トップページ > プロデューサーズコラム

No.324 放置するとサービスは低きに流れる~創業の精神を忘れずに~

2014年8月18日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

      夏草や      兵(つわもの)どもが     夢の跡
      五月雨の     降りのこしてや   光堂
*1689年、松尾芭蕉が平泉の中尊寺を訪ねた時に詠んだ句です。
*光堂は中尊寺の金色堂のこと

青森県.jpg

 先日、東北3県を旅する機会がありました。鹿児島からですと答えると、行く先々で「遠い所わざわざお越しくださりありがとうございます」と丁寧なあいさつを受け、清々しい気持ちになりました。旅の良し悪しは、地域に住む人々の印象だとあらためて感じました。

 観光客誘致の仕事を通じて日本全国を訪ねる機会が多く、また、タクシーに乗る機会も多くあります。初めての土地では駅前から目的地までタクシーを利用しますが、いつも不安と期待を抱えながら乗車します。目的地を告げると、不機嫌な態度を見せる運転手に遭遇することがよくあるからです。

 駅構内のタクシーは、観光地巡りや遠方までの客を待っている場合が多く、近距離は嫌がられます。しかし遠来の客は初めて訪れる場所では、地理に不案内なためタクシーに乗るのであり、親切な対応があれば、翌日の観光にそのタクシーを利用するかもしれません。第一印象が翌日の仕事に結びつくこともあります。

 鹿児島でも近距離乗車を嫌がり、口も利かない運転手に何回も会っています。友人の一人は駅前からのタクシーは避けて、ちょっと歩いて市中のタクシーを利用すると話していました。 「近くても遠慮なくお乗りください。」と快く声をかけてくれる運転手はまだまだ少数で、マナーに優れたドライバーを育てることが、企業の高評価に繋がり、そのことが顧客獲得に結びつくのではないでしょうか。

秋田県角館.jpg

 最近タクシー会社の合併が進み、新しい社是を制定し社員教育にも力を入れている会社があります。制服・帽子の着用、挨拶の励行、自らドアの開閉等顧客に安心と快適さを提供しようと必死の努力をしていますが、月日がたつにつれてマナーが悪くなっている運転手が増えているのも事実です。

 また、ドライバーの採用を厳選し教育にも力を入れたつもりが、いつの間にか創業時の精神を忘れ、評判を落としている会社があり愕然とします。企業の論理を優先し、サービス精神が忘れられているような気がします。

 経営者の皆様は、是非創業時の精神にかえり、社員教育を徹底してもらいたいと思います。乗務員のモラルがサービスの低下につながり、顧客離れが進むと認識すべきです。

 ところで鹿児島では、昔からおもてなしのひとつとして、「茶いっぺ」の心が受け継がれています。初めて降り立った駅や空港等で笑顔の元気なあいさつがあり、お茶のおもてなしがあれば観光客は感動します。

お茶(鹿児島空港).jpg

 現在鹿児島空港では、霧島市の観光協会が「霧島茶」のPRを兼ねてお茶の無料サービスを実施しています。観光客に好評であり、売店でお土産に買って帰る人も多いということです。鹿児島県は日本第2のお茶の産地であり、鹿児島の優れた産品に直接触れる良い機会になると思います。

 また、道中で見知らぬ人から「こんにちは」とあいさつをされて、地域の温かさに触れた経験を持った方は多いと思います。地方に行けば、このような人々によく出会いますが、地域住民の素朴な温かい気持ちが伝わります。

 ところで、会社にいるとさまざまな訪問者があり、名刺交換やあいさつする機会が多くなります。しかし、24時間ビルの安全管理に努めている守衛さんや、毎日掃除をしているビル清掃会社の方々、宅配便の集荷や届ける方などへ率先して、感謝の気持ちを込めてあいさつすることを怠っているのではないでしょうか。そのようにがんばっている人々にも、顧客と同じ目線できちんと挨拶することの大切さを感じます。

タクシー接遇研修会2014-1.jpg

 昼休みには保険会社のセールスレディが訪問し、パンフや雑誌等を配布していますが、契約を取るための営業の苦労が伝わってきます。その姿に接するたびに、営業活動で苦労した入社の頃が思いだされて、あいさつと励ましの言葉をかけるよう心がけています。 事前に訪問時間がわかっている団体や顧客の歓迎看板も相手の心を動かします。

 今、日本は成熟社会を迎え、モノの豊かさより心の豊かさが求められる時代となっています。また、マーケットは日々変化しており、従来の発想では生き残れません。顧客満足は当たり前であり、「感動・感激」を経験した人だけが顧客になります。自ら積極的にあいさつし、感動体験を経験した人が、相手に対して「おもてなしの心」が提供できると思います。

