雑木の伐採等景観を守る取組や走る列車に手を振り、駅では地域ならではのおもてなしの心の提供が乗客の印象に残ります。人の魅力が地域の評価になります。
 来訪者が、また行きたいと言える地域になりうるかが重要です。


 日本の鉄道は最北端稚内駅から最南端の終着駅枕崎駅までつながっています。利用促進に当たっては肥薩おれんじ鉄道管内だけで完結させるのではなく、熊本、鹿児島両県、九州管内、全国、海外に目を向けて誘客に努めることが、路線維持につながると信じてやみません。
 沿線自治体は様々な取り組みを推進し、我町の宝として肥薩おれんじ鉄道を地域で守っていくんだという気概が求められるのではないでしょうか。




 『重なり合った山々や原生林や深い渓谷の秋に見惚れながらも、私は一つの期待に胸をときめかして道を急いでいるのだった。そのうちに大粒の雨が私を打ち始めた。折れ曲がった急な坂道を駈け登った。ようやく峠の北口の茶屋に辿りついてほっとすると同時に、私はその入口でたちすくんでしまった。余りに期待がみごとに的中したからである。そこで旅芸人の一行が休んでいたのだ。』
                     小説「伊豆の踊子」川端康成著より



No.389 バリアフリーの対応が経営を左右する~多くの人々に旅の感動を与えたい~

2015年12月7日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


        うしろから 追はるるやうな 師走哉
                         ~正岡子規~

 師走に入り街角にはクリスマスの飾りが多くなり、人々の歩く姿も早く感じられます。 木枯らしが吹くとコタツが恋しい季節となり、飲食店では忘年会の準備で忙しくなります。 1泊旅行を兼ねて温泉地で忘年会を開く企業も少なくありません。一頃は送迎付きのホテルが多くありましたが、今では人手不足もあり遠方までの送迎は少なくなっているように感じます。年1回の旅行ぐらいは豪華に楽しくいきたいなと思っている方が多いのではないでしょうか。
 風評被害等で桜島の宿泊や観光施設が厳しい経営環境に置かれています。今年の忘年会は桜島に渡ってはいかがですか。「桜島もくもくクーポン」を活用して観光も楽しんでください。


 ところで観光庁が発表した26年宿泊統計によると、日本人の国内での総宿泊者数は4億2868万人余りとなっており、総人口で割ると一人当たり3.4泊していることになります。前年より若干増えていますが、せめて4泊ぐらいはしていただき国内経済の活性化につなげたいものです。


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 日本は少子高齢化が進行し、65歳以上の人口が全体の4分の1を占めており、その割合は毎年高くなり、これらの層をいかに取り込むかが、国内旅行の需要拡大につながるものと思っています。(人口は平成25年9月15日推計)
観光庁は高齢者や障害などの有無にかかわらず、多くの人々が気兼ねなく旅行を楽しむ「ユニバーサルツーリズム」を推進しており、その環境整備に努めています。
 健常者と障がい者が安心して旅行を楽しむことができる「バリアフリー旅行」のマーケットが拡大しています。しかし受入機関や地域によって対応に差があり、積極的に取り組んでいる宿泊施設では宿泊者が10倍に増えた旅館もあります。


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 このような状況の中、昨年に引き続き、「ユニバーサルツーリズム」の普及に積極的取り組んでいる「特定非営利活動法人日本バリアフリー観光推進機構」の中村元氏を招いて、屋久島町と鹿屋市で研修会を実施しました。また、地元鹿児島で活動されている「特定非営利活動法人eワーカーズかごしま」の理事長である紙屋久美子氏等を交えてパネルディスカッションも実施しました。


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 中村氏の本業は水族館プロデユーサーで集客対策を専門とされおり、伊勢の鳥羽水族館にバリアフリー対策を講じ、入館者数が大幅に増加した実例を発表されました。中村さんがプロデュースされた東京の「サンシャイン水族館」、北海道北見市の「北の大地の水族館」でも、来館者が大幅に増加しています。増加の要因として、障がい者の為の環境整備が挙げられます。障害者手帳を持っている人は日本の人口の約3%ですが、鳥羽水族館の入館者の調査によると、一人での来館者は少なく、同行者を含めると4人程度で来る方が多く、障害者手帳を持った方の入館者が増えると、全体の入館者増に繋がると話されました。


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 今後バリアフリー旅行のマーケットが広がることは確実です。また、来訪者を増やす対策としては、旅行者個々の身体状況に合わせたパーソナル基準の順守や認知度を高めることが重要で、トラブル防止のために受け入れに当たっては、精通した各地のバリアフリー相談センターを活用して欲しいと思います。


 バリアフリーと福祉を混同し、福祉の面の施設改善が最優先と思っている経営者や、マーケットは小さいと思っている人が多く、受け入れに消極的な考え方があることも事実です。障がい者が利用しやすいように出入口のスロープ化、最低限の手すり、洋式トイレの等態勢整備が必要です。
 2020年の東京オリンピック、パラリンピックを見据えて全国的にバリアフリー相談センターを増やし、海外からのお客様への対応も考慮しなければなりません。
 また、住民への理解不足を解消すべく情報を広げることも大切です。


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 旅行エージェントの企画商品には、「旅をあきらめない!夢をあきらめない!」、「誰にでもやさしい旅」等バリアフリーの旅が増えています。また専門の部署を持ち、「介護士と行くツアー」等障がい者に特化している会社もあります。
 エージェントだけでなく、鉄道、バス会社、宿泊機関やその他関係機関の協力、それに従事する職員の努力が顧客の安全と満足に繋がります。
 バリアフリーのマーケットは確実に拡大すると想定され、受入機関の綿密な連携が必要であり、「バリアフリー相談センター」を十分活用して欲しいと思います。


 バリアフリーは、物理的障害を取り除くだけではなく、情報、文化、規範、そして我々の心や考え方等様々なところに存在する「バリア」を取り除くことが、まず大切ではないでしょうか。ソフト面の充実が重要であり、障がい者への言葉遣いやおもてなしの心を学ぶ勉強会が必要です。そのことが施設全体の評価を高めます。
 国民の意識の中にもバリアフリーの考え方を理解して浸透させることが、日本においてユニバーサルツーリズムが定着できるかの「鍵」になると信じます。


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 最後に、是非旅行に連れて行きたい高齢者や障がい者が、皆さまの周囲にも多くいらっしゃると思います。旅は人の心をわくわくさせます。多くの方々に旅行の感動を味あわせたいものです。心の中の「バリア」を取り除き、一緒に旅に出ましょう。旅の感動に境界はありません。




          ほととぎす 嵯峨へは一里 京へ三里
                    水の清滝 夜の明けやすき
                          与謝野晶子『みだれ髪』

No.388 2016年の対策を怠りなく~ここ5年間で一番厳しい年に~

2015年11月30日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


 強い日本経済の復活に向けて、政府は地方創生の名のもと様々な施策を推進しています。観光の分野では旅行需要を喚起するため「プレミアム商品券」や「旅行商品造成支援策」等が各県で展開されています。
 その効果もあり、特にインバウンドが好調に推移しており、円安、ビザ取得要件の緩和、免税品目の拡大、和食の世界文化遺産登録、LCC就航効果等で、年内には2,000万人に到達する勢いです。


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 鹿児島県では、口永良部島の新岳噴火、桜島の噴火警戒レベルの一時アップ、「錦江湾サマーナイト大花火大会」の中止等で、最大の需要が見込める8月の宿泊客が落ち込みました。9月以降は、プレミアムお得旅キャンペーンの展開、「第30回国民文化祭・2015かごしま」開催等があり、比較的順調に推移するものと思われます。
 オープンから2年目に入った「薩摩藩英国留学生記念館」の人気も定着してきました。 近代日本の若き原動力となった薩摩人の偉業を学ぶことができる施設で、学校の一日遠足や視察旅行が多くなっています。
 LCCが就航している奄美大島への観光客が伸びています。沖縄と違った自然の魅力や島唄、伝統芸能等の情報発信が都会の人々の心をとらえていると感じます。


 ところで2016年は、「薩長同盟締結150年」の年ですが、他に大きなイベントも 少なく、ここ5年で一番厳しい年になると、覚悟して取り組まねばなりません。
 県民が県内の魅力を知り、自らPRできることが重要であり、県と観光連盟では引き続き次の3つの施策を展開します。

  1. 主要観光地域(指宿・霧島・鹿児島)発の広域観光周遊ルートの整備
  2. 源泉数全国2位を誇る本県温泉地の優位性を生かした温泉地めぐりルートの整備
  3. 鹿児島のNO1の観光素材である桜島の再評価と眺望スポットめぐりルートの整備
を中心にPRの強化と受入体制の充実も図っていきたいと考えています。



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 県内の話題としては、JR九州の観光列車でもっと人気のある「ななつ星in九州」が、 4月から「肥薩おれんじ鉄道」を走ります。「ななつ星in九州」が運行されている沿線の魅力を発信し誘客に結び付けることが重要です。車内で使用されている特産品や食材はブランド化を図らねばなりません。また、「おれんじ食堂」や「おれんじカフェ」の乗客を増やす努力も求められます。


 県内には28の有人離島がありますが、FDAやJACを活用し、オンラインのない空港からのチャーター便を増やし、時間的短縮を図ることで旅費の割高感を払しょくできると思います。新たなLCCの就航も待たれます。また、時間にゆとりのある熟年層には豪華なクルーズ船の寄港を、若者には夏の美しい海や大学のゼミのフィールドとして売り込まねばなりません。


 国定公園に指定された「甑島」、世界で一番美しい宇宙基地がある「種子島」、世界自然遺産の「屋久島」、平成30年に世界自然遺産登録を目指す「奄美大島・徳之島」等は、他県の島にない魅力を秘めており、オンリーワンの情報発信が必要です。


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 7月には「明治日本の産業革命遺産」、世界文化遺産に登録されました。その構成資産は3箇所です。「明治日本の産業革命遺産」は鹿児島がスタートであることと、そのストーリー性を語ることで遺産の価値が高まり誘客に結び付くと思います。登録された翌年の取り組みが重要と考えており、そのことが2018年の明治維新150年につながるのではないでしょうか。


 鹿児島市は、日本を代表する都市型観光の魅力を備えた街で、歴史、自然、温泉に加え、食の魅力が観光客の滞在を可能にしています。県内各地域の魅力が増すことが結果として鹿児島市に宿泊することになります。桜島のさらなる情報発信、アクセスや大会運営設備の充実等を活かし、MICEの積極的誘致が重要です。また、県庁所在地で温泉の泉源数が日本一であることのPRが求められます。


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 一方、指宿地域が苦戦を強いられています。各施設の設備やおもてなし等は問題ないと考えています。「指宿のたまて箱」の乗車率は好調であることから、多くの観光客が日帰り観光になっています。「砂蒸し温泉」頼みでなく、女性層、ファミリーが滞在したくなる仕組みづくりが必要です。駅前通りや2次交通の整備、小物店・カフェの設置、ブランド品の開発、大隅半島に渡りやすい環境整備、県内の子供たちの球技大会等の誘致が不可欠です。


 2016年も、筑紫地区、関西地域からそれぞれ集約臨時列車で中学生が訪れます。農業・漁業体験のメニューの充実、鹿屋、知覧の平和学習、桜島や霧島の火山・自然学習、鹿児島市の「明治日本の産業革命遺産」や歴史探訪等が優位性を発揮しています。
 県内全域に、約1000軒の農家民泊の供給が広がる中で、「簡易宿所営業」の取得を強力に進めていかねばなりません。宮崎県が態勢を整え、受け入れ学校を増やしています。


 キャンペーンの中心は、今年も最大のマーケットである関東地域や、身近に来ることができる福岡地区でのPRに努めていくことが得策と考えます。東京線は航空機の供給量が多く、商品企画が容易であり、MICEの誘致しやすいことも上げられます。JR九州が12月から3月まで、大手4社のエージェントと共同キャンペーンを展開します。九州管内では福岡県からの宿泊者が多いことから、大きな効果が期待できます。
 特に九州新幹線全線開業から5年目の節目の年であり、是非成功させなければならないキャンペーンです。


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 今後日本の人口は確実に減少することから、外国人観光客の誘致は欠かせません。イン バウンドについては上海線の利用促進やソウル線の夏場の搭乗率アップ、台湾線は宮崎線が週3便となり両県で7便体制となり、職場旅行や個人旅行誘客対策が必要になっています。また、12月14日から熊本~香港の便が就航し、南九州3県でデーリー運行となります。インバウンドは4泊もしくは5泊するツアーが多く、また、個人旅行が増加しており、レンタカーの乗り捨て料金の軽減、マップの多言語化等南九州3県の連携が重要です。


 ビザ支給要件緩和等で急増しているタイ、インドネシア、マレーシア等ASEAN諸国からの誘客に対しては、ハラールの態勢整備が不可欠です。
 クルーズ船が増えていますが、現状を分析して過分に期待せず、地域経済効果をもたらす観光ルートの設定を優先しなければなりません。


 WEB販売が急激に伸びる中で、情報化社会に対応できる新たな需要吸収の仕組みづくが必要となっています。楽天やじゃらん等とタイアップしている施設は、季節波動やイベント等需要をきちんと把握し、料金設定が必要です。
 また、インターネットの普及で可視化が進んでいることから、コンプライアンスの向上と迅速・正確な情報提供が求められています。


 2016年は土曜日を入れた3連休が7回ありますが、4日以上の休日はなく、旅行需要を喚起するには不十分です。平日対策、オフ対策など早目の仕掛けを準備し、季節感あふれる企画が必要です。周辺市町村の祭りや、花、食、伝統行事等を組み込み、「こだわり」「ここでしかない」「今が旬」等の生活・文化の香りがする商品企画が求められています。


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 鹿児島県は南北600キロに及び魅力多彩な観光資源があります。県民が足元の魅力を知り、住んでいる街を誇りに思うことが「郷土愛の構築」につながります。販促活動は、県外が主になりがちですが、宿泊施設等ではもっと県民向けの企画に工夫を凝らす必要があります。


 ここ数年で一番厳しい1年になると覚悟して、エージェントやキャリアとの商品造成やキャンペーンの展開、実効性のあるPR活動等スピード感をもって果敢に挑戦する気概で取り組まねばなりません。危機感を共有し、攻めの2016年でありたいと願っています。


       

      熟田津(にきたず)に 船乗りせむと 月待てば
                 潮もかなひぬ 今は漕ぎ出でな
                      額田王~万葉集~




No.387 武家屋敷と着物のコラボが話題に~地域に経済効果をもたらす視点で~

2015年11月24日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


     秋の田の かりほの庵(いほ)の 苫(とま)を荒み
                  わが衣手は 露に濡れつつ

                    天智天皇 ~小倉百人一首より~

 師走まで1週間、日の入りも早くなり、冬の訪れが近いことを知らせてくれます。自然の移ろいは正確にやってきます。

 今年も冬の使者ツルが、出水平野に飛来しています。11月7日の第1回目の羽数調査で、すでに昨年実績を超える14,086羽が確認されています。ピークは12月になることから、さらに数が増えるのではないでしょうか。平成9年度より19季連続で1万羽を超えることになります。

出水のツル飛来.jpg  国の特別天然記念物として、動物は21件が指定されていますが、出水平野のツルも「鹿児島県のツル及びその渡来地」として、約245ヘクタールの地域とともに指定されています。

 これほどのツルが永年にわたり飛来してくるのは、行政、地域の人々、ツル監視員など皆様の温かい保護活動が、これまでの実績づくりにつながっていると思います。

 ツルの越冬期間中は、餌やりや傷ついたツルの保護、観光客への対応、乗用車やバス・タクシーの交通整理のほか鳥インフルエンザ防止対策など地元に課せられた業務も多く、その苦労が察しできます。けがで弱ったツルが、監視員のもとで保護、治療を受けて元気になり、春先には仲間と一緒に飛び立っていく姿は感傷的な気持ちになります。


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 毎年越冬地としてツルが飛来してくるのは、大事に育て見守ってくれる地域の人々への「ツルの恩返し」として捉え、感謝の念で迎えることが大切です。ツルはまさに出水のリピーター客です。
 ツルは縁起の良い動物で、長寿やお祝いの象徴として重宝されます。今年も年末年始にかけて多くの観光客が訪れるものと期待されます。
朝日・夕日に映えるツルの姿はまことに秀麗です。皆様もツルの見学にぜひお出かけください。


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 出水平野を走る「肥薩おれんじ鉄道」は、沿線の景観がすばらしいことから、東南アジアの観光客に人気の鉄道となっています。また、観光列車「おれんじ食堂」や「おれんじカフェ」では、温かい食事を提供するなど外国人に配慮したおもてなしを提供しています。

 11月4日には、九州産業大学で観光を学ぶ学生50人が、昨年度に引き続き「おれんじ鉄道」を利用し、研修を行いました。出水、阿久根、薩摩高城、川内駅で市や観光協会の歓迎を受け、大感激の様子でした。琴線に触れる旅になったのではないでしょうか。


 ところで、外国人を中心に、「着物で出水武家屋敷を散策しませんか」のツアーが大人気です。着物と帯は持ち帰ることができ、履物、足袋、長襦袢などのレンタル料と着付け代も含んで5,500円です。武家屋敷の中にある「税所邸」の和室では、お茶、お菓子のおもてなしもあります。

武家屋敷_散策1.jpg  今着物を着る人が減少し、呉服屋さんは多くの在庫を抱えており、安く仕入れることが可能となっています。そこで自分で選んだ着物で、日本の伝統的建物群である「武家屋敷」を散策するというストーリー性が女性の心を揺さぶります。日本文化を体験できるメニューであり、地域資源も生かされます。
 また、料金の安さに加えて、持ち帰ることができることが人気の要因かもしれません。県内の大学生にも人気が浸透し、毎回満員の盛況です。


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 課題は、参加していただいた観光客に出水の食や特産品を購入していただき、経済効果をもたらす仕組みづくりです。散策の途中に昼食をとっていただき、最後の見学場所でオリジナルなお土産品を買っていただくことが必要です。そのためにはストーリー性のある食材やお土産が不可欠です。「いずみ親子ステーキごはん」や「糖度の高いみかん」「海産物」「クマエビ」等です。
 参加人員を限定し、着物着付けという本物の日本文化体験が、外国人を喜ばせます。出水のオリジナル商品として定着させることが重要です。
 人口減少が続き経済のスモール化が進む中で、交流人口の拡大には感動・感激をもたらす取組が不可欠です。急増している外国人を出水に誘致するには、他地域にないメニューが欠かせません。


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 出水市では、今秋、市の人口と同じ数の竹灯篭を武家屋敷等に陳列するイベントを創出し、多くの観光客を集めました。これからはストーリー性を加えて、地域資源を活用することが求められます。そのことが地域の価値を高めることにつながると信じます。




          稲刈りて 淋しく晴るる 秋の野に
                                                      黄菊はあまた 眼をひらきたり
                                    ~長塚節~




No.386 噴煙を上げる桜島の姿が観光客を魅了する ~県民の皆様がまず桜島に渡ろう~

2015年11月16日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 2週間にわたり県内全市町村で開催された「第30回国民文化祭・かごしま2015」が、無事終了しました。全国から1万人を超える参加者があり、自然、歴史、食、文化等、鹿児島の魅力に触れるまたとない機会になったのではないでしょうか。県民も鹿児島の文化の素晴らしさを知る大会になったと思います。今後に繋げていくことが大切です。

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 最近の県内の観光動向は、一時桜島の噴火警戒レベルが引き上げられて、3地域の住民が避難したことや、また、夏休みの鹿児島市最大のイベント「錦江湾サマーナイト大花火大会」が中止されたこともあり、8月の鹿児島の宿泊客は減少しました。(現在桜島の警戒レベルは、通常のレベル3です。)

  9月は前年を上回りましたが、今後の誘客には懸念材料も抱えています。特に教育旅行は火山活動について敏感であり、日々桜島で暮らす住民の生活ぶりや、緊急避難対策等安心感を与える情報提供が求められています。

 学校側は2~3年先の行先を決定する時期でもあり、県、観光連盟、教育旅行誘致委員会等で、関連箇所への状況説明に努めているところです。地元テレビ局を訪問し、適切な報道のお願いや、店頭販売やメディアツアーを主要に扱っている大都市圏のエージェントに対して、企画募集展開の強力な要請も行いました。

 活火山桜島から「地球の営み」や、「防災対策」等を学ぶことができることから、教育旅行のカリキュラムとして取り入れる学校が増えてきていました。

  しかし噴火警戒レベルが上がり、連日マスコミで桜島の状況が放映されたこともあり、一部の学校で行先変更や取り消しが出ているのも実情です。教育現場の方々に桜島の実際の姿を見ていただけるような取組みが大切になっています。

 教育旅行の体験メニューを提供している「NPO法人桜島ミュージアム」では、桜島に渡らない学校に対して、桜島フェリーターミナルビル内のホールを使って「出前講座」も準備するなど桜島の魅力発信に取り組んでいます。

  風評被害が懸念されることから、県では桜島支援対策として補正予算が計上されました。内容は、メディアでの情報発信強化、お得な「桜島もくもくクーポン」の発行、教育旅行の下見支援制度等です。

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 「桜島もくもくクーポン」は額面1000円のクーポン券を500円で購入できる、つまり2倍お得なもので、島内の宿泊施設、タクシー、売店、飲食店等26店舗で利用でき、期間は11月1日から来年の2月29日までです。まず県民が利用して、桜島の自然の雄大さに触れ、噴火しても観光には支障がないことを県外の方々に発信してもらいたい。

 教育旅行では、行先が決定している学校や、これから鹿児島に行先を変更したい学校などを対象に、直接学校関係者やエージェントの皆様に桜島の実情を見ていただくことで、鹿児島への誘致のきっかけづくりにもなることから研修下見支援を行うものです。施策発表以来、下見に行きたいという学校が多くなっているのは有難いことです。ハザードマップを示し、緊急避難対策等きちんと説明することで、まず行く先として検討してもらうことが重要です。

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  例年は日々噴火する桜島ですがここ2か月噴火がありません。湯之平展望所や有村溶岩展望所からは、天気の良い日は山肌まできれいに見ることができ、海岸では温泉堀体験もでき、生きている桜島の息吹を感じることができます。鹿児島滞在中に噴火している山の姿を見たかったと残念がる観光客もいます。

  ところで、鹿児島中央駅の案内所の職員に尋ねると、「桜島へは渡れますか」と訪ねる旅行者が増えていると言います。桜島では約5、000人の住民が暮らし、また、「通常と変わらない観光ができますよ」と職員の皆様は説明しています。これからも桜島の日々の姿を伝えていく努力が必要です。

  桜島は鹿児島の観光のシンボルであり、城山の展望台に立つと錦江湾を挟んで目の前にその姿が真っ先に飛び込んできます。

  県内の人はその位置関係はよく解りますが、県外から訪れる観光客は、錦江湾をはさんで市内に以外と近いことや、展望台から間近に見える噴煙たなびく桜島の雄姿に驚かされます。

  桜島は天気の良い日は、7回その姿が変わると言われます。鹿児島市民は、借景としてその姿を毎日見ていますが、もし桜島がなければ、鹿児島市は味気ない街になるかも知れません。県民がまず桜島に渡り、そのすばらしさを多くの県外客にPRしもらいたい。

 第30回国民文化祭の式典出席のために、鹿児島をご訪問された皇太子ご夫妻は、桜島桟橋に隣接する水族館「いおワールド」をご覧になりました。曇り空で桜島の雄姿をお見せできなかったのは残念です。

 桜島が噴火しても観光には支障はありません。友人等に桜島の正確な状況を発信していただき、風評被害を少しでも軽減できればと思っています。今回の「桜島もくもくクーポン」や教育旅行の現地研修補助金等を活用して、多くの人が桜島に渡ってほしいと願わずにはいられません。

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「垂水千本イチョウ」も黄色く色づき始めています。漁協のレストラン、道の駅や温泉への立ち寄りもお勧めです。

 桜島は噴煙を上げている姿が美しく、我々はそれが普段の姿であり、そのことが訪ねてみたいと旅心をかりたてます。

 今度の休日は桜島に渡り、晩秋の美しい日本を満喫しましょう。

大久保利通像.jpg我が前に 桜島あり 西郷も
    大久保も見し 火を噴く山ぞ
           ~海音寺潮五郎~

*桜島の有村溶岩展望所に歌碑が、鹿児島中央駅新幹線のコンコースにある大型ステンドグラスにも歌詞が刻まれている。

No.385 残したい鹿児島の農村風景 ~サツマイモの収穫と故郷~

2015年11月9日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


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 県内各地域でサツマイモの収穫が盛んです。鹿児島県は日本一の生産県であり、焼酎やでんぷんの原料となり、鹿児島の農業を支える基幹作物の一つです。


 私の小学校は周りが美しい田園に囲まれており、しかも子どもたちはほとんどが農家の子弟であり、学校から帰ると田畑の手伝いや風呂沸かしが日課となっていました。塾通いの子はいない、のんびりとした田舎の生活がありました。

 休日になると今の時期は、親戚・家族一同でサツマイモの収穫です。馬が掘り起こした畝から芋を集めて、根をもぎ取り、籠に入れて麻の袋に入れる仕事です。

 根をもぎ取るとき白い液が出て手に付き、それが土に触れて黒くなり、石鹸で洗ってもなかなか落ちず、石油を少しかけると落ちるものでした。翌日学校に行くとみんな同じ手をしており、芋掘りの手伝いをしたのかと笑って語り合う楽しさがありました。

 籠に盛り重たくなったサツマイモを運ぶ作業は、子どもにとっては重労働でしたが、近所総出で仕事をした後の楽しさは格別でした。


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 休憩時間になるとおやつは、茹でたサツマイモや飴、団子、柿、ミカン、お漬物等でしたが、みんなでワイワイ言いながら食べていたのが懐かしく思い出されます。ほとんどが家で収穫し、加工したもので美味しさは格別でした。あたりが薄暗くなるまで総出で作業し、芋畑は一日で黒い土の畑に変わりました。芋の蔓は、次の作物の「肥料にする」ため燃やしていました。(今は燃やすことは禁じられています。)


 中学校に入るとクラスごとの農園があり、春先には家から持ち寄った芋の苗を植え、秋には全員で収穫して、近くの農協へリヤカーで運び、売上げは学級費に組み入れていました。金額は大きくありませんでしたが、全員で育てて収穫した喜びは何ものにも代えがたい経験でした。家庭からの納入費を少しでも軽減するための対策だったと思います。


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 今都会の学生たちは農家・漁家民泊をしながら、いも掘り、みかんの収穫、花の栽培、いちご狩、餌やり等の体験を行っています。サツマイモが土から掘り起こされると、自然の営みに驚きの声を上げます。

 全国的に民泊しながら農業・漁業体験等が増えており、農業や漁業が大変盛んな鹿児島県としては、他県に負けない受入態勢の充実が求められます。


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 甑島には「島立ち」という伝統的風習が残っています。中学3年生になるとサツマイモの苗を植え、秋に収穫して島の蔵元で焼酎をつくってもらい、5年間寝かせて成人式の時島に帰ってきて同級生が集まり、その焼酎を開けて飲むという行事です。

 甑島には高校がないためほとんどの子供が島を出て進学、就職して行きます。島での思い出づくりがサツマイモの植え付けと焼酎造りに繫がっているのです。

焼酎造り.jpg 毎年約800本程製造され、卒業生の家や関係者しか手に入らず、「幻の焼酎」として人気があります。15歳の時全員で育てたサツマイモで焼酎を造り、5年間寝かせて成人式の時飲むという「ストーリー」が、感動を呼んでいるのではないでしょうか。

 各地で開かれる成人式は、中学校時代の思い出に一番話が弾むと言われます。いつまでもふるさとを忘れない人間でいたいものです。


 鹿児島県の農業算出額は第4位です。品目では、「サツマイモ」、「そらまめ」、「豚飼養頭数」、「肉用牛(黒毛和牛)飼養頭数」は、全国第1位です。また、水産物でも「クロマグロ」、「カンパチ」、「ブリ」、「ウナギ」の養殖生産量が、そして「カツオ節生産量」も1位です。食の安全・安心や本物を求める消費者が多くなっており、鹿児島が誇る第一次産品を活用した、特産品の新たな開発が望まれます。また、人口が減少していく日本にとって雇用確保問題も深刻です。地元の人材を活用して生産を増やし、販路拡大していくことで地域創生につながります。


指宿のたまて箱への旗振り.jpg

 今外国人が急増しています。円安、日本食の世界無形文化遺産登録、免税品の拡大、LCCの就航等が大きな要因ですが、地域への誘客には美しい日本の原風景のPR、祭り、食、温泉、世界遺産、おもてなし等世界に誇る日本文化の提供が欠かせません。指宿地域では、観光列車「いぶすきのたまて箱」に手を振る学生や市の職員、一般の方々の取組が外国人にも大好評であり、その取組は全国に広がっています。まさに、日本の文化です。


 先日、久しぶりにふるさとに帰り、深まり行く秋を楽しみました。家の裏山には柿の実がたわわになっていますが、採って食べる人もなく、鳥たちの餌になっています。

 寂しくなる里山ですが、まもなく紅葉が始まり人々の心をときめかしてくれるはずです。いつまでも残したい農村の風景がそこにありました。

             「旅愁」
       作詞:犬童球渓 作曲:オードウェイ
         ふけゆく秋の夜 旅の空の
         わびしき思いに ひとり悩む
         恋しやふるさと なつかしき父母
         夢路にたどるは さとの家路
         ふけゆく秋の夜 旅の空の
         わびしき思いに ひとり悩む

No.384 歴史に残る「国民文化祭」に県民も参画しよう ~県内の観光PR大使も一役を担う~

2015年11月2日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

      妹の小さき歩み いそがせて
           千代紙(ちよがみ)買いに 行く月夜かな
                         ~木下利玄~


 「第30回国民文化祭 かごしま・2015」が始まりました。国民文化祭は、各種の文化活動を全国規模で発表、競演する機会を提供することにより、国民の文化活動への参加の機運を高め、新しい芸術文化の創造を促すことを目的に開催されてきました。

 今回の国民文化祭の特徴は、県下43全ての市町村で何らかの文化的行事が開催されることです。
開催期間は、11月15日(日)まであり、県民が多くの会場に足を運んで欲しいと願っています。
県内に28の有人の離島があることは意外と知られていません。大会後に離島を訪れる参加者が多くなるのではないでしょうか。


 大会成功には県民あげての盛上げが必要であり、出演者のみならず地域住民が参加することで、参加者との交流が深まり、地域の魅力を発信する機会にもなります。


おはら祭り.jpg
 また、地域文化の継承には後継者の養成が不可欠であり、子どもやお年寄りのために出演の機会をつくってあげなければなりません。地域文化を掘り起こし、地域の文化を学ぶことは郷土愛を育てることになります。


 7月には「明治日本の産業革命遺産」が、「世界文化遺産」に登録されました。鹿児島市内にその3つの構成資産があることから、国民文化祭の開催期間中にも多くの見学者があると期待されます。
 2018年には明治維新150周年を迎えます。とりわけ、薩摩は多くの偉人を輩出し、近代日本の礎を築く原動力になりました。「近代化産業遺産群」や「郷中教育」、「薩摩藩英国留学生」等の歴史を学ぶことで、薩摩の先見性や技術力、教育・文化水準の高さを感じることができます。大会参加者に薩摩の歴史・文化を認識してもらえる絶好の機会としなければなりません。

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 ところで、遠来のお客様には、「心温まるおもてなしの心」の提供が不可欠です。観光の顔として地域を売り出すのが、親善大使やPR大使の役目の一つです。

 国民文化祭開催を前にして、今年もPRスタッフの役割と「おもてなしの心」の極意を学ぶ研修会を開催しました。県内12地区から23名のPRレディーが参加し、ANAビジネスソリューションズの倉園恵美子さんが講師を担当しました。
最初に県観光課の井立田課長補佐が「観光かごしまの現状と課題について」、入込状況や観光振興策等を説明しました。
PR大使も鹿児島の観光の概要を理解してもらい、自らの地域のPRや今後の活動に活かして欲しいと思います。


 「第10代かごしま親善大使」である小原茉莉花さんは、11月2日「おはら祭り」の前夜祭を機に、後任に引き継ぎます。「親善大使の役割やPRの際の注意点」など1年間の経験を通して学んだことを解りやすく話してくれました。
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 「大切なのは真心。一生懸命な想いは聞き手に必ず伝わる。」、「自分なりの切り口で、鹿児島を再発見し体験することが、自分のPRに幅を広げることになる。」と自ら地域を知ることの大切さについて語ってくれました。
また、親善大使の役割は、「鹿児島を愛する一市民として、等身大の情熱を傾けて、かごしまをPRすること」、自信を持って活動するには、「自分なりの見つめ方、学び方、感じ方で鹿児島の魅力を再認識し、それを鹿児島の言葉で伝えることです」と語りました。

最後に「私が思い描く理想の親善大使像は、善く親しみ、自然体で臨む」ことですと、気取らない姿の大切さも語ってくれました。
 小原さんの自信に溢れた堂々とした発表の姿に1年間の努力の成果が凝縮されているように感じました。親善大使としての役割は終わりますが、引き続き鹿児島の魅力発信に努めて欲しいと、彼女の今後の活躍に期待したいと思います。

 
PR研修講師.jpg
 今回の研修会では、講師の倉園恵美子さんが「人を引き付ける表情の作り方」、「立ち居振る舞い」、「PRとあいさつの仕方」、「品物の受け渡し方」等について2時間あまり実践スタイルの研修を行いました。
「人の印象は最初の15秒で決まる」という言葉が印象的でした。講師の緊張の中にユーモアあふれる話に、各PR大使も時間を忘れて勉強していました。


 これからの親善大使、PR大使に望むことは、自ら地域を愛し語れる人になってほしい。そのためには、日頃から地域を回り、歴史、食、温泉、自然、特産品、地域の文化等への造詣を深めることです。
 特にストーリーを交えて自分の言葉で地域を楽しく語れる人が印象に残ります。最近の観光は個人旅行が主流で、地域の生活・文化を学び、体験・交流を求める人が多くなっています。
 また、PRの際は、滞在したときの「時間」の過ごし方や「旬の情報」を伝授して、「一度PR大使の住む鹿児島を訪れたい」等、かごしまのファン作りに努力して欲しい。 
 今回の研修を通して、PR大使同士のコミュニケーションも深まりました。相互に切磋琢磨しながら、実践力を培って鹿児島の観光の誘客に努力して欲しいと思います。


 東京オリンピック招致に於ける滝川クリスタルさんの「お・も・て・な・し」のPRが大好評でした。
 観光地の最終的な評価は人の魅力です。県民一人ひとりが、観光客を温かく迎える態勢づくりが求められます。
 最後に国民文化祭開催を機に、鹿児島に新しい文化を根付かせる良いチャンスにしなければなりません。


 第30回国民文化祭の成功に向けて、PR大使の活躍に期待するとともに、県民一人ひとりが参画意識を持って、おもてなしのこころで迎えたいものです。
 
       りんてん機 いまこそ響け
                うれしくも
                    東京版に 雪のふりいづ
                         土岐善麿~黄昏に~

No.383 地域資源をヘルスツーリズムに生かす ~温暖な気候、花粉の少ない島、温泉、食等を商品に~

2015年10月26日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


 2012年度の「国民医療費」の総額は、39兆2,000億円余りで、6年連続で過去最高を更新しました。
(2012年度厚生労働省調査)

内訳では、65歳以上の医療費は65歳未満の4倍以上となっており、仕事をリタイアし比較的年金受給者が多い世代の医療費がかさんでいます。高齢化社会の進展で今後も医療費が増加していくのは、確実な状況です。
日ごろから病気にならない体づくりや、食事の改善など予防医学の推進等が求められます。健康づくりの機会を提供し、増大し続ける医療費の抑制が重要な課題となっています。

 このような中「医学的な根拠に基づき健康回復や維持・増進につながる観光」すなわちヘルスツーリズムが注目されています。


 日本では2006年に観光立国基本法が成立し、国として観光政策がすすめられています。「国民が健康で文化的な生活を享受できること」を政策の基本理念に掲げており、観光の重要性が示されています。
2009年に観光庁が作成したアクションプランでは①1泊2日の旅から2泊3日以上の滞在型の旅行者を受入易い環境づくりに努める。②国内観光を行う国民の満足度を高め、連泊・リピート客の増加を図ることなどを掲げています。

 ヘルスツーリズムは国民の健康づくりに貢献し、観光客の連泊・滞在客の増加を生みだし、地域に経済効果をもたらすものとして期待が高まっています。
 
最近の旅行のスタイルは、団体旅行から個人旅行に変化し、体験・交流型の旅行が増加していることから、滞在先での多様な観光資源を活用したメニューづくりが重要になっています。

 ヘルスツーリズム推進上のメリットや課題について整理したいと思います。

 地域のメリットとしては
・「地域住民が主体となった健康街づくり」を掲げることで、運動や食等に興味を持ち健康的な街づくりの推進が展開できます。そのことが医療費の軽減化につながります。
白谷雲水峡.jpg
・「健康街づくり」は、自治体の政策の柱として、地域の新たなイメージアップや知名度が向上できます。埼玉県の東松山市で毎年開催される「スリーディマーチ」は、全国から15万人を超えるウォーカーが集まり、市民あげて歓迎し、健康街づくりに努力しています。
・地域資源を活用して滞在メニューやイベントを売り出すことで、誘客が容易となり経済効果が見込めることです。たとえば、温泉療法、世界自然遺産地ウォーキングやマラソンコースを設定することで、地域の新たなインフラが整備され、町づくりが進み、観光客を誘致しやすくなります。
 
 観光関連業者のメリットは
・リピーターの創出や宿泊回数の増加は、観光関連会社の取扱の増につながります。
・新たなビジネスモデルが構築され、雇用増等新たな経済効果を創出できます。
 
 受入れ地域の推進上の課題について触れたいと思います。
・単独での運営は厳しく、「産」、「学」、「官」、「民」の連携に基く組織を確立することが持続できる地域となります。
・各自治体の政策の一つとして、ヘルスツーリズムを推進できる体制づくりが必要です。例:教育委員会や健康増進課、観光課等に担当者を配置することが不可欠です。
・「健康街づくり宣言」だけに終わらせず、市民参加型の健康イベントを年間スケジュールに組み込み、家庭、地域での取り組みを推進することです。
奄美シーカヤック.jpg
・発地、着地双方のエージェントが商品開発しやすいメニューも導入することが重要であり、プログラムの効果等を顧客が理解しやすい「ストーリー化」が必要です。
・温泉や森林、海等の自然の恵みを都会の人々にいかに楽しく体験させるかが重要であり、人材育成や清潔で洗練された施設の設置が必要になります。
・花粉症対策等には、リピーター化を推進して長期の滞在者を増やすことが大切です。
 
 ヘルスツーリズムの具体的事例として伊勢鳥羽志摩地域では、経済産業省の「サービス産業創出支援事業」を活用し、2泊3日の旅行「透析ツアー」を実施しました。透析施設、宿泊施設を同時に予約できるシステムを作り、食事メニューや患者の体調に配慮したプログラムを作成しました。
 
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 奄美大島では、「タラソ奄美」において海の資源を活用したヘルスツーリズムのエビデンスづくりを実施し、科学的に検証した長寿食やタラソテラピー、亜熱帯のウォーキング、島唄・島踊りを加えたモニターツアーを実施しました。
 
 指宿にある「メディポリス指宿」では、温泉地としての滞在の魅力を活かし、粒子線治療によるガンの最先端医療を行っており、多くの体験者を生み出しています。

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 また指宿ロイヤルホテルでは、砂蒸し温泉の活用や食事、運動等を組み合わせた「IT湯治」というシステムを開発し、データに基づく健康増進をPRしています。指宿の新しい魅力となっており、「IT湯治」は特許を取得しています。

 
 最後に本来の「ヘルスツーリズム」は医学的な根拠に基づく健康回復・維持・増進につながる行為が不可欠ですが、医療的な拘束時間にとらわれると、「転地医療」と同じとなり、観光的な要素は少なくなります。
 これからの「ヘルスツーリズム」は"医療的な要素"と"観光と云う楽しみな要素"を組み合わせることで、楽しみながら元気回復を実感することも必要ではないでしょか。
 ツアーに参加して、食事の改善や生活スタイルの変化を自然に改善できるかも大切なことです。
 
ヘルスツーリズムで重要なことは、医科学的な根拠、裏付けがなければ、健康になるという表示は違法であり、「薬事法」、「景品表示法」、「特定商取引法」、「消費者契約法」等に抵触する恐れがあります。効果確認には、滞在先や帰省後、病院で検診を受けることです。

悠久の森4.jpg
ヘルスツーリズムは、温泉やウォーキング、健康食、温暖な地での滞在等、異日常的な体験をすることで、健康回復を実感し、生活スタイル改善などにつなげていくきっかけづくりとなり、再び訪れたい地域になることが重要です。

花粉の少ない龍郷町では、春先の花粉症に悩まされる人が本土から逃れて、一定期間移り住む人がいます。2地域2居住等の推進にもヘルスツーリズムは、貢献できるのではないでしょうか。

    小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば
               今ひとたびの みゆき待たなむ
                    ~貞信公 小倉百人一首より~ 
   
※異日常的な体験・・地域住民にとっては日常的な活動であるが、旅行者にとっては珍しく体験してみたいと感じられるもの。田植え、稲刈り、森林歩き、
参考:ヘルスツーリズムの手引き 平成22年3月 社団法人:日本観光協会




No.382 焼酎文化を生かす取り組みを ~焼酎の消費量を増やすために~

2015年10月19日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 それほどに うまきかと人の 問ひたらば
         なんと答えむ この酒の味
                               
若山牧水「白梅集」より

 新酒が出回る頃となりました。10月31日から、全市町村で開催される「第30回国民文化祭」期間中には、多くのイベントがあり、焼酎による「おもてなし」も行われるのではないでしょうか。

焼酎蔵元.jpg

 県内には105の焼酎の醸造所と、2000を超える銘柄があり生産量は日本一です。
しかし、10年連続で全国1位だった本格焼酎の出荷量は、宮崎県に抜かれて第2位となりました。
(2014酒造年度:14年7月~15年6月の実績、鹿児島県酒造組合発表)
企業別でも、都城市にある霧島酒造が焼酎売上高で3年連続トップになっています。


 鹿児島は杜氏の発祥地であることから、多くの市町村に焼酎の蔵元があり、地域住民に永く愛されてきました。これからも地域の文化として、蔵元を守り、育てていかねばなりません。県民が地元の焼酎を愛し、事あるごとに利用の頻度を高めることが大切です。

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 県議会では、焼酎の消費拡大を図るため「かごしま本格焼酎の産業振興と焼酎文化でおもてなし県民条例」を制定して、乾杯の際焼酎を使う等県内焼酎の愛飲者を増やす努力を行っています。
*条例第8条「個人の嗜好及び意思を尊重するものであり」決して強制ではありません。

 焼酎は鹿児島で育まれた大切な地域資源であり、焼酎文化を見つめなおし、安定した需要を確保していく取組が求められています。 一部企業だけが恩恵を受けるのではなく、鹿児島の焼酎として全体のイメージアップを図り、全国ブランドとしての地位を確立することが重要です。

 大分県は「温泉県おおいた」のキャッチフレーズや大胆なCMで、温泉ブランドの確立に力を注いでいます。

 鹿児島焼酎のブランドイメージの確立には、まず焼酎のルーツを語ることが必要であり、取次店や居酒屋には簡単なルーツを書いたパンフレットを置くことが求められます。 また、伝統的焼き物「黒じょか」での作り方、美味しい焼酎の飲み方等の伝授も欠かせません。

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 焼酎に付きものは、地元伝統的料理です。さつま揚げ、鳥刺し、きびなご、黒牛、黒豚等です。特に地域ならではの料理が好まれると思います。地元の人が行く店で、地元流の飲み方を伝授することで、自然と交流も深まります。
 宿泊施設ではできるだけ地元の焼酎を提供する意識が必要ではないでしょうか。名前が浸透している銘柄を提供しがちですが、地元のものを一緒に勧めることで新たな需要開発につながるのではないでしょうか。
広告・宣伝力が需要開拓に一番必要なことですが、小規模の会社では限界があります。組合全体として、鹿児島焼酎の魅力を伝え、浸透させていかねばなりません。

