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No.305 環境にやさしい宿泊者に~日本型宿泊スタイルからの脱皮を~

2014年3月31日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 春休みに入り、若い観光客の姿が目に付くようになりました。卒業旅行でパワースポットや、露天風呂巡りなどを楽しんでいるのではないでしょうか。 鹿児島県は南北600キロに及び、鹿児島市から大阪市までの距離に相当します。


 大分県に次ぐ第2位の泉源数があり、多彩な泉質を含む温泉地が点在しています。また屋久島の世界自然遺産や、二つのロケット基地は他県にない魅力です。近代化日本の礎を築いた偉人を多く輩出し、歴史遺産も鹿児島市内を中心に整備されており、まち歩きなどにも最適です。

多様な生態系が見られる奄美群島は、2016年度「奄美・琉球」として世界自然遺産を目指しています。近代化遺産群と奄美が世界遺産に登録されると、飛躍的に観光客が伸びると思われます。

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 平成25年、鹿児島県における宿泊客数は703万人で、前年比102.3%の伸びとなり、観光客の約80%が鹿児島市、指宿地域、霧島地域に宿泊しています。(暫定値) 宿泊観光客の増加に伴い、ゴミ処理、汚水対策、ペットポトル、空き缶対策など宿泊客が残した廃棄物の処理に、各自治体は多額の費用がかかり、その対策に頭を悩ましているのも事実です。観光客が滞在する宿泊箇所での環境対策が今必要になってきています。

 欧米系の観光客は、小さいころから環境への対応をきちんと学びその習慣が定着しており、自然の大切さや環境に負荷を与えない行動ができていると感じます。一方日本人の宿泊パターンは、非日常を求めて、過度の快適さと利便性を追い求める宿泊スタイルになっており、環境に負荷を与えているように感じます。また、宿泊施設の過度のサービスが、環境悪化を招いているようにも感じます。

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 エコホテルの定着を目指している施設が多くなっているのも事実ですが、宿泊者と事業者が環境を守るという同じ考え方に立ち、実現可能な項目から着手する必要に迫られています。2005年には京都議定書が締結され、日本も本格的に環境対策に力を注いでいます。これから東アジアからの観光が急激に伸びることが予想されることから、環境対策を徹底していくことの重要性が問われています。

 宿泊者とそれを受け入れる施設の実情や、100ルームの部屋を持つホテルの支配人から聞き取り調査等を行い課題について整理しました。

1.宿泊者がもたらす環境問題については、
 ・宿泊者は平均して、滞在中に2回以上入浴し、泡立ちの良いシャンプーやリンス等を大量に使用し、化粧品、ヘアケア、歯磨きなど化学物質を含んだものを水と一緒に流す。大浴場で月平均63リットルのシャンプーが使用される。
 ・一人平均3枚以上のタオルを使用し使用後の洗濯に使う洗剤も膨大となる。
 ・夕食、朝食は平均して20%程度を残し、残飯として処理される。食後の使用済皿は、 洗浄に多量の洗剤が必要になる。
 ・使い捨ての歯ブラシや、煙草の吸殻、飲み食いの残飯処理に時間がかかる。チェックアウト後1晩で約20袋のゴミが収集される。
 ・宴会中のクーラー、電気のつけっぱなしが多く見られる。
 ・貸切バスやマイカー利用者が到着時に大量のゴミを持ちこむ。
  等が施設の抱える環境問題です。

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2.環境に負荷を与えない取組としては
 ・化学物室を含まない石鹸の提供も必要である。
 ・連泊のお客様にはタオル、シーツの連続使用をお願いし理解してもらう。
 ・生ごみは肥料や飼料にして再利用を考える。
 ・宿泊者への啓蒙運動を推進する。(環境への取組の理解、水や電気はまめに消す)

3.宿泊者への理解を深める方策としては
 ・分別収集のお願いをする。連泊においてはタオル、シーツは連続使用とする。
 ・宴会等部屋不在時の電気を消すことを了解してもらう。
 ・洗面道具(歯ブラシ、洗髪用のグッズ等)はフロントに置き、必要な方のみ渡す。

4.地域・業界の取組としては
 ・環境問題は一施設だけで取組んでも限界がある。地域全体で取り組むことに意義がある。実現可能なものから宿泊者、従業員の理解の元にすすめる必要があります。
 ・宿泊施設は、夕方のチェックインから翌朝まで安心して滞在できるよう常に警備等に配慮しています。また2度の食事の提供、片づけ、布団敷など重労働です。それに対する対価としての宿泊代があまりに安く設定されているように感じます。双方が満足できる料金体系が必要であり、そのことで環境対策にも取り組むことができます。

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 交流人口の拡大が不可欠な今、経済効果を追求すれば、消費の拡大を促し環境問題が惹起されることは当然です。従来日本人の宿泊スタイルは顧客の要望に応じて、過度のサービスを提供してきたと感じます。そのことがゴミ問題や水の汚染、有害物質の氾濫などが生活や健康に悪影響を与えています。

 余暇活動を享受できることは、素晴らしいことであり、周りの環境に配慮した行動が 求められる時代になってきたのではないでしょうか。自然と地域住民、観光客が共生で きる環境づくりが必要であると感じます。

No.304 ムスリム市場への取組~相手の慣習を理解することから~

2014年3月24日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 2013年の訪日外国人は、過去最高の1,036万4千人となり、前年比24.0%の伸びとなりました。中でも東南アジアからの訪日外国人が急増しています。主な要因として査証免除や緩和、経済発展に伴う中間層の増大、LCCの就航、円安による日本への旅行の割安感があげられます。

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 先日インドネシアの高校生12名が鹿児島を訪れて、垂水市での民泊や垂水漁協のいけすの餌やり体験などを楽しみました。今後の波及効果が楽しみです。インドネシアはムスリム(イスラム教信者)が人口の87%をこえており、約2億700万人に及びます。ムスリム市場は拡大しており、2010年の統計では、世界で約16億人の人口を占めています。

 ムスリムが多いインドネシア、マレーシア、シンガポールからの2013年訪日観光客数は、50万2千人を超え、35%の伸びとなっています。今後も大きな伸びが期待されるムスリムの受け入れに当たって、留意すべき点について述べたいと思います。

 まずムスリムの受け入れに当たっては、宿泊施設などでは礼拝場所の設置が不可欠です。1日5回の礼拝が戒律となっており、男女別に礼拝と小浄ができる清潔な部屋が必要です。部屋には礼拝の方角を示すキブラの設置や、礼拝時に必要な備品の設置も求められます。先日鹿児島空港国際線ターミナルの一角に礼拝場所が設けられました。ムスリムの受け入れの一歩ができたと思います。

 また、ムスリムにはハラール(認証)の食事の提供が求められます。豚肉は厳禁であり、またそれらを原料とした調味料なども口にすることは禁じられています。料理の処理方法によっては、口にできない食事もあり十分な点検が必要です。

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 ムスリムで禁じられているのが、酒を飲むことです。食事の際だけでなく、日常も許されていません。ムスリムにとって、ハラールの食品のみを口にすることは神の教えに忠実に従うこと、すなわち信仰そのものなのです。

 また、イスラム教にはラマダーンと呼ばれるヒジュラ暦の第9月(西暦2014年では6月28日~7月27日にあたる)。この月の日の出から日没まで間、「断食」として食事を立つことが行われ、約1か月間続きます。かつて小生がモロッコを旅した時、ドライバーがラマダーンの期間に入ったら断食を実行していたのを覚えています。

 このようにムスリムの受け入れに当たっては事前に理解しておくべきことが多々あります。取扱旅行社と事前の確認を行うことが必要であり、やたらに不安がるのではなく、日々しっかりと検証していくことが大切です。

 先日、九州観光推進機構が鹿児島市で開催した「おもてなしフォーラムin九州」の分科会で、ムスリムの受け入れについての研修会もありました。福岡にあるムスリム寺院の関係者は、受け入れに当たって神経質になるのではなく、旅行者とのコミニュニケーションを図りながら楽しい旅を提供すことが大切であると語っていました。

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 ムスリム市場はASEAN地域が多く、これからも訪日が一番期待される地域です。 昨年7月1日からのビザ免除の追い風もあり、今年は、インドネシア、シンガポール、マレーシアの3国だけでも70万人を越えるのではないかと想定されます。


 ASEAN諸国の若者は、テレビ、アニメ、漫画、ドラマ、映画等に加えて、桜、紅葉、美しい清流、海等美しい日本の自然景観に憧れを持っています。また、温泉にも関心があります。湯船の中に集団で裸になる習慣がないムスリムの人々には、個室の貸切風呂での温泉の入り方や、効能等について説明する必要があります。

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 世界無形文化遺産に登録された「日本の食」にも関心を示します。鹿児島は「本物。鹿児島県」に代表される豊富な食材があり、ムスリムの観光客には喜ばれるのではないでしょうか。県内を走る観光列車「おれんじ鉄道」、「はやとの風」、「いぶすきの玉手箱」等も売りの一つです。

 ムスリム市場に対して、鹿児島が誇る火山、温泉、ロケット基地、美しい海、「日本式旅館でのおもてなしの姿や食」等を前面に、受入態勢ができるガイドブック等の制作の必要性を感じます。

 現在はASEAN諸国から鹿児島への直行便がなく、当面は上海、台北、ソウル、香港、福岡からの経由便やチャーター便に頼らざるを得ません。

 各県もムスリムの誘致に力を入れてきました。礼拝室の設置、ホテルの部屋にはメッカの方向を示すキブラ(矢印)をつける、ハラール料理の提供等、今後新たな市場としてムスリムの誘致を図るべく、基本的な受け入れ態勢の知識を深めることの大切さを感じます。

No.303 九州本島最南端の町の魅力を活かす ~田舎の景観保護と魅力ある情報発信が課題~

2014年3月17日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 南大隅町は大隅半島の最南端に位置し、西側は錦江湾および東シナ海、東側は太平洋、南側は大隅海峡に囲まれて、佐多岬の近くを北緯31度線が通り、エジプトのカイロと同じ緯度に位置します。旧佐多町と旧根占町が合併した2005年当時の人口は、9,897人でしたが、2014年2月には7,925人と約1000人減少しており、県内で高齢化率が一番進んでいる町です。今後も人口減が続くことが想定されます。

 最南端にある佐多岬という最大の観光地が魅力となり、昭和40~50年代にかけては新婚旅行のメッカとして、年間20万人にのぼる観光客が訪れていましたが、その後観光客は激減して、平成24年は年間38,000人でした。平成25年10月末の佐多岬公園線が無料化されたこともあり、昨年は約69,000人と1.8倍となりました

 南大隅町の景観保護と観光振興について考える「景観セミナー」が開催され、森田町長をはじめ3名の町の有識者、町民を交えて意見を交換する機会に恵まれました。

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 人口と観光客の減少は、地域経済に大きな影響を与えており、観光振興による交流人口 の拡大が求められています。南大隅町には佐多岬をはじめ、パノラマパーク西原台、雄川 の滝など有数の景勝地があり、これらの良好な景観を活かし、来町される方々に対して、 住民が一体となり「おもてなし」を伝えるために,自然・景観(風景)を守り、調和のと れた観光まちづくりをどのように進めていくかを考える機会となりました。

 まず森田町長から、観光振興に対する取組の方向性が示されました。「平成17年3月から、南端まちづくり活動として、地域の小中高校生や一般、老人クラブの皆様方が中心となって、毎月第3土曜日に清掃活動をするなど、継続的な取組がなされている。

 また、平成25年から「花いっぱい活動」を庁舎各課、ボランティア団体「ハイビスカス」のグループが島泊から大泊までの県道区間において、花壇等ハイビスカスなどの花の植栽を実施している。先進地視察として、花いっぱい運動を進めている長島町を訪れて研修し、地域の景観形成に活かしている」ことなどが報告されました。

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 パネラーの方からは、町の海・山・川の観光資源はすばらしいが、その魅力を十分活かし切れないでいる。また、南大隅町の住民が自分の町の良さを知らない実態などについて、地域資源を守り景観を活かしたまちづくりには,人が重要であるという考え方を強調されました。リーダーとなる人材育成が急務であると。また、景観を活かすには、南大隅町のオリジナルとしての看板、街路灯、カラー歩道など、統一性を持たせることが必要である。

 新しい箱ものは必要ない。今ある田舎の有様を大切にし「おもてなし」を伝えて行くこ とが重要である。人の連携が第一であり、異年齢との交流の場を増やすことで、伝統芸能、伝統文化を伝えていくことにつながる。

 観光客を呼ぶには、観光資源である海・山・川の自然を活用したイベントの開催(ソフ ト)事業がもっと必要であると。「ドラゴンフェスティバル」は地域住民含めて国内外から2万人の参加者があり、大隅地域を代表するイベントに成長している。イベント開催時は周辺市町村までの宿泊効果が出ている。

 そして、町に来てくれてありがとうと思う「おもてなしの心」も芽生えつつあり、行政・住民・関係団体との連携や食や女性の心をつかむ商品づくりが必要である」との意見も出されました。

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 今後の南大隅町の観光に求められるものについて考え方を述べたいと思います。まず観光客誘致には地域の生活文化、歴史遺産等を四季折々の魅力とともに情報発信することが求められます。季節の移ろいを感じる旬の情報が必要です。


 最南端にある御崎神社では、神輿が集落を巡るという伝統的祭りが行われ、中央からのメディア取材もありました。日本で最古の通貨である通貨の和同開珎(708年)の開基である神社で、現在では縁結びの神として、訪れる恋人たちが願かけをしています。

 また、諏訪神社の二重の鳥居は珍しく、この対になっている鳥居が縁結びにとても御利益があると言われています。左から入って右の鳥居から出る習わしです。2つの神社をパワースポットとして売り出すのも効果があると思います。

 最近話題の「雄川の滝」や小生が県下一の絶景地と自認する「パノラマパーク西原台」は、遊歩道や頂上までのアクセスの整備が不可欠ですが、行政サイドですでに検討されていることはありがたいことです。自然景観が素晴らしく見過ごしできない観光地です。 

 「最南端」というロゴを活用した観光客誘致もおもしろいと思います。町内にある郵便局、学校、幼稚園、神社、お寺、銀行、食堂、漁協、農協、商店など「本土最南端○○○」と表示することで、そこを目指して観光客が訪れます。

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 これからの観光振興には地域連携が大切です。「鹿屋航空基地史料館」、「かのやばら園」、「内之浦宇宙空間観測所」、「花瀬公園」、「神川の大滝」等に来た観光客を誘客する必要があります。各自治体のパンフレットにはぜひ近隣の町の名所を掲載して欲しいものです。

 港の近くにあるネッピー館は、高校生、大学生のスポーツ合宿への活用方が求められます。特に町内に全国に数少ない自転車競技練習場を持つことから、信号機の少ない道路を活用したイベントを積極的に誘致する必要があります。

 ところで、山川・根占を結ぶフェリーの再開は指宿地域からの誘客を可能にしました。指宿地域には鹿児島に宿泊する観光客の約20%が宿泊しています。日帰りの旅としては、最適の地です。根占港から佐多岬までのシャトルバスの運行やレンタカーの設置が欠かせません。

 また、観光地の魅力は地域ならではの食です。獲れたての魚や農産物を活用した地域グルメの開発やお土産品の開発も求められます。そのことが地域に経済的効果をもたらします。

 最後に景観保護の必要性について述べたいと思います。良好な景観は、地域の個性(魅力)を伸ばすことにつながります。地域の自然・歴史・文化等と人々の生活、経済活動との共生が重要になってきます。農村景観・自然景観を守ることが大切です。特に棚田、川、畑、池、石垣、渓谷、港、滝、夕日のスポット等は点検が必要です。

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 また、古い町並み、路地は、日本の伝統を醸し出す重要な要素となります。古い街並みの保存や大規模な土地利用の転換を図る再開発事業では、既存の地区をどのように整備するかが課題です。美しい農村景観や水路を守り、電柱の地中化を図るなど、日本の原風景を大切にしてほしいと思います。川の生物が住める環境を確保し、堤防はできるだけ石積みにする等の配慮が必要です。

 田舎の「道」は貴重な観光資源であり、街道沿いの竹藪、雑木を伐採し景観を保ち、駐 車場の整備、花を植栽、案内板を統一した形、色とすることで調和が保てます。ガードレールや橋の色、形に配慮が必要です。山や川、道路は多くの自治体をつなぐパイプであり、景観形成には周辺の市町村が統一して取組まないと進展しないと思います。

 最後に最南端の町のオンリーワンの魅力や旬の情報をいかに楽しく情報発信するかです。歴史的遺産はストーリー性を持たせることが重要です。南九州市の「釜蓋神社」は、釜の蓋をかぶって参拝する姿が、「ナニコレ珍百景」で放映され、その後エージェントの商品企画に組み入れられ今では、年間20万人を超える観光客が訪れます。

 最南端の町には、大きな看板、旗、幟、原色の屋根等は似合いません。道路沿いの四季の草花や、錦江湾に映える幻想的な夕陽、観光客に手を振り、頭を下げる姿に観光客は感動します。童謡や唱歌に歌われた日本の原風景が、南大隅町にはいたるところに残っています。新婚旅行で訪れた世代は、現役を退き今国内旅行の最大のターゲット客です。 最南端という不利性を、逆にプラスと捉え、優位性に変える取組を展開したいという思いにかられたセミナーでした。

No.301 小説の舞台や、童謡・唱歌に歌われた景観とは ~美しい日本の原風景を大切に~

2014年3月3日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

道がつづら折りになって、いよいよ天城峠に近づいたと思う頃、雨脚が杉の密林を白く染めながら、すさまじい早さで麓から私を追って来た。
                ~川端康成『伊豆の踊子』から

 上記の文章は、ノーベル文学賞を受賞した川端康成の「伊豆の踊子」の冒頭の文です。何回読んでも素晴らしい文章です。川端康成は、「上海」や「旅愁」の著で知られる横光利一と並んで、新感覚派を代表する作家の一人です。「伊豆の踊子」や「雪国」は、過去何回も映画化され、小説の舞台となった伊豆の湯ヶ島や下田、越後湯沢温泉等はロケ地として有名になりました。

 伊豆の天城峠を訪ねると、苔の生えた石造りの天城トンネルやスギ林に囲まれた坂道が続き、小説の舞台がそのままあり、川端康成が愛してやまなかった伊豆の魅力を醸し出しています。

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 ところで、童謡や唱歌は、日本の美しい田園風景や四季の移ろいが詩となり、それにメロディが付けられ、子供のころから口ずさんでいる歌が多いのではないでしょうか。「故郷」、「春の小川」、「夏の思い出」、「赤とんぼ」等美しい日本の四季が浮かび上がります。

 小学生のころ音楽が苦手で、いつも口をもごもごして声を出さないでいると、先生に叱られた記憶や、中学生になり声の変性期と重なり「椰子の実」の歌を男子生徒が歌わず、音楽の先生を泣かしたのを覚えています。

 今ではその頃のやんちゃな頃を忘れて、日本の美しい情景が唱歌と一緒に流れると、菜の花やレンゲ畑の畔道を、ミツバチを追いながら自転車で中学校に通った頃を思い出します。「メダカ」や「うなぎ」が泳ぐ小川が校庭の隅を流ており、美しい田舎の原風景がそこにはありました。

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 国語学者金田一春彦氏は、ある式典で同席された美智子皇后様から、「私が好きな唱歌は『朧月夜』と・・・・『冬景色』です」とお聞きして、自分と同じ曲であるとポンとひざを打ちたかったという。二つの曲は、春と冬の日本の自然の情景が美しく描かれ、目の前に出てくるような錯覚を覚える素晴らしい曲です。

 奈良時代に編纂された「万葉集」やその後の「古今和歌集」、「新古今和歌集」には、美しい四季の歌がありますが、自然現象に託して故郷への想いや恋心を伝えています。

 日本は四季がはっきりし、気候の変化は美味しい農水産物をも生み育てます。穀物やくだもの、野菜、近海の豊饒な海では、タイやアジ、キスなどが獲れます。山林や火山が多い地形は、美味しい水が湧きでるという恵みをもたらしています。また、冬は赤い椿が白い雪に映え、春になると桜前線が日本列島を縦断し、夏は朝顔やひまわりが咲き、秋になると野山は紅葉し、色とりどりの景観が列島を南下します。

 桜や紅葉の美しさは日本人だけでなく、多くの外国人の心をひきつけます。外国人は桜や紅葉の美しさに憧れて日本を訪れます。訪日外国人が1000万人を超えた今、鹿児島が持つ自然の美しさ、温泉、食、おもてなしの心を持って誘客に努めなければなりません。

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 鹿児島では「郷中教育」、「日新公のいろは歌」、「出水兵児修養掟」など、人として生きる心構えを教えており、薩摩の偉人が育つ環境づくりに役立ったと感じます。 子供のころから、古里の美しい田園風景や、歴史、祭り等を学ぶ機会を増やして行かねばなりません。そのことが故郷を愛する心を育むことにつながります。

 また、日本の伝統的生活や文化、歴史、美しい自然が歌われている、童謡・唱歌の舞台を訪ねるのも旅の楽しみではないでしょうか。

 鹿児島にはいたるところに、日本の原風景が残されています。白砂青松の海岸、レンゲソウの美しい畑、田植えの後のきれいに水を張った棚田、整然と植えられた杉林、石を積み重ねて造られた段々畑等人々の知恵が生きています。

 都市周辺部では、開発が進み昔フナやコイが泳いでいた小川は、コンクリートの蓋で隠れて見る影もありません。滝廉太郎が作曲した「花」では、当時の隅田川は次のように表現されています。

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春のうららの隅田川 上り下りの舟人が 
櫂(かい)のしずくも 花と散る
ながめを何に たとふべき
見ずやあけぼの 露浴びて われにもの言ふ 桜木を
見ずや夕ぐれ 手をのべて
われさしまねく 青柳(あおやぎ)を

 明治時代の隅田川は清流の川でした。われわれは、美しい日本の原風景をいつまでも残していくことが求められています。そのことが、外国人にも支持される国になるのではないでしょうか。

No.300 これからの鹿児島の観光に求められるものとは~インバウンドやMICEへの取組強化を~

2014年2月24日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

          岩ばしる 垂水の上の さわらびの
             もえいずる春に なりにけるかも
                           志貴王子~万葉集~

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 一雨ごとの温かさにひがん桜が満開となり、メジロの鳴き声が一段と美しい音色に変わってきました。3年前の3月12日、九州新幹線が全線開業し、「みずほ600号」が多くの人々の万歳の声に送られて新大阪駅にむかった姿が、鮮明によみがえります。東日本大震災直後で人の動きが懸念されましたが、その年のゴールデンウイーク以降急速に回復してきました。

 ここ3年間の宿泊客数は、何とか前年を超えて推移しています。2018年が明治維新150周年に当たることから、これから5年間関連する行事が予定されており、新しい情報を提供して誘客を図らねばなりません。

 今後の鹿児島の観光にとっての課題を整理したいと思います。 日本人の人口が減少していくことから、国内旅行の大きな伸びは期待できず、各地域と も外国人の誘客が課題となっています。平成25年、県内の外国人宿泊客数は、約14万人で全体の4%程度に過ぎませんが、年々増加の傾向にあります。昨年日本への外国人の入り込み客数は、待望の1000万人を越え、東アジアを中心にタイやシンガポール、マレーシアなどASEAN諸国からの伸びが顕著となっています。(25年観光動向調査<サンプル調査>)

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 鹿児島県におけるインバウンドの実績は、台湾、韓国、香港、中国の順となっています。3月30日から香港便が就航し、海外が4路線となり、今後大幅な伸びが期待されます。先日JNTOのシンガポール事務所の加藤次長をお招きし「外国人観光客受入体制推進講習会」を開催しました。

 インバウンドに対する受入施設の関心も高まっています。各施設では多言語のホームページが必要になっていますが、少なくとも英語だけでも対応できるように準備を進めて欲しいと思います。

 海外からの誘客は、現地エージェントやランドオペレーターを介する場合が多くありますが、最近はインターネットで直接予約する人が急増しています。FITが主流となっており、ブロガー対策として有力メディアの招聘、鹿児島でのWiFiや外国語表記の充実が求められます。ミッションのあり方について再検討の必要性を感じます。

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 東日本大震災被災地での日本人の整然とした行動や支援の姿に、外国人は日本人のモラルの高さに驚嘆の声をあげました。また昨年日本食がユネスコの世界無形遺産に登録され、日本への旅行の関心が高まっており、今後のインバウンドに期待がかかります。 路線が増え、鹿児島からの海外旅行も身近なものとなり、若いうちから海外の文化を学ぶべく、修学旅行や少年の翼等研修の機会を増やすことが大切ではないかと思います。

 個人旅行が7割を占める中で、団体の集客が見込めるMICEへの取組強化が求められます。MICEのM(Meeting)はミーティングです。企業や団体が主催する各種の会議やセミナー、講演会などの開催は数日に及ぶこともあり、宿泊費や飲食代など経済的な効果も大きくなります。経済セミナーや著名人によるスキルアップ研修など、教育の機会として捉え多くの会議を誘致すべきです。

 I(Incentive)は、インセンティブです。企業が従業員や代理店等の売上や貢献度に応じて、実施する報奨旅行です。旅費、パーティ、ゴルフ等現地で消費される金額は大きく、数千名を超す規模のものもあります。車のディラー、外資系の保険会社、化粧品会社、女性の服飾チェーン等が定期的に実施しており、大型のリゾートホテルやゴルフ場が隣接していることは、誘致が可能となります。福岡市内での大会、会議の後のインセンティブの行き先として、鹿児島を提案しており、エージェントへのセールスを強化しています。

 C(Convention)は、コンベンションです。学術団体や業界団体の会議、国際会議と様々です。大都市圏では国際会議の誘致に力を注いでいます。昨年鹿児島市で開催された世界火山会議などがその例です。医学部系の大学がある都市では、各種の病理の研究学会が、また、経済関連の業種別大会、ロータリー、ライオンズクラブ等の組織団体、教育関連では、校長会、PTA、各教科等は、九州、全国大会が持ち回りで毎年必ず開かれています。  県都だけではなく地方での大会誘致が必要です。

 E(Exhibition / Event)は、エキシビションとイベントです。エキシビションは、出展者と来場者の商談を目的とした展示見本市や、数ヶ月に渡って開催されるエキスポや花の博覧会等があります。2011年県内各地で開かれた「都市緑化フェア」は成功事例です。

 イベントは全国規模のスポーツ大会があり、国体、インターハイ、各種競技、文化団体では、合唱コンクール、吹奏楽や来年開かれる「国民文化祭」等があり、大きな集客力が見込め、観光資源としては多くの人を集めるコンテンツにもなります。  指宿の「菜の花マラソン」や「菜の花マーチ」は、毎年2万人近くが集まる大会となっています。また、地域興しの手法として、地域の食材を活用した「Show ― 1グランプリ」など食のイベントも集客効果が見込めます。

 MICEは、広い分野に経済効果をもたらします。料飲、宿泊、輸送機関といった観光業者だけでなく、広告、印刷等イベント関連業者への波及効果がも大きくなります。現在、県内で開催されるMICEの多くは鹿児島市内に集中していますが、規模や業種によっては、指宿、霧島、鹿屋、薩摩川内市などで開催することも一つの方策です。 

 また、鹿児島の優位性を活かした自然遺産や宇宙科学等、離島で開催するのも参加者が増える要素にもなります。参加者が、大会後県内各地に足を運ぶことから、地域に関する情報発信がなされることも大きなPR効果をもたらします。鹿児島県は九州本島最南端にあり、温泉、食、火山、自然遺産、離島、歴史、宇宙科学等MICEの誘致には、魅力的な観光、研究素材が豊富です。積極的な誘致が求められます。

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 比較的順調に伸びている教育旅行の課題です。関西・中国地域から27年は集約臨時列車で7,000人の中学生が訪れます。農業・漁業体験を実施する学校が増加し、知覧の平和学習、桜島や霧島の火山・自然学習、鹿児島市の歴史探訪等が、優位性を発揮しています。

 県内全域に、約1000軒の農家民泊の供給が広がる中で、「簡易宿所営業」許可を取得している施設は15%程度にすぎず、学校側から「簡易宿所営業」取得が民泊先の条件として提示されると、鹿児島は、教育旅行の行先からはずされてしまい、既存の宿泊施設にも影響が及びます。

 他県では「簡易宿所営業」の許可を取る施設が増えており、ぜひ各地域でこの問題に取組むことが必須となっています。各自治体、NPO法人、エージェントと連携し早期の取組が望まれます。そのことが安定的に鹿児島へ教育旅行を誘致できる条件となります。

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 2015年には「明治日本の産業革命遺産 九州・山口及び関連地域」が、世界文化遺産に正式登録の準備が進められており、そのリストに「近代化産業遺産」の5箇所が入っています。明治維新150年周年と文化遺産の価値をセットでPRしなければなりません。そのことが近代日本を創りあげた薩摩の偉大さを世に示すこととなり、観光客誘致につながります。

 また、スポーツツーリズムの推進も急がれます。2020年には、東京オリンピックとパラリンピックの開催が決定しており、事前キャンプ誘致等もスタートします。特にバリアフリーに整備の重点を置き、他県との差別化を図ることが誘致のプラス効果をもたらします。

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 鹿児島県は南北600キロに及び魅力多彩な観光資源があります。「鹿児島市」、「霧島地域」、「指宿地域」から、いかに宿泊先を広げるかが問われています。今年は、ここ数年で一番厳しい1年になると想定しており、スピード感をもって諸課題に取り組まねばなりません。 


 最後に、今回のコラムが300回目となりました。これまでの叱咤激励に心から感謝申し上げます。これからも引き続き手厳しい批判をお寄せいただきますようよろしくお願いいたします。

          いにしへの 道を聞いても 唱えても
               わが行いに せすばかひなし
                          日新公(島津忠良) ~いろは歌~

地域情報を顧客にいかに届けるか~インターネット利用者80%時代を迎えて~

2014年2月17日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 先日、福岡市内のホテルにエージェント・マスコミ等70名を招き、県内19の自治体・関係団体によるランチミーティングを開催しました。各地域の新しい情報や商品企画の素材を提供し、鹿児島から持ち寄った食材のPRも行いました。


 今年の鹿児島の話題としては、4月2日に川内港から甑島へ、JR九州の観光列車生みの親である水戸岡鋭冶さんが設計された「高速船の運航」、7月20日にいちき串木野市羽島に「薩摩藩英国留学生記念館」のオープン、南さつま市では、5月2日から30日まで延長された「砂の祭典」の開催等が上げられます。