 鹿児島では、来年「第30回国民文化祭」が県内全市町村で開催され、全国から参加者が集まります。地域ならではの「ふだん着のおもてなしの心」が求められます。それは、まず笑顔であいさつをすることだと思います。

 また、2018年は「明治維新150周年」の節目の年です。近代日本の礎を築いた偉人の多くを、薩摩から輩出しており、そのことは大きな誇りです。

 歴史遺産、自然、伝統芸術とともに、「あいさつの励行」や「お茶いっぺの心」等鹿児島のおもてなし文化として定着させねばなりません。そのことが名実ともに「観光立県鹿児島」に求められる課題です。笑顔で「こんにちは」という何気ないその一言が、人と人の心をつなぐ「おもてなしの心」になるのではないでしょうか。

No.323 命の尊さを誰が教えるか~お盆は家族の絆を深める機会に~ 

2014年8月11日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 佐世保市で女子高校生が同級生を殺害し、しかも遺体を切断するという痛ましい事件が発生しました。佐世保市では10年前に小学生による同級生の殺人事件が発生し、「心の教育」に力を入れてきただけに、関係者の衝撃は計り知れないものがあります。16歳のクラスメイトで、日頃から仲も良かったということで、生徒さん方のショックも大きいと思います。再発防止に向けて家庭、学校、地域、自治体をあげて取り組まねばなりません。

家族(人々).jpg

 ところでお盆を故郷で過ごすため、今年も国民の大移動が始まりました。一昔前まではお盆と正月は切符が取りにくい状況でしたが、飛行機、新幹線、フェリー、高速道路等の充実により特定日を除けば、帰省には問題がなくなりつつあります。また、LCC等の就航により、運賃の安い時期を選んで、故郷に帰る人も多くなっているのも事実です。

 お盆は、太陰太陽暦である和暦の7月15日を中心に日本で行われる祖先の霊を祀る一連の行事です。現在では、8月中旬(新暦8月15日、月遅れの盆)を「お盆」と称するため、「お盆」というと月遅れのお盆を指すことが全国的になっています。また、人が亡くなり49日法要が終わって最初に迎えるお盆は初盆と呼ばれて、厚く供養する風習があり多くの人が集まります。

 お盆には全国的にはさまざまな風習がありますが、比較的どこの家庭でも行われているのは、12日の夕刻に行う「迎え火」と15日と16日の「送り火」です。京都では「五山の送り火」が、奈良では「高円山大文字送り火」が行われます。長崎では「精霊流し」が行われ、多くの観光客が訪れます。

提灯.jpg

 月遅れのお盆の時期とはずれますが、お盆に関連する行事としては、「富山市八尾町の越中おわら風の盆」、「岐阜県の郡上おどり」、「徳島県の阿波踊り」、などが有名ですが、団地や町内会単位での盆踊り大会も各地で定着しています。


 都会で育った子供にとって、先祖の墓は田舎にあることが多く、頻繁に訪れることはできません。夏休みは子供たちを始め兄弟、祖父、祖母、親戚等が集まりやすく祖先のお墓参りをする良い機会となります。墓前に手を合わせる機会をつくってあげることは、大人の責任であると考えます。

 先祖の名前が刻まれた墓前に静かに手を合わせ、お祈りすることで、家系のルーツを確認する場となり、自分の命は先祖から長く引き継がれているものであると知る機会となります。最近親子、同級生、友人等による悲しい殺人事件や簡単に人を傷つけるニュースを聞くたびに、命の大切さを教える機会を大切にしなければなりません。

 身内で営まれる葬儀、告別式には子供たちは積極的に参加させるべきだと思います。厳粛な雰囲気、悲しみに耐える家族、友人たち、また、最後の別れのシーンなど会場全体を包みこむ「生と死の尊厳」を身をもって感ずると思います。人の死がどんなに悲しいものなのか、直接ふれさせていかねばなりません。冠婚葬祭は子供が、人生の悲しみや喜びを素直に受け入れることができる機会ととらえねばなりません。

お墓.jpg

 ところで鹿児島県は一人あたりの生花の消費量が、日本一です。その要因は定期的にお墓参りに行き、その度に新しいお花を購入しお供えする習慣があるからです。嫁ぎ先では姑さんが、先祖とお墓参りの大切さをお嫁さんに教えており、そのことが日々の生活の中で習慣として定着しています。

 先日訪ねた指宿市鰻池集落のおばあちゃんは、1日3回墓参りに行って、水換えを行っていると語ってくれました。

 鹿児島市内にある南州墓地は、明治10(1877)年の西南戦争で戦死した西郷隆盛をはじめ西郷軍の人々が祀られ、749基の墓石があり2023名が眠っています。観光に訪れた記念に参拝する人も多く、線香の煙が絶えません。