 かつてあるビールメーカーの支店長は、地元でのシエアが低かったために、宴席には必ず栓抜きを以て望み、自社のビールビンの栓を抜いてまわり需要開拓に務めたとそのエピソードを語ってくれました。貪欲な営業姿勢におどろかされました。 杜氏が大事に守り抜いた地域の焼酎を、鹿児島の文化として発信し、観光資源としても今後も活用していきたいと考えています。
皆様ぜひ県内焼酎を愛飲し、PRに努めていただきたい。

 ところで、子供の頃正月や祭りの宴席で大人たちが、木の棒を手に隠して、面白い言葉で数当てをし、焼酎を楽しく飲みながら親睦を図っている光景がよく見られました。

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 いまではあまり目にする機会は少なくなりましたが、南九州に古くから伝わる「なんこ遊び」です。 具体的には、なんこは対戦する二人が向き合い、固い樫の木でつくられた10センチ程度のなんこ珠を3本後ろ手に隠して持ち、その何本かを右手に移して畳の上や、なんこ盤に突き出し合計数を予想して言い、互いに手を開いて持っている本数を見せ合い、勝ち負けを決める遊びです。負けた方が、事前に盃に盛られた焼酎を飲むことになります。

なんこ大会2013.jpg

 「なんこ遊び」は、昔は祝宴の中では必ず見られた光景でしたが、今ではあまり見られなくなりました。核家族化が進み、親戚、地域の人が一緒に集まる機会が少なくなっています。又地域の伝統祭事も高齢化が進み、行事の後に必ずおこなっていた宴会も減ってきており、なんこ遊びを伝授することも難しくなっています。地域コミュニティの崩壊が、伝統的遊びにも影響しています。 「なんこ」は漢字では「南交」と書き、南方と交易が盛んであった薩摩藩が取引の祭、接待の一つとして活用した高尚な遊びと言われています。県外の方がみえた時、なんこ遊びを取り入れて、遠来の客を歓待してはいかがでしょうか。

 酒肴の変化や業界の販売競争も激化し、加えて人口の減少が顕著となり大きな需要拡大は厳しくなっています。なんこ遊びをしながら、特産品の薩摩焼の一つである「黒じょか」で盃につぐという伝統的飲み方を教えることで、お土産としてセットで買ってもらうことにもつながります。

 最近では、度数の低いものや季節感溢れるもの、女性に優しい焼酎も販売され飲みやすくなっています。 焼酎文化の復活を図り、合わせて需要拡大を図りたいものです。

    白玉の 歯にしみとほる 秋の夜の
             酒は静かに 飲むべかりけり
                                   ~若山牧水『路上』~

No.381 個人タクシー乗務員は選ばれた運転手である~琴線に触れるおもてなしを~

2015年10月13日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 『道がつづら折りになって、いよいよ天城峠に近づいたと思うころ、雨脚が杉の密林を白く染めながら、すさまじい速さでふもとから私を追ってきた。・・・』
                      川端康成「伊豆の踊子」より

上場公園(出水).jpg

 出水市の上場公園に咲く25万本のコスモスが見頃となり、絨毯を敷き詰めたような幻想的な美しさが訪れる観光客を魅了しています。訪れる客は、帰りには武家屋敷を散策し、近くの農園でミカン狩りを楽しむのも良いかもしれません。

 北海道からも紅葉の便りが届きました。年間を通して一番快適に過ごせる季節であり、美しい日本の原風景が至る所にみられる時期ではないでしょうか。

阿寒湖紅葉.jpg

 秋は熟年の個人旅行が主流であり、比較的ゆっくりとした旅が好まれ、レンタカーやタクシーを利用する人も多くいます。
 鹿児島中央駅でも、観光客目当てのタクシーの待機が多くなっています。しかし、乗車した際のタクシードライバーの態度が気になります。

 出張帰りで時間が無く、近くの会議場を行先として告げると、乗った途端に「お客さん場所は近いですよ。」と、また、小声で「ついてないな。」と嘆きの恨み節。到着までの車内の冷たい無言の雰囲気、二度とその会社のタクシーに乗るものかと、しっかりドライバーの名前を確認して下車。車は急発進して去って行きました。

 次は、あるホテルで打ち合わせがあり、「近いですけどすみません」と告げると、「結構ですよ。基本料金でもありがたいです。これからもいつでもご乗車ください。」と逆に感謝され、恐縮のあまり思わず目頭が熱くなり、下車する時千円からの「お釣りは結構です」と素直に言葉が出ました。皆さんも同様な経験があると思います。

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 先日鹿児島個人タクシー事業組合の300名のドライバーを対象に、スキルアップ研修会があり講師を務めました。演題は「リピーターを創造する究極のおもてなし」でしたが、皆さん真剣に聴いていただき感謝しています。

 タクシーに関して、今まで寄せられた主なクレームは次のような事柄です。

・乗車して行き先を告げたら、「歩いた方が早いです」と言われた。近間であったせいか急発進、急ブレーキをかけて運転された。
・乗ったら「1時間待ってワンメーターか」とぶつぶつ言われた。
・30分間一言も喋らなかった。地域のことを訪ねたが、「解りません」の一言しかない。
・土産店へ行くことを再三勧められた。行きたい店は料金が高いといわれた。
・乗下車の際、「こんにちは」、「ありがとうございます」の一言もない。帽子もかぶらず服装もだらしない。乗車中ガムを噛み続けていた。
・大きな荷物があるのにトランクを開けず、お願いして開けたが自分で積んだ。身障者の親が乗り終わらないうちに、発車しそうで危なかった。
・料金を払う際、「ありがとうございます」の一言もなかった。

 逆に感謝された点は
・乗降する際外に出て丁寧に挨拶しドアを開け閉めした。笑顔が印象的であった。
・いつも通っている道があったら、そのルートを走りますので教えてくださいと言われ、良心的なドライバーと感じた。
・短い距離であったが沿線のことを丁寧に説明してくれた。「5分間で620円はありがたい商売です」と感謝された。
・子ども連れのため、女性の運転手の細かい配慮が嬉しかった。制服を身につけ、安心感があった。
・時間を聞いてルート以外の場所も追加料金を取らず案内してくれた。知覧では戦争の悲惨さを涙ながらに語ってくれた。
・ホテルに着いたら玄関まで荷物を持ってくれた。帰りも良かったら利用くださいと、名刺を渡された。
・目的地が分らなかったが、いろいろ手を尽くして調べて案内してくれた。
・前日の記念写真をプリントして、駅までわざわざ届けてくれた。

タクシースキルアップ研修会6.JPG

   クレームと感謝の事柄を比べると、その差は歴然です。感動をもたらす「おもてなしの心」には、次のような接客姿勢が必要ではないでしょうか。

・感謝の気持ちを込めて「○○タクシーの誰々です。○○様ありがとうございますと」と帽子を取り挨拶、名刺を渡す等、特に第1印象が大切です。
・車中では、できるだけ話しかける。どこから来られたかや、目的を聞いてみる。話しかけることで、翌日の予約が入ることが多くなります。
・プロとして、鹿児島の歴史や観光地の魅力を勉強することが大切で、車中でのお客様の退屈感が減少します。
・ハンディキャップのある人や老人の方にはきめ細かい配慮が必要です。乗降の際の手助けや見学地でのサポートが欠かせません。
・マニュアルにないことをさりげなく実行し、満足を超えたところに感動があります。
 デジカメで写真を撮ってあげたり、夏場は簡単なお手拭きを準備すると喜ばれます。
・真の仕事とは「お客様を感動させることである」。感動を自ら体験してこそ、「おも てなしの心」が提供できます。「もう一度あの人に会いたい」、「あの人のいる会社の車に乗りたい」と言われるドライバーのみが勝ち残れます。
・タクシーで伸びているのは、社員教育に力を入れている会社です。継続は力なり、指名・信頼される個人タクシーにならなければなりません。
・「忘己利他の心」で接することが、結局自分に善が戻ってくることになります。

国民文化祭.jpg

 タクシーは、観光客が駅で降り立ち初めて乗る交通機関であり、その対応が地域の印象となります。観光客は行先の位置関係がわからず、タクシーを利用します。車内では地域の話題の提供や名刺を渡し、「帰りの用があったら電話ください」等次につながるよう気軽に声をかけ、さわやかな印象を残すことが大切です。

 ところで、タクシー乗務員の皆さまのマナーもずいぶん改善され感謝の手紙も多数寄せられています。親切な運転手が増えることが「観光かごしま」のイメージアップにつながります。
 個人旅行が主流となり、鹿児島の観光について聞かれる機会も増えていますので、地域の歴史、文化、食などについて自ら知ることが重要です。観光客に聞かれて、「この地域には魅力的なところはありません」と応える方がいますが、わが町を誇りに思わないところには人は来ません。わが町、隣町、県内各地の魅力を伝え、周遊し泊まっていただく取組が求められます。

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 旅行者の心に残るものは人の印象(おもてなし)です。真心のこもったおもてなしが、観光客の鹿児島に対する評価となり、リピーターになります。「明治日本の産業革命遺産」が、世界文化遺産に登録されたこともあり、タクシー乗務員は、現地を訪ねてその知識を深める必要があります。

   お客様に喜んでもらえることが、タクシー乗務員としての最大の喜びであり、それが「サービス イズ アワ ビジネス」の実践です。
 個人タクシーのみなさんは選ばれた人であることを自覚して、他のドライバーの模範となるよう頑張ってもらいたいと願っています。
 最後に今回が345回目の節目となる講演となりました。ありがとうございました。

    大門の いしずゑ苔に うづもれて
             七堂伽藍(しちだうがらん) ただ秋の風
                          佐々木信綱『思草』
       *作者が奥州平泉の毛越寺に旅した折の作です。

No.380 消費者のニーズに対応できる態勢づくり~滞在して飽きない地域に人が集まる~

2015年10月5日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

旧集成館(反射炉跡).jpg

 10月に入り、県内の観光名所はお客様が目立つようになりました。世界文化遺産の登録地がある仙巌園は、休日になると昨年の約2倍の入園者で賑わっています。新岳の噴火で影響を受けている屋久島も、登山者の数が少しずつですが回復基調となっています。

 しかし桜島へ渡る人は、レベル4が出される以前の数には程遠く、風評被害が続いています。大都市圏での安全性のPR強化や桜島に渡り易くする仕組み作りを急ぎ、観光客を呼び込むことが求められています。

 阿蘇山や諏訪之瀬島でも噴火が発生していますが、桜島では約5千人が普段と変わらない生活を営んでおり、また桜島アイランドビュー号は運行し、湯之平展望所、有村溶岩展望所等従来と変わらず行くことができます。メディアでの発信や招請事業を強化していきたいと考えています。

硫黄島の東温泉.jpg

 ところで、「じゃらんリサーチセンター」が、実施している「じゃらん宿泊旅行調査2015」の結果が公表されました。

 この調査は、観光などを目的とした宿泊を伴う旅行実態を把握するために行っている調査で、昨年度1年間(2014年4月~2015年3月)の出張・帰省・修学旅行などを除いたマーケットの動向が把握できます。

 8つのテーマ別・都道府県ランキングは下記の通りです。
・地元ならではのおいしい食べ物が多かった
 1位:高知県 2位:北海道 3位:富山県 4位:鹿児島県 5位:沖縄県
・魅力ある特産品や土産物が多かった
 1位:沖縄県 2位:鹿児島県 3位:京都府 4位:石川県 5位:北海道
・魅力的な宿泊施設が多かった
 1位:沖縄県 2位:大分県 3位:千葉県 4位:熊本県 5位:神奈川県
*鹿児島県はトップ10に入れず

・現地で良い観光情報が入手できた
 1位:沖縄県 2位:奈良県 3位:京都府 4位:青森県 5位:鹿児島県
・子供が楽しめるスポットや施設・体験が多かった
 1位:千葉県 2位:沖縄県 3位:和歌山県 4位:長崎県 5位:大阪府
 *TDLや水族館、USJ、ハウステンボス等の大型施設がある県が多い。
・大人が楽しめるスポットや施設・体験が多かった
 1位:沖縄県 2位:千葉県 3位:京都府 4位:長崎県 5位:奈良県
・若者が楽しめるスポットや施設・体験が多かった。
 1位:千葉県 2位:沖縄県 3位:大阪府 4位:長崎県 5位:東京都
・地元のホスピタリティを感じた
 1位:沖縄県 2位:鹿児島県 3位:岩手県 4位:宮崎県 5位:青森県

グルメ(黒豚).jpg

 最後に、総合的な満足度の高かった都道府県は
1位:沖縄県 2位:鹿児島県 3位:京都府 4位:熊本県 5位:広島県
となっており、鹿児島県は2013年度以来2位に返り咲きました。


 また、沖縄県は、5つのテーマで1位にランクインし、総合的評価もトップです。県民あげて観光客の受入に当たっている姿勢が伺えます。

 この調査で、鹿児島県の評価について、
①九州新幹線全線開業年には多くの宿泊者があり、「おもてなし」が追い付かず総合的な評価が下がりました。その後、研修会の実施や送迎態勢の強化等を推進したこともあり、2位に返り咲いたことはいい教訓としなければなりません。
②観光情報の入手先としては、駅、ホテル、運輸機関、観光施設、飲食店等を対象にしていますが、様々な接点で地域の詳細な情報が容易に入手できる態勢が整いつつあるのではないでしょうか。日頃からのホームページ等での最新情報発信が重要になっています。

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 これからの取組の課題として
・宿泊者の7割は個人客です。宿泊先からの2次交通の整備や体験メニューなどの充実を図り、連泊しやすい環境整備が必要です。一人旅が増えており、温泉地では効率的な経営をすべく、シングルの部屋や素泊まり対策が急がれます。

・1泊朝食型の観光客も増えており、地域のグルメや、地元生活者が訪ねるお店での接遇アップが求められます。そのことが消費につながります。
・品質に優れた安全・安心の食材を使い、地域を感じるお土産品の開発が必要です。世帯の構成人員は小さくなっており、チョイスできる特産品の販売が必要です。
・外国人が増加しており、多言語マップ、免税店、外国語表記のメニュー、簡単な会話集等、多くの施設に配置する必要があります。
・施設のバリアフリー化やベッドを備えた旅館の要望が多くなっています。日本文化を体験できる施設への転換も必要です。
・自ら県内の多くの場所に出かけて鹿児島の魅力を知り、発信することが求められています。特に世界文化遺産や離島の自然、生活、文化が新しい鹿児島の魅力です。ストーリーを語ることが大切です。
・「もの」の価値の行き着く場所は「価格競争」になりがちです。「もの」を「こと」に変えて取り組むことが、「価格」を超えた「感動」を生みます。「こと」に必要な要素は、人の心であり、ホスピタリティの原点です。

 最後に、観光客の地域の最終的評価は、そこに住む「人」です。リピーターとなる創客作りが重要で、「日本にもこのように素晴らしい県があった。また訪れたい」、「友人に鹿児島の魅力を紹介したい」、「あの従業員のいる宿泊施設にまた泊まりたい」、「あの親切なタクシードライバーと旅をしたい」と言っていただけるよう、県全体で「おもてなしの心」の構築に努めなければなりません。

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 2016年の調査では、鹿児島県の評価が多くの項目で上がるよう、顧客満足度を高め、一日も早く口永良部島や桜島に対する風評被害を払しょくしたいものです。

   参考:じゃらん宿泊旅行調査2015

No.379 地域づくりは人づくりから「第8回かごしま観光人材育成塾」を開催します

2015年9月28日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 シルバーウイーク期間中、県内の観光地は多くの観光客で賑わいました。街かどの歩道には、黄色く色づいたイチョウの実が落ちて、すっかり秋の気配です。



 北海道ではこれから2週間が紅葉の見頃となり、摩周湖や阿寒湖周辺は赤や黄色に色づいた木々が織りなす景観が素晴らしく、そのトンネルの中を走る観光バスの姿が印象的です。札幌大通公園のトウモロコシ焼のお店は、夜まで営業し観光客を引き寄せます。

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 運動会のシーズンとなり、練習から帰る子供たちの服装も運動着のままで爽やかです。かつて生徒数の多かった時代は、走る姿を近くで見るために早朝から場所取りに出か け、ビニールシートを敷くものでした。今では学校側のガードも厳しくなり、立ち見で応援する光景が普通となっており、一抹の寂しさを感じます。

 阿久根市の小学校では、50歳になると自分の母校に集まり、在校生と一緒に運動会に参加し盛り上げています。「華の50歳組」と呼ばれており、いつまでも故郷との絆をつなぐ行事として引き継がれていくのではないでしょうか。

  ふるさとの なまり懐かし 停車場の
              人込みの中に そを聴きに行く
                    ~石川啄木 一握の砂より~

 ところで、県内の宿泊客数は、九州新幹線全線開業の年から好調に推移してきました。 鹿児島中央駅が新幹線の南の終着駅であることや、「指宿のたまて箱」、「はやとの風」、「ななつ星in九州」、「肥薩おれんじ鉄道」等列車の旅が人気となり、観光客増につながっています。

 一方最大の需要がある関東地域からは、従来のANA、JALに加えて、新しい航空会社や奄美へのLCCの就航などアクセスの利便性が図られ、安定した入込客となっています。

 しかし、今年5月の口永良部島新岳の噴火や、8月15日に桜島の噴火警戒レベル引き上げもあり、秋以降の宿泊予約が急激に落ち込んできています。桜島はレベル3に戻ったものの、噴火に対する不安感は十分に払拭できず、回復までは程遠いという状況です。

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 桜島、鹿児島市内、指宿、屋久島が特に影響が大きいものがありますが、県下全域に及んでおり、県、市、各自治体、観光協会、経済団体等オール鹿児島で誘客に取り組む必要性に迫られています。


 県では桜島対策として補正予算が計上され、メディアによる有効的発信の強化やエージェントに対する商品企画支援を行う等風評被害を軽減すべく努力しています。

 全国的にみると、北陸新幹線の開業、USJの人気復活、来年3月の北海道新幹線の開業等もあり、今後も苦戦が予想されます。新しい地域資源の発掘や、商品づくりとエージェントへの提案、情報発信ができる態勢づくりが重要になっています。

 ところで、県、観光連盟では「かごしま観光人材育成塾」を毎年開催していますが、8回目を迎える今年は今までで最高の105名が受講します。(9月11日現在)

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 今回は、「リピーター獲得に向けた取組とWebの活用」、「日本のインバウンドの現状と受入態勢の整備」や「地方創生時代の観光地づくり」、「世界文化遺産の次世代への取組」や「奄美の世界自然遺産登録を契機とした持続可能な観光・地域振興」等について講義が行われます。今、地域で問われている重要な課題が多く、受講者には必ずや新しいヒントが見つかるのではないでしょうか。



 県では本格的な人口減少時代を見据えて、地域をいかに維持し活性化していくか、地方創生のプラン作りを進めています。鹿児島県は30年後には、40万人の人口が減少すると予測され、また、20代~30代の女性が半減する市町村は30にも及び、地方崩壊の危機を指摘しています。(日本創生会議発表資料)  

 知事はこれからの鹿児島にとって重要な産業は、農業と観光振興を上げています。第4位の農業県であることから豊富な農水産物を活用して、ブランド価値を高め、年間750万人を超える宿泊客に提供し、経済効果の創出とリピーター化を推進しなければなりません。観光客に食の魅力づくりは欠かせません。

 インバウンド客が好調であり、今年も顕著な伸びが期待できます。鹿児島県が優位性を発揮できる観光資源を、どのような手法でどこに発信していくかが重要です。東アジアの空港は24時間体制で運営されており、そこからの誘客に対応できる受入態勢づくりが急務となっています。

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 今県内で脚光を浴びている地域には、頑張っている人の存在があります。地域づくりには、自ら汗をかく人材が不可欠であり、そこに人、モノ、資金を投入すべきと考えます。



 また、地域資源を磨き、食や特産品、歴史的遺産、観光スポット等と組み合わせてパッケージ化を図り、プロモートしていくことで多くのマーケットへ提案ができ、エージェントの商品化にもつながります。人材育成の重要性が問われます。

 新幹線全線開業から5年目に入り、広域で新たな取組みが求められています。この講座が地域活性化のための人材育成につながり、地域連携のきっかけになることを期待します。

No.378 「薩長土肥連合」による観光の推進~明治維新150年の優位性を活かす~

2015年9月14日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 NHKの大河ドラマ「花燃ゆ」が後半戦に入り、盛り上がって来ました。最近の放映では、薩長同盟締結までの時代背景や、明治維新前後の激動の人間ドラマがあり、毎週楽しみにしています。

 明治維新、その後近代日本の体制づくりに貢献した藩として特に挙げられるのが薩摩、長州、土佐、肥前です。

 8月31日東京で、鹿児島県、山口県、高知県、佐賀県の知事による「明治維新150年 平成の薩長土肥連合」の盟約締結式が、マスメディアも参加する中行われました。

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 今回の盟約締結の趣旨は、2018年が明治維新150周年に当たることから、幕末・維新の知名度を活用した広域観光プロジェクトとして、4県及び各観光団体からなる「平成の薩長土肥連合」を設立し、様々な共同事業を展開して明治維新150周年に向けた観光需要の拡大を図ろうとするものです。

 施策の展開としては
 「薩長土肥」の知名度を活用した4県合同の情報発信により、各県の知名度向上の取組を推進し、既存イベントへの出展・記念イベント開催等です。

 また、各県における幕末・維新期の歴史や人物等をテーマにした商品企画を進め、その新たな広域観光周遊ルートの定着を目指します。

 全国的にも珍しい遠隔地での連携という特徴を生かし、相互送客体制を構築することが重要で教育旅行の誘致、スタンプラリー、キャリア・エージェント等とのタイアップを推進します。

 「広域観光ルート形成」、「観光プロモーション推進」、「共同イベン開催」、「旅行商品造成」のプロジェクトを4県で分担しますが、各県の歴史的遺産やストーリー、観光の魅力を全国的に浸透させる取組が重要です。

 鹿児島県と他の3県の明治維新との関係や観光の魅力について触れたいと思います。

 鹿児島県と山口県は歴史的に特に関係が深いものがあります。1866年、薩摩藩と長州藩は、「薩長同盟」という政治的・軍事的同盟を締結しました。来年で同盟締結から150年になりますが、この締結の斡旋をしたのは、土佐藩を脱藩した坂本龍馬と中岡慎太郎です。 

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   NHK大河ドラマでは、「翔ぶが如く」、「篤姫」、今年の「花燃ゆ」等で、両藩の幕末から明治維新、その後の活躍ぶりが描かれています。また、薩長同盟に奔走した坂本龍馬を主人公とした「龍馬伝」は2010年に放映されました。

 山口県は、西には秋吉台や天然記念物の秋芳洞、北には、吉田松陰、桂小五郎や伊藤博文などを輩出した城下町萩市、東には世界に一つしかない木造5連の太鼓橋「錦帯橋」がある岩国市、県庁所在地の山口市は、ザビエル記念堂、国宝の五重の塔を持つ瑠璃光寺などの観光地があります。

 温泉地としては、湯田温泉、長門湯本温泉、俵山温泉が有名です。また、仙崎にある「金子みすゞ記念館」は繊細な心で描かれた詩が文学ファンの心を捉え、女性客を中心に観光客が訪れます。

 九州新幹線の全線開業により山口県とは約2時間で結ばれ、また、明治維新150周年や、「明治日本の産業革命遺産」の世界文化遺産登録など両県に共通する話題もあり、教育旅行を中心に今後の連携が必要になっています。

 なお、鹿児島県観光連盟と山口県観光連盟は、平成20年に姉妹盟約を結び、両県の観光地や、食を生かした観光交流を活発にしていくことを確認し合って活動しています。

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 高知県(土佐)といえば、坂本龍馬であり、「薩長同盟」、「大政奉還」の立役者です。彼が作った「船中八策」は、明治維新の新国家建設の骨格をなす政策です。


 薩摩を2度訪れていますが、2回目はお龍さんも連れ立って、寺田屋事件で負傷した体の療養を兼ねたものでした。霧島の温泉に浸り、高千穂登山や鹿児島城下で約3カ月滞在しており、日本で最初の新婚旅行といわれています。盟友の小松帯刀や西郷隆盛との親交がそれを実現させたものです。

 ほかに幕末・維新期には山内容堂、中岡慎太郎、後藤象二郎、板垣退助等も活躍しています。

 高知の観光名所といえば「桂浜」ですが、美しい白浜と月の名所として知られ、太平洋を見下ろす高台には、坂本龍馬の銅像が建てられています。 また、田宮虎彦の小説「足摺岬」を読み、四国最南端の岬を訪ねてみるのも旅の楽しみのひとつでしょう。

 「四万十川」は日本の最後の清流と言われる川で、ぜひ遊覧船に乗り透明度を確かめてください。

 食べ物ではカツオの消費量が日本一であり、藁で焼いた「カツオのたたき」は是非お勧めしたい逸品です。鹿児島から高知へは、岡山~高松~高知の列車の旅がお勧めです。時間がかかりますが、瀬戸内海、四国を縦断でき沿線の景観が楽しみです。

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 佐賀県(肥前)といえば歴代鍋島氏を中心とする藩で、唯一開国されていた長崎に近いこともあり鉄鋼、大砲、蒸気機関、電信等西洋の技術を取り入れ近代化政策を推進していました。



 1853年には、今回世界文化遺産に登録された「三重津海軍所」が設置され、1865年には日本最初の蒸気船「凌風丸」が進水しています。明治政府には多くの人材が登用され、江藤新平(初代司法卿)、大隈重信(元総理大臣・早稲田大学創始者)、大木喬任(文部卿・東京市長)、佐野常民(枢密院議長・日本赤十字社創設者)らが活躍しました。

 江藤新平は西郷隆盛と親交が深く、「征韓論」の政変の際に西郷とともに参議を辞任し、佐賀に帰りその後「佐賀の乱」の首謀者として、新政府軍に捕えられ処刑されています。

 佐賀の観光といえば、有田焼、伊万里焼などの焼物です。GW期間中に開催される「有田陶器市」には、毎年100万人を超える観光客が訪れます。50ヘクタールに及ぶ弥生時代の環濠集落跡「吉野ヶ里遺跡」は国の特別史跡となっています。嬉野温泉や武雄温泉も福岡から気軽に行ける温泉地として賑わっています。

 今回の盟約締結は広域連携であることから、観光客は一度に巡ることは厳しい面があり ます。スタンプラリーを展開するなど長期の取組や、各種のイベントでは相互にPRコーナーを設置し宣伝効果を高め、コンベンション開催時には他の3県からの参加者を増やす取組が重要です。

 人口減少時代に入り、交流人口の拡大は不可欠です。明治維新150年というビッグイベントは、4県が他県より優位性を発揮できるチャンスであり、最大限活かさねばなりません。

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 鹿児島県としては2018年が明治維新150年に当たることから、「NHK大河ドラマ」の誘致を目指し県、市、各種団体合同で取組を推進しています。県民の皆様も薩摩藩の偉人達が成し遂げた偉業を学び、郷土愛を構築する機会にしてもらいたいものです。

                お魚
      海の魚はかわいそう。お米は人につくられる、
      牛は牧場でかわれている、鯉もお池で麩(フ)を貰う。
      けれども海のお魚は なんにも世話にならないし
      いたずら一つしないのに こうして私に食べられる。
      ほんとうに魚はかわいそう。
             ~金子みすゞ詩集より~

*シルバーウイークに入るため、次号は9月28日に掲載します。

No.377 ピンチをチャンスに~風評被害を跳ね返す販促活動を~

2015年9月7日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 大型の台風15号が過ぎ去りましたが、農産物や家屋、道路の被害が多く発生し、また、停電が1週間も続いた地域もありました。一日も早い復旧を祈りたいと思います。 夕焼け空に赤とんぼが飛び交い、朝晩はひんやりとした風が吹き抜け、急に秋の気配を感ずる季節となりました。

 8月15日、「気象庁が桜島の噴火警戒レベルを3から4に切りかえ」、桜島の噴火予報に関するニュースが流れるたびに、観光関係者は風評被害を心配してきました。

 「桜島の地殻変動が観測される」という気象庁の発表以来、宿泊者の予約取り消しが増え、「かごしま錦江湾サマーナイト大花火大会」が中止になったこと等もあり、その後の予約状況も芳しくありません。先日観光関係者が集まった会議の中で、宿泊施設やエージェントの皆様から、年末までの予約状況が前年同期に比べてかなり下回っている状況が報告されました。

 また、5月の口永良部島新岳の噴火で、住民は12km離れた屋久島で避難生活を送っていますが、噴火の影響はほとんどないにもかかわらず、7月単月で屋久島の宿泊客は14%減少しています。指宿と屋久島とを結ぶツアーが多いことから指宿も10%減です。

 ところで、9月1日から桜島の噴火警戒レベルが4(避難準備)から、3(入山規制)に引き下げられました。桜島は従来から登山禁止の場所であり、2km以内には近づくことはできません。

 観光客が訪れる場所は規制地域外にありますが、鹿児島市は錦江湾をはさんで一番近いところでも4km離れており、又、桜島には約5,000人の人が住み、常に噴火と対峙しながら生活をしている等県外の方々は実情をほとんど知らず、風評被害につながっていると思います。

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 レベル3に戻り桜島に対する不安感を取り除くことで、だんだんと観光客が戻ってくることになるのではないでしょうか。県外の方に対しては、レベルが下がったと言うことより、通常の姿に戻っているという方が好印象としてうつります。これから県、市、業界団体挙げて反転攻勢をかけ、ピンチをチャンスに変える取組が必要です。


 「明治日本の産業革命遺産」が世界文化遺産に登録されたことや、「第30回国民文化祭」開催等を通して、鹿児島への誘客を増やすチャンスにしなければなりません。

 そのためには、これまで以上の積極的な情報発信と販促活動が重要です。県、市、各施設のホームページ等でリンクさせ、安全対策が施されている桜島へ多くの方が来てもらうような情報提供の場が重要です。「オールかごしま」で取組むこが、,顧客からの好感を持って支持を受けやすいのではないでしょうか。

 エージェントのみなさんには商品企画や集客に反映させるべく、大都市圏を中心に説明会を開催しており、ある程度の理解は深まっていると思います。各種の会議を桜島で開催していただくよう、お願いしています。

 最大の課題は、エンドユーザーにいかに桜島の真の姿を伝えるかです。通常の噴火に対する対応、避難設備、緊急時の避難対策等です。桜島は、多い年は年間1000回を超える噴火がありますが、住民は普段と変わらない生活を送っています。

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 まず国内外からのメディアを招請し、記者の体験に基づいた情報の発信が影響力を発します。新燃岳噴火の際は、被害状況だけでなく厳しい環境の中で霧島復興に努力している関係者の姿を、東京のキー局を通して全国に放映して欲しいと地元民放各社に要請を行いました。今回も同様な取組が必要です。

 海外については、現在4路線についてキャンペーンを展開していますが、地震や火山噴火に特に敏感な上海とソウルに対して、より詳細な情報発信と招請活動が必要です。

 2学期が始まり教育旅行のシ-ズンとなり、3日からは筑紫地区の19の中学校が鹿児島を訪れます。下見を実施してもらい一部行程の変更はあったものの、予定通り実施されることになりほっとしています。

 日修協、全修協、各地区の校長会等積極的に出席し、桜島の安全対策等を説明しています。来春には関西方面から集約臨時列車で鹿児島を訪れます。下見を受け入れ、他方面への変更を食い止めたいと考えています。父兄の皆様が心配する桜島の情報に関する危険性を払拭することが何よりも必要です。

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 味覚の秋となり、人々が一番旅行に出かけたくなる時期となります。鹿児島県は日本列島の南に位置することから、紅葉は11月後半から12月まで鑑賞できます。また、秋は個人旅行が主流で、しかも熟年層の旅行がメインです。


 これからの鹿児島は、気候も良くなり、食の魅力や新酒の蔵出しも始まります。レンタカーを利用する観光客も増えており、インターネット上で施設や食の魅力ある紹介等立ち寄りたくなる情報が必要です。

 ところで、秋の予約動向を見ると、一般の旅行が低迷しており、特にメディアによる募集ツアーの集客状況の勢いが感じられません。心理的に鹿児島への旅行が敬遠されていることから、思い切った商品企画、価格等もカンフル剤となります。

 また、各エージェントには、「がんばってます。鹿児島」や「屋久島は元気です」、「桜島応援ツアー」等のタイトルで商品企画や下見を要請しています。*タイトルは仮称

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 最後に、誘客活動は大都市圏ばかりが注目されますが、まず地元の方が出かけることが地域の活性化になります。九州、隣県の方々に来ていただく努力も必要と感じます。近隣の客は、リピーターになりやすいからです。落ち込んでいる観光客を呼び戻すべく、皆さんで努力すべき時ではないでしょうか。     

    けふもまた こころの鉦を うち鳴らし
               うち鳴らしつつ あくがれて行く
                            ~若山牧水~

No.376 桜島は鹿児島県民の宝~皆様も的確な情報発信を~

2015年8月31日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 猛暑に見舞われた今年の夏も朝夕の気温の変化に驚き、「いがぐり」が大きくなった木の幹で「ツクツボウシ」が鳴き、また、夕日に「赤とんぼ」の群れる姿が映え、秋の訪れが近いことを教えてくれます。

 林芙美子の代表作「放浪記」の書き出しです。
『私は北九州の或る小学校で、こんな歌を習ったことがあった。

           更けゆく秋の夜  旅の空の 
           侘しき 思いに 一人なやむ
           恋いしや古里 なつかし父母

 私は宿命的に放浪者である。私は古里を持たない。父は四国の伊予の人間で、太物の行商人であった。母は、九州の桜島の温泉宿の娘である。』

 鹿児島のシンボルである桜島では15日、火口直下で火山性地震が急増し、急激な山体の膨張を示す地殻変動が観測されたことから、鹿児島地方気象台は同日、噴火警戒レベルを3(入山規制)から4(避難準備)に引き上げました。有村町、古里町、黒神町の3地区が対象でしたが、その後、22日には解除され、25日には、全員が自宅に戻ることができました。

 ところで桜島は、今年に入り山体の膨張が見られるという情報が発せられてから、観光客の入込が減少しており、修学旅行の行程変更をした学校も出ています。

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 レベル4に引き上げられて以来、桜島の状況について連日メディアで放映されていることから、先週大都市圏で開催した教育旅行の説明会では、「桜島には渡ることができますか」、「鹿児島市内は大丈夫ですか」、「噴火したらどのような状況になるのですか」等の問い合わせがありました。

 「避難先は同じ桜島の島内である」ことや、「桜島には約5,000人の住民が通常と変わらない暮らしをしている」、「現在まで大きな噴火は起きていない」ことなどを伝えました。

 桜島フェリーも通常どおり運行されており、桜島ミュージアムや一周道路も問題ありませんと、先生方や旅行エージェントの皆様に、「ハザードマップ」を示して桜島の状況をつぶさに説明して、少しでも不安を取り除くことに努めました。

 桜島を訪れたことがない人は、桜島全体が危険であり、警戒レベルが引き上げられたことで、すぐにでも大爆発が発生するから行かないほうがいいと思っているように感じます。

 一方では生きた火山の姿を目のあたりにするのも、鹿児島ならではの観光の魅力ではないでしょうか。桜島は日頃から活発な活動を続けており、噴火のたびに、周辺の街や鹿児島市内に火山灰が降り、住民はその対策に頭を痛めていますが、鹿児島を訪れた観光客は、もくもくと上がる噴煙のスケールの大きさに一様に驚嘆の声を上げ、特に外国人は身近で見られる姿に驚くのが現状です。

 桜島には、桜島ビジターセンター、国際火山砂防センター、湯之平展望所、有村溶岩展望所、黒神埋没鳥居など火山に関する施設、噴火遺跡があります。噴火は現実問題として捉え、桜島を1つのフィールドとして位置づけ、大学生の地質の研究や、生きている火山を教材として小中学校の学習にも活かすべきではないでしょうか。

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 「NPO法人桜島ミュージアム」では桜島の噴火を負の遺産として捉えるのではなく、噴火がもたらす自然の贈り物をプラスに変える取組を行っています。「桜島まるごと体験フェア」は、桜島の新しい魅力づくりに貢献し、「天然温泉掘り体験」等は桜島ならではの体験メニューです。「シーカヤック」は若者層に人気のマリンスポーツです。

 爆発と報じられると、桜島全域が噴火で危ないとういう印象をもたれ、観光客の減少につながり、特に教育旅行は父兄の動向が懸念されます。 

 県、鹿児島市合同の避難訓練が、毎年行われるなど万全の体制で危機管理がなされており、そのような情報もきちんと伝える必要を感じています。風評被害を払しょくするためには、メディアからの正しい情報発信が一番重要です。

 「かごしま錦江湾サマーナイト大花火大会」等が中止となり、観光面においてはこれからも影響が続くのではないかと懸念しています。桜島の対岸の祭りが中止ということで、鹿児島市内も心配だと言う声が国内外のエージェント等から伝えられます。

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 桜島の知名度は大きなものがあり、鹿児島県内全域への誘客に影響します。国内外のメディアの招請、教育旅行の下見支援や「桜島応援キャンペーン(仮称)」等、対策の必要性を感じます。口永良部島の新島噴火は、屋久島のみならず、指宿にも影響を与えているのが現実です。

 明治日本の産業革命遺産が「世界文化遺産」に登録され、10月31日からは、「第30回国民文化祭」も開催されることから、国内外から多くの観光客を呼ぶチャンスです。

 27日からは噴火警報発表に伴って閉鎖していた観光施設のほとんどを再開しました。また、「よりみちクルーズ」「サクラジマアイランドビュー」も運行しました。

 気象庁は桜島の噴火警戒レベルを9月1日にも4から3へ引き下げる方向で最終調整に入っています。9月3日から「筑紫地区連合中学校」が来鹿することから、学校・生徒・父兄も安心されるのではないでしょうか。

 県民の皆様も、わが鹿児島の宝である桜島の魅力と現状をインターネット、SNS等を通じて積極的にPRすることが、風評被害を少なくすることにつながります。ぜひ対岸の桜島に渡り、その魅力に触れてください。

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 桜島港近くにある溶岩なぎさ公園の足湯は、全長が約100mと日本最大級の足湯です。足湯に入りながら夕方桜島の山肌を見つめると、文学碑に刻まれた梅崎春生の小説「桜島」の最終章が浮かんできます。


『崖の上に、落日に染められた桜島岳があった。私が歩くに従って、樹々に見え隠れした、赤と青との濃淡に染められた山肌は、天上の美しさであった。』

※情報は平成27年8月28日(金)現在です。

No.375 与論島の目指すものとは~景観整備を進め、沖縄との差別化を~

2015年8月24日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 与論町で景観セミナーが開催され、講師として参加しました。46年前、学生時代に初めてクラブ合宿で訪れて以来、美しい海と豊かな人情に魅せられ幾度となく訪れています。

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 与論島は鹿児島から南へ563km、沖縄本島の北23kmに位置し、周囲23kmの隆起珊瑚礁の島です。島はリーフに囲まれ、海は透明度が25~35mと非常に高く、色とりどりの熱帯魚が生息し、まさに水族館の雰囲気が満ちあふれています。

 昭和43年NHKテレビ「新日本紀行」で取り上げられ、当時日本最南端の島は自然の美しさが話題となり、一気にその名が全国的に知られるようになりました。(沖縄県は昭和47年に日本に復帰しました。)

 昭和40年代から奄美航路は、夏は若者で溢れ目的地は与論島でした。当時日本で一番美しいと評判の与論の海で泳ぐことが、憧れとなっていました。島内には60の白砂のビーチがありますが、中でも潮流により浮かびあがる神秘の白い砂浜「百合ヶ浜」が人気で、グラスボートで渡る途中、透き通る海と熱帯魚の群れる姿に驚かされます。

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 昭和44年頃からヨロンブームが始まり、60年まで入込客は、10万人台を維持していました。当時民宿は100軒程あり、どこも隆盛をきわめていました。一方、百合ヶ浜周辺や茶花のメイン通りは、水着姿の若者で溢れ深夜まで騒ぎ、風紀が乱れると社会問題になったこともありました。

 沖縄県が日本に復帰してからは、相次ぐリゾートホテルのオープンや航空会社の大型キャンペーンが展開され、飛行機を使って短時間でいける沖縄に観光客は移ってしまいました。

 また沖縄は、国の優遇措置による航空運賃の低廉化や免税の措置が施され、観光客誘致が容易となりました。全国各地の空港から沖縄路線が開設され、先島諸島の宮古島、石垣島への航空路線も整備され、航空路線が少ない与論島は敬遠され、観光客が減少するという結果となっています。

 平成25年の入込客は約5万人で最盛期の3分の一程度ですが、増加傾向にあり地道な誘客活動が実を結びつつあります。個人旅行が主流となり、また飛行機利用が圧倒的に多い中で、アクセスの不便さをいかに克服して来島者を増やすかが問われています。

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 今後の観光振興や景観の在り方についてについて、関係者の皆様と一緒に議論しました。観光客を再び呼び込み、観光ビジネスを復活させるためには、ハード、ソフト両面からの整備が必要です。


 昭和40年代は、若者を中心とした船旅が主流でした。現在でも若者は時間的な自由度があると思われるので、奄美群島を周遊でき、他社にも乗船できる切符や、航空運賃の低廉化、沖縄との相互観光がしやすい状況を作ることが、観光客を増やすことにつながると思います。

 与論の全盛期を支えたのは若い女性グループでした。その世代は多くがリタイアしており、再び訪れたくなる仕掛けづくりが必要です。

 40年前と変わらない与論の美しい海と砂浜の魅力を、商品企画に繋げるかが課題です。比較的安い運賃で、大都市圏や主要都市と結ばれている沖縄本島に来た客を与論までいかに誘客するか、メディアや航空会社とタイアップしたキャンペーンが必要と感じます。

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 大都市圏からの女子大生のモニターツアーを実施して、ドローンで撮影した「百合ヶ浜」の景観やマリンスポーツ等を提供し、フェイスブックやツイッター等で情報発信してもらう取組も必要です。


 また、香港や台湾の若者は、日本の美しいビーチで結婚式を挙げることが憧れの一つになっています。外国語表記、指差マップの制作等の整備も急がねばなりません。マリンスポーツ等自然を活かした体験メニューを揃えることが、外国の若者の滞在を可能にします。併せて外国メディアの招聘も与論の魅力の浸透度を速めることになります。

 与論島は今、グリーンツーリズムやブルーツーリズムの魅力を前面に「島をあなたの学校で貸切」のキャッチフレーズで、教育旅行の誘致につとめています。平成2年は2校、500名でしたが、26年は10校、2,737名が来島しています。交通手段は、ほとんどが沖縄経由で、飛行機と船を利用します。

 沖縄までは大型機が飛んでおりアクセスは問題ありません。農業やマリンスポーツ等の体験メニューの充実、地域住民と生活・文化に触れる機会を増やすなど、島あげての取組みを推進し、年間を通じての受け皿づくりが必要と感じます。

与論看板.jpg

 また、景観整備の必要性を感じます。主要ポイントには、白く塗られた台座に青色でナンバー入りの地域名が書かれており、パンフレットの表示番号と一致することから、場所が分かり易くなっています。


 一方では、美しい白浜の周辺に真っ赤な自動販売機が設置されており、景観上良くありません。桜島では、コンビニも周りの雰囲気をこわさないよう店舗のデザインやカラ―を変えている場所があります。統一された表示が景観の保護と美しい島のPRになります。

 今度、大金久海岸のビーチ沿いに遊歩道が整備される予定であり、雑木や廃墟となった施設等を撤去して、美しい白砂が望めるコースにしてもらいたい。

ハイビスカス.jpg

 また島の沿道には、ハイビスカスやブーゲンビリア等の草花を植栽し、フラワーアイランドとしてPRすることで癒しの島となり、年間を通して観光客が来る場所になるのではないでしょうか。韓国で人気の「オルレ」のコース認定も目指してほしいと思います。

 「望郷」、「嫉妬」、「情事」、「デザートはあなた」等の人気小説や多くのエッセイを残している森瑤子さんは、与論をこよなく愛した作家であり、お墓はサンゴ礁の石積みに囲まれ、美しい白砂の海岸が望める高台にあります。今でもファンが訪れます。

 映画「めがね」は、与論の美しい海が舞台で、ロケ地の表示と一緒に観光客が写真に収める姿がありました。CMやモデルさんの撮影場所としても最適ではないでしょうか。

 島には3色信号機は1つしかなく、時を忘れてしまいそうな気分に駆られます。島の唯一の信号機であることの表示が話題性となります。また、都会の人々に2地域2居住を勧めることで、定住対策にも繋がるのではないでしょうか。