 また、2018年の明治維新150周年に向けた取組や、今後「旧集成館」事業等の世界文化遺産や「奄美・琉球」の世界自然遺産登録への話題等も提供しました。 エージェントのこれからの商品に反映されるものと思います。

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 県と観光連盟では毎年県内の自治体に呼びかけて、共同でエージェントへの説明会を開催してきました。関係者が一堂に会することから経費的にも安く上がり効果も大きいと判断しています。個人情報の管理が厳しくなり、個々によるエージェントの訪問も限られてきています。特にエージェントの企画担当者が集まることから、個別商談方式を行っており、人間関係作りにも役立ちその後のセールスやプレゼンがしやすくなります。

 各自治体の商品企画支援策については、エージェントは宣伝費用の補填や継続して商品を造ることができ重宝がられます。又全国的に販売する商品は半年先の情報が必要であり、担当者間の連携を図ることも大切と考えています。

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 ところで自治体や観光協会が、地域の宣伝をする手法として、○○大使を帯同し大都市圏の地下街等でパンフレットや名産品を通行人に配るなどしてPRするケースを見かけます。通行人がどっと押し寄せ、たちまちのうちに配布物がなくなります。関係者はパンフレットが何万部配布できたと喜んでいます。しかしその効果の程はどうでしょうか。地下街のトイレやくず箱に、パンフレットが捨てられていることがよくあります。

 単に景品もらいに集まり、何回も並ぶ人を見かけます。来訪につながるプレゼンが必要であり、地域の売りは何なのか、来訪したらどのような楽しみ方があるのか、周辺のアクセス等の説明が必要です。施設の割引クーポンや現地でしか入手できない特産品の購入抽選券等を配ることなども求められます。

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 せっかく○○大使等を連れて行くのであれば、マスコミ等を訪問して情報番組に出演し、地域の旬の情報をきちんと伝え、応募していただいた方に抽選で、宿泊券や特産品をプレゼントするなどその後の検証ができる方法が重要と考えます。


 消費者は、旅行先や宿泊施設の決定について何を参考にしているか、日本観光振興協会が毎年調査しているデータでみると、インターネットの活用、ガイドブック、パンフレットの情報、家族・友人の話と続いています。多くの資料を集めて、旅行に行って体験した人の口コミが最後の一押しとなっているように感じます。おもてなしの充実など旅先の印象が重要な要素となっています。

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 今インターネットによる情報収は当たり前となり、しかも家庭での活用が顕著となっています。総務省の調査によると、日本人の79.5%に当たる約9,652万人が、13歳~49歳では90%の人インターネットを活用しており、家庭での利用が1位となっています。

 24時間いつでも利用できることから、観光情報等の入手については自治体や観光協会、施設等のホームページが有効な情報源となっています。 シームレスにワンストップで検索できるホームページの充実が求められており、多言語化は必須になっています。 

 自治体の観光パンフレットは地域情報を網羅するため、多岐にわたりしかも多くのページを用いています。祭り、イベント、旬の花、食、紅葉等は、タイムリーにホームページで詳しく紹介していくことが重要です。特に歴史や地域文化を訪ねる人に対しては、カルチャーセンター、文化講座、生きがい大学など、趣味の団体に情報を発信することが効果をもたらすと思います。

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 また、自治体のパンフレットはわが町だけの位置を掲載しているものを多く見かけますが、県の中のどの位置にわが町があるのか、また、隣接する著名な市町村を一緒に示すことが不可欠です。最近高校の社会科の授業では地理を選択しない学校が増え、各県の位置がわからない学生が多いと、観光学部のある大学の先生が嘆いていました。初めて訪れる人にも市町村の位置を把握できるようにすることが大切です。

 エージェントの社員も添乗を経験することが少なく、現地事情に疎くなりがちです。企画や店頭社員の現地研修も欠かせません。海外からの誘客については、キーマンの招聘が求められます。

 一方観光客は、遠方から来る人ほど広域に回ります。自治体の宣伝は、広域の観光協議会を組織して活動することで効果があると思います。九州観光推進機構は定期的に大都市圏で、「九州は一つ」の合言葉で広域の宣伝活動を展開しており、一定の効果をあげています。大都市圏での知名度は、「北海道」、「沖縄」が圧倒的であり、まず九州を売り込み、その後は各県が競争して誘客に努めることが重要と思います。特に海外からの誘客には九州全体のイメージアップが必要です。

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 ここ3年程度で見ると、県内で観光地としての魅力度が高まっているところは、甑島、南九州市の番所鼻やタツノオトシゴハウス、釜蓋神社、垂水千本いちょう園、垂水漁協、加計呂麻島等です。共通していることは、いずれも地域の人が頑張っており、メディアに積極的に取り上げられていることです。

 地域の人々の協力を得て生活・文化に触れる機会を提供し、「直売店」や「農家レストラン」を活用するなど地域ならではの魅力発信に努めています。国内旅行が成熟している中で、地域の観光資源を売り出すには、より地域の物語性が求められています。

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 今、県内における宿泊客の7割は個人客です。九州新幹線全線開業に伴い、観光列車の運行や周遊バスの充実が図られています。自分たちの地域に来ていただき滞在させるためには、インターネットコミニュケーションの充実を図り、より細かい情報の発信も必要になっています。

 情報を顧客に届けるためには、費用対効果を検証することも大切です。いつどこで宣伝するのか、どの地域からお客を呼ぶのか、誰を対象とするのか、来ていただいたら何を見せて体験させるのか、どの媒体を活用するのか、もう一度自分の地域の宣伝手法を見直してみませんか。

参考:平成24年通信利用動向調査:総務省 

驚きの顧客満足度経営~待っても乗りたいタクシー会社、お客様が先、利益が後~

2014年2月10日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 九州新幹線が全線開業し、3月で4年目に入ります。25年の県の観光動向調査によると、年間の延宿泊者数は前年比0.7%増加となっています。特に外国人は前年比26.3%の増加とななっており、台湾線の就航や韓国からのゴルフ客が大幅に増加したことが要因の一つです。

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 県では、国内外から来られるお客様に対して、「鹿児島に来て良かった、そしてまた来てみたい」という印象を持っていただけるよう、県民一人一人が心を配り、「温かいおもてなし先進県鹿児島づくり」の実現に向けて「おもてなしセミナー」を開催してきました。今年はタクシー会社の経営者、乗務員を対象に接遇研修会を開催し、277名の参加者がありました。

  今回はお客様からの感謝の手紙が絶えず、優良運転手表彰を数多く受賞され、今年めでたく定年を迎えられた旭交通の稲満運転手の体験談と、さくらコミニュケーションズ の古川智子さんの「最高のおもてなしをするために 行えるようにしておかねばならない10のこと」と題しての実践を通した講習会でした。

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 稲満さんは日頃から地域の観光地を廻り勉強し、各種の試験も受けて資格を取る等自己研鑚に努めています。知覧の特攻記念館にある兵士の手記を暗記するため、奥様をお客様に見立てて何回も練習するなど涙ぐましい努力をされ、観光客に車内で披露されています。その一端を会場でも披露されました。

 特に近距離利用の客にもいやな顔をせず、「3分間で600円も払ってくださる大切なお客様」として真心を持って接しておられます。 また、自分はタクシードライバーとして、当然のことを自然体で日々行っており、そのことで表彰されることについて謙遜されていました。

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 古川さんは、永年東京の老舗企業に努めて、人材教育・教育研修講師を担当された経験に基づき、おもてなしの心の真髄を語っていただきました。おもてなしには、「身だしなみ」、「笑顔」、「一生懸命さ」、「やさしさ」、「感謝の心」が必要であると、実践を交えての講義は、参加者の誰一人として眠ることなく集中した内容でした。

 常におもてなしの心を持って顧客に接することがいかに重要であるか、リピーターづくりが企業の信頼度アップにも貢献していくことの大切さを知る機会となりました。お客様におもてなしの心を持って接することは、今の消費者にとっては当然の心理であり、次回利用するときに、たくさんある選択肢の中から選んでもらえるかの一つにすぎません。

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 「値段(もの)」を「価値(こと)」に変えて提供することが、「感動」をもたらします。それに必要な要素は人間の感性であり、これこそがホスピタリティです。一度の出会いで感動を提供し、リピーターになってもらうためには、積極的にお名前を笑顔で呼ぶことも大切です。徹底したサービス精神の姿が、口コミで伝わり多くの顧客を獲得することになります。

 長野市に「中央タクシー」という会社があります。車両数は100台あまりですが、売 り上げが約15億円で県下NO1、しかも地方で経営するタクシーの9割が赤字と言われる中、2012年度の経営利益は過去最高を記録しています。市内のタクシー会社はⅠ2社ありますが、「1日当たりの運行回数」や「1台当たり月間売上」で、他社を圧倒的に引き離しての1位です。たとえば1台当たりの月間売上で、中央タクシーは平均120万弱、他の11社の平均は60万円程で2倍も違うのです。

 この会社は、90%が予約客で埋まるほどのリピーターの信頼を得ていることが特徴で、会社の転機は、1998年に開催された長野オリンピックでした。他社はオリンピック特需を狙って、選手や報道各社優先に予約を受けていましたが、中央タクシーは従来からのお年寄り、病人、お得意さんを大事にし、オリンピック期間の特需に見向きもせず、従来の顧客を大事にしてきたのです。そのことがオリンピック後の不況時にも、従来の顧客が大きな支えとなり今の隆盛を築いています。

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 宇都宮恒久会長は、「仕事を通してお客様の人生を守るというのが、私どもの仕事と思っている。」「当社の仕事は、お客様をただA地点からB地点にお乗せするだけでなく、地域を楽しくするお手伝いです。」と語る言葉に、顧客を大事にする姿勢が表れています。

 経営理念の一部を紹介しますと、「私たちはお客さまにとって、いつまでもこのうえなく、なくてはならない人としてあり続け、この人がいてくれて本当に助かりますと、思わず涙とともに喜んでいただける。わが社はそんな人々によってのみ構成されている会社です。」とうたっています。従業員をまず大切にしている会社でもあります。

 中央タクシーには、接客マニュアルは存在せず、質の高いサービスを支えているのは、 従業員の仲の良さです。「社内の良い人間関係こそが、良いサービスを生み出す」としており、社員の切磋琢磨の行動がサービスに磨きをかけています。

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 また、ドライバーは皆、親切すぎるほど親切。高齢者にはさっと手を貸し、さりげなく 買い物袋を運び、雨の日には傘もさす。そして車内の会話を通して客の家族のことを気に かけ、300メートルという超近距離でも喜んで運行することを大切にしています。

 赤字知らずの会社ですから、本社は市内の一等地に建つと考える方が多いかもしれませ んが、中央タクシーは長野駅から30分、人里離れた山奥にあります。建物はプレハブ造 りで、洗車には井戸水を使用し、しかも無料というメリットを活かしています。

 ホスピタリティという感性を身につけるには、日常生活の中で日々実践していくことが 大切です。身の周りで誕生日やお祝い事等があったら、電話やメールで喜びを伝えることが、自分の中に感性を育てていく非常に大事な要素となっていきます。

 ホスピタリティへの取組強化は、経営者自ら実践することであり、会社本来の目的に立ち返り従業員の声に耳を傾けることが可能となります。そのことが、接遇のレベルアップをはかり、観光客を温かく迎える態勢の確立につながると考えています。

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 観光客の地域の最終的評価は、そこに住む「人の接遇」です。一度訪れた観光客が、こんな素晴らしいおもてなしを実践する従業員のいるタクシー会社が鹿児島にあったのかと、認識してもらうことが重要です。長野市の「中央タクシー」のように、今回の研修会がホスピタリティという感性を育て、各企業の発展につながるきっかけとなることを期待します。

参考:驚きの顧客満足経営で愛される長野の中央タクシーとはーNAVERまとめ

スポーツツーリズムの推進を ~鹿児島ユナイテッドFCを支援しよう~

2014年1月27日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

    花の香を 風の便りに たぐへてぞ
                うぐいす誘ふ しるべには遣(や)る
                            紀友則~古今和歌集~

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 出水平野に越冬していたツルは17季節連続1万羽を超え、多くの観光客が訪れていますが、まもなく北帰行が始まります。また、今年の「指宿菜の花マラソン」には1万8千人余りが参加し、開聞山麓の黄色い絨毯を敷いたような満開の菜の花畑の中を、ランナー達が駆け抜けていきました。一方北国では大雪に見舞われ、厳しい寒さが続いています。南国鹿児島は春がそこまで来ています。

 プロ野球やプロサッカーのキャンプインが近づきました。今年はブラジルで「2014FIFAワールドカップ」が開催されます。日本チームも参加することから、6月12日から1ヶ月間テレビに釘付けとなる人が多くなるのではないかと思います。

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 日本チームの司令塔である遠藤保仁選手の激例会が、約850人の参加のもと盛大に開催されました。鹿児島市長やガンバ大阪の社長、県内外の後援会関係者等が激励の言葉を送り、JIリーグやワールドカップでの活躍に期待を寄せました。


 ところで、将来のプロサッカーリーグ(Jリーグ)加盟をめざし、2つの地元のクラブが合併して「鹿児島ユナイテッドFC」が誕生しました。クラブ名については、「連合・合併」という意味に加えて、薩摩・大隅の両半島を含む鹿児島県民全体で協力してチームを盛り上げていくことや、県内外の鹿児島を愛する人々の団結力が込められています。

 統合クラブは昨年のJFL理事会で、JFLの入会が承認され、ホームスタジアムは、「鹿児島県立鴨池陸上競技場」となっています。これからJ3、J2、そしてJ1を目指すことになります。

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 高校サッカーにおいては、鹿児島実業、神村学園、城西高校等が全国大会で活躍してきました。また、前園、遠藤兄弟、城、大迫選手等多くの優秀な選手を輩出してきましたが、ほとんどが県外に本拠地を置くチームに所属しています。プロサッカー選手を目指す若者には、地元での活躍の場がなかっただけに、今度のチーム誕生は大きな励みとなります。また、県民も郷土チームの応援に熱が入ると思います。

 プロリーグの開催試合は、ホームとアウェーで半分ずつ行われるため、アウェーチームの来鹿の際はサポーターも宿泊するため、宿泊、飲食等大きな経済効果をもたらします。 鹿児島に来たサポーターを温かく迎え、鹿児島ならではのおもてなしで歓迎しなければ なりません。鹿児島中央駅前の「かごっまふるさと屋台村」は、試合終了後のたまり場になるのではないかと思います。また、関連グッズの販売も欠かせません。

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 今年のサッカーのキャンプは、宮崎県で23チーム、県内では韓国のチームを含めて12チームが、鹿児島市、霧島市、指宿市、薩摩川内市、南さつま市、さつま町でキャンプを張ります。J1リーグの清水エスパルス、浦和レッドダイヤモンズ、柏レイソルや、J2のジュビロ磐田、京都サンガF・C、は永年にわたり県内でキャンプを張っており、多くのサポーターも訪れます。

 プロの選手はキャンプ期間中練習だけでなく、キャンプ地の住民との交流会や野球・サッカー教室等を開くなど交流を深めています。そのことが人気に拍車をかけています。県内でキャンプしているサッカーチームには、郷土出身者も在籍しています。 球場に親子で出かけて、日ごろはなかなかできない貴重なふれあいを深め、サッカーファンになって欲しいと思います。

 ところで今年のプロ野球のキャンプは、沖縄県で11チーム、宮崎県が5チームと両県に集中しています。キャンプチームが集中していることは、練習試合にも都合がよく、開幕に向けての調整もしやすい環境にあります。

 県内では薩摩川内市で、千葉ロッテマリーンズのファームが、鹿児島市で韓国のロッテジャイアンツがキャンプを張ります。練習場に恵まれ、温泉があること、市民あげての温かいおもてなしが定着していることも、鹿児島が選ばれている理由ではないでしょうか。

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 キャンプ地として選ばれることは、選手の宿泊だけでなく多くの応援ツアー、取材陣が訪れます。キャンプ地レポートとして毎日地域のことが全国に放送されることから、観光地としての知名度アップにもなります。2013年の沖縄県におけるプロキャンプによる、関係者、マスコミの取材、ファンの訪問者等宿泊、飲食施設の利用等その経済効果は81億円と推定しています。(りゅうぎん総合研究所試算)

 今回「鹿児島ユナイテッドFC」が誕生しましたが、有力スポンサーを核に県民からの寄付も募り、支援体制を確立することが重要です。ファンクラブの創設による応援団の確保も不可欠です。

 最期に2020年に東京オリンピック開催が決定し、事前キャンプ誘致や大会後の観光客誘致にも力を注がねばなりません。オリンピックは夏に開かれるため、体調を慣らす意味では、鹿児島は事前キャンプを行うには適地と思います。情報発信や人材の活用等オリンピックの対応窓口も求められます。同じ年に鹿児島国体も開催され話題も豊富です。

 鹿児島県は冬場の気候は温暖で、温泉も県内各地にあり、また、豊富な食材、飛行機や新幹線等交通アクセスも格段に整備されキャンプ誘致の条件も整っています。 今回のプロサッカーチーム誕生をまちづくりや交流人口の拡大につなげ、スポーツツーリズムの推進になお一層努めたいものです。   

田舎の自然の魅力にひかれる旅 ~地域資源を活かした広域観光の推進を~

2013年12月16日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 鹿児島を代表する宿泊地といえば、霧島、鹿児島、指宿があげられます。平成24年の宿泊人員で見ると全体の64%がこの3地域に泊っています。最近は連泊も増加しており、この3地域を基点に周辺の観光地に足を伸ばしているのではないでしょうか。

 他の地域は観光素材はあるものの宿泊施設が少ないために、昼間の交流人口を増やす努力が必要であり、3地域はそこと連携して宿泊者を創出することが求められています。

 県と観光連盟ではこれまで拠点地域間のルートづくりや特性を活かした観光地づくりに努めてきましたが、主要地域からの複数の広域観光周遊コースの整備が必要になっています。各地域は拠点地域からの誘客を図るため、地域素材の商品化やPR戦略が重要となってきており、観光素材の発掘や人材育成も求められています。

 今回は、霧島発広域観光周遊ルート(北大隅地域)のモニターツアーを実施し、霧島地域のホテル従業員、姶良・伊佐地域振興局、大隅地域振興局、霧島市、曽於市、県、観光連盟から45名の参加者がありました。

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 今回のモニターツアーの対象となった曽於市の財部地域の魅力について触れたいと思います。財部町はJRの駅が3箇所あり、また鹿児島空港から90分、都城インターチェンジが近くにあり交通アクセスは便利な環境にあります。


 清流の森「大川原峡」は奇岩と清流が織りなす渓谷が2キロにも及びます。水しぶきや冷気が顔を洗い、川面に映る森林を堪能しながら、トレッキングが楽しめます。

 また「全国遊歩百選の森」に認定されている「悠久の森」は、片道3,5キロの川岸をエコガイドさんの説明を受けながら、珍しい植物の生態系にふれることができます。「今後永久に木を伐採せず、子孫に引き継ぐこと」を曽於市では条例で定めています。

 毎年11月には「悠久の森ウオーキング大会」が開催され多くのウオーカーが訪れます。近くの「大川原駅」に特急電車も臨時停車します。

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 もみじの植栽に力を注いでおり、数年後には1万本を超える森となり、垂水市の「千本いちょう」と並んで、大隅地域の2大紅葉の地になるのではないでしょうか。  今後森の中には、植物の説明書以外の看板は一切なくして、自然の姿を守っていかねばなりません。

 キャンプ場管理事務所から5分の場所に「桐原の滝」があります。水しぶきをあげて流れ落ちる滝は爽快であり、周辺には春は菜の花、夏はひまわり、秋は紅葉、冬は椿の花が咲き、青い水とのコントラストが見事です。CMの撮影場所にも選ばれました。

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 車で10分の場所には霧島ジオパークのジオサイトのひとつ「三連轟」や縄文人が住んだ遺跡が残る「溝ノ口洞穴」があります。道路の幅が狭いので、離合や案内標識に注意しなければなりません。 



 少子高齢化が進み疲弊していく地域が多い中で、財部地域には元気な集落「中谷地区」の存在があげられます。宮崎県境にある山林に囲まれた水田地帯にあり、人口300人余りの限界集落ですが、地域ぐるみで地域活性化に取り組んでいます。

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 これまで知事賞や農林水産大臣賞、「共生・協働のむらづくり表彰」を受賞しています。平成22年7月、地区を記録的な豪雨が襲い、一夜にして多くの農道や道路が泥や流木等で埋め尽くされる大きな被害を受けました。


 しかし地区の団結の強さは災害にも負けず、「中谷地区むらづくり委員会」を中心に、用水路の整備や彼岸花の植栽を行うなど住民一丸となって復興に取り組み、ほぼ元通りの姿となりました。今美しい緑と水に恵まれた中谷地区の村おこしが注目されています。

 そのひとつに「ふるさとを思いやる会ゴッタン倶楽部」の取組があります。ゴッタンは、旧薩摩藩の領域だった鹿児島と宮崎の一部に古くから伝わる民俗楽器で、板三味線や箱三味線とも呼ばれています。

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 今回中谷公民館で、倶楽部の皆さんが、ゴッタンの音色を奏でて我々を歓迎してくれました。懇談会ではゴッタンの講習会も開かれ、手取り足とりの指導に参加者は皆さん大感激、踊りまで始まりました。出張も可能ということで宿泊ホテルで演奏する機会をつくっていただければと思います。

 霧島地域の宿泊施設に、ゴッタンの説明書や観光パンフレットを置くのも一つの方策です。ボランティアということですが、交通費や一定の出演料を収受することで、後継者の育成やスキルアップにつながるのではないでしょうか。

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 県境にある「関之尾の滝」には天然記念物の甌穴があり、滝とともに周辺の紅葉も見応えがあります。大川原峡、悠久の森、桐原の滝、三連轟、溝ノ口洞穴と続く、ルートづくりには欠かせない観光地です。


 今回の研修で感じたことは下記の点です。
 今回の参加者は、財部方面は初めての方が大半であり、身近にある観光地を関係者が知らないという現実にふれ、PRや現地研修の大切さをまず感じました。また、国道やJRの駅から大川原峡に至る案内板や渓谷の整備が必要です。散在しているゴミや、飲食施設の撤去を急がねばなりません。

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 次に悠久の森については、入口からの距離の表示、中間地点に自然にマッチしたトイレの設置、携帯がつながらない為緊急用の電話があれば、安心してウオーキングができるのではないでしょうか。また桐原の滝や溝ノ口洞穴に至る道路は、マイクロバスでも離合が厳しく案内表示が求められます。

 美しい自然が残る「悠久の森」一帯の魅力を県民もほとんど知らないのが実情です。交通手段はレンタカーやマイカーがメインとなりますが、行程や周辺の物産館の紹介も不可欠です。

 最近の観光客は安全・安心の食材を求めて、地域の直売所に立ち寄るケースが多く、顔の見える商品の品揃えが大切です。今回訪ねた「きらら館」はアクセスが便利な場所にあり、さらなる充実が求められます。

 最後に、財部地域は中谷地区をはじめ農業の盛んな地域です。団結の強さをグリーツーリズムに活かし、教育旅行の受け入れ態勢づくりが求められます。地区全体で一つの学校の受入が可能であり、ゴッタンのおもてなしも感動するのではないでしょうか。

 ゴッタンの講習会をしている公民館横のグランドでは、老人たちが大きな声を出しながらグランドゴルフに講じていました。いつまでも元気で明るい地域であってほしいと願って一首。

       里山の柿や紅葉は色づきて
                 ゴッタンの音(ね)に明日を思えり
                                      ~英光~

「第6回かごしま観光人材育成塾」を開催~おもてなしの極意は人の感動にあり~ 

2013年12月2日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 今年もカレンダーが1枚となり、街角にはジングルベルの音が賑やかな季節となりました。年末年始は日並びが良く、観光関連業界の方にとっては明るい話題ですが、おもてなしの心を持って対応したいものです。

 県内の観光の概況は、宿泊客数で見ると5月から前年を越えて、9月までは前年をクリアーしており高止まりで推移している状況です。今年は奄美群島日本復帰60周年、屋久島世界自然登録から20年、イプシロンの打ち上げ成功や佐多岬の無料化等による大隅地域への観光客の増加、関西、中国地域からの修学旅行専用列車の運行による教育旅行の増加、インバウンドの好調等に支えられています。

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 また、「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連施設」が、ユネスコの世界文化遺産への推薦が決定し、2015年に正式登録を目指しています。県内には5つの遺産群がありますが、県民がその価値を認識し、明治日本の原動力になった薩摩藩の偉業を世界にPRして行かねばなりません。

 ところで日本の人口はこれから減り続け、少子高齢化が顕著となり、鹿児島県では30年後には、約40万人減少します。地域の活性化には交流人口の拡大が不可欠であり、観光振興による地域づくり・観光地づくりが求められています。

 観光客誘致には、地域素材の商品化やPR戦略が不可欠であり、人材育成も欠かせません。その手法を学ぶ一つとして、今年も「第6回かごしま観光人材育成塾」を開催しました。従来の2日間全講座受講から、希望の講座だけでも受講できるように変更したこともあり、過去最高の86名の参加者がありました。

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 今年の講義の主眼は、明治維新150周年を5年後に控えて、かごしまの魅力をどのようにPRし、誘客に繋げていくかでした。 全国的に話題となっているJR九州の列車「ななつ星in九州」の取組や、観光振興に特に力を入れている薩摩川内市の観光客受入態勢づくり、誘客に欠かせないおもてなしの心の極意等について学ぶ7つの講座を開催しました。



 まず、県観光課の森対策監が「鹿児島の観光の現状と佐多岬の今後の展望について」、5月から宿泊観光客が増加している現状や、外国人誘致の重要性についての説明がありました。九州本島最南端の佐多岬については、無料化以降前年の2倍近い観光客が訪れている現状や今後の開発・整備についての概要の報告がありました。

 特に最南端佐多岬への入込客を増やすことが、大隅地域だけではなく、薩摩半島の活性化につながるとの指摘がありました。かつての賑わいが復活すべくこれからの整備が楽しみです。

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 第1講座は、霧島山上ホテル営業支配人の内山竹文氏が「まちの駅ネットワークを活かした地域づくり」について講演しました。
 まちの駅は、「みちの駅」に比べて認知度は低いものの、設置数は138駅にもなり、今では観光を強く意識した取組も行っています。「休憩」、「案内」、「交流」、「連携」のルールのもと、観光客が迷った時に何でも相談できる「よろず相談所」の役割も果たしています。

 地域コミュニティの活性化のために「ストリートピアノ」を11台寄贈するなど、社会奉仕にも取り組んでいます。また、「まちゼミ商店塾」を開催し、人と人、そして経済が循環する活動等まちづくりに取り組んでいます。200の駅づくり取組むという力強い発表もありました。県内全域のネットワークを活かし、地域産品の販売や観光PRなど大きく飛躍できる仕組みが出来上がりつつあると感じます。

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 第2講座は、有限会社 オフィスフィールド代表 砂田光紀氏が、「★鹿児島ななつ星プラン★民官チームで描く最良の観光未来像」として鹿児島をどのようにデザインしていくか」について講演しました。砂田氏は、来年いちき串木野市にオープンする「薩摩藩英国留学生記念館」を手掛けており、1865年の旅立ちを思い出させるそのコンセプトについて詳しく語りました。

 また、観光が「地域を開き発展の一助となり、定住促進につながり雇用や生きがいを生み出す。住民とっても快適な豊かな生活がそこにあることが求められる。デザインが観光の真の価値をもたらす」と携わる人の周辺や立ち振る舞いが問われると厳しい注文を付けました。海外の街並や伝統的文化財を例に「古きを守り、新しきを拒まず」の姿勢を貫くことが大切であると説いていました。

 仙厳園地域一帯の「近代化遺産群」、が世界文化遺産に推薦することが決定した今、都市と地方の未来像と「鹿児島ならでは観光」の創出について考えさせられる講演でした。

 第3講座は、山口県観光連盟の専務理事松井邦昭氏による「薩長連携による観光振興と紙芝居を通した地域づくり」でした。薩摩と長州は明治維新に深く関わり、また観光客誘致においても連携した取組を推進しています。

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 紙芝居への取組は、平成20年から始まりイベントへの参画、ボランティア活動を通じての地域振興に役立てています。また、紙芝居を通じて高齢者の生きがいや社会参加の促進等幅広い波及効果が表れています。


 現在我々の日常生活における娯楽は、テレビや映画、ゲームなど一方向のメディアです。紙芝居は読み手と観客の双方向のメディアであり、特に人間的な温かさが必要であり、そこに詠み手の演技力も問われますが、松井専務の演じる姿は、プロ顔負けの演技でした。鹿児島でも各地に残る民話を紙芝居に変えて伝えるのも一つの方策ではないかと思います。  

 第4講座は、JR九州のクルーズトレイン本部次長の仲義雄氏が、『JR九州の地域づくり戦略「ななつ星in九州」』について講演しました。

 10月15日からスタートした列車は、3泊4日コースの最高金額が55万円もする豪華な旅ですが、来春6月の出発分までは完売となっています。なぜ今この豪華列車に人気が集まるのか、JR九州の熱い想いが語られました。

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 唐池社長と水戸岡デザイナーの二人三脚での一流・本物へのこだわり、車内で使われている調度品の選択にも熟慮を重ね、微塵の妥協も許さない姿勢が随所に見られます。九州という地を売るため、ターゲットはヨーロッパの客層であり、そのことが九州各県のPRにつながるという壮大な考えが、ななつ星の魅力を作り上げていると感じました。

 ななつ星の構想発表以来、メディア効果は100億円を超え、製造コスト33億円の3倍以上となっています。社員教育に1年を重ねるなど、おもてなしの心にも細心の注意を払う姿勢にも感激しました。今後どのように進化していくのか夢多い列車です。

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 第5講座は、観光ネットワーク奄美の水間忠秀氏が、「奄美のエコツアーの歩みと世界遺産登録に向けた取組」について講演しました。奄美群島は、特異な動植物群の生態系が保護されていることから、本年2月「世界遺産暫定一覧表」に「奄美・琉球」を記載することが決定しました。

 水間さんは日頃から、観光客に美しい奄美の自然の姿を案内しながら、動植物の保護に努めています。自然と観光が共生することの大切さを強く訴えており、小さな虫一匹も轢かないように車の運転にも気をつけている姿勢が講義の中で感じられました。世界遺産登録に向けて今後の活動が楽しみであり、県民ももっと奄美の自然の美しさを学んで欲しいと思います。