 観光バスが南薩地域に行くと、バスガイドさんが沿線のお墓を指差して、日々の手入れや参拝の習慣を説明してくれます。観光客は花の新鮮さとともに、先祖を大事にする地域の伝統文化の尊さに感激します。

 先日友人を桜島に案内した折、屋根付のお墓が多いのにも感激していました。降灰から先祖の霊を守る大切さが示されていると言っていました。

浴衣の家族(人).jpg

 東北大震災では、多くの方が家族を亡くされて「家族の絆」とういう言葉が、より大切にされるようになりました。少子高齢化が進む日本ですが、日頃会えない親戚や家族との交流の大切さが、今、問われています。

 お盆は人の命の尊さを認識する良い機会です。今年もお盆に里帰りし、祖先の墓に線香とお花を供えて、元気で生かされている自分の感謝の気持ちを伝えたいと思います。

         閑さや   巖にしみいる   蝉の声    ~松尾芭蕉~

 1689年7月13日出羽国(現在の山形市)の立石寺を参詣した際詠んだ発句です。猛暑が続きます。ご自愛ください。

No.322 観光地の環境保護・美化を保つために~マナーを守り守らせる取組が大切~ 

2014年8月4日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

A-02R桜島.jpg

 眼前に錦江湾と活火山桜島がそびえる鹿児島市は、世界に類のない美しい都市であり、多くの観光客を魅了してやまない九州本土最南端の県都です。天保山公園から海釣り公園までの海岸線は、夕方になると、夕陽に映える桜島が美しく見られます。奄美・沖縄航路の船が18時に鹿児島新港を出港する時間と重なり、青い海を白い船体がすべるように錦江湾を駆け抜けていきます。

 天保山公園は薩英戦争の際、口火を切った砲台が設置された場所で、その面影を残す砲台跡が美しい松林の中にあり、記念碑が残されています。今夏休みの期間ですが、公園では早朝からラジオ体操をする元気な子供たちの姿が見られます。

A-30R若き薩摩の群像.jpg

 また、甲突川の河口は、慶応2年(1866年)に坂本龍馬が鹿児島入りした頃には、軍港としても利用されていました。公園近くの太陽橋のたもとに、龍馬とお龍の新婚旅行を記念した夫婦の像が建てられています。銅像は鹿児島中央駅広場にある薩摩藩英国留学生をモデルに造られた「若き薩摩の群像」の製作者、中村晋也氏の手によるものです。



 薩摩藩の財政改革を断行した調所広郷の像も近くにあります。市内には日本の近代化に尽くした偉人の像が100以上建立されており、そこを巡るだけでも観光鹿児島の魅力が理解できるのではないでしょうか。

 作家として、またテレビの脚本家として知られた向田邦子さんは、父の転勤で小学3年生から4年生まで鹿児島で過しています。天保山公園一帯はかつて美しい砂浜が広がり、よく海水浴をしたと「父の詫び状」の中で書いています。「故郷の山や河を持たない東京生まれの自分にとって、鹿児島はなつかしい「故郷もどき」なのである」と愛し、生前はよく鹿児島を訪れています。

A-37Rおはら祭り.jpg

 私は、錦江湾を行き交う客船や時々噴煙を上げる桜島を見ながら、天保山公園から海沿いの道をウォーキングするのを楽しみにしています。のんびりと釣り竿を垂れる人も多く、市内中心部に格好の漁場があるのも鹿児島の良さです。もっと錦江湾の良さをPRし、滞在に繋げる必要があります。


 温泉、歴史、食、自然、マリンスポーツ等泊りたくなる魅力が揃っている街に住んでいることをいつも誇りに思っています。

 ところで最近ウォーキングしていると、景観を損なう光景に遭遇します。海岸の至る所に犬の糞がそのままになっているのを見かけます。早朝や夕暮れに散歩させる人が、そのままにして犬のフンの処理をしないのでしょう。

 誰か気づいたのか橋のたもとに張り紙がありました。「犬のフンの後始末をちゃんとしてください。処理できない人は飼主としての資格がありません」と。犬の散歩には、小さなスコップと袋を持参するのが当たり前です。衛生上も悪く、通行人が誤って踏んでしまうことがあります。また、食べた後の弁当箱、空き缶、ペットポトルが無造作に投げ捨てられています。観光地鹿児島のモラルが問われます。

 このように最近マナーを守らない人をよく見かけます。車の助手席から平気で火のついたたばこを捨てる若い女性、ガムをそのまま吐き捨てる中年男性、帰りの空港バスが混んでいるのに、座席に荷物を置いて他人を座れないようにしている若者、満員電車の中で、人に聞こえるぐらいボリュームを大きくして音楽プレーヤーを聞いている学生、お年寄りに席を譲らない人等枚挙にいとまがないほどマナーの低下が見られます。