与論の海2015-2.jpg

 今回1泊2日の滞在でしたが、昔と変わらない与論の美しい自然の姿に安心しました。与論献奉を取り入れた宴席は、一度で島のおもてなしの心が伝わります。いつまでも残したい習慣です。


 農業と観光が主要産業であり、これからの人口減を考慮すると新たな観光客誘致による経済効果の創出・維持が重要であり、沖縄との差別化が不可欠となります。広告や看板を極力なくすることで、自然の美しさが際立ち、永遠に輝き続ける島になるのではないでしょうか

 久しぶりに訪れた与論島に思いを込めて一首、

        なつかしき
            百合の浜辺は 海の中
                現れる時を 待つも楽しき

 残暑が厳しい時期です。夏休みも残り1週間、人影が少なくなった島へいかがですか。

No.374 観光施設の入館者数をいかに増やすか~見せ方や情報発信に工夫が必要~

2015年8月17日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 県内には、動物園、水族館、植物園、博物館、歴史資料館、アミューズメント等の観光施設がありますが、ここ数年ほとんどの施設で入館者が減少しています。

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 平成25年の入館者数でみると、鹿児島中央駅から徒歩7分の位置にある鹿児島を代表する観光施設「維新ふるさと館」は、167,038人(対前年比 88.9%)、桜島桟橋に隣接する「かごしま水族館」は643,195人(同 96.6%)、指宿に行く途中にある「平川動物公園」は569,715人(同92.5%)でいずれも減少しています。


 「フラワーパークかごしま」の平成25年度の入園者数は、147,855人(対前年比95.6%)で、九州新幹線全線開業翌年から再び減少しており、平成8年の開業年度(309,474人)と比較すると半数以下となっています。

 一方、体験観光が主流の「かごしまぶらりまち歩きは」、平成25年は3,718人(同117.5%)、「桜島ビジターセンター」は117,935人(対前年比117.5%)と増加しています。

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 平成26年の鹿児島県内の宿泊数は、九州新幹線が全線開業した平成23年から約80万人増加していますが、宿泊者の伸びに対して観光施設の入館者は連動していません。要因として少子高齢化、人口減少等社会的構造上の問題もあげられますが、生活者のニーズの変化に的確に対応できてない施設の状況が伺えます。
主な要因としては、

・大型団体が減り、個人旅行が7割〈県の宿泊統計〉となり旅行形態が変化している。
・少子高齢化で子供の数や家族旅行が減少し、観光施設に行く機会が少なくなっている。
・都市圏のアミューズメント施設に流れている。TDL、USJ、ハウステンボス等
・年金削減等の影響で高齢者の旅行が減少し、旅行会社のツアーの集客が良くない。
・園内で親子が体験や交流を楽しめる施設が少なくなっている。
・県民への四季折々の魅力発信が必要であり、また、平日の誘客対策が不足している。
・スマートフォンや各種インターネットの普及で、リアルに情報入手が可能となり、施設に行かなくても、一定の知識が得られることなどです。

 個々の施設についての現状を分析すると、課題も見えてきます。最近海外からの観光客は増加していますが、現状では中国のクルーズ船客は入園料がかかる施設は、敬遠しがちとなっています。

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 外国人に人気がある施設は、日本文化が体験できる仙巌園や出水の武家屋敷等です。着物や甲冑を身につけて、お茶、生け花、着物、武道等ができることです。薩摩焼、切子等高級品を求める外国人も多く、富裕層の誘客対策が必要です。

 学生に人気な施設は、「維新ふるさと館」です。西郷隆盛や大久保利通など歴史上著名な人物が動くキャラクターとして登場し、生徒たちの眼を釘づけにして人気となっています。静止画像より動いている姿が、人の印象に残ります。学校行事の誘致は思い出づくりとリピーターの創出となります。

 植物園や動物園等は見せ方が大事だと感じます。四季の草花苗の植え付けを体験させ、開花時に再度来てもらい、自分が植栽した植物の成長が肌で感じられる演出が必要です。 植栽した畑に、名前の札を立てるなどの工夫が求められます。(花が終わるまで限定)

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 水族館や動物園では、動物の1日の生態系をじっくり観察できる展示方法が人気です。細長い水槽を泳ぐアザラシや、木と木の間を綱渡りするオランウータン、施設の外を散歩するペンギン等、大人にも人気の旭山動物園は、「人間が動物から観察されている」というコンセプトです。また、小動物と遊んだり、餌やりの体験等も喜ばれます。

 リピーターを創ることが一定の入場者確保には不可欠です。会員への情報発信、参加型イベントで若者が共感できる賑わいの演出、貸しスペースがある施設は場所の提供等です。比較的平日の時間が取りやすい主婦層に対しては、子どもと参加できるイベント、「女子会」向けの講演会、ものづくり体験、ケーキや小物等が展示即売されているコーナーを設けることで、滞在時間の延長にもなり経済効果が生まれます。

 歴史資料館では、ストーリーを語る人が不可欠であり、また、大学生のゼミやカルチャーセンターの年間カリキュラムに組み入れてもらうことが、安定的な顧客確保に繋がります。

 これから入場者を増やす課題と方策として
①県民が施設の魅力を知らない。個々の魅力の発信や県民デー等を設けて割引やイベントの創出で認知度アップを図ることが大切。
②旅先でついでに観光施設に訪問する人は多い。宿泊した施設のフロント、メイドさんの口コミやレンタカー会社等と連携したPRが不可欠。
③観光客は広域に廻ることから、周辺の観光地と連携した共同企画が必要。スタンプラ リー、共通入場券、農家レストランや直売所の紹介等。
④入館者の参画イベントを増やし、体験することでリピーターに繋げる取組が必要。 
⑤看板やパンフレットの外国語表記、WiFiの整備等受入態勢の整備が不可欠である。
⑥植物園等は、開花時に花文字やキャラクターができる植栽を心掛ける。
⑦オンリーワンや希少価値のある展示等を、旅行商品に組み入れて誘客を図る。
⑧高齢化社会に入り、バリアフリー対策を充実することで、介護者も同伴し入場者が増加することとなります。
⑨屋外や屋内の施設を活用して子供向けや女子会(女子高校生等)のイベントを開催す るなど「楽しめる空間」を築く必要があります。
⑩天気予報やモーニングショー等中継場所として、メディアの露出効果を高めること等 が波及効果が大きい。「おやっと」と思わせる、サプライズの演出が必要です。
⑪動物園や水族館は、形態展示から行動展示に重きを置くことで、入館者の感動が違い ます。

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 最後に、観光客誘致には県外に目が向きがちですが、まず県民を対象に誘致拡大することが第一です。県外客は鹿児島まで来るのに経費がかかることから、何度も来てくれるお客様を開拓することに取り組まねばなりません。


 お客様にいかに感動してもらえるのか、継続して来ていただけるか、個々の施設も根底から考え直して誘客につなげたいものです。

        暁(あかつき)の 紺朝顔や 星一つ
                        ~高浜虚子~

No.373 先祖のルーツを訪ねて~お盆を故郷で過ごす~

2015年8月10日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 夏休みも後半に入り、県外ナンバーの車を良く見かけます。県内では、昔から正月とお盆は古里で過ごす人が目立ちます。鹿児島県は、高度成長期を中心に、学校を卒業した若者が大都市圏に就職していきました。団塊の世代が退職する時代となり、墓参りを兼ねて毎年帰省する人が増えているのも当然と言えます。

 帰省を機に、季節外れの成人式や同窓会も開かれます。一緒に遊び勉強した仲間との再会を祝し、しばし童心に帰れるのもふるさとのありがたさです。

 お盆は、旧暦の7月15日を中心に日本で行われる祖先の霊を祀る一連の行事です。現在では、多数派である8月中旬(新暦8月15日)を「お盆」と称するため、「お盆」というと月遅れのお盆を指すことが全国的になっています。また、人が亡くなり49日法要が終わって最初に迎えるお盆は初盆と呼ばれて、厚く供養する風習があり多くの親戚、仲間が集まり故人を偲びます。

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 お盆は全国的にはさまざまな風習がありますが、比較的どこの家庭でも行われているのは、12日や13日の夕刻に行う「迎え火」と15日や16日の「送り火」です。京都では「五山の送り火」が、奈良では「高円山大文字送り火」が行われます。

 長崎では「精霊流し」が行われるなど多くの観光客もが訪れます。夏祭りとお盆行事は深く結びついていますが、観光の面からも魅力あふれるものが多く観光客誘致に力を注いでいる所も多くあります。

 ところでお盆の時期は夏休みと重なり、子供たちを始め兄弟、親戚が集まり、先祖のお墓参りをする良い機会となります。先祖の名前が刻まれた墓前に静かに手を合わせ、お祈りすることで、家族の大切さを確認する場となります。子供たちにとっても、自分の命は一人だけではなく先祖から長く引き継がれているものであり、大切にしなければならないと自ら悟る機会にもなります。

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 最近、同級生のいじめによる自殺や、親子の悲しい殺人事件、保険金事件等人の命がないがしろにされる出来事を聞くたびに、命の大切さを教えることの場がもっとほしいと願っています。身内の葬祭等には出席させて、荘厳な雰囲気を肌で感じることが大切です。

 先日も、同級生からいじめを受け、それを苦に自殺するという痛ましい事件が起こりました。繰り返される事件に、周囲は気づかなかったのかと残念でなりません。殺伐とした世の中を変えるのは、家庭の温かい愛情ではないかと思います。伝統的文化である日本のお盆の習慣を、皆さんとともに大切にしていかねばなりません。

 鹿児島県は一人あたりの生花の消費量が、日本一です。その要因は定期的にお墓参りに行き、その度に新しいお花を購入しお供えする習慣もあるからです。嫁ぎ先では姑さんが、先祖とお墓参りの大切さをお嫁さんに教えており、そのことが日々の生活の中で習慣として定着しています。

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 離島や南薩方面は、特に先祖崇拝の文化が強く残っている地域ではないかと思います。鰻池の湖畔の集落では、夏は花や水が枯れるため1日3回お墓参りする姿が見られます。観光バスが南薩地域を通ると、バスガイドさんが道路沿いのお墓を指差し、日々の習慣や新鮮な花が飾られていることを説明すると、観光客は掃除の行き届いたお墓に驚きの声をあげます。

 また、鹿児島には屋根付のお墓が多いのに感激します。風雨と桜島の降灰から、先祖の霊を守る大切さが示されているのではないでしょうか。お盆は人の命の尊さを確認する良い機会です。今年も家族でお盆に里帰りし、先祖の墓に線香とお花を供えて、元気で生かされている自分の感謝の気持ちを伝えたいと思います。

 お盆の頃良く流れる有名な「精霊流し」の曲で、大好きな歌です。是非長崎をお訪ねください。今年は「世界文化遺産登録」効果もあり、例年以上の人出が予想されます。

        精霊流し       作詞:作曲:さだまさし
     去年のあなたの想い出が テープレコーダーから こぼれています
     あなたのためにお友達も 集まってくれました
     二人でこさえたおそろいの 浴衣も今夜は一人で着ます
     線香花火が見えますか 空の上から
     約束通りに あなたの愛したレコードも一緒に流しましょう
     そしてあなたの 舟のあとをついてゆきましょう

     私の小さな弟が 何も知らずに はしゃぎまわって 
     精霊流しが華やかに始まるのです
     あの頃あなたがつま弾いたギターを 私が奏いてみました
     いつの間にさびついた糸で くすり指をきりました
     あなたの愛した母さんの今夜の着物は浅黄色
     わずかの間に年老いて 寂しそうです

     約束通りに あなたの嫌いな涙は見せずに 過ごしましょう
     そして黙って 舟のあとをついてゆきましょう
     人ごみの中を縫う様に 静かに時間が通り過ぎます
     あなたと私の人生をかばうみたいに

参考資料 出典:フリー百科事典『ウィキぺディア』

No.372 「域内旅行」の薦め~夏休みは子ども達に県内の魅力に触れる機会を~

2015年8月3日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 猛暑が続く日本列島ですが、甲子園球場では、まもなく全国高等学校野球選手権大会が始まり、郷土代表への熱心な応援が繰り広げられます。夏休みも佳境に入り、家族旅行等を準備されている方も多いと思います。海や山に出かけ自然の魅力に触れていただきたい。

 下記の唱歌は、作者が初夏の頃訪ねた尾瀬の情景を想い出し、詩に託したもので、美しい花の群生と涼しさが伝わってきます。

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 昭和24年6月13日にNHKのラジオ番組で放送されると、多くの日本人の心を捕え、その後曲に歌われている尾瀬の人気は飛躍的に高まっていきました。小生も東京に住んでいたころ、5月末から6月にかけてのミズバショウが咲く頃よく訪ねました。

 雪解けの湖沼に白い花を付けたミズバショウの可憐な花が、尾瀬沼の北部にそびえる2356mの燧ヶ岳(ひうちがたけ)の姿と対比して、美しい情景を醸し出しています。遊歩道では色とりどりのリュックを背負った多くのハイカーとすれ違います。

 ミズバショウの花が終わり、7月中旬頃になるとニッコウキスゲの可憐な花の群生が見られることから、夏休みはファミリーの姿が多くなります。 ぜひ一度は訪れたい美しい日本の情景に会える場所です。     

              夏の思い出
   歌:童謡・唱歌    作詞:江間章子    作曲:中田喜直

    夏が来れば思い出す    はるかな尾瀬 とおい空
    きりの中に浮びくる    やさしい影  野の小路
    みず芭蕉の花が咲いている 夢見て咲いている水のほとり
    しゃくなげ色にたそがれる はるかな尾瀬 とおい空

    夏が来れば思い出す    はるかな尾瀬 野の旅よ
    花の中にそよそよと    ゆれゆれる 浮島よ
    みず芭蕉の花が匂っている 夢見て匂っている水のほとり
    まなこつぶればなつかしい はるかな尾瀬 とおい空

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 県民の皆様、涼を求めて今年は屋久島へ出かけてみませんか。高速船で2時間足らずで行くことができ、登山しなくても涼しさを味わえる場所が多くあります。「もののけ姫」の舞台となった標高600m~1,050mの地にある「白谷雲水峡」は、ヤクスギなどの原生的な森林を鑑賞できます。

 日本の滝100選に選ばれている「大川(おおこ)の滝」、雄大な岩盤を水が下り落ち、飲料メーカーのCM撮影が行われた「千尋(せんぴろ)の滝」、世界自然遺産地域が広がる「西部林道」等涼しいスポットがあなたの心を癒してくれます。「屋久島環境文化村センター」や「屋久島環境文化研修センター」ではエコ学習ができます。

 現在、口永良部島新岳噴火の風評被害等で、屋久島への観光客が低迷しています。口永良部島と屋久島は海を隔てて12km離れており観光には全く支障はありません。口永良部島の島民は、今屋久島で避難生活を送っています。島民にお会いする機会があったらぜひ励ましていただきたい。

 鹿児島県には28の有人離島があり、島ごとに多彩な生活・食文化、伝統的祭り、美しい海岸線など、魅力的な観光地が点在しています。夏休みという期間を利用して家族で離島にも足を延ばしてください。

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 県本土でも涼を感じる場所が点在しています。大隅半島では「悠久の森」、錦江町の「照葉樹の森」、「花瀬自然公園」があります。また、「鹿屋航空基地史料館」では、日本の防衛や平和の大切さを学ぶことができます。


 霧島温泉は、鹿児島市内より朝・夕の温度が5度程度低く、夏でも過ごしやすい地域で、親子でのトレッキングが人気です。標高700mの高原にある「霧島アートの森」は、有名アーティストの野外作品に触れることで、子ども達の感性を高める機会になるのではないでしょうか。

 ところで、7月5日に、旧集成館(反射炉跡、旧鹿児島紡績所技師館、機械工場)、関吉の疎水溝、寺山炭窯跡の3つの構成資産が、「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」として、世界文化遺産に登録されました。

 国内で自然遺産と文化遺産の2つの世界遺産を持つ唯一の県となり、県民にとっても大きな誇りです。

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 「関吉の疎水溝」と「寺山炭窯跡」の2か所には、土日と祝祭日にはボランティアガイドが常駐し、案内業務を行っています。1851年にスタートした集成館事業は、「明治日本の産業革命遺産」の先駆けであり、薩摩の先見性と技術力を国内外に示す重要な構成資産です。

 県民が登録遺産を直接見て、歴史的背景を語ることの大切さが問われています。夏休みの学習教材として、「明治日本の産業革命遺産」を勉強していただきたいと願っています。 観光振興にも大いに活用していかねばなりません。

   10月31日から「第30回国民文化祭・かごしま2015」が開催されることから、全国の約30の旅行エージェントが9月から誘客キャンペーンを展開します。世界遺産や各地域の観光資源を活用したお得な商品企画が進められており、秋以降は大いに盛り上がるものと思います。

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 噴火活動や長雨による列車の不通期間もあり、6月、7月と観光客は低迷しました。 これからの取組が国民文化祭の認知度を高め、その後の観光客増という成果となって表われます。県民の皆様も夏休みを利用し、身近にある観光資源を家族で訪ねて、郷土の良さを知る機会にしていただきたい。

 県民自らがPRしていただくことが何よりも求められているのではないでしょうか。

参考:夏の思い出:Wikipedia

No.371 中間幹夫氏の(株)全旅の社長就任を祝す~5500の会員各社に鹿児島をPRするチャンスに~

2015年7月27日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 梅雨明けが遅れましたが、夏休みに入り国民の大移動が始まりました。家族旅行や海外旅行の手配、イベントの集客、高校野球の選手・応援団の輸送、外国人の受入、地域への誘客等旅行会社の役割も多岐にわたっています。

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 日本には1万社に近い旅行会社があり、観光庁長官登録が必要な第1種旅行業と、本社所在地の都道府県知事の登録が必要な第2種旅行業、第3種旅行業があります。業界の団体組織としては、一般社団法人日本旅行業協会(JATA)と一般社団法人全国旅行業協会(ANTA)があります。

 JATAは、正会員1127社と協力会員446社、賛助会員93社、在外賛助会員や旅行業に密接な関係のある者517社が加入し、全国8支部が設けられており比較的全国的に営業を展開しているのが特徴です。(2015年7月10日現在)

 一方、ANTAは、全国47の都道府県に支部を置き、日本全国5500社を超える会員により、地域に密着した営業をしているのが特徴です。

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 この度ANTAの事務受託会社である(株)全旅の代表取締役社長に、鹿児島県の中間幹夫氏が就任しました。(株)全旅は、会員の取引先である宿泊、観光施設、キャリア等の保証会社としての役割も担い、クーポン決裁事業や各種旅行商品、電子クーポン等を取り扱っています。2014年度は、取扱額、利益とも過去最高の実績を達成しています。

 ANTAの各社が企画造成しているのが、着地型旅行「地旅」と呼ばれるもので次の特徴があります。
①「テーマや目的」が明確で、生活文化など地域資源を活かした旅行商品が多い。
②地域住民、各種団体(自治体、観光協会、NPO法人)等と協力し企画造成している。
③地元の食材や伝統工芸、祭り、イベント等を活用し地域振興に貢献している。
④地元との交流や体験、地域ならではの生活・文化などの魅力を語り、伝えるための観 光素材(ボランティアガイドの確保)などが含まれている。
日頃から地元と密着している会社ならではの商品が特徴です。

 ANTAでは、毎年「国内旅行活性化フォーラム」を開催し、地元の観光素材を生かしたさまざまなモデルプランを造成し、旅行需要の拡大を図っています。

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 ANTA主催の国内観光フォーラムと全旅主催の「第2回地旅博覧会inかごしま」が2016年3月16日~19日までの4日間、鹿児島での開催が決まり、2万人余りの参加者が予定されています。参加者の宿泊先を分散させることで、「市町村と地元ANTAがアイディアを出す機会」にしたいと中間会長は、力強く語っています。

 記念講演は、2010年4月5日に「スペースシャトル ディスカバリー」に搭乗し、宇宙に滞在した山崎直子氏です。県内には日本で唯一の宇宙基地が2箇所あり、多くの会員が見学に訪れるのではないでしょうか。

 日本の国内旅行は、大手エージェントによる「発地型団体旅行」を中心に拡大してきましたが、地域主導・地域密着による「着地型旅行」も人気を博しています。

 大手旅行社が、積極的には取り組んでいない地方の生活・文化等を商品化しているのがANTAの会員であり、地域を熟知している住民や観光協会、NPO法人、自治体職員等と共同で、創意工夫に満ちた新規な商品も造成しています。

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 ところで、鹿児島県内に宿泊するお客様の70%が個人旅行となっており、宿泊した翌日にどのような行程で地域を巡るかが課題です。その際、周辺を半日でも観光できるメニューがあれば、地域の魅力に触れる機会にもなりリピーターに繋がります。

 そこで、地域の人々との触れ合いや地元食材を十分に活用したレストラン等が組み込まれた商品企画が必要になるのです。ANTA会員の情報収集力が求められるのです。

一方、著名な観光地が少なく、大きな宿泊施設を持たない地域では、マニアックな旅が好きな客を対象に、様々な情報手段を活用し、地域の魅力を届けることが重要となっています。

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 集落の伝統的祭り、1年に1回しか公開されない神社・仏閣の宝蔵品、域内でしか流通してない旬の食材、珍しい植物、めったに見ることができない自然現象等地域資源を点検し、誘客に繋げる手段が必要です。


 鹿児島県旅行業協同組合は、従来から中間氏を中心に積極的に事業展開をしています。今、「魅旅」という着地型商品を開発し、大手エージェントにも販売ルートを開拓しています。最近では、バリアフリーツアーや過疎地域に特化したツアーなど社会貢献や地域経済の活性化等積極的に取り組んでいます。

 鹿児島県は南北600kmに及び、県下全域に観光客を広げることが大きな課題であり、そのことが経済波及効果をもたらすことになります。

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 「魅旅」では、「第30回国民文化祭・かごしま2015」の参加者に地域の魅力も知ってもらうために、地域発のツアーが商品化されており、鹿児島を訪れる皆さんに新たな感動を与えるのではないでしょうか。


 中間会長のもと、地元の会員が全国のANTA会員に鹿児島の地域の魅力を発信し、地域の活性化に努力されることをご期待申し上げます。

 最後に、昭和40年代頃までは、夜になると蚊に刺されないように多くの家庭で蚊帳を釣って寝ていました。家族全員が雑魚寝して寝ていた頃が懐かしく思い出されます。

  垂乳根(たらちね)の 母が釣りたる 青蚊帳を
                すがしといねつ たるみたれども
                            ~長塚節~

No.370 「人の語り」が感動をもたらす~心からのおもてなしの気持ちを伝えるために~

2015年7月21日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 7月5日に、旧集成館(反射炉跡、旧鹿児島紡績所技師館、機械工場)、関吉の疎水溝、寺山炭窯跡の3つの構成資産が、「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」として、世界文化遺産に登録されました。

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 国内では2つの世界遺産を持つ唯一の県となり、県民にとっても大きな誇りです。県民とともに喜び、観光振興にも大いに活用していかねばなりません。翌日から訪問者が増加しており、「関吉の疎水溝」と「寺山炭窯跡」の2か所には、11日から土日と祝祭日には新たにボランティアガイドが常駐し、案内業務がスタートしました。

 今回の世界文化遺産は、各構成資産を一つのストーリーとして分りやすく説明することで、文化財登録の価値が理解しやすくなります。

 今回は「シリアル・ノミネーション」として推薦していることがあげられます。一つ一つでは「顕著で普遍的価値」の要件を満たさない遺産を、同じ歴史一文化群のまとまりとして関連付け、全体で顕著な普遍的価値を有するものとして、世界遺産に推薦したことです。

 複数の遺産がつながっているからこそ、インタープリテーション(解説)が遺産に対する価値を高め、観光客も満足度が高まり「おもてなしの心」も伝わります。

 *今度の産業革命遺産は、ボンの世界遺産委員会で「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼 造船 石炭産業」として登録されました。

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 ところで、観光客だけでなく日頃の応対には「おもてなしの心」が欠かせません。先日、大雨の日に、市内の菓子店で経験したことです。ケーキを買ってレジで精算を済ませ受け取ろうとすると、若い女性の従業員がお持ちしますと外まで運んでくれました。

 私が鞄を持っていたこともあり、傘を開いてくれて、雨に濡れないようにナイロンの袋をかぶせたケーキの箱を渡してくれました。帰る際には、「雨脚が激しいので、足元に気を付けてお帰りください」と声をかけ、一礼してしばらくしてから店の中に入って行きました。店は少し混んでいましたが、雨の日ということもあり特に顧客への配慮を感じました。思いがけない心配りに感動し、またその店で買いたいという心境に駆られました。

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 最近急増しているコンビニエンスストアで経験することです。昼間の空いている時間帯でしたが、ドアが開き入店したことがわかると、奥のほうから「いらっしゃいませ」と大きな声が聞こえてきました。棚に商品を並べていたのでしょうか、顔が見えません。店員はしばらくしてからレジのほうに戻ってきました。

 客が入店したというシグナルが発せられるのに、声だけでは誠意が伝わりません。仕事を中断して、お客様のほうを向き挨拶をするのが誠意ある応対と思います。下を向いて「いらしゃいませ」というだけでは、ただマニュアル通りに作業をしているのであり、仕事をしているとは言えません。従業員教育の基本姿勢を見直しする必要があります。

 コンビニエンスストア業界は、各地域で出店競争が激しくなっていますが、価格や利便性だけでなく「おもてなしの心」等人材教育が、勝ち残りになるのではないでしょうか。

 小生の「プロデユーサーコラム」で、「感動のおもてなし」を実践しているドライバーとしての紹介したこともある指宿ハニ交通の冨山剛招さんから、うれしい連絡がありました。

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 5月の鹿児島県タクシー協会の総会で、優良運転手として表彰されたということです。 冨山ドライバーは、故郷の指宿にUターンして10年になります。観光客を案内する際 には、予定された料金のコースだけでなく、時間を超えても顧客が喜びそうな場所を自ら案内し、スナップを撮っては無料で宿泊先に届け、また、自宅にも写真を送っています。


 お客様からのお礼状はこれまで400通を超え、その「おもてなしの心」はドライバーの鏡です。県タクシー協会と観光連盟が主催する研修会で、3年前に体験談を語ってもらいましたが、お客様にいかに喜んでもらうか、また来たいと思うような接遇を実践し、訪れる人々が喜んでいただけるサービス精神を持ち合わせています。観光地の評価は、まさに「人にあり」ではないでしょうか。

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 今鹿児島の観光は、口良永部島新岳噴火による屋久島への風評被害、長雨や「指宿のたまて箱」の運休等が続き、6月以降の観光客が伸び悩んでいます。県内の観光地は平常通り営業し、観光客への被害も発生していません。積極的なPR活動が必要です。

 「明治日本の産業革命遺産」の世界文化遺産の登録も決定し、反転攻勢を駆け夏休み以降の誘客を図らなければなりません。10月31日からは「第30回国民文化祭・かごしま2015」も開催されることから、誘客に向けてツアーの割引や宿泊客への特典等も準備されています。

 「リクルートじゃらん」が実施している県ごとの全体的な評価(観光地の魅力や認知度、食、お土産品、おもてなし等)では、鹿児島県は毎年いつも上位にランクされています。

 世界文化遺産登録をチャンスととらえて「おもてなしの心」を常に忘れず、観光客を温かく迎え、リピーターの創客につなげることが大切です。

  向日葵は 金の油を 身にあびて
                ゆらりと高し 日のちひささよ
                           ~前田夕暮~

  わが夏を あこがれのみが 駆けされり
                麦わら帽子  かぶりて眠る
                           ~寺山修司~

No.369 地域を救うものは何か~観光は地域総力戦で盛り上げよう~

2015年7月13日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 長崎で講演の機会があり、世界文化遺産に登録されたばかりの「端島(軍艦島)」を訪ねました。4つの会社がクルーズ船を運航していますが、秋までは予約がほぼ埋まっているという状況です。

 メディアでの放映の機会も多く、しばらくはブームが続くのではないでしょうか。長崎駅には、世界文化遺産の案内所が設置されていました。

 2014年、鹿児島県全体で年間758万人もの宿泊者があり、九州では第2位となっていますが、地区別では約64%が鹿児島市、霧島地区、指宿地区の3地域に集中しており、今後この地域からいかに観光客を広げるかが大きな課題となっています。

 そこで県と観光連盟では「これらの3地域を拠点に、地域資源の再評価と活用を図るため周遊ルートづくり」等3本の施策を展開し、広域観光の推進を図っています。他県に負けない観光資源を持ちながら県民にも意外と知られていない場所も多くあり、新たなルートを設定して誘客につなげる必要に迫られています。

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 観光のトレンドは、団体旅行から個人旅行にシフトしており、県の宿泊機関のデー タでみると7割が個人客となっています。名所旧跡巡り、宴会を主とした狭義の観光から、体験・交流などを通して地域の生活、文化等の魅力に触れる旅へと顧客のニーズは広がっており、安全・安心、本物の提供が観光客の心を捉えます。

 地域では受入態勢の整備が急がれ、大都市圏から地方への流れも進んでくるものと 想定されます。地域づくり・観光地づくりには人の存在が重要であり、県内の地域資源を旅行商品化し、そして地域全体をパッケージ化、また、プロモーションするという組織力が問われています。

 九州新幹線全線開業を契機に市町村においては、観光関連部署の人員増等で機能を強化し、他の自治体と一緒になって地域のPR活動に取り組んだり、県の福岡、大阪、東京事務所に職員を派遣して営業強化に努めているところもあります。観光協会においては、部外から新たな人材を登用するなど従来の案内業務から誘客に力をそそいでいます。

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 今、着地型観光(地域の魅力的な資源を地域から情報発信する観光)の推進が求められており、地域資源を点検し、生活・文化を核に、食を組み合わせるなどこれまでにないプログラムづくりを進め、地域へ誘客する努力が求められています。

 商工会議所、商工会等と連携し、新しいグルメの開発や着地型メニューの開発などの取組を行い、訪れた観光客が「本物。鹿児島県」の魅力に触れる機会を増やし、地場産業の活性化等に力を注いでいます。様々な取組が相乗効果をもたらし、持続できる地域創りが可能となります。

 県の2014年の農業産出額は、4,054億円で北海道、千葉県、茨城県に次いで第4位となっており、鹿児島の経済を支えている基幹産業です。

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 一方、観光は多くの分野と関連があり、地域の総合産業として捉える必要があります。農業のみならず、漁業、商工業、歴史、生活・文化等を観光資源として捉え、ストーリー性を加えて商品化することで、異業種、異分野間で経済の循環が持続できる地域となります。

 イベントは他地域と連携する等継続できることで地域ブランドとして育っていき、民間の活力、人材の育成等が継続の力となります。

 安定的市場である教育旅行やスポーツキャンプの誘致も重要です。知覧や鹿屋での平和学習、桜島や口永良部島新岳噴火等への「危機管理への対応」、鹿児島市内の歴史探訪、垂水漁協での漁業体験、屋久島の環境学習、内之浦、種子島の科学学習等が差別化になります。

 農家・漁家民宿については、県下全域での受入が可能になり約1,000軒となっており、コンプライアンスの徹底と「簡易宿所営業」の許可取得を推進することが欠かせません。農家民泊と既存の宿泊施設は、新しい需要開拓という視点に立ち、「競争」と「協調」の姿勢が、全体的な入込客増大に結びつきます。

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 国内外のプロチームのキャンプ・合宿や、知名度の高い競技・選手のキャンプを誘致すると、経済効果も大きくなります。県内ではキャンプできるチーム数が限られており、プロサッカーチーム誘致には、天然の冬芝のグランド整備が欠かせません。

 2019年にはインターハイ、2020年には国体が開催されることから、大会に照準を合わせてグランド整備が待たれます。大隅地域にトップアスリート専用の練習場が開設されることが決定し、宿泊施設の整備や鹿屋体育大学等との連携が求められています。

 ところで訪日外国人旅行者が急増しています。2014年の本県への訪日外国人旅 行者は、26万9,110人で25.3%増加しています。国別宿泊者数は、台湾、韓国、香港、中国の順で、台湾からの訪日者数が全体の39%を占めています。

 しかし、鹿児島県の宿泊者全体における外国人の割合は3.5%であり、福岡県6.4%、長崎県5.8%、大分県6.1%、熊本県5.9%と比較すると極端に低くなっています。東アジアから九州への入込観光客は、海外からの交通アクセスが充実している北部九州がメインであり、鹿児島へのシャワー効果がおよんでいません。

 博多からの所要時間は最短でわずか1時間17分ですので、やはり、移動コストの軽減化が求められています。また、WiFiや外国語標記の整備、免税店の充実や外国人の雇用等、訪日外国人旅行者を温かく安心して迎える態勢づくりも必要です。特に、自国を出発前に鹿児島のブランド力をいかに伝えられるかが課題です。

 クルーズ船のさらなる誘致促進も必要です。県内各港には2013年には69隻、2014年は54隻、今年は73隻(国内船含む)のクルーズ船が寄港予定で、さらに増える見込みです。一度に多くの観光客が訪れることから、経済効果も大きくなります。入国審査の時間短縮の働きかけや中心市街地までのバスの運行が欠かせません。

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 最近、各県がイベントや国際会議などの催し物(MICE)の誘致に力を入れています。今年の10月には「第30回国民文化祭・かごしま2015」が開催されることから、多くの参加者が県内各地域に足を運ぶこととなります。

 先月福岡で開催された「AKB48選抜総選挙」では、福岡市内を含め周辺のホテルが2日間満員となり、数億円の経済効果をもたらしたと言われています。MICEの誘致には、通訳施設を備えた大型会議場が必要で、また、音楽・演劇などが鑑賞できるホール等を併設した施設が若者の誘客には欠かせません。

 個人旅行が主流となり、FIT(宿や乗り物を個人で手配する旅行)が増加しています。市中の案内表示、アクセスの同一化、クレジットカード取扱店拡大、Wi-Fiの整備、多言語表示等改善すべき多くの課題があります。

 また、ユニバーサルツーリズムの先進地へと態勢を整える必要があります。障がい者の旅行には、必ず同行者があり、観光施設ではこれらの層を増やすことが、来場者増となります。旅の感動に「バリア」はありません。また、高齢化社会を迎えて、バリアフリーの受入拡大を図るべく施設の改善をすすめなければなりません。ユニバーサルツーリズムの先進地を目指し、人材育成、研修教育の機会を増やすことが重要です。

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 大学と地域とのコラボレーションも重要なキーワードとなります。各自治体は、若者が減少し商品開発や情報発信が遅れがちになります。都会に住む大学生の新鮮な発想で、地域の宣伝者としての役割が求められています。


 地域は大学との連携を深めることで、地域資源を活用した商品開発や販路拡大が可能となります。年間講義のカリキュラムに、地域に滞在しての勉強や住民との交流、商品づくりを組み入れることで、双方のメリットが享受できます。

 素晴らしい日本の伝統文化を国内外の人にPRするのが、観光の役割の一つです。観光が持続できる産業となるには、人材教育の徹底と観光関連産業の雇用をきちんと確保することです。観光地は、そこに住む人が地域の文化をしっかりと守り、観光客にとっても居心地の良い場所でなければなりません。鹿児島が真の意味で、観光立県になるためには、若者が観光に興味を持ち、雇用の維持・拡大が図られることです。

 日本の国内旅行は成熟し、従来の団体旅行やエージェント依存だけでは、地域は大きな発展は期待できません。ものづくり、産業遺産、伝統工芸、食、祭り、MICE、グリーンツーリズム、ブルーツーリズム等地域資源を活用し、地域総力戦で取り組むことが誘客につながり経済効果をもたらします。

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 「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」が世界文化遺産に登録され、鹿児島の3つの構成資産が含まれています。構成資産のストーリーを語ることが、薩摩の先見性や、日本の近代化に果たした役割の重要性を国内外に示すことになります。

 最後に、「域内の定住人口減少」を「域外からの交流人口増大」で補う方策の一つとして、観光による交流人口の拡大が、「地域経済の活性化」に及ぼす効果が大となることを期待してやみません。

No.368 「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」の 世界文化遺産登録を寿ぐ~各県と連携し「顕著な普遍的価値」を活かす取組を~

2015年7月6日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 ドイツのボンで世界遺産委員会が開催され、「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」の、世界文化遺産への登録が決定しました。

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 8県11市の全23の資産が対象ですが、鹿児島市内にある旧集成館『反射炉跡、旧鹿児島紡績所技師館(異人館)、旧集成館機械工場(現・尚古集成館本館)』と、関吉の疏水溝、寺山炭窯跡の3つの資産が含まれています。


 世界遺産の登録までの主な取組経緯について簡単に説明します。平成17年7月に鹿児島県主催で「九州近代化産業遺産シンポジウム」が開催され、「かごしま宣言」を取りまとめました。平成18年6月九州知事会議における政策連合項目として、「九州近代化産業の保存・活用」が決定し、関係県での取組へと発展していきました。

 平成20年9月文化庁において世界遺産暫定登録一覧表への追加記載が決定し、同年10月に、九州・山口の関係6県11市により鹿児島県知事を会長とする世界遺産登録推進協議会を設置しました。(その後8県11市体制となります。)

 その後、様々な推進会議や有識者を招いてのシンポジウムも開催されました。平成26年1月には推薦書(正式版)をユネスコに提出することが閣議で了承され、平成27年5月4日に、イコモスによる「記載」勧告が出されて、今回の正式登録に至ったものです。 鹿児島県は当初から事務局を担当する等、中心的な役割を果たしてきました。関係者に心からの敬意を表したいと思います。

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 世界遺産は、1972年のユネスコ総会で採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」に基づいて世界遺産リストに登録された、遺跡、景観、自然等、人類が共有すべき「顕著な普遍的価値」を持つ物件のことで、移動が不可能な不動産やそれに準ずるものが対象となっています。

 幕末の薩摩藩は、1840年のアヘン戦争で香港がイギリスの植民地となったことをきっかけに、欧米列強のアジア進出に危機感を抱いていました。第11代薩摩藩主島津斉彬は産業や軍備の近代化が急務と考え、殖産興業と富国強兵を唱え、集成館事業を推進しました。

 集成館事業は、製鉄、ガラス、陶器、繊維、大砲、造船、蒸気機関、化学工場等幅広い分野に渡って取り組み、当時としては東洋一の工場群を形成していました。これらの研究、生産施設群は、1850年代初頭から1860年代という極めて短い期間に整備構築されました。集成館事業は、我が国の産業革命の先がけであり、その後に続く日本近代化の礎となりました。

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 寺山の炭窯で焼かれた火力の強い白炭や、関吉の疎水溝から引かれた水力が燃料と動力源となり、磯地域の工場群の稼働を可能としたストーリーを語ることで、今回の世界文化遺産登録の全体像が見えてくるのではないでしょうか。


 日本国内には、14件の文化遺産と4件の自然遺産の合計18件の世界遺産が登録されており、今度の「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」は、19番目となります。

 鹿児島県は、自然遺産と文化遺産の2つの世界遺産を持つ唯一の県となり、国内外に認知度の向上が図られ、観光客誘致に大きな弾みがつくものと期待されます。

 今回の世界文化遺産登録の意義や今後の課題について整理したいと思います。鹿児島市内の3箇所の構成資産のうち「寺山炭窯跡」、「関吉の疏水溝」は、市民にもほとんど知られていない場所であり、場所のPRやアクセス等が大きな課題です。施設周辺に駐車場が少ないこともあげられます。初めて訪れる方は、友人の案内やボランティアガイドの同行が必要ではないでしょうか。

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 今回の世界文化遺産登録地は8県11市に及んでおり、明治の我が国における産業革命において関連性があることから、それぞれの県がその魅力をPRすることで世界遺産の価値が高まります。


 その中で鹿児島県としては、集成館事業が我が国の産業革命の先がけとなり、その後に続く日本近代化の礎となった事業であるという登録の意義やストーリーを語ることで、他県の施設を超える価値があることをより一層アピールできるのではないでしょうか。

 世界遺産登録で外国人が増加することが予想されることから、英語表記等の充実が求められます。最寄り駅である鹿児島駅は観光客が乗降する場所となります。屋久島や2017年度に世界自然遺産を目指す奄美へのアクセスを考えると、ウォーターフロント地区の再整備も急がれます。

 ところで、日本にある世界文化遺産は、登録後数年経過すると入場者の伸びが低迷しているのが実情であり、自然遺産に比べてリピーターの確保が厳しい点があります。遺構や建物は一度見ると再び訪れる可能性は低くなります。リピーターを創造するには、他地域との連携や四季折々の姿を見せる工夫が必要です。

 桜の時期や菊の満開の頃の仙巖園から見る桜島の景観や、また、曲水の宴や月見の宴等伝統行事と一緒にPRするなど見せ方や活用に工夫を加え、一時的なブームに終わらせないことです。

 公開されている施設を巡るスタンプラリーを展開するのも認知度を高め、観光客を増やす方策になります。「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」は、広域に廻ることでその価値が理解できます。

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 今年の秋に開催される「第30回国民文化祭・かごしま2015」には大きな追い風となります。世界文化遺産に登録されたことをインパクトにして、鹿児島への誘客につなげねばなりません。口永良部島の新岳の噴火で落ち込んでいる屋久島への観光客回復にも期待がかかります。

 今年は薩摩藩英国留学生の派遣から150年になります。この事業を発案したのも島津斉彬ですが、彼なくして日本の近代化は語れません。(斉彬は1858年に急死)幕末からわずか50年余りで産業化を達成し、日本の近代化の礎を築いたのは、鹿児島市の3件の遺産が重要な役割を果たしおり、それを推進した彼の先見性や人材育成等の功績を再認識する機会にもしなければなりません。

 人口減少が続き地域創生が問われている時代です。「世界文化遺産」登録は、薩摩が果たした功績を学び、郷土を愛する心を育てる機会にもしなければなりません。皆さんもぜひ3つの構成資産をお訪ねください。

参考:鹿児島の近代化産業遺産...鹿児島県世界文化遺産課
  :かごしま近代化産業遺産パートナーシップ会議...鹿児島市文化遺産登録推進室

No.367 宇宙へ飛び立つ島の魅力を語る~噴火の影響を種子島と屋久島の魅力でカバー~

2015年6月29日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 種子島は、九州本島最南端の佐多岬から南東約40Kmの洋上に位置する島です。周囲166km、長さ58km、最大幅12km、島の最高地点は282mと比較的平坦な細長い島で、鹿児島空港から35分、鹿児島港から高速船で1時間45分と本土に近く、屋久島にも30分で行くことができます。種子島の魅力について触れたいと思います。

 かつてポルトガル人が鉄砲を伝えた島として、中学校の社会科の教科書に登場します。1575年織田信長と徳川家康の連合軍が、当時最強の騎馬隊と恐れられていた武田軍団を3000挺の鉄砲で三段打ちを行い、壊滅させた戦いがあります。「長篠の戦い」と呼ばれ、信長が「天下人」として足固めにした戦です。

 鉄砲が、日本の歴史を変えるほどの武器となった物語は、戦国の時代を語る際には必ず語られます。種子島では、イベントの開始やクルーズ船が寄港した際、火縄銃の発砲が行われており、参加者を楽しませます。

 種子島開発総合センター(鉄砲館)には、1543年に伝わったポルトガル銃や国産第1号銃が展示されています。もっと観光客に展示内容をPRした方がいいのではないでしょうか。また、施設のネーミングも代えることで来館者が増えるのではないでしょうか。

 また、世界一美しいといわれるロケット基地があることも種子島の魅力です。島の東南端の海に囲まれたまばゆい景勝の地に、「種子島宇宙センター」があります。

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 同敷地内にある「宇宙科学技術館」では、実物大のモデルを通して、宇宙開発におけるさまざまな分野を楽しみながら理解できるよう展示内容も工夫されていて、子供たちが宇宙に興味を持つことができる貴重な施設です。


 打ち上げがない時期には、発射場の近くの施設を見学できる無料バスがあります。本番の打ち上げの迫力は想像を絶するものがあり、宇宙ケ丘公園からは、発射の瞬間を望むことができます。気象条件等で延期になることが多いので、余裕を持った行程が必要です。

 千座(ちくら)の岩屋は、太平洋の荒波で削られてできた洞窟であり、千人が座れる広さがあることから、その名前が付いたといわれます。周辺の白砂が映えて、洞窟の中から望む夕日は格別です。天気が良く波静かな日は、変化していく夕方の空に、星が輝き始め幻想の世界に浸ることができます。