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 第6講座は、「薩摩川内市のシティセールス~観光による地元盛り上げ作戦」と題して、薩摩川内市の古川英利氏が講演しました。薩摩川内市は九州新幹線の終着駅一つ前の駅であり、全線開業後も苦戦が予想されていました。


 地域の活性化には交流人口の拡大が不可欠であり、周辺の観光資源の磨き上げと商品化が必要と考え、着地型観光の推進(きゃんぱくの開催)、甑島の商品化、観光人材の発掘、観光協会と特産協会が合併した株式会社の設立、高速船の運行(24年春予定)等新しい取組を次々に推進しています。地域サポーターが4300人を超え、住民を動かし地域を愛する人が育っていることが薩摩川内市の強みです。

 これといった観光の目玉がない中で、地域をいかに盛り上げるかの取組がひしひしと伝わってくる講義内容でした。自治体からの参加した人にとって良い研修の場になったと思います。

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 第7地講座は、「おもてなしの極意」と題してのトークショーでした。旭交通のドライバーで、顧客から多くの礼状が寄せられている稲満和明氏と、JTBの顧客満足度90点以上を13年連続受賞している城山観光ホテルで、フロント業務を担当している西田朱里さんです。お二人とも常におもてなしの心を持って顧客に接しており、企業の信頼度アップにも貢献しています。

 稲満さんは日頃から地域の観光地を廻り勉強し、各種の試験も受けて資格を取る等自己研鑚に努めています。知覧の特攻記念館にある兵士の手記を暗記して、車中で観光客に語る等涙ぐましい努力をされています。その一端を会場でも披露されました。 また、自分はタクシードライバーとして、当然のことを自然に日々行っており、そのことで評価されることについて謙遜されていました。

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 西田さんは、忙しいフロント業務でもいつも笑顔を絶やさず、外国語の会話や業務知識の習得に勤しんでいます。クレームへの的確な対応処理、帰路につく外国人に対して航空券の手配等献身的に対応し、感謝の礼状が届くなどおもてなしの達人でいらっしゃいます。二人とも常に満足を超えた感動・感激を提供しています。このような従業員が増えて欲しいと願うばかりです。

   今回の講師の方々はそれぞれの部署で活躍され、経験とそれに裏打ちされた話は、皆さんの心を捉え、これからの業務に必ず役立つものと信じます。 地域づくりには、人材の育成が重要と考えています。今まで人材育成塾を受講した方の多くが、それぞれの地域で頑張っていることは、鹿児島の観光にとって大きな財産となっています。

   2014年には「薩摩藩英国留学生記念館」のオープン、甑島航路への水戸岡氏デザインによる観光高速船の運航、2015年には「国民文化祭」の開催、2016年は薩長同盟、霧島への坂本龍馬新婚旅行から150年と続きます。 そして2018年が明治維新150周年の節目の年になります。それぞれ節目の年でイベントが予定されています。

 この講座を受講された方々が、地域でのイベントに積極的に参画し地域活性化に取り組んでいただけたら幸いです。来年の参加もお待ちしています。

PR大使の笑顔が観光かごしまを支える~ひとの印象が旅行先の決定に~

2013年11月5日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

それとなく 郷里(くに)のことなど 語りいでて
                  秋の夜に焼く 餅のにほいかな
                                       ~石川啄木~

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 九州新幹線全線開業から3年目に入りましたが、県内に宿泊する観光客の数は、5月以 降前年を上回り、各地域とも必死に頑張っている姿が数字に表れています。夏から台風の 接近も多く大きな被害が心配されましたが、24号による与論島の被害を除けば、大きな 被害は発生していません。与論島の復旧を急ぐとともに、これ以上台風が来ないことを祈 りたいと思います。

 ところで消費者が宿泊先を決める要素として、インターネット、旅行社、パンフレット、 雑誌等からの情報収集があげられますが、最後には行った人の口コミをあげている人が多く、人の伝えることの重要さが問われています。

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 鹿児島には「心温まるおもてなしの心」を実践する人がたくさんいらっしゃいますが、 観光の顔として地域を売り出すのが、親善大使やPR大使です。 その役割と「おもてなしの心」の極意を学ぶ研修会が開かれ、県内12地区から23名 のPRレディーと2014ミスユニバースの鹿児島の最終選考会に残っている3名の26名が参加しました。

 最初に県観光課の倉野課長が「鹿児島県の観光事情」と題して、入込状況や観光振興策等を説明しました。PR大使にも鹿児島の観光の概要を理解して、今後の活動に活かして欲しいと思います。

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 11月2日で任期が終わる鹿児島市の「かごしま親善大使」である田中瑛子さんは、「親善大使の役割とは何か」、「親善大使として活躍するための大切なことはなにか」について、1年間の実践を通して感じたことを解りやすく話してくれました。


 「大切なのは技術よりも心。一生懸命な想いは聞き手に必ず伝わる。」とまた、「興味ある分野だけでも、知識を深める」、「自分なりの切り口で、鹿児島を再発見、再体験することが、自分のPRの幅を広げてくれる」と自ら地域を知ることの大切さについて自信を持って語ってくれました。

 最後に「親善大使の役割は「プロ」には出せない、鹿児島を愛する一市民としての等身大の情熱でかごしまをPRすること」、「生き生きとして活躍するには、自分なりの見つめ方、学び方、感じ方で鹿児島の魅力を再認識し、それを自分の言葉で伝えること」と語りました。自分のありのままの姿が鹿児島の印象となる、いつも笑顔を持って対応することの大切さを述べていました。

 田中さんの自信に溢れた堂々とした発表の姿に1年間の活動の成果が凝縮されているように感じました。彼女の今後の活躍に期待したいと思います。

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 今回の研修会では、講師の中村朋美さんがPR大使としての「大衆の前での話し方」、「座るときのマナー」、「おもてなしの仕方」、「名刺の受け取り方」等について2時間あまり実践スタイルで講義しました。各PR大使も中村講師の緊張の中にユーモアあふれる話に、後半は楽しく勉強していたように感じます。

 これからの親善大使、PR大使に望むことは次の点です。
・自ら地域を愛し語れる人になってほしい。そのためには、日頃から地域を回り、歴史、 食、温泉、自然、農水産物、観光施設等を知ることが大切です。特にストーリーを交えて自分の言葉で地域を楽しく語れる人が印象に残ります。

・観光客は訪れたい地域の情報を、出来るだけ多く事前に収集したいと考えています。 周辺の市町村の魅力やアクセス等にも理解を深めることも大切です。最近の観光は個人旅行が主流であり、地域の生活・文化を語ることも求められます。説明会の会場では、地域を覚えてもらうためには、名産品や歴史上の人物、スポーツ等で活躍している人を例に出し、郷土色を出すのもいいと思います。

・滞在したときの「時間」の過ごし方や「情報」を伝授する場所でもあります。「鹿児島の人が行く温泉や食を堪能したい」「明治維新のルーツを訪ねたい」、「もう一度大使の住む鹿児島の魅力を知りたい」等、かごしまのファン作りに努力して欲しい。  

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 今回の研修会でPR大使同士のコミュニケーションも深まりました。相互に切磋琢磨し ながら、実践力を培って鹿児島の観光の誘客に努力して欲しい。 鹿児島の観光は、地域の人々の日頃の情報発信やおもてなしの心で支えられおり、PR 大使の発する微笑みや印象が、鹿児島に行ってみたい旅心を誘う役割を担っています。

 鹿児島中央駅前では、時々各県の親善大使やPR隊が誘客宣伝を行っており、皆さん一生懸命努力されている姿が伝わってきますが、他の地域との魅力の違いがはっきりせず、物産の提供におわれているように感じます。「わが地域の売りはこれです。来ていただければこのような体験ができます」等の強力なアピールも必要です。

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 東京オリンピック招致会場における滝川クリステルさんの「お・も・て・な・し」のPRは歴史に残る最終プレゼンでした。 観光地の最終的な評価は人です。県民一人ひとりがPR大使に負けず観光客を温かく迎える取組を定着させたいものです。

農業の6次産業化の推進を~生産者から経営者の育成を~

2013年10月15日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 南北600キロに及ぶ鹿児島県は、豊かな自然や多彩な観光資源に恵まれ、農業の産出額は、4,011億円にもなり北海道、茨城県、千葉県に次いで第4位となっています。また、観光客がもたらす消費額は3,538億円で、農業と観光は鹿児島の経済を支えている基幹産業です。(平成22年県政概況および観光交流局統計)

 特に九州新幹線全線開業による時間短縮効果で、関西から以西の観光客がのびていますが、鹿児島が誇る多彩な温泉や、世界遺産、歴史、文化、豊富な農水産物が観光客に喜ばれています。観光客と農業との接点をいかに多くつくることができるかが、地域に大きな経済効果をもたらすことになります。宿泊先では地元産品を提供し、農家はより新鮮なものを安定的に供給することが相互のメリットとなります。

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 今「道の駅」や農協・生産者の「直売店」が人気を集めているのは、顔の見える安全・安心の食材が魅力となっており、ドライブや旅行の帰りの立ち寄りどころとして定着しています。観光客は、「本物。鹿児島県」の魅力に気づき始めていると思います。


 一方、農産物は季節波動や価格競争にさらされ、鮮度の管理も難しいものがあります。原産品を調味料や干物、お菓子などに加工して観光客に提供できれば、販路の拡大にもつながるのではないでしょうか。

 農業の所得を増やすためには生産(一次産業)だけにとどまらず、加工(二次産業)、流通・販売(三次産業)まで手がける"六次産業化"が求められています。 一般的に農家が誰よりも立派なものを作っても、販売が他人任せでは他の人と一緒の市場に流れ、価格も市況に左右されます。

 自分の意図する値段で買ってもらうためには、「作った人の顔が見える」ことが大切です。作る人、買う人が一緒になって農業に参画していくことがこれからの農業には必要であり、農家の生きる道ではないかと思います。

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 零細農家の生きがいづくりとして、農家民泊の推進もその一つではないかと思います。 南さつま地域からスタートした農家民泊は、25年度は県下全域に広がり(一部離島を除く)、教育旅行の取扱が2万人を超えています。1泊2日の滞在期間、さつまいもや果物の収穫、家畜の世話など、日頃農家の方が行っている仕事の体験と民泊が子供達に感動を与えています。


 都市部に住む人にはグリーンツーリズムは人気ですが、従来から鹿児島に住んでいる人は、子供の頃から何らかの形で農業と関係し、また農村地域に住んでいた人も多く、農家民泊より、収穫体験やランチを組み合わせたメニューが人気を呼ぶのではと思います。 一方、鹿児島の農産物のブランド化、PRの強化が求められています。特に温暖な気候で鹿児島が優位性を発揮できる農産物の消費者へのメッセージが必要です。

 鹿児島が誇る「緑茶」や指宿地域で取れる早出しの「ソラマメ」のブランド化、沖永良部で収穫される春ジャガイモ、くだものでは、「徳光すいか」、「マンゴウ」、「パッションフルーツ」、「桜島小みかん」、屋久島の「たんかん」など、季節感と、地域を象徴するネーミングが必要であり、観光客にも収穫体験させることで、旅行の企画にも組み入れられます。また、最近注目を浴びている「薩摩なた豆」や「うこん」などの栽培拡大も課題の一つです。

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 熊本県の菊池市にある「コッコファーム」は、農業の循環型テーマパークです。地域との共生を柱に、「都市と農村の交流」、「農業の未来」、「地域の未来」、「環境の未来」の4つのテーマを掲げ、観光バナナ園、ふれあい館、健康館などをオープンし、その核となるのが年間93万人も訪れる「たまご庵」です。

 「たまご庵」のレストランでは、とれたての野菜やくだもの、新鮮な肉、たまごをたっぷり使った食事を楽しむことができます。体験工房では、自分たちで作った大豆を使って味噌や醤油づくりの体験もできます。また、蓋なしのダンボールに、バラに詰めたたまごを「三キロ入り朝取りたまご」として売り出したところ、1日に千箱も売れるほどのヒット商品となり、毎朝行列ができるほどになっています。

 近燐の住民をはじめドライブ帰りの観光客、貸切バスの立ち寄りも多く、多くのリピーターがおとずれています。売上高は23億円、167名の雇用も生み出しており、地域活性化に大きな貢献をしています。(平成23年実績)

 創業者の松岡義博会長は、【生活者にとって大切な農業は、「生産者の顔が見える」ということである。生活者は自分や家族が口にするものをどこの誰が、どんなふうにして作ってくれて、食卓に届けているのがわかると、買ってくれる人も安心できるし、一面では農業に参画していることになると思う】と語っています。

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 これから日本は人口減少が顕著となり、農業従事者も高齢化が進み農村地域の発展は厳しいものがあります。儲かる農業、生きがい作りのある農業を推進するためには、若い世代の就農者を増やすことが求められます。また、企業との契約栽培の拡大も安定的経営に繫がります。農業生産者で経営者の感覚を持った人を育て・支援することが重要と思います。

 地域はこれまで、自動車、電気、IC等の工場誘致に努めてきましたが、今ではその多くが海外に移転し撤退する企業も相次いでいます。これからは、地域の特産物を加工・商品化して売り出し、地域の雇用を確保することが重要ではないかと思います。

 観光による交流人口を増やし、地域を守るためには農業の発展は不可欠です。日本には美しい山河があり、各地においしい湧水が出るのは田畑があるからだと思います。 農業の六次産業化で雇用を増やし、地域を活性化していくことが問われています。

参考文献:コッコファーム創業者の「人生十訓」松岡義博

価格≪価値となるおもてなしの心を~リピーターの確保が企業の成長を支える~

2013年10月7日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 10月に入り、えびの高原のススキが色づき、コスモスは彩りが鮮やかとなり、秋の風に吹かれている姿が美しく感じられます。韓国岳や出水市にある上場高原は、今度の連休は賑わうのではないでしょうか。


 9月29日~10月1日の2泊3日の日程で、日本旅行作家協会のメンバーと関係者が初めて鹿児島を訪問し、県、観光連盟、4市(鹿児島市、霧島市、指宿市、南九州市)が協力して、受入の準備を行いました。

 会長は「不良老年のすすめ」、「二人暮らしを楽しむ」、「この1句 108人の俳人たち」等の著書で知られる元NHKアナウンサーの下重暁子さん、専務理事は、「YS―11世界を翔けた日本の翼」など、飛行機に関する著書で知られる航空評論家の中村浩美さんです。

 29日の夜霧島で開かれた交流会は民家を開放して行われ、地域の皆様手作りによる郷土料理に舌鼓を打っていました。旅行作家協会の会員の話では、民家を利用した交流会は初めてのことであり、周囲の景観がかがり火に映え、クラッシク音楽の演奏、太鼓や島唄、地元焼酎等のおもてなしもあり、参加者は感激していました。

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 また、鹿児島での行程は、黒酢工場、牛根側から噴火する桜島の観察、世界文化遺産への推薦が決定した尚古集成館、美しい庭園が魅力の仙巌園、山川ヘルシーランドでの入浴、釜蓋神社の参拝、知覧武家屋敷、特攻記念館等を見学し、鹿児島の奥深い魅力を堪能できたのではないかと思います。 いつか鹿児島を題材とした小説やエッセイを発表していただければと思っています。

 九州新幹線が全線開業して2年半が経過しましたが、5月から前年を越えるなど開業効果がなんとか維持されていると感じます。しかし宿泊数は、好調な施設とそうでない施設がはっきりしてきており、リピーターの確保が数字に反映しています。国内外から来られるお客様に対して、「鹿児島に来て良かった、そしてまた来てみたい」という印象を持っていただけるよう、「温かいおもてなし先進県鹿児島づくり」を推進していかねばなりません。

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 ところで、大手情報誌「と-りまかし」から「じゃらん宿泊旅行調査2013」の結果が発表されました。それによると「総合的な満足度」は、鹿児島県は、沖縄県に次いで2位となっています。3位が京都府、以下北海道、広島県、大分県と続き、熊本県が10位に入っています。沖縄県は調査依頼8年連続でトップを維持し、その差は2,6ポイントで、1位を目指してさらなる努力が必要です。


 「地元のホスピタリティを感じた」では、1位は沖縄県で2位、3位は震災の影響を払拭するべく頑張っている「秋田県」、「岩手県」です。鹿児島県は、昨年から大きく順位を上げ4位となっています。 「魅力ある特産品や土産物が多かった」では、沖縄県が1位で、鹿児島県は4位と健闘しています。

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 「地元ならではのおいしい食べ物が多かった」では、沖縄県がやはり1位で、鹿児島県は8位です。海の幸、ブランド肉等のほか、ソーキそば(沖縄県)、讃岐うどん(香川県)などご当地グルメが人気のエリアが上位に入っています。「黒豚・黒牛・黒さつま鶏」、「かごしま茶」、「芋焼酎・黒糖焼酎」、「さつまあげ」、「さつま汁や豚骨料理」、「鶏飯」等に加えて、最近S1グランプリで注目度が高く、鹿児島を感じる食の魅力をもっとPRする必要を感じます。

 ところで誘客には「おもてなしの心」が不可欠ですが、「株式会社観光ビジネスコンサルタンツ」の西川丈次さんは、「リピーターの育て方」について次のように語っています。 リピーターを育てるには一人一人が鹿児島の四季の魅力を語る必要があります。「満足」 は当たり前、これが今の消費者である。「満足」が創り出すものは、次回の購買時にたくさんある選択肢の一つに残してもらえることです。

 観光客が初めての土地で立ち寄る案内所の雰囲気が、旅人が訪れる街の最初の印象となる。最高のホスピタリティは、お客様に言われる前に実行することである。「もの」の価値の行き着く場所は「価格競争」である。「もの」を「こと」に変えて提供することが、「価格」を超えた「感動」を生む。「こと」化に必要な要素は、人間力であり、これこそがホスピタリティである。

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 人は自分の名前を呼ばれた時に、その存在を認められたものとして、喜びを感じるもの である。一度の出会いで感動を提供し、リピーターになってもらうためには、積極的にお名前を笑顔で呼ぶことである。


 サービスに接する時、お客様はこれまでの体験から事前期待を持つ。この期待を超えた 時に、感動が生まれる。サービスを受けるということに、今では当たり前の行為と捉えています。ホスピタリティへの取組強化を、経営者自ら実践し、おもてなしの心を職場、地域ぐるみで醸成していくことが重要です。
          ~平成20年おもてなし研修会より~

 また、ベストサービスセンターの国友隆一氏はサービスについて次のように語っています。
①不快にするサービス
店内は倉庫のように雑然として、きちんと接客する気もない。従業員同士、私語に夢 中になり声をかけると話を中断されたため不快そうな顔をする。通常と違う業務を頼むと、 あからさまに面倒くさそうに対応する。
②不満を残すサービス
お客さまにサービスを提供する意思はあるが、それが気分の段階にとどまっているため 対応にむらがある。個人的な感情に支配されがちである。機嫌のいいときは愛想がいい。 しかし気分次第で不機嫌な顔を露わにする。
③満足を与えるサービス
お客様の立場にたって対応することの必要性や意義は頭で理解しているが、ただそれを 「義務」ととらえているため、どこかとってつけたような感じが残り、なかなか平均点以上にいかない。マニュアル通りにできても、心が通っていない。
④感動を与えるサービス
一人ひとりのお客さまのニーズに焦点を合わせ、オンリーワンのサービスを展開する。 お客さまの、自分できづいていなかったニーズを引き出し、それが満たされるようにする。
⑤無償のサービス
お客さまからいただいた代金以上の価値を提供する。心を込めたワン・ツゥー・ワンの サービスを、人間性のレベルで、あえて意識しなくても実行できる。それが「感動を与え るサービス」です。
               ~9割のお客がリピーターになるサービス~国友隆一著

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 価格=価値ではなく、価格≪価値になることがお客様に感動を与えるサービスとなるのではないでしょうか。鹿児島への観光客を増やすためにはリピーターの確保が最重要であり、加えてメディアでの魅力発信が欠かせません。そのためには、おもてなしの心をさらに向上させる取組が必要です。


 先日福岡で乗車したタクシードライバーには感激しました。手を挙げると車を止めて自らドアを開け、乗車したら会社名と名前を名乗り「暑くありませんか冷房を強くしましょうか」、「いつも通っている道はありますか」、「会議時間まで余裕はありますか」と話しかけてくれて、到着地まで会話が弾み、降りる時もドアを開け帽子を取り挨拶してくれました。都会のまん中でしかも猛暑の中での数分間の時間でしたが、爽やかな印象が残りました。鹿児島でもこのような運転手が増えて欲しいと思います。

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 日本旅館協会に加盟している宿泊施設は、約3300軒ありますが、隆盛をきわめている施設は、日本の伝統的良さである「おもてなしの心」を大切にして、リピーターに支持されています。


 従業員は「いつまでも初々しい新入社員」の心で接することで顧客に指示され、水で薄めない温かいサービスの提供がお客様に喜んでもらうことになります。 サービスを提供する側も、達成感が高まり従業員は成長していきます。多くの職場で実践できることが、企業発展にも繫がります。 観光客から、素晴らしいおもてなしを提供する施設であると推奨され、口コミで広がっていくことが今求められています。 

「第6回かごしま観光人材育成塾」の開催について 明治維新150周年に向けて~地域づくりに求められるものとは~

2013年9月30日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 今年は猛暑に加えて異常気象が続き、日本各地が水害に見舞われましたが、鹿児島では桜島の爆発が続いているものの大きな被害は発生していません。 宿泊客数で見ると5月から前年を越えており、夏も好調に推移した機関が多く見られ、なんとか踏ん張っている感じです。

 奄美群島日本復帰60周年、イプシロンの打ち上げ成功、「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連施設」が、本年度にユネスコの世界文化遺産への推薦が決まるなど、鹿児島が話題となる出来事があったことも幸いしています。

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 ところで「かごしま人材育成塾」を開催しますが、今年で6回目となります。これからの地域づくり・観光地づくりには人材の育成が不可欠です。今年は、明治維新150周年を5年後に控えて、鹿児島を毎年どのようにPRしていくのかを主題に置いています。

 地域連携の必要性、全国的に話題となっているJR九州の列車「ななつ星in九州」の取組、世界自然遺産の登録を目指す奄美のエコツアーへの取組、九州新幹線開業前から観光振興に特に力を入れている薩摩川内市の観光客受入態勢づくり、誘客に欠かせないおもてなしの心の極意等150周年に向けて、地域づくりのあり方について学ぶ8つの講座を開催します。

 講師と講座の内容について簡単に紹介します。
 第1講座は、魅力ある観光地づくりについて、「佐多岬の今後の展望について」県観光課の森対策監が講演します。大隅地域はスポーツ合宿の増加やイプシロンの打ち上げ成功、「鹿屋航空基地史料館」への学生団体の増加、「永遠の0」の映画の舞台になるなど話題の地域です。九州本土最南端の佐多岬がかつての賑わいを復活すべく、その展望が語られると思います。

 第2講座は、霧島山上ホテル営業支配人の内山竹文氏が「まちの駅ネットワークを活かした地域づくり」について講演します。内山支配人は、第1回から連続して参加している受講者の一人ですが、今回は講師としての登場です。
 まちの駅は、「みちの駅」に比べて認知度は低いものの、設置数においては県内だけでも100箇所を越えています。「休憩」、「案内」、「交流」、「連携」のルールのもと、観光客が迷った時に何でも相談できる「よろず相談所」の役割を果たしています。各地の観光パンフレットや地域ならではの土産品を置くなど地域貢献にも積極的です。これからの地域活性化に向け組織の連携と情報発信に努めています。

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 第3講座は、有限会社 オフィスフィールド代表 砂田光紀氏が、「明治維新150周年に向けて 鹿児島をどのようにデザインしていくか」について講演します。砂田氏はまちづくりや博物館などの専門家であり、仙巌園の集成館事業や来年いちき串木野市にオープンする「薩摩藩英国留学生記念館」も手掛けています。

 海外の街並や伝統的文化財の保護・保存等にも造詣が深く、多くの市町村の事業に係わっています。鹿児島市の「旧集成館」、「寺山炭窯跡」、「関吉の疎水溝」が世界文化遺産に推薦することが決定した今、タイミング的にも絶好の機会ではないでしょうか。 明治維新150年に向けて鹿児島のまちづくり・地域づくりについて専門的な眼での話が楽しみです。

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 第4講座は、山口県観光連盟の専務理事松井邦昭氏による「薩長連携による観光振興と紙芝居を通した地域づくり」です。薩摩と長州は明治維新に深く関わり、また観光客誘致においても旅連を中心に一緒に取り組んでいます。1865年に薩摩藩が英国に派遣した留学生14人が現地でお世話になったのが、その2年前にロンドン大学に留学していた伊藤博文を中心とした長州ファイブのメンバーでした。

 共に激動の時代を駆け抜けた薩長の連携が今また、脚光を浴びる日が近いのではないかと思います。山口県は、全国的に珍しい「紙芝居」による地域の再発見に取り組んでいます。松井専務の紙芝居を演じる姿も見ものです。こうご期待待下さい。

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 第5講座は、JR九州のクルーズトレイン本部次長の仲義雄氏が、『JR九州の地域づくり戦略「ななつ星in九州」』について講演します。10月15日から出発するこの列車は、3泊4日コースの最高金額が55万円(二人一部屋)もする豪華な旅です。


 最初の宿が霧島地区の妙見温泉となっており、すでに秋の出発分は完売となっています。なぜ今この豪華列車に人気が集まるのか、また次々に生み出される観光列車の魅力について、JR九州の思いが語られるのではないでしょうか。

 第6講座は、観光ネットワーク奄美の水間忠秀氏が、「奄美のエコツアーの歩みと世界遺産登録に向けた取組」について講演します。奄美群島は、特異な動植物群の生態系が保護されていることから、本年2月国の「世界遺産暫定一覧表」に「奄美・琉球」を記載することが決定しました。

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 今後国立公園等の保護地域指定、ユネスコ世界遺産センターへの推薦書の提出、国際自然保護連合による現地調査、世界遺産委員会の審査を経て、早ければ平成28年の世界遺産登録を目指しています。水間さん達は日頃から、観光客に美しい奄美の自然の姿を案内しながら、動植物の保護に努めています。奄美の自然を守る取組、観光と共生することの大切さが語られると思います。


 第7講座は、「薩摩川内市のシティセールス~観光による地元盛り上げ作戦」と題して、薩摩川内市の古川英利氏が講演します。薩摩川内市は九州新幹線の終着駅一つ前の駅であり、開業後も苦戦が予想されていました。地域の活性化には交流人口の拡大が不可欠であり、周辺の観光資源の磨き上げと商品化が必要です。
 その中心として活躍されているのが観光・シティセールス課長の古川氏です。着地型観光の推進(きゃんぱくの開催)、甑島への商品化、観光人材の発掘、観光・特産品の株式会社の設立、高速船の運行(24年春予定)等新しい取組を次々に推進しています。その戦略が語られると思います。

 第8地講座は、「おもてなしの極意」と題して3人によるトークショーです。
 一人目は、顧客の評価が高いタクシー会社・旭交通のドライバーで、顧客から多くの礼状が寄せられている稲満和明氏です。
 もう一方はJTBの顧客満足度90点以上を13年連続受賞している城山観光ホテルで、フロント業務を担当している西田朱里さんです。お二人とも顧客からの評価は抜群であり、企業の信用にも貢献しています。 小生がコーディネーターとしてお二人から、なぜおもてなしの心なのか、その神髄に迫りたいと思います。

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 どの講師の方々もそれぞれの部署で活躍され、鹿児島の観光に大いに貢献しています。経験とそれに裏打ちされた話は、皆さんの心を捉えこれからの業務に必ず役立つものと信じます。また、夜学塾は、参加者同志や講師陣とのコミニユケーションの場であり、講座で聞けないより具体的な話が聞けると思います。

 これからも地域づくりには、まず人材の育成が重要と考えています。今まで人材育成塾を受講した方の多くが、それぞれの地域で頑張っていることは、鹿児島の観光にとって大きな財産となっており、すでに6回連続で受講を申し込んでいる方もいらっしゃいます。

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 2018年が明治維新150周年の節目の年になります。2014年には「薩摩藩英国留学生記念館」のオープン、甑島航路への観光高速船の運航、2015年には「国民文化祭」、その後明治150周年までは様々なイベントが予定されています。 この講座が人材育成と地域活性化につながることを期待し、多くの受講者が集まることを期待します。

第6回 かごしま観光人材育成塾 イベントページ

今年の反省を来夏の対策に活かす~7月の宿泊統計から~

2013年9月9日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

    秋風に たなびく雲の 絶間より もれいづる月の 影のさやけさ
                      左京大夫顕輔~新古今集~

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 朝夕の涼しさに猛暑が少しずつ和らいでいるのを感じ、夕方の空には赤とんぼが飛び、秋が近づいていることを教えてくれます。四季の変化は美しい自然の光景を生み出し、そこに詩や歌が生まれます。また、田や畑、山では美味しい味覚が育ち、秋は旅行をするのにベストなシーズンです。

 ところで、平成25年7月の観光動向調査が発表されました。「宿泊施設(調査対象85施設)」の宿泊数は、関東地域や九州地域、海外では特に台湾・香港からの観光客が増加したことにより、前年同期比4.5%の増となり、5月から連続で増加しています。 一方「観光入場施設・ドライブイン(調査対象23施設)」の入場・来場者数は全体として2.5%減少しています。猛暑の影響で日中の観光を控えたことが、減少の要因ではないでしょうか。

 地区別で見ると鹿児島・指宿・北薩・奄美地区が増加しています。猛暑に見舞われた今年の夏でしたが、比較的涼しい霧島地域や屋久島地区が減少しているのが気になります。 首都圏の登山用品専門店では、例年夏は屋久島が人気ですが、今年富士山が世界文化遺産に登録されたことにより、富士登山の人気が高まっていると話していました。

千尋の滝.jpg

 そのことが屋久島への一時的減少につながっていると思います。トレッキング愛好者や登山者は地域の気候に熟知していますが、一般の人はその実情をあまり知らないと思います。霧島は平地と比較した毎日の温度差を、屋久島は世界自然遺産の植物の生態や渓谷の魅力に加えて、里の魅力をもっとPRして誘客に努める必要があります。



 発地別宿泊客数は、九州地域が全体の50.1%で最も多く、その中でも県内の宿泊者が53,000人で49.1%を占めています。従来から域内観光の重要性について述べてきましたが、地元のお客様をもっと大事にして情報発信していく必要があります。地域と共に生きる施設であって欲しいと思います。 夏休みは特に県内客が増加しますが、それは家族旅行が多くなるシーズンであるからです。来年に向けてファミリー向けの商品のいっそうの充実が求められます。