 家庭での躾が第一と考えますが、日々の生活の中で気付いた人が注意すべきではないでしょうか。

E-57Rしろくま.jpg

 先日バスの中で席を一人占めにした学生を注意したら、素直に席を詰めてくれました。にらみ返す若者もいますが、ほとんど聞き入れてくれます。皆さんが軋轢を恐れて注意しないケースが多いのではないでしょうか。

 また、バスや電車に乗ると、「荷物は膝に置き、お互いに席を譲り合い座りましょう」、「体の不自由な方には席を譲りましょう」という案内が流れます。テープの案内では心が通じません。運転手自ら言葉で語ることが、乗客の心を動かします。

 定期的にボランティア活動の一環として、市内の観光地の清掃活動が実施されますが、残念ながらいつも膨大なゴミが回収されます。 美しい海岸として有名なホノルルの浜辺は、早朝に多くの人の手で清掃活動が行われていることは、意外と観光客には知られていません。昼間でもほとんどゴミを見かけません。 

A-24R南洲墓地.jpg

 鹿児島市内では外国人の個人旅行の人が多くなっています。四季折々の花の植栽を増やし、外国語表記を充実させることが、美しい落ち着いた街の印象となります。景観を守ることは、市民にも課せられた使命です。


 これから県内各地で、花火大会や夏祭りが開催されます。ゴミは自分でも持ち帰ることが原則です。そのことが地域の環境美化につながります。きれいに掃除されたところには、人はゴミを捨てません。お互い住みやすい環境を守ることを大切にし、美しい観光地として維持していくことの大切さを醸成したいものです。

No.318 元気な街づくりをめざして~魅力ある生活の場作りが必要~

2014年7月7日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

子ども(火の島祭り).jpg

 日本の人口は2050年には1億人を割り込み、鹿児島県の人口も2040年には、130万人に減少し、消滅する町が発生する等、地域経済に大きな影響が出てくることが予想されます。かつて、近郊から買物客が押し寄せて、街に人があふれていましたが、シャッターが降りたままの商店街が増加しています。

 駅前や郊外に大型ショッピングセンターができ、無料の大きな駐車場があることなど、利便性も高まり、中心部から客足が次第に遠ざかっています。また、中心市街地を通っていた車も、バイパスができ空洞化に拍車がかかっています。道路が整備されることは良いことですが、一方では負の遺産も生み出しています。

天文館アーケード前.jpg

 運動施設や音楽ホール等、公的施設が郊外に移転し、中心市街地に多くの人を呼ぶことは、たやすいことではありません。観光地においても、大型バスの姿が少なくなり、レンタカーやマイカーの数が増えて、個人旅行の流れが如実に表れています。個人のニーズにいかに応えられるかが課題となっています。



 ところで私たちが、住居を選択する条件として
(1) 都市の中心街に住みたい理由は、
①医療機関や公的施設が近くにあり、緊急時を想定すると安心して暮らせる。
②日常の買い物が一度にでき、外食や映画館や音楽ホール等アミューズメント施設があり、気軽に行くことができる。交通アクセスが整っている。
③同じ建物の中にコンビニや病院があり、移動が少なく事が済ませることができる。
④高層マンションが増え、セキュリティが整っている。

(2)郊外に住みたい理由は、
①住宅や駐車場が広く取れ、近くに田園地帯や川があり、自然の美しさを楽しむことができる。
②公園や緑地が多く子育ての環境が整っている。健康的に過ごせる。
③近くに大型ショッピングセンターがあり、買い物等に事欠かない。
④地域コミュニティが確立しており、緊急時の協力態勢が確立している。
ことなどです。

農家の人たち.jpg

 人が集まる地域の魅力とはなんでしょうか。やはり日常生活に「魅力ある生活の場」が確保されることではないかと思います。多様なニーズに応える生活空間の創造が必要であり、子育て世帯や高齢者のための利便性の確保も求められます。


 そのためには、
①現代の井戸端会議ができる環境づくりが必要です。お年寄りサロン、よろず相談所など気軽に集まる憩いの場所があることです。
②遊戯の楽しめる場を提供し、子供の遊べる器具が整っている。ファッション性の あるステージがあり、若者の熱気を吸収できる施設がある。
③市街地の近くには、安価な駐車場があり、気軽に行ける地域となっている。また、外国人も楽しむことができる環境整備が必要であり、外国語表記やWiFiが使用できることです。
④病気になっても近くの病院から、大型病院への連携がスムーズにできる体制が整っている。
ことなどです。