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 種子島には遠浅のビーチが数多くあり、太平洋の荒波が打ち寄せる鉄浜海岸などは、絶好のサーフポイントとなり、近年では全国から若者たちが訪れています。昼はサーフィンを楽しみ、夜は飲食店で働いている若い男女も多く見かけ、サーフィンの仲間が集う聖地となっています。

 また、西之表市内から15分程度で行ける浦田海水浴場は、日本の海水浴場88選の一つに選ばれており、青い海とビーチが広がる静かな入り江の中にあります。キャンプ施設も整っており、夏場は多くの家族連れが訪れ、海水浴客で賑わいます。

 その他「よきの海水浴場」は、開聞岳、屋久島、硫黄島等を望むことができる絶好のポイントです。これからも美しい白砂の海岸線を守って欲しいと思います。時折、ハングル文字で書かれたビン類や木材の破片が漂着することも多く、清掃作業が大変です。自然を守ることの大切さを改めて感じます。今年の夏は種子島の海で海水浴やサーフィン、キャンプ等をお楽しみください。

 今年は「第30回国民文化祭・かごしま2015」が県下全域で開催されますが、西之表市では「華道の祭典in種子島」と「黒潮文化交流の祭典」が開かれます。鹿児島県内在住の華道17流派と種子島の華道家が一堂に会して華道展を開催し、全国から訪れる多くの方々に「華道」に親しんでもらい、おもてなしの心で交流が図られるものと期待されます。

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 華道の祭典の会場の一つが、赤尾木城文化伝承館「月窓亭」です。「月窓亭」は、大日本池坊総会頭職を務めた羽生(はぶ)道則などを輩出した名だたる名家である羽生家の屋敷であり、明治以降においては、歴代種子島家当主が居住するなどたいへん由緒ある建物です。

 作家司馬遼太郎や多くの著名人が訪れており、庭から見る月は、名前にふさわしくまさに絶景です。

 中種子町では、アーティスト河口洋一郎氏を迎えて、「CGアートフェスティバル」が、南種子町では、広田遺跡ミュージアムと宇宙科学技術館を舞台に「黒潮が育んだ古代文化と宇宙芸術展」が開催されます。古いものと新しいものがコラボすることで、鹿児島の新しい観光文化資源の創出になるのではないでしょうか。

 種子島と屋久島を比較すると、入込客は屋久島が9千人程度多くなっています。(26年度熊毛支庁統計)種子島空港はジェット機が就航できる体制が整いましたが、乗降客が低迷しているのが現状です。大都市圏からの新たな路線の開拓や海のない県からのチャーター便の誘致が重要であり、また、世界遺産の島として知名度の高い屋久島との連携が欠かせません。

 種子島では新鮮な魚介類、日本でいちばん早く収穫されるお米、糖度の高い安納芋など豊富な農水産物が獲れます。大都市圏からのSSH校や私立学校をターゲットにした体験型教育旅行、温暖な気候を活用したスポーツ合宿誘致が求められます。種子島の宇宙科学と屋久島の世界自然遺産は、他県にない教育資源です。

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 現在、口永良部の新岳の噴火で、島民全員が12km 離れた同じ町内の屋久島に避難しています。噴火の影響で夏場の屋久島の予約状況が今一歩です。梅雨が明け本格的な夏が訪れると、海と山のシーズン到来です。是非屋久島の魅力を発信して風評被害を一掃していかねばなりません。

 まもなく「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」の世界文化遺産登録も決定するものと思います。鹿児島としては、反転攻勢をかけるきっかけにし、そして秋の国民文化祭に向けて勢いを付けなければなりません。

 「鉄砲が伝来し、ロケットが打ち上げられる島」種子島、「世界自然遺産の島」屋久島は隣接していることを国内外の人々にPRし、夏場の誘客につなげたいものです。

   風そよぐ ならの小川の 夕暮れは
   みそぎぞ夏の しるしなりける  ~藤原家隆~小倉百人一首より

No.366 霧島と鹿児島市の中間に位置する条件を活かせ~立ち寄りたくなる街づくりへ~

2015年6月22日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 姶良市は、姶良町、蒲生町、加治木町の旧3町が合併して、平成22年3月に誕生した人口75,000人あまりの県下5番目の市です。

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 有識者らで創る「日本創生会議」は、国立社会保障・人口問題研究所が2014年に公表した将来推計人口を基に、子どもを産む中心の若者女性について、2010年と比較した30年後の数を試算をしています。それによると、県内では全市町村が少なくなりますが、姶良市は奄美大島の龍郷町に次いで減少数が小さくなっています。

 県都である鹿児島市に近くアクセスに恵まれ、住宅環境等に恵まれていること等がその要因にあげられるのではないでしょうか。

 姶良市には、歴史的遺産等県内最多を誇る文化財や、錦江湾を眺望できる多くの絶景スポット、手作り工房、多彩な民家レストラン等が点在していますが、意外とその魅力が浸透していません。

 この度、県と観光連盟では「鹿児島発広域観光周遊ルート」を開発すべく、「姶良方面」のコースを宿泊施設、エージェント、自治体、メディア関係者等53人で視察しました。

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 姶良市の魅力と課題について整理したいと思います。初めに白砂青松が素晴らしい重富海岸を訪ねました。かつてゴミが散乱し、海岸は荒れ放題でしたが、「NPO法人くすの木自然館」や地域の皆様方の努力で、美しい渚が復活しています。

 今では海岸の定期清掃も行われており、バードウォッチング、ネイチャートレッキング、干潟の観察会等も開催できるほどに整備されています。これから、保護と保全に万全を期し、利用者との調和を図り環境共生型の場づくりに努めてもらいたい。

 また、戦国武将「島津義弘」のゆかりの地です。初陣の地である「岩剣城址」や晩年を過ごし、その生涯を閉じた終焉の地「加治木島津屋形跡」や「精矛神社(くわしほこじんじゃ)」などゆかりの史跡が点在します。

 「山田凱旋門」は、現存する石造りの凱旋門では唯一のもので、明治39年(1906年)に建設されたものです。凱旋門の近くには、山田の出身で日露戦争を前に司令長官を更迭された日高荘之丞翁の記念碑が建てられています。

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 日高荘之丞に纏わるヒストリーは、興味あるものです。ボランティアガイドさんが案内の中で少し触れられましたが、日露戦争の開戦を控えて、山本権兵衛海軍大臣は、日高荘之丞を更迭し、東郷平八郎を司令長官に推挙します。


   薩摩の軍人である山本の決断に、明治天皇から「なぜ日高を東郷に代えたのか」と直に下問があり、山本は「東郷は運のいい男ですので」と奏答したといわれています。同じ薩摩出身の3人の中で何があったかは知るすべもありませんが、ガイドさんの話には自然と引き込まれていきます。

 山田の凱旋門で聞くのも、歴史を遡り旅が楽しくなります。小生も司馬遼太郎の「坂の上の雲」の中で興味を惹かれた部分です。その後の3人の足跡も興味深いものがあります。是非小説をお読みください。

 山田地域では9月中旬になると、県道40号線沿いに様々な工夫を凝らした「かかし」が展示され、道行く人を楽しませます。童謡「かかし」の一説に出てくる「山田の中の一本足のかかし」を彷彿させます。凱旋門と一緒に秋にもお訪ねください。たわわに実を付けた稲穂が美しくみられる地域です。日本の原風景が至る所に残っています。

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 ところで、今では歴史的遺産となっている道を御存知ですか。薩摩国と大隅国の国境にある「白銀坂」、江戸時代から地方街道の要所で多くの人が往来していた「掛橋坂」、西南戦争の際には6000人の薩摩兵士が熊本へ向かった「龍門司坂(たつもんじざか)」があり、「姶良の三坂」と呼ばれています。白銀坂には「布引の滝」があり、ウォーキングの途中の疲れを癒してくれます。

 龍門司坂は、大河ドラマのロケ地としても知られています。近くの「龍門の滝(りゅうもんのたき)」は、大雨の後の流れ落ちる水量と音の豪快さには圧倒されます。

 旧蒲生町には、くすの巨木で知られる「蒲生八幡神社」があります。幹回りが24.2mあり昭和63年に日本一の巨樹と認定されました。神社周辺には、武家門通りが残されており、途中の「御仮屋門」は、1826年に再建されたもので蒲生地頭仮屋の正門で、現存している門としては数少ない貴重な門です。

 蒲生町では公開されている武家屋敷を散策し、フォンタナの丘「かもう」の温泉で疲れをいやし、地元食材を堪能してください。

 町の活性化には、今も続く「カモコレ」の着地型イベントや、春の桜、紅葉の時期等に武家屋敷を活用したお茶会や生け花、月見の宴等を開催して、地元や鹿児島市から気軽に人を呼ぶことが得策ではないでしょうか。

 姶良市は鹿児島市や鹿児島空港に近く、お客様を誘致しやすい位置にありますが、素通り客が多いのではないでしょうか。週末のイベントやPR態勢を強化して、もっと各施設の認知度を高め、経済効果をもたらすことが重要です。四季折々の花の名所や直売店が多く、民家レストランが充実していることも女性層を惹きつけます。

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 また、野球場が充実していることから、学生スポーツの練習会場としての魅力が高まっています。宿泊施設の不足は歪めませんが、年間を通して稼働できるかが課題であり、従来ある施設の利用率を高めることが第一です。学生は練習時間の確保と食事が重要であり、宿泊施設の豪華さではないと思います。温泉施設も十分であり、泊食分離も検討の余地があります。


 今後も、県内最大の人が住む鹿児島市からのリピーター創出に力を注ぐべきと考えます。特に鹿児島市内に泊まった観光客に日帰りコースの提案や、エージェントの商品企画では空港に行く最終日の行程に組み込んでもらう努力が必要です。途中立ち寄りたくなる仕掛けが必要であり、しゃれた小物店や、カフェ等散策しても飽きない街づくりが求められています。

 最後に、姶良市のボランティアガイドさんが作詞した「姶良音頭」が市の魅力をかたっています。

               姶 良 音 頭
        作詞:後藤典五  作曲:橋口真由美

一番 アイラサーアイラサー           *冒頭 各番共通
      桜島から煙があがりゃ 晴れた青空かすみがかかる
      今日は東か南の風か ここはよかとこ元気なまちよ
      さあさおいでよ 姶良の街へ     *最後も各番共通
      みんなそろって アイラブユー

二番 白銀坂を踏みしめ登りゃ 重富干潟に鳥舞い踊る
      山田の案山子と凱旋門が 笑顔で迎える明るいまちよ

三番 蔵王岳から朝日が昇りゃ 滝のしぶきに希望もはねる
      つなぐ歴史の龍門司坂  史跡が息づく文化のまちよ

四番 八幡さまの鳥居を抜けりゃ 遙かロマンの風ふきわたる
      武家門並ぶ石垣通り 大楠見守る緑のまちよ

五番 姶良カルデラ錦江湾は ふるさと自慢でひときわ光る
      姶良加治木と蒲生の街が 手と手をつないで栄えるまちよ

参考『ウィキペディア』

No.365 心から快適な船旅を楽しむために~非常口の確認や船内のルールを守り安全な旅を~

2015年6月15日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 クルーズ船の旅が人気です。平成26年に県内の港に入港したクルーズ船は70回、乗船客数は約74,900人で、25年に比べると入港数で16回、客数で41,300人それぞれ増加しています。


 クルーズ船社への定期セールス、香港とマイアミで開催されたクルーズコンベンションへの参加、クルーズ船のファムツアー受入等の努力が実を結んでいます。今年はすでに72回の入港が予定されており、前年実績を超えるのは確実です。
(5月31日現在:観光課調査)

 日本ではクルーズ人気が高まり、日本近海だけでなく海外に出かけて、地中海クルーズやアラスカクルーズ等を楽しむ人が増えています。

 大型客船と言えば、昨年韓国で発生した「セウォル号」の沈没事故を忘れてはなりません。多くの修学旅行生がなくなりました。日本でもかつて、青函連絡船や宇高連絡船の事故で多くの乗船客がなくなっています。今では最新の安全対策が義務付けられており、最近は大きな事故は発生していません。

 ところで中国の三峡下りのクルーズを経験された方が多いと思います。長江の流れに乗り、峡谷が織りなすパノラマが、乗船客を喜ばせます。船上から眺める光景は、幻想的で風景画の世界に入り込んだような感覚を覚えます。

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 「三国志」の物語は、世界中から多くの人々をこの地に誘います。国語の教科書に登場する次の漢詩は、唐の時代の詩人「李白」が書いたもので、1500年前の世界に浸り、美しい光景が浮かんでくる詩です。


             早発白帝城      李白

     朝辞白帝彩雲間    朝に辞す白帝彩雲の間
     千里江陵一日還    千里の江陵一日にして還る
     両岸猿声啼不住    両岸の猿声啼いて住(や)まざるに
     軽舟已過萬重山    軽舟已に過ぐ 萬重(ばんちょう)の山

  [文略]       朝早く白帝城を出発する

   朝早く朝もやに映える白帝城を出発する。
   千里先の江陵へは、一日の行程である。
   舟が行く両岸の崖からは、悲しい猿の声が聞こえ旅情をさそう。
   軽やかな私の舟は、幾重にも重なる山並みを見ながら、通り過ぎて行く

 白帝城は長江の上流に位置し、川の両岸は延々200キロの峡谷が続き、切り立った崖からは猿の鳴き声が聞こえ、静粛の川の流れに美しく響きます。白帝城は「三国志」にも登場しますが、蜀の劉備玄徳が、自分の死後のことについて、部下の諸葛孔明に託した場所としても有名であり、内部にはその様子を紹介している塑像があります。今島となった白帝城には毛沢東が揮毫したこの詩の記念碑があります。

 三峡は、雄大な嬰塘(くとう)峡、秀麗な巫(ふ)峡、険峻な西陵(せいりょう)峡からなっていますが、見上げるほどの絶壁や山肌に驚くと思います。

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 しかし三峡ダム工事が進み、長江三峡地区の水位は、2003年に標高135メートルに、そして2009年の竣工後には、最終水位が標高175メートルまで上昇しました。 流域の景観が大きく変わり、有名な古桟道跡が水没し、また三国時代の皇帝である劉備玄徳が死んだ白帝山は「白帝島」に変わってしまいました。

 しかし先日、この三峡下りを楽しんでいた456名が乗った「東方乃星」というクルーズ船が転覆し、400人以上が死亡するという大事故が発生しました。漢詩や歴史小説で有名な地をクルーズ船で巡る旅は、中国でも人気が定着していただけに残念です。

 日本では重慶まで飛行機で飛んで、3泊4日のクルーズが人気です。原因が解明され、ツアーが以前と変わりなく催行されることを祈っています。

 ところで、クルーズの良さは荷物の移動がなく、寄港地では観光地巡りと退屈させないスケジュールとなっています。航海中は、昼間は講演会や船上パーティ、プールなどで過ごし、夜はナイトショーやダンスパーティーが開催され、楽しい時間を過ごすことができます。女性にとっては着替えをする楽しみがあります。

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 鹿児島に寄港する外国船は、ほとんど夫婦参加となっています。日本人は急ぎ足の旅行には慣れていますが、船内で長時間滞在する旅行は苦手です。本格的なクルーズ時代を迎え、まず日本近海の短期間のクルーズ船でその良さを味わうことから始めても良いと思います。

 韓国、中国での事故を教訓にして、船の運航会社には安全対策の徹底と法令を順守してもらい、船旅をする人は自ら非常時の対応を確認し、いざという時混乱しないよう周到な準備が必要です。鹿児島市のマリンポートに入港する大型クルーズ船の船内見学をすると、必ずや船旅をしたいという衝動に駆られるのではないでしょうか。

No.364 一日も早い全員の帰島を~日頃から災害への危機管理の確認を~

2015年6月8日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 昨年の御嶽山の噴火、箱根山大涌谷周辺の火山性地震の増加、連日の桜島の爆発的噴火等日本各地で火山活動が活発になっています。

 5月29日午前9時59分に、屋久島町・口永良部島の新岳が爆発的噴火をし、噴煙は9千メートル以上に達し、火砕流が発生しました。鹿児島地方気象台は噴火警戒レベルを最高の5に引き上げ、島民は全員屋久島に避難しました。日頃から噴火に備えて避難訓練等を行ってきたことで、スムーズに島民が避難することができたのではないでしょうか。

 口永良部島は、屋久島の西方約12キロに位置する島で、全域が屋久島国立公園となっており、3か所の天然温泉を持つ火山の島です。素朴な温泉が、秘湯ファンを惹きつけます。

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 満潮前になると温泉が湧き出る「西の湯温泉」、湯が乳白色で湯治湯として親しまれてきた「寝待温泉」、湯の花が浮かぶ湯が評判の「湯向温泉」があります。数年前島を訪れた際、船に自転車を積みリュクサックを背負った東京からの若者に会いました。目的は口永良部島の温泉と言っていました。

 島では明治時代の中頃から硫黄の採掘が行なわれ、最盛期には1000人を超える人口がいましたが、たび重なる噴火で島を離れる人もあり、現在では130人あまりとなっています。

 産業としては農業と畜産が主であり、さつまいもの栽培や町営と私設の牧場が数か所あります。放牧されている牛も多く、避難者の中で餌が心配だと語っている方が印象的でした。一日も早く島に帰る日が来ることを願わずには居られません。

 鹿児島県内では桜島が日常噴火していることから、火山の報道については、慣れている市民が多いと思いますが、風評等で経済的には大きな影響が出ます。新燃岳噴火の際は、連日マスメディアで報道されて、霧島温泉では、宿泊のキャンセルが相次ぎました。また、韓国の観光客に人気のあるトレッキング、ゴルフツアー等も相次いでキャンセルとなり、地域経済にも大きな影響を与えたことは紛れもない事実です。

 昨年多くの犠牲者がでた木曽の御嶽山噴火から間もないこともあり、火山情報には敏感です。年初に、気象庁が「山体膨張と考えられる現象がみられる」という情報を発表したこと等もあり、桜島の観光クルーズ船やフェリー客が減少しています。

 桜島については、噴火は継続しているものの、そこに5千人の人が日頃と変わらない生活をしていることを県のホームページ等で全国に発信しています。

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 今回も、口永良部島の新岳が噴火したことを受けて、近隣の観光地・特に屋久島に関する情報についてホームページに掲載しました。また、海外からの問い合わせに備えて、4カ国語での標記も行いました。口永良部島と屋久島の位置関係、屋久島への交通機関は通常と変わらず運行していることを伝えています。

 鹿児島の温泉、ゴルフ、歴史、食に加えて、円安、免税制度の拡充等があり、鹿児島を訪れる外国人は増加しています。台湾、香港、上海からの観光客が大きく伸びており、韓国からの観光客も回復基調にあります。

 鹿児島には現在4路線が就航していますが、外国人は火山や地震については敏感に反応します。東日本大震災では、長期にわたって日本へのインバウンドが低迷しました。外国人にも早く正確な情報提供が求められます。

 ところで、これから夏休みにかけて屋久島の旅行商品が多く見られます。エージェントは全国にネットワークをもっており、迅速に情報を伝達できる強みがあります。新燃岳噴火時も地元支店と連携をとり、定期的にインターネットで社内への情報発信に努めていただきました。

 危機管理に敏感な全国の教育旅行支店や旅行商品の企画部署への正確な情報発信が特に重要です。県民の皆さんも、これからも鹿児島の正確な情報を、県外の方々に伝えて欲しいと思います。

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 「日本で最初の世界自然遺産」の島である屋久島が、今回の避難地になっています。 屋久島は口永良部島から12キロしか離れていませんが、同じ町内で安全な場所として選ばれています。屋久島の知名度の高さに加えて、自然や集落の魅力もPRしなければなりません。そのことが風評被害を少しでも軽減することになるのではないでしょうか。

 噴火から4日目の6月1日には、島民の代表と消防団、気象庁等20名余りが一時帰島し、噴火後の家の点検、家畜への餌やりなどを行いました。待ちかねていたかのように豚が小屋の塀まで登り、必死に餌を求めている姿が、いとおしく感じられました。

 出来ることならば定期的にこのような一時帰島が実現することを望んでいます。小中学生は、屋久島での新たな学校も決まり登校しています。温かい心で子供たちを励ましてほしいと思います。

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 口永良部島には、魚釣りや秘湯を求めて観光客が訪れることから、民宿で生計を営んでいる方もいます。一日も早い全員帰島が実現し、観光客の姿や港の近くにある金岳小中学校のグランドから子ども達の歓声が聞こえる日を待ち望んでいます。

 県民の皆様の物心両面のご支援が、避難島民を元気づけることになります。鹿児島県は日本列島の南に位置することから、梅雨時期の集中豪雨や台風の襲来が多く、特異なシラス土壌がもたらす風水害や、火山噴火による地震等災害が多く発生する県です。 

 今回の噴火を教訓に、県民も防災への関心を高め、災害発生時の行動を定期的にきちんと確認し、危機管理に備える必要性が高まっているのではないでしょうか。

No.363 マナーの良さは日々の行動に宿る~小学生の行動に学ぶ~

2015年6月1日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 奄美地方が全国で最初に梅雨入りし、鹿児島県本土もまもなく梅雨入りとなります。毎年のことながら梅雨末期には集中豪雨が発生し、大きな被害が出ることも多く、天気予報には十分気を付けたいものです。ここ数年は予期せぬ場所で災害が発生しています。崖の近くや川の周辺に住んでいる方は、特に注意が必要です。

 北海道は梅雨がなく、ライラックやアカシヤの木、ポプラ並木が美しくなり観光のベストシーズンがやってきます。北海道夏の最大のイベントである「第24回YOSAKOIソーラン祭り」が、6月10日から14日にかけて大通公園ほか札幌市内約20か所で開催され、札幌は若者の熱気で賑わいます。

 天才歌人、薄幸の詩人として国民から敬慕されている石川啄木は、釧路、札幌、小樽、函館等での生活を通して、多くの歌を残しています。

   東海の  小島の磯の  白砂に
               われ泣きぬれて 蟹とたわむる
               *函館市の立待岬の墓碑に刻まれている
   潮かをる 北の浜辺の  砂山の
               かのハマナスよ 今年も咲けるや
               *函館市大森浜には、啄木像と歌碑がある
   かなしきは 小樽の町よ 歌ふこと
               なき人々の 聲の荒さよ
               *小樽市相生の水天宮境内に歌碑がある

 九州新幹線全線開通後、博多や熊本、出水等への出張にはよく新幹線を利用します。九州新幹線の内装は木をふんだんに使い、落ち着いた雰囲気を醸し出しています。特に座席は幅が広く快適な旅ができるよう十分な配慮がなされています。リクライニングシートの設備も快適です。

 先日、博多まで乗車して読書していると、いきなりシートが倒れて来て置いたコーヒーがカップからこぼれて、床を汚してしまいました。前の席の乗客が、「席を倒しますが、よろしいでしょうか」と、一言あれば、床を汚すこともなかったのにと、怒りを覚えた次第です。前の席の客は、なにくわぬ顔で眠りにつきました。座席は前の客には背もたれになりますが、後ろの客はテーブルを使用することから、共通の設備である配慮の必要性を感じます。

 飛行機に乗った時にも同じようなことをよく経験します。機内は席が狭い上に、テーブルを出すと余計に身動きが取れなくなります。新聞を読んだり読書をしている人がいる場合には、一言声をかけて「椅子を倒します」と了解を求めることは、相手への気配りです。

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 電車やバスの車内でも、独りよがりでマナーを無視した大人の姿をよく見かけます。通勤バスで、二人掛けシートにハンドバッグを置いて、化粧をしている女性、スポーツバッグを横において、声をかけないと席を譲らない大学生、お年寄りが乗ってきても居眠りのふりをして、足を大きく開いて席を譲らない若いサラリーマンと朝夕の通勤途中で苛立つ光景です。

 また、空港からの最終バスに乗ると、怒りを抑えられないことがあります。満席が予想されるのに、前方の通路側の席に座って、窓側に荷物を置いて席を占領し何食わぬ顔でいる人を見かけます。人がどんどん乗り込み、補助椅子に座ろうとしているのに動こうとしません。運転手さんが乗り込んで、席を見回して荷物を動かしてくださいと催促されて、しぶしぶ席を譲っています。

 鹿児島を訪れた観光客の姿には、鹿児島でのバスの車内での第一印象が観光地の印象となります。混雑時でも座席に荷物を置いて席を占領している人もおり、ドライバーが直接マイクで「お互いに譲り合いましょう」と、声かけをすることが大切です。日本人のマナーがここまで堕落しているかと思うと残念でなりません。

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 ところで、先日はうれしい光景に出合いました。3人の小学生が中央駅からバスに乗車し立っていましたが、席が開いていたため運転手さんが「危ないですからお座りください」とアナウンスがあると、児童たちは着席しました。


 2つ目のバス停から老夫婦が乗車すると、我先にと立ち上がり、二人に席をゆずり、一人の児童も友達と一緒にずっと立っていました。老夫婦は何度も児童に頭を下げてお礼を言っていました。

 通学時の車内でのマナーについて指導がきちんとなされており、家庭や学校での躾がしっかりしているなと感じた次第で、思わず学校名を聞き、頭をなでてあげたい心境でした。外国人はハンディキャップのある人への対応や、レディファーストの心がけが定着しており、エレベーターに乗る際にそのマナーの良さが自然に出ます。

 今、公的な施設の多くは、バリアフリー化が進み入りやすくなっています。高齢化社会が急速に進展していますが、運賃の安い公共交通機関を利用せざるを得ない人がほとんどです。健常者はバスや電車等に乗車した際は、周りに気配りするなど配慮が必要です。

 ところで、県内における宿泊客数は、平成23年の新幹線全線開業以来、九州7県の中で鹿児島県だけが毎年前年を超えています。鹿児島の魅力が浸透し、全域に広がりつつあります。観光客に楽しく過ごしていただくためには、「おもてなしの心」の定着が欠かせません。

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 「指宿のたまて箱」は、沿線の住民や平日には指宿市役所の職員が列車に手を振っており、現在でも乗車率が80%を超える人気の観光列車です。そのお客様への心配りや、九州各県において観光客を温かく迎える態勢づくりができていることが、豪華観光列車「ななつ星in九州」の誕生につながったと、先日関係者が語っていました。

 今年は、県内のすべての市町村が参画する「第30回国民文化祭」が開催されます。また、「明治日本の産業革命遺産 九州山口と関連地域」が、7月には「世界文化遺産」に正式登録される予定です。多くの観光客が鹿児島を訪れることが想定されます。

 日々の行動においてマナーや気配りが自然とでき、観光客が「感動」を覚えるおもてなしを育くむために、県民一人ひとりの意識が問われています。県民がまずマナーを守る取組が重要であり、そのことが観光客への対応として現れます。 何気ない気配りは、日々の行動に宿ると思います。

No.362 教育旅行の誘致競争に勝ち抜くために~料金アップへの対応と感動体験の提供を~

2015年5月25日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 平成21年から連続して鹿児島への修学旅行を実施している奈良県生駒市の大瀬中学校が、今年も垂水市を訪れました。垂水市漁協で、漁船に乗って生簀での餌やりや、採れたての魚を自分たちで料理して寿司を作る体験を行いました。自然の生態に触れ、初めて食べる刺身に驚きを隠せない様子でした。

 大瀬中学校の鹿児島への誘致活動は、平成20年に大阪で開催された「教育旅行誘致説明会」からスタートしました。当時の校長先生が、従来のTDL方面から海の体験ができ、民泊のできる地域への変更を模索しており、垂水市での漁業体験に興味を示され誘致が実現しました。海のない県であることから、鹿児島の優れた資源が活かされています。

 県と観光連盟では、毎年サツマイモの苗を送り、校庭の菜園で育てたサツマイモが、秋の文化祭では生徒たちを喜ばせています。また、昨年から垂水中央中学校との交流も深まり、今年は記念植樹も行いました。

 7年も続く背景には、美しい自然景観の中での漁業体験や、垂水市、垂水市漁港の対応が学校側の信頼を得ていると感じます。今年垂水市にNPO法人の協議会が組織され、民泊等の受入もおこなっています。


 ところで平成26年度の県全体の教育旅行の受入は、校数は増加したものの宿泊人員は減少しました。1校当たりの生徒数が減少しています。(28日の鹿児島県教育旅行受入協議会の総会で説明)

 特に前年から倍近くに増えた体験型農家民泊が、約4千人減少したことが影響しています。1週間前になって受入家庭が替わったケースや、受入地域がクラスによってはかなり離れており、連絡が取りづらかった等学校側からの問題提起もあり、改善しなければなりません。

 今年は民泊の受入も2万人近くまで戻っており、きちんとした対応が求められます。消費税のアップやバス料金の改定で、旅行代金が3割程度アップしています。従来の行程で実施すると、市町村の教育委員会が定めた旅行費用の枠を超えるため、学校やエージェントでは行程の見直しを迫られています。

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 修学旅行用指定新幹線で鹿児島を訪れている関西地域の学校は、昨年が35校、5,687人、今年は41校、7,700人となっています。県内の学校と実施時期が重なることから、関西方面からの修学旅行のバス不足を補う方策として、鹿児島市内の街歩きやシティビュー等の活用も求められます。

 また、誘致対象地域を、中国地区、福岡、佐賀、長崎方面へともっと広げなければ、需要拡大は望めません。「世界文化遺産」の正式登録を控えて、新たなコースの提案が必要です。

 今後は平準化対策も重要です。春と秋に集中している状況を少しでも改善するためには、オフ期の弾力的料金の設定や付帯サービスを提供することで、分散化を促進し、受け皿が広がるのではないでしょうか。修学旅行生はリピーター化につながり、今後も大事にしなければならない顧客です。

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 教育旅行の誘致は、受入機関にとっては様々なメリットがあります。 FIT化が進む中で、団体旅行は毎年減少しており、鹿児島県の平成26年度の宿泊統計調査によると、宿泊人員の団体の比率は30%であり、毎年減少しているのが実情です。

 宗教団体やイベント等を除くと、バス4~5台と動く団体は修学旅行ぐらいで、宿泊施設にとって、経営の見通しが立ち有難い貴重な団体です。2年前に業者が決定する地域もあり、営業も計画的にできます。

 一般の個人客は、個々に食事の提供や寝具の準備が必要であり、従業員の確保が切実な問題です。一般は2名1室が多く手間がかかりますが、学生団体は一部屋に4~5名入ることも珍しくなく効率のよいことがあげられます。しかも修学旅行は、平日宿泊がほとんどであり、休前日は一般のお客様の予約が可能です。企画募集団体は、人数の確定が遅く間際で取り消しになることもあり、受入機関にとっては、空き部屋を短期間でうめることは厳しい状況です。

 ところで全国的に農家民泊を始める地域が増えてきました。九州では南島原地区、小林地域の人気が出てきています。両地域とも簡易宿所営業の許可を取得し、受け入れる生徒数も制限し、内容の充実を図っています。定期的研修会や営業活動を行い、リーダーの指示のもと団結力が図られているのが強みです。

 鹿児島県は全国第4位の農業県であり、1年を通して様々な体験ができます。生徒さんが直接土に触れ、自らの手で収穫した農産物を農家の人と一緒に食事を作ることが重要です。自然の姿をそのまま見せることが、都会の子供たちには感動をもたらします。 学校行事は細心の注意を払う必要があり、地域全体でレベルアップを図っていく取組が大切です。安全・安心を徹底し、コンプライアンスの遵守が不可欠です。

 既存の宿泊施設はお客を取られるという発想ではなく、新しい顧客開拓のためにその一役を担うという考え方に立ち、旅館と農家が共存していく姿勢が求められます。

 また、砂の祭典、六月灯、伝統行事等地域のイベントや祭りの開催に遭遇した日は、学生にも積極的に見せる機会を作ってもらいたい。都会の子どもたちが地域との関わり、日本文化の大切さを学ぶことで、国を愛する心を育むことになるのではないでしょうか。

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 4月から始まった修学旅行用指定新幹線を活用した近畿地区からの修学旅行は、6月17日まで続きます。鹿児島中央駅に到着する日は、「鹿児島県教育旅行受入対策協議会」で歓迎の出迎えを行っています。これからも鹿児島の地が、修学旅行の行先として選ばれ続けるよう関係者で努力を重ねたいと思います。

 庭先の紫陽花が色づき始めました。梅雨入りも間近です。

 あじさいの 下葉にすだく 蛍をば
              よひらの数の 添ふかとぞみる
                          ~藤原 定家~

No.361 世界文化遺産正式登録を目前に控えて~先人の航跡を学び、郷土愛を構築する機会に~

2015年5月18日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」について、ユネスコの諮問機関が世界文化遺産へ登録(記載)するよう勧告しました。8県11市の全23の資産が対象ですが、鹿児島市内にある旧集成館(反射炉跡、旧鹿児島紡績所技師館「異人館」、機械工場)、関吉の疎水溝、寺山炭窯跡の3つの資産が含まれています。

 世界遺産は、1972年のユネスコ総会で採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」に基づいて世界遺産リストに登録された、遺跡、景観、自然等、人類が共有すべき「顕著な普遍的価値」を持つ物件のことで、移動が不可能な不動産やそれに準ずるものが対象となっています。

 世界遺産は、その内容によって文化遺産、自然遺産、複合遺産に大別されます。2014年の第38回世界遺産委員会終了時点での条約締約国は、191カ国、世界遺産の登録数は1,007件(161カ国)となっています。

 日本国内には、14件の文化遺産と4件の自然遺産の合計18件の世界遺産が登録されています。「屋久島」は「白神山地」と共に、日本で初めて世界自然遺産に登録されました。「明治日本の産業革命遺産 九州・山口の関連地域」が、7月に正式登録(記載)されると、鹿児島県は唯一、自然遺産と文化遺産の2つの世界遺産を持つ県となり、観光客誘致に大きな弾みがつくものと期待されます。7月初めにドイツのボンで開催される世界遺産委員会の審査で正式に決まる予定です。

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 「世界遺産勧告」の報道以来、8県の文化遺産候補地には多くの観光客が訪れています。県内の候補地も例外ではなく、「関吉の疎水溝」、「寺山炭窯跡」は、今まで一般の人にはほとんど知られていない施設であることもあり、場所、アクセス等を尋ねる人が多くみられました。

 世界遺産登録の意義や今後の課題について整理したと思います。昨年6月「富岡製糸場と絹産業遺産群」が世界文化遺産に登録されましたが、富岡製糸場の入館者数は4カ月間で70万人が訪れました。前年は年間で31万人であり、予想を超える入館者があり、当初は混乱を極めました。

 鹿児島においても、正式登録まで2カ月足らずであり、今から十分整備することは不可能ですが、まず公共交通機関を利用していただくようマップの作成や交通機関の案内が欠かせません。特に「関吉の疎水溝」と「寺山炭窯跡」は十分な対策が必要です。

 東名阪の大手旅行エージェントの情報では、現在作成中の秋の南九州の企画に、正式登録後を見据えて、世界遺産の表示を加えると語っています。九州にある文化遺産を巡るツアーも企画されるのではないでしょうか。

 世界遺産登録で顕著な動きが現れるのは外国人であり、特に欧米系の人が増えることが予想されており、英語表記等の充実が求められます。登録地までの公共交通機関の時刻表には、平日と休日の時刻の区別など配慮が必要です。

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 今年の秋に開催される「第30回国民文化祭」には追い風となり、主催団体には、周辺の観光資源と一緒に文化遺産登録地の魅力も一体的にPRしてもらいたい。正式登録されると、世界文化遺産が目玉となり、行ってみたいという衝動に駆られるのではないでしょうか。

 「屋久島」は日本初の世界自然遺産地であり、大手エージェントの調査によると、日本人が一番行きたい世界遺産となっています。

 今回の23の資産は8県に及び、関連性があることから、登録の意義やストーリーを語る等人材育成が求められます。駅や空港の案内所、ホテル、タクシー乗務員、観光施設従業員等を対象に、現地研修や勉強の機会を設ける必要があります。

 又、市内には200名を超えるボランティアガイドさんや、NPO団体も存在することから、教育の機会を増やすことで「おもてなしの心」の醸成にもなり、リピーターの創出につながります。

 自然は四季の変化があり、訪れる時期によって違った姿を見ることができます。文化遺産は、一回見ると満足し年数が立つごとに入館者が減少していく傾向にあります。世界文化遺産登録後は、リピーターをいかに確保するかが課題です。他の地域資源も活用し、四季折々の話題や食と一緒に常に話題になることで施設の付加価値が高まります。

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 今年は薩摩藩英国留学生の派遣から150年の年になります。いちき串木野市羽島に昨年完成した「薩摩藩英国留学生記念館」は順調に入館者が伸びています。留学生たちは帰国後日本の近代化に貢献しました。今一度彼らの航跡をたどるのも鹿児島の文化を知る機会にもなります。

 集成館事業を進めたのは、28代当主「島津斉彬」ですが、彼なくして日本の近代化は語れません。日本が50年余りで産業化を達成し、近代化の礎を築いたのは、鹿児島市の3件の資産が重要な役割を果たしています。彼の先見性や人材育成等の功績、薩摩藩の果たした役割を全国的に認知させる機会にもしなければなりません。

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 来年は「薩長同盟150年」、2017年は「奄美・琉球の世界自然遺産」登録(予定)と続きます。そして2018年は明治維新150周年にあたります。明治維新は鹿児島が全国的に一番注目を浴びる地域であり、それを活かさねばなりません。

 県民の皆様も世界文化遺産登録地をこの2ヶ月の間に訪れて、正式登録の際は、感激を新たにして欲しいと願っています。

 人口減少が続き地域創生が問われている時代です。先人が残した世界文化遺産の偉大さを知ることで、郷土を愛する心を育てる機会にもなるのではないでしょうか。

参考:ウィキペディア:世界遺産

No.360 「かごっまふるさと屋台村」の新たなスタートに期待する~ふるさとの訛りが聞こえ、観光の情報発信基地として~

2015年5月11日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 ゴールデンウィークが終わり、修学旅行生の姿が県内各地に見られます。農業・漁業体験が旅行に組み込まれ、鹿児島が誇る第一次産業が活かされています。九州新幹線全線開業から4年が経過しましたが、新幹線は気軽な乗り物として県民の足として定着している感じです。

 3月の北陸新幹線金沢開業が好調であることから、来年3月開業予定の北海道新幹線も大きな期待がかかります。

 観光庁が発表した「26年の宿泊旅行統計調査」でみると、最近の観光は、都市型観光と地域観光に2極化しているように感じられます。テーマパークのある千葉、東京、大阪やMICEの開催が順調に伸びている福岡が顕著な伸びです。鹿児島県は、台風の襲来が4回あったにも関わらず、3.6%増で全国の伸びを上回っており、地域の頑張りが鹿児島の観光を底支えしていると感じます。

 ところで県都である鹿児島市は、目の前に桜島を仰ぎ、自然、温泉、歴史、文化、食、アクセス、宿泊施設の充実等観光客誘致には大変恵まれた環境にあります。また、4日には、集成館事業に関する鹿児島の3資産を含む23資産の「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」を世界文化遺産に「登録」(記載)するようユネスコの諮問機関が勧告しました。

 正式登録が実現すると、世界自然遺産と2つの世界遺産を持つ県として、大きなPR効果が発揮できます。

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 4月23日に鹿児島中央駅から5分の場所にある「かごっまふるさと屋台村」がリニュアールオープンしました。プレオープンセレモニーには、伊藤知事、池畑県議会議長(県観光連盟会長)、森鹿児島市長をはじめ県内の6市町村長も出席されて盛大なお披露目となりました。

 今回12店舗が入れ替わり、新しい体制で2期目のスタートとなりました。「地産地消でおもてなし」、「笑顔と会話でおもてなし」、「お手頃価格でおもてなし」と、人情屋台「かごっまふるさと屋台村」おもてなし宣言が、村長より力強く述べられました。

 ところで、もともと屋台は、屋根が付いた移動可能な店舗であり、営業が終わると引いて帰るという飲食店です。今では、衛生面の管理や道路使用許可等の問題もあり、屋台の数は少なくなっています。中でも博多の屋台は伝統があり、約200店が営業し、サラリーマンや観光客に親しまれています。

 現在は固定式の屋台村が主流となっています。「全国屋台村連絡協議会」には、16の施設が加盟しており、商店街の活性化や地産地消の取組を推進しており、地域づくり、街づくりの有効的手段として注目されています。帯広市・北の屋台、八戸市・屋台村みろく横丁、気仙沼市・気仙沼横町、宇都宮市・宇都宮屋台横丁、かごっまふるさと屋台村等が活況を呈しています。

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 「かごっまふるさと屋台村」は、25軒の個性あふれる屋台と1軒の焼酎専門店が軒を並べます。平成24年にオープン以来多くの観光客や市民に支えられて、130万人ものお客様が来店され、地域経済の活性化に貢献してきました。

 地域興し団体や行政、経済界の視察が絶えない等全国的に注目されている施設に成長しました。鹿児島の新名所として定着しており、場所を提供していただいている「南国殖産」の関係者の方々に対し心から感謝の気持ちで一杯です。

 これからの屋台村の展望と課題等について述べてみたいと思います。屋台村の設置は、市街地の活性化や地産地消を中心とした地元食材の提供、情報発信基地として県内のイベントや観光地の紹介、若手起業家の育成等が設置目的の一つになっています。

 屋台村は、鹿児島市内としては初めて平地にできた食の集合体の施設であり、地域全体への波及効果をもたらす取組が不可欠です。それぞれの店が切磋琢磨し、競争と協調の心をもって一体感を維持していくことも大切です。

食(トンカツ).jpg

 地産地消を徹底し、あくまでも鹿児島らしさにこだわる必要があり、鹿児島の魅力を発信する場所にしなければなりません。従業員は鹿児島弁を使い、観光客に鹿児島の魅力を語ることが求められ、そのことが鹿児島らしさの演出となります。

 季節を通して各種のイベントを開催し、観光客と市民が交流できる場所としての魅力づけが必要です。新年の振る舞い酒、節分、ひな祭り、こいのぼりの掲揚、七夕、夏祭り、月見、餅つき大会等日本の伝統的行事を意識した演出が人を惹きつけます。

 また地域色を全面に出し、市町村に関連した食材やおもてなしを提供することで、ふるさと出身者のたまり場となります。若者には、婚活や交流会などのイベントが話題性があり誘客に繫がり、メディアや映画の舞台として提供するのもPR効果を高めます。

 鹿児島市は北の札幌と並んで、都市型観光の魅力が集約された街です。公共空間の整備が進み、滞在して飽きない街の姿が整ってきました。近くを流れる甲突川周辺の加治屋町一帯は、西郷隆盛、大久保利通など近代日本の礎を築いた偉人を輩出し、「郷中教育」の源と言われる地域であり、「維新ふるさと館」は観光客に大変人気な施設です。

 夜は甲突川がライトアップされ一段と魅力的な一帯となりました。明治維新150年に向けて昼夜人が集まる地域にしなければなりません。

 ところで、新幹線の時間短縮効果は、ビジネスマンの日帰り出張を加速しています。屋台村の皆さんが鹿児島の魅力を語ることで、遠方まで足を伸ばし滞在するきっかけにもなります。今回全店休業日が設けられたことを活かして、お店の従業員を対象に県内を視察する研修の機会を設けて欲しいと思います。従業員の方は、意外と県内の魅力に触れる機会は少ないのではないでしょうか。

甲突川ライトアップ.jpg

 現在海外へは、ソウル、上海、台北、香港に週14便就航しています。隣県の宮崎には、ソウル、台湾、香港便が就航し海外からの誘客が一段と便利になりました。日本全体として外国人観光客が増加し、しかもFITが目立つようになりました。

 鹿児島市も例外ではありません。東アジアの人々は、外で食事することが習慣となっています。WIFIも使えるエリアであることから、店の方々も簡単な会話ができることで、外国人も安心して過ごせる場所となります。4カ国表示や観光パンフレットを置くなど立ち寄りたくなる場所であって欲しいと思います。

 屋台村の人気が定着することは、既存店との競合も発生します。地域全体で「おもてなしの心」を持ってサービスの向上に努め、相乗効果で来店客を増やして欲しいと思います。また、宿泊施設や運輸機関の関係者も積極的に屋台村をPRすることで、連泊を推進し、翌日の観光につなげて欲しいと思います。