 県外では関東地域から46,800人が訪れています。羽田空港からの便数が多いことや5月31日から成田空港からのジェットスターが就航し、新たな需要開拓がなされたことも寄与しています。 何といっても東京という最大のマーケットをいかに取込むかが常に問われています。東京からの情報発信を欠かさず、需要を喚起できる商品提供が求められます。

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 これからの商品企画に活かせる鹿児島の新たな情報について述べたいと思います。 ロケット・イプシロンの発射基地「内之浦宇宙空間観測所」は今話題の場所です。「秋のえっがね祭り」も始まりました。新鮮な魚介類が多く、また佐多岬に到る沿線は自然景観がすばらしく、ぜひドライブコースとしてお勧めしたい。

 百田尚樹さんのベストセラー「永遠の0」が12月21日から全国で公開になります。小説の舞台に鹿屋海軍航空基地が登場し、主題歌「蛍」はサザンオールスターズが手がけ話題となっています。大隅地域をPRする良い機会です。

 また、鹿児島が舞台となり撮影が行われた「六月燈の三姉妹」が、11月9日から鹿児島、宮崎で先行ロードショーされます。話題の「薩摩剣士隼人」も出演しています。鹿児島の夏の伝統的風物詩「6月灯」を、観光に活かすきっかけにしたいものです。

 来春には川内港から甑島の里港へ高速船が就航します。「はやとの風」、「指宿のたまて箱」等JR九州の観光列車を手がけている水戸岡悦治さんの設計であり、「おれんじ食堂」と組み合わせることで水戸岡ワールドが楽しめ、甑島への来島者が増加するものと想定されます。

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 鹿児島では2018年の明治維新150周年に向けて、毎年様々な行事が計画されていきます。2014年春には、いちき串木野市羽島に「薩摩藩英国留学生記念館(仮称)」がオープン予定です。留学生の滞在中の足跡、帰国後の活躍等の資料が展示され、当時の薩摩藩の先見性を学ぶ施設となるのではないでしょうか。学生をターゲットに誘客を図る必要があります。

 日本列島今年は猛暑、集中豪雨等異常気象が重なり、全国的に甚大な被害が出ました。鹿児島では大きな水害はなかったものの、噴煙が5千メートルにおよぶ桜島の大噴火があり、メディアでも大きな話題となり宿泊客のキャンセルという事態が起こりました。 世界的に温暖化現象が見られる中で、猛暑や豪雨などの異常気象は、来年もまた日本で発生するのではないかと、私は懸念しています。

 今年の夏の取組を反省し、商品企画や情報発信に活かさなければなりません。 秋の旅行の中心は熟年で、比較的ゆっくりした旅行が好まれます。「おもてなしの心」を忘れず、リピーターへ繋げて欲しいと思います。 最後に「本物。鹿児島県」の魅力を積極的にPRし、夏の落ち込み分をカバーし、来春を睨んだ展開も進めたいものです。

環境保護の取組が屋久島の魅力に~世界自然遺産登録20周年~

2013年8月19日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 屋久島と白神山地(青森県、秋田県)の世界自然遺産登録20周年を記念するトークセッションが開催されました。両県知事をはじめ関係者が参加し、世界遺産保護や環境問題について活発な討議がなされました。 鹿児島県と青森県は、湾を挟んで2つの半島があり地図を反対にすると、地形が似たような県であることがわかります。

 日本で初めて屋久島と同時に世界自然遺産に登録された白神山地について説明したいと思います。

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 白神山地は「神々の住む森」といわれます。遥か彼方まで広がる広大な森の姿に、人知を超えた偉大な力を感じ、神々の姿を想起したのかもしれません。白神山地とは、青森県南西部から秋田県北西部にまたがる13万ヘクタールに及ぶ広大な山地帯の総称で、このうち原生的なブナ林で占められている約1万7千ヘクタールが世界自然遺産に登録されました。

 ここには、東アジアで最大級の原生的なブナ林、約500種の植物相、ニホンカモシカ(特別天然記念物)、ニホンザル、イヌワシ(天然記念物)、クマゲラ(天然記念物)、クマタカ、無脊椎動物などによる、豊かな生態系が存在しています。 こうした豊かな自然あふれる白神山地は、一般に「原生林」として知られていますが、決して人々の暮らしと離れた場所ではなく、マタギをはじめとする人々が古くから暮らしの糧を得てきた場所でした。

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 ブナの森は、薪炭、山菜、熊を与え、森が蓄えた水は川魚育むとともに穀倉地帯の水源となり、伏流水とともに海に流れ出た水は豊富な魚介を育んできまし礎となり、白神山地の恵みや厳しさと共生してきた人々の暮らしは、多くの文化人も惹きつけてきました。白神山地の周りの地域=環白神地域には、そうした、様々な魅力があふれています。

 一方屋久島は、鹿児島港から高速船で約2時間で行くことができます。洋上アルプスと呼ばれる屋久島最高峰の宮之浦岳をはじめ、1000メートルを越える山が連なり高い地域は北海道と同じ亜寒帯の気候と植生となっています。島の低い地域は亜熱帯であり、日本列島が縦に並んでいるのが、屋久島の姿です。

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 かつて屋久杉は藩の重要な財源であり、多くの木が切り出され、島外に搬出されました。切り出された屋久杉は、トロッコで麓まで運ばれていましたが、今でもその名残の線が残されています。 縄文杉登山には、毎年約10万人が訪れていますが、そのトロッコ列車の軌道を歩きながら渓谷を登っていくのも魅力の一つです。



 また、屋久島は文化人にも愛され、林芙美子の「浮雲」、椋鳩十の「片耳の大鹿」、「大造じいさんとガン」などの文学作品の中に屋久島の自然の美しさが描かれています。映画「もののけ姫」で一躍有名になった「白谷雲水峡」は、散歩姿で訪れることができ幻想的な森の姿に遭遇できます。

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 屋久島は「大川の滝」、「千尋の滝」、「ヤクスギランド」など気軽に車で行ける観光地も多く、年間の入込み観光客は25万人を越えています。(平成11年度) 二つの町が合併して島は一つになり人口減が少ないのは、安定した観光客の入込みによる観光産業の発展が地域への経済効果をもたらしているからだと思います。

 一方では今、屋久島の自然をいかに守るかが問われおり、登山者増による縄文杉の保護対策、繁忙期の一部地域への車の乗り入れ規制や、環境に優しいエコカーの導入等などが進められています。


 ところで昔から葛飾北斎や安藤広重などの絵で有名な富士山が、世界文化遺産に登録されました。富士山は日本の象徴として親しまれています。

 この度静岡県と山梨県では、富士山の保全協力金の名目で「入山料」の徴収を試験的に実施しました。その結果7月25日から10日間で、34,327人の登山者から3,412万円の協力金が得られました。両県では今回の協力金を環境保全に役立てる計画であり、来年度からの本格的導入に向けて検討を進めることにしています。

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 今回のシンポジウムで両県の知事は環境問題の大切さを再発信すべきと訴えていました。伊藤知事は、現在の任意の協力金で管理されている山岳トイレ問題にふれ、入山料を公的に徴収した方が良いかもしれないと問題提起されました。

 また、三村知事は地球環境をみんなで考え、ブナ型文化の動きにつなげようと訴えていました。いずれにしても環境問題と地域経済の発展が両立できることの重要性を感じました。

 2つの世界自然遺産は日本で最初の登録であり、その後、知床、小笠原と続きました。今「奄美・琉球」が暫定リストに掲載されています。正式登録が待たれるところです。

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 世界自然遺産20周年を機に、屋久島の自然保護の大切さについて入山者のみならず、県民ももっと理解を深める必要があります。屋久島での自然保護が徹底されることが、屋久島の魅力を世界に発信することにつながり、そのことが持続できる観光地になるのではないでしょうか。

参考:世界自然遺産 白神山地 発行環白神エコツーリズム推進協議会

武家屋敷を観光に活かす取組~日本の四季をいかした情報発信が必要~

2013年8月12日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

旧増田家(入来武家屋敷)2.JPG

 薩摩川内市の入来町にある入来麓は「重要伝統的建造物群保存地区」に指定されており、歴史的景観に優れた「建築物」、門・石垣・土塀などの「工作物」、生垣・樹木・水路などの「環境物件」が残されています。

 今年の4月には、入来麓武家屋敷群の「旧増田家住宅」が3年かけて大正期の姿に復元され、現在一般公開されています。

 薩摩藩は、領内を113の区画にわり、それぞれに地頭仮屋を設け、その周囲に「麓」という武士の集落を作り、その地域の行政と軍備を管轄させました。この制度は島津家当主の内城に対して外城といい、歴史用語として外城制と言われています。県内では、「出水麓」、「知覧」、「入来麓」の3地域が保存地区に選定されており、いずれの地域も武家屋敷群を中心とした武家町の名残を留めています。

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 このたび、出水市の渋谷市長、南九州市の霜出市長、地元薩摩川内市の岩切市長や、武家屋敷保存会、観光協会の役員等が参加し、3市の貴重な観光資源である「武家屋敷群」を観光に活かす取組をメインとした「重要伝統的建造物群保存地区」~武家屋敷サミット2013~が、入来麓の「旧増田家住宅」で開催されました。

 入来麓は、江戸時代の古い建築物もありますが、中世から近世の遺稿が残り、石垣と生垣が連続した区割りと入口から玄関まで何度も折れ曲がる入口が配され、これらの武家住宅の様相が残る武家屋敷群となっています。3つの武家屋敷群の中では、歴史的に一番古く、特に屋敷の配置や区割り、庭園・石垣など全体的な歴史的な景観が魅力的です。

 3つの「重要伝統的建造物群保存地区」を観光にいかに活かすかが課題となっており、3市が協調し連携することで新たな観光に発展させることを目的に、サミットを開催してきました。今までモニターツアー、共同宣伝などの取組を推進し一定の成果も上がっています。一方では武家屋敷群を核に、地域に波及効果をいかにもたらすかが問われています。武家屋敷群の活用方について述べてみたいと思います。

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 まず「知覧」に比べて他の武家屋敷群は県民にも十分知られていないと思います。メディアでの四季の情報発信や旅行エージェントの商品企画に反映させることが認知度を高めることになります。


 武家屋敷群を活用した様々なイベントの取組も必要です。日本の各地には四季折々に伝統的行事が残されており、それを活かす場所としてふさわしいと思います。 正月の式典、3月のひな祭りの人形の展示、春の桜の開花に合わせた花見の宴、5月の節句のこいのぼりの掲揚、秋の月見の宴、静かな音楽のコンサート、年越しの行事、年間を通しての野点や生花展等会場としては最高の舞台となります。そして女性を意識したイベントの中身が問われます。

 今多くの県民が訪れている大隅地域をめぐる「かごしま宝探し大冒険の旅」の武家屋敷版も面白いのではないかと思います。それぞれの武家屋敷に3つ程度の宝箱を設置して、回遊してもらえば全体の魅力を感じてもらえるのではないでしょうか。県民が訪れていない歴史的遺産であり、夏休みの親子の旅を誘因できる企画となります。 鹿児島で開催される歴史に関する学会のアフターコンベンションや、大学生のゼミの教材の場所としてPRすれば誘客のチャンスにもなります。

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 また、景観保護の大切さと地域全体に観光の波及効果をもたらす取組も求められます。 「旧増田住宅」では、高台の城跡に入来小学校が、目の前に民家がありますが、色彩に配慮し広告がなく景観が守られています。伝統的町並みが残る地域では、看板・広告等景観に特に配慮しなければなりません。

 観光客が地域を訪れる楽しみは、食や農産物などそこでしか味わえないものに触れる期待感です。手づくりの調味料や飲料水、スイーツ、地域の産物を加工したおみやげ物などを求めます。

 入来麓の古民家レストランでは、大馬越地区で取れたシソに、炭酸を入れたジュースがのどを潤おしてくれました。また、東京からIターンした女性従業員のおもてなしがすばらしく、地元野菜や豚肉を活用したランチが提供され、夏の盛りのひと時を過すことができました。

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 観光地の評価は人のおもてなしであり、そのことがリピーターを育て、持続できる観光地になるのではないでしょうか。子供たちが観光客に挨拶をし、手を振る姿は印象に残ります。

 3市の連携により、武家屋敷群をはじめ地域全体の活性化がなされることを期待し、ミンミンゼミが鳴き、緑の池垣と美しい田園風景が続く入来を後にしました。

         不来方(こずかた)のお城の草に 寝ころびて
                   空に吸われし 十五の心
                                   ~石川啄木~

参考:清色城跡と入来麓:薩摩川内市教育委員会
フリー百科辞典「ウィキペディア」

奄美のすばらしさとは~自然を守る人達の取組に感謝~

2013年7月22日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 日本には多くの島がありますが、沖縄本島、佐渡島に次いで大きいのが奄美大島です。県内には、28の有人の島があり、それぞれ独特の文化、歴史、自然の魅力があり訪ねてみたい島ばかりです。しかし多くの島は交通が不便であり、必ずしも観光客誘致には恵まれているとは言えません。

 厳しい自然や離島というハンディの中で生きてきた島の人々の暮らしの知恵は、われわれの生活に多くの示唆を与えてくれます。

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 島に客を呼ぶ方法としていくつかの方策が考えられます。イベントを開催する場合には、限られた船便や飛行機には定員があり、一度に多くの誘客は厳しくなりますが、南の島でしか見ることができない動植物などの希少価値や美しい海を活用した体験などを売りにPRすることが必要です。

 今年も13日から、「あまみシマ博覧会」が始まりました。 奄美の郷土料理をつくる、味わう。自然を歩き野生動物を見る、観察する。伝統的な工芸や芸能を体験する。美しい海でのマリンスポーツを体験する等、奄美群島で70のプログラムが用意されています。取材のために奄美を訪ね、今年のプログラムを体験しました。

 一日目は、観光ネットワーク奄美事務所の水間さんのガイドによる「亜熱帯の森・金作原原生林探検」です。 原生林の近くは道路の横まで木々が生い茂っているため、途中で車を乗り換えることとなった。

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 奄美の市街地から車で30分、金作原(きんさくばる)原生林では、10メートルを超えるヒカゲヘゴやイタジイ、タブノキ、イジュといった巨大な植物群をみることができます。また、アマミノクロウサギやルリカケスなど貴重な動物が生息する固有林で、その神秘的なジャングルは、映画「ゴジラ」の舞台ともなっています。

 水間さんのガイドは、奄美の成り立ちから、現在の動植物の生態系まで具体的な説明があり、理解しやすく興味深く聞いていました。原生林はひんやりとして涼しく、下界とは別世界の感じです。鳥や虫の鳴き声がいたるところからきこえてきます。いつまでも美しい神秘な自然が保たれることを祈りながら2時間あまり散策しました。

 2日目は奄美群島観光物産協会の石原さんの案内で、南部にある黒糖焼酎工場の見学と宇検村、湯湾岳、大和村を廻りました。奄美特産のひとつである「奄美黒糖焼酎」は、古くから長寿の酒として楽しまれており奄美群島でしか作ることができない焼酎です。

 黒糖焼酎の命は黒砂糖と水にありますが、宇検地域は後背に奄美で一番高い湯湾岳があり、そこに降る雨が湧き水となり、美味しい酒を作り出しています。特に音楽の振動音で美味しい酒を造る手法には、興味が惹かれました。また、工場誘致は地域での雇用を生み出していることで、地域づくりのあり方を示唆しているように感じます。

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 湯湾岳に到る渓谷沿いには、奄美独特の植物で他の植物に着生し成長する「オオタニワタリ」が見られます。豊富な水がこの植物を育てています。山頂から見る奄美の自然はすばらしく、世界遺産候補の一部になっている地域は特定できませんが、どこまでも続く森林とはるかに見える海の青さが印象的であり、この自然をぜひ世界自然遺産に登録したい思いにかられました。

 大和村に入ると、「島育ち」の歌詞に歌われている立神のある美しい海岸線にでます。 高倉を集めた群倉(ぼれぐら)が道路沿いにありますが、工事中の看板の置き方や休憩用に置かれた長椅子の背には飲料水メーカーの広告があるなど、まわりの景観に不具合で残念な気持ちになりました。美しい自然の中では、景観には特に配慮する必要があります。

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 夜は、24時間眠らない奄美の森、夜行生の生物が多く生息する山中の見学で「奄美の森のナイトウォーク・リスニングツアー」です。「観光ネットワーク奄美事務所」の越間さんに案内していただいた。暗い山道をゆっくりと車を運転しながら移動し、ウサギを見つけると、車のライトを消して息を止めて観察です。夜行性であるため灯りを警戒しています。

 今回は特別天然物のアマミノクロウサギ、オオトラツグミ、アマミイシカワガエル等貴重な動物に遭うことができました。特に絶滅危惧種に指定されているアマミノクロウサギには、7羽ほど会うことができ一同大感激です。暗い夜道にはカエルや昆虫がおり、ガイドさんは虫一匹も轢かないようにと慎重に運転していました。エコガイドの皆さんはそのような心構えで自然保護に努めていると、語った言葉が印象的でした。

 ハブは猛毒を持つ動物ですが、エコガイドさんの話によると、本来ハブは人間を襲うものではなく、従来から健康食品や傷薬に加工され共存共栄の道を歩んできたのも事実であり、最近では街角ではほとんど見かけることはないとのことです。 我々も3日間の滞在中、野生のハブに出会うことはありませんでした。奄美の大自然と共生していくことの大切さを教えてくれました。

 今後島への誘客に当たっては、エージェントのクラブ組織、大学やカルチャーセンター等で島の生活や文化を学ぶ機会を増やす取組や、自然保護の重要性を事前に学習する必要があると思います。そのことが奄美の価値を高めることになります。

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 最後の日に赤木名の海岸で、スタンドアップパドルというマリンスポーツを体験しました。台風接近で、予定していた笠利の東海岸は荒れてできませんでしたが、半島の反対側の海岸は凪の状態で海の魅力を堪能できました。


 サーフボートに立ちパドルで漕ぎ進むNEWスポーツで、小学生からご年配まで楽しめます。東京からのIターンの福田さんは、永年ハワイに住み、そのすばらしさを知り尽くしているひとりですが、今後奄美の海をこのスポーツのメッカにしたいと意気込んでいました。

 ところで2013年1月31日に、「奄美・琉球」を世界遺産暫定リストに記載することが決定しました。その理由として「地史を反映した独特な種文化・系統的多様化の過程を明確に表す見本」があることと、「世界的に重要な絶滅のおそれのある種の生育・生息地など生物多様性の生息域内保全にとってもっとも重要な自然の生育・生育地を抱合した地域」であることをあげています。

 日本で初めて「世界自然遺産」に登録された屋久島は、登山者の急増で、ごみやし尿処理が大きな課題となっており、登山制限や入山料などの問題が議論されています。登録前にきちんと条例を定めて、自然保護の大切さを知らしめる必要があります。

 また、地域一体となり、自然保護の重要性、世界自然遺産に登録されることの価値を共有しなければなりません。その意味でもエコガイドさんの考え方をいかに浸透させるかが「世界自然遺産登録」の重要なかぎとなると信じます。

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 45年前から奄美を訪ねていますが、あらためて奄美の自然のすばらしさ、貴重な動植物を保護することの重要性を認識しました。 13日から「あまみシマ博覧会」が始まっていますが、エコガイさんの案内で島の自然の魅力に触れてください。今年の夏は新たな体験で、本土と違った自然の姿に感動するのではないでしょうか。

高校野球とふるさと意識~母校の後輩の活躍に声援を~

2013年7月16日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 梅雨空が晴れて、入道雲が見られるようになり本格的な夏の到来です。近くの山の木々の間からセミの鳴き声が賑やかに聞こえてきます。これから約1ヶ月が鹿児島は一番暑い時期を迎えます。

      さじなめて 童(わらべ) たのしも 夏氷      ~山口誓子~
      夏の風 山よりきたり 三百の
               牧の若馬 耳吹かれけり     ~与謝野晶子~

 第95回全国高校野球選手権鹿児島大会が、82校の参加のもと開幕し、順調に進めば 23日には出場校が決定して、8月8日から15日間阪神甲子園球場で開かれる全国大会 に出場します。

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 鹿児島の高校野球といえば従来鹿児島市内の学校が甲子園行くのが常連でしたが、ここ 数年地方の学校も甲子園に出場するようになり、実力伯仲で楽しみが増えます。文武両道をめざす学校や優秀な選手が地元の高校に入学し入部するようになり、指導者も甲子園への夢を求めて練習に熱が入るのではないでしょうか。

 連日県立鴨池球場と鴨池市民球場で熱戦が繰り広げられていますが、皆様は母校の応援に行きましたか。母校の名前が刻まれたユニホーム姿や、後輩たちのプレーに一喜一憂しながら懐かしい高校時代に思いを馳せているのではないでしょうか。応援団席では在校生やOB、父母の会、ふるさと会などが校歌や応援歌などで応援を送っており、その仲間の列に自然に入っている自分の姿があります。

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 高校野球は日本の夏の一大行事で、メディアで毎日話題になることから、ふるさと意識を高揚させるスポーツではないかと思います。鹿児島市内には市町村のふるさと会や各高校の同窓会がありますが、甲子園出場校が決まると関西地域のふるさと会が大阪で激励会を開いてくれます。

 なぜそれほどまでにふるさと意識が高揚するのでしょうか。美しい自然に囲まれた環境や幼い頃から無心に遊んだ仲間が多い地域で育つと、人は郷愁が強くなるのではないでしょうか。特に伝統的祭りや、地域の運動会、文化祭、食育祭り等大人も子供も一緒になって、地域の活動に参加していたことも影響しています。そのような経験を持つ人々は母校の試合があると、ふるさとの仲間や田舎の近況を尋ねて、暑い中球場に足を運びます。

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   小生は何回となく、甲子園出場校の添乗で甲子園に行きました。かつては夜行バスや臨時列車が多くありましたが、最近では排出ガス規制などで環境基準をクリアーしたバスしか球場周辺への乗り入れができないため、利用交通機関も多様になっています。

 甲子園球場は選手にとって憧れの場所で、独特の雰囲気があり、試合では多くのドラマが生まれます。また、将来プロ野球で活躍しそうな選手がいるチームとの対戦は、興味がそそります。勝ったチームの応援席にいると、甲子園球場に流れる校歌に涙するOBやふるさと会の方々が多く感動を覚えます。校歌は、自分のふるさとを自覚させるものです。

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 やはり、ふるさとは心のよりどころであり、元気をかきたてる場所です。特に伝統ある学校が初出場となると、同窓会が資金集めに奔走し、選手の出場を支えています。出場にあたっての経費は、初戦は全校応援の学校が多く交通費、統一ガウン、帽子、メガホン、旗等数千万円かかるといわれます。地域、卒業生の支援は、ありがたいものです。

 甲子園出場は、地域に多くのメリットをもたらします。生徒募集に苦労していた学校が翌年から志願者が増え、勝ち進むと学校名も浸透し、観光ルート上にある学校は地域の名所として紹介されることもあります。

 昭和41年初出場で初優勝した「三池工業高校」は、炭鉱の街として知られた大牟田市にありますが、当時は労働争議の最中でしたが、沈滞していた街をよみがえらせ、ひときわ歓喜に包まれました。

 今年の選抜大会に出場した志布志市の「尚志館高校」は、大隅半島から初めての快挙であり、しかも地元の生徒だけのチームとして話題となりました。志布志市は今スポーツ合宿に力を入れており、全国にPR効果をもたらしました。

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 高校野球のすばらしいところは、生徒たちが一球一球に真剣であり、全力疾走でベンチへ戻るなど、教育的にも教えられることが多くあります。試合後は勝敗にかかわらず、応援席に向かって一列に並んで、一礼をする姿にはさわやかな印象を感じます。

 今年の鹿児島大会は激戦が予想されています。どこの学校が優勝するか楽しみですが、甲子園出場校には県民として大きな声援を送りたいと思います。 鹿児島に深紅の大優勝旗が凱旋することを夢見ているひとりです。選手諸君にとって青春の一ページを飾るすばらしい試合を期待します。

「六月灯」を日本の祭りに~郷愁の思いがつのる伝統行事に触れる機会を~

2013年7月1日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 通勤の途中に見かける団地の庭先に植えられた朝顔が、一雨ごとに上に伸びていく姿が見え、花が咲くのも間近であることを感じます。七月に入り八坂神社を皮切りに県内各地の神社、お寺では「六月灯」が始まります。

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 「六月灯」の始まりは、江戸時代2代藩主島津光久候が上山寺新照院の観音堂を造り仏像を安置した折、供養のために旧暦6月18日に沿道に灯籠を掲げ、道の明かりにしたのが始まりといわれ、鹿児島の夏の風物詩となっています。

 子供の頃浴衣姿に着替えて、金魚すくいや、かき氷、風船、綿飴、アニメの仮面等夜店が並ぶ参道を親に連れられて、そろぞ歩きした思い出があるのではないでしょうか。六月灯が始まると梅雨明けが間近となり、夏休みへ思いをはせる時期でもあります。

 ふるさとを離れた人々にとって「六月灯」は、郷愁を感じさせる場所であり、また子どものころを懐かしむ時間でもあります。今年も多くの場所で「ふるさとのかおり」を求めて出かける人が多いのではないでしょうか。


        ふるさとの 訛りなつかし 停車場の
                  人ごみの中に そを聴きにゆく
                                ~石川啄木~

         はなび花火 そこに光を 見る人と
                   闇を見る人いて 並びおり
                                 ~俵 万智~

 鹿児島市の照国神社の六月灯は、7月15日、16日の2日間にわたって開催され、境内には大小1000個あまりの燈篭が献燈され、沿道にはたくさんの夜店が並び、毎年多くの市民で賑わいます。その数は2日間で10万人を超え、県下最大の「六月灯」となっています。

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 ところで今年の5月に鹿児島でオールロケを敢行した「六月燈の三姉妹」がクランクアップしました。11月から鹿児島では先行ロードショーが行われます。

 大型ショッピングセンターの進出により客足が減少し、経営に苦しんでいる家族経営の菓子屋の再建物語です。複雑な家庭環境をかかえながら、一つの目標に向かって、夏祭り六月燈の夜にそれぞれが必至に起死回生の大作戦に出るが、その結末は・・・


 今、人口減少やモータリゼーションの発達、大型店の郊外進出、インターネットの普及等で消費構造の急激な変化がおこり、かつて賑わっていた商店街は苦戦を強いられています。 日本各地で同じような現象が起きていますが、映画は「六月灯」という地域に残る伝統的祭りを通して、家族の再結集を図り、お互いの信頼関係を取り戻す心温まる協奏曲です。

 主演は鹿児島出身の西田聖志郎が、他に、市毛良枝、吹石一恵、吉田羊、徳永えり、井上順等が出演します。市内の神社が舞台となり、地元の多くの人がエキストラとして映画づくりに参加しまし た。公開が楽しみな映画です。

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 ところで鹿児島の「六月灯」は県外の方には意外と認知度が低いと感じます。京都の「祇園祭」、博多の「祇園山笠」、熊本県の「山鹿灯籠まつり」等に比べてもメディアに登場することもなく、地域の祭りに終わっている気がします。

 一か月以上にわたって県下全域で行われている祭りは、全国にはなく大変貴重な祭りです。旅行パンフレットでの紹介や宿泊施設、飲食店、運輸機関等では期日ごとの開催場所を記載したパンフレットの設置や、「県人会」を通して知らせることが、誘客につながるのではないでしょうか。

 特に7月は鹿児島県への観光客が減少する時期であり、鹿児島らしさを感じる「六月灯」をもっと活かして宿泊客を増やす努力が必要です。

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 鹿児島には「六月灯」以外にも様々な夏祭りがありますが、長年人々の生活や風習に育まれ、四季の風情を感じさせる地域ならではの伝統行事となっています。 特に夏休み期間の祭りは、都会に出た人々の帰省の時期と相まって、懐かしい人との再会など感慨深いものがあります。

 人口減少が進む中地域の守り神の象徴である神社・寺院に集まり、年一回の祭りを集落の人総出で準備しているのがこの頃の祭りの姿ではないでしょうか。地域に残る先祖崇拝、神々への感謝の心は根強いものがあります。伝統的祭りを引き継いでいくことで、ふるさと意識が目覚め、魅力ある地域として生き残っていけるのではないでしょうか。

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 しかし最近の祭りは、厳粛な行事というよりも華やかさも組み込まれた祭りに変化しており、屋台(縁日広場)、特設舞台での歌謡ショーや、アニメのヒーローを中心としたキャラクターショーなども行われています。そのことは子どもの参加が増え賑わいの演出に繫がっているのかもしれません。

 今年の夏は、近くの六月灯に家族で出かけ、「ふるさとのかおり」を味わいましょう。そして秋に公開される「六月燈の三姉妹」のPRに努力したいものです。
  参考:「六月燈の三姉妹」のパンフレット

離島ならではの魅力発信を~NHKの土曜ドラマ「島の先生」始まる~

2013年6月3日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 天然の良港を抱える大島海峡を挟んで、瀬戸内町の古仁屋の街の対岸にあるのが、映画「男はつらいよ」の最終作の舞台となった加計呂麻島です。

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 大島海峡をステージに開かれる「奄美シーカヤックマラソンin加計呂麻」は、シーカヤックの国内最大級の大会です。また、湖を思わせるおだやかな豊穣な海では、クロマグロや黒真珠の養殖も行われています。

 奄美大島最南端の港町・古仁屋から定期船で25分の位置にあり、海岸線はどこにいっても綺麗で美しい砂浜が続きます。西安室の集落から見る東シナ海に沈む赤々とした夕陽は、心が動かさずにはいられません。

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 諸鈍にあるデイゴの並木は5~6月にかけて真っ赤な花を咲かせ、青い空と海に映えて一段と美しく感じられます。毎年旧暦9月9日には、近くの大屯神社で国指定重要文化財の伝統芸能「諸鈍シバヤ」が奉納され多くの人で賑わいます。

 また、明治末期から太平洋戦争時にかけ、本土防衛のために設けられた砲台や弾薬庫、特攻艇の艇庫が、この島にありました。今なお残る、戦争の傷跡がいたるところに残っています。戦争末期この島で震洋艇の指揮官として作家島尾敏雄は、出撃を待った。しかし出撃の命令は下らずに終戦を迎えています。