 集客力を高めるためには、賑わいの創出が不可欠です。
①住民が参加できる場が必要であり、若者や子供が参画できるイベントが必要です。
②もの創りを楽しむ工房があり、カフェや小物の販売店が点在している。
③中心地に小川や水辺を取り入れ、花の回遊路やライトアップで夜も楽しめる演出 がある。
④平日は文化・芸能人を、休日は近隣の住民の参加型イベントを開催することが、よ り有効的な集客ができるのではないでしょうか。
⑤地域の祭りや県内で採れた農水産物の定期的市が開かれる。

 最後に、これからの地域づくりには、
①シングル世代や夫婦のみの家庭が多くなることから、商品提供の工夫が必要になっています。商品を小分けして、買いやすく、購買の機会を増やすことで売上増に繋げる必要があります。
②地域活性化には、循環型経済の確立が重要であり、農・商・工連携を活かした店舗の品揃えが求められています。原産品を加工し、調味料や菓子等オンリーワンの商品として価値を上げることが重要です。消費の主役は女性であり、女性を呼び込む仕掛けが必要です。
③地域にあるものに誇りを持ち、自らの思いを語れる人材の発掘と地域をコーディネートす る人材が不可欠です。

昭和の町(豊後高田市).jpg

 全国的にみて、元気な街として、高松市の丸亀商店街、長野県の小布施町、大分県豊後高田市、兵庫県豊岡市城崎等が脚光を浴びています。新規開発ではなく、既存の建物を活用した街の再生に取り組んでいる地域です。レトロ感覚のものは残し、地域資源を磨きあげることで、商店街が復活しています。

 今後は市街地と郊外をつなぎ、双方が栄える街づくりが必要ではないかと思います。最後に日本の人口は確実に減少していくため、交流人口の増大が不可欠です。交流人口を増やすには、「楽しい地域ならではの生活の場」が感じられる街づくりではないかと思います。日本の原風景を取り戻し、地域住民が生き生きと暮らせる場づくりが求められています。
       参考:実践!田舎力 小さくても経済が回る5つの方法:金丸弘美著
          中心市街地の成功方程式:細野助博著

No.311 鹿児島の魅力を再発見~「旅のスパイス鹿児島」を活用してPRを~

2014年5月19日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

桜島(磯海水浴場から).jpg

 鹿児島に永年住んでいると、素晴らしい景観が当たり前のこととなり、四季の変化にさえ気づかなくなります。鹿児島市内から美しく眺められる桜島は、天気の良い日は山の姿が7回変化すると言う。朝起きると目の前にある桜島はあって当然であり、今日も降灰が市内に来なければと願っている市民が多いのではないでしょうか。

     志ろ山と さくら島 かけあなさやけ
                  正月虹の 立ちわたりたり  ~牧暁村~
     (注)志ろ山とは、城山のことです。桜島にこの歌碑があります。

 しかし県外から初めて訪れた観光客や外国人は、錦江湾に浮かぶ桜島の雄姿や、噴火して黙々と上がる噴煙を身近に観察できることに、この世で初めて遭遇したような驚きと喜びの声を表わします。

旅のスパイス鹿児島表紙(サイズ縮小).jpg

 我々鹿児島には何気なく過ごしている日常の暮らしの中に、県外の方が"びっくり"するような光景や生活があります。それらは鹿児島ならではの風土や習慣、文化です。

 この度鹿児島県ホテル旅館組合青年部の皆さんが、鹿児島での旅に味を加えてもっと楽しくなるようにと「旅のスパイス鹿児島」というタイトルの絵はがきを完成させました。2012年から取り組み、1年かけて約1000の観光客の"生"の声を集めることができ、そこには気づきやたくさんの再発見がありました。

 絵はがきの裏にあるタイトルの文を紹介します。(文章は絵はがきの原文の通り)

「克灰袋」・・桜島の火山灰を入れる袋です。以前は「降灰袋」でしたが、桜島の灰に負けないぞ(克服するぞ!)という意味で「克灰袋」に改名されたそうです。

「のんかた」・・鹿児島のお湯割りの焼酎グラスにはメモリがついています。メモリに合わせて焼酎とお湯を混ぜると美味しく呑めます。お湯を先に入れないと「先輩」に怒られることもあるので、お気をつけて。おつまみにはガランツがおすすめ。意味は鹿児島の誰かに聞きましょう。

旅のスパイス絵はがき(サイズ縮小).jpg

「桜島の風向」・・鹿児島のニュース・天気予報には桜島上空の風向きが表示されます。みんな風向の予報を見て火山灰の流れに注意し洗濯物や洗車のタイミングを考えたりします。洗車したあとには、だいたい火山灰に降られ、灰まみれに。とても残念な気分になります。