 今秋には「第30回国民文化祭」が、2016年は薩長同盟150周年、2017年は「奄美・琉球」の世界自然遺産登録、2018年は、「明治維新150周年」の年となります。常に話題を提供を出来る場所が観光には必要です。

 「かごっまふるさと屋台村」が、「ふるさとの訛りが聞こえる」、「鹿児島に会える」場所であると、多くの人々に浸透していくことを期待します。

 人の世に たのしみ多し 然(しか)れども
                酒なしにして なにのたのしみ
                            ~若山牧水~

 今宵は、「かごっまふるさと屋台村」で友と語り、ゆっくり旅の一夜をお過ごしください。

No.359 上海線は鹿児島からの客をいかに増やすか~悠久の歴史に触れる旅を~

2015年4月27日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 春雨にぬれた木々の緑がいっそう鮮やかに見える季節になりました。早場米の田植えも終わり、田には一面に水が張られ、夏の頃の収穫に向け、これから雑草取りや定期的な肥料の散布が行われます。

       一点の 偽りもなく 青田あり    山口誓子

 田舎の庭先には赤、青、黒のこいのぼりや吹流しが空高く泳ぎ、学校帰りの子どもたちが立ち止まり眺めている姿が微笑ましく感じられます。日本の原風景がそこにあり、いつまでも残したい光景です。

 春は雨が多く草花の成長には恵みの雨ですが、満開の花は一夜風雨に晒されると、無残に散ってしまいます。中学校の国語の教科書に出てくる次の詩を覚えている方は多いのではないですか

                春暁     孟浩然
         春眠不覚暁        処処聞啼鳥
         夜来風雨声        花落知多少

[注釈] 春の眠りは心地よく 夜明けも知らないで寝てしまった。
    鳥のさえずりが聞こえてくる。昨夜は風雨が強かったようだ。
    せっかく満開になった花がたくさん散ったことだろう

上海の夜景.jpg

 ところで、4月1日から鹿児島~上海線が週4便体制となりました。定期路線があることは外国人誘致には不可欠であり、しかも増便は需要増につながります。中国東方航空系列の旅行社が商品造成に力を注いでおり、集客も好調に推移しています。

 全国的に中国人の伸びが顕著ですが、「爆買」と称される程ショッピングも旺盛であり、大きな経済効果をもたらします。中国人の買物は、かつては電気製品やデジカメ等が多かったのですが、最近では、地方の銘菓、薬、化粧品、赤ちゃん関連の衛生品等、安全・安心の日本の生活用品が大量に売れています。中国人の生活意識の変化が感じられます。

 鹿児島県は、温泉や自然景観、食等に恵まれていることや、上海に近いという利点もあり、今後も中国からの訪日客は順調に推移すると思われます。2年前に職員研修等で話題になった路線ですが、鹿児島県サイドの取組が中国側には好印象として捉えられ、今回の増便のきっかけにもなったのではと感じています。 

 ところで、海外の路線維持には双方向の利用促進が欠かせません。年内は予約状況が好調ですが、上海からの利用者に支えられているのが現状です。しかし、いつまでも一方通行では、経済状況の変化、行先の変更等で搭乗率の悪化を招くことも想定されます。鹿児島からの利用率向上を常に念頭におかねばなりません。

 小生は、1977年に初めて中国を旅しましたが、その後70回程度中国各地を訪ねました。中国の魅力について触れたいと思います。

 北には、初夏の頃のアカシヤ並木が美しく、ヨーロパの雰囲気が漂う街「大連」、日露戦争の戦場となり、司馬遼太郎の「坂の上の雲」に描かれた「203高地」のある「旅順」があります。

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 北京郊外にある「万里の長城」や「紫禁城」、「天壇公園」などはスケールが大きく、悠久の歴史を感じさせる中国ならではの醍醐味を感じます。

 内陸部には、河南省の省都「鄭州」の西部に位置し、世界遺産に指定されている「龍門石窟」のある「洛陽」がおすすめです。石窟にある『龍門二十品』は北魏時代のもので、日本の書道家はここの石窟に刻まれた字を見るために訪れます。

 「馬王堆古墳」で知られ、鹿児島市の姉妹都市である「長沙」は湖南省の省都で気候が温暖で、日系企業も多く商・工業都市として発展しています。毛沢東の生家は長沙市の南「韶山」にあり見学もできます。

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 西には、遣唐使の一員として阿倍仲麻呂が留学し、唐の時代は長安と呼ばれ、「兵馬俑」や「秦の始皇帝稜」で有名な「西安」があります。また、敦煌、ウルムチ、トルファン、カシュガルと東ヨ-ロッパへと続くシルクロードゆかりの地も必見の価値があります。

 是非おすすめしたいのが、シルクロードの分岐点として栄え、オアシス都市と知られる敦煌です。井上靖の小説「敦煌」の舞台である「漠高窟」や砂山が美しくラクダで巡る「鳴砂山・月牙泉」、日本でも送別会で披露されることが多くある王維の唐詩「送元二使安西」で有名な「陽関」があります。

 南には、少数民族が住む「昆明」があり、カルスト地形の奇岩が立ち並ぶ「石林」が世界的に知られています。また、昔からの中国の貿易の拠点であり春秋の交易会が開かれる「広州」、水彩画の世界に浸り「漓江下り」が美しい「桂林」など、魅力ある都市が中国には点在しています。

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 上海近郊では、日本企業が多く進出している「蘇州」が有名です。日本では除夜の鐘で知られ、張継の「楓橋夜泊」に詠われた寒山寺が有名です。上海は中国一の商業都市で、近代ビルが立ち並び日々変化している街に世界中から人が集まっています。

 ところで、日本と中国との間には、様々な政治的問題が絡んでいますが、観光はそれを乗り越えねばなりません。日本と中国は長い歴史の中で多くの往来があり、様々な文化を育んできました。平成14年当時は、県内の30校余りの公立高校が中国への修学旅行を実施していました。その後同時テロの発生で行先が変更になりましたが、今では1学年の定員も少なくなり定期便で輸送できます。海外修学旅行の復活を望んでいます。

 これから秋にかけて、中国への観光はベストシーズンとなります。中国東方航空は上海を基点に中国全土に広く就航しており、乗継も便利です。

 日本人の国内旅行は成熟しており、人口減少等を考えると日本人の宿泊客の大きな伸びは期待できず、外国人誘客が大きな課題になります。昨年の訪日外国人総数は1,341万人で、中国人は240万で前年比83.3%の伸びとなっています。

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 中国の人口の数等を考えると、これからも中国人観光客は、ますます増加すると予測され、鹿児島は地理的条件からも他県に比べて恵まれています。4便体制の維持には県民の利用が欠かせないと考えています。3000年の歴史に刻まれた中国各地に足を延ばし、悠久の歴史に触れてください。

 まもなくゴールデンウイークがやってきます。楽しい休日をお楽しみください。次回は連休明けの5月11日(月)から配信します。

No.358 ゴールデンウイークはどこに行きますか~県内の魅力に触れる機会に~

2015年4月20日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 桜島が連日噴煙を上げ爆発回数も350回を超え、活発な動きを見せており、年初には風評被害で観光客の減少が見られました。最近はPRの強化や皆様の口コミ効果もあり、少しずつですが現状が理解されてきており、落ち着いている感じです。 外国人観光客の姿が顕著です。

 これから風向きが変わり、鹿児島市方面への降灰が多く見られるようになります。冬から春にかけては大隅方面へ、夏から秋は鹿児島方面へと気象の変化に左右されます。

 県外観光客は、近い場所にある桜島が噴火し、灰が降る光景に驚き、偶然の自然現象に感動しカメラを向けています。垂水市では火山灰を缶に詰めて売り出しており、記念に買い求める人もいます。負の遺産をプラスに変えている事例です。自然現象は変えることはできませんが、見せ方によっては大きな観光資源となります。

 ゴールデンウイークが近づきました。4月29日が水曜日にあたるために、30日と5月1日を休めば、8日間の休みとなります。例年ゴールデンウイークは、近場への家族旅行が増えるのが特徴です。県内には家族で楽しめるイベントとして、「第5回夢追い長島花フェスタ」、「2015吹上浜砂の祭典」、「かのやばら祭り2015春」等があります。

 長島花フェスタは、今年が長島町合併10周年に当たることから、例年にも増してフラワーロードが整備されています。長島町の町づくりは、集落単位で花づくりが推進されており、至る所に美しい花壇が見られます。また、サンセットの丘、川床ふれあいの郷会場では、広い花畑のじゅうたんが見られます。

 名産品の「ふかしじゃがいもの」の試食も楽しめます。黒之瀬戸大橋を渡ると、そこはフラワーアイランドであり、島一周のドライブコースも楽しめます。道の駅等では、取れたての魚を味わうことができ、お土産物として地産品が豊富です。帰りに近隣の阿久根駅や出水の武家屋敷等も訪ねてはいかがですか。

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 南さつま市で開催される「砂の祭典」は、金峰町の「砂丘の杜きんぽう内特設会場」が舞台であり、今年は「ハッピードライブ」がテーマです。メインの砂群は、8m級1基と6m~2m級25基で、夕刻に開催される音と光のフンタジー(5月1日~6日)は必見の価値があります。小学生、中学生、国内選手権大会の砂像群や体験コーナーもあり、子供連れにも楽しい時間が過ごせるのではないでしょうか。

 見学後はいにしえの趣を感じさせる大当の石垣群や、歴史の町坊津まで行くことをおすすめします。輝津館(きしんかん)の展示品をみると、密貿易で栄えた頃の文化財があり脈々と息づく先人たちの足跡を知ることができます。坊津一帯の海は漁場に恵まれ、太公望にも人気です。

 大隅半島での大きなイベントの一つが、4月25日~5月31日に開催される「かのやばら祭り2015春」です。かのやばら園は、8haの広大な敷地に5万株の色とりどりのばらが咲き誇り、日本最大級のばら園です。園内では切り花の体験もできます。

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 また、「薔薇カレー」や「ばらソフト」を食したり、ショッピングも楽しめます。近くの公園からは鹿屋航空基地を望むこともでき、帰りに史料館の見学がおすすめです。戦時中の特攻基地の様子や、日本の防衛体制の概要も知ることができる施設です。

 4月25日~26日には「2015エアーメモリアルinかのや」が開催され、多くの入場者が見込まれており、体験搭乗や現役の航空機も真近で見学できます。大隅半島へは、アクセス等不便性もあり、県民が行く機会が少なく大隅の魅力が浸透してないのが残念です。イベント見学の機会に周辺を観光することで、大隅地域の魅力に触れる絶好の機会になるのではないでしょうか。

 九州本島最南端の佐多岬は取り付け道路が無料化されたこともあり、行き易くなりました。沿線の神川の大滝、雄川の滝、パノラマパーク西原台、内陸部にある花瀬の渓谷等は薩摩半島にはない魅力があります。大隅側の錦江湾しおかぜ街道を下りながら、錦江湾に沈む夕日や開聞岳の雄姿も格別です。道の駅等も随所にあり、地元産品が揃っています。是非、大隅地域に足をお運びください。

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 ところで、「観光かごしま大キャンペーン推進協議会」では、「かごしまフロ(風呂)マラソン」のスタンプラリーと「桜島七十七景」眺望スポットを大募集しています。フロマラソンは県内5地域の温泉を巡る企画ですが、大分県に次いで第2位の温泉県鹿児島の魅力を県民の皆様にまず体験していただきたい。



 桜島七十七景は、鹿児島最大の観光資源である桜島の魅力を再認識し、桜島の絶景とともに、地域の自然、歴史、食、特産品等を一緒にPRし、新たな誘客に繋げるものです。今年のゴールデンウイークの予定が無い方は、ぜひこの企画にチャレンジしてください。各地のイベントに参加する楽しみも増えるのではないでしょうか。

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 ゴールデンウィークに観光客を呼ぶには地元の人たちも知恵を出し合い、工夫をこらしたメニューづくりが必要です。ターゲットとしてまず鹿児島市からの誘客に力を注ぐべきです。地域資源を点検し、磨き、地域のブランド力を高める取組が今強く求められています。地域の人たちが住んでいる何気ないまちの日常生活や祭り、イベント、特産品、食等新たな視点と感性で商品価値を創り出し、需要拡大を図りたいものです。


 参考資料:①かごしまフロ(風呂)マラソン、②桜島七十七景眺望スポット大募集

No.357 広告の規制や看板の統一がまちの魅力を醸し出す~これから街づくりに欠かせないものとは~ 

2015年4月13日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 1週間前まで県内の観光地を彩っていた桜の花が、風雨にさらされ、いつのまにか葉桜となり、変わって山の新緑が一段と美しい季節となりました。自然の移ろいは早いものです。

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 霧島高原の「まほろばの里」の芝桜が満開となり、紫の絨毯を敷いたような光景は、自然の色の美しさとともに、周りの緑の木々とのコントラストが見事です。切子制作や焼き物の体験もでき、家族で楽しめる施設です。長島町では沿道の至る所に植えられた花が開花し、ドライブを楽しませてくれます。「夢追い長島花フェスタ」も始まりました。是非皆さんでお出かけください。


 これから家々の庭から「こいのぼり」が高く泳ぐ姿が見られ、地方に出かける楽しみが増えます。最近では、川岸にポールを立てて、家庭で眠っている「こいのぼり」を泳がせている地域もあり、美しい日本の原風景がいたるところに見られるのはうれしい限りです。

 また、おぼろに景色がかすむ様子は日本の春の風景です。下の唱歌が浮かんできます。
          朧(おぼろ)月夜   作詞:高野辰之  作曲:岡野貞一
  1 菜の花畠に   入り日薄れ   見渡す山の端(は)  霞ふかし
      春風そよふく  空を見れば   夕月かかりて    にほひ淡し

  2 里わの火影(ほかげ)も  森の色も   田中の小路を  たどる人も
      蛙(かわず)のなくねも  かねの音も  さながら霞める  朧月夜

   歌の場所は、現在の長野県飯山市の付近で、作詞者の高野辰之が小学校に通う途中に見 た菜の花畑を思い出して作詩したと言われています。

  与謝野晶子は春の情景を菜の花に託して次の歌を詠んでいます。
      「はてもなく 菜の花つづく 宵月夜 母が生まれし 国美しき」

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 ところで海外で感動する光景に、広告や看板がなく、ゴミが無くて落ち着いた美しい雰囲気を醸し出している観光地があることです。オランダのチューリップ畑、スイスのアルプスへの登山電車の沿線風景やドイツのロマンチック街道、アメリカやカナダのロッキー山脈周辺、バンフなど景観に配慮したまちづくりが施されています。

 日本でも景観法が施行され、その対象は多岐にわたっています。基本理念には、《良好な景観は国民共通の資産》であると位置づけられており、地域の自然、歴史、文化等、地域の特性や特色を伸ばす必要性が指摘されています。

 景観を守ることは、観光まちづくりの根本をなすものと考えます。いちき串木野市と、日置市が景観法に基づく景観行政団体となったことから、両市の景観づくりが動き出しており、市民向けのセミナーも開催されました。

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  「薩摩藩英国留学生記念館」がある羽島は150年前、19名の留学生が船出した港であり、その雰囲気を復活すべく整備が始まりました。また日置市の「美山地域」は、薩摩焼発祥の地であり、博物館、古民家、工房、竹林等があり、落ち着いた街の雰囲気が魅力です。

 電柱の地中化、駐車場の整備、看板等の規制などに取り組み、県を代表する景観保護モデ地域として発展していくことを望みたい。鹿児島市内から30分余り、観光客誘致には便利な場所です。

 鹿児島市は錦江湾をはさんで、目の前に雄大な桜島がそびえ、その景観は世界に誇れるものです。しかし、いつのまにかその雄姿がさえぎられるポイントが増えており、高さ制限の必要性を感じます。

 県内の有名な観光地でも、旗の林立や派手な商品広告にがっかりさせられることがあります。看板の大きさ、字体等を統一する等、公共空間や公的施設を整備する際には配慮が必要です。

 全国的に景観形成に積極的に取り組んで成功している事例として、「伊勢市」、「川越市」、「彦根市」、「松本市」、「長野県の小布施町」などが上げられます。これらの街は、屋外広告物の表示・掲出の制限等を行っています。歴史や自然を活かしたまちづくりを促進するため、市街地の建物の高さを制限し地域の特性を活かした取り組みを進め、観光客誘致に努めています。

 県内では、武家屋敷群の残る「出水」、「入来」「知覧」は、「伝統的建造物群保存地区」として広告や旗等を制限しており、四季折々の魅力が醸し出されます。

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 宿泊地では各ホテルの標識や位置を、ひとつの看板にまとめることで十分と考えます。インターネットの普及やカーナビを装置した車が多くなり、目的地の検索は容易になっており、「黒川温泉」、「由布院温泉」はすでに実施しています。


 景観を維持していくために、地域の体制やまちづくりをどのようにすすめていくか、市民を交えた議論も重要です。今まで景観の重要性について考える機会や、その背景も希薄であったと思います。

 県内には28の有人の離島がありますが、広告のない島があっていいのではないでしょうか。全国的に注目されることで、住民の意識も変わりPRにもなります。

 子どもの頃から景観保護の重要性を、学校教育で教えることも大切です。美しい景観が地域の誇りであることを認識し、地域の景観形成についてどのようにして合意形成を進めていくか、先進地を研究する必要もあります。美しい景観を、先祖代々まで残していくことが、我々の責務であると考えます。

No.356 地方創生事業で誘致間競争は激化する~持続可能な地域が勝ち残る~

2015年4月6日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 今年の鹿児島の桜は予想に反し、全国で一番早く開花となり、満開の桜の下で、美しい日本の春を楽しんでいる方が多いのではないでしょうか。桜前線はこれから日本列島を北上し、北海道に上陸するのは5月になります。桜は日本人が最も愛する花の一つです。

 六歌仙の一人である在原業平は、桜を次のように詠んでいます。
「世の中に 絶えて桜のなかりせば 春の心は のどけからまし」
                             ~古今和歌集より~

 この世の中に全く桜の花がなかったならば、春を迎える人の心は、おだやかでいられるだろう。と訳されますが、実際は美しい桜があるせいで、いつ咲くだろうか、いつ散ってしまうだろうかと、どうか散らないでほしいと心配しながら過している。という意味に解釈されています。「美しい花よどうぞ散らずに、このままずっと咲いいてほしい」と、はかない桜の命を惜しむ思いをこめており、裏返しの意味で表現した歌です。

 平安時代の歌人で、江戸時代の松尾芭蕉が最も影響を受けたと言われる「西行法師」は
「願わくは 花の下にて春死なん そのきさらぎの望月の頃」
と詩っています。

 情熱の詩人「与謝野晶子」は
「清水へ 祇園をよぎる桜月夜 こよひ逢ふ人 みなうつくしき」
と夜桜に映える京都の街や行きかう人々の楽しい姿を詠んでいます。日本人の心が伝わってくる情緒豊かな詩ではないでしょうか。

 また、桜は文部省歌や校歌、歌謡曲にも多く取り上げられています。「弘前城のしだれ桜」、「福島県三春町の滝桜」、「岐阜県根尾村の薄墨桜」、「伊那市の高遠城址公園の桜」は全国的に知られた桜の名所です。

 桜前線を追うように桜のツアーも北上していきます。2ヵ月間に渡り、花のツアー企画ができるのも、桜の花だけだと思います。これほどまでに日本人の心を惹きつける桜の魅力とはなんでしょうか。冬の寒さに耐え、土筆が芽を出す頃美しく咲いて、ぱっと散るところが、日本人の心を捉えます。

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 アメリカ合衆国の首都ワシントンD・Cのポトマック河畔の桜並木は、世界の名所の一つになっています。1912年当時の尾崎行雄東京市長がプレゼントして植えたもので、今では盛大に「桜まつり」が開催され、「桜の女王」が選ばれる等全米から観光客が訪れます。

 ところで、観光庁より「宿泊旅行統計調査」の平成26年年間値(暫定値)が発表されました。調査によると、鹿児島県の延宿泊者数は7,584千人泊で、3,57%増となり、うち外国人は、269千人泊で25,28%増となっています。(全施設を対象にした実績)

 九州内における延宿泊者数の順位は、福岡県に次いで第2位となり、平成25年からこの位置をキープしています。4回の台風襲来や大きなイベントがない中で、前年を超えることができたことは、関係者の誘客の努力に加えて、鹿児島県の魅力が定着しつつあると感じています。

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 全施設を対象とした統計ではあることから、小規模施設への入込状況も把握できます。個人旅行化が進み、また旅行ニーズが多様化している中で県内各地域への分散傾向も見られ、少しずつではありますが、受け皿づくりが整いつつあると感じます。九州新幹線開業による時間短縮効果もそれを可能にしています。



 また、「拠点地域(指宿・霧島・鹿児島)発の広域観光周遊ルートづくり」、「かごしま・風呂マラソン」、「桜島七十七景ルートづくり」、着地型メニュー等を充実させて、地域への誘客を進めなければなりません。

 外国人延宿泊者数は大きく伸びましたが、九州の中では第5位となっています。全国的には、外国人の宿泊者数は30,8%の伸びであり、4つの海外路線を持つ鹿児島としては、もっと伸びる要素があります。

 韓国人の入込数で大きな差が出ており、熊本まで来ている外国人をいかにして鹿児島まで誘致できるかにかかっています。課題は、鹿児島までの交通費であり、新幹線の特別料金の設定や福岡空港と鹿児島空港を発着としている同一キャリアを活用することで、効率的ルートの設定が可能となります。

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 上海線、香港線の増便や、新たに宮崎~香港線の就航等は追い風となります。個人旅行が増加しており、外国語表記、免税店の対応改善などさらなる誘致策が求められます。



 ところで貸切バスの新運賃制度が本格的に導入され、バス料金が30%程度アップしています。企画商品を中心に集客状況が懸念されますが、料金値上げは、乗務員の待遇改善や安全運航確保の必要条件であり、事業者、エージェントも消費者に理解してもらう努力が必要です。

 地方創生事業で、旅行商品の割引や地域商品券など、多くの県が観光客誘致にしのぎを削っています。割引のみでは一過性の客となる懸念があり、訪れる方に感動をもたらしリピーターに繋げる「おもてなし」が大切です。「本物。鹿児島県」を提供し、「一期一会」の心で対応しなければなりません。

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 今年は「世界文化遺産」登録や「第30回国民文化祭」が開催されることから誘客の目玉はそろっています。特に国民文化祭は、43市町村が競って誘客に努め、我が町をPRする機会としなければなりません。

 地域資源を点検し、ストーリー性を持った商品開発が不可欠であり、常に話題を提供し、進化し続ける地域であることをPRし、官民一体での努力が求められます。そのことが持続できる地域になる要因ではないかと思います。23年から4年連続で鹿児島県の宿泊客数は伸びています。27年も慢心することなく、誘客に努めたいものです。

No.355 「第30回国民文化祭」を「明治維新150周年」につなげよう~市町村の事前取組が課題~

2015年3月30日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 今年は、国、最大の文化イベントである「第30回国民文化祭」が、10月31日から16日間、県下43全ての市町村で開催されます。テーマは、「本物。鹿児島県 ~文化維新は黒潮に乗って~」、また、愛称は「ひっとべ!かごしま国文祭」となっています。 

 国民文化祭は、全国各地からアマチユアを中心とした文化団体や愛好者が集まり、各種文化活動の成果や発表・競演・交流することにより、国民への文化活動への参加の機運を高め、新しい芸術文化の創造を促すことを目的に開催されてきました。 

 鹿児島開催まで半年あまり、県民あげての盛上げが必要であり、各市町村の事前取組が 大会の成功を左右すると考えていますが、住民への浸透度は今一歩です。主要拠点にカウントダウンボードも設置されました。文化、教育、観光、農水産業、商工関連団体等が連携強化して我が町の魅力を発信し、参加者増を図らねばなりません。

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 文化イベントは、スポーツイベントに比べて市民の関心が低く、集客に苦労します。国体等代表選手が参加する大会には経費等の補助がありますが、国民文化祭は趣味を同じにする人たちの発表の場であり、自費参加が主体となっています。


 ここに国民文化祭に対する集客の厳しさがあり、いかにして各事業への参加者を増やすかが問われています。県では国民文化祭のイベントを通して、多くの人に鹿児島に来ていただく対策として、地方創生に関連した予算も計上され、団体の参加を促すことにつながると思います。

 昨年の秋田大会の経済波及効果は133億5500万円とする推計を、秋田銀行のシンクタンクである「秋田経済研究所」は発表しています。鹿児島県が誇る歴史、温泉、自然遺産、食等は、秋田県に優るとも劣らない魅力が十分揃っています。九州本島最南端の県と言う魅力も活かし、関連団体への事前のPRが何よりも大切です。

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 6月には、「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」の「世界文化遺産」登録が予定されており、鹿児島市内にある5つの関連施設が対象で、登録が実現すると、「世界文化遺産」の視察を兼ねて多くの参加者があると期待され、国民文化祭の開催にも弾みがつくことが想定されます。

 薩摩藩は、明治維新の原動力となった多くの偉人を輩出し、「旧集成館事業」や「薩摩藩英国留学生」、「郷中教育」等の歴史に触れることで、薩摩の文化の高さや先進性を学ぶことができるのではないでしょうか。また、食、祭り、くらし等地域文化を情報発進することで、行って見たい大会としての魅力付けが大切になっています。各市町村が競争と協調を図り、文化祭終了後にわが町への誘地を図る努力も求められています。

 鹿児島県は南北600キロに広がり独特の文化を育んできました。中でも焼酎は、110余りの蔵元と2000を超える銘柄があり、地域に根付いています。与論では与論献奉という独特のおもてなしの手法で接待します。

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 県議会においては、本格焼酎の産業振興とそれに関する郷土の伝統文化への理解の促進を図るため「かごしま本格焼酎の産業振興と焼酎文化でおもてなし条例」を制定し、平成26年1月1日から施行されました。参加者と住民との交流の機会を多く設け、地域ならではの「ふだん着のおもてなし」が求められています。

 一方インバウンドに目を向けると、円安やビザ取得要件の緩和、和食の「世界無形文化遺産」登録、「安全安心の国日本」への関心が高くなり、外国人が急増しています。県内在住の外国人にも、鹿児島の文化の発信者になってもらうことも大切です。本県では、ソウル、上海、台北、香港の4国際航空定期路線があり、また、市町村は姉妹都市との交流を定期的に進めており、国民文化祭を機に海外からの参加者を増やし、さらなる文化交流も深めてもらいたいと思います。

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 大会のテーマは、南に広がる鹿児島のイメージを象徴しています。県内に28の有人の離島があることは意外と知られていません。大会後に離島を訪れる参加者が多くなることが期待されます。「奄美・琉球」は、平成29年の「世界自然遺産」登録を目指しており、PRのよい機会となります。



 国民文化祭を開催することで県外の出演団体に加えて、交流の機会の場が増えることは、地域の活性化につながることが期待されます。また、地域文化の継承には後継者の養成が不可欠で、子どもやお年寄りの出演の機会をつくることが求められています。そのことで、地域の伝統文化を学ぶ、郷土愛を育てることになります。

 「世界文化遺産」登録、来年の「薩長同盟150周年」、鹿児島を舞台とした2017年の「NHK大河ドラマ」の誘致、そして、2018年の「明治維新150周年」につなげる国民文化祭にしなければなりません。「第30回国民文化祭」の成功が、これからの鹿児島にとっても重要なインパクトになるイベントであることを認識し、県民一人ひとりが参画意識を強く持ち「おもてなしの心」で迎えたいものです。

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 『木曽路はすべて山の中である。あるところは岨(そば)づたいに行く崖の道であり、あるところは数十間の深さに臨む木曽川の岸であり、あるところは山の尾をめぐる谷の入口である。一筋の街道はこの深い森林地帯を貫いていた。』
              夜明け前:島崎藤村

*小説「夜明け前」の冒頭の部分です。今では観光地となっている馬籠と妻籠が舞台です。
*鹿児島大会では、「最南端佐多岬旅の文学フェスティバル」が南大隅町で開催されます。

No.354 離島の活性化に若者の発想を生かす~変わらない美しい自然と人々の温かさ~

2015年3月23日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 先日、奄美海運が運航する新造船「フェリーきかい」の就航記念披露会に出席しました。新造船は2,500総トン型で、旅客定員196名、トラック18台、乗用車11台、コンテナ60個を積む能力があり、従来の船よりも高速運行が可能となりました。


 バリアフリー化や各種の設備を整え、鹿児島~喜界~名瀬~古仁屋~平土野~知名の奄美群島の各港を結びます。小生の学生時代の頃に比べると、離島航路は船の大きさ、設備、スピード等格段の進化を遂げています。

 40数年前から訪れている離島の魅力について触れたいと思います。鹿児島県は南北600kmに広がり、また、28の有人離島が点在し、独特の文化や日本では珍しい生態系が見られます。昭和47年に沖縄が日本に復帰するまで、与論島が日本の最南端の島であり、都会から女子大生を中心に多くの若者が訪れていました。昭和45年の奄美航路の利用者は、約35万人で43年の3.5倍にも達し、離島ブームの到来を感じさせてくれました。

 高校時代から地理という科目が好きで、将来は高校の社会の先生を夢見ていました。大学入学後、迷いなく入部したのが「地理学研究会」でした。部員は20名足らずでしたが、各県出身の旅好き仲間が集まり、アルバイトの資金で、休みの度に離島の生活・文化の調査を兼ねて合宿を行っていました。   

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 奄美航路の船はデッキまで人が溢れるほど混んでおり、佐多岬を過ぎ、大海に出ると大きく揺れましたが、夏場は潮風に吹かれながら満天の星空を眺め、ざこ寝した思い出が懐かしく思い出されます。早朝の名瀬港は荷降し作業や出迎えの人でごった返し、「島育ち」の曲が流れ、今とは考えられないほど賑わっていました。

 南海の海はコバルトブルーに輝き、ズーニーブーの「白いサンゴ礁」という曲が若者の心を捉えて、与論の浜辺では水着姿の若者が闊歩し、民宿も多く誕生し、商店街はさながら与論銀座の様相を呈していました。

 我々のクラブ活動は離島の人口動態、経済、生活等の調査が目的であることから、自治体は、集落の公民館等を好意的に宿舎として提供してくれました。農家を訪ねると、黒砂糖やお茶でおもてなしを受け、島の人々の温かさに胸が熱くなり、日本にこんなに素晴らしい地域があるのだと部員で語り合ったことが懐かしく思い出されます。

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 昭和44年の沖永良部島での調査では、発見されてまもない「昇竜洞」を見学することができました。十分整備されていない洞窟の中は、裸電球が付けら島の住民が案内役をかってくれました。昇竜洞の美しさにただ目を見張るばかりで、今ではケイビングツアーのメッカとして全国的に知られるようなりました。

 研修先として次の訪問地の与論島に渡る計画でしたが、南方海上で台風が発生し急遽台風を避けて帰ることになり、島の西側の伊延港に移動して、沖合に停泊している船にはしけで渡り帰途につきました。当時から伊延港は避難港としての役割を果たしていました。離島の生活環境の厳しさに触れた出来事でもありました。

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 屋久島合宿では、安房からトロッコの軌道を小杉谷まで15キロを5時間かけて歩きました。縄文杉(当時は大岩杉)や大王杉は今ほど有名ではなく、途中の小杉谷荘(今は廃業されている)が、宮之浦岳登山客で賑わっていました。


 昭和45年、自然保護運動の高まりの中でヤクスギ伐採も終わり、営林所や家族が住んでいた小杉谷集落、そして小杉谷小・中学校も廃校となりました。訪ねた頃は校門跡に残された記念碑や、生徒たちが走り周った校庭に残る僅かのグランドが、賑わっていた時代を物語っていました。今では雑草が生え、昔を知るすべもありません。

 林芙美子の小説「浮雲」は屋久島が舞台ですが、自然の美しさは46年前とあまり変わっていないと思います。平成5年日本で初めて「世界自然遺産」に登録され、多くの観光客が訪れていますが、今の自然環境を守って行くことが、屋久島の価値を高めることになると信じています。

 その後も喜界島、奄美本島、徳之島、甑島、種子島、新島と休みの度に各島を訪れ、美しい海、人々の温かい心に触れすっかり離島のファンとなりました。離島の魅力を国内外の人々にPRしたい思いで就職活動を行い、結果として旅行エージェントに籍を置くこととなりました。

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 営業活動で離島を訪ねることも多く、修学旅行の添乗では、生徒を港から沖合の定期船迄、漁師の協力も得て小さなはしけで運ぶこともありましたが、今では港の改修で大型フェリーの接岸が可能となり、浴場や個室を備えた豪華船となり、隔世の感があります。

 仕事で多くの国々や全都道府県を訪ねましたが、鹿児島の離島の魅力は世界に誇れるものがあると思います。今年秋には「第30回国民文化祭」が、全市町村で開催されます。全国から多くの参加者が離島を訪れることを期待しています。

 2017年に「奄美・琉球」が「世界自然遺産」登録を目指しており、登録後は屋久島と奄美群島をつなぐ新たな観光ルートの誕生が期待されています。奄美群島全体の観光振興につなげたい思いです。

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 離島の島々は国防の観点からも、住民が暮らし続けていける環境を保っていくことが重要なことです。人口減が顕著となり、交流人口の拡大が不可欠となっています。今離島の自治体にとっても、大学とコラボして、商品開発や情報発信に努めることが地域活性化につながるのではないでしょうか。

 スポーツ合宿、ゼミの研修先、避暑地としての役割も果たせるものと思います。学生時代の貴重な離島体験が今でも役立ち、私の人生の原点は、大学時代のクラブ活動にあると思っています。

      春の岬  旅の終りの  かもめ鳥
                        浮きつつ遠く なりにけるかも
                               ~三好達治(『測量船』)~

No.353 甑島(こしきしま)が新たに国定公園に~多様な海岸景観が観光客を魅了する~

2015年3月16日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 薩摩川内市の西に位置する甑島は、多様な海岸景観をはじめとした景観等が評価され、「甑島国定公園」として、3月16日誕生します。国定公園は、日本において国立公園に準ずる景勝地として自然公園法に基づいて、自然の保護と利活用を目的に指定される「自然公園」の一種です。 今回の指定は国内で57カ所目、鹿児島県内では、奄美群島、日南海岸に続き3カ所目の国定公園となります。


 甑島周辺沿岸が日本の重要湿地500に、鹿島断崖に見られる特異な地質構造である「甑島の白亜紀―古第三紀層」が日本の地質100選にされています。また、「甑島の鹿の子断層」が日本の地質構造100選に選定されるなど、その自然環境は高く評価されています。

 薩摩川内市の川内港から「高速船甑島」で40分で上甑島の里港に到着します。高速船は、JR九州の観光列車を手掛けている水戸岡鋭治さんデザインによるもので、話題性に富み多くの利用客で賑わっています。

 甑島は、上甑、中甑、下甑3島などからなり、現在中甑島と下甑島を結ぶ架橋が平成29年の開通を目指して工事中であり、完成後は島が一つに結ばれてさらに魅力が増すのではないでしょうか。

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 最初に船が着く里港は里の中心地です。里は島の中では、平坦地が多く美しい入り江と自然が造った景勝地がいたるところにあります。里はトンボロと呼ばれる地形の上に発展した町で、海底の砂礫が海岸流によって運ばれ、波の作用によって水面上にあらわれたものです。函館市も同じような地形の所に発展した町です。

 里町には、丸い石を丹念に積み重ねた玉石垣の美しい街並みが残っており、昔の風情が感じられる通りがあります。その石垣から四季の花々が顔を出し観光客を和ましてくれます。上甑島の「長目の浜」は、およそ4キロにわたって延びる砂州とその内陸部に並ぶ、なまこ池、貝池、鍬崎池という3つの池からなる甑島有数の景勝地です。

 上甑と中甑を結ぶ「鹿の子大橋」から見る夕日は、絶賛に価します。浦内湾には30キロを超えるクロマグロが、いけすの中で養殖されており、漁師の巧みな手さばきで一瞬のうちに捕獲され、内蔵を取りのぞき大きな箱に格納されていきます。

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 定期的に大都市圏の市場に出荷しています。甑島はクロマグロの養殖場としては、水温、海流、海面の深さなど好条件に恵まれた場所であり、漁場拡大が今後の地域経済への発展につながると思います。


 下甑島の入口にある鹿島海岸は、高さ200mにも及ぶ険しい断崖が続き、池矢崎、門口、鶴穴など様々な名称の奇岩や大岩が点在し大自然の威容を見せています。断崖絶壁の岩の巣には、ウミネコが生息しており、クルージングをしながら餌をやる体験ができます。船上からきびなごの餌を空中に投げると、あっという間に餌を捕まえて飛んでいきます。その姿は壮観であり学生が喜ぶ海の体験の一つになります。

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 また、市の花にも指定されている鹿の子百合の自生地もあります。初夏になると、二シノハマカンゾウが黄色い花を咲かせます。鹿の子百合はそのあとを追うように、草原一帯に、薄紅色の花がじゅうたんを敷きつめたように咲き乱れます。百合の野生の花や球根を取ることは禁じられています。

 昼食を港の近くの浜辺で、取れたてのあじやきびなご、いかなどの海の幸のバーベキューをいただくのも島ならではの醍醐味です。

 甑島で忘れてならない魚にキビナゴがあります。近海で獲れたキビナゴは、その日のホテルの朝食に並びます。刺身やちょっと火であぶることで甘みが残り、おいしく食べられます。メニューに工夫をこらし観光客に提供することで、島のブランド品にもつながります。

   数年後には中甑島と下甑島が橋で結ばれますが、完成後は里から下甑島の手打まで2時間程度となり島も大きく変貌すると思います。下甑島には、ナポレオン岩、瀬尾観音三滝等の景勝地に加えて、椋鳩十の小説「孤島の野犬」の像、「おふくろさん」の歌碑もあり、観光客にとっても魅力のコースです。また、テレビドラマ「ドクターコトー」のモデルとなった医師と診療所があり、写真を撮る観光客の姿も見られます。

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 甑島では「地域おこし協力隊」が頑張っており、関西・中国地域から新幹線と高速船を利用した観光客誘致に努めています。今後のさらなる観光客誘致を図るためには、国定公園の島として何が売りなのか、他の島にない魅力をPRすることです。


 素朴な自然を活用した体験メニューを充実させ、都会の人々と島の人々との交流の機会を増やすことが重要です。また、大学生の地理や地学のゼミ研修場所として最適な場所です。 一方では、国定公園指定を受け地域の自然を守る取組も強化しなければなりません。島を上げて国定公園指定を喜び、観光客を温かく迎える心を醸成したいものです。

                資料:薩摩川内市ホームページ、薩摩川内観光マップ

No.352 安全で快適なバス旅行を提供するために~新制度定着には、消費者への周知と理解を深める努力を~

2015年3月9日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 平成24年4月に発生した高速ツアーバス事故等により、貸切バス市場の現状について様々な問題が提起され、改善を図るべく新しい運賃・料金制度が平成26年4月から実施されました。今まで貸切バス料金は、「時間制運賃」、「キロ制運賃」、「時間・キロ選択制運賃」、「行先別運賃」を採用していました。

 今回の制度の見直しは、貸切バスの安全性向上への取組であり、それに伴い運賃制度を根本的に見直し、安全と乗務員の労働環境改善コストを反映したものです。

 新しい運賃制度の概要は下記の通りです。
1.時間制運賃とキロ制運賃を合算として計算
①時間制運賃
バスの出庫から入庫までの時間に、出庫点検・帰庫点検の各1時間ずつ合計2時間を加えて、時間制運賃を乗じることになります。(最低保障として、3時間に点検時間の2時間を加算した5時間です。)
②キロ制運賃
バスの出庫から入庫までの距離にキロ運賃を乗じます。

2.料金の種類
①深夜早朝運行料金
22:00~5:00に係る運行は、その係る時間については2割を限度とした割増料金が適用されます。
②交替運転者配置料金
長距離・長時間・夜間料金運行など安全運行のために交替運転手を配置した場合に適用されます。*各運輸局が公示した料金になります。
③特殊車両割増料金
サロンカー、リフト付バス等は運賃の5割以内の割増しを限度として適用されます。
④ガイド料、有料道路、航送料、駐車料金、乗務員宿泊料などは、実費負担となります。

3.行政処分が厳しくなります。(平成26年7月から)
①バス事業者
初違反 ⇒ 20日間の車両使用禁止 再違反 ⇒ 40日間の車両使用禁止
②旅行事業者
貸切バス事業者が、届出運賃違反で行政処分を受け、旅行業者の関与が疑われる場合、地方運輸局より国土交通本省を通じて観光庁に通達され、旅行業者等に対して立入検査等旅行業法に基づく措置が講じられます。(資料:日本バス協会)

 従来から貸切バス運転手の労働環境は厳しく、早朝に車庫を出て深夜に車庫に帰ることも珍しくないことです。また、駅に団体を送った後すぐに新しい団体を乗せるなど綱渡りの業務もあり、道路渋滞などでは迎えの時間に間に合わないこともしばしばです。

 貸切バス業務は厳しい労働環境にあることから、バスの運転手の後継者不足は深刻であり、運転手の高齢化も進んでいることから、10年後は貸切バスの運転手はいなくなるのではとあるバス事業者は懸念していました。

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 今回の改正は、バスの安全な運行に欠かせない最低限のコストや運転手の労働環境を加味して設定されています。バス事業者、旅行業者のより強いリーダーシップが求められています。労働環境を改善し、雇用確保が図られることも重要です。今回の新運賃導入を契機に、事業者、バス利用者双方がメリットを享受しなければなりません。 

 ところで平成26年4月に導入された料金制度は、新規契約から適用されます。料金アップに特に影響を受けるのが、1日遠足や修学旅行の学校行事です。修学旅行は旅費の上限が各自治体で決められており、その範囲で行ける行先を選択してきました。関西・中国地域からは修学旅行の新幹線専用列車の運行が始まり、運賃・料金が半額となることから鹿児島への修学旅行が実現しました。

 今度バス旅金がアップすることから、平成27年度秋の実施分から影響が出ると思われます。旅費の上限が変わらなければ、3日間バスを活用した日程を、変更しなければなりません。対策として、1日は自由散策等を入れることで軽減が図れます。鹿児島市内のボランティアガイドを活用した「まち歩き」や、「シティビューやまち巡りバス」を利用したツアーや、農漁業体験を1日組み入れて、民泊を体験するのも対策の一つです。

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 駅から民泊先が近い出水地域では、バス代が掛からないことをメリットとして誘致対策の強化が求められます。1日遠足のバス旅行は身近な行事であり、教育委員会等を通じて、新制度について学校や父兄に広く理解を求めることも重要です。


 大都市圏から鹿児島へ来る一般の商品では、鹿児島市や指宿温泉、霧島温泉等に宿泊する企画が多くあります。価格上昇に伴い消費者の選択肢を広げるには、従来の周遊型商品に連泊とフリータイムを加えることで、旅行代金に弾力性を持たせることができ、消費者の選択肢が広がることになるのではないでしょうか。

 従来旅費を安く抑えるために、送迎等にホテルのバスを依頼しているケースがありますが、路線の認可を受けている以外は、やめるべきです。

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 外国人が急増しており、大都市圏ではバスの予約が取れない状況にあります。鹿児島県として、平成31年には外国人宿泊客を、今の約2倍の43万人を目標としています。貸切バスの確保は不可欠です。一度安価な料金で受けるとそれがベースとなり料金アップは難しくなります。

 新制度を着実に適用することが生き残りとなります。今回の新制度導入は、運転手の労働環境改善だけでなく、事業者の経営改善にもつながります。

 最後にバス旅行は楽しく、1年間に200回も参加している友人がいます。1日バスに乗り観光地を巡り、豪華昼食を食べ、お土産付きで5000円程度の旅行は気軽に参加できます。労働環境が確保されている職場で働く運転手さんこそ安全な運転ができ、参加者も安心して旅行を楽しむことができると思います。

 旅行業者にとっては、値上げにより一時的に集客が厳しくなることが予測されますが、一方では企業のメリットも増加すると考えられます。バス事業者、旅行業者、消費者の3者が理解し合う事で制度改正が定着するものと信じます。

No.351 若者の旅立ちを祝す~好奇心のアンテナを高く掲げて努力を~

2015年3月2日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 卒業式のシーズンとなり進学や就職で鹿児島を離れる若者が多くなります。甑島では中学3年生になると、卒業に向けてサツマイモを育てて、収穫したイモは蔵元で記念の焼酎ボトルを作り、5年後の成人式で再会した時恩師や同窓生で封を開けて皆さんで飲むという伝統行事が残されています。