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 そうした極限状況の体験をもとに「出弧島記」、「出発は遂に訪れず」等の作品を残しています。加計呂麻島は島尾敏雄の妻ミホさんの生まれた島ですが、小説「死の棘」では極限状態で結ばれた夫婦が、断絶の危機に合い、絆を取り戻そうとする様を情感豊かに描いたもので、映画化されました。静かな入江となっている呑之浦には、文学碑が建立されています。

 NHKの土曜ドラマ「島の先生」が始まりましたが、諸鈍の美しい海岸も登場します。小さな小学校を舞台に、教師と子どもたちの成長の日々をハートフルに描くドラマです。

 ドラマの〈内容〉は、
 離島の学校(小中併設)には、東京や大阪などから、さまざまな問題を抱えた児童・生徒たちが留学し、里親のもとで暮らしている。
 都会のマンモス校でいじめや不登校に苦しみ、集団の中で隠れるように過ごしてきたこどもたちも、全校わずか十数人の学校では、生徒会・運動会・学習発表会・・、何をやるにも毎日が主役となる。

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 島人たちの深い人情や温かい視線に育まれ、自分がこの世界で必要とされて入ることを実感し、こどもたちは再生への糸口をつかむ。島を必要としているのは、こどもたちだけではない。日々の生活に疲れた大人たちにとっても、島は、限りなく深い癒しと新しい活力を与えてくれる。"島は日本の保健室"なのだ。

 島の学校で教師をしているのは、ヒロインの夏村千尋(なつむら・ちひろ)先生。千尋自身が、実母との関係に苦しみ、中学生時代にこの島で留学生活を送ったことがある。生徒たちの問題を一緒になって悩みながら、千尋先生も、もう一度人生をやり直そうと励んでいる・・・。
                        NHK広報局 土曜ドラマ 『島の先生』より

 主演の先生役は仲間由紀恵さんが演じ、チーフディレクターの屋敷陽太郎氏と音楽担当の吉俣良さんは、大河ドラマ「篤姫」のコンビで、主題歌「未来」は長淵剛さんが担当します。

 美しい自然と、地域の温かい感情が生み出すドラマは、大きな感動をもたらし、終了後は多くの観光客が訪れると予想されます。 今回のドラマは6回シリーズで放映されます。ぜひご覧下さい。

 ところで鹿児島市から100キロの地にある三島村も山村留学を受け入れています。三島村の硫黄島は人口112名程度であり、小中学校生は13名で典型的な過疎の島です。島の北部には、旅人が是非一度は訪れたい温泉に上げられている「東温泉」という天然の露天風呂があります。白浪が打ち寄せる岩場に湧く天然の温泉で、全国の秘湯ファンの人気を集めています。朝日や夕日を拝みながら入る風呂は格別です。

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 また、島では5月中旬から6月初旬にかけては、タケノコ刈りが楽しめ、2月には椿が満開になり、9月には椿油作りが楽しめます。又落人伝説の史跡や太公望にはたまらない釣りの良場、恋人岬など歴史、自然、温泉などが自然にコンパクトに配置された魅力的な島です。西アフリカ発祥の伝統楽器「ジャンベ」を本格的に習得できるアジアで唯一の施設もあります。今は亡き中村勘三郎さんが、二度「俊寛」を題材とした歌舞伎を演じた島としても知られています。

 また、県内には28の有人の島があり、それぞれ自然の魅力や文化、歴史があり訪ねてみたい島ばかりですが、多くの島は交通が不便です。島独特の祭りや食文化は観光素材として欠かせません。またユニークな海岸線、砂浜、生物、温泉などは魅力です。厳しい自然や離島というハンディの中で生きてきた島の人々の暮らしの知恵や、島唄、伝統芸能はわれわれの生活に多くの示唆を与えてくれます。

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 島に観光客を呼ぶ方法としていくつかの方策が考えられます。島でしか取れない産物や、島でしか咲かない花、珍しい生物など希少価値を売りに、情報発信することが重要です。

 大学とタイアップし、ゼミの講座の一つに島の生活や文化を取り上げてもらう取組や、カルチャーセンターや市民講座のカリキュラムに、島を訪れるコースを加えることで一定の入込客を確保できます。夏休みの若者向けのキャンプも売りの一つです。最近のエージェントの企画では、「日本の島を巡る旅」が人気を博しています。

 離島と言う不便性を、むしろ稀少価値として捉え、優位性に転換することが大事です、 南北600キロある鹿児島県ですが、海岸線は本土の長さより離島の長さが上回ります。 ぜひ今年は、まず「島の先生」の舞台加計呂間島を訪ねて、離島の学校の魅力を発見しませんか。美しい自然と温かいおもてなしが、あなたの来訪を歓迎するでしょう。
        〔参考〕しま旅:鹿児島県観光連盟、かごしまよかとこ100選:鹿児島県

長崎鼻の魅力発信の取組~南国情話のふるさと~

2013年5月27日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 昭和40年代の初めからから50年代前半にかけて、指宿駅に新婚客を乗せた列車が着くたびに、次の曲が流れ歓迎していました。

        『南国情話』 作詞:石本美由紀 作曲:三界 稔

   岬の風に 泣いて散る 浜木綿悲し 恋の花
                 薩摩娘は 長崎鼻の 海を眺めて 君慕う

   開聞岳の 山の巣に  日暮れは鳥も 帰るのに
                 君は船乗り 竹島遙か 今日も帰らず 夜が来る

   悲しい恋の 舟歌を 歌うて一人 波枕
             あの娘思えば 男のくせに 握る櫓綱(ろずな)もままならぬ

   逢えない人を 慕わせる 今宵の月の 冷たさよ
                 可愛いあの娘も 長崎鼻で 一人眺めて 泣くだろう

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 何となく情感がこもった詩とメロディは、指宿を訪れる人々の心に深い印象を残してきました。 「あこがれのハワイ航路」や「長良川艶歌」、「矢切の渡し」と2年連続日本レコード大賞を受賞した石本美由紀さんが、昭和29年に作詞されたもので、来年が発表から60周年にあたります。

 この歌に出てくる「長崎鼻」は、薩摩半島の最南端に位置し、荒波が押し寄せる灯台の近くまで行くと、西には開聞岳が、晴れた日には、屋久島や硫黄島を臨むことができ風光明媚な場所として知られています。

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 かつて都井岬、佐多岬と岬を巡るツアーや、新婚旅行全盛期には近くの長崎鼻パーキングガーデンや開聞山麓の新婚植樹園とともに多くのカップルで賑わいました。 しかし、バブルの崩壊による景気低迷で団体客が減り、新婚客は海外へシフトし、昔の賑わいはなくなりました。

 そこで、九州新幹線が全線開業し、「いぶすきのたまて箱」も運行され注目を浴びている今、地域の人たちが立ち上がり、もう一度長崎鼻に観光客を取り戻そうと竜宮城からの招待状と銘打った「指宿長崎鼻龍宮城まつり」というユニークなイベントを開催しました。

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 イベントの中心となったのは、長崎鼻の近くで「休憩店」を営む有村隆雄社長で、有志で集めた資金や人手を動員し手作りのイベントを創り上げました。
 「癒し、美と健幸、ふれあい」をコンセプトに、国内外で大活躍中のヨガの第一人者chamaさん、新進気鋭のストリートダンサーNayuさん、日本一の栄冠に輝いた山川ツマベニ少年太鼓、まち歩きの達人東川隆太郎氏らが参加する一大イベントでした。
 当日は小雨の降る天気でしたが、長崎鼻を臨む海岸の砂浜ではchamaさんによるヨガ教室もあり、老若男女多くの参加者があり、小生も元気をもらった感じです。

 また、オリビン万華鏡つくり体験や、長崎鼻から3つの海に向かって大声で叫ぶイベントには、近隣の小中学生が参加し盛り上げていました。有村会長は今日がスタートであり、来年はもっと多くの人を集めたいと語っていました。イベントの開催に尽力された有村様の並々ならぬご苦労に心からの感謝の気持ちを申し上げたいと思います。

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 岬の近くにある「龍宮神社」は、浦島太郎の伝説で有名であり、御祭神は豊玉姫命(とよたまひめのみこと・乙姫様)です。龍宮神社は、観光特急「いぶすきのたまて箱」のネーミングの由来にもなっており、人気急上昇中のパワースポットです。


 参道の近くには、地域グルメや農産物の展示即売会も開かれており、多くの観光客で賑わっていました。 指宿から「長崎鼻」に至る海沿いのルートは、遠回りにはなりますが、山川港、琉球貿易の遺跡、かつお節工場、ヘルシーランド、砂蒸し温泉、地熱発電、フラワーパークなど素晴らしい景観が残りもっとPRが必要です。

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 山川~根占航路が再開されましたが、全盛期は多くの新婚客で賑わい、タクシーの積み残しが出るほどの人気でした。観光客は、大型バスで宮崎から日南海岸をめぐり、都井岬、志布志、鹿屋、佐多岬と大隅半島の沿線の魅力を堪能し、対岸の指宿に宿泊するツアーが人気でした。

 今、国内ではかつて観光客が押し寄せて賑わっていた大型温泉地が苦戦を強いられています。高速道路の開通による観光ルートの変更、宴会型団体旅行の激減、物見遊山の旅行の減少、少子高齢化による旅行需要の停滞等マーケットは変化しており、観光地は常に進化している姿を提供しなければなりません。地域の生活・文化に触れる取組が重要です。 担い手の育成を図り、地域をコーディネートする人の存在が大事になってきました。

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 鹿児島を代表するパワースポットとして多くの参拝客が訪れているのが、南九州市頴娃町にある釜蓋神社です。頭の上に釜蓋を乗せて鳥居から賽銭箱までの約10mを歩ききったら願いが叶うというユニークな願掛けが人気となり、勝負・武の神を祀ることからスポーツ選手も多く参拝しています。

 この神社が有名になったのは、テレビ番組の「ナニコレ珍百景」で紹介されたのが始まりです。その後ロンドンオリンピックの女子サッカーチーム「なでしこジャパン」の活躍が、この神社に参拝したご利益のおかげとのスポーツ紙の報道もあり、一気にその人気に火が付きました。今では多くの旅行エージェントの企画にも取り上げられています。

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 3年前まではほとんど無名に近かった釜蓋神社が、多くの参拝客を呼ぶようになったのは、神社のストーリーとともに珍しい参拝スタイルが、メディアで取り上げられたことが大きいと思います。「龍宮神社」、「枚聞神社」、「釜蓋神社」の3社を巡るツアーも人気がでています。

 また、熟年層を対象に、かつてハネムーンのメッカであった南九州ゆかりの地を訪ねる企画も求められます。長崎鼻のストーリーを語ることで新しい魅力が生まれるのではないでしょうか。

 新幹線の全線開業から3年目に入り一服感がある鹿児島ですが、指宿地域は善戦しています。新幹線のブームが続いている間に次の魅力を創出する必要があります。指宿に連泊させる方策としては、2日目は、大隅半島にわたる企画も考えられます。

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 冒頭の「南国情話」の美しいメロディは、岬に至る参道のお店から流れてきます。口ずさみながら歩くと目の前に広い海が広がり、振り返ると秀麗な開聞岳が眺められ、この歌が長崎鼻の雰囲気を醸し出していると感じます。
 長崎鼻を訪れたら、「龍宮神社」に参拝し、「南国情話」のCDをぜひお買い求め下さい。「南国情話」の復活が、地域の活性化の一翼になればと思います。

         大隅の佐多の岬は 海越しに
                  突き出て青し 鷹棲むといふ
                                    川田 順

霧島に連泊したくなる取組を~変化した霧島連山を見るチャンスに~

2013年5月7日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

霧島連山の新燃岳は、2011年1月に大きな噴火をしましたが、現在は噴火警戒レベルは3(入山規制)で、火口から半径2kmの範囲は立入規制区域となっています。 新燃岳(1421㍍)を望む韓国岳(1700㍍)や高千穂峰(1574㍍)は登山ができます。

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県は、高千穂河原の登山口から新燃岳方面に向かう中岳探勝路を、4月27日から開放しました。探勝路はミヤマキリシマの群生地として登山者にはよく知られていますが、2011年の1月から立ち入りが規制となっていましたが、霧島連山の登山路拡大に大きな期待がかかります。

探勝路は、噴火の影響が心配されましたが、関係者によるとミヤマキリシマの新芽やつぼみが確認されており、5月の中旬が見頃と予想されています。
これから新緑とミヤマキリシマが美しい季節となり、多くの登山者で賑わい近くの霧島温泉郷は、宿泊者が増えるのではないかと思います。インターネットや顧客に対し情報発信の必要性を感じます。

ところで、新燃岳噴火当時は連日マスメディアで山の様子が報道されて、宿泊のキャン セルが相次ぎました。また、韓国人に人気のある韓国岳トレッキング、ゴルフツアー等が相次いでキャンセルとなったことも大きな痛手でした。

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しかし、観光客が落ち込んだ時期に、霧島温泉地域では、おもてなしセミナーや接遇研修等サービス向上に努力した結果、「じゃらん人気温泉地ランキング2012」では、「温泉地満足度第一位」に選ばれるなど、地域ぐるみのおもてなしが評価されました。 その後の回復も早く、今でも九州を代表する温泉地として多くのファンに支持されています。

これからの霧島地域の課題は、連泊させる取組の推進です。従来の登山客、湯治客だけでなく、遠方からのお客様が周辺地域の観光地に出かけ、もう一泊させる態勢づくりが求められます。

まず地域連携の強化です。近隣の大隅地域には、悠久の森、大川原峡、溝ノ口洞穴、桐原の滝や都城市の関之尾滝があり、駅を起点にウオーキング等に最適な場所です。四季折々に変化する渓谷や田園風景を見ながら歩くと、美しい日本の原風景に出会えます。 湧水町には「霧島アートの森」が、伊佐市には「曽木の滝」、「曽木発電所遺構」等文化施設や名勝旧跡が点在します。

また、人吉までも約1時間30分の距離です。人吉は、青井阿蘇神社を中心に酒蔵廻りや醤油・味噌蔵など街の佇まいが中高年の旅情をかきたてる場所です。

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霧島地域は鉄道の路線にも恵まれおり、「はやとの風」は人気の列車です。嘉例川駅に車を置き、吉松駅で「いさぶろう」「しんぺい」号を利用し、人吉で半日程度滞在し、嘉例川駅に戻る旅も沿線の風景が懐かしく、小旅行が楽しめます。


これからの霧島地域での重要課題は、教育旅行の誘致です。関西地域から25年度は5,200名、26年度は5,500名の生徒が集約臨時列車を利用し鹿児島を訪れます。

現在出水駅や鹿児島中央駅で下車し、県内に2泊していますが、新八代駅で下車した後、人吉でラフティングを体験し宿泊は霧島温泉で、翌日大隅地域で漁業やグリーンツーリズムを体験し、民泊する新しいコースを提案してはいかがでしょうか。

新幹線を利用し大隅地域に宿泊すれば錦江湾内のフェリーと運賃が補助される制度もあります。大隅地域は今グリーンツーリズムの誘致促進を図っています。 夏場の涼しい気候をPRして勉強やスポーツ合宿、各業界団体の県・九州大会等のコンベンションをもっと誘致しなければなりません。

他の地域に比べてJRの駅が多く、しかも空港や高速道路のインターが近く、移動する にはまさに恵まれた地域です。 また、温泉の質が多彩で、食、おもてなしの心、四季折々の自然が美しく何回訪れても飽きない地域です。多くの露天風呂が存在することから、外湯と農家レストラン、直売所廻りで過ごすのも良いのではないでしょうか。

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ところで、霧島山の開放を心待ちしているのは、韓国の人々も同じだと思います。原発事故、竹島問題等課題は多くありますが、円安傾向になり、鹿児島を訪れる韓国人は増加傾向にあります。

今年の2月には、九州オルレに霧島妙見コースが選定されました。コースは約11km、 所要時間は4~5時間で連泊する条件としては、大きなインパクトになるのは間違いありません。しかも鹿児島に宿泊する外国人の33%は韓国人であり、大きな経済効果も見込めます。(24年実績)



夏休み旅行のエージェントの商品造成もこれからが本番です。霧島への商品企画をぜひ増やして欲しいと思います。

県と観光連盟では、噴火、登山、イベント、食、花等について、ホームページで適宜紹介しています。今回も早速ホームページで探勝路の開放について掲示しました。県民の皆さんも、霧島山へ出かけていただき、新しい霧島の魅力を県外の方々に伝えて欲しいと思います。

九州新幹線も、3年目に入り開業業効果の勢いにも陰りが感じられます。今回の探勝路開放でも新燃岳の近くまでは行けませんが、久しぶりにミヤマキリシマの群生が観察できるのではと思います。

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新燃岳にできた新しい山の形は、霧島の名所になっています。霧島地域は世界ジオパークの認定を目指して、地域で様々な取組も推進しています。特に観光関連業界の方々は、自らの足で霧島地域周辺魅力を知り語って欲しいと願わずにはいられません。そのことが滞在者を増やすことになります。

県民の皆さんも山に登ることで、変化する霧島の山々の美しい姿に感動するのではないでしょうか。

グリーンツーリズムの受入で教育旅行のメッカに~屋久島との連携でオンリーワンの体験メニューを~

2013年4月1日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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平成25年度が今日からスタートとします。4月1日が月曜日ということでなにかと良い年の巡り合わせを感じます。 自治体や学校では新年度が始まりますが、新しい組織や新たなポストでのスタートの人にとっては、気の引き締まる年度始めではないかと思います。

         石ばしる
            たるみの上のさわらびの
                  萌えいづる春になりにけるかも
                         志貴 皇子~万葉集~

新学期になると、まもなく修学旅行も始まります。鹿児島県において民泊型教育旅行の受入は平成16年からであり、関東からの高校生が最初でした。

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特定非営利活動法人エコ・リンク・アソシエーションの調査によると、2校360名の受入が、25年度は67校、19,224人の取り扱いとなります。出水地域と与論島は独自の組織で受入を行っており、その数を合わせると93校、人員で24,800人になります。 受入農家は約1030軒(平成24年10月末現在)となり、一部の離島を除いて県下全域に広がっているのが他県との違いであり、今年から種子島での受入も始まります。

先日種子島で「グリーン・ツーリズムフォーラム」が開催され、熊毛支庁、西之表市、中種子町、南種子町、観光協会、受入農家等が参加して研修会を実施しました。南さつま市で「陽なたぼっこのよしおちゃん家」という民宿を経営している宮崎トミ枝さんから、受入の実情についての具体的説明がありました。受入前と帰るときの生徒さんの生活態度が大きく変わることについて、驚きや受入体制の責任の重さを感じました。

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種子島の本格的な受入は、26年度から始まりますが、1市2町の農家・漁家では定期的な研修会や先進地視察等を行って受入体制づくりの強化をはかっています。 26年には東京の著名な女子高校を受入する予定であり、これが試金石になると思います。

これからの課題としては、簡易宿所営業の許可を取得する農家・漁家を増やすことであり、それが他地域との差別化になります。取得には25,000円程度の経費がかかりますが、自治体の支援を含めて後押しが必要です。

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種子島は、本土最南端の佐多岬から南東約40Kmの位置にあり、鹿児島港から高速船で1時間45分と比較的本土に近い島です。日本で初めて鉄砲が伝わった地で、また、世界で一番美しいといわれるロケット基地があり、小中学校の社会の教科書には必ず掲載される島です。しかし県外の方には、どこにあるのか、どのような魅力があるのか、正確に答えられる人は少ないと思います。今後のPRが必要です。

行先として種子島という離島を選択していただいたからには、島ならではのオンリーワンの体験メニューとおもてなしを提供する必要があります。日本でいちばん早く収穫されるお米、糖度の高い安納芋、サトウキビ、レザーリーフファンなど豊富にあり、平坦な土地を活用し、グリーンツーリズムによる体験型教育旅行の誘致は最適と思います。

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島の東南端の海に囲まれたまばゆい景勝の地に、「種子島宇宙センター」があります。同敷地内にある「宇宙科学技術館」には、実物大のモデルやゲームなどを通して、宇宙開発におけるさまざまな分野を楽しみながら理解することができ、子供たちが宇宙に興味を持つことができる貴重な施設です。また発射場の近くまで行ける無料の見学バスがあり、大人も一緒に楽しめる場所です。子ども達に、いつか本番の打ち上げと、その迫力を体験させたいものです。特にSSH(スーパーサイエンスハイスクール)の誘致には最適な施設です。

また、島は遠浅のビーチが数多くあり、太平洋の荒波が打ち寄せる鉄浜海岸などは、絶好のポイントとなり、全国から多くのサーファーが集まり1年中楽しんでいます。農業体験の終了後、砂浜を素足で歩き、打ち上げられた漂流物や、貝殻を集めるなど海の体験は都会の子どもたちにとっては、貴重な体験です。

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千座(ちくら)の岩屋は、太平洋の荒波で削られてできた洞窟であり、千人が座れる広さがあることからその名前が付いています。白砂を踏みしめながら、近づくと潮の満ち引きで変化する洞窟が現れます。洞窟から太平洋に沈む夕日を見ると、生徒たちは感動に震えるのではないかと思います。生徒達にぜひ体験させたいメニューです。

西之表市内には赤尾木城址、日本初の火縄銃製造に成功した「種子島時堯公」の像、鉄砲の歴史が一目でわかる鉄砲館などがあります。また「月窓亭」は、大日本池坊総会頭職を務めた羽生道則などを輩出し、名だたる名家である羽生家の屋敷であり、明治以降においては、歴代種子島当主が居住するなどたいへん由緒ある建物であり、歴史の勉強に役立つのではないでしょうか。特に女子生徒には、生け花や茶道の体験場所としては最適です。

また、西之表港は種子島の玄関口であり、鹿児島、指宿、屋久島との高速船の発着港として恵まれた場所です。

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種子島への誘客には、「世界遺産の島・屋久島」との連携が不可欠です。それぞれの違った島の魅力を提供し、両島に宿泊させる取組が重要です。 佐世保市から定期船で3時間かかる小値賀島は、人口2700人の小さな島ですが、民泊を中心に年間修学旅行を10校受け入れており、島の活性化に大きく貢献しています。

24年度からスタートした錦江湾・離島航路修学旅行利用促進事業補助金制度もあります。九州新幹線全線開業による時間短縮効果が図られ近くなった種子島へ、グリーンツーリズムの魅力を活かし、教育旅行を誘致したいものです。

観光振興の目指すものは~組織の壁をいかに乗り越えるか~

2013年3月4日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

3月に入り各自治体では25年度予算の議会審議が始まりました。最近では観光振興に力を注ぐ自治体が増えており、議会の行方にも注目したいものです。

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2008年10月1日に「国土交通省」の外局として「観光庁」が設置されました。 日本も国策として観光が推進されることになったのですが、外国に目を転じると観光大臣を置いている国が多く、日本はむしろ遅すぎるぐらいの庁の設置ではなかったかと思います。本格的な少子高齢化社会を迎え、交流人口拡大による地域活性化は、自治体にとって重要な政策であり、観光振興は不可欠なものとなっています。

観光振興の推進にあたっては、行政、経済団体、業界、民間事業者の力が大きな柱になります。観光振興をすすめる観点で捉えると、それぞれの壁をいかに乗り越えるかが課題となっています。 まず、行政と行政の壁です。各自治体は税収が伸び悩む中で、多岐にわたる町の振興が必要であり、効率的な予算執行が求められています。

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そこで観光のパンフレットを点検すると、ほとんどが自分の市町村に関することしか掲載されていません。少なくとも県内のどの位置にあるのか、最寄駅もしくはインターチェンジ、空港等に合わせて隣接する市町村を載せることで相乗効果が生まれます。自分の町は知られていると思っている人が多いのではないでしょうか。

町民も訪ねたことがない遺跡や渓谷、神社仏閣が多いのが事実であり、我が町の存在を知らせるためには、他の町との連携が欠かせません。有名温泉地を持つ自治体は隣町と共同でPR活動を行うことで、着地型観光の誘客が宿泊につながります。

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ところで、単独で大阪や福岡の地下街等でPR大使を伴って宣伝をするケースが多く見られますが、その効果は疑問です。パンフレットを1万枚配ることができたと喜んではいられません。多くのパンフレットが地下街のゴミ箱に捨ててあり、来店客は商品欲しさに何回も並んでいる人が多くいます。 むしろ広域連携でPR組織を作り、テレビ局訪問等で情報番組に出演し、地域特産品の提供等を行うことが大きな宣伝効果を生み出します。

また、旅番組の誘致も知名度アップとなります。エージェントに対しては、ホテル等での説明会や商談会を開催することで、旅行商品の造成や人脈づくりにつながりその後のセールスにも役立ちます。

旅行エージェントの担当者と話をすると、単独の町で来られても個人情報の関係で店内での面談には制限があり、挨拶程度に終わり兼ねないと印象が薄いと言っています。 我が町をPRし、誘客したい理由はわかりますが、認知度、商品造成等を考えると自治体の連合でやる方が、費用も少なくてすみ効果が上がるのではないでしょうか。

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例年福岡、京都、大阪で毎年スポーツ合宿のセミナーを開催していますが、着実に実績が上がっています。県内の多くの自治体が参加しており、また、セミナーへの大学の参加校が増えているのは、一度に多くの自治体の施設・補助金・受入体制等の概要がわかり選択肢が広がり、その後の人脈づくりと合宿誘致に結びついています。行政と行政の壁を越え、連携体制が誘客に効を奏しています。

次は行政と業界との壁です。観光振興には商工会議所、商工会、農協、漁協、NPO法人等民間組織の役割も大きいものがあります。地域のイベントを実施する場合は行政と業界の協力なしには開催できないのがほとんどです。協賛金等の収受も大きな課題となります。 また、実施本部を作るとなると、誰をトップに据えるかでもめることがよくあります。プロジェクトの立ち上げにおいても同様で、組織作りに時間がかかり、肝心の実務体制 が後手に回ることがよくあります。

地域全体でイベントに取り組む場合は、自治体の関係者をトップに据えて、民間のリーダーを実行委員長において業務遂行した方がスムーズに行くのではないでしょうか。

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指宿の「菜の花マラソン」と「菜の花マーチ」は、行政と業界の役割分担がはっきりしており、成功しているイベントと思います。現場で時間的制約を受けにくいのは、民間の力ではないかと思います。組織作りに時間をかけるよりいかに動ける組織を作り上げるかが課題と感じます。

次に民間事業者と民間事業者との壁です。かつて日本の温泉地は、夕食の後は浴衣がけで歓楽街に出かけて、地域住民が行く店に繰り出し街もそれなりの活気を誇っていました。 バブル時期の日本の有名温泉地は、大型ホテルの建設、部屋の増設と多額の投資を行いました。また、「カラオケ酒場」や「夜食店」等二次会ができる施設を館内に作ったために宿泊客は外に出なくなり、歓楽街は寂れてしまいました。現在では個人旅行が主流となり、大型施設の中に作られた飲食店に入る人も少なく、施設の維持も困難となり、倒産や競売の施設が多く見られます。

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一方地域ぐるみで街づくりを行っている温泉地や県民が支持している地域は、いまでも活気があります。黒川温泉は、個々の施設よりも地域全体のまちづくりが重要と捉え、各施設が看板をなくすなど、地域の景観づくりに協力しています。山口県湯田温泉の西の雅「ホテル常磐」では、女将自ら演じるナイトショーは人気があります。自館の宿泊者だけでなく温泉街の他の施設の宿泊者にも無料で開放しています。


経営という面から捉えると自分の施設の売上げが優先しますが、他の施設とも連携して誘客に努めることが、地域全体の活性化になると思います。 スポーツキャンプやコンベンション等は一度に多くの宿泊客があるため、地域全体で受け皿を整える必要があります。地域で1軒の施設のみが栄えるより、魅力に富んだ個々の施設が生まれることが地域全体の魅力につながります。

日本は本格的な少子高齢化時代に入り、大きな消費拡大も望めず地域間競争も激しくなり誘客も難しくなっています。連携を強化して動ける組織を構築し、形より実のある成果が出るよう努力したいものです。 行政と行政、行政と業界、民間事業者と民間事業者それぞれ自分の立つ位置を貫けば、摩擦が起き仕事の成果は難しくなります。

観光の6次産業化が言われていますが、それぞれの部門の垣根を越えることは容易ではありません。しかし今や地域総力戦の気概で取り組まないと、持続できる観光地づくりは厳しいものがあります。

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観光振興の基本は、いつまでに何をし、どのような成果が期待できるかであり、そのことで組織や役割分担も決まってくるのではないでしょうか。これからは費用対効果がより厳しく問われることになり、行政・業界・民間事業者それぞれの壁を越えた取組が求められます。


最後に今回のコラムが250回目となりました。皆様の叱咤激励で今日までくることができました。心から御礼申し上げます。
                                   感 謝

「奄美・琉球」の世界自然遺産暫定リスト入りを地域浮揚に~屋久島の先例に学ぶ~

2013年2月25日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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奄美諸島は、鹿児島の南380~580キロメートルの海上に点在する島々で、奄美群島とも呼ばれています。環境省は今回の世界自然遺産暫定リストでは、奄美大島、徳之島、沖縄本島北部、西表島の4島を軸に対象地域を検討しています。 早ければ2015年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)へ推薦し、2016年夏の世界自然遺産登録実現を目指しています。



奄美・琉球が登録されると、県内では屋久島に次いで2箇所目となり、鹿児島県の知名度が飛躍的に上がるのは確実です。国内では白神山地(青森、秋田県)、知床(北海道)、小笠原諸島(東京都)に次いで5件目の世界自然登録となります。 また、「九州・山口の近代化産業遺産群」はすでに暫定リスト入りしており、その中に鹿児島の「集成館事業」も含まれており登録が待たれるところです。

ところで、知床や小笠原諸島は世界遺産の有力候補にあがりながら暫定リスト入りが遅れたのは、重要地域の法的保護担保措置が不十分であったためとも言われており、環境省は、奄美群島について2013年度の国立公園化にむけて、林野庁は奄美大島、徳之島の国有林の森林生態系保護地域の指定に向けてそれぞれ取組を進めています。

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このことから世界自然遺産登録への大きな一歩が踏み出されたと言えます。長い年月をへて育まれた奄美群島の豊かな自然、貴重な動植物の保護とともに、観光客への自然保護に対する意識向上、地域住民との共生をいかに図っていくかが問われています。