「ちけもん」・・鹿児島のだいたいのラーメン屋さんではラーメンと一緒に漬物が出されます。漬物を食べお茶を飲みながらラーメンが出るのを待ちましょう。鹿児島では「ちけもん」ともいいます。


「両棒餅(じゃんぼもち)」のような甘いものと一緒に出されることも多いです。両棒餅は、仙巌園付近で食べることができます。

「おはな」・・鹿児島の人はお墓や記念碑をこまめに掃除をしてお花をたやしません。

旅のスパイス絵はがき3(サイズ縮小).jpg

「温泉」・・鹿児島市内の銭湯は、ほとんどが温泉。家族風呂も日常のヒトコマです。鹿児島の誰かにおすすめを聞きましょう。指宿の海岸には砂むし温泉もあります。

「まゆげ」・・西郷さんの様にまゆげが太く濃い人が多いです。太く濃いまゆげと鹿児島弁はとても安心感を与えます。

「さくらじま」・・桜島を見るとホットします。そんなあなたは、もう鹿児島人です。 その他「しろくろ」と「へへへ」の絵はがきがあります。

 どの絵はがきも私たちの日々の生活の中で当たり前に感じている事柄ですが、文を読んでみると、あらためて先人が育んだ知恵と行動に驚かされます。桜島の降灰を物語風に面白く描き、掃除の苦労も忘れてしまいます。

 また、お墓について生花が飾られている光景に出合うと貸切バスのガイドさんは、先祖代々受け継がれている鹿児島の先祖崇拝の風習を語ります。メモリがある焼酎グラスは、県外の観光客と一献傾ける際には説明し易く、鹿児島のお土産としても勧めています。

旅のスパイス絵はがき2(サイズ縮小).jpg

 鹿児島県ホテル旅館組合青年部の方々は、新幹線全線開業を控えて着地型観光の定着に積極的に取り組んできました。宿泊者を対象に、早朝の鹿児島魚類市場見学ツアーもその一つです。夏休みには子供たちの参加も多く、市場内での食堂で新鮮な魚を食べる朝食も人気を博しています。青年部の日々の努力が、鹿児島の観光を支えていると感じます。

 最近の観光は、宴会型団体旅行から、地域の生活・文化に触れる個人旅行が主流となっています。今回の取組は、それを面白く楽しく伝えることができる絵はがきであり、書いた方の温かさも伝わります。

 「旅のスパイス鹿児島」の絵はがきは、県内の36青年部施設を中心に配布・販売しており、5枚セット300円です。宿泊者に一声かけることで、絵はがきの認知度も高まります。今「郷土愛」の構築や「旅育」という取組が大切になっています。ふるさとの良さを伝える良い教材にもなります。この絵はがきも活用して、県外の友人に鹿児島の四季折々の魅力や伝統文化を伝える機会にしたいものです。
      参考:鹿児島県ホテル旅館組合 青年部事業 ~旅のスパイス鹿児島~

No.301 小説の舞台や、童謡・唱歌に歌われた景観とは ~美しい日本の原風景を大切に~

2014年3月3日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

道がつづら折りになって、いよいよ天城峠に近づいたと思う頃、雨脚が杉の密林を白く染めながら、すさまじい早さで麓から私を追って来た。
                ~川端康成『伊豆の踊子』から

 上記の文章は、ノーベル文学賞を受賞した川端康成の「伊豆の踊子」の冒頭の文です。何回読んでも素晴らしい文章です。川端康成は、「上海」や「旅愁」の著で知られる横光利一と並んで、新感覚派を代表する作家の一人です。「伊豆の踊子」や「雪国」は、過去何回も映画化され、小説の舞台となった伊豆の湯ヶ島や下田、越後湯沢温泉等はロケ地として有名になりました。

 伊豆の天城峠を訪ねると、苔の生えた石造りの天城トンネルやスギ林に囲まれた坂道が続き、小説の舞台がそのままあり、川端康成が愛してやまなかった伊豆の魅力を醸し出しています。

棚田(縮小).jpg

 ところで、童謡や唱歌は、日本の美しい田園風景や四季の移ろいが詩となり、それにメロディが付けられ、子供のころから口ずさんでいる歌が多いのではないでしょうか。「故郷」、「春の小川」、「夏の思い出」、「赤とんぼ」等美しい日本の四季が浮かび上がります。

 小学生のころ音楽が苦手で、いつも口をもごもごして声を出さないでいると、先生に叱られた記憶や、中学生になり声の変性期と重なり「椰子の実」の歌を男子生徒が歌わず、音楽の先生を泣かしたのを覚えています。