 焼酎のボトルには「島立ち」と印刷されており、家庭で親が子供たちの成長を楽しみに5年間大事に保管しているそうです。島に高校がないために島外に出るしかありませんが、子供たちにとっては、島や友人との絆を保つシンボルになっているのではないでしょうか。

 唐の時代の詩人である「李白」が、友人を送る心情を書いた詩を紹介します。古代から中国国内の移動は大変であったと推測されますが、精一杯のおもてなしで人との別れを惜しんだのではないかと思います。

                  友人を送る       李 白
   青山横北郭 白水遶東城  青山北郭に横たわり 白水東城を遶る
   此地一為別 弧蓬万里征  此の地一たび別れを為し 弧蓬万里に征く
   浮雲遊子意 落日故人情  浮雲遊子の意 落日故人の情
   揮手自茲去 䔥々班馬鳴  手を揮って茲より去れば 䔥々として班馬鳴く

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[文訳]
山が青々と町の北側に横たわり、川が白く輝き、町の東方を遶っている。君はここで一たび別れを告げたなら、一本の蓬が風に翻るように万里の旅路に向かうのだ。君の心は空に浮かんだ雲のように寄る辺なく、友人である私の気持ちは、落ちかかる夕日のように切ない。さあ、いよいよ出立の時となって手を振りきると、別れ別れになる馬さえも悲しげに嘶(いなな)いた。

・・訳「唐詩」100選 佐久 協
[故人]・・旧来の友人、[遊子]・・旅人、[䔥䔥]・・馬の嘶き、[班馬]・・別れる馬

 情感がこもった友人への、惜別と激励の詩です。日本では送別に際し、激励会を開きメッセージと供に花束を渡すことが日常行われています。中国では別れを綴る詩では、友人の姿を長く見送ることができる丘陵や大河がよく舞台として登場します。

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 日本では、異動は住居と仕事内容など環境が変わり、人にとっては自分を変える大きな転機となると思います。それぞれの土地での出会いがいい経験となり、古里である鹿児島のすばらしさを、他の県に住んではじめて知る機会にもなるのではないでしょうか。


 鹿児島県は南北600キロにおよび、本土と離島との転勤も多くあり、港や空港での別れのシーンは鹿児島の年中行事の一つではないかと思います。鹿児島を離れて他県に行く人は、鹿児島の歴史、温泉、食、祭り、自然遺産、おもてなしの心などの魅力を、任地で是非多くの人に伝えてほしいものです。皆様の口コミで鹿児島の生きた情報が全国に発信され、交流人口の拡大につながることを期待します。

 ところで進学や就職していく若者の皆さんには、日頃から読書することの大切さを、身につけて欲しいと思います。日本文学や古典、歴史、経済、科学等専門分野以外も読書することで、人の生き方、考え方を学び、自分の考えに幅が生まれ、客観的な物事の判断ができるようになるのではと思います。

 総務省の調査によると、インターネットが普及し、情報の発信量は10年前の530倍にもなっています。情報は一方通行になりがちであり、より重要な情報を見逃さず、蓄積しいかに活用していくかが大切です。

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 「落日燃ゆ」、「男子の本懐」、「価格破壊」、「粗にして野だが卑ではない ~石田礼助の生涯~」、「官僚たちの夏」、「外食王の飢え」などの小説を書き、伝記小説という一つの系譜を定着させたのが作家城山三郎です。主人公が過した時代を通して、信念に基づく生き方を男のロマンとして鮮明に描いています。これからの人生の参考になるのではないかと思います。小生も好きな作家のひとりです。


 最後に、入社試験のため東京に出てきた若者に、創業者が読書の大切さを語るシーンです。小説の一部を紹介します。是非文庫本をお読みください。

 馬場は、さらにいった。「けど、勉強はしろよ」「はい」目を上げて答える高島に馬場は、「人間は、日に四度、メシを食うものだ」「はあ?」「三度は、ふつうのメシを食う。あとの一度は、活字のメシを食え。つまり、読書だ」。(「臨3311に乗れ」城山三郎著 集英社文庫)

No.350 心遣いは日々の行動のディテールに宿る~感動を与え、享受できる人に~

2015年2月23日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 皆様の職場には日頃から多くの訪問客があると思いますが、帰るとき出口までお送りする機会はどれだけありますか。

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 日頃顧客と接していると、様々な送りの場面に出会います。顧客をエレベーターまで案内し、扉が閉まるまで頭を垂れることはよくあります。駅のホームで顧客を見送るときは、ドアが閉まり電車が動き出して、電車が見えなくなってからホームを離れることが大切ではないかと感じます。

 ところで宿泊施設では、以前は玄関に宿泊する方の名前をボードに書くことで歓迎の意を表していました。最近では個人情報保護法の関係もあり、団体以外は宿泊者名を書かない施設が増えています。

 宿泊施設の支配人に尋ねると、迎えの時より送る時に、より気を遣うということです。送迎という言葉がありますが、また来館して宿泊していただくリピーターにするには、両方とも大事ですが、特に送りの時の印象が大事ではないでしょうか。

 お客様を送る際、バスやタクシー、マイカー等に乗車される時に「ありがとうございました」と頭をさげ、車が見えなくなるまで手を振ってくれる旅館があります。

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 お客さんは朝までお世話になったこともあり、出発した後、自然と振り返り宿に向かって頭を下げることがあります。従業員が手を振っていると申し訳ない気持ちとともに、素直にうれしい気持ちになるものです。



 日頃から見送りの際、顧客に手を振る習慣を徹底している旅館の経営者から伺った話です。

 お客様が下見に来られて帰られる際に、従業員はいつもの通り「良かったら是非お泊りにお越しください」と挨拶し、車が見えなくなるまで手を振ってお送りしました。下見に来られたご夫婦は、車内から後ろを振り返ると、予約もしていないのに手を振ってくれていたとのことでした。

 夫婦はその姿に感動し、この旅館なら間違いはないだろうと車を引き返して来て、宿泊したいと申し出たとのことです。実際に宿泊された際、きめ細かなサービスと季節感あふれる食事の内容に感激し、その後ずっとその旅館のファンになっているとのことです。

 「人が見ていない場所でこそ、一生懸命に業務に励むことが大切である。」と日頃から従業員に話していると言います。この施設は、従業員全員が同じような心がけを持ち、「おもてなしの心」で仕事に取り組んでおり、そのことがお客様への評価として表れていると思います。当旅館は今でも人気旅館として多くの顧客の支持を得ています。

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 指宿市役所の職員の皆様は、毎日欠かさず「いぶすきのたまて箱」の列車に手を振って乗客を歓迎しています。「ナニコレ珍百景」でも放映され話題となりましたが、継続していることが立派です。



 家庭でも、日頃から来客をもてなすことには慣れているとは思いますが、家に主人が不意の客を連れてきて戸惑うことがあるのではないでしょうか。夜更けに客が帰ると、玄関を出た後灯りを「バチッ」と、すぐ消してしまうことも多いのではないかと思います。

 家族に連絡もなく客をつれてきた夫が悪いのは理解できます。客にとってみると玄関を出た後すぐに灯りが消えると、自分は招かざる客ではなかったかと寂しい気持ちとともに、申し訳ない心が残るのではないでしょうか。

 お客様はマンションの玄関を出て、しばらくしてから訪問先を振り返ることがよくあり、玄関に灯りがついていると気持ちがなごみます。玄関から道路に出て客を見送り、歩き出して客が見えなくなってから帰路の無事を祈って頭を下げ、家の中に入り灯りを消すぐらいのおおらかな気持ちを持ちたいものです。

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 ところで卒業や入学、社会人のスタート、異動の時期が近づきました。かつてあまり目立たなかった友人が、いつの間に責任ある立派な地位に就き、驚かれることもあるのではないでしょうか。友人は学生時代に増して、日々勉学や仕事に精進し努力したおかげではないでしょうか。

何気ない「温かく思いやりのしぐさ」は、日々の行動のディテールに宿るのではないでしょうか。 卒業や入学、異動の時期を迎え、恕の心を持って日々友人たちとの絆を深めることも大切です。人の成功をうらやむより心から祝福できる器量を持ちたいものです。

          友が皆 我より えらく見ゆる日よ
                          花を買いきて 妻と親しむ

          こころよく 人をほめて みたくなりにけり
                           利己の心に 倦めるさびしさ
                                      ~石川啄木~

今回のコラムが350回目となりました。
いつも拙稿にお付き合いいただき感謝申し上げます。 

No.349 桜島噴火の風評被害を最小限に~皆様のネットワークの活用で的確な情報発信を~

2015年2月16日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 最新の桜島の情報について、山の膨張が見られるなど活動が活発化しているということが、全国的にメディアで放映されました。この火山情報が発表されたこともあり、鹿児島への入込み客減が懸念されており、観光面については正確な情報発信が問われています。

 鹿児島中央駅の案内所には、「桜島へ渡れますか」と訪ねる旅行者が増えていると職員が語っていました。昨年発生した御嶽山噴火事故が影響しており、噴火と報じられただけで観光客は敏感になっていることが伺えます。

 2011年1月の新燃岳噴火の際も、霧島連山の状況が連日マスメディアで報道されたこともあり、霧島地域のホテル・旅館は危険地域から離れているにもかかわらず、キャンセル等が相次ぎました。観光客の減少は、多くの業種に影響があり、地域経済にも大きな打撃となりました。

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 噴火や地域の状況を細かく知らせるために、県、霧島市、県観光連盟、霧島市観光協会等で連携し、旅行エージェント、マスコミ等を直接訪問し、道路の規制や周辺の山への登山の可否、通常と変わりなく営業している霧島温泉の情況報告を行い、送客支援と適切な報道のお願いをしました。

 関東地域からは鹿児島へのツアーも多いことから、首都圏のメディアツアーを主に扱っているエージェントに対して、企画募集展開の強力な要請も行いました。また、鹿児島市内のテレビ局や新聞社も訪問し同様のお願いをしました。

 桜島についても、今まさに風評被害をいかに食い止めるかが問われています。桜島は鹿児島の観光のシンボルであり、城山の展望台に立つと目の前にその雄姿が真っ先に飛び込んできます。桜島について県内の人はその位置関係はよく解りますが、県外から訪れる観光客は、錦江湾をはさんで鹿児島市に以外と近いことや、時々噴煙を上げる活火山の麓に人々が住んでいることに驚きます。また、湯之平展望所から間近に見える桜島の豪快な山肌にも驚かされます。

 桜島は、これまで幾多の噴火を繰り返し、大正3年の大爆発の時には流れ出した溶岩流は、大隅半島と陸続きとなりました。作家梅崎春生は自らの戦争体験にもとづき、小説「桜島」を書いています。

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 また、林芙美子の文学碑がある古里温泉は、彼女の母が育ったところです。桜島は永年の噴火で火山灰の土壌が堆積し、農作物や果樹を作るには困難をきわめますが「世界一大きい桜島だいこん」や「世界一小さい桜島小ミカン」が収穫されます。


 最近では桜島の自然を活用した「溶岩でのピザ焼き」や「温泉掘り」など体験観光が注目を浴びてきています。「NPO法人桜島ミュージアム」では、桜島を一つのフィールドとして捉え、桜島の真の魅力を観光客が自ら「楽しむ」ことができるような体験プログラムが用意されています。

 桜島から「地球の成り立ち」や、「防災への備え」を学ぶことができ、自然学習のカリキュラムとして取り入れる学校が増えています。火山活動を続けている山の姿は生きた教材です。平成25年9月24日には「桜島・錦江湾ジオパーク」として日本ジオパークに認定されました。

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 桜島には6000人近くの住民が生活しており、火山の近くにこれほどの人々が住んでいる地域は、世界どこにもありません。桜島は天気の良い日は、7回その姿が変わると言われます。鹿児島市民は、借景としてその姿を毎日見ていますが、もし桜島がなければ、鹿児島市は味気ない街になるかも知れません。溶岩や噴煙を上げる山をゆっくり望みながら錦江湾を巡る「よりみちクルーズ」も人気となっていますので、桜島のすばらしさを多くの県外客にPRしてもらいたいものです。

 霧島市のあるホテルでは、今年春の修学旅行が1校取り消しとなりました。霧島は桜島の絶景が望め、しかも離れた場所にあります。火山情報に対して父兄の不安の声が寄せられて、行先が変更になりました。正確で安心感を与える情報を継続して発信することが重要になっています。鹿児島市のメインの観光地である「かごしま水族館」の1月~2月の入館者が伸び悩んでいます。桜島桟橋のすぐ近くにあり、フェリーの乗船者数が入館者の動向にも影響を与えます。

 桜島火山の情報は、県内全域に影響が及ぶと捉えねばなりません。マスコミ、旅行エージェントへは特に働きかけが必要です。メディアでは、噴火が起こると過去の大きな噴火のシ-ンも報道することがあり、視聴者は爆発的噴火がまた、発生したと捉えがちです。

 桜島は現在も登山禁止の山であり、噴火警戒レベル3で半径2キロは立ち入りも規制されています。桜島は時折、噴火していますが、観光するには支障はなく、また住民はいつもと変わらぬ生活を送っています。

 県と県観光連盟では、桜島の魅力を再発見する「桜島七十七景ルート」の選定を平成27年度に行います。多くの応募をお待ちしています。

 気象庁は、3月末から桜島降灰予報をより具体的に発表することになりました。生活情報として生かすことができます。

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 最後に、スマートフォン、携帯電話、パソコンなどの情報手段をほとんどの人がお持ちと思います。友人等にぜひ桜島の状況を発信して風評被害を少しでも軽減できればと願っています。皆様のネットワークの活用で、的確な情報発信が鹿児島への観光誘致に役立ちます。よろしくお願いいたします。

No.348 観光振興への追い風を活かせ~効果を数値化し、次の展開に繋げる取組を~

2015年2月9日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 3月に入ると各自治体では27年度予算の審議が始まります。最近は観光振興に力を注ぐ自治体が増えており、多くの予算が計上されることを望みます。2008年に「観光庁」が設置されて、日本も観光振興の重要性が叫ばれており、インバウンドが2014年、1300万を超えるなど着実に成果が上がっています。

 今年は、国が地方創生に力を入れており、先日の知事の定例会見では、重要施策として第1次産業と観光産業の振興を挙げられました。本格的な少子高齢化社会を迎え、交流人口拡大による地域活性化は、自治体にとって重要な政策であり、観光振興は不可欠なものとなっています。

 観光振興あたっては、行政、経済団体、業界、民間事業者等の連携が大きな柱になりますが、一方では、それぞれの壁をいかに乗り越えるかが課題となっています。

 各自治体は税収が伸び悩む中でも、多岐にわたる町の振興が必要であり、効率的な予算執行が求められています。観光宣伝の在り方においても、遠方だけの活動に力がはいりがちです。我がまちにも博物館、美術館、温泉施設等が多くあり、利用促進には住民へのPRや、隣接する市町村との連携が欠かせません。

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 有名温泉地を持つ自治体は隣町と共同でPR活動を行うことで、他地域からの日帰り客を宿泊につなげることができます。広域連携で組織を作り、観光ルートや食、地域産品等の情報発信を行うことで大きな宣伝効果を生み出します。費用も少なくてすみ、効果が上がるのではないでしょうか。

 エージェントに対しては、ホテル等での説明会や商談会を開催することで、旅行商品造成や人脈づくりにつながりその後のセールスにも役立ちます。多くの営業マンが集まり易い場所の設定が大切です。

 例年福岡、京都、大阪で毎年スポーツ合宿誘致のセミナーを開催しており、着実に実績が上がっています。県内の多くの自治体が参加することもあり、セミナーへの大学の参加校が増えています。大学にとっては一度に自治体の施設・補助金・受入体制等の概要が解ることで、選択肢が広がります。自治体は合宿の実施時期、競技の練習メニュー、食事等が事前に把握でき、施設の有効的な活用が可能となります。

 観光振興には経済同友会、商工会議所、商工会、農協、地域づくり団体、NPO法人等民間組織との連携が重要になっています。地域のイベントを実施する場合は行政やこれらの団体の協力なしには開催できないのがほとんどです。協賛金等の収受も大きな課題となります。

 また、実施本部を立ち上げるとなると組織作りに時間がかかり、肝心の実務体制が後手に回ることがよくあります。地域全体でイベントに取り組む場合は、自治体の関係者をトップに据えて、民間のリーダーが実行委員長に就任した方がスムーズに行くのではないでしょうか。

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 指宿の「菜の花マラソン」、「菜の花マーチ」は、行政と業界の役割分担がはっきりしており、成功しているイベントと思います。現場で時間的制約を受けにくいのは、民の力ではないかと思います。組織作りに時間をかけるよりいかに動ける組織を作り上げるかが課題です。

 ところで、バブル時期までの日本の有名温泉地では、大型ホテルの建設、部屋の増設と多額の投資が行なわれました。現在では個人旅行が主流となり、宴会から2次会までできるような大型宿泊施設は敬遠され、宿泊者も減少しており、施設の維持が困難となっているところも見られます。

 一方地域ぐるみで街づくりを行っている温泉地や、地元や県民に親しまれている施設はいまでも活気があります。由布院温泉や黒川温泉は、個々の施設よりも地域全体のまちづくりが重要と捉えており、食材はできるだけ地域で調達し、各施設の看板も少なくするなど地域の景観づくりにも努力しています。

 経営という面では自分の施設の売上げが優先しますが、他の施設とも連携して誘客に努めることが、地域全体の活性化になると思います。スポーツキャンプやMICE等は長期に多くの宿泊客があるため、地域全体で受け皿を整える必要があります。地域で1軒の施設が栄えるより、魅力に富んだ個々の施設が生まれることが地域全体の魅力アップにつながります。

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 日本人の国内旅行は成熟し、しかも本格的な少子高齢化時代に入り、大きな消費拡大は望めず、誘客も難しくなっています。連携を強化して動ける組織を構築し、形より実のある成果が出るよう努力したいものです。


 産業の6次産業化が言われていますが、情報も多岐に渡りそれぞれの部門の垣根を越えることは容易ではありません。今や地域総力戦の気概で取り組まないと、持続できる観光地づくりには時間がかかります。外国人の受入態勢の整備も急がれます。

 観光の戦略としては、長期的には魅力ある観光地づくりや海外クルー船、新たな地域からの教育旅行の誘致、大型コンベンションの誘致等が必要であり、短期的には年度内に開催されるイベントや、話題性のある地域をターゲットとして絞り、大都市圏、九州管内などを主に、具体的なプロモーションを推進することで需要開拓が可能となります。

 そのことで組織や役割分担、予算規模も決まってくるのではないでしょうか。無料バス等を運行して集客する手法は安易な施策ですが、費用対効果をより厳しく分析し、次に繋げる取組としなければなりません。

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 ブームに乗り一度に多くのお客様が来訪するより、継続して来てくれる観光地が求められます。情報発信を心がけ、常に注目されている地域に人は魅力を感じます。行政、業界、民間事業者等がそれぞれの壁を越えて連携した取組が求められます。 

No.347 ボランティアガイドの活躍に学ぶ~地域を越えた連携を~

2015年2月2日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 2月に入り、プロ野球のキャンプがスタートしました。宮崎県は「スポーツランドみやざき」をキャッチフレーズに、プロスポーツキャンプ誘致に努めています。今年はプロ野球7チーム、サッカー21チームがキャンプを張ります。


 その宮崎市で、「九州観光ボランティアガイド研修会in宮崎」が、九州7県から90団体200名、大会関係者27名が参加して盛大に開催され、鹿児島県からは23団体49名が参加しました。

 事例発表会や分科会では、日頃の活動報告やネットワークづくり、ガイドの資質の向上、役割等について真剣な議論が展開されました。ガイドさんたちは今回が8回目となることから、お互いなじみの方々が多く1年ぶりの再会を喜んでいました。

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 最近の旅行形態は、団体旅行から個人旅行への流れが顕著であり、しかも地域の生活、文化に触れる旅が多くなっています。街歩き、エコツアー、歴史探訪等ボランティアガイドさんの役割が求められており、加えて地域のおもてなし力が問われています。

 ガイドをする上で日頃の準備や行程での心掛けも大切な要素で、予約を受けたお客さんの地域の概況を把握して、最初の挨拶でふれると親近感が高まります。日頃から街の成り立ち、暮らし、地域の名産品店等を勉強しストーリーを加えて語ることが印象に残ります。

 特に地域の生活・文化を語ることは、観光客が地域を知る良い機会となります。専門的な知識の羅列だけでは、参加者は飽きてしまいます。客の表情を伺い、案内の内容を変え、場所によっては説明の濃淡をつけることも必要と考えます。また、最近は熟年の参加が増えており、ルート沿いのトイレの場所や病院等も頭にいれておく必要があります。

 ボランティアガイドの組織がうまく機能するためには、特定の人だけに予約が集中することは、組織に亀裂を生じさせます。全員のスキルアップの機会を増やして日頃の勉強会を増やすなどの取組みが大切です。

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 日常活動に困窮している団体も多く、まさにボランティアでの活動に支えられているのが実情です。勉強会の際は会場等は自治体が無償で提供し、また、今回のような年1回の九州大会への参加については、バス代等の支援が求められます。日頃から観光客の案内やおもてなしに関わっており、その対価としては必要なことではないでしょうか。

 一方では、傷害保険を組み入れてガイド料金を収受している地域もあり、その資金でスキルアップ研修を実施している団体もあります。自己負担を減らして行く取組も必要です。

 ところで、九州観光推進機構の調査によると、首都圏女性の九州観光に対するイメージは、北海道、沖縄に比べてかなり劣っています。インバウンドが伸びており、外国人の受入体制充実も求められています。

 南九州の魅力ある観光ルートを定着させるためには、県境を越えた連携が必要になっています。遠方から来る観光客は広域に回り、県境の意識はありません。これからも隣県と協調しながら誘客に努め、一方では競争して地域を磨くことも必要ではないでしょうか。ボランティアガイドさんを活用した蘊蓄のあるツアーが人をひきつけます。 

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 指宿の「篤姫観光ガイド」さんと、対岸にある「南大隅町歴史研究会」のガイドさんが相互の地域の視察や勉強会を開くなど連携し、船上でのガイドも努めています。九州本島最南端の佐多岬への道路が無料化されたこともあり、観光客が増えていますが、アクセスが不便なこともあり、相互で案内することで観光客の利便性を図っています。

 霧島市、曽於市、湧水町は、隣県のえびの市、小林市、都城市、高原町の7市町村で「環霧島会議」を設立して、「霧島山」をキーワードに、市・町境や県境を越えて連携し、環境、観光、防災等に関わる様々な施策・事業について、お互いに知恵を出し合い、共通する課題や目的に向かって協働することにより、地域活性化を目指しています。周遊列車を運行する等の取組が成果を上げています。

 ところで旅行エージェントの南九州方面の旅行は、2泊3日のコースが一番多く、2県を回る企画が大勢を占めています。宮崎空港から日南海岸~霧島~鹿児島市内~南薩~指宿~鹿児島のコースや九州自動車道を利用して人吉~霧島~桜島~鹿児島~知覧~指宿のコースが人気です。いずれも県境を越えて広く回ります。地域から地域へ、ボランティアガイドさんの語りが観光客を楽しませます。東九州自動車道が開通し、北九州方面からの新たな観光ルートが魅力です。

 ボランティアガイドの九州大会は一巡したこともあり、今年から新たなスタートとなります。県内には51団体、928名のボランティアガイドさんが登録しています。数年後に鹿児島大会が巡って来た時は、温かいおもてなしの心で迎えたいものです。皆さんもボランティガイドさんの案内で、地域を巡るツアーに参加して下さい。地域住民が地域の魅力を知り、語ることが地域の発展に求められます。

        けふもまた こころの鉦(かね)を うち鳴らし 
                うち鳴らしつつ あくがれて行く
                    ~若山牧水~ *牧水は現在の延岡市生まれ

No.346 プロサッカーのキャンプ誘致を地域活性化に活かそう~今年も鹿児島ユナイテッドFCの支援を~

2015年1月26日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

       君ならで 誰にか見せむ わが宿の 軒端ににほふ 梅の初花
                                   源実朝 ~金槐和歌集~

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 大寒が過ぎ、あぜ道には「ふきのとう」が芽を出し、開聞山麓では黄色い絨毯を敷いたような満開の菜の花畑に、薩摩富士と呼ばれる開聞岳が一段と美しく映えています。「菜の花マラソン」と「菜の花マーチ」が開催され、全国から訪れた参加者が一足早い春を楽しんでいました。

 奄美大島では、ヒカンザクラが満開となり、「奄美観光桜マラソン」が2月1日に開催されます。出水平野に越冬していたツルの北帰行が昨季より16日早く始まり、鹿児島は春近しという感じです。

 プロサッカーのキャンプインです。県内では韓国のチームを含めて、昨年より4チーム増の18チームが、鹿児島市、霧島市、指宿市、薩摩川内市、さつま町でキャンプを張ります。Jリーグのジュピロ磐田、清水エスパルス、浦和レッドダイヤモンズ、柏レイソル、京都サンガFC等が永年にわたり県内でキャンプを行っています。鹿児島市の友好都市である松本市を本拠地とする、「松本山雅FC」がJ1に昇格しましたが、今年も鹿児島でキャンプを行います。

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 宮崎県ではJ1、J2,J3合わせて21チームが県内各地域でキャンプを行います。今年初めてJリーグ開催に先がけて、宮崎、鹿児島でプレシーズンマッチの新規大会「ニューイヤーカップ」の開催が決定しました。鹿児島では、J1浦和、清水、J2磐田、熊本の4チームによる総当たりで競います。

 プロリーグの試合が複数見られることは、鹿児島では珍しく例年になく賑わうのではないでしょうか。サッカーのキャンプ地としては、宮崎県と鹿児島県が定着してきた感があり、観光客誘致に活かせばなりません。

 プロチームがキャンプを行うことは、地域に大きな経済効果をもたらします。選手の宿泊、飲食に伴う費用は大きなものがあり、また多くの取材陣が訪れます。キャンプ地レポートとして定期的に全国に放送されることから、知名度アップにもつながります。週末には一流選手のプレイを見るため県外からのファンや観光客が訪れます。キャンプを受け入れている地域では、最大限の歓迎を持って受け入れる体制づくりが求められます。

 また、プロの選手は、練習後や休日には街に出かけたり、ゴルフを楽しんだりします。キャンプ期間中は、練習だけでなく、キャンプ地の住民との交流会やサッカー教室等を開くなど交流を深めています。キャンプしているチームには、郷土出身者もいます。親子で出かけて、日ごろはなかなかできないふれあいを深めることがチームにとっても大きな支えとなり、ファンづくりとなります。

 鹿児島県は子供の頃からサッカー熱が高く、高校サッカーの全国大会では、優勝、準優勝校を輩出しています。また、ワールドカップに出場し、日本チームの司令塔である遠藤保仁選手は桜島町の出身であり、先日から始まった「アジアカップ」でも大活躍しています。ヨーロッパのチームでは、南さつま市出身の大迫勇也選手が活躍しています。彼に続く選手が生まれることが期待されます。

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 昨年JFLの鹿児島ユナイテッドFCが誕生し、年間で第3位と健闘しました。J3、J2、J1とチームのJリーグへの昇格には時間を要しますが、今年も昨年以上の支援体制が必要です。特に鹿児島でのゲームでは応援に出かけて欲しいと思います。そのことがサッカーファンの増加につながり、応援ツアー催行、物販の販売等地域に経済効果をもたらすことにつながります。

 ところでプロサッカーチームのキャンプを増やすには、冬芝の完備されているグランドが不可欠です。県内には自治体や学校の統廃合で遊休地となっているグランドが多くあります。ぜひ冬芝の育成に取り組み、プロを呼べる施設を作り上げて欲しいものです。5年後には国体や東京オリンピックが開催予定であり、事前キャンプ等の誘致には欠かせない条件です。県内には豊富な温泉が湧き、練習後の休養には最適な地域が多くあります。官民あげてのキャンプ誘致活動が求められます。

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 春休みになると、関西や福岡県からの学生のスポーツ合宿団体が多くなります。特に関西地域からは、「さんふらわあ」を利用して多くの学生が訪れます。自治体の支援制度や大隅地域の利便性が合宿の誘致に役立っています。鹿屋体育大学との連携も重要になっています。

 鹿児島が誇る温泉、食の魅力、練習会場のPR、おもてなしの心の醸成、宿泊に対する自治体の補助制度の充実を図り誘致を強化しなければなりません。

 最後に県観光課では、「キャンプ地めぐりスタンプラリー」を実施しています。チームグッズやキャンプ地の自治体の特産品が当たります。今年はキャンプ地を訪ね、観光地巡りや温泉に浸る等地元の人にも触れる機会をつくり、鹿児島の魅力を再認識してください。春はそこまで来ています。              

                      早春賦
             作詞:吉丸一昌 作曲:中田章
       春は名のみの  風の寒さや  谷のうぐいす  歌は思えど
       時にあらずと  声もたてず  時にあらずと  声もたてず
                          *歌の舞台は信州安曇野です。

No.345 鹿児島のラーメンの魅力とは~地域で愛され続ける食べ物に~

2015年1月19日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 日本人が好きな食べ物の一つにラーメンがあります。どんぶり一杯に作り手の想いが込められ、又食べたくなる後味の良さ、それがラーメンの魅力です。

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 1週間に一度は必ず昼食として食べる人、宴会の後の締めとしてお気に入りの店に立ち寄る人、出張先で必ずご当地のラーメンを探して食べる方等、日本人はラーメンファンが多いのではないでしょうか。


 市場や屋台などで食べることができ、地域の生活を感じることができる食べ物です。ラーメンの特集を取り上げている情報誌もよく見かけます。こだわりのスープが話題となって行列のできるラーメン店がありますが、その経営者はまさにラーメンづくりに命を懸けているように感じます。

 ところで鹿児島は10万人あたりのラーメン店の数は、山形、栃木、新潟、秋田県に次いで全国第5位で、九州ではNO1です。鹿児島のラーメンには、地域の特産品を活用して新たに開発されてものもあり、薩摩川内市のきびなご、いちき串木野市のマグロ、加世田のかぼちゃ、志布志のハモ、枕崎のかつおラーメン等です。いずれもそこに行かなければ食べられないラーメンです。

 全国的には、札幌ラーメンや福島県の喜多方、九州の博多、久留米、熊本ラーメンが有名ですが、鹿児島のラーメンはまだまだ知名度が低いのではないでしょうか。
 鹿児島のラーメンは
① 茶うけに食べ放題の漬物が出され店が多くあります。
② 太い麺が多く、料金は他県に比べて少々高めの設定です。
③ スープは半濁でにごっているものが多く、キャベツ、もやし、メンマ、しいたけ等具が多いことがあげられます。

 従来から鹿児島の食と言えば、黒牛、黒豚、黒さつま鶏、クロマグロ等に代表される黒シリーズやカンパチ、うなぎ等を主としてPRしてきました。今後はB級グルメとしてもっとPRをしていきたいと考えています。

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 この度県内の民放局が主催する「第1回鹿児島ラーメン王決定戦」が、実施されることになりました。前段として、県民10,000人アンケートによる上位30店舗を発表するイベントが開催され、観光に活かすべくコメンテーターとして参加しました。

 県内各地域で集めた様々な人のアンケート結果により30店舗が選ばれましたが、小生はその中で13社のラーメンしか食べたことがなく、鹿児島のラーメンの広がりを感じました。また、故郷の志布志から1社が15位以内に入り、よく行く店であるためホッとしているところです。

 来る2月21日(土)~22日(日)鹿児島本港区のウォーターフロントパークで、上位15店舗が出店して、来場者による投票で第1回の鹿児島ラーメン王が決定します。本大会にも「ラーメンデーターバンク会長 大崎裕史」さんも参加されますが、アンケート調査で選ばれた上位15社が一堂に会することは、他県でも例のないことで多くの来場者で賑わうのではないでしょうか。第一回鹿児島ラーメン王決定戦を契機として、県民が鹿児島のラーメンの魅力を再認識する機会になることを期待しています。

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 鹿児島はラーメンスープの素となる豚や鶏の全国屈指の生産県であり、味に対しての評価は高いものがあると思います。また、干シイタケ、煮干し、昆布、かつお節、野菜などからも出汁をとっています。その手法はマル秘としている店が多いのも事実です。

 各地域に永年にわたって支持されているラーメン店があります。40年前のことですが小生が大学生のころ、アルバイトの帰りに先輩が「ごはん付きで100円のラーメン」をおごってくれましたが、その美味しかった味を忘れません。今でもその店は天文館で営業を続けており、夜遅くまで酔客が訪れているのを見ると多くのファンに支えられている店だと感じます。

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 名山町の産業会館の近くには、昼になると行列ができるラーメン店があります。経営者の「いらっしゃいませ」の明るい笑顔が何よりも入りやすい雰囲気を作っています。「おもてなしの心」が伝わり、デパート帰りの買物客やサラリーマン、離島帰りのリュックを背負った観光客の姿も見られます。皿一杯のお漬物が、ラーメンが出来上がるまでの時間の長さを忘れさせてくれます。

 今年秋には「第30回国民文化祭」が県内全市町村で開催され、全国から参加者が集まります。各地域で鹿児島のラーメンを食べる機会を提供していただきたい。新幹線全線開業から3年10ヶ月経ちますが、食の魅力が観光客誘致につながっています。最近では、鹿児島に替え玉が特徴である博多ラーメンも進出し、競争も激しくなっています。気軽に食べられるラーメン店が近くにあることは観光客の楽しみの一つです。

 最後に、県内には103の焼酎の蔵元があり、銘柄は2,000種類を超えています。ラーメンも地域の皆さまに愛され続けて欲しいと思います。今回の決定戦は、桜島が望めるすばらしい場所で開催されます。多くの方が会場に足を運んでいただき、大会を盛り上げていただきたいと思います。

No.344 地域創生に求められるもの ~地域資源を活用し、新事業の創出と雇用拡大を~

2015年1月13日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 昨年の総選挙で自民党が圧勝し、安倍政権が再スタートしました。政策の目玉に地域創生を掲げており、人口減に苦しむ地方にとっては待ったなしの重要課題となっています。

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 日本創成会議が発表した将来の人口推計によると、2040年までに人口の再生産を担う20~39歳女性の割合が5割以下に減り、「消滅」の危機がある自治体が全国で約896あり、県内でも43の自治体のうち30の市町村がその危機にあると予測しています。

 地域の人口減に一定の歯止めをかけるためには、地域資源を活用し、新事業を創出して「若者の雇用拡大」による定住人口の確保や、Uターン・Iターン者などの受入拡大が不可欠となっています。

 鹿児島県は、28の有人の離島があるなど南北600キロにも及びます。県の基幹産業は農業と観光ですが、農業は後継者不足等もあり地域の人口減少に歯止めがかからないのが実情です。農・水産業の6次産業化を進め、定住人口を増やす取組が求められています。 

 人口減が進む自治体の中で、若者が比較的に多い離島の2つの町を紹介します。

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 はじめに奄美群島にある「龍郷町」です。龍郷町は県全体で、20代~30代女性の減少率が一番少ない町です。奄美空港と奄美市中心部との中間にあり、島外に行くには便利な距離に位置しています。観光的には美しい海岸線に恵まれ、手広ビーチは日本有数のサーフィンの聖地です。西郷隆盛が幕末に3年間過した家が残されており、歴史ファンが訪れます。

 また、秋名集落で開かれる「ショチョガマ」、「平瀬マンカイ」は、山と海で同日に奉納される神聖なアラセツ(新節)行事で、南方文化を色濃く反映した祭りで必見の価値があります。龍郷町には都市圏から若者が移り住み、マリンスポーツ、エコツアー等の会社を立ち上げ、観光客相手の体験メニューを提供し、ペンションやレストランを経営して生活を営んでいます。

 隣接する奄美市の奄美空港は東京や成田、大阪等大都市圏と結ばれており、そのメリットを活かして、人・もの・情報の交流をすすめ、翻訳業務やIT関連のプログラム作りなどの事業を立ち上げている起業家もいます。インターネットの普及により、活動の場が必ずしも都会でなくても地方でも可能となっています。

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 大都市圏での通勤時間や事務所維持費等を考慮すると、交通アクセスに恵まれた地域に仕事場があることは、定住しやすい環境にあるのではないでしょうか。冬でも温かい地域であり「2地域2居住」を推進することで、人口減対策にもなります。

 奄美群島は「琉球・奄美」として世界自然遺産の暫定リストに登録されており、2017年度中の正式登録を目指しています。登録後は多くの観光客が訪れるものと予想され、新たなビジネスが生まれるものと思います。若者の雇用拡大が期待され、立地条件を活かした取組が人口増につながります。

 次に世界自然遺産地域がある「屋久島町」は、龍郷町、姶良市、霧島市に次いで、20代~30代女性の将来人口減少率が少ない町です。今では世界からクルーズ船や観光客が訪れます。やはり世界遺産というブランドが大きな魅力となっています。日本人が行ってみたい「世界遺産」の中で第一位に選ばれており、今後も一定の観光客が訪れるものと思います。エコツアーガイド、レストラン、お土産品店、民宿経営と全国から様々な人が移り住んでいます。

 県民に意外と知られていないのが、平内地区に2005年に開校した「屋久島おおぞら高校」です。通信制の高校で年間を通して千数百人の高校生が来島し、スクーリングを受けています。屋久島という素晴らしい自然は、一度学校をやめた生徒たちの受入環境に適しています。キャンパスでは全国から集まった若者が生き生きとした姿で学んでいます。

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 卒業後屋久島で観光関連の仕事に就いたり、大学卒業後屋久島に戻ってくる学生もいます。 また、豊かな自然や温泉、安価な住宅事情が魅力となり、リタイヤした人が移り住んでいます。テレビの旅番組で放映されることも多く、これからも都市圏からのIターン者を迎え入れる魅力を持っています。

 自然環境への取組のPRや、外国語表記、通訳エコガイドの充実等を図ることで、これからインバウンドの誘致に弾みがつくのではないでしょうか。大都市圏から外国人を呼べる地域の魅力を備えており、雇用の拡大にもつなげられます。

 若者が減少していくと、活力が低下し新しい商品開発や情報発信が遅れがちになります。都会に住む大学生の新鮮な発想を地域活性化に活かすべきです。地域は大学との連携を深めることで、地域資源を活用した商品開発や販路拡大が可能となります。大学は年間のカリキュラムに、地域連携事業を組み入れることで、入学者や就職増などメリットが享受できます。

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 素晴らしい日本の地域文化を国内外の人にPRするのが、観光の役割の一つです。持続できる観光地づくりには、そこに住む人が地域の文化をしっかりと守り、住民にとっても居心地の良い場所でなければなりません。若者が観光に興味を持ち、雇用の拡大が図られることです。

 海外航空路線の拡大や円安、ビザ要件の緩和等により外国人も急激に増えてきました。FITが増加しており、外国語の案内表示、銀聯カードの拡大、WiFiの整備、免税店の拡大等改善すべき多くの課題もあります。外国人の受入態勢強化には、若者同士の交流が重要になっています。

 鹿児島では、今年「第30回国民文化祭 かごしま2015」が全市町村で開催され、全国から参加者が集まることが期待されます。地域の「文化力」が問われます。子供や若者の出番を増やし、地域の魅力を発信する機会としなければなりません。

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 最後に観光は地域の農林水産業、商業、工業、土木、建築、教育関連等多くの分野と関連があり、総合産業として位置づけ、雇用拡大につなげることが重要です。市町村を繋ぐ観光地の整備や着地型商品の充実、地域産品の充実等が、広域観光ルート定着の鍵となります。

 龍郷町と屋久島町に見られるように地域資源を活用した事業を展開し、若者が定住しやすい環境を作り、若者の雇用拡大と、交流人口の拡大につなげることが「地域創生」には不可欠ではないでしょうか。

       田児の浦に うちい出て見れば 白妙の
                    富士の高嶺に 雪はふりつつ
                               山部赤人 ~万葉集~

No.343 2015年を「明治維新150周年」に向けて飛躍の年に~鹿児島の伝統・文化をPRする機会に~

2015年1月5日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 明けましておめでとうございます。今年の干支は「未」で、動物にあてはめると羊になります。十二支の中でも牛や馬と並んで人に馴染みのある動物です。干支の由来については、未は字義が「味」(み:あじ)であり草木の果実がいよいよ熟し、丁度滋養溢れた状態になることを指しており、後に羊の字があてられました。

 羊はめでたい善良な動物であり、同じ行動を取って大勢で暮らすことから、群の漢字は羊から作られました。群れをなす羊は、家族の安泰を示しいつまでも平和に暮らすことを意味しています。 年末年始は最大で9連休となり、海外旅行や温泉地で正月を過された方も多いのではないですか。初詣に行かれて今年の幸せを祈願されたことと思います。羊の群れるごとく鹿児島の観光が順調に進むことを祈りたいと思います。

 昨年末に総選挙があり、観光業界にとってもあわただしい年越しでした。インバウンドが好調で、年間で1,300万人を達成しました。要因として、「円安」、「和食」や日本の伝統的文化財が海外に紹介されその魅力が浸透してきたこと、LCCの就航による航空運賃の軽減化、免税品の拡大、ビザ取得要件の緩和等に伴い東アジアから訪日しやすくなったことなどがあげられます。鹿児島でも、インバウンドは好調に推移しており、さらなる誘致体制の強化が求められます。

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 交流人口拡大を目指して、各自治体が誘客に努力していますが、今年の取組や課題について述べたいと思います。観光客を県内全域に広げることが、今大きな課題です。連泊やリピーター創出につなげるべく、まず次の3つの施策を展開します。


 ①主要観光地域(指宿・霧島・鹿児島)発の広域観光周遊ルートの整備
 ②源泉数全国2位を誇る本県温泉地の優位性を生かした「風呂マラソン」の展開
 ③鹿児島のNO1の観光素材である桜島の再評価と眺望スポットをめぐる「桜島七十七 景ルート」の選定を行います。  

 昨年は、拠点地域からの周遊ルートづくりのために、関係者のモニターツアーを実施して課題等を整理しました。今年は、具体的ルートの設定と商品化、PRと受入体制の充実について推進していきます。

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 地域では「吹上浜砂の祭典」が、今年も約1カ月間開催されます。告知期間もあることから、例年以上の集客が期待できます。南薩摩地域で民泊を受け入れている家庭では、「砂の祭典」見学を組み込み、生徒さん達に珍しい砂像づくりを体験させ、思い出づくりの一端を担って欲しいと思います。また、学校行事やバスツアーの企画、遠足等への売り込みも急がれます。

   入館者が3万人を超えた「薩摩藩英国留学生記念館」は今年が正念場です。近代日本の原動力となった若き薩摩人の偉業について、「明治維新」とセットでPRしていくことが、その価値を高めます。留学生にちなんだ飲料やグッズ、地域産品を活かした新たな製品開発が地域経済への貢献になります。

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 離島については、アクセスの利便性が観光客の誘致につながります。奄美空港へのバニラエアの就航は、新たな需要開発につながりました。加えてオンラインのない空港からのチャーター便を増やし、時間的短縮を図ることで旅費の割高感を払しょくできると思います。

 時間にゆとりのある熟年層にはクルーズを、若者には夏の美しい海や大学のゼミのフィールドとして売り込まねばなりません。甑島の変化に富んだ地形、種子島の宇宙センター、屋久島の世界自然遺産、「琉球・奄美」の世界自然遺産候補地等が離島の魅力を引き出すことになります。

 スポーツツーリズムの推進も求められます。スポーツ合宿は「さんふらわあ」の利便性が定着し、大隅地域が特に増加しています。今後はサッカーのキャンプ誘致も必要であり、プロが使用できるサッカー場の整備が求められます。2020年には、東京オリンピック開催が決定しており、事前キャンプ誘致等も過熱していきます。

 今年も関西地域から集約臨時列車で5,500人、筑紫地区から3,500人の中学生が訪れます。垂水漁協での餌やり体験、知覧、鹿屋での平和学習、桜島の火山・自然学習、鹿児島市の歴史探訪等が優位性を発揮しています。県内全域に、約1000軒の農家民泊の供給が広がる中で、「簡易宿所営業」の取得を強力に進めていかねばなりません。

 鹿児島市は、日本を代表する都市型観光の魅力を備えた街で、歴史、自然、温泉に加え、食の魅力が観光客の滞在を可能にしています。県都として県内全域を見据えた観光振興策が重要です。アクセスや大会設備の充実等を活かし、MICEの積極的誘致が不可欠です。アフターコンベンションの企画提案も重要であり、県内各地域の魅力が増すことが結果として鹿児島市に宿泊することになります。