登録に向けて観光の視点から、屋久島を例に課題を整理したいと思います。 今年12月屋久島は、世界自然遺産登録から20周年を迎えます。屋久島は、亜熱帯から冷温帯の連続した植物の垂直分布が見られ、また、樹齢千年を超える屋久杉は標高700mから1800mくらいまでの樹林帯で見られます。1993年「白神山地」と一緒に世界自然遺産に登録されました。

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その後観光客は増え続け、2007年には屋久島への入込客は40万人を超え最高となりました。遺産登録時は1万人にすぎなかった入山者は、2011年は約9万3千人となっています。今では登山家の憧れの島として人気が定着しています。(入山者数は環境省屋久島自然保護官事務所の調査)

しかし登山者の増加に伴い縄文杉の展望デッキ、登山道やトイレの設置など整備は進んでいますが、植生の荒廃、し尿処理問題等が大きくクローズアップされています。 屋久島の自然を守るために町が2011年6月議会に提出した「入山制限条例案」は、様々な意見もあり否決されました。自然保護と観光振興の狭間で屋久島は、世界自然遺産の島を守りながらいかに経済的価値を求めていくかが問われています。

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遺産登録時の山岳ガイド数は20人程度でした。一般の観光客が山に登る機会が増えて、屋久島地区エコツーリズム協議会は、2006年からガイド登録制度を始めました。しかし従来から登録ガイドの基準が明確でないため、2012年11月現在82人が登録しているにすぎません。また、観光協会も登録制度を持っていますが、両方合わせて200人程度で正確な人数把握はできていません。また、夏場だけのにわかガイドの存在も指摘されています。

これからも自然保護や安全対策上登録ガイドの資格取得をぜひ進めて欲しいと思います。また入島者に対しては、「屋久島憲章」を、旅行エージェントに対しては、募集段階でのパンフレット上での自然保護の遵守等の告知徹底が必要です。

奄美群島はこれから「世界自然遺産登録」に向けて、エコガイドの養成や登録制度、自然を守る取組を、屋久島の取組を参考に進めていく必要があります。「世界自然遺産登録の意義」や「観光客増加への対応」等地域住民への日頃からの細かい情報発信も求められます。

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また、沖縄と差別化したPR戦略が求められます。奄美は手つかずの美しい海や森林地帯が多く、多種にわたる動植物が生息していることから、自然の生態を見せることが求められます。春先は本土に比べて花粉が少ない島であることから、ヘルスツーリズムの推進も欠かせません。島唄や伝統的踊り、島料理など本土と異質な生活・文化も残っています。 名瀬港は大型クルーズ船の寄港が容易であり、登録後は外国人観光客が増加することから、受入体制の充実も求められます。

奄美群島は、すでに世界自然遺産に登録されている「白神山地」、「知床」に比較すると、温暖な気候に恵まれ1年中行くことができます。また、「小笠原諸島」は飛行機の定期便がなく、東京から船で24時間かかります。同じ離島にありながら奄美大島と徳之島は、飛行機の定期便もありアクセス的には優位性があります。

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ところで奄美群島は、今年日本復帰60周年にあたります。「世界自然遺産暫定リスト」入りの効果を奄美大島と徳之島の2島に終わらせるのではなく、群島全体にメリットもたらすことが重要です。各地を訪問した際は、「日本復帰60周年」、「世界自然遺産暫定リスト入り」の二つのロゴ入り名刺やパンフレットを渡してPRしてもらいたい。また奄美群島出身者の県人会は、関西、関東、鹿児島等多く組織されており、その人たちを通じてのPRもお願いしたい。

長年観光の仕事に携わっていますが、県外の方々は、意外と奄美群島の位置や魅力を知りません。今回の暫定リスト入りはPRの絶好の機会と捉えて、奄美群島一体となり宣伝を強化して、群島の知名度アップと経済的浮揚に繋げる必要があります。昨年発足した奄美群島観光物産協会は、大きな重責を担うことになります。奄美全体をコーディネートする人材の育成も急務です。

小生が始めて奄美大島を訪れたのは、44年前ですが当時は、1500トンクラスの船は、デッキまで人があふれており、特に若い女性層が奄美群島を訪れていました。 今後は年代層を問わず世界各国から世界自然遺産の島を訪ねることが予想されます。周到な準備を進めたいものです。

世界自然遺産登録が奄美に大きな変化をもたらすとともに、交流人口が増大し新たな産業や雇用が生まれます。県民あげて盛り上げをはかりたいものです。  

ふるさとを愛する心を育む~郷土の魅力を語れる若者であれ~

2013年2月18日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

卒業式のシーズンがやってきました。それぞれ学校での思い出を胸に、進学や社会人となる新しい人生へのスタートにあたり、夢を持ってがんばって欲しいものです。

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小生の50年前の小学校の卒業式は、在校生も参列する中で古い木造の講堂で行われたことを記憶しています。外では桜のつぼみも大きくなり開花間近の春の陽気でした。式の最後は在校生、卒業生、先生、父兄全員で「仰げば尊し」の歌の合唱です。当時は歌詞の意味が良く解らず歌っていましたが、静かな雰囲気の中で、格別な思い出として残っています。

しかしながらこの歌が、様々な理由により卒業式で歌われないのは残念です。歌詞は、先生方に対する感謝の気持ち、学校を育っても何事にも心を尽くすことの大切さ、慣れ親しんだ学び舎でのお互いの努力への感謝、希望にふくらませて卒業することへの誇り、お世話になった人々へのお礼と感謝、人間として努力することの誓い等を表しています。

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教育の価値は、卒業後30年たって理解できると言った人がいましたが、私にとってこの歌は何事にも替えられない「絆の大切さ」を問うているように感じます。 裕福な時代ではなかったけれども、明るく、みんなが一生懸命前向きに過ごしていた子供時代が懐かしく思い出されます。

ところで、卒業を機にふるさとを離れる人が多くなる時期です。日本は少子高齢化が進み、地方を中心に過疎化が進んでいます。かつて学んだ学校は閉校となり、今では地域の交流の場所として、衣替えしているところが多くなっています。 県内を旅すると、廃校になった校門の横に学校の歴史を刻む記念碑を見ることがよくあります。かって子ども達が走り周ったりキャッチボールをした運動場は、土のグランドが消え一面に草が茂り、過ぎた月日の長さを物語っています。

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鹿児島県は南北600キロメートルに及び、これは鹿児島市から大阪市までの距離になります。有人の離島は28ありますが、その中に小さな学校が多いのも特徴の一つです。子ども達は島に高校が無いためにやむなく県本土の学校に進学する生徒が多くなります。 また、高校を卒業すると県外の大学や企業に就職する生徒が多く、ふるさとを離れてしまいます。卒業後地元に帰る人は少なく、生まれた土地の魅力を語る機会も少なくなっています。

鹿児島県は、1956年(昭和31年)には210万人の人口でしたが、2010年(平成22年)の国勢調査によると、約170万人となっています。これからも人口は減少し、2030年には145万人と予想され25万人も減少します。 これからは交流人口を拡大することが不可欠であり、地域活性化の一つになるのではないでしょうか。

そのためには、県民が地域の魅力を悟り、自らPRすることで誘客を可能にすることが問われています。 地域に行くと、自分の町には観光客が来るような魅力はありませんと、語る人が多いのは残念なことです。日本人の国内旅行は成熟しており、温泉地で豪遊したり、名勝旧跡を主とする観光客は減少しています。

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今観光客は、地域に残る行事、祭り、ローカル線沿線の景観、地元の人が食べる食材、田舎のおもてなし、地域で輝いている人等に魅力を感じています。地域の情報発信力が問われています。 中央駅前にある「かごっまふるさと屋台村」が賑わっているのは、そこに行けば「かごしまの味」があり、「かごしまの人」に会えるからです。

今地域に人を呼び込むには、地域の生活・文化を旅人に提供することです。 雇用基盤が十分確立していない地域で生活することは大変厳しいことですが、交流人口を増やすことで新たな事業展開が可能となり、生活基盤を安定させる取組も欠かせません。 鹿児島は観光素材に恵まれ、また九州新幹線全線開業で県内各地へも行きやすくなりました。

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地域の魅力に触れる着地型観光が定着しつつあります。 ぜひ県外に出て行く若者に、鹿児島の魅力を語る人になって欲しいと思います。若者の旅立ちにエールを送るとともに、いつまでも「ふるさと」を忘れないで欲しいと思います。


      石がけに 子ども七人 こしかけて
                   ふぐをつりおり 夕焼け小焼け
                                       北原白秋
      海恋し 潮の遠鳴り 数えては
                   少女(おとめ)となりし 父母の家
                                       与謝野晶子

尚志館高校のセンバツ甲子園大会出場を祝す~大隅地域の知名度アップにつなげよう~

2013年2月4日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

志布志市は宮崎と県境を接する農業と漁業の町です。古くは密貿易の港町として栄え、宝満寺跡や大慈寺等の名刹を持つ門前町と栄えました。志布志は、かつて国鉄の3線の始発・終着駅でした。鹿屋から国分に至る大隅線、末吉から宮崎県西都城に至る志布志線がありましたが、現在では油津を通り南宮崎駅に至る日南線1線が残るのみです。

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志布志湾はかつて美しい白砂青松の海岸が数十キロに渡って続いていました。しかし現在では湾の埋め立てにより、大崎から波見にかけての海岸がその面影を一部残しています。 湾周辺には、多くの古墳や伝説が残されており、鹿屋市吾平町には、初代天皇である神武天皇御父君・御母君の墓塚「吾平山稜」があり、正月には多くの参拝客で賑わいます。 また、戦時中は急造の飛行場や、防空壕等が築かれ、戦争遺跡として一部は公開されています。

市内の宝満寺跡境内で、4月29日に行われる「お釈迦祭り」は、花嫁を乗せたしゃんしゃん馬や、踊り連のパレード、多くの市民や観光客で賑わう県内指折りの大きな祭りです。境内には湧き水が流れ、安産の地と知られ妊婦さんの参拝がたえません。

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また、大隅の國やっちく松山藩「秋の陣まつり」も見応えのある祭りです。まつりの期間だけ見ることができる「幻の一夜城」をはじめ、奉納武者行列は必見です。地元の若者たちが独自にアレンジした城下町風の会場は、驚きと感動の連続です。入場待ちの列がとぎれることのない「忍者屋敷」や「やっちくサスケ」等は、様々な仕掛けが施されており、一日遊んでも飽きることはありません。今年の秋の祭りにはぜひお出かけ下さい。

ところで第85回記念選抜高校野球大会が、3月22日から13日間の予定で阪神甲子園球場で開催されます。出場校は36校(一般選抜32校、21世紀枠4校)で、組合せ抽選会は3月15日に行われます。

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昨年秋の九州大会でベスト4まで勝ち進んだ志布志市の「尚志館高校」の出場が決定しました。大隅半島から春夏を通じて甲子園初出場となり、地域にとっても朗報です。従来鹿児島県の甲子園出場校と言えば、鹿児島市内の学校がほとんどであり、中には県外出身者が主力を占めている学校も従来見受けられました。

尚志館高校は、部員26人全員が大隅半島出身者であることが、地域の大きな誇りであり自信を持って甲子園に送り出せるチームです。甲子園という大舞台での活躍が今から楽しみです。

志布志市では、昨年の秋に志布志高校3年生の山口観弘(やまぐち あきひろ)くんが、岐阜県で行われた国民体育大会の競泳200メートル平泳ぎで、2分7秒01の世界記録を樹立しました。鹿児島県の期待の星誕生です。

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山口君は大脇雄三さんという名伯楽に子供の頃から育てられ、世界のトップスイマーに成長しました。卒業後は、オリンピック2連覇を達成した北島康介選手を育てた平井コーチの元で次のオリンピックでのメダル獲得を目指し、東洋大学に進学します。 志布志という地が高校生の活躍で、日本中に知れ渡りました。山口君のこれからの活躍に期待がかかります。

大隅半島は錦江湾を隔てて対岸にあり、交通アクセスも不十分なことから、観光客誘致にはなにかと不便を囲っているのも事実です。しかしスポーツ合宿の誘致においては、関西の大学生をターゲットに、京都・大阪で毎年セミナーを開催していますが、大阪南港と志布志港を結ぶ「さんふらわあ」の活用や練習グランドの充実、自治体の補助金の拡充等もあり、大隅地域の魅力が浸透し実績に結びついています。また、高校生を中心にグリーンツーリズムを活用した、「民泊」という取組が大隅全体に広がっているのも地域の活性化につながっています。

ところで昨秋には、永年の懸案であった佐多岬公園に通ずる道路問題が解決し、佐多岬周辺の整備とあわせて大隅地域の観光を大きく前進させる年です。

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道路の無料化は誘客の大きな要因となります。しかも佐多岬は、九州本島最南端の岬であり、宮崎県の都井岬、指宿市の長崎鼻を巡る「岬ツアー」が脚光を浴びると思います。 大隅半島へのアクセスは、先述の「さんふらわあ」の利用、宮崎からの列車、バスやマイカー利用が大半です。県民の多くに大隅地域の魅力を知らせることが求められています。

今回の甲子園大会出場で、大隅地域のことがメディアで放映され、その知名度が上がることは間違いありません。「篤姫」放映の際、番組の後半で必ず「その時薩摩では」というナレーションで、薩摩のことが話題になり、鹿児島への認識が深まりました

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大会期間は春休みであり、「さんふらわあ」や全線開通した新幹線を活用し、甲子園に出かけましょう。最後に尚志館高校生の活躍により、大隅地域が全国的に話題になるよう皆さんで応援しましょう。

川内髙城温泉の復活に向けて~鄙びた温泉地の魅力づくり~

2013年1月28日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

川内髙城温泉は、国道3号線から6キロ、JR川内駅から北方15キロの山間にある静かな佇まいの温泉で、その泉質の良さと湯量の豊富さから平成2年に「日本の名湯百選」に選ばれています。

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泉質は単純硫黄泉で神経痛、リューマチ、腰痛、婦人病、病後の疲労回復に効能があるとされ、秘湯として人気があります。九州新幹線の川内駅からバスで30分、肥薩おれんじ鉄道の西方駅から車で5分の距離にあり、アクセスは十分ではありませんが時間的には恵まれた場所にあります。

川内髙城温泉の課題とこれからの取組について整理したいと思います。

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まず認知度をいかに高めるかが問われています。県民がその場所や、魅力を知らないことがあげられます。西郷隆盛が愛好した温泉であり、指宿の「鰻温泉」、霧島市の「日当山温泉」もよく訪れたと言われ、それぞれの地にゆかりの記念碑があります。3つの地域で連携し、情報発信力を高める必要があり、手作りの温泉街のPRパンフや、情報誌の取材等を積極的に受け入れる必要があります。

2点目は団体依存の宴会型宿泊からの脱皮が求められます。高度経済成長期やバブル時代に全盛を極めた団体型宴会旅行は減少し、個人旅行中心の旅行が主流となり、企業のインセンティブも激減しています。宿泊客がゆっくり滞在し、そぞろ歩きを楽しむことができる温泉地への脱皮が不可欠です。また今の観光客は地域ならではの食を求めて、旅先を選びます。周辺に農家レストランや直売店があることが宿泊客を増やすことになります。

そして他地域、施設との連携が不可欠です。今の旅行は自分の地域だけでは完結しません。肥薩おれんじ鉄道と連携しPRに努めることが誘客につながります。3月から観光列車「おれんじ食堂」が運行されます。観光列車で川内駅で下車した人を、髙城温泉に宿泊してもらう取組が必要です。

3点目は各温泉施設の整備と他施設への入浴を可能とすることが重要です。地域内の外湯巡りを可能にするには、入湯手形を販売し、3箇所程度の温泉施設に入ることができれば、滞在時間も増加し消費につながります。特に女性の脱衣場のプライバシーの保護や清潔感を保つことも重要なことです。

イベントの開催には工夫が必要です。ウォーキング大会やマラソン大会の開催に当たっ ては、ゴールを温泉街にすることで終了後の入浴と宿泊を可能とします。また、多くの人 が参加することで、温泉地全体に波及効果をもたらします。

4点目は地域の人がたまり場となる施設を整備し、丸太づくりの椅子や卓袱台を用意し地域の人もくつろげる場所が必要です。お茶一杯の心で、井戸端会議のできる店が必要なのではないでしょうか。地元の人と観光客が交流できる場所としても活用できます。

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最後に消費の主役は女性であり、女性が訪れたくなる施設と仕掛けが必要です。露天風呂 の作りや洗面台の仕切り等女性は清潔感を求めます。小物の販売店や魅力あふれるカフェの設置も訪問意欲を駆り立てます。女性は、「美」や「健康」、「食」等に敏感です。また、女性の口コミは確実に広がります。ぜひ女性に好まれる温泉地を目指して欲しいと思います。

景観保護の観点から髙城温泉全体の景観を保つ取組が重要で、地域の自然・歴史・文化等と人々の生活、経済活動との共生を基本にまちを整備する必要があります。まちづくりをリードする公共施設の整備や周辺の自然景観を守り、看板や旗を無くすることも求められており、街道には木や花を植栽し、季節感を出すことが街に潤いを与えます。 街並みの前面からごみ箱を撤去し、宿泊施設や飲食店の位置を一つの看板にまとめることで、通りが甦ります。

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熊本県黒川温泉では、宿泊施設の位置は温泉街の入口の看板にまとめて書かれており、落ち着いた温泉の雰囲気を醸し出しています。髙城温泉も温泉の入口に案内板を設置することで、温泉街から余計な広告物が消えて、古い温泉情緒が出るのではないでしょうか。また、街灯もレトロ調の灯りに替えることで夜の雰囲気が変わります。

終わりに、地域住民が我が町に誇りを持つことが大切であり、地域に経済的効果をもたらすことが持続的な観光地となります。地産地消にこだわり、街全体に賑わいが戻ることが大切です。また、人の心に残るものはその土地の人の第一印象であり、琴線に触れるおもてなしの提供が求められます。

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日本の温泉地を見ると、バブル期に大型投資をした多くの地域・施設が今では、苦境に立たされています。古い建物を活用し、民具や人形を飾り、花や木を植栽し地域全体で落ち着いた小綺麗な街づくりを行っているところが元気です。若者の経営者を中心に新しいまちづくりに取り組んでは行くことも求められています。

地元のお客様を大切にし、徹底的に田舎にこだわることが人を感動させるのではないでしょうか。髙城温泉の復活を期待します。

南九州市頴娃地域が今熱い ~他地域との連携で誘客の促進を~

2012年11月26日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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今、鹿児島を代表するパワースポットとして多くの参拝客が訪れているのが、南九州市頴娃町にある釜蓋神社で、正式名称は射楯浜主神社となっています。頭の上に釜蓋を乗せて鳥居から賽銭箱までの約10mを歩ききったら願いが叶うというユニークな願掛けが人気となり、勝負・武の神を祀ることからスポーツ選手も多く参拝しています。

この神社が有名になったのは、テレビ番組の「ナニコレ珍百景」で紹介されたのが始まりです。その後ロンドンオリンピックの女子サッカーチーム「なでしこジャパン」の福元選手が、ゴールキーパーとしてシユートをことごとく防いだのは、この神社に参拝したご利益のおかげとのスポーツ紙の報道もあり、一気にその人気に火が付きました。

今では、サッカーの中村俊輔や澤ほまれなどのプロスポーツ選手や、県内外のスポーツ団体の参拝がたえません。旅行エージェントの企画にも取り上げられ、今秋から週末には指宿観光協会が、唐船峡と釜蓋神社を巡る着地型のバスツアーを始めました。海に突き出た場所にある朱塗りの神社の両岸は、白波が押し寄せ旅情をかきたてます。

3年前まではほとんど無名に近かった釜蓋神社が、多くの参拝客を呼ぶようになったのは、神社のストーリーとともに珍しい参拝スタイルが、メディアで取り上げられたことが大きいと思います。皆様の地元でも地域に眠る観光素材を点検し、ストーリーを語ることで新しい魅力が生まれるのではないでしょうか。

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また、釜蓋神社から5分の所にある「タツノオトシゴハウス」も注目の施設です。 頴娃町の海にはタツノオトシゴが生息していますが、この施設は国内唯一の専業養殖場で、養殖出荷量は日本一となっています。 竜の容貌を持ち、夫婦仲がよく、オスが子供を身ごもるという珍しい生物で、そのことが観光客の話題となり、「タツ年」である今年は、月平均4000名を超える観光客が訪れており、無料で公開しています。

タツノオトシゴは、「幸運、健康、恋愛成就&夫婦円満、子宝、安産」のシンボルで、一度に1000匹の子供を生みます。施設では、Iターン者で代表の加藤潤さんが、映像を通しての出産シーンや、生簀の中で生き生きと動き回るタツノオトシゴの生態を詳しく説明してくれます。オンリーワンの施設で、オスが出産するというストーリーが観光客の人気の秘密ではないかと思います。

小生が訪れたとき、若いカップルや熟年の女性グループが、加藤さんのユーモアあふれる説明に笑い声が起こっていました。釜蓋神社までの海岸散策ルートの整備が急がれます。

すぐ近くにある番所鼻自然公園も見所の一つです。「薩摩富士」と呼ばれる開聞岳から昇る日の出は特にすばらしい。

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江戸時代に日本全国を歩いて測量し日本地図を作った伊能忠敬が、『けだし 天下の絶景なり』と、日本一の絶景として称賛した場所で、元内閣総理大臣の鳩山一郎氏の揮毫による伊能忠敬の石碑が建てられています。海を見下ろす場所に、「幸福の鐘(吉鐘)」があり、下にはタツノオトシゴをモチーフにしたハート型のかわいいオブジェも作られています。

訪れる人が鳴らす鐘の音に、散策している人の足も一時止まります。絶景の地に立つ「いせえび荘」で、開聞岳の雄姿を眺めながら味わう「いせえび料理」も格別です。ぜひお尋ねください。

360度のパノラマが広がる標高466mの大野岳も、見ごたえがあります。自動車で頂上付近まで登ることができ、展望台までの茶寿と呼ばれる108の階段には、還暦や喜寿、米寿などの記載があり、楽しみながら登れる場所です。東シナ海、桜島、佐多岬を一望でき、空気が澄んでいると遠くに種子島、屋久島、硫黄島を望むことができ、四季折々の展望が楽しめます。  課題としては、大野岳までの案内標識やトイレの整備が急がれます。

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ところで、頴娃町は従来知覧や指宿、坊津に抜ける通過の場所に過ぎず、番所鼻に食事に来る人しか目だった観光客はいませんでした。 頴娃の活性化には観光地づくりが必要と考え、業種や、官民の枠を超えた組織が結成されています。今地域一体での魅力発信に取組んでいるのが、「NPO法人頴娃おこそ会」のメンバーです。

いせえび荘の西村社長やタツノオトシゴハウスの加藤潤さんを始め、地域の若者から年配者まで集まり定期的に会合を開き、地域づくりの勉強会や先進地視察を行っています。

これからは、指宿、知覧、坊津に行く途中、立ち寄りたくなる地域になって欲しいと思います。頴娃町は温暖で県下屈指のお茶・花の産地であり、これを活用した地域ならではの特産品作りが求められます。宿泊施設が少ない中で、滞留人口を増やすことが地域経済の発展には不可欠です。 これから活力のある地域や商店街になるには、食の魅力が求められます。

釜蓋神社、タツノオツシゴハウス、番所鼻自然公園、大野岳に続く地域の観光素材の掘り起こしが望まれます。指宿枕崎線沿線は自然の原風景が残り、無人駅を活用した列車とバスを組み合わせたツアーも魅力があります。

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頴娃の茶畑は美しく、農道も整備されドライブにも最適であり、途中に美味しいお茶を飲む休憩施設や体験メニューの充実も急がれます。冬の風物詩「大根やぐら」もまもなく見られますが、やぐらのライトアップも一度試してみたらどうだろうか。


1月には、「いぶすきなのはなマラソン」と、「なのはなマーチ」の2大イベントが開催されます。イベントに参加されたお客様を頴娃地域に誘客することも可能です。

ところで頴娃地域から30分あまりの場所には、坊津があります。 坊津は、梅崎春生が自分の軍隊生活の経験をもとに、小説「桜島」の舞台として取り上げた場所で往昔、遣唐使が船出したところでもあります。また、遺作となった「幻化」でも美しい坊津の景観と人々の暮らしが描かれています。

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かつて、日本三津とうたわれ、古来から仏教文化が伝来して栄え、また中世から続いた交易港として多くの船が出入りしました。坊泊小学校の近くの高台にある「上人墓地」は四角形の珍しい墓であり、南北朝時代から明治維新までの勅願寺一乗院の歴代住職の墓所となっています。仁王像や石垣が残り当時の栄華を伝えています。

「輝津館(きしんかん)は、中国や琉球の交易の軌跡、一乗院を中心とした坊津の仏教文化や漁に関する民族資料など、坊津の歴史を語るものが展示されています。

坊津は、酒造メーカーのCMの舞台に、また、ショーン・コネリー、丹波哲郎、浜美枝が共演した「007は二度死ぬ」ではロケ地になり、秋目の鑑真和上上陸記念碑近くの駐車場に「007撮影記念碑」が建立されています。坊津には旅情をかきたてる場所が多く残っています。また、ゆっくりと歩きながらいにしえ人の行き交った石畳や、石垣が残る路地を巡るのも坊津を知る一つの方法と思います 

頴娃町は、鹿児島市から知覧、指宿のルートに加え、坊津に出かける人の休憩地点としての位置づけができます。観光客に境界はなく、知名度の高い地域とも連携し、ルートのPRも誘客には得策です。

頴娃町の恵まれた地理的条件を活かし、立ち寄りたくなる地域としての更なるブラッシュアップが求められます。 地域の皆様のご活躍に期待します。

古里温泉と佐多岬の観光について~鹿児島固有の観光資源をいかに活かすか~

2012年10月15日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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10月3日の新聞に、古里温泉の老舗旅館「ふるさと観光ホテル」の閉鎖と「佐多岬道 町購入へ」の対象的な記事が載りました。両方とも鹿児島の観光にとって大きな意味を持つ発表の記事でした。



まず古里温泉については、皆様も観光やドライブの途中に立ち寄った経験があり、身近な温泉として親しみをもっていた方は多いと思います。かつて林芙美子の小説の舞台にも登場しています。

 

 [私は北九州の或る小学校で、こんな歌を習った事があった。
              更けゆく秋の夜 旅の空
                  侘しき 思いに 一人なやむ
                        恋しや古里 なつかし父母
私は宿命的に放浪者である。私は古里を持たない。父は四国の伊予の人間で、太物(ふともの)の行商人であった。母は、九州の桜島の温泉宿の娘である。母は他国者と一緒になったというので、鹿児島を追放されて父と落ちつき場所を求めたところは、山口県の下関という処であった。私が生まれたのはその下関の町である。――故郷に入れられなかった両親を持つ私は、したがって旅が古里であった。それ故、宿命的に旅人である私は、この恋しいや古里の歌を、随分侘しい気持ちで習ったものであった。]
                                   「放浪記」:林芙美子

錦江湾に面した入り江に古里温泉はあり、露天風呂から見る朝日や夕陽は格別です。国道の高台には、林芙美子の文学碑があり
             「花の命は短くて苦しきことのみ多かりき」
女性を花にたとえ、楽しい若いときは短く、苦しい時が多かった自らの半生を歌った文が刻まれています。

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ふるさと観光ホテルの閉鎖は、一ホテルの閉鎖ということではなく、地域全体に大きな影響があると考えねばなりません。ホテルの露天風呂は、目の前に海があり、白い浴衣を身につけて入る姿が多くのメディアで取り上げられ、「龍神風呂」の魅力は全国的に知られています。また、近くにある有村展望所から見る噴煙を上げる桜島の姿は、迫力があります。

 

今度のホテルの閉鎖は桜島や古里温泉のイメージだけでなく、大隅地域にまで影響が出ると判断しなければなりません。また、現在垂水からや霧島市に至る一周のルートに人気がでてきています。せめて龍神風呂と休憩施設の存続を望みたいものです。

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次に佐多岬道を南大隅町が購入した件です。旧佐多岬ロードパークは1963年に開通し、64年に有料道路として開業しました。昭和40年代の前半から50年代の前半までは新婚旅行のメッカとして、宮崎から佐多岬、指宿温泉に至るゴールデンルートとして人気がありました。また、指宿温泉は大安の翌日は、ほとんどのホテルが新婚客であふれていました。

 

しかし、その後新婚旅行が海外に移り、バブルが終焉し団体旅行も激減し、薩摩半島との架け橋であったフェリーが休航した期間もあり、いつのまにか佐多岬も忘れられた存在となりました。岬にあったレストハウスは閉店し、展望台も永年の風雨にさらされ老朽化が目だっています。

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一方、太平洋に突き出した半島の島には黒潮が押し寄せ、先端にある灯台は九州本土最南端にあり「日本の灯台50選」にも選ばれ、錦江湾や南の島へ行き交う船舶の目印として重要な役割を果たしています。対岸に薩摩半島の開聞岳を望み、東シナ海に沈む夕日は格別です。

 

晴れた日には、種子島、屋久島を望むことができます。佐多岬の入口に位置する大泊には、北緯31度線(エジプトのカイロと同じ位置)の表示塔が立っており、車を止めて写真に納める観光客が見受けられます。

 

しかし、佐多岬展望公園に入るのに500円の入園料も徴収されることから改善策が求められていましたが、この度南大隅町が道路を購入することとなり、それにあわせて11月1日から園内の入園料が無料となります。
団塊の世代の退職や国内旅行の成熟化・多様化が進み、今では交通の便が悪く秘境と呼ばれる地域が脚光を浴びています。佐多岬も、例外ではありません。

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これからの佐多岬の魅力づくりが、宮崎、鹿屋、佐多岬、指宿、鹿児島への観光ルート定着になり、両県にメリットが出てくると思います。今年度は県の予算で調査費が付いており、佐多岬の公園整備を進める第一歩になると捉えています。 灯台が望める最先端まで行く途中には、かつて灯台守が住んでいた「灯台守の館」が藪の中にひっそりと佇んおり、整備すれば産業遺産として活かせると思います。

鹿児島県旅行業協同組合(中間幹夫会長)では、大隅の地域資源を活用した着地型商品「魅旅」を造成し集客も堅実で、地域からの大きな支持を得ています。大隅地域への誘客は県の観光振興にとって重要課題であり、今後佐多岬を組み入れた多くのツアーが造成されるものと思います。
山川~根占フェリーは、車の搭載には限度があり、お客様だけ根占港で受けてバスで、佐多岬周辺の観光を楽しむ方策も検討しなければなりません。