 今ではその頃のやんちゃな頃を忘れて、日本の美しい情景が唱歌と一緒に流れると、菜の花やレンゲ畑の畔道を、ミツバチを追いながら自転車で中学校に通った頃を思い出します。「メダカ」や「うなぎ」が泳ぐ小川が校庭の隅を流ており、美しい田舎の原風景がそこにはありました。

冬景色.jpg

 国語学者金田一春彦氏は、ある式典で同席された美智子皇后様から、「私が好きな唱歌は『朧月夜』と・・・・『冬景色』です」とお聞きして、自分と同じ曲であるとポンとひざを打ちたかったという。二つの曲は、春と冬の日本の自然の情景が美しく描かれ、目の前に出てくるような錯覚を覚える素晴らしい曲です。

 奈良時代に編纂された「万葉集」やその後の「古今和歌集」、「新古今和歌集」には、美しい四季の歌がありますが、自然現象に託して故郷への想いや恋心を伝えています。

 日本は四季がはっきりし、気候の変化は美味しい農水産物をも生み育てます。穀物やくだもの、野菜、近海の豊饒な海では、タイやアジ、キスなどが獲れます。山林や火山が多い地形は、美味しい水が湧きでるという恵みをもたらしています。また、冬は赤い椿が白い雪に映え、春になると桜前線が日本列島を縦断し、夏は朝顔やひまわりが咲き、秋になると野山は紅葉し、色とりどりの景観が列島を南下します。

 桜や紅葉の美しさは日本人だけでなく、多くの外国人の心をひきつけます。外国人は桜や紅葉の美しさに憧れて日本を訪れます。訪日外国人が1000万人を超えた今、鹿児島が持つ自然の美しさ、温泉、食、おもてなしの心を持って誘客に努めなければなりません。

出水武家屋敷(CD).jpg

 鹿児島では「郷中教育」、「日新公のいろは歌」、「出水兵児修養掟」など、人として生きる心構えを教えており、薩摩の偉人が育つ環境づくりに役立ったと感じます。 子供のころから、古里の美しい田園風景や、歴史、祭り等を学ぶ機会を増やして行かねばなりません。そのことが故郷を愛する心を育むことにつながります。

 また、日本の伝統的生活や文化、歴史、美しい自然が歌われている、童謡・唱歌の舞台を訪ねるのも旅の楽しみではないでしょうか。

 鹿児島にはいたるところに、日本の原風景が残されています。白砂青松の海岸、レンゲソウの美しい畑、田植えの後のきれいに水を張った棚田、整然と植えられた杉林、石を積み重ねて造られた段々畑等人々の知恵が生きています。

 都市周辺部では、開発が進み昔フナやコイが泳いでいた小川は、コンクリートの蓋で隠れて見る影もありません。滝廉太郎が作曲した「花」では、当時の隅田川は次のように表現されています。

桜(ふんわり).jpg

春のうららの隅田川 上り下りの舟人が 
櫂(かい)のしずくも 花と散る
ながめを何に たとふべき
見ずやあけぼの 露浴びて われにもの言ふ 桜木を
見ずや夕ぐれ 手をのべて
われさしまねく 青柳(あおやぎ)を

 明治時代の隅田川は清流の川でした。われわれは、美しい日本の原風景をいつまでも残していくことが求められています。そのことが、外国人にも支持される国になるのではないでしょうか。

大島高校のセンバツ出場を祝す~全国に奄美群島の魅力を伝える機会に~

2014年2月3日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

ヒカン桜.jpg

 鹿児島市内から南約380キロ位置する島が奄美大島です。島ではもう緋寒桜が咲き始め、九州本土より一足早く春の訪れを感じます。昨日の「第6回奄美観光桜マラソン」には、全国から1600人余りの参加者があり、ハイビスカスの花や、コバルトブルーの海に白波が打ち寄せる海岸沿いを、ランナーたちは地元の温かい声援に励まされながら走り抜けていきました。

 奄美群島は昨年12月25日に日本復帰60周年を迎えましたが、その節目を飾るのにふさわしいビッグな朗報が届きました。第86回選抜高校野球大会の21世紀枠として、硬式野球部ができて42年目になる大島高校が選ばれました。鹿児島の離島校としては初めてであり、数々のハンディを乗り越えての出場は全国的に話題になりそうです。昨年は大隅半島から初めて「尚志館高校」が選抜大会に出場し話題となりました。

甲子園球場.jpg

 鹿児島県からは九州代表5校の1校として「神村学園高校」も出場します。21世紀枠の選考基準は「部員不足や恵まれない環境の克服、文武両道の実践、清新の気風あふれたチーム、積極的な地域貢献活動など他の学校の模範となる学校」となっています。