 地域の隠れた観光資源の商品化には、エージェントと自治体との連携が欠かせません。着地型観光については各自治体の支援体制充実が、地域への交流人口の拡大や人材育成に繫がると考えています。一時的な観光客誘致ではなく、持続できる観光地になるべく新たな観光素材提供や情報発信が不可欠です。

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 今年の最大の関心事は「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」が、世界文化遺産に正式登録されるかです。リストに「近代化産業遺産」の鹿児島市内の5箇所が入っています。明治維新150周年と文化遺産の価値をセットでPRしなければなりません。登録後の観光客増加を見据えて早目の対策を立てる必要があります。



 10月31日から11月15日まで「第30回国民文化祭 かごしま2015」が開催されます。全市町村で開催されることから、参加者を県内各地域に呼び寄せるチャンスです。事前のPRを十分行い、それぞれの地域ならではのおもてなしを提供することが、鹿児島のファンづくりになります。各地域の「文化力」が問われる年になりそうです。

 キャンペーンの中心は、今年も最大のマーケットである関東地域や、新幹線で最速1時間17分で来ることができる福岡地区でのPR強化に努めていくことが得策と考えます。3月に北陸新幹線・金沢ルートが開通し、首都圏から北陸方面に観光客が流れると予測しています。首都圏の需要は大きく、飛行機利用の商品造成に力をいれ従来以上の販促活動が必要です。

 今後日本人の国内旅行は減少することから、外国人観光客の誘致は欠かせません。インバウンドについては上海線の利用促進やソウル線の夏場の搭乗率アップ、台湾線は宮崎線が週3便となり両県で7便体制となり、職場旅行や教育旅行の誘客対策が必要になっています。定期便の維持には双方向の集客が不可欠です。

 特に上海線については、鹿児島からの搭乗率アップが課題です。海外ではFITが増加しており、ブロガー対策や有力メディアの招聘、WiFiや外国語表記、「免税店」等の充実が求められます。インドネシア、タイ、マレーシア等ASEAN諸国からの誘客には、受入態勢やハラール認証の整備が欠かせません。

 情報化社会に対応できる新たな需要吸収の仕組みづくが必要となっています。楽天やじゃらん等とタイアップし、旬の情報提供が欠かせません。また、インターネットの普及で可視化が進む中、コンプライアンスの向上と迅速・正確な情報提供が求められます。県のホームページも刷新していますが、ワンストップで県下の情報が入手できるように、さらなる改修も求められます。

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 今年は土曜日を入れた3連休以上は6回で、昨年より少なくなることから旅行需要を喚起する取組を各機関自ら早目に展開し、季節感あふれるオンリーワンの情報発信が必要です。周辺市町村の祭りや、花、食、伝統行事等を組み込んだ、生活・文化の香りがする商品企画が求められています。

 最後に今年のNHK大河ドラマは「花燃ゆ」で幕末の長州が舞台で、薩摩が登場する機会もあるのではないでしょうか。2016年は「薩長同盟150周年」になります。山口県と連携し、広域での誘客も求められます。

 2015年が皆様にとって素晴らしい年になりますよう心からお祈りいたします。

       わが卓に めでたく白き 寒牡丹
                   ひとつ開きて 初春はきぬ
                                   ~与謝野晶子~   

No.342 2014年を振り返る~外国人観光客が顕著に、交流人口のさらなる拡大が重要~

2014年12月22日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 今年も残り9日となりました。大型台風の襲来や集中豪雨、木曽御嶽山の噴火と自然災害に見舞われた年でした。冬季オリンピックで41歳の葛西選手の銀メダル、羽生選手の金メダル獲得や、ゴルフ界では地元鹿児島出身の15歳勝みなみ選手の史上最年少優勝の活躍など明るい話題もありました。

 選抜高校野球大会に、21世紀枠として、大島高校が鹿児島の離島から始めて選抜され、島の人々に大きな勇気を与えました。九州新幹線全線開業から3年9カ月経過し、開業効果に陰りが見える鹿児島の観光ですが、地域は必死になって誘客に努めています。2014年の取組等を振り返ってみたいと思います。

 鹿児島県全体の入り込み客は2月以降苦戦が続いていましたが、9月から回復基調にあります。県観光課が進めている「魅力ある観光地づくり事業」は、毎年10億円の予算をかけ地域づくりに貢献しており、それを活用した整備が進んでいます。

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 頴娃町地域では、官民の枠を超えた「NPO法人頴娃おこそ会」が頑張っており、定期的に会合を開き、地域づくりの勉強会や視察等を受入れています。地域づくりは、まさに人の存在が重要であると思います。


 垂水市でも、「千本イチョウ園」に加えて牛根地域の「埋没鳥居展望公園」、「宇喜多秀家候ゆかりの地」が整備されました。大隅地域は佐多岬や雄川の滝の整備が進み、新たな観光地になるのではないでしょうか。

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 北薩では、川内港から甑島へ水戸岡鋭治さんデザインによる高速観光船が就航し、多くの観光客が訪れ、ゴールデンウイーク中は昼食がとれないほど賑わいました。英国への留学生が船出したいちき串木野市の羽島には、「薩摩藩英国留学生記念館」が完成し、すでに3万人の来館者があり、人気となっています。来年が本当の勝負の年となります。


 鹿児島を訪れる観光客は、九州管内に次いで関東地域からが多いのが現状です。7月から、LCCのバニラ・エアが成田から奄美大島に就航し話題となりました。今まで羽田から1便しかなく、運賃が高くて商品企画が難しく、観光客の誘致に不便をかこっていただけに朗報となりました。

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 就航以来80%を超える搭乗率で、新たな需要開拓に繋がっています。年間を通じての誘客対策が重要です。格安航空運賃を武器に、ピーチ、ジェットスターなどが鹿児島線に就航しており、LCCの人気は定着していくものと思います。 


 着地型観光は、今まで知られていなかった地域の生活、文化、人、祭り、食等にスポットを当て、地域資源の掘り興しや人材育成等地域活性化につなげることが重要です。

 鹿児島中央駅前の「かごっまふるさと屋台村」は、来年が店舗の更新の時期であり、新たな出店も予想されており楽しみが増えます。屋台村は、25軒の個性あふれる屋台と1軒の焼酎専門店が軒を並べます。店は小規模ですが家族的な雰囲気が味わえるのが特徴で、鹿児島の食文化を堪能できる場所としての魅力が浸透し、外国人も多く訪れています。地域づくりのヒントになる施設です。

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 また、指宿枕崎線の観光列車「指宿のたまて箱」は、好調を維持しています。地域の皆様方が観光客に手を振るなど温かいおもてなしが評価されています。大雨によるがけ崩れに列車が巻き込まれる事故が発生しましたが、近くの指宿商業高校の生徒さん達が機敏な対応を行い、負傷者の救護にあたりました。



 日頃からの訓練と、おもてなし心が活かされ、乗客から多くの感謝の声が寄せられました。献身的な行動に対してJR九州より表彰を受けました。地域でのおもてなしの心が確実に醸成されつつあります。

 種子島宇宙センターから「はやぶさⅡ」が打ち上げられ、多くの見学者が訪れました。6年後の帰還に夢がふくらみます。屋久島は、JTBの調査で、日本にある世界遺産の中で日本人が一番行きたい場所に選ばれ、今後の誘客に弾みがつきます。

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 2回目の「鹿児島カレッジ」では、若者の意見を商品企画に活かすべく現地研修会を実施しました。今回は「教育旅行」をテーマにしており、新鮮なアイデアが寄せられています。今後関西、中国地域からの新たな教育旅行の商品として期待されます。


 教育旅行の誘致は確実に成果が上がっています。JR西日本とJR九州による修学旅行専用列車の設定がなされ、関西地域から34校、5,500人、筑紫地区から23校、4,520人の学生が利用しました。

 体験する農家民泊も順調に伸びています。県内で受入可能な家庭は約1000軒にもなり、県全体に広がっていることがあげられます。民泊について提起されているのがコンプライアンスです。農家民泊先進地の長崎県の松浦地区は、年間50,000人の受入を行っていますが、ほとんどの農家・漁家が「簡易宿泊所営業の許可」を取得しています。旅館業法で定められた許可を取得することが学校の信頼を得ることになります。

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 修学旅行は、一度に多くの生徒が動き、不況時でも実施され、取消しがなく、受入機関にとっては経営の見通しが立てられるなど安定した顧客といえます。今後は、バス料金のアップが予定されており、行先変更も考えられます。旅費の上限を考慮すると、佐賀県や山口、広島地域からの誘致に力を注ぐ必要があります。マリンスポーツの体験メニューの充実も求められます。

 また、学生のスポーツキャンプ・合宿を誘致すべく、福岡、大阪、京都でセミナーを開催しました。学生のスポーツ合宿は、宿泊施設や運動施設等の条件が厳しくなく、十分に練習時間が取れ、夜遅くまで使える施設が整っていることがあげられます。

 大隅地域は「さんふらわあ」利用による関西からの誘客がしやすく、支援策等も充実しており人気が高まっています。廃校となる高校跡地にスポーツキャンプの新たな構想がまとまり、誘致に拍車がかかるものと思います。

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 販促活動は、需要の多い首都圏対策が重要と捉えています。また、鹿児島市、霧島、指宿の3拠点地域から県内に広げる取組が必要であり、関係者によるモニターツアーを実施しました。北薩、南薩、大隅、離島地域とのさらなる連携も重要です。


 県民の方々が、それぞれの地域の魅力を語ることで観光の広域化が可能となり、持続的に観光客が訪れる「観光立県鹿児島」の確立に繫がるものと思います。地域・ふるさとに愛着を持つ人をどれだけ創るかが求められています。

 インバウンドは香港線の就航、宮崎~台湾線の増便、円安、免税品目の拡大等で追い風となり、過去最高の来訪者数となっています。官民あげて誘致策が効果をあげています。今年も韓国、上海、台北、香港、シンガポール、マレーシア、タイへ官民一体の誘致セールスを展開しました。他県と違う多様な観光資源の魅力を発信するため、メディア事業者の招聘を強化する必要があります。

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 エージェントの選択、招聘事業の絞込み、需要層にあった支援体制が必要と感じます。今後も国内旅行の大幅な伸びが期待できない中で、インバウンドの推進にあたっては、継続した人脈作りの重要性を感じています。日本全体で2014年は、1、300万人を達成すると予測されています。鹿児島でもさらなる誘客態勢が望まれます。

 市場におけるインターネットの利用は拡大して、しかも急速な変化も見られ、ネット販売は勢いを増しています。スマホ、タブレットPC、facebook等は旅行ツールとしての重要性が高まり、県のホームページの改修も定期的に実施しています。改修後のアクセス数は1日8,000件を超え140%の伸びとなっています。

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 2015年の「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」の世界遺産登録や「第30回国民文化祭・かごしま2015」の開催に向けての準備が着実に進められています。鹿児島の文化遺産を県民が学び、伝える機会にしなければなりません。

 2016年は薩長同盟150周年、2018年は明治維新150周年と続きます。鹿児島の歴史を再認識させる取組も大切です。鹿児島ゆかりの人物や歴史を題材にした大河ドラマや番組の制作を要望するため、官民一体で定期的にNHKへの働きかけを行ってきました。メディアの観光への波及効果は大きく、年間を通してしかも県全体に及ぶことです。

 2015年のNHK大河ドラマは「花燃ゆ」で、幕末の長州が舞台となることから、薩摩も関連があり、登場する機会が多くなるのではないでしょうか。観光客は西の方に向くことが予想されます。

 最後に今年も毎週コラムを配信でき、通算342号となりました。1年間ご支援いただき心から感謝申し上げます。ありがとうございました。来年は1月5日からスタートします。皆様良いお年をお迎えください。

            初雪や 水仙の葉
                      たわむまで
                             ~松尾芭蕉~

No.341 「先用後利」の精神 ~富山の薬売りの心に学ぶ~

2014年12月15日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 今年は日本列島例年になく冬の訪れが早く、北国から大雪の便りが届きます。雪の少ない鹿児島でも、慌ててストーブを出した家庭も多いのではないでしょうか。私の故郷大隅半島は鉄道が廃止され、今では車が移動の手段です。小学生の物心ついたころ、大きな袋を抱えて、年に数回家を訪問する薬売りのおじさんを良く見かけました。



 箱から薬を出して畳に並べ、在庫を数え少なくなった種類の薬を確認し、新しいものを箱に詰めている様子が印象的で、子供全員で取り囲んで見ていました。薬屋さんが最後にくれる四角い紙風船をもらうのが、何よりもうれしかったのを覚えています。空気を吹き込み破れるまで遊んだ経験をお持ちの方が多いのではないでしょうか。体の具合が悪いとすぐ箱から薬を取り出して、母親が飲ませてくれました。

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 富山の薬売りは、「越中売薬」と言われ、300年以上の歴史があります。医者が少なく、交通機関もない江戸時代から全国津々浦々を回り、貧富の差を問わず家に薬を置かせてもらっていました。しかもくすり屋さんは、「先用後利」という考え方に立ち、「先に使ってもらい、使った分だけ後で料金をいただく」というシステムです。

 まず、各家庭を訪ねて薬の箱を置いてもらう。この時点ではお金はいただかない。箱には「風邪薬、塗り薬、腹痛の薬、虫下し、傷薬、赤チンキ等」が入っており、緊急の際大変役に立っていました。数か月後、また、薬を置いた家庭を一軒一軒訪ねてまわり、使った分の薬代を払ってもらうシステムでした。信頼関係、助け合いの精神がなければ成り立たない商売です。

 苦しかった時代に農家の方々を励まし助けたエピソードが残っています。昭和の始めの頃、北海道が2年続けて凶作に襲われ、農家は大きな被害を被りました。苦しかったのは農家だけでなく、「富山の薬売り」にとっても大きな痛手となりました。

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 くすりの入れ替えに農家を訪問しても、凶作で十分食事も取れてない家庭もあり、子供たちの顔を見ると、とても代金は取れない心境になり「お金のことは心配せずに、病気になったら薬を飲ませて子供を元気にしてください。私は富山に帰ったら畑や田がありますから大丈夫です。」と新しく薬だけ補充して帰って行ったといいます。

 農家の人を励まし、笑顔を絶やさず、「越中おわら節」を唄いながら村を歩き、中には富山からお米を取り寄せ、袋に少しずつ分けて配って歩いた薬売りもいました。厳しい時代には富山の自分の畑や田を売って薬売りの仕事を続けた方もいたと言います。

 その後北海道は、大豊作に恵まれました。それまで滞っていた薬代が、一度に回収できるようになり、薬屋が宿泊している宿まで届ける農家の方もいたと言います。また、「他の支払いを後回しにして、薬代を先に払わなければ」と恩義を感じて、雪解けを待ち続けた家もあったと言う。「お客様は家族同然」という強い信頼関係の構築までには、永年にわたる家庭と「富山の薬屋さん」との、琴線に触れる助け合いの物語があると思います。

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 最近はテレビショッピングが盛んで、薬、健康器具、食品、電気製品、衣類等ほとんどの品物が電話一本で買えます。「効果抜群」、「30日以内は返品自由」、「今電話いただいたらプラス1本サービス」等巧みな言葉に引きこまれ、製品を購入している方も多いと感じます。

 購入は本人の自由判断であり、止める理由もありません。しかし「富山の薬売り」と比べると、心の通い方が全然違います。直接会って商売することと、効率よく電話で注文を取ることの違いだけですが、「富山の薬売り」は、直接目の前で説明されることで安心感と信頼関係が生まれるような気がします。永年顧客から信頼されている企業は、なるほどと言う取り組みが定着しています。160年の歴史を誇る老舗の菓子屋さんは、お釣りは必ず新札で渡します。

 日中国交回復に貢献した故田中角栄首相の心を動かしたのは、中国の故周恩来首相が指示して出した新潟県柏崎市の味噌と言われます。

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 田中首相が訪中した折、田中首相の好みを事前に調べ、徹底的に研究し、首相の好みの天保2年創業の「越後みそ西」の、田舎みそを使ったみそ汁を朝食に出したところ、本人が大感激し、周恩来さんの気配りに心を動かされ、交渉がスムーズに進んだと言われています。

 これからの企業発展には、経営者の「志」が反映され、「オンリーワン」、「ファ―ストワン」の商品を提供し、商品のストーリを語ることが勝ち残る条件になると思います。

 「富山の薬売り」の信頼関係構築に学ぶことが多くあります。成熟時代を迎え、物が売れにくい環境にありますが、顧客との信頼関係を構築することで、価値の高い「こだわりの品」が売れる時代ではないかと思います。
                            参考:おもいやりの心:木村耕一著

          薬のむ ことを忘れて 久しぶりに
                    母にしかられしを うれしと思へ(え)る
                                    ~石川 啄木~

No.340 商品と地域のブランドづくりに必要なものとは~差別化、品質保証、優位性、住民への浸透がかぎ~

2014年12月8日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 日本の各地域が交流人口拡大につなげようとブランドづくりに努力しています。ブランドづくりの方策として、商品開発や魅力あるまちづくり等があげられます。地域が「世界遺産」に登録されると知名度は一気に上がり、ブランド化が取り組み易くなります。

 ブランドの語源は、ヨーロッパのアルプス地方で行われている羊や牛などの家畜に押す焼印(BURNED)に由来すると言われています。他人の家畜と区別するために使われ、現代では他の類似品との違いを明確にするために使われています。

 ブランドとは、他との比較において優位性を認める記号であり、かつその記号に象徴される世界観であると定義されます。ブランドは生活者の心の中につくられるもので、認証マークやネーミングを作り、商品に付けたとしてもブランドが作られるものではありません。

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 地域ブランドとは、地域発の産品・商品・サービスのブランド化と地域のイメージそのもののブランド化(統合された地域ブランド)が相互に作用しあって形づくられたものです。屋久島や尾瀬、富良野など特徴のある自然・景観を有する地域は、地域イメージから新たな商品を生み出し、経済的効果の創発も可能となります。



 地域イメージの特徴の薄い地域では、地域の商品やサービスを開発することで、地域そのもののイメージのブランド化を図ることが可能となります。一度形成されたブランドも常に新しく変革して行かねば、生活者の心の中に留まることはできません。

 地域をブランドすることで得られる効果も大きいものがあります。他の地域と明確に違う優位性を確保できれば、「商品」は高く販売でき、多くの利用者が集まることになります。軽井沢や神戸、湯布院が良い例です。

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 継続して価値を創造し、地域ブランドを拡張していくことで、地域の商品への波及効果も大きくなります。地域をブランディングすることは、消費者から選んでもらえる地域にもなることです。他の地域ない優位性や独自性を発信し続ける努力も必要です。

 また、地域をブランディングすることで地域住民が地域に誇りと愛着心を持つことにも繋がります。来訪者の増加にもつながり、地域経済への波及効果も大きくなります。

 日本各地で地域資源を活用してブランド価値を高めている町を紹介します。町並み保存では、福島県の「大内宿」、愛媛県の「内子町」、南九州市の「知覧町」等があります。国の重要伝統的建造物群保存地域がその代表的な例です。

 大内宿には、かやぶき屋根の古民家が並び、訪れる人が参勤交代の途中の宿に立ち寄る雰囲気に浸ります。3つの地域に共通していることは、看板の制限や古民家の保護、生垣や庭園等が整備されているのが特徴であり、小奇麗な町並みが保全されていることです。歴史的遺産を地域住民がきちんと守ってきたことが、地域ブランド化を図ることに結びついていると感じます。

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 生態系の保護地区では、釧路湿原、尾瀬沼、四国の四万十川、屋久島等があげられエコツーリズムの推進には最適な地域です。JTBが調査した「日本人が行きたい世界遺産地域」として、屋久島が第一位に選ばれました。

 屋久島の住民は、世界自然遺産の島に住んでいることをもっと誇りを持っていいのではないでしょうか。四万十川は清流がブランドであり、尾瀬沼の景観は、「夏の思い出」の唱歌にでてくる自然が人々を惹きつけます。

 「奄美・琉球」が世界遺自然産に登録されると、奄美ブランドとしてその魅力が世界中に発信され多くの観光客が訪れるものと思います。外国語表記の充実、通訳案内人の養成、おもてなしの心の醸成等がブランド価値を高めます。

 民話・伝統芸能も地域のブランドづくりに欠かせません。岩手県の遠野市は、柳田国男の「遠野物語」で紹介され、「民話の里」として有名になりました。市民演劇も開催され、日本の原風景に憧れ多くのファンが訪れています。

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 富山市八尾町の「おわら風の盆」は、越中おわら節の哀切感に満ちた旋律にのって、町の道筋で無言の踊り手たちが洗練された踊りを披露します。哀愁のある音色を奏でる胡弓の調べなどが観光客を魅了します。元々旧八尾町の町内の住民が大切に守り育んだ民謡行事です。9月1日から3日にかけて行われており、今では25万人もの観光客が訪れます。 

 町の踊りが、全国的に有名となり、富山県を代表するブランドとして人気が高まっています。高山市、金沢市等近隣の県まで宿泊客が及びます。

 「東北4大祭り」、「京都3大祭り」、奈良「東大寺2月堂のお水取り」、「博多どんたく」、「徳島の阿波踊り」、「高知のよさこい踊り」、「長崎おくんち」等ブランド力のある祭りがありますが、地域の生活文化に根差して全国的に人気が定着していることがブランド価値を高めています。

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 約300年前から伝承される薩摩川内市の「東郷文弥節人間浄瑠璃」は、国内で4か所にのみ伝承される貴重な伝統芸能です。もっと出演の機会を提供し、日本の伝統文化を引き継ぐ若者を養成するなどして大切に保存して行く努力が求められます。そのことがブランド化に繋がるのではないでしょうか。



 商品のブランド化には、品質保証、差別化、優位性、地域住民にも浸透していることが不可欠です。わが町をブランド化するには、本物のストーリー性を持った商品展開と継続した情報発信ができる態勢づくりが重要ではないでしょうか。
             参考:旅のもてなしプロデユーサー技編 ぎょうせい

    津軽の雪
         こな雪 つぶ雪 わた雪 みづ雪 かた雪 ざらめ雪 こほり雪
                              ~太宰治の小説『津軽』から~

No.339 国内外からの交流人口をいかに増やすか~地域総力戦で誘客を~

2014年12月1日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 今年も残り1カ月となりました。衆議院の解散で、12月14日投票日となり、年末商戦をひかえて、旅行需要が停滞することが想定されます。後半の忘年会旅行等を取り込まねばなりません。

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 ところで、2011年に国立社会保障・人口問題研究所が発表した県の総人口将来推計は、2010年と比較して2031年には25万2千人減少します。人口減少に伴う県内消費額は20年間、毎年約152億円も減少していきます。


 また、「日本創生会議」からショッキングな調査データも発表されました。子供を産む年代の若者女性の数が、2040年には 10年と比較すると、県内の30市町村で半減すると指摘しています。地域別将来推計人口が公表され、大きなショックを受けた方が多いのではないでしょうか。消滅する市町村も想定されるなど人口減少は、今深刻な課題を我々に突き付けています。

 観光庁の試算によると、定住人口の1人当たりの年間消費額(124万)は、旅行者の消費に換算すると外国人旅行者10人分、国内旅行者(宿泊)26人分、国内旅行者(日帰り)83人分にあたるとしています。『観光交流人口増大の経済効果(観光庁:2013年試算)』

 少子高齢化と人口減少に対応し、地域の活性化には持続的な交流人口の増大が不可欠となっています。

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 ところで、JNTOから外国人の入込客の速報値が発表されました。1月~10月までの国全体の累計では1,100万9,000人となり、すでに昨年の年間実績を上回っています。このままで推移すると、1,300万人に達すると上方修正しています。

 好調の要因として円安効果、入国ビザの緩和、LCCの就航、免税品目の拡大、和食や祭り等伝統的日本文化の魅力が浸透していることなどがあげられます。本県においても外国人の宿泊客は20%以上の伸びとなっており、今年は過去最高の外国人が訪れるものと思います。

 このように市場環境の変化を考えると、地域は国内外を問わず積極的に交流人口拡大を推進する必要に迫られています。地域資源を活用して、県外か県内、海外、教育旅行等、わが町にどの地域からどのような需要層を誘客するのか、具体的な対応を講じていかねばなりません。観光のスタイルも変化しており、それに対応できる地域づくりも求められます。

 まず団体旅行から個人旅行の流れが顕著となり、個人旅行が全体の7割となっていることから、駅や拠点地域からのルート整備が不可欠です。鹿児島市はシティビューが運行され、観光地巡りには事欠きません。地域に於いて周遊バスの運行は、経費の面で難しい面がありますが、拠点地域や駅と連動した送迎バスの運行、レンタカーやタクシーの常駐など利便性の確保が重要です。

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 また流通構造が変化しており、予約行動にも大きな変化をもたらしています。インターネットはすでに日本人の約8割が活用しています。宿泊施設では空室状況が検索でき、直接予約できるシステムの構築が必要であり、それに対応できる人材の配置が不可欠です。

 観光協会、地域おこし団体等では、ホームページの日々の更新等が求められます。鹿児島県観光サイト「本物。の旅かごしま」には毎日約8,000人のアクセスがあり、前年比で140%の伸びとなっています。

 観光のニーズも変化しています。名所旧跡巡り、宴会を主とした狭義の観光から生活、文化等地域の魅力に触れる旅へと広がっています。観光は6次産業の視点で、地域の総合産業として捉える必要があります。異業種、異分野と経済が循環することが持続できる地域となります。農業、漁業、商工業、歴史、生活・文化、住民等を観光資源として捉え、ストーリーを加えて商品化することが求められます。

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 体験・交流が顧客のニーズであり、安全・安心、本物の提供が観光客の心を捉えます。特にイベントは一過性に終わらせるのではなく、他地域と連携する等いかに継続できるかが地域ブランドとして育っていきます。指宿の「菜の花マラソン」や「菜の花マーチ」は、全国から人が集まるまでに5年はかかっています。行政頼みではなく、民間の活力、人材の育成等が継続の力となります。

 また、外国人誘致も今後地域活性化の重要な課題となります。日本人の国内旅行は、少子・高齢化でマーケットは縮小していきます。台湾、香港、韓国、中国、ASEAN諸国等からは確実に増加しています。相手国の生活・習慣を知り、外国語表記、通訳案内人の育成、留学経験者や受入外国人を活用して、地域の魅力を発信し告知力を高めることです。

 他県にない鹿児島ならではのメニュー提供が差別化となります。砂蒸し温泉、桜島の噴火、世界自然遺産、漁業体験、武家屋敷での着物や華道等日本文化体験が喜ばれます。

 最後に観光客に県境はありません。隣県や同じ観光資源を持つ競争地域と連携することも知名度が上がり誘客につながります。市町村を繋ぐ観光地の整備や着地型商品の充実が、広域観光ルート定着の鍵となります。

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 自分の町は知られていないという考え方に立って、食、特産品、お祭り等をPRして、地域のことを解り易く発信することも重要です。旅行者の満足度を向上させるためには、おもてなしの心をいかに定着させるかも問われます。


 今年は、大きなイベントもなく観光客誘致には厳しい面もありました。甑島への高速観光船運行、「薩摩藩英国留学生記念館」オープン等北薩摩地域で話題が多い年でした。2年目以降も、観光客を維持できるかはこれからの取組にかかっています。常に新しい情報の発信に努め、市民もわが町の魅力を語り伝えることが大切です。

 来年は、「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」の世界文化遺産登録目標や、「第30回国民文化祭」の開催が大きな目玉となります。交流人口拡大は地域活性化の重要課題です。ポテンシャルの高い優れた地域資源を活用し、地域総力戦で戦う時ではないでしょうか。

       「寒いね」と話しかければ
                「寒いね」と答える人のいるあたたかさ
                                   ~俵万智~

No.338 バリアフリー旅行の受入拡大がなぜ必要か~旅の感動に段差はありません~

2014年11月25日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 高齢化社会を迎えて「バリアフリー旅行」についての関心が高まっています。県と観光連盟では、かごしま観光人材育成塾の一環として、今回初めて『ユニバーサルツーリズムセミナー』を開催したところ、110名の参加者がありました。初めて知るマーケットの実態や現場の具体的取組が報告され、今後参考になる点が多く皆さん熱心に講演を聞いていました。

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 観光庁は「ユニバーサルツーリズム」について、「すべての人が楽しめるように創られた旅行であり、高齢者や障害などの有無にかかわらず、誰もが気兼ねなく参加できる旅行」と定義しています。バリアフリー旅行より広義に及び、妊産婦や子ども連れなども含めています。

   団塊の世代が退職し、老後はゆっくり旅をしたいというニーズの高まりや、健常者と障害者が安心して旅行を楽しむことができる「バリアフリー旅行」のマーケットが拡大しています。しかし住民や受入機関によって関心の度合いに温度差があり対応が遅れているのも事実です。

 今回まず、特定非営利活動法人日本バリアフリー観光推進機構の中村元氏から、現在の取組状況や今後の課題等についての基調講演がありました。講演を受けて、九州運輸局企画観光部長の榎本道也氏、特定非営利活動法人 eワーカーズ鹿児島理事長の紙屋久美子氏、霧島温泉 旅行人山荘代表取締役の蔵前壮一氏を交えてパネルディスカッションを実施しました。

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 中村氏の本業は水族館プロデューサーであり、顧客視点に立った展示や運営、及び入館したくなるプロモーションを行う等集客対策を専門とされています。伊勢の鳥羽水族館にバリアフリー対策を講じ、施設や実際見学している状況等のPRを実施したところ入場者数が大幅に増加した実例を発表されました。中村さんがプロデュースされた施設では、来館者が増加しています。

 障害者手帳を持参している人は、一人での来館は少なく同行者を含めると4人程度で来る方が多く、障害者手帳を持った方の入館者が増えると、全体の入館者増に繋がると話されました。また、障害者が観光地に行きたいとういう願望を実現するためには、健常者も同行して楽しめる環境づくりが重要と感じました。

 中村氏はバリアフリー旅行について、マーケットの需要があるのを見のがしている。また、来訪者を増やす対策としてはパーソナル基準を守り、トラブルをなくすためにも、積極的に相談センターを活用して欲しいと熱く語りました。

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 榎本部長は、バリアフリーと福祉が混同されて業務改善が進まないことや、自分が同行し世話することは困難である、マーケットは小さいと思っている人が多く、対応できる施設が増えないこと等をあげていました。


 観光庁として、全国20箇所ある相談センターを今後増やし、点から面への展開をすすめて、2020年の東京オリンピック、パラリンピックを見据えて海外からのお客様への対応も考慮しなければならないと語りました。

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 紙屋さんは実際日々バリアフリー対策に取り組んでいる中で、住民への理解不足を解消すべく情報を広げることが重要であると。また受入施設の拡大や施設の具体的表示の重要性も語りました。


 霧島温泉で人気のある宿泊施設を経営している蔵前社長は、障害者が利用しやすいように部屋に露天風呂を造り、エレベーターを増設する等受入態勢の充実に努めています。

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 また、教育の機会を増やす等ソフト面の充実にも力を入れており、障害者への言葉遣いやおもてなしの心を学ぶ勉強会を開催しています。その効果もあり、日頃受け入れている宿泊者から従業員の対応について、感謝の言葉が増えているという相乗効果も語られました。

 最近の旅行エージェントの企画を見ると、「旅をあきらめない!夢をあきらめない!」、「杖や車いすで旅を楽しむ」等バリアフリーの旅が増えています。また専門の部署を持つ会社もあります。旅行はエージェントだけでなく、鉄道、バス会社、宿泊機関やその他関係機関の協力、それに従事する職員の努力が顧客満足に繋がります。これからバリアフリーのマーケットは拡大しますが、内容の充実が求められおり、ツアーを企画する会社もその点に十分配慮して欲しいと思います。

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 前述したように、バリアフリーツアーは、物理的障害を取り除くだけではなく、情報、文化、規範、そして我々の心や考え方等様々なところに存在する「バリア」を取り除くことが、まず大切ではないでしょうか。国民の意識の中にバリアフリーツアーの考え方を理解して浸透させることが、日本においてユニバーサルツーリズムが定着できるかの「鍵」になると信じます。

 皆さまの家族、親戚、友人、あるいは周囲に、高齢者や障害を持っている方は多くいらっしゃると思います。皆さんに旅行の感動を味わせたいものです。心の中の「バリア」を取り除き、一緒に旅に出て楽しみましょう。

         小春日和の青白い光が、山麓の村に降りそそいでいる。
                    『たそがれ清兵衛』の最終章:藤沢周平

 小説の舞台である「海坂藩(うなさかはん)」のモデルは、庄内藩(現在の山形県鶴岡市が含まれる)です。鹿児島市の姉妹都市です。ぜひ桜の花が咲く頃お訪ねください。

No.337 地域資源の旅行商品化と地域全体のパッケージ化の重要性~プロモーション力をいかに強化できるか~

2014年11月17日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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おりたちて けさの寒さを おどろきぬ
      つゆしとしとと かきの落ち葉深く
                   ~伊藤左千夫~

 11月も半ばを過ぎ、朝夕の涼しさに冬の訪れが近いことを感じます。

 県の9月の観光動向調査が発表されました。(サンプル調査)それによると、宿泊客数は9月単月では0.2%の増となり、1月以来前年を超えましたが、累計では2%の減となっています。最シーズンの8月に大きな台風が来襲して、宿泊等の取消が相次ぎ観光客の減少に繋がりました。残された2カ月で減少分を取り戻すべく、積極的な誘客活動に努めたいと思います。

 今年も、これからの地域づくりや観光地づくり、観光素材発掘、商品造成、情報発信等を担う人材育成を目指し、「第7回かごしま人材育成塾」を開催しました。今回は、過去最高の120名が参加しました。

 講座の概要について簡単に紹介します。

 第1講座は、県観光交流局の五田観光地整備対策監が、「観光かごしまの現状、魅力ある観光地づくり、スポーツツーリズム」について講演しました。

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 地域の人口が1名減少すると、1年間で120万円の消費が失われて、それをカバーするためには宿泊観光客や外国人観光客の誘致が不可欠であると強調されました。また、毎年取組んでいる「魅力ある観光地づくり事業」では佐多岬の整備計画が進み、バリアフリー対策などを施し、2年後には新たな魅力ある観光地として脚光を浴びるのではないでしょうか。

 「スポーツツーリズム」について、「さんふらわあ」を活用し関西地域からの大学生のスポーツ・合宿が増加して、大隅地域の活性化につながっているという事例も発表されました。また「プロキャンプ誘致」や6年後の東京オリンピック、国体の開催をにらんだ整備、誘客態勢について戦略の一端が語られました。

 第2講座は、「株式会社まちづくり計画研究所 代表取締役 今泉重敏」さんが【まちづくり仕掛けのハウツー】について講義しました。

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 元町役場の職員を10年間経験され、今では九州における地域づくり、まちづくりの"のぼせもん"仲間のネットワークの代表世話人として活躍されています。全国に約1万人の人的ネットワークを持ち、まちづくりコーディネーターとして実践に基づいた笑いの絶えない講話でした。

 自治体の総合計画、観光ビジョン、中心市街地の活性化、過疎地活性化、校区単位のまちづくりや将来ビジョンの策定等には、住民が喜ぶ(楽しめる、求める)姿を描く必要がある。絵に書いた餅に終わらないよう、小さな成功事例を創っていくことの大切さを語りました。沿道や集落に、自ら仕掛けた人形や案山子などユニークな展示物は、観光客誘致だけでなく、住民の参画意識を育てているという話など目からウロコが落ちる心境になりました。

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 地域や商店街の活性化に向けた「笑標語」として、「笑売繁盛 笑顔の店には客・福来る」、「笑顔あふれる笑店街 上笑気流に乗る笑人の町」等「笑」という言葉を組み込んだ造語には、なるほどと感心させられるばかりでした。また聞きたい話でした。


 第3講座は、「第30回国民文化祭におけるおもてなし」でした。

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 中村朋美さんから、「おもてなし10カ条」や挨拶の仕方等具体的な手法で、参加者が眠る隙もなく、講義されていました。挨拶の仕方として「同時礼」より、言葉を発して後から頭を下げる「語先後礼」が丁寧であると、また、押すドアと引くドアではお客様の案内の仕方が逆になるなど我々が日頃気付かない貴重な話を聞くことができました。

 国民文化祭は、県内全ての市町村で文化行事が開催されることから、県全体としておもてなしのレベルアップが求められます。「おもてなしの極意」や鹿児島の観光をつなぐ示唆に富んだ話でした。

 第4講座は、日本一の鰹節の産地である枕崎市で、新たな食文化に取り組んでいる中原水産常務の中原晋司氏による【出汁(だし)による地域活性化】でした。

 いま、日本の伝統的食文化が脚光を浴びています。枕崎の漁師が船上で食べる丼飯からヒントを得た「枕崎鰹船人めし」は、県内の地域グルメのNO1を決める「Show 1グランプリ」で2年連続1位に選ばれました。

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 枕崎市の人口減に危機感を感じている中原常務は、特産の鰹節を活用して特産品の開発やPR活動、イベントの創出等地域おこしを自ら実践されています。観光客の前で鰹節を削り、香りが漂うその出汁を顧客に提供することで、安全安心をもたらし、関心を持って観光客は迎えてくれます。

 枕崎を「出汁のふるさと」にしたいと言う大きな夢も抱き、物産と観光を融合させ地域に人を呼び込み、元気にしたいと言う取り組みは、必ずや広がっていくと思います。今度指宿、枕崎線を利用して、指宿の観光協会と連携しワイン列車を走らせ、地産品のつまみ等もPRします。ローカル線を守る取組の一つにもなるのではないでしょうか。

 第5講座は、現在県・連盟のホームページについて、指導いただいている株式会社 トラベルジップ代表取締役 大泉敏郎氏による【観光業界・観光客のトレンドとWebサイト活用方法】でした。

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 大泉氏によると、10年程前は航空券のエージェントの発券率が7割を占めていましたが、現在では75%がインターネットの直接予約にかわっているとのことで、流通構造の変革が急速に進んでいることを指摘されました。大泉氏の指導により県観光サイト「本物。の旅かごしま」 も改善しており、アクセス回数は飛躍的に伸びています。

 観光客が求める情報はどこにあるのか、また見たくなるホームページのあり方について、具体例をあげて説明がありました。ホームページに掲載する情報は、正しい順位と優先順位を常にチェックする必要があると鋭い指摘がありました。地域の情報発信には、人材育成と情報の商品化、PR体制の強化が不可欠と感じた塾生が多かったのではないかと思います。

 最後の第6講座は、薩摩川内市の甑島で「地域おこし協力隊」として活躍されている関美穂子さんによる、【「ヨソの目」が地域に入ることって?~地域おこし協力隊の事例紹介~】でした。

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 地域おこし協力隊とは総務省の人材活性化・連携交流室の事業の一つです。 関さんはエージェントでの経験から、日頃より地域が主体の着地型観光に興味を持っており、薩摩川内市に採用された一人です。現在下甑島に暮らしながら、特産品開発や旅行商品の企画等に取り組んでいます。

 島の住民に地域の活性化策を理解してもらうために、自分の意見を無理強いするのではなく、どうしたらお手伝いできるか、ヨソものがもっているものが地域を元気にする契機となる思いで取組んできました。ヨソの地域に入り込むためには、お互いの差異の自覚、尊重、相互の強みをいかしていくことの必要性を強く語りました。

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 よそものの視点で捉えた甑島の観光素材を商品化し、PRして販売していくそのサクセススト-リーが聞けたのではないかと思います。甑島には、水戸岡鋭治氏設計による、観光高速船が就航し話題の島となっています。島の魅力とともに彼女の今後の活躍に拍手を送りたいと思います。

 今回受講者が増加したのは、講座の選択も可能としたことが上げられます。また、夜学塾は、参加者同志や講師陣とのコミニユケーションの場となり、講座で聞けないより具体的な話が聞けたのではと思います。

 観光のトレンドは、団体旅行から個人旅行にシフトしており、県内の宿泊機関のデータでみると7割が個人客です。そのことが翌日の行動に現れます。趣味を求めて、トレッキング、美術館・博物館・歴史資料館巡り、温泉、ショッピング、ドライブ等行動範囲も広くなり、地域の情報をWEBサイトでいかに発信できるかが重要です。

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 またエージェントへの依存だけでなく、地域主導の着地地型商品の充実も求められます。今年に入り外国人が増加しており、県全体での累計では19.9%増加しています。増便や円安効果、免税制度の拡大など追い風が吹いています。


 地域では受入態勢の整備が急がれます。大都市圏から地方への流れも一気に進んでくるものと思います。地域づくり・観光地づくりには人の存在が重要であり、地域資源を旅行商品化し、そして地域全体をパッケージ化して、プロモーションするという作り込みが必要です。

 今まで人材育成塾を受講した方の多くが、それぞれの地域で頑張っていることは、鹿児島の観光の広がりが進みつつあり、大きな財産となっています。九州新幹線全線開業から3年8ヶ月、転換期をむかえている鹿児島の観光です。この講座が人材育成とさらなる地域活性化につながることを期待しています。

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三七七八米の富士の山と、立派に相対峙し、みじんもゆるがず、なんと言うのか
金剛力草とでも言いたいくらい、けなげにすっくと立っていたあの月見草は、よかった。
富士には、月見草がよく似合う。
         ~太宰治『富嶽百景』から~

No.336 癒しの旅のおすすめ~LCCの就航や割安運賃で気軽に行ける奄美の島々へ~

2014年11月10日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 南北600キロに及ぶ鹿児島県は、本土の長さより離島の長さが上回ります。県内には、28の有人離島があり、それぞれ自然の魅力や文化、歴史があり訪ねてみたい島ばかりです。それぞれの島には定期船が通っていますが、アクセスが十分とはいえない島もあります。

 しかし、あまり行けない島だからこそ都会の人にとっては、行ってみたい場所になります。大陸、琉球、日本文化の接点に位置し、多彩な伝統文化、風俗、歳時、食文化などが残り、旅人を楽しませてくれます。島々は、手つかずの自然が残る貴重な島でもあり、都会の人にとっては、まさに秘境です。

 島全体を自然教室と捉えることができます。加計呂麻島の学校の校門で写真を撮っていると、ちょうど下校時間で元気な子供たちが挨拶をして帰っていく姿が印象的でした。

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 いま本土の学校では、警備上の問題から校門は閉ざされ入ることはできませんが、島の学校はオープンで、緑の運動場の芝生を無邪気に駆け回る子供と子犬の姿に、かつては日本のどこの学校でも見ることができた原風景がそこにあり、ふるさとの小学校時代に思いをはせました。

 40数年前、奄美群島への旅は船旅が主流でした。離島ブームと重なり、夏休みはリュックを背負った若者の姿がデッキまで溢れていました。

 ところで今年の7月1日、LCCのバニラ・エアの成田~奄美直行便が就航しましたが、格安運賃の導入もあり、7月~9月の首都圏からの利用客は大幅な伸びとなりました。県の観光動向調査によると、3カ月間の宿泊客数は、1,608人の増加となりました。(奄美地区9施設を対象)

 従来首都圏から奄美へは、羽田空港から日本航空が1日1便就航していました。首都圏から奄美への航空運賃は沖縄より高く、特に企画商品の価格に大きな差があり、観光客の誘致には不利をかこっていました。

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 LCCの就航は、奄美への新規顧客の開拓に繋がり、奄美の魅力を発信するチャンスとなりました。奄美大島ではホテルやレンタカー体験観光の利用者が増加して、観光需要の底上げが図られているのではと思います。11月の予約も好調ですが、これからも高搭乗率を維持してリピーターを確保するには、受け皿づくりが不可欠です。

 「奄美・琉球」は、ユネスコの世界遺産暫定リストに記載されており、2017年度中の世界自然遺産登録を目指しています。奄美地域の魅力は、生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地が含まれていることです。

 世界的にもまれな亜熱帯性降雨林をはじめ、温帯林の特徴を残す山地林から河口域のマングローブ林、熱帯性植物からなる海岸植生、砂浜からサンゴ礁までバラエティーに富んだ景観美を示しています。

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 また、沖縄と違う、どこか哀愁漂う旋律が心に響く島唄、スローフードの郷土料理、大切に引き継がれた祭りや紬工芸品、特有の方言も観光客の心を癒してくれます。在るものに神秘な力を感じる島です。代表的な行事である「八月踊り」は、太鼓の軽快なリズムに合わせて唄い、額に汗して笑顔で踊る姿にそこに住む人々のパワーを感じます。