岬にはハイビスカス、ブーゲンビリアなど数多くの亜熱帯植物が生い茂り、熱帯のジャングルにいるような気分に浸ることができます。ソテツの自生地も圧巻です。 かつて「岬めぐり」というツアーがヒットしましたが、都井岬、佐多岬、長崎鼻を巡るツアーの復活も楽しみです。

最南端の神社として有名な御崎神社は、吾平山上陵と諏訪神社と一緒にパワースポットとして売りだすのも期待がもてます。

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また、御崎神社からジャングルの道を下ると、黒潮が押し寄せている海岸に出ることができ、灯台を目の前に望むことができます。ロープを頼りに一人ずつしか登り降りできないというスリリングな箇所もあり、トレッキング等体験型観光の醍醐味を味わうことができます。

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大隅地域の「錦江湾なぎさ街道」周辺には、荒平天神、かのやばら園、神川の大滝、雄川の滝、並列鳥居のある諏訪神社等特色のある観光地や、農・漁家の直売所、錦江湾に沈む幻想的な夕陽が望めるレストランなど旅情を感じさせる店もあります。


根占港の隣には、南大隅町の農産物や採れたての魚等を取り揃えた「なんたん市場」もオープンしています。フェリーの待ち時間に立ち寄り地産品を買って欲しいものです。 最南端にある役場、郵便局、小学校、ガソリンスタンド、駐在所、展望台等を訪ね、記念スタンプを押し九州最南端の地に来たことを実感したいものです。

 

最後に、佐多岬道の無料化に合わせて、佐多岬公園の整備が進むこととなり、これからの誘客についても弾みがつくものと確信します。そのためには、まず県民に訪ねてもらうことが大切ではないかと思います。

第5回かごしま観光人材育成塾」の開催について ~受講経験者が地域活性化の力に~

2012年9月24日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

九州新幹線全線開業から1年半が経過し、開業効果に陰りが見えるものの、鹿児島には多くの観光客が訪れています。

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また、二次交通の整備や新しい地域づくりが進み、従来無名であった地域に観光客が押し寄せるなど変化が起きています。一方では、急激な観光客の増加に「おもてなしの心」が追いつかず、サービスの低下が指摘されているのも事実です。

これからの観光を担う人材の育成と地域づくりを目指し、「第5回かごしま人材育成塾」を開催します。今年は、グリーンツーリズムの推進、地域づくりやJRとタイアップした商品づくり、情報発信、顧客管理、地域資源の開発、外国人受入の態勢づくりなど、鹿児島が今後取り組むべき課題について学ぶ7つの講座を開催します。

講師と講座の内容について簡単に紹介します。

第1講座は、九州旅客鉄道株式会社鹿児島支社長の松本喜代孝氏が、「JR九州の概要と今後の取組について」講演します。

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松本支社長は、九州新幹線博多駅の開業プロジェクトを担当されました。博多から鹿児島中央駅まで最短1時間17分となり、時間短縮効果は人、物、金の流れを大きく変えています。2013年10月から運行される九州一周寝台列車「ななつ星in九州」は、九州の新たな魅力発掘と需要開拓になると信じます。 JR九州の今後の戦略が語られるのではないでしょうか。


第2講座は、人吉市で地産地消をコンセプトに、郷土の家庭料理「ひまわり亭」を経営している本田節さんが「食資源を活かした交流によるまちづくり」について講演します。

本田社長は、「国土交通省地域振興アドバイザー」や「地域づくり団体全国協議会幹事」など多くの要職を兼務しながら、グリーンツーリズムに関する活動を精力的に展開されています。また、郷土料理伝承塾を主宰し、食文化の研究にも熱意を注がれています。
講演は年100回に及び、食、農、女性、教育、リーダー育成、グリーンツーリズム、地域づくりなど、様々なテーマで講演を行うなど全国を飛び回っている元気なお母さんです。常にチャレンジ精神を持って夢をかなえる為、全力で生きていらっしゃるパワフルな本田社長の講演になることは間違いありません。

第3講座は、香港エバーグロスツアーズ 代表取締役社長 袁 文英氏で、「香港からみた鹿児島のインバウンド」です。

EGLツアーズの日本向けの送客数は10万人を超え、香港の業界でそのシェアはNO1です。今年の7月15日から8月30日にかけて実施した香港から鹿児島への22回の連続チャーターでは、2,892人の送客がありました。
袁社長の経営方針を学びたいと、全国の自治体から講演依頼が絶えないなど有名な企業経営者です。仲間6人と1986年に会社を設立され、昨年25周年を迎えています。昨年の11月には香港のコンベンションセンターで盛大な25周年パーティが開催され、日本からの500人を含む国内外から1500人が参加し、その偉業を称えました。

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また、事業規模が拡大する中でも、常にお客様の視点での経営を貫いています。社会貢献活動にも積極的に取り組まれており、平成17年のスマトラ津波・地震の際は、被災地に対し従業員と会社で多額の義捐金を送られています。また、昨年の東日本大震災で被災した岩手県、宮城県、福島県に総額1億1955万円を届けています。

「おもてなしの極意」や鹿児島におけるインバウンドの在り方について示唆に富んだ話が聞けるのではと思います。

第4講座は、東京港区芝にある「セレスティンホテル」の取締役総支配人の若林正雄氏が、「薩摩とセレスティンホテルの歴史的・文化的つながりと心に残るおもてなし」について講演します。

ホテルのある芝・三田エリアは、「ビジネス」・「文化」・「教育」の重要拠点として、また、幕末の歴史が各所に刻まれている地として知られています。ホテルの所在地である芝3丁目は、旧薩摩藩屋敷跡という由緒ある場所です。ホテルでは、食材に鹿児島産をふんだんに使ったメニューの提供や休憩フロアーには、鹿児島県を紹介する書籍がづらりと並ぶなど、いたる所に鹿児島色を感ずることができます。
首都圏での厳しいホテル戦争を勝ち抜くため、顧客獲得をいかに進めているのか、その戦略が語られるのではないかと思います。

第5講座は、南国殖産(株)取締役執行役員都市開発事業部長・企画部長の今村浩氏が、「『かごっまふるさと屋台村』など鹿児島中央駅東口開発について」講演します。

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2012年4月26日に鹿児島中央駅東口近くのホテルの跡地にオープンしたのが、「かごっまふるさと屋台村」です。オープン当時から県内外から多くの人で賑わっていますが、そのプロジェクトリーダーが、今村浩氏です。また、中央駅前には、南国センタービルや鹿児島中央ターミナルビルが開設され、多くの観光客が訪れています。
一方九州新幹線全線開業で、駅前1番街の再開発や交通混雑の解消など新たな課題にも直面しています。その中心メンバーとしてこれからの取組が期待されます。鹿児島中央駅東口の将来の姿が語られるのではと楽しみです。

第6講座は、垂水千本イチョウ代表 中馬吉昭氏が、「垂水千本イチョウに育てるまで」について講演します。

中馬さんは、東京でのサラリーマン生活を切り上げて垂水の地で、30年前から夫婦2人で育ててきたのが、今の千本イチョウです。 春先の枝の伐採から、定期的な堆肥まき、雑草の除去等日頃からの手入れが、現在の千本イチョウを作りだしています。多くのメディアでの発信効果もあり、昨年の黄葉の見頃には、昼食場所を求めて観光客が詰め掛け、垂水市の飲食店が満杯になりました。

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また、垂水市内で信号待ちの車が発生し、千本イチョウを見に来た観光客の多さを物語っています。見頃は11月末から12月の上旬であり、今年は垂水港からシャトルバスの運行も予定されています。中馬さんは第1回から観光人材育成塾に参加されています。30年間イチョウづくりに懸けた熱い思いが聞けるのではないかと楽しみです。

第7講座は、観光養殖場「タツノオトシゴハウス」のオーナー加藤潤氏です。南九州市は、知覧が観光の中心ですが、最近話題になっているのが、「タツノオトシゴハウス」です。

加藤氏は、埼玉からのIターン者で「NPO法人頴娃おこそ会」のメンバーとしても活躍されています。よそ者視点での、地域素材の発掘が成功に結びついたのではないでしょうか。頴娃町はこれまで、観光というイメージとはほど遠い地域でしたが、知覧、指宿との3角地点にあることから、加藤氏らの努力が実り「タツノオトシゴハウス」、「釜蓋神社」、「番所鼻公園」の人気定着は、新しい観光ルートの開発につながったといえます。講演は地域づくりの手法を学ぶ良い機会になると思います。 

どの講師の方々もそれぞれの部署で活躍されており、経験とそれに裏打ちされた講演は、皆さんのこれからの活動に必ず役立つと信じます。また、夜学塾は、参加者同志や講師陣とのコミニユケーションの場であり、講座で聞けないより具体的な話が聞けると思います。

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地域づくりには、まず人材の育成が重要と考えています。今まで人材育成塾を受講した方の多くが、それぞれの地域で頑張っていることは、鹿児島の観光にとって大きな財産となっており、5回連続で受講を申し込んでいる方もいらっしゃいます。九州新幹線全線開業から1年半、この講座が人材育成と地域活性化につながることを期待し、多くの受講者が集まることを期待します。

地域資源を活かしたまちづくり ~これからのコミュニティづくりと地域再生~

2012年9月10日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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九州・沖縄地域で地域づくりに取組む団体の関係者が集まり、「九州沖縄地域づくり会議INかごしま」が、黎明館で開催されました。会議のメンバーは市長、大学の先生、商店街のリーダー、NPO法人、一般市民等、地域の活性化に取り組んでいる人など多彩なメンバーが参加し、地域資源を活かした地域づくりや後継者の養成、新しいコミュニティづくりなどについて活発な議論が展開されました。

ワークショップでは、県内3地域からコミュニティづくりを中心とした事例発表があり、参加者の関心を引いていました。取組について紹介します まず、南さつま市大坂地区からは、『元気集落「高齢化率60%超」からの挑戦』の発表がありました。

南さつま市の大坂地区は、鹿児島市の谷山地区から15分の位置にありながら、高齢化 率60%超の集落が点在しており、交流人口を増やし地域をどう活性化していくかが大きな課題となっています。

このような状況の中、山間のいわゆる限界集落である「長谷集落」では、『NPO法人プロジェクト南からの潮流』を中心に各種のプロジェクトに取り組んでおり、最近では笑顔にあふれた人々が集う元気あふれた集落となり、平成23年度には、「交流人口拡大のため、棚田づくりをはじめ、地域資源や歴史を活動を積み重ね、地域の絆をつくった」ことが評価され、総務省と全国過疎地域自立促進連盟から、過疎地域の自立・活性化に取り組む優良事例として表彰を受けています。

そして今年の4月に物産販売・交流施設「大坂ふれあい館」がオープンし、コミニュティビジネスに向けた動きも出てくるなど、新しい風が吹き始めています。市内から南さつま市に到る道路沿いにあることから、小生も「砂の祭典」の見学の帰りに立ち寄りました。

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地元の産品がところ狭しと並び、また地域住民が手塩にかけて育てた野菜の苗や、花が販売されており、生き生きとして働いている高齢者の姿が印象的でした。また、秋には「竹とうろう」のイベントも予定されており、多くの見学者で賑わうものと思います。ぜひお出かけください。

次に薩摩川内市の大馬越地区コミニュティ協議会の「コミニュティ復活で村おこし」の事例発表です。 大馬越(おおまごえ)地区は、薩摩川内市入来町の山間部に位置する約350世帯の小さな地区です。入来町大馬越地区コミニュティ協議会は、市町村合併を受けて平成17年に大馬越小学校校区に設置されました。日本の原風景が到るところに残り、農林業を主な産業とし、お茶、キンカン、ゴーヤ等が特産品として知られています。

大きな商業施設や産業があるわけでもなく、年々小学校の生徒数も減少傾向にあり、「過 疎化」という大きな問題を抱えています。しかし地区に住む大人から子供まで元気に活動しており、特産品づくりや手芸教室、オヤジバンド、短歌教室、さらに小学生と一緒の運動会、飛び入り参加自由の「大盛り上がり文化祭」など住民が生き生きと活動しています。

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地域ぐるみで地区の活性化に取り組んでいる印象を受けました。地区の取組は、全国的に話題となり、国、県、地域づくり団体、メディアの取材もたえません。交流会では、年長者の詩吟に合わせて、地区の子ども達が元気よく演舞を披露し、コミュニティが定着しているなと地域の強い絆を感じました。 

地区で手作りしている「しそジュース」を買って帰りましたが、飲んでみると新鮮なし その香りがなんとも言えないほど、地域の本物のおいしい味がしました。 この地区で育った子ども達はふるさとを離れても、きっと故郷での想いをいつまでも大 切にする人になるだろうと思います。

  石川啄木は故郷 渋民村を想い次のように歌っています。

       かにかくに渋民村は恋しかり
                    おもいでの山 おもいでのかわ
       その昔小学校の柾屋根に
                    我が投げし鞠 いかになりけむ

次に志布志市松山町の「大隅の國やっちく松山藩」のイベントを活かした地域活性化の 取組です。 松山町は、大隅半島の東部、かつての曽於郡のほぼ中央部に位置し、人口4,600人、 農業が基幹産業で、野菜と畜産の複合経営が盛んな地域です。近年は企業立地の取組、若者定住住宅の整備、むらおこし活動、産業振興等により、人口の減少は鈍化しています。

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パロディ王国大隅の國やっちく松山藩は、平成元年、若者有志が町内各種団体に呼びかけて発足し、「秋の陣まつり」というイベントを開催して、町民に大きなインパクトを与えました。地域づくりの第一に「人づくり」を掲げ、毎月定例企画会議を開催し、「若者が住みたくなるまちづくりとは何か」をメインテーマに掲げ、行政と連携しながら、あらゆる分野の検討・協議を重ねています。

イベント開催中には、地域で収穫された野菜の無料配布や牛の丸焼きなど「やっちく」の町にふさわしいイベントの充実を図り、人と人とのふれあいと、そこでの温かいおもてなしの心を提供しています。

イベントが継続できている要因として、「手づくり」へのこだわりです。地域に残る歴史 物語を、独自でアレンジをして祭りで表現しています。自分たちで企画したものを自分たちの手で制作し、実現していく。「手づくり」にこだわるかぎり、「人」の力が必要となります。地域づくりの第一に「人づくり」を掲げ、様々な人材がお互いに知恵を出し、汗を出し合う事をその手法とし、「手つくり」にこだわる事を実践し続けていることがすばらしいことです。

スタッフとして係わった一人一人を大切にし、その協力の度合い関係なしに、それぞれが主役になるよう役割を与え、活動の底辺を広げています。現在では中高校生も多数ボランティアとして係わっています。行政は、"お金は出すが口は出さない"という姿勢であり、行政職員が黒子に徹していることも継続できている大きな要因かも知れません。

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3地域の活動に共通していることは、箱物づくりから地域の自然、歴史、文化、生活を経済活動と結びつけ、「地域特性」を生かした地域づくりをおこなっていることです。 農・商・工連携による地域全体の連携を図り「食」、「祭り」、「特産品」、「花」、「灯り」などを有機的につなぐことが、地域の魅力付けにつながります。

また、地域住民の理解と協力を得て、多くの住民を参画させることが大切であり、そのことが我が町に誇りを持つことになります。「地産地消」を推進することで、多くの分野で経済効果が生まれます。

大分県の「日田市」、「佐伯市」、「竹田市」、鹿児島の「さつま町の宮之城地域」では、地元産の竹を使った「灯りのイベント」を開催して交流人口を増やしています。「大坂の竹とうろう」のイベントも同様に、認知度を高めて鹿児島市からの集客が必要です。

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最後に地域をまとめるリーダーの存在が重要であり、地域の様々な課題を整理し、ネットワーク化を進め、事業を展開することが求められています。今地域活性化の手段として、多くの省庁が支援策を発表していますが、その多くは地域の団体をまとめて事業実施主体を組織し、事業を進めることが条件になっています。地域に適任者を配置することで、組織は機能すると思います。

是非新たな視点で地域を見つめ直し、地域が元気になる取組を今以上に進めて欲しいと思います。

観光の在り方も大型の箱物をつくり、マスメディアを使って大量に集客することから、地域主導で個人のニーズに対応できる地域に人は集まります。十人十色から一人十色に、個人の趣向も複雑になっており、個性ある地域がこれから脚光をあびます。

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都会の人が地域に求めるものは、「地元での交流の機会をつくり、固有の体験をしてみたい」、「原材料は地場のものを使い、地元の人と一緒に会話しながら食べたい」、「製造元の見学や体験がしてみたい。地場の本物を手に入れたい」など地域ならではの取組を肌で感じことです。地域資源に磨きをかけ、交流人口を増やし、経済的価値をもたらすことが地域の活性化には求められています。

その意味でも3地域の地域づくりは、大いに参考になります。今後他の地域にも波及させたいと感じたフォーラムでした。

参考:九州沖縄地域づくり会議INかごしま:パンフ

ホスピタリティNo.1の県を目指して

2012年8月20日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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「じゃらんリサーチセンター」が、実施した「じゃらん宿泊旅行調査2012」の結果が公表されました。 この調査は、観光などを目的とした宿泊を伴う旅行実態を把握するために行っている調査で、昨年度1年間(2011年4月~2012年3月)の出張・帰省・修学旅行などを除いたマーケットの動向が把握できます。

鹿児島県においては、昨年の3月九州新幹線が全線開業しましたが、その後1年間の状況が把握できる興味あるデータです。

8つのテーマ別・都道府県ランキングは下記の通りです。

・地元ならではのおいしい食べ物が多かった
1位:高知県 2位:沖縄県 3位:北海道 8位:鹿児島県
*鹿児島県は、前年度圏外からトップ10入りしている。

・魅力ある特産品や土産物が多かった
1位:沖縄県 2位:京都府 3位:北海道 8位:鹿児島県

・魅力的な宿泊施設が多かった
1位:大分県 2位:沖縄県 3位:千葉県

・現地で良い観光情報が入手できた
1位:沖縄県 2位:京都府 3位:奈良県 5位:鹿児島県

・子供が楽しめるスポットや施設・体験が多かった
1位:千葉県 2位:沖縄県 3位:和歌山県

・大人が楽しめるスポットや施設・体験が多かった
1位:千葉県 2位:沖縄県 3位:京都府

・若者が楽しめるスポットや施設・体験が多かった
1位:千葉県 2位:沖縄県 3位:大阪府

・地元のホスピタリティを感じた
1位:沖縄県 2位:山形県 3位:秋田県
*2010年鹿児島県は2位、2011年は3位でした。

この調査で、鹿児島県の評価について、
①九州新幹線全線開業で、郷土料理や黒牛、黒豚など地域の食材の評価が高まった。
②駅、ホテル、運輸機関、観光スポット等で地域の詳細な情報入手が容易にできることや顧客満足の高い情報が多くなっている。

ことなどです。

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一方、大変残念なことは、「地元の人のホスピタリティを感じた」評価がトップ10からはずれたことです。開業後には多くの観光客が訪れることが予測され、新幹線開業前後に県内7箇所で「おもてなしセミナー」や接遇研修を実施してきました。東日本大震災が発生して、観光客の動向が心配されましたが、昨年の5月から今年の5月までは、大きな伸びとなりました。

しかし、一部の宿泊施設やタクシー会社、休憩施設等では、観光客の増加に対し「おもてなしの心」が追いつかず、クレームが発生したのも事実です。このことが調査に反映しているのではと思います。

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ところで、新燃岳の噴火で観光客が大幅に落ち込んだ霧島温泉地域は、地域ぐるみで観光客をもてなし、じゃらんの「人気温泉地ランキング2012・満足度一位」に輝きました。

また、東日本大震災で観光客が大きく落ち込んだ東北4県(山形県、秋田県、福島県、岩手県)が、「地元のホスピタリティを感じた」調査の項目では、2位から5位となっており、必至になって観光客へのおもてなしをしていることが、顧客の心を捉えていると思います。
また、沖縄県は、2012年度調査の8つのテーマで、全て3位以内にランクインしており、県民あげて観光客の受入に当たっている姿勢が伺えます。

もう一度「おもてなしの心」の定着に向けてを職場、地域ぐるみでその取組を強化していく必要があります。

取組として

・リピーターを確保するには、自ら県内の多くの場所に出かけて鹿児島の魅力を知り、語る必要があります。特に大隅地域や離島の魅力が伝わっていない。

・「顧客満足」は当たり前であり、「琴線に触れる対応」で「顧客感動」が求められています。 鹿児島弁で語り、鹿児島に来たことを感じさせることも必要です。

・観光客が初めての土地で立ち寄るのは、空港や駅の案内所です。お客様が自分の方に歩いてきたら立ち上がり、「いらっしゃいませ」とまず挨拶することです。案内所の雰囲気 が、旅人が訪れる街の最初の印象となり。最高のホスピタリティは、お客様に言われる前に挨拶することから始まります。

・「もの」の価値の行き着く場所は「価格競争」になりがちです。「もの」を「こと」に変えて取り組むことが、「価格」を超えた「感動」を生みます。「こと」に必要な要素は、人の心であり、ホスピタリティの原点です。

・施設等においては、売上など業績による管理から、顧客満足度を従業員評価の中心に据 えることで顧客目線の経営管理が浸透し、お客様への「おもてなし向上」につながると思います。

・人は自分の名前を呼ばれた時に、喜びを感じるものです。事前に予約されている方には、名前で呼ぶことが安心感にもつながります。特に駅等での迎えでは、名前を書いたボードを見ると観光客は安心します。

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一度の出会いで感動を提供し、リピーターになってもらうためには、積極的にお名前を笑顔で呼んでいただきたい。サービスを受けるということは、当たり前の行為と消費者は捉えています。「サービス イズ アワ ビジネス」を基本にホスピタリティへの取組強化を、経営者自ら実践し、おもてなしの心を職場、地域ぐるみで醸成していくことが重要です。

顧客の不満を解消し、温かいおもてなしの心でお迎えするため、地域ぐるみの新たな取組が始まっているのも事実です。挨拶の励行や観光列車に手を振ったり、到着時に駅等での湯茶の接待も実施しています。また、新しい地域グルメの開発も進められています。

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最後に、観光客の地域の最終的評価は、そこに住む「人」です。一度訪れた観光客が、リピーターとなり、「日本にもこのように素晴らしい県があった」、「また訪れたい」、「友人に鹿児島の魅力を紹介したい」、「あの従業員のいるホテルにまた泊まりたい」と認識していただくよう、「おもてなしの心」の再構築を目指したいと思います。

鹿児島県の評価が2013年の調査では、トップ3に返り咲くよう皆さんで努力したいと思います。

参考:じゃらん宿泊旅行調査2012、おもてなしセミナー 2010

知名町・田皆岬の魅力~景観保護と観光振興~

2012年8月13日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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県本土から約552キロの南に位置する沖永良部島は、沖縄本島に近く知名町と和泊町の2つの町があり、琉球文化の流れをくみ、「花と鍾乳洞の島」として知られています。 世界的に有名なエラブユリをはじめ、色鮮やかな草花が一年中咲き、島内には300あまりの鍾乳洞があり、隆起さんご礁の海岸は変化にとんでいます。

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空港の近くにある「フーチャ」は、東シナ海の荒波に浸食されてできた大きな洞窟で、海が荒れると海水を10m以上も豪快に吹き上げ、ハワイにある潮吹き岩に似て見ごたえがあります。
また、ウジジ浜は巨大な隆起さんご礁の奇岩が並び、特に朝焼けの浜は幻想的で必見の価値があります。

鍾乳洞の代表格が「昇竜洞」で、長い時をかけて大自然がつくりだした彫刻は、東洋随一といわれる美しさで、鹿児島県の天然記念物に指定されています。一般公開されているのは、全長の3.3kmのうち600mのみとなっています。最近メディアで、昇竜洞の美しさが報道され、洞窟探検アウトドアスポーツ「ケイビング」の聖地として、注目を浴びている場所です。

南西諸島に多く自生しているのが、幸福をもたらす精霊が宿るといわれているガジュマルの木です。和泊町の国頭小学校校庭には枝ぶり日本一のガジュマルの大木があり、観光客にも公開されています。その際は当日学校の了解をとることが大切です。

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1898年に第一回卒業生が植栽したもので、高さは7mながら円形に広がった枝の直径は22mあります。枝は現在鉄柱で支えられており、木陰は涼しく、訪れたとき子供たちが木の下で無邪気に遊んでいる姿が印象的でした。

今回知名町の北西部に位置する「田皆岬」の景観づくりのセミナーに参加しました。

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奄美屈指の景勝地「田皆岬」は、東シナ海に突き出た高さ40m~50mの断崖があり、「奄美十景」の一つで、奄美群島国定公園にも指定されています。岬の周辺一帯は、侵食された石灰岩の石塔原で代表される「カルスト地形」になっており、遊歩道も一部整備されています。

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遊歩道沿いには奇岩が並び、まさに自然の芸術が鎮座しているように感じられます。また放し飼いされたヤギが野生化し、群れながら岩と岩との間を散歩している姿や青い海では、数匹のウミガメが遊泳しているのが印象的でした。田皆岬では、昭和40年代まで石灰岩が再結晶化してできるトラバーティン大理石が採取され、高級建築資材として利用されていました。今はその石切場の跡が残っており、貴重な産業遺産です。

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ところで知名町と田皆集落の人々は、この岬の魅力ある景観と自然を活かした観光地づくりを目指しています。住民が自ら地域づくりに動き出すことは、地域活性化の重要な事と考えています。セミナーに参加された方は、学校長、区長、Iターン者、歴史研究家、植物研究者、農業・商業従事者、青年団、婦人会等の方々でしたが、地域を何とか活性化しようという意気込みが伝わってきました。

セミナーで議論した事は
・岬の景観を保護するため、廃墟になっている施設(休憩、売店、レストラン)を整備するか、撤去する。
・岬に群生している貴重な植物の写真をとり、パンフレットを作成し観光客に渡す。
・看板は色、形、素材を統一する。藪を払い海を美しく見せる
・奇岩については公募してネーミングをつける。
・30分程度の遊歩道を整備し、海の傍には転落防止の枠を設ける。
・砕石跡の建物は産業遺産として残す。ボランティアガイドを養成し、ストーリーを語ることが大切。
・地域ならではの食・お土産を開発し、地域全体に経済効果をもたらす。
・景観を活用し、テレビ、映画、CMの舞台としてPRする。
・岬にある広い芝生、奇岩、海と空の青さ等南の島を活かす定期的イベント等の開催が必要。
・沖永良部全体で誘客に努める。

田皆岬に行く途中、車を止めるとユリ農家の方が農作業の手を休めて、収穫中のユリの球根を袋一杯プレゼントしてくれました。島の方々の温かさにふれた思いです。

田皆集落の皆様方の活動が、今後の地域の発展につながることを期待します。

田皆岬セミナー2.jpg

最後に景観についての考え方を整理したいと思います。
日本でも景観法が施行されましたが、その対象は多岐にわたっています。基本理念に <良好な景観は、国民共通の資産>であると位置づけられており、地域の自然、歴史、文化等、地域の特性や特色を伸ばす必要性が指摘されています。

景観を守ることは、観光まちづくりの根本をなすものと考えます。鹿児島市は錦江湾を はさんで、目の前に雄大な桜島がそびえており、その景観は世界に類の無いものです。しかし最近では至るところに高層ビルが建ち、いつのまにかその雄姿が見れないポイントが増えており、高さ制限の必要性を感じることがあります。有名な観光地に行っても、旗の林立や派手な商品広告にがっかりさせられます。

田皆岬灯台.jpg

歴史的遺産や美しい自然を望める地域周辺では、看板の大きさ、字体を統一することが景観を守ることにつながります。また、古い建物や庭園が残る場所では、広告物そのものを規制することで地域としての評価が高まり、落ち着いた雰囲気が観光客の人気となります。

景観を守ることの大切さについては、小さい頃から学校や家庭で教えることも重要です。また、景観保全に取組んでいる先進地を視察し、地域の景観保護についてどのようにして合意形成を進めているか研究する必要があります。美しい日本の原風景や歴史遺産、自然景観等を大事にする心を育てたいものです。

佐多岬が持つ観光地としての魅力

2012年4月23日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

        「黒潮の海に昇りし天津日は 佐多乃岬を日ねもす照らす」

この歌は、佐佐木信綱門下の歌人であり、「新古今集」の研究家として知られる川田順の歌で、佐多岬の展望所近くに歌碑が建立されています。川田順が昭和11年に長崎鼻を訪れた際、対岸に見える佐多岬を見て詠んだ歌と言われており、当日は快晴ではなかったかと想像されます。

佐多岬灯台は、1871年(明治4年)に完成しましたが、戦争で被害を受け、1950年に建て替えられ現在の白亜の灯台として生まれ変わりました。太平洋に突き出した半島の先端にあり、九州本土最南端にある灯台で、「日本の灯台50選」にも選ばれています。

佐多岬(灯台).jpg

太平洋の黒潮が押し寄せる突端に立つ灯台は、錦江湾や南の島へ行き交う船舶の目印として重要な役割を果たしています。対岸に薩摩半島の開聞岳を望み、東シナ海に沈む夕日は格別です。晴れた日には、種子島、屋久島を望むことができます。



佐多岬の入口に位置する大泊には、北緯31度線(エジプトのカイロと同じ位置)の表示塔が立っており、車を止めて写真に収める観光客が見受けられます。

ところで佐多岬への観光客は、昭和40年代の前半から50年代の前半までがピークでした。新婚客のゴールデンルートとして、宮崎~日南海岸~鹿屋~佐多岬~根占~山川~指宿が賑わいました。その後新婚旅行が海外に移り、バブルが終焉し団体旅行も激減し、薩摩半島との架け橋であったフェリーが休航した期間もあり、いつのまにか佐多岬も忘れられた存在でした。

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佐多岬への観光客が減少したことにより、広範囲に影響がでてきました。かつての宮崎からのゴールデンルートを通る観光客はほとんどいません。「かのやばら園」まで来た客は、引き返して鹿児島に戻っていきます。一方対岸の指宿方面からの観光客の流れも減少しました。

しかし、団塊の世代の退職や国内旅行の個人化・多様化が進み、今では交通の便が悪く秘境と呼ばれる地域が脚光を浴びています。佐多岬も、例外ではありません。

しかしながら、現在の佐多岬の周辺は休憩施設もなく、展望台は修復工事の傷跡が深く観光客が楽しめる雰囲気が感じられません。灯台が望める最先端まで行く途中には、かつて住んでいた「古い灯台守の館」が藪の中にひっそりと佇んおり、整備すれば産業遺産として活かせると思います。