 日本航空は、奄美群島航空・航路運賃軽減協議会が新たに実施する「奄美群島交流需要喚起対策特別事業」で東京/羽田・大阪/伊丹・福岡~奄美大島線と鹿児島~喜界島・徳之島・沖永良部・与論線を対象に、一部運賃の値下げを行うことになりました。

 東京/羽田~奄美大島線では、「スーパー先特」として片道14,700円から設定しています。(10月26日~2015年3月28日搭乗分)従来の3割程度の運賃であり、インパクトのある価格設定です。個人客がさらに増加するのではと期待がかかります。

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 LCCの就航と割安運賃の設定で行きやすくなった奄美の観光を、一時的なブームに終わらせるのではなく、年間を通じて誘客できる態勢づくりが必要です。これから奄美はシーズンオフ時期に入ることから、格安運賃で新たな需要の掘り起こしができるものと思います。

 大学生のゼミ旅行や合宿、メディア系旅行社とタイアップした趣味の会等の誘客がし易く、特に島の生活や文化にふれる旅が求められます。

 奄美は冬でも暖かく、プロ野球の秋季キャンプや陸上選手のロードの練習会場として人気があります。首都圏地域からの誘客のネックとなっていた運賃の高さや、アクセスの不便さが少しは解消されるのではないでしょうか。

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 また、春先になると、本土では花粉症に悩む人が多くなります。奄美大島は花粉症の原因である杉が少なく、避癇地としての魅力を発信することが求められます。都会の人々には、2地域2居住をすすめたいものです。

 地域の伝統文化である八月踊りや島唄ライブの実演を体験できる会場の確保も求められます。これまで個別の島で実施していた宣伝活動は、「奄美ブランド」定着を目指し群島全体の情報として発信を強化しなければなりません。

 今日本は外国人旅行者が急激に伸びており、大都市圏ではバスや宿泊の確保、不法駐車、渋滞等様々な課題が露呈しています。奄美は「世界自然遺産登録」が実現すると、クルーズ船の寄港等で多くの外国人観光客の来島が予測されます。外国語教育、外国語表記、食事、おもてなし等の整備も進めなければなりません。

 空港から奄美市内までの景観整備も必要です。奄美は、沖縄との差別化を図り、手つかずの自然を活かした観光地づくりが不可欠です。奄美市と空港の中間にある龍郷町は、県内の自治体の中で人口減が少なく、最近は都会からIターンしてきた若者が多くなっています。マリンスポーツやエコガイド、ペンション経営など奄美の自然を活かした事業に携わり、生計を立てている人々が多く住んでいます。

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 先日加計呂麻島の海岸で、東京から来た若者に会いました。自転車にテントと炊飯道具を積み、奄美の島々を訪ねて昼間はサイクリングしながら移動し、浜辺でキャンプを張っていると言う。海に沈む夕日を見ていると、時を忘れてしまう程感動するとその魅力を語っていました。

 訪れた人々を癒し元気にしてくれる奄美の島々を皆さま是非お訪ねください。

参考:しま旅:公益社団法人鹿児島県観光連盟

No.335 霧島連山・えびの高原(硫黄山)の正確な情報発信を~「環霧島会議」の趣旨をいかそう~

2014年11月4日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 鹿児島地方気象台は24日、霧島連山・えびの高原(硫黄山)で小規模な噴火の可能性があるとして、火口周辺警報を発表、「平常」から「火口周辺危険」に引き上げました。えびの市は24日、硫黄山から半径1キロの範囲を立ち入り禁止としました。

 宮崎県から発表された規制は下記の通りです。
1 規制の概要
 (1)規制開始日時
    平成26年10月24日(金) 午後5時 (当分の間)
 (2)規制内容
    ①入山規制(えびの市)
      硫黄山から概ね1kmの範囲
    ②県道1号(小林えびの高原牧園線)
     ・規制区間起点:小林市南西方環野 料金所跡
     (生駒高原よりえびの高原方面へ2km地点)
     ・規制区間終点:えびの高原 県道30号えびの高原小田線との交点
     ・規制区間延長:約13km
     *県道30号を利用して、えびの市から鹿児島県への通行は可能です。
    ③登山道(県、えびの市)
     ・えびの高原から硫黄山を経由して韓国岳に登るルート
     ・えびの高原から甑岳に登るルート
     ・えびの高原から六観音池及び白紫池を周遊するルート
2 その他
  平成26年10月24日午前10時:宮崎県及びえびの市に情報連絡本部を設置

 尚、霧島市では、えびの高原に至る道路に規制を知らせる看板を設置しました。今回の規制は、宮崎県のえびの高原周辺がほとんどですが、報道では霧島連山・えびの高原と報道されており、近隣の霧島温泉では風評被害等が懸念されています。

 新燃岳噴火の際は、宮崎県の高原町や都城市一帯に降灰があり、地域住民は大変厳しい生活を強いられました。噴火当時は連日マスメディアで報道されて、霧島温泉では、宿泊のキャンセルが相次ぎました。また、韓国の観光客に人気のあるトレッキング、ゴルフツアー等も相次いでキャンセルとなり、地域経済にも大きな影響を与えたことは紛れもない事実です。

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 しかし、観光客が落ち込んだ時期に、おもてなしセミナーや近隣の観光地視察等を実施し、地域ぐるみで誘客を図り回復に努めたことは、記憶に新しいことです。今回の硫黄山の影響を最小限に収める必要があります。

 今回の規制発表の際、多くのメディアが平成23年1月に発生した新燃岳噴火の様子を取り上げ、視聴者は霧島の山がまた噴火したのではと、錯覚したのではないかと思います。また、多くの犠牲者がでた木曽の御嶽山噴火から間もないこともあり、正確な情報を伝えなければ、国内外に新たな不安を与えかねません。

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 霧島連山の新燃岳は、現在は火山性地震も少なくなっており、警戒範囲は1キロに縮小されています。韓国岳からは変化した新燃岳の火口が望むことができます。韓国岳は、えびの高原方面からは当面登ることはできませんが、多くの登山者が利用する大浪池登山口から大浪池経由で韓国岳には登山できます。紅葉見学にはこのルートがベストではないかと思います。

 ところで、エージェントの鹿児島を訪れる商品企画では、1泊は霧島が組み入れられているコースが多く見られます。また、エージェントは全国にネットワークをもっており、迅速に情報を伝達できる強みがあります。新燃岳噴火時も地元支店と連携をとり、定期的にインターネットで社内への情報発信に努めていただきました。

 また、円安、LCCの就航、免税制度の拡充等があり、鹿児島を訪れる外国人は増加しています。台湾や香港からの観光客が大きく伸びており、鹿児島を訪れる外国人の5割を占める韓国人も回復基調にあります。

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 海外の友人に、今回の状況を正確に伝えていただき、安心して霧島に来ていただくよう要請していただきたいと願うばかりです。国内外での説明会では、桜島の噴火と防災対策に常に触れて、そこに6千人の人が住み生活をしていることを伝えています。


 県と観光連盟では、アクセス、イベント、紅葉情報等について、関係者と連絡を取りながら、ホームページで適宜発表していますが、今回も早速ホームページで第一報を掲示しました。危機管理に敏感な全国の教育旅行支店や商品造成箇所への正確な情報発信が特に重要です。

 県民の皆さんも、これから紅葉が本番を迎えます。霧島へ出かけていただき、秋の美しい霧島の魅力を県外の方々に伝えて欲しいと思います。

 霧島地域は今、世界ジオパークの認定を目指して、地域で様々な取組を推進しています。 また、霧島市、えびの市など5市2町で「環霧島会議」を設立し、連携強化に努めています。

 その設立趣旨には、【日本最初の国立公園である1つである霧島屋久国立公園の「霧島山」をふるさとの山と捉える自治体が、それぞれの行政区域を超えて連携し、環境、観光、防災及び教育等に関わる様々な施策・事業について、お互いに知恵を出し合い、協働することにより、地域活性化を図る。「平成19年11月9日」】となっています。

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 新燃岳噴火の際には、環霧島会議の設立趣旨に基づき、関係市町村が協力して難局を乗り越えました。今回の霧島連山・えびの高原(硫黄山)の立ち入り規制の影響を最小限度に収め、いつもと変わらぬ霧島地域の魅力を発信して、誘客に努めたいものです。

No.334 「忘己利他の心」で信頼関係の構築を~人の心を動かす行動とは~

2014年10月27日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 日頃お世話になっているS旅館の会長の奥様(女将)の葬儀に参列しました。香典返しの礼状に次のような文が添えられていました。「自分はいつも二の次三の次。常に周囲の方々のことを気に掛け、誰かの力になりたいと日々励む頑張り屋でした。S旅館を営む父に尽くし、表舞台には立たなかった母。旅館の裏方を一手に引き受けて陰ながら支えておりました。・・・おかあさんありがとう。」~娘 Y子

 女将さんの人生は、戦後の高度成長期、南九州への新婚旅行ブーム、バブル到来による団体旅行の隆盛、バブル崩壊による厳しい時代を克服された波乱の人生でした。葬儀には自治体、観光関係者に加えて、定年退職された多くの仲居さんの姿がありました。

 旅館は毎日宿泊客があることから、24時間安全・安心の管理に気が抜けません。食事の提供や後片付け、夜具の準備等で遅くなることが当たり前となっています。仲居さん達に夜食を作り苦労をねぎらう等、相手に対し常に思いやりの気持ちを、身をもって接する女将さんでした。

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 旅館経営は「おもてなしの心」が不可欠であり、日本の良き伝統的文化を提供・継承しています。しかし日本旅館は人手がかかることや、生活スタイルは洋風志向が強くなり、少人数の部屋の需要が多くなっています。


 その中でも、玄関で三つ指をついてのお出迎えや、バイキング方式を取らずにメイドさんの手による食事のサービスを守る等、日本旅館の良き伝統を守り抜いてきた経営は、多くの人の支持を得ています。

 「桃李もの言わざれども下自ずから渓をなす」のごとく、従業員は女将さんの周りに集まり相談することが多かったとのこと。常に従業員を大切にしてくれる人だったと口々にその死を悼んでいらっしゃいました。

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 今、和食がユネスコの「世界無形文化遺産」に登録されたこともあり、日本旅館の良さが再認識されています。日本旅館の伝統を引き継ぎ、それを支える女将さんの苦労は並大抵のことでは務まりません。また、女性の多い職場での人間関係の融和も大切です。

 会長と供に築かれたS旅館は「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」の「料理部門」で、30年連続第一位を獲得しています。これからも女将さんの精神は、引き継がれるものと思います。

 仕事で実績があがると、「私がしてあげた。」、「俺が動いたからうまく行ったのだ。」と主張する人が多いのが世の常です。女将さんは、まさに「忘己利他の心」を貫いた人生ではなかったかと思います。

 先日鹿児島中央駅からタクシーに乗った際、運転手さんの取った行動に感動を覚えました。当日は雨が降っており、休日ということもあり駅前のタクシーは大変混んでいました。車に乗ると、「雨に濡れて大変ですね」と親切な挨拶を受けました。

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 車がなかなか前に進まず、運転手さんも申し訳なさそうな顔をされていました。その時タクシーのメーターを入れていないことに気づき「運転手さん賃走になっていませんよ」と促すと、雨や朝晩の混雑しているときは、電車通りに出てからメーターを入れるようにしているとのこと。

 労働環境が厳しい中で、2回は料金が上がり稼げるのにと申し訳ない気持ちになりました。いまどきこのような律儀な運転手がいることにも感心させられました。

 鹿児島中央駅からタクシーに乗ると、混雑時は車が進まずメーターだけ上がり、いらいらすることもしばしばです。運転手さんはお客さんの気持ちを察して、メーターを入れないという行動を取ったのでしょう。会社で指導されている訳でもなく、自らの意思で行っていると話されていました。自分は損をしてでも他人を利するという行為を受けて、胸がじんとくるものがあり、釣銭は取らずに下車しました。このような運転手は稀ですが、せめて車内では客を和ませる努力が必要と感じます。

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 ところで、1年の内で観光客が最も多いシーズンに入りましたが、台風19号の襲来で県内の観光施設は大きな影響を受けました。指宿や霧島の大型旅館では、1000名を超える取り消しがあり大きな打撃となりました。台風18号でも多くの施設で取り消しが発生しており、2週続けて大きな痛手となりました。

 離島では台風が南方海上に発生すると、その後の進路や交通機関の乱れを想定して、4~5日前から取り消しが発生しており、本土よりも深刻な状況です。今年は県内で大きなイベントもなく、観光客誘致には苦戦が予想されていましたが、台風や水害の発生は、それに追い打ちをかけることとなりました。

 これから少しでも回復に全力を上げねばなりません。修学旅行の振替作業や顧客の掘り起こし、職場旅行、農閑期の旅行、忘年会、新年会、卒業旅行とターゲットを決めて商品企画や営業体制の強化を図る必要があります。 

焼酎蔵元.jpg

 また、宿泊施設では空き日をチェックして、積極的にエージェントやインターネット上で情報を発信することが求められます。今年は日本各地で自然災害が発生し、観光地は大きな痛手となりました。旅行需要の回復は比較的早いと言われますが、誘客活動の厳しさはどこも同じです。11月には2度の3連休、年末年始は31日から年明けの4日まで5日間の休みがあります。周辺の紅葉情報、イベント、新酒、旬の食材の魅力等を商品企画に盛り込み、挽回に努めたいものです。

         秋萩の 花咲きにけり
                高砂の 尾上の鹿は 今や鳴くらむ
                             ~藤原敏行:古今和歌集~ 

No.333 武家屋敷を活かす新たな取組~着物姿であなたも、しばしお姫様に~

2014年10月20日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 出水市は鹿児島県の最北端に位置し、自然や歴史、豊富な農水産物等魅力ある市です。秋になると上場高原では、コスモスが青く澄んだ青空の下に赤やピンクの可憐な花をつけ、絨毯を敷き詰めたような光景に出会います。


 11月になるとシベリアから冬の使者、ツルが飛来しその数は毎年10,000羽を超えます。訪れる人々は幸せを託し、ツルは多くの感動を与えてくれます。年が明け水ぬるむ頃になると、ツルは群れをなし別れを惜しむかのように荒崎の田畑の上空を何度も旋回し、北へ飛び立っていきます。永年に渡ってツルを保護してきたことが、飛来地として選ばれておりまさに「鶴の恩返し」のようです。

 出水市では、外国人へのグリーンツーリズムの取組に力を注いでおり、シンガポールや香港の学生の農家民泊が人気です。出水平野には恵まれた田園地帯が広がり、農家も日頃から研修を行うなど受け入れ態勢の充実に努めています。

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 今の時期みかんの収穫体験が人気です。新幹線が停車し博多駅から1時間余り、外国人の誘客には適した地域ではないかと思います。ビザの緩和、円安、免税制度の拡大など外国人の誘客には追い風が吹いています。日本人の国内旅行が伸び悩む中、外国人による交流人口拡大は不可欠となっています。

 出水駅を通る「肥薩おれんじ鉄道」も人気です。特に東シナ海に沈む夕日は圧巻であり、ぜひ乗車して体験していただきたい。また東アジアの観光客に人気の「おれんじ食堂」や「おれんじカフェ」も一度は乗って味わってください。

 また、出水市は全国第2位の鶏卵の生産地です。それを活かした新ご当地グルメ「いずみ親子ステーキごはん」は、2011年2月の発売以来25,000食を超えました。「出水の食」として知名度も上がっています。

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 ところで出水市には、南九州市の知覧、薩摩川内市の入来麓と並んで「国の重要伝統的建造物群保存地域」が残されています。島津氏は、軍備と地方行政の目的から外城制度を設けました。藩内の102の外城でも規模の大きかったのが、出水の麓です。

 碁盤の目のように整然と区切られた道路、玉石を積んだ風格あるたたずまい。風雪を耐えた生け垣や武家門に、武の国薩摩の威厳がただよいます。薩摩の玄関口だけに、時の支配者たちは出水に大きな力をそそぎました。

 地頭仮屋の御仮屋門(現在は出水小学校正門)は、江戸時代初期に島津家17代義弘が、帖佐から移させたものといわれています。いにしえの鼓動が聞こえる、歴史に、文化に、時を越えた浪漫が感じられる地域です。NHKの大河ドラマ「篤姫」の撮影が武家屋敷でも行われました。

 いま、その武家屋敷を活用し、日本の伝統文化を体験できる新たな取組が人気を博しています。それは着物文化との融合です。その概要は下記の通りです。

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 タイトルは、「着物で武家屋敷を歩こう会」、家庭で眠っていた着物と帯に命をあたえませんか!着た着物と帯はお持ち帰り!!です。期日は、平成26年11月30日(日)【小雨決行】で、参加費は1人5,000円(着付料を含む)。持ち帰りができる着物と帯は先着順に選ぶことができます。履物、足袋、長襦袢のレンタル料も含まれています。途中武家屋敷の中で庭園を鑑賞しながら、お茶、お菓子のおもてなし、琴の演奏もあります。




 実行委員会は、鹿児島まちの駅連絡協議会北薩ブロック、出水異文化交流の会、NPO法人さわやか出水女性の集い「さわやか出水来て喜テサロン」で、後援として出水市、出水商工会議所、鶴の町商工会、他NHKや民放各社等12団体が参画しています。

 先日東京で開催されたトラベルマートでPRしたところ外国人にも大好評でした。過去2回の開催では外国人の参加もあり、日本文化にふれる良い機会となっています。

 出水の武家屋敷は、重要伝統的建造物保存群地域というブランド価値が付加されていることから、そのストーリーを語ることでお客様を地域に誘客できます。加えて日本の伝統的文化のひとつである着物で散策し、途中お茶とお菓子の提供、琴の演奏という演出が参加者の満足度を高めます。

 武家屋敷の一角には、地産地消の食事店や大阪の著名なシェフが経営するレストランもあり、観光の後ゆっくり寛げます。帰りに特産品や焼酎等を買っていただければ、地域にとってメリットが享受できます。

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 武家屋敷という観光資源を活用し、今回のイベントが旅行商品になるための要素が整っています。観光客が着物姿で歩き、お茶や琴という日本の伝統文化を体験できることが商品の価値となります。それをメディアに情報提供、発信することで誘客につなげることがプロモーションです。

 家庭に眠る雛人形、こいのぼり、地域の神社・仏閣、伝統芸能等を旅行商品として売り出す際の参考になるのではないでしょうか。

〈参考〉出水市観光パンフレット(発行:出水市産業振興部観光交流課)
「第3回着物で出水武家屋敷を歩こう会」チラシ

 最後に武家屋敷には次の歌が似合います。あなたも着物姿で武家屋敷を散策しませんか。

                   「わたしの城下町」

             作詞:安井かずみ 作曲:平尾昌晃

          格子戸を くぐりぬけ  見上げる 夕焼けの空に
          誰が歌うのか 子守唄  わたしの城下町
          好きだとも いえずに  歩く川のほとり
          行きかう人に なぜか目をふせながら 心は燃えてゆく

          家並が とぎれたら お寺の鐘が聞こえる
          四季の草花が 咲き乱れ わたしの城下町
          橋のたもとに ともる 灯りのように
          ゆらゆらゆれる 初恋のもどかしさ きまずく別れたの

No.332 『第30回国民文化祭・かごしま2015』を御存じですか~各市町村の事前取組が成功への近道~

2014年10月14日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 秋田県で第29回国民文化祭が始まりました。国民文化祭は、各種の文化活動を全国規模で発表、競演する機会を提供することにより、国民への文化活動への参加の機運を高め、新しい芸術文化の創造を促すことを目的に開催されてきました。

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 来年の第30回大会は、鹿児島県で開催されます。鹿児島の国民文化祭の特徴は、県下43全ての市町村で何らかの文化的行事が開催されることです。特に離島での開催は、観光をかねて参加することができ、参加者が増えるのではと期待が膨らみます。

 開催期間は、2015年の10月31日(土)~11月15日(日)までの16日間で、テーマは、「本物。鹿児島県 ~文化維新は黒潮に乗って~」となっています。愛称は、「ひっとべ!かごしま国文祭」で、ロゴマークもすでに発表されており、関心の度合いも少しずつですが浸透しているのではないでしょうか。

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 『本県で国民文化祭を開催する意義として、県民一人ひとりが、企画・運営に主体的に携わり、常に進取の気性に富み、異文化とのふれあいを通じて先人が創り上げてきた誇るべき鹿児島の風土や文化芸術に触れ親しむなかで、我々が「違い」に寛容で、進取と含羞の心を併せ持つ「鹿児島県民」であることへの誇りを共有し、再認識することです。』
―第30回国民文化祭基本構想―

 開催まで1年あまり、県民あげての盛上げが必要であり、各市町村の取組強化が大会の成功を左右します。出演者を増やし、地域の魅力を発信する機会と捉えねばなりません。文化イベントは、スポーツイベントに比べて市民の関心が低く、人を集めることに苦労します。

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 また、国体等代表選手が参加する大会であれば出張経費等の補助がありますが、国民文化祭は趣味を同じにする人たちの発表会の場であり、自費参加が主流となっています。ここに国民文化祭に対する集客の厳しさがあり、各事業の参加者をいかに増やすかが、問われます。 

 そのためには、地域の自然や食、特産品、周辺の観光地などを定期的に関係団体にPRして、行きたくなる開催地としての魅力を情報発進することが重要です。さらに、参加者との交流の機会を設ける等地域ならではの「ふだん着のおもてなし」の醸成が求められます。また、各市町村のトップの理解と担当者の集客に対する意気込みが問われます。

 鹿児島県は南北600キロに及び、言葉、食、祭り、暮らし等独特の文化を育みました。県内には、113の蔵元と2000を超える銘柄がありますが、いろいろな焼酎の飲み方や「なんこ遊び」等は鹿児島ならではの文化です。与論に行くと、与論献奉という独特のおもてなしの手法で接待されます。

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 今、和食が世界無形文化遺産に登録される等、日本文化への関心が高くなっています。県内には多くの外国人が住んでおり、鹿児島の文化の発信者になってもらうことが大切です。海外航空路線は4都市へ、また各市町村は海外の姉妹都市との交流を定期的に進めており、今回の国民文化祭に海外から友人を呼ぶことで、鹿児島の文化を知ってもらういい機会になります。

 2015年、「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」が「世界文化遺産」登録をめざしています。鹿児島市内にある5つの関連施設がイコモスの調査を受けました。登録が実現すると、国民文化祭の開催にも弾みがつき、観光を兼ねて多くの参加者があると期待されます。

 薩摩藩は多くの偉人を輩出し、明治維新の原動力になりました。「郷中教育」や「薩摩藩英国留学生」、「近代化産業遺産群」等の歴史を学ぶことで、薩摩の文化を感じることができます。大会参加者に薩摩の文化を認識してもらえる絶好の機会としなければなりません。

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 今回の大会は離島の市町村も会場となります。大会のスローガンに、「文化維新は黒潮に乗って」の言葉がありますが、鹿児島大会のイメージを象徴しています。県内に28の有人の離島があることは意外と知られていません。大会後に離島を訪れる参加者が多くなるのではないでしょうか。

 また、地域文化の継承には後継者の養成が不可欠であり、子どもやお年寄りのために出演の機会をつくってあげなければなりません。また、地域文化を掘り起こし、学ぶ機会を提供することは郷土愛を育てることになります。

 最後に国民文化祭開催を機に、鹿児島に新しい文化を根付かせるいいチャンスにしなければなりません。機会あるごとに祭典の意義、大会への参画を促すことが求められます。プレイベントや来年の大会を意識した事業プログラムもあり、大会への関心を高める取組が進みつつあります。各県の新聞社やテレビ局が主催している「カルチャーセンター」へのPRも誘因効果をもたらします。出演団体が増えることで人が集まり交流の機会ができることは、地域の活性化に繋がります。

 第30回国民文化祭の成功に向けて、県民一人ひとりが参画意識を持って、おもてなしのこころで迎えたいものです。

       妹の小さき歩み いそがせて
             千代紙(ちよがみ)買いに 行く月夜かな
                                      ~木下利玄~

No.331 個人旅行と外国人受入態勢の確立を~旅行形態の変化にいかに対応するか~

2014年10月6日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

        名も知らぬ山のふもと邊(べ)過(よ)ぎむとし
                        秋草のはなを摘みめぐるかな
                                       若山牧水

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 10月に入り北海道では紅葉が盛りとなり、阿寒湖、摩周湖の周辺では国道沿いの木々が赤、黄色の鮮やかなトンネルとなり、観光客がしばし車を止めて撮影する姿が見られます。道東では10日のマリモ祭りが終わると冬支度の準備です。紅葉はこれから十和田湖、八幡平、奥日光と南下し、京都が美しい紅葉に包まれるのは例年11月の中旬頃です。特に洛北の紅葉は必見の価値があります。

 県内で近年話題となっている垂水の「千本イチョウ」は11月下旬から12月上旬までで見られます。紅葉情報に注意しながら、ぜひ平日にお尋ねください。ライトアップもなされる夜のイチョウ園の景観も見事です。 

 ところで県内を訪れる観光客の宿泊動向を見ると、全体の70%がグループ、個人客となっており団体旅行が減少していることがあげられます。かつて宴会を伴った団体の招待旅行や報奨旅行が激減し、また、金融機関が実施していた積立旅行や簡保旅行も見られなくなりました。

 国民生活も豊かになり、日々生活する中で近隣の温泉に出かけたり、各地域の料理等を味わう機会も増え、団体旅行で出かける必要性も少なくなっているのではないでしょうか。今では修学旅行が数少ない大型団体です。鹿児島県では九州新幹線全線開業を好機と捉え、誘致に力を注いでいます。

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 先日会った霧島温泉のある支配人の話によると、最近は卒業の周年旅行や還暦同窓会等が増えており、昔の絆を大切にする世代がそれを支えています。ホテルでは、専任の担当者を配置し、記念旅行の盛り上げを図っているということです。時代の変化を読み取り、それにいかに態勢を整えるかが大切です。

 ところで日本旅館は従来の1泊2食だけでなく、1泊朝食や素泊まりも受入れている施設もあり、伝統的日本の文化をいかに守っていくかが問われています。鹿児島に来る観光客は、2泊3日が主流ですが、1泊は温泉地、2泊目は鹿児島市内のシティホテルというコースが人気であり、2日目は街にでて、夜は地元料理を食べるという観光客もいます。鹿児島中央駅前にある「ふるさとかごっま屋台村」に行くと、そのような旅人によく出会います。

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 一方ビジネスホテルでは、じゃらんや楽天など場貸しサイトに部屋を提供し販売するシステムを導入している施設もあります。全国展開しているホテルが、資金力を武器に安売り攻勢をかけています。特に地元資本のホテルは厳しく、地域ならではの「おもてなし」やサービスの提供が勝ち残り戦略の一つです。

 日本の国内旅行は成熟し、個人旅行も多様化しています。温泉地域の施設では、バブル時代に造った大きな部屋は効率が悪くなっており、小部屋に分割し、露天風呂付きの部屋やレストランの席数を増やすなど個人旅行に対応できる仕組みづくりが求められます。

 また、翌日宿泊客が半日程度でも滞在できるメニューや地域の魅力づくりが必要であり、第一次・二次産業をもっと商品企画に活かすべきです。グリーンツーリズム、ブルーツーリズム、ものづくり、産業遺産、伝統工芸、食品、祭り、伝統行事、蔵元ツーリズム等です。従業員自ら地域を回り、地域の観光資源を宿泊者にPRできることが、連泊やリピーターの創造に繋がります。 

 一方地域は、人口が急激に減少していくことから交流人口の拡大も不可欠です。現在訪れている観光客が、地域にどの程度の経済効果をもたらしているか、データの分析が必要です。県内でもいくつかの市町村が日帰り観光バスを運行して、誘客に努めています。

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 集客できている要因はバス料金が安価であることも大きな理由ですが、参加者がどの程度地域で買物をし、リピーター化に繋がっているか、地域の活性化の視点で定期的に分析する必要があります。いつまでも税金を投入するだけでは、議会や住民の理解は得られません。きちんと経済効果の分析や参加者の声を、今後の街づくりに活かすことが大切ではないかと思います。

 また、今後は外国人の受入態勢づくりが不可欠です。2013年訪日外国人が1千万人を超え、これからも東アジアを中心に増加することは確実です。最近鹿児島市内で、ガイドブックを持った台湾や香港、韓国のグループに良く出会います。クルーズ船が入港すると欧米系の方は、夫婦で電車やシティビューで市内見学をしています。

 現在の受け入れ状況は、宿泊代や食事代が安く、必ずしも受入サイドにメリットばかりではありません。適正な価格設定が重要であり、地域間、関係機関の連携も大切になっています。

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 「ななつ星in九州」の乗客は富裕層が多く、鹿児島が誇る高級食材や、伝統的工芸品のPRも欠かせません。10月1日から免税品が全品目に適用され、免税店の設置も地域には必要になっています。


 最後に、和食がユネスコの世界無形文化遺産に登録され、日本に興味を持つ外国人が増えています。この素晴らしい文化を国内外の人にPRする方策の一つが観光振興です。外国人観光客を鹿児島に根付かせることが地域を元気にすることと信じてやみません。

No.330 免税店の設置で県産品の販売拡大を~外国人旅行者向け消費税免税制度の変更を活かそう~

2014年9月29日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 2013年の訪日外国人旅行者数は、1036万人で悲願の1千万人を達成しました。全体の76.7%がアジアからの旅行者です。国別では、韓国、台湾、中国、香港、タイの順となっています。8月は22.4%増の111万人で、1月からの累計は25.8%増の863万8千人となり好調を維持しています。

 訪日客が伸びている要因として、ビザの緩和、円安、LCCの就航、和食の世界無形文化遺産登録による日本ブーム、東日本大震災から3年半が経過していること等があげられます。このまま推移すると、年間では1200万人程度となり、2020年の2000万人達成も現実味を帯びてきました。

 鹿児島県の2013年の訪日外国人の宿泊者数は21万人余りで、26.3%増となっています。台湾、香港が大きく伸び、韓国や中国からは竹島や尖閣諸島問題もあり減少しました。

 2014年は、台湾、香港が引き続き順調で、中国は回復基調で、韓国は旅客船沈没事故等の影響もあり減少傾向でしたが、冬場のゴルフ客等の回復が期待できます。7月の観光動向調査によると、宿泊客は15.5%増の12,158人となっています。このまま推移すると、今年は過去最高の外国人宿泊者数になるのではと想定しています。

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 ところで、外国人旅行者向け消費税免税制度について、今年の10月1日から、消耗品(食品・飲料、化粧品、薬品等)が新たに免税対象となり、全品目が免税対象となります。

 これにより各地の銘菓、酒、米、調味料、薬、伝統工芸品といった地域ならではの特産品も免税販売が可能となることから、訪日外国人の旅行消費を促し、地域経済の活性化とリピーターの創出に繋がるものと思います。対象品目の拡大に加えて、手続きも簡素化されます。

 今回の制度改正を鹿児島においても最大に活かす取組が求められます。国では2020年の東京オリンピックに向け、全国各地の免税店を10,000店規模へ倍増させることを目標に、さらなる免税手続きの利便性の向上等に取り組むこととしています。

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 県内には現在14店舗の免税取扱店がありますが、デパート、量販店、電気店等に限られており、今後取扱店舗の拡大が求められます。これから免税店設置を申請するにあたっては、態勢づくりも求められます。外国語表記、中国語や英語を話せるスタッフの養成や異文化への理解、Wi-Fiの設置等が不可欠です。

 現在免税店を扱う店舗は、鹿児島市内に集中しています。今後の免税店設置については、貸切バスが駐車できる郊外の大型店、道の駅、土産品を置いている食事店、散策中に立ち寄れる中心市街地、宿泊者に便利なホテル等が、適しているのではないでしょうか。

 先日上海の有力企業グループの幹部と会う機会がありました。グループ内に旅行部門を持ち、今年はすでに長崎県を中心に、九州へ1200人の訪日客を取り扱っています。幹部によると、今後九州に送客しやすい要件の一つとして、多種品目を扱う免税店が身近な場所にあることが不可欠と語っていました。

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 上海の人々が今日本に行って買いたいものは、安全安心の食材が一番である。電気製品やデジカメはすでに大衆に普及しているとのことでした。富裕層も増加し健康・長寿に関心があり、日本の美味しいブランド米、調味料、粉ミルク、薬品、化粧品等に人気があると言っていました。

 米は日本より4倍も高く、宿泊先で食べた美味しい米を手に入れたいという旅行者のニーズが高くなっていると語っていました。また赤ちゃんがいる世帯や老人層は、粉ミルクや薬品等を重宝しています。自国の製品より日本産のブランドを信用している姿が感じられます。

 このように中国からの観光客は、行程の中で生活用品が買える免税店への立ち寄りを望んでいます。人口や経済発展を考えると、鹿児島への訪日客は、今後上海からが一番伸びるのではと考えています。その意味でも上海線の利用促進を図りたいものです。

 また、福岡空港からの入国者が鹿児島を観光し、最後にショッピングを楽しみ、鹿児島空港から出国し易い環境を整えることが経済効果をもたらします。そのためには新幹線の片道切符の大幅な割引をすべく、JR九州との交渉も求められます。

 今回全品目に消費税免税制度が拡大されたことで、県産品の販売拡大を図ることで、地域の活性化につなげねばなりません。食料品では、早場米、醤油・味噌、黒酢、調味料、干物、黒砂糖、郷土銘菓、焼酎、水、薬品、健康補助食品等、又富裕層は、ガラス工芸品、薩摩焼、屋久杉製品、薩摩錫器等にも関心を持つのではないでしょうか。

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 鹿児島を訪れた外国人が、「免税店シンボルマーク」に気づいて来店したら、気軽に応対できる店を増やして行く必要があります。訪れた地域に免税店がなければ、購買のチャンスを逸し、2度と鹿児島を訪問する機会を絶ってしまいます。


 日本の人口は確実に減少して行くことから、観光交流人口増大による地域活性化は不可欠です。観光庁の資料によると、定住人口1人減少分を外国人観光客11人でカバーできると試算しています。

 県内各地域に、外国人がゆっくりショッピングできる免税店を増やすことが、外国人誘客の一つになるのではないでしょうか。

No.329 第7回かごしま観光人材育成塾」の開催について~まちづくり・観光地づくりに求められるものとは~

2014年9月22日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 天候不順が続いた今年の夏も終わり、朝夕の涼しさに秋の気配が濃くなり、えびの高原ではススキの穂が色づき始めています。九州新幹線全線開業から3年半が経過し、開業効果が一段落しているものの、週末の観光地は多くの観光客で賑わっています。

 鹿児島市内の食の有名店には、ガイドブックを持った若者たちが列をなし、修学旅行生は、天文館のかき氷店で「白くま」を食べている姿が印象的です。そのまちに観光客の姿を見れば、元気さがわかるような気がします。

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 ところで、九州新幹線全線開業後二次交通の整備や新たな地域づくり、情報発信が功を奏し、従来通過地点であった地域に観光客が訪れるなど変化が起きています。一方では個人旅行が主流となった今、それに十分対応できなくなった施設が厳しい状況におかれる可能性があります。

 今年も、これからの地域づくりや情報発信を担う人材育成を目指し、「第7回かごしま人材育成塾」を開催します。地域づくりやおもてなし、情報発信、地域資源を活用した特産品等の開発、よそものから見た地域おこし等、鹿児島が今後取り組むべき課題について学ぶ6つの講座を開催します。

 講師と講座の内容について簡単に紹介します。

 第1講座は、県観光交流局の倉野観光課長が、「観光かごしまの現状」について講演します。県が毎年取組んでいる「魅力ある観光地づくり事業」の現況や今後の重点課題の一つである「プロスポーツの振興」等についての講座です。プロスポーツについては、「キャンプ誘致」や6年後の東京オリンピック、国体の開催をにらんだ戦略の一端が語られるのではと楽しみです。

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 第2講座は、「株式会社まちづくり計画研究所 代表取締役 今泉重敏」さんによる【まちづくり仕掛けのハウツー】です。今泉さんは、かつて福岡県久山町の職員を10年間経験された後独立され、今では九州における地域づくり、まちづくりの"のぼせもん"仲間のネットワークの代表世話人として活躍されています。


 首長、議員、地域づくりリーダー、女性団体等の、約1万人の人的ネットワークを持つ、笑顔のバイタリティあふれるまちづくりコーディネーターです。自治体の総合計画、観光ビジョン、中心市街地の活性化計画、過疎地活性化計画、小学校単位のまちづくり協議会等の将来ビジョンの策定等、これまで150以上のプランを策定した経験の持ち主です。自治体の多くの職員の皆さまに聞いていただきたい講義です。

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 第3講座は、「第30回国民文化祭におけるおもてなし」です。来年10月31日~11月15日まで開催されるこの大会は、日本における文化の最大の祭典です。県内全ての市町村文化行事が開催されることから、県全体としておもてなしのレベルアップが求められます。


 講師の中村朋美さんは、地元メディアの元アナウンサーとして活躍され、温泉、焼酎、美術・工芸、食等にも造詣が深く、常にお客様の視点で語りかける姿勢は、誰もが信頼を寄せています。社会貢献活動にも積極的に取り組まれています。「おもてなしの極意」や鹿児島の新たな観光の在り方について示唆に富んだ話が聞けるのではと思います。

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 第4講座は、日本一の鰹節の産地である枕崎市で、新たな食文化に取り組む中原水産株式会社常務の中原晋司氏による【出汁(だし)による地域活性化】です。日本食がユネスコの世界無形文化遺産に登録され、日本の伝統的食材が脚光を浴びています。



 枕崎の漁師が船上で食べる丼飯からヒントを得た「枕崎鰹船人めし」は、県内の地域グルメのNO1を決める「Show 1グランプリ」で2年連続1位に選ばれました。中原常務は、特産の鰹節で街を活性化したいと出汁の魅力を日々PRし、新商品開発にも取り組むとともに、海外での営業活動も始めています。枕崎を「出汁のふるさと」としたいと言う大きな夢が語られると思います。食の関係者にぜひ聞いてもらいたいテーマです。

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 第5講座は、株式会社 トラベルジップ代表取締役 大泉敏郎氏による【観光業界・観光客のトレンドとWebサイト活用方法】です。現在県・連盟のホームページについて、ご指導いただいているのが大泉氏です。大泉氏の指導・助言により連盟のホームページへのアクセス回数は飛躍的に伸びています。


 顧客が求める情報はどこにあるのか、また見たくなるホームページのあり方について、革新的な提案がなされるものと思います。各自治体で広報や観光宣伝を担っている人の最適な講座と思います。是非参加ください。

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 最後の第6講座は、薩摩川内市の甑島で「地域おこし協力隊」として活躍されている関美穂子さんによる、【「ヨソの目」が地域に入ることって?~地域おこし協力隊の事例紹介~】です。地域おこし協力隊とは簡単に述べると、「都会の若者を地方に呼んで、地域活動をしてもらいながら地域力を維持強化していきましょう」、という事業で総務省の人材活性化・連携交流室の事業の一つです。

 関さんは大学卒業後、エージェントで海外旅行のツアー企画造成、予約や担当され旅行業務には精通してこられました。日頃から地域が主体の着地型観光に興味を持っており、薩摩川内市が公募していることを知り、採用された一人です。現在下甑島に暮らしながら、特産品開発や旅行商品の企画等に取り組んでいます。

 よそものの視点で捉えた甑島の魅力をどのようにして商品化し、PRして販売していくのかそのサクセススト-リーが聞けるのではないかと思います。甑島には、水戸岡鋭治氏設計による、観光高速船が就航し話題の島となっています。島の魅力とともに彼女の活躍ぶりに拍手を送りたいと思います。

 今回から、講座の選択も可能となりました。どの講師の方々も豊富な経験を持ち、それに裏打ちされた講演は、皆さんの活動に必ず役立つと信じます。また、夜学塾は、参加者同志や講師陣とのコミュニケーションの場であり、講座で聞けないより具体的な話が聞けると思います。

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 地域づくり・観光地づくりには、まず人材の育成が重要と考えています。今まで人材育成塾を受講した方の多くが、それぞれの地域で頑張っていることは、鹿児島の観光にとって大きな財産となっており、7回連続で受講を申し込んでいる方もいらっしゃいます。

 九州新幹線全線開業から3年半、転換期をむかえている鹿児島の観光です。この講座が人材育成とさらなる地域活性化につながることを期待し、多くの受講者が参加されることを期待します。

No.328 拠点地域からの広域観光周遊ルートの商品化を~観光客をいかに広げるか~

2014年9月16日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 赤とんぼの群れ飛ぶ姿が夕日に映え、秋の訪れを感じます。登下校の子供たちはジャージ姿が多く見られますが、運動会の練習の帰りでしょうか。また、味覚の秋を迎え、店頭には栗や柿の実が並び、北国では紅葉が始まります。

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 1年の内で一番観光客が動く時期になりました。鹿児島県内には年間680万人もの宿泊者がありますが、約70%が鹿児島市、霧島地区、指宿地区の3地域に集中しています。(観光庁2015年統計)今後の鹿児島の観光を考えるとき、この3地域からいかに観光客を広げるかが大きな課題となっています。

 この度、鹿児島地域発の広域観光周遊ルートのコースとして、いちき串木野・薩摩川内方面のモニターツアーを実施し、宿泊・観光施設、キャリア、エージェント、県、市、地域振興局等から56名の参加がありました。主な観光地の魅力と課題について整理したいと思います。

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 2018年(平成30年)は明治維新から150周年の節目を迎えますが、維新の立役者となった偉人を多く輩出しているのが薩摩藩です。1865年薩摩藩は、国禁を犯して15名の若者と随行者4名を英国に派遣します。いわゆる薩摩藩英国留学生です。その生徒の多くは開成所で学んだ若者で帰国後は官界、実業界で活躍します。

 留学生の足跡を見学できる施設として、いちき串木野市にオープンしたのが、「薩摩藩英国留学生記念館」で、その施設を最初に訪ねました。地元の田畑市長の出迎えを受け、記念館の設計から展示物まで手がけた砂田光紀プロデューサーの案内で、館内の見学を行いました。

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 留学生の苦難の渡英やその後の活躍のストーリーは、近代日本の成長に大きな足跡を残していると感じます。また、渡英前に過した羽島の人々との交流は、日本を離れる留学生たちの心の支えになったのではないでしょうか。


 留学生の中で村橋久成は、戊辰戦争の際砲台長として活躍し、その後北海道開拓使となり、サッポロビールの生みの親として語り継がれています。

 留学当時13歳と最年少であった長沢鼎は、その後アメリカに渡り生涯を過ごし、広大なぶどう園の経営とぶどう酒製造に尽くし、ワインの帝王と称されました。鹿児島でもナガサワワインとして親しまれています。

 今羽島地域では、ボランティアガイドや観光船運行の体制が整い、これからの地域づくりの支えになるのではないでしょうか。記念館前の駐車場が狭いため、シーズン中の車の誘導や団体バスの乗降に気をつけなければなりません。

 各市町村で、青少年の翼、青年の船等の海外派遣事業が盛んです。ぜひ、小・中・高校生等若い方々に見学して欲しい施設です。

 日本は人口の少子・高齢化時代に入り交流人口の拡大が不可欠であり、外国人観光客の誘客もより強く求められてきています。鹿児島の近代化遺産群が、世界文化遺産への正式登録を控えています。開成所から薩摩藩英国留学生に至る功績を学ぶことは、明治維新150年を検証することにもなります。人材育成の重要さも伝えたいものです。

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 食事施設としてマグロ船の形をモチーフに、資料館と物産館を併設したレストラン「まぐろの館」がオープンし人気を博しています。いちき串木野市は、マグロ船の船籍保有数は日本一となっていますが、マグロは主に焼津港や清水港に水揚げされます。

 まぐろの館の社長は、おいしいマグロを食べたいという顧客の要望に応えて、満を持してのオープンとなりました。北薩摩地域にこのような大型の食事施設がなかっただけに、観光ルート設定には役立ちます。県民へのPRも図らねばなりません。

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 次に訪れたのが薩摩川内市の市比野温泉地域です。かつて市比野温泉地域は、鹿児島市の奥座敷として多くの宴会や団体客で賑わっていました。今では宿泊施設は数軒のみで、昔を知る人には寂しい限りです。


 時代の流れは個人客が主流とな