その意味でも佐多岬の魅力づくりが、鹿児島市、指宿、宮崎からの観光ルート定着になり双方にメリットが出てくると思います。今年度は県の予算で調査費が付いており、佐多岬の課題が改善されることを期待しています。

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佐多岬周辺の魅力をあげると、大泊港から出ている半潜水艦の水中展望船があります。「さたでい号」と名付けられ、ビロウ島、佐多岬沖など佐多岬海中公園内を30分かけて周遊し、黒潮の中を泳ぐ熱帯魚を目のあたりに鑑賞できます。


また、岬では、ハイビスカス、ブーゲンビリアなど数多くの亜熱帯植物が生い茂り、熱帯のジャングルにいるような気分に浸ることができます。ソテツの自生地も圧巻です。
自力歩行で最南端を目指すトレッキングツアーもあります。いくつかの山越、崖越え、しかもロープを頼りに一人ずつしか登り降りできないというスリリングな箇所もあり、それゆえに最南端への到達したときの達成感は大きいものがあります。体験型観光の醍醐味を味わうことができます。

九州新幹線が全線開通したことにより、時間短縮効果で大隅地域への誘客もより可能となりました。

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佐多岬のある南大隅町までの沿線には、かのやばら園、吾平山上陵、内之浦宇宙空間観測所、花瀬公園、神川の大滝、雄川の滝、並列鳥居のある諏訪神社等特色のある観光地や、農・漁家の直売所、錦江湾に沈む幻想的な夕陽が望めるレストランなど旅情を感じさせる店もあります。

これらの観光地を線で結び、地域全体に波及効果をもたらす取組が重要であり、そのためには、まず県民に訪ねてもらうことが大切ではないかと思います。そして県外の方々に南大隅地域の魅力を語って欲しいと思います。

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最南端の神社として有名な御崎神社は、最近パワースポットとして人気があり記念写真に納まるカップルの姿が多く見受けられます。吾平山上陵と諏訪神社、御崎神社の3箇所をパワースポットとして売りだすのも効果が期待できます。


北海道の最北端宗谷岬はこれからの季節、本州方面から多くの観光客が訪れます。その後日本海に浮かぶ利尻島、礼文島まで足をのばします。最北端と最南端を結ぶツアーもおもしろいと思います。

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根占~山川フェリーの再開で薩摩半島との往来もできるようになりました。かつて「岬めぐり」というツアーがヒットしました。都井岬、佐多岬、長崎鼻を巡るツアーの復活も楽しみです。


根占港の隣には、新たに南大隅町の農産物や採れたての魚等を取り揃えた「なんたん市場」もオープンしました。フェリーの待ち時間に是非立ち寄って欲しい場所です。
最南端にある大泊郵便局を訪ね、記念スタンプを押し九州本土最南端の地に来たことを実感し、喜んでくださるお客さんを多く呼びたいものです。

            参考:南大隅町観光ガイドマップ:南大隅町役場企画振興課

出水ブランド「薩摩出水のいずみさん」の定着に向けて ~ツルも出水に、恋をした。~

2012年4月16日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

夜来の激しい風雨にさらされて、満開の桜もいつのまにか散り葉桜となり、これから新緑が一段と映える時期になります。
みかんの一大産地である出水地方では、5月の初め頃になると、みかんの木が花を咲かせ、丘陵全体が白い花で覆われ、その美しさを新幹線の車内からも臨むことができます。

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出水市は、毎年1万羽を超えるツルが越冬し、規模の大きい武家屋敷群や野間之関、鎮国山感応禅寺、日本一の大鈴のある箱崎神社、日本一のお地蔵さんのある八坂神社、上場高原のコスモス等恵まれた観光地があります。


しかし今まで観光客が来ても、土産物としての特産品や地域を感じる食事のメニューが少なく、出水ブランドとしての商品の開発が待たれていました。

出水商工会議所では、中小企業庁の「平成23年度地域力活用新事業∞全国展開プロジェクト」に応募し、自然に恵まれた出水市の農・畜・水・のそれぞれの食材を使った新たな特産品を農商工連携で開発し、「出水ブランド」として全国に発信し、出水市地域の活性化を図る事業に取り組んできました。私も今回プロジェクトメンバーの一人として参加しました。

この度の事業で、鶏肉を中心としたグルメ3品、柑橘類とさつま芋を使用したスイーツ3品が誕生し、出水ブランド「薩摩出水のいずみさん」として売りだすことになりました。「薩摩出水のいずみさん」とは、出水市の自然や文化を継承し、自然に恵まれた出水市の特産品である鶏肉や柑橘類等の食材を活用した商品や出水市内で製造された商品等で、地域活性化に繫がる商品のブランドネームです。

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ロゴマークは女性の顔にツルをイメージして、キャッチフレーズは、「ツルも出水に、恋をした。」が選ばれました。出水市は永年1万羽を超えるツルが訪れている土地であり、それにあやかった良いロゴマークとキャッチフレーズと思います。

今回選ばれたグルメとスイーツの商品概要は次の通りです。 グルメは、出水市の2大ブランドである鶏肉「南国元気鶏」と「赤さつま」を中心に、出水市の歴史的逸話をもとに開発した鍋物や鹿児島の特産品であるさつま揚げをアレンジした一品等、旬の野菜や地場産の食材にこだわり、「出水らしさ」「鹿児島らしさ」がある料理です。 スイーツは、1年中獲れる柑橘類の中でも、旬の柑橘類だけを使用した和菓子やさつま芋を使う鹿児島の郷土菓子をアレンジした洋菓子等、旬の食材や地場産の食材にこだわり「出水らしさ」「鹿児島らしさ」がある菓子です。

3つのグルメとは、

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しょうがん炊き・・戦国時代に島津家縁の武家屋敷に住む、ぼっけもん(快男児)昌巌 (出水3代地頭)さんの逸話と大正時代の国有林田畑開拓時に詠まれた詩を元に 出水のおいしい鶏肉(全国生産2位)と、季節の新鮮な野菜を地元産の麦味噌 で仕立てたコラーゲン・ビタミンたっぷりな出水のおもてなし料理です。

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出水んまか巻・・地場産の鶏肉と、あえてシンプルなごぼうと人参を使用した八幡巻ですが、そこへ出水産の蜜柑を加えることで、さっぱりした酸味と爽やかな余韻を楽しめ、中の野菜は出水で採れる旬の野菜を使用することで、季節の味が楽しめます。

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出水んまか棒三姉妹・・出水市の特産品である鶏肉や焼き海老、鹿児島県の特産品である黒豚を活かしたさつま揚げで、中に入っている具も地場産や鹿児島産の食材にこだわった一品です。また、海老姫、鶏姫、黒豚姫のキャラクターも魅力の一つです。

3つのスイーツとは、

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まるごと出水(みかん)・・優秀な農家の方々が一つ一つ丁寧に大切に生産されたみかんを最大限に使ったお菓子です。ほど良い甘さの求肥(ぎゅうひ)と飴がみかんの味を引き立てます。夏から冬の期間限定の商品です。

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チョコっとねったぼ・・・昔から地域のおやつとして親しまれてきた"ねったぼ(芋もち)"を若い世代にも伝えたいと思い、出水市の特産品である紅甘夏の皮をシロップ漬けにして中に生チョコと混ぜ、アレンジした新感覚のお菓子です。

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いもクロ(IMOCLO)・・鹿児島県の特産品であるさつま芋と出水市の特産品である紅甘夏の皮を使用した餡子を、出水産米粉が入ったクロワッサン生地で包み込み、安心安全の食材にこだわった一品です。

資料提供:出水商工会議所 平成23年度地域力活用新事業∞全国展開プロジェクト

出水商工会議所では、8月頃をめどにグルメ、スイーツとも取扱店舗の募集を行い、また現在ある特産品の中でも一定の基準を満たした商品だけ、「薩摩出水のいずみさん」の認定を行う予定です。

これから「薩摩出水のいずみさん」のブランド力をいかに高めていくかが課題です。 「ブランド」とは、元々はヨーロッパの山中での牛や羊の放し飼いで、他者の家畜との区別をするため押した「焼印」に由来しています。現在ではブランドとは、商品が「差別化されている」、「品質が保証されている」、「地域での広がりがある」ことなどがあげられます。

商品開発は多くの地域で行われていますが、知名度アップと販売拡大策が課題です。まず地域住民にどのように浸透を図るかです。

家庭での広がりには、レシピを作成することで統一感が生まれます。また、各種宴席では、「しょうがん炊き」や「出水んまか巻」、「出水んまか棒」を推奨するようにし、お客様にストーリを語ることが定着への一歩になると思います。
また、県外でのPR効果を発揮するには、行政や地域団体等の職員の皆様は、「薩摩出水のいずみさん」のロゴマークを印刷した名刺を渡して欲しいと思います。

スイーツは、市外の人への贈り物の定番とならなければなりません。その際包装紙は、ツルや、ミカンがたわわになっているデザインを使うのもPR効果を高めると思います。出水地域では、グリーンツーリズムが人気となり県外からの学生さんの民泊体験が増加しています。メディアへの発信を強め、口コミ効果を高めることで、帰りに人気のおみやげとして、誰もが購入するようになるのではないかと思います。

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ダイヤ改正で新大阪への直行の新幹線も大幅に増え、観光客の誘致もより可能になりました。先にデビューした新ご当地グルメ「いずみ親子ステーキごはん」は浸透してきました。  地域一体となった取組が経済効果をもたらし、「薩摩出水のいずみさん」の定着に繫がると思います。

人が集まる街の魅力とは~息抜きができ歩いて楽しい商店街のある街~


2011年6月27日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

DSC_0898.jpg    かつて賑わっていた中心市街地がシャッター通りとなり、昼間でも人影が少ない通りが県内でも多く見られるようになりました。
 県内の多くの町に映画館があり、また、近郊から買い物客が押し寄せて、日中商店街に人があふれていましたが、郊外に大型ショッピングセンターができ、無料の大きな駐車場があることなどで利便性も高まり、中心街から客足が次第に遠ざかっていきました。中心市街地を通っていた車も、バイパスができ空洞化に拍車がかかっています。市役所や公的施設も郊外に移転し、ますます中心街の衰退が懸念されます。
 中心市街地に人を呼ぶことは、たやすいことではありませんが、昔の賑わいを少しでも取り戻すための方策について考えてみたいと思います。

 私たちが、中心市街地と郊外に住む理由の違いとは
 [中心街に住みたい理由]
①病院や公的施設が近くにあり、緊急時の体制が整備されている。
②日常の買い物が一度にでき、外食やショッピングが楽しめる繁華街がある。
③人が多くて安心である。アミューズメント施設があり、歩いて楽しい。

  [郊外に住みたい理由]
①住宅や駐車場が広く取れ、緑や川があり自然環境がすばらしい。
②公園や緑地が多く子育ての環境がそろっている。近くに先祖の墓がある。
③近くに大型ショッピングセンターが出店し、買い物に事欠かなくなった。
④地域コミュニティが確立しており、まさかの時の協力態勢が確立している。

  a0001_000224.jpg  中心街の定住人口増は厳しい状況ですが、交流人口増加対策が不可欠です。
 人が集まる街の魅力とはなんでしょうか。やはり街中に生活の「場」を復活させることではないかと思います。
 多様なニーズに応える生活空間の創造が必要であり、子育て世帯や高齢者のための利便性の確保が求められます。

 そのためには、
①現代の井戸端会議ができる環境づくりが必要です。お年寄りサロン、よろず相談所など気軽に集まる憩いの場所があることです。
②生活市場が多彩であり、長時間散策しても飽きない空間が必要です。主婦が歩いて時間を過し、食べたり、しゃべったりできる魅力ある場所が必要です。
③遊戯の楽しめる場を提供し、子供の遊べる器具が整っている。
④ファッション性のあるステージがあり、若者の熱気を吸収できる施設がある。
⑤中心市街地の近くに、安価な駐車場があり気安く行ける地域となっている。
⑥そこでしか買えないオンリーワンの品物が揃っている。
 ことなどです。

a0001_001564.jpg    そしてより集客力を高めるためには、賑わいの創出が不可欠です。
①人を乗せ囃し立てる演出が必要であり、若者や女性のイベントが必要です。
②もの創りを楽しむ工房があり、小物の販売店が数店ある。
③文化イベントを定期的に開催し、女性が街に出かけたくなる仕掛けや心を満たす 雰囲気づくりが必要です。
④小川や水辺を、花の回遊路や夜のライトアップで楽しめる演出が必要です。
⑤平日は知名度の高い文化人の講演会や演奏会を、休日は近隣の住民の参加型イベントを開催することが、より有効的な集客ができるのではないでしょうか。

a0001_000233.jpg    日本は少子高齢化社会が加速しており、特に地域経済の疲弊が懸念されます。
 これから日本の人口は減少していきますが、都道府県の中で、沖縄県のみが人口の増加が見込まれます。県民所得は最下位にもかかわらず、人口増につながっているのは、子供がふるさとにUターンすることや、地域コミュニティが確立し暮らしやすく、県外からの移住者が増えていることが要因の一つと言われています。

 ところで、これからの地域づくりは、
①消費の主役は女性であり、女性を呼び込む仕掛けが必要です。
②シングル世代や夫婦のみの家庭が多くなり、個人客に対する商品提供の工夫が必要です。商品を小分けして、買いやすく、購買の機会を増やすことで売上増に繋げる必要があります。
③地域活性化には、循環型経済の確立が重要であり、農・商・工連携を活かした店舗の品揃えが求められています。原産品を加工し、調味料や菓子、練り製品などオンリーワンの商品として価値を上げることが重要です。

drink_cake.jpg   最後に
 日本の人口は確実に減少していくため、高度な成長は望めないと思いますが、地域住民にとって必要な商店街とは、息抜きができ「楽しいまち歩き」が楽しめる街ではないかと思います。

参考:中心市街地の成功方程式 細野助博「著」 時事通信社


知覧の今後の観光を考える

2009年4月20日

 
 知覧は鹿児島が誇る代表的な観光地の一つですが、順調に伸びていた観光客が、昨年は苦戦を強いられました。その最大の要因に、大河ドラマ「篤姫」の放映があげられます。従来旅行エージェントの企画では、南薩摩方面へのコースには、知覧は欠かせない観光地の一つでした。しかし篤姫ゆかりの地を訪ねる企画が好評であり、限られたスケジュールの中で行程上はずされたことが大きいと思います。又篤姫ガイドの語りが人気を博し、ドラマの高視聴率とともにJRの駅に近くアクセスに恵まれた今和泉地区に観光客が流れたことも、要因の一つです。

 
 

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 今後の知覧の観光のあり方について考えてみたいと思います。知覧の観光の目玉は「武家屋敷」と「特攻平和記念館」です。「武家屋敷」は日本の伝統庭園としてその美しさと整備された通りが多くの観光客を魅了します。しかし観光客は庭園を一度見学すると、再度見ることは少なくなります。リピーターを呼ぶには、季節ごとに移り変わる庭園の見せ方と、庭園を活用した日本の伝統的行事を演出する必要があります。冬には正月人形や羽子板、雛人形の展示を、5月頃にはこいのぼりや兜を、夏には風鈴、秋には野点の茶会など日本の美を再現させることで、庭園がいっそう価値あるものとなり1年を通して観光客を呼ぶことが出来ると思います。庭園通り周辺は、色、高さ、干し物、広告の制限をするなど景観を守る取組みをいっそう強化することが大切です。

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 次に「特攻平和記念館」ですが、戦争体験者、遺族だけでなく観光客の多くの涙を誘う施設です。しかし年代を経過するごとに戦争関係者は少なくなり、大人の見学者は減少していくことと思います。最近では多くの修学旅行生が訪れています。広島、長崎と比較すると平和学習の位置づけは違っており、館内に展示されている修学旅行生たちの感想文を読むと、平和に対する子供たちの純粋な気持ちが伝わってきます。新幹線の全線開通に合わせて、中国方面からの新たな誘致を進めていますが、武家屋敷から特攻平和記念館までの散策ルートが学習の場として活用できると思います。アクセスの確保と観光ガイドのさらなる確保が重要です。

 
今南さつま地域では、グリーンツーリズムの体験と農家民泊の予約が急増しています。知覧地域でも農家民泊を受け入れる家庭が増えていますが、知覧の平和学習と組み合わせることで、さらに誘客ができると思います。修学旅行は1回来ると3年、6年と定着することになります。県の農村振興課では、教育旅行におけるグリーンツーリズムの受入指針を作成しました。体験メニューの充実と受入農家が増えることが誘致につながります。又知覧のある南九州市は、お茶やお花の産地でもあり農業体験の素材は豊富にあり、鍵は地域をコーディネートする人の育成です。 

 最後に知覧町が南九州市となり、観光宣伝の位置づけも変わってきました。従来は知覧町としての情報発信がほとんどで、認知度を高めることが出来ました。今後は南九州市の中における知覧をどれだけPRできるかが課題です。観光客は広域に回ります。鹿児島市、南さつま市、指宿市と連携した広域観光の戦略が必要です。知覧の観光復活を期待します。

ボランティアガイドの役割とは

 

2009年3月30日 
  

 第2回九州観光ボランティアガイド大会が、熊本で開催されました。今注目をあびている着地型観光には、地域を良く知るボランティアガイドの役割が重要となってきました。九州各地の取組の現状が報告されましたが、今後の課題と方向性について述べたいと思います。

 

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 まずガイド料金については、ほとんどの団体が無料で行っているのが実情ですが、資料代、ガイドの連絡交通費等を考えると一定の料金を収受するのが妥当と考えます。自治体の負担や善意だけでは限界があり、きちんと対価をもらうことで責任感も高まり、会員同志の勉強会や研修会への参加も可能となり、スキルアップにつながると考えます。特に参加者の万一の事故を考えると保険を付保することが、不可欠と思います。

 

次にガイドをする上での日頃の準備と行程での心掛けです。日頃から行程上の歴史的遺産、景観、地域の名産品店などは把握して説明する必要があります。特に地域の生活・文化を語ることは、観光客が地域を知る機会となり大切なことです。最近は熟年の参加が増えており、ルート沿いのトイレの場所等も頭にいれておく必要があります。予約団体名が分かっていれば、どの地域からどのような目的で来ているかを調べ、自分が知る範囲でお客様の地域のことに触れると、親近感が深まるでしょう。

 

説明のしかたの工夫については、地域の歴史、背景など専門的な知識の羅列では観光客は飽きてしまいます。客の表情を伺いながら退屈していれば案内はさらりと流し、楽しい話題に切り替えることで客との融和が図れます。また、途中の茶店に立ち寄り和んだり、逆に参加者に質問をさせる雰囲気づくりも重要です。慎まなければならないことは、政治や宗教のことに触れることであり、お客様が気分を害することになります。ボランティアガイドの究極の目的は、おもてなしの心です。

 
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 終了後は自分の説明で面白かったことや、行程上でまた来たい場所などをアンケートに書いてもらい、次回にいかしていかねばなりません。また後日案内した団体に、お礼状を差し上げることが今後の誘客につながることになります。ボランティアガイドの組織がうまく機能するためには、会員それぞれのガイドする回数が増えていくことです。特定の人だけに集中することは、組織に亀裂を生じさせます。その意味で全員のスキルアップの機会を増やして日頃の勉強会を増やすなどの取組みが大切です。

 

県では今年秋に「よかとこ博覧会」を計画していますが、集客するにあたって重要なことは、地域ならではのメニューをいかにつくりあげるかです。そのためには地域を知るボランティアガイドが参画することが必要であり、中身の濃いコースをつくりあげることにつながります。

 

さて、来年の第3回九州観光ボランティアガイド大会は、鹿児島での開催が決まりました。県内には現在26の団体があり約700人のボランティアガイドがいます。本年中にボランティアガイドの協議会を発足させ、それぞれの団体の連携強化と会員同士の交流を図り、大会の成功に向けて準備を進めたいと考えています。

 

九州新幹線の全線開業を2年後にひかえて

2009年3月16日

shinnkansen.jpg 九州新幹線の全線開業まで2年となりました。開業に合わせて、新大阪から鹿児島中央駅間に直通の列車が予定されており、この度JR九州、JR西日本から「さくら」と言う名称が発表されました。大阪まで約4時間で結ばれ、関西圏と鹿児島が近くなり、観光面でも大きな効果が期待されています。
 
 
 県では、新幹線開業効果を県内全域にもたらすために、「新幹線効果活用プラン推進会議」を設置し、「観光・交通部会」、「産業部会」、「まちづくり・イベント部会」の3つの推進部会で新幹線効果活用プランの取組を推進しています。各振興局でも、推進会議をつくり取り組むべき課題を整理し、誘致策を作成しています。
 基本的な方向性は、「増やす」、「広げる」、「活かす」の3つの視点であり、新幹線による県内への交流人口を増やし、それをいかに各地へ広げるか、そして地域の活性化に活かしていくかです。
 観光・交通の分野について課題を整理したいと思います。新幹線は、博多と新八代が開通し鹿児島中央から東京まで、1つのレールで結ばれます。しかし今まで開通した新潟、長野、東北、秋田の各新幹線の沿線都市は、最大の消費人口を抱える首都圏から遠くても2時間から4時間の距離であり、観光客誘致には事欠かない状況があります。しかし九州新幹線は、東京から8時間程度かかるため、観光客誘致の面からみると、関西から以西がターゲットになり、今まで宣伝力の弱かった岡山、広島、山口など中国地域へのPRが必要です。安定的に観光客を確保するためには修学旅行の誘致が重要であり、運賃の低減や利便性の確保、集約臨時列車などの運行を働きかけることが大事だと思います。 

 次に鹿児島中央駅が終点になりますが、県内各地へ観光客を広げるためには、駅からの第2次、3次交通の確保が必要です。指宿枕崎線へは特急の運行が計画されており、指宿方面はかなりの客が流れるとみており、その後指宿港からの種子・屋久への観光にも弾みがつくと思います。南さつま地域はルート的に指宿温泉や
鹿児島市との連携が大事です。
 
大隅地域へは、鹿屋までの直行バスの運行や、週末には鹿屋バラ園、航空隊、吾平山上陵、佐多岬、指宿などに至る周遊観光バスなども検討すべきです。霧島地域は、肥薩線と新幹線を組み合わせた商品が魅力的です。北薩・伊佐方面は、行程を考えると新幹線の客を往路に出水や川内でいかにして途中下車させるかが最大のポイントです。また、ツルの越冬地出水、甑島、入来の武家屋敷、大口曽木の滝など季節感あふれる宣伝も必要です。 

 3
点目は、個人旅行に対応すべく着地型のメニューの充実をはかり、ボランティアガイドの養成による体験・交流のプログラムの造成、地元食材をつかったメニューの提供、伝統芸能鑑賞の定例開催など観光客の滞在できる環境づくりが必要です。
 今年から「よかとこ博覧会」が県内の数箇所で開催予定です。そこでしかできない体験・交流や、食の発表会、地産品の販売などを行うなどして、経済効果が持続できる地域を創出して全線開業に備えねばなりません。 

 4
点目は、地域をコーディネートする人材の確保です。地域の多くの事業者をまとめ、商品をつくり、魅力ある情報として発信することが、求められています。旬の価値ある情報でも、発信先や時期を逸すると価値がなくなります。これからの観光地は、観光産業だけでなく、農林水産業、商業、工業、生涯学習など地域総力戦での地域の魅力創出が不可欠です。その意味でも地域をまとめる人の存在が不可欠です。
 
 また、九州最大の人口を抱える福岡市とは80分で結ばれ、今以上に交流が活発になります。時間短縮効果により、日帰りも多くなり宿泊客が減少することも懸念されます。その対策としては、鹿児島市が宿泊したくなる街としての、魅力アップが求められます。エンターテイメントの構築による夜の天文館の魅力創出、「かごしま地産地消推進店」制度の推進による食の街としてのイメージアップづくりが、滞在につながります。また、美術館、博物館、図書館、宝山ホールなどで知的興奮を伴う展示やイベント開催の仕掛けが必要です。甲突川河畔の整備が進み、11年には維新ふるさと館周辺の両岸が美しく楽しい散歩道としてよみがえります。今年は、鹿児島女子短大が高麗町に移転し、若者が滞留するポイントになることは間違いありません。観光客誘致には、女性の視点での街づくりが求められます。全線開業により、離島を含めた県内各地に波及効果をもたらすためには、基点となる鹿児島市の魅力付けが、今以上に必要と思います。 

 最後に、新幹線開通で、自然にお客さんが来ると言うのは大変安易な考えであり、新幹線はあくまでも輸送の一つの手段です。それぞれの地域が差別化を図り魅力的になることが、誘客の要因となります。その意味で今年は、地域ごとに「地産地奨」を推進し内容のあるモニターツアーやテストマーケティングを実施するなど態勢づくりの年と位置づけ、全線開業に備えるべきです。開業まで残された2年間は貴重です。

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「曽於田舎ツーリズム」の定着を

2009年3月2日 鹿児島県観光プロデューサー  奈良迫 英光

  曽於市は、鹿児島県の東部を形成する大隅半島の北部に位置し、東は志布志市、南は大崎町、鹿屋市、西は霧島市、北は都城市と接し、宮崎県との県境に位置しています。  北部は大淀川支流域に開け、都城盆地の一角をなし、南部は菱田川流域に広がる地域となっており、全体的に起伏の多い大地となっています。財部町、末吉町、大隅町の旧3町が合併してできた市で、しかも広域に町が広がっており、住民相互の交流を促進しながら均衡ある発展をめざし、住民が安心して暮らしていける町をつくっていくことが重要な課題です。

  今回、「曽於市の魅力を発見し、それをどのようにして観光や定住に結びつけるか」を考えるフォーラムが開催され、パネラーとして参加しました。県内で活躍している「みなみの風」の会員の交流会も同時に開催され、活発な意見が交わされました。曽於市で現在お客が日常的に来ている場所としては、「道の駅すえよし」がありますが、その他の場所は充分に活用されていないと考えます。以下の観光資源の活かし方について考えてみたいと思います。

  末吉にある「花房峡のキャンプ場」は、夏場を中心に学生の教育の場所として最適です。教育委員会等を通じてPRし、市内はもとより近郊の市町村の学校にも利用してもらう努力が必要です。また親子での昆虫の観察やキャンプ場としても喜ばれると思います。夏休みに講師を招いて体験教室などを開くのも利用価値を高めると思います。

 「道の駅すえよし」は、10号線沿いで分かりやすい場所にあり、ここを拠点に曽於の食の情報発信基地としての機能を高めていかねばなりません。曽於市の食材だけを使った「食事の限定販売」、「豆腐やお味噌など調味料の曽於ブランド品の販売」、「季節ごとの食フェアの開催」などを行うことで、新規顧客の開拓と地域産品の販売拡大を図っていかねばなりません。現在提供している食事も充実しており、グリーンツーリズムで民宿体験する場合、農家の負担軽減の方策として、夕食場所として活用する方法もあります。



  大隅にはかつて航空基地がありましたが、その存在はほとんど知られていません。それは八号原の大地の「芙蓉隊」と呼ばれる部隊で、終戦末期の沖縄戦に備えて作られた航空隊でした。滑走路は残っていませんが、当時の司令室や部隊の住んでいた壕が残されており、戦跡として後世にきちんと残すべき場所と感じました。芙蓉隊の数少ない生存者が、当時の訓練や出撃の秘話を話してくれました。この基地を始め、県内にある戦跡をまとめた資料を作り、平和学習の素材として活用すべきと思った次第です。

 2009030215162929258.jpg また、大隅には県の肉用牛改良研究所があります。ここではバイオテクノロジー等の先端技術を駆使して肉用牛改良を促進し、産肉能力に優れた種畜生産を行い「鹿児島黒牛」の銘柄向上を図っています。予約すれば施設内の見学もできます。高級牛のルーツは大隅にあり、地域で美味しい牛肉を食べる施設や販売店があることが、観光客がその地域に選ぶ要素に繋がります。
 鹿児島県を代表する祭りである「や五郎どん祭り」は、地域内の祭りに終わっており、隣接の市町村を中心に、もっと集客態勢を強めることが大切です。

  財部は、JRの駅が三カ所有り、しかも鹿児島空港から1時間30分、高速道路にも近く、観光客誘致のアクセスに恵まれた町です。大川原峡に隣接した「悠久の森」は起伏が少なく、ウオーキングや自然観察に最適な場所です。インタープリターを同行した森林浴も魅力です。「桐原の滝」や「溝の口洞窟」も近くにあり、歩きながら自然を満喫できます。

  また、財部は、甌穴で有名な「関之尾の滝」のある都城市と隣接し、広域で観光客誘致に努めることが大事です。春と秋の自然が美しい時期に、JRの駅を活用し周辺の景勝地を回る2日間のウオーキング大会を開くことで、宿泊にもつながり地域の活性化になると考えます。

  曽於市全体としていえることは、豊かな田園地帯に恵まれ、食材も豊富であり、これを活用したグリーンツーリズムの推進が不可欠です。学生団体を中心に、農業体験や民泊を導入するには好条件が揃っています。夕食は「道の駅」を活用し、入浴は温泉センターの利用で農家の負担が軽減できます。グリーンツーリズムの推進に当たっては、地域をコーディネートする人の役割が重要であり、学校と農家との諸問題をスムーズに問題解決していくことが定着につながります。本年度から「子ども農山漁村交流プロジェクト」がスタートします。その受け皿づくりのためにも導入が急がれます。

  2点目は、広域連携の推進です。観光客は地域内で完結することは少なく、広域に回ります。霧島市や鹿児島市、都城市は購買人口が大きく、また温泉や宿泊施設もあり、観光客も多く訪れています。そこの客を曽於市に誘導するためには、宿泊機関に出向いて曽於市の季節ごとのパンフを常備し、定期的なセールスを展開して自ら集客する態勢づくりが必要です。イベントや地域の祭りの集客には、ふるさと出身が多い鹿児島市をターゲットにすることも一つの方策です。

  九州新幹線全線開業まで、2年となりました。地域に新幹線効果をもたらすためには、他の地域との差別化が必要です。曽於市は徹底的に田舎にこだわるべきと考えます。少子高齢化が進み、人口減少が地域の活力低下に拍車をかけています。魅力ある農村地帯に多くの人を呼び、農業体験や地域産物の購入が増えることで曽於市ファンづくりができます。そのためには「曽於田舎ツーリズム」の定着が一番と考えます。曽於地域の発展を期待してやみません。

プロフィール

奈良迫プロデューサー
鹿児島県
観光プロデューサー
奈良迫 英光
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