 野球部員は日頃から地域貢献活動にも積極的に参加しています。2010年に奄美大島を襲った豪雨で大きな被害が発生しましたが、部員は復旧活動に尽力し、また近隣の海岸の清掃活動にも参加しています。

 大島高校は、離島というハンディがあり、鹿児島まで来るのに船で約12時間、試合ごとに前泊代、交通費等の経費がかかります。雨で試合が中止になると宿泊代が追加となるなど思いがけない出費も発生します。また、離島ということで練習試合をするにも学校が少なく、実践を積む機会も限られています。

 昭和46年、徳島県の山あいにある小さな公立高校が甲子園初出場ということで話題になりました。その池田高校は昭和49年の大会では、さわやかイレブンの名のごとく11名の部員で闘い、見事に準優勝しています。甲子園での大島高校の活躍が楽しみです。

島唄.jpg

 奄美群島のある首長さんは、試合当日は大島高校の応援席が関西の奄美群島出身者で満員になるでしょうと語ってくれました。関西地域にある奄美群島の郷友会の活動は特に活発であり、各市町村単位で毎年ふるさと会を開いています。島唄や、太鼓や口笛を鳴らしながらの踊りは、奄美の出身者の絆の深さを感じます。その姿が見られるのが待ち遠しく思われます。


 ところで、関西地域への直接の交通機関は、飛行機が奄美空港から大阪空港へ一日一便(定員144席)と、船は神戸・大阪航路が週1便であり、島からの応援団の移動が課題です。試合決定日が間際となるため、鹿児島までの船の定期船と新幹線の利用、チャーター船等の手配が不可欠ですが、関西地域の奄美群島出身者が応援団の中心になるのではないでしょうか。

奄美鶏飯(かごしまを旅する).jpg

 一方離島から初出場ということで、全国的に奄美群島をPRするチャンスです。今、「奄美・琉球」の世界自然遺産登録の準備が進められていますが、甲子園出場を機に、島民が一致団結するチャンスにし奄美群島の魅力を語ることも大切なことです。

2013年の奄美空港の乗降客利用状況によると、総乗降客数は55万6111人となり、前年比2万745人の増加となっています。本土復帰60周年効果も表れていると思いますが、全国的には奄美群島の位置や魅力については、十分知られていないのが実情です。

 甲子園球場では大きな旗やのぼり等での応援は規制されており、奄美群島の位置を印刷した応援のうちわを作り、スタンドで応援するのも一つです。 恒例となっていますが、広島県代表は、必勝と書いた宮島シャモジを持って応援しています。

船の見送り.jpg

 昨年大隅半島から初めて出場した尚志館高校は1回戦を突破しました。大島高校も離島のハンディを乗り越えて、全国の離島の高校の皆さんに元気と勇気を与えて欲しいと思います。また一緒に出場する神村学園は甲子園ではなじみの学校となりました。中学校から学園で学んでいる生徒も多く活躍が期待されます。

 甲子園球場は新幹線の新神戸駅からも、50分の場所にあり鹿児島中央駅から日帰りもできます。今年の春休みは、甲子園球場に出かけて郷土チーム2校を応援しませんか。

   奄美の代表的島唄  「朝花節」より
       ハレーカナー 稀(ま)れ 稀れ 汝(な)きゃ拝(うが)でぃ
       (イチヤヌカラン ナマヌカランヨ)
       神ぬ引き合わせに ハレ 稀れ稀れ 汝きゃ拝でぃ

       「久しぶりにあなた方にお会いできて嬉しいです。
       神様のお引き合わせによって こうしてまたお会いできたのですね。」

感動・感激をもたらすおもてなしとは~加賀屋の流儀に学ぶ~  

2014年1月20日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 北陸の能登半島は冬場は厳しい寒さにさらされ、観光客も少なくなります。その玄関口にある七尾湾に面し、温泉旅館が立ち並ぶ場所が全国有数の高級温泉街と知られる和倉温泉です。

下駄.jpg

 その中でも旅館「加賀屋」は、「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」(旅行新聞社主催)の総合部門で、34年間第1位の表彰を受けている日本を代表する旅館の一つです。ちなみに、指宿温泉のホテル秀水園が料理部門で30連覇しています。

 加賀屋は客室数248、総宿泊客室定員が1450人、年間宿泊者は約22万人、客室稼働率は70~80%であり、それを従業員650人で支えています。徹底したサービス精神の姿が、口コミで伝わり多くの顧客の支持を得ています。2010年には、台湾に「加賀屋 北投」をオープンしています。

 加賀屋は、建物、客室、浴場、オープンスペースともすばらしい造りとなっていますが、企業理念として「笑顔で気働き」を掲げ、おもてなしのサービスを最大の商品として位置づけ、宿泊者に対しそこで働く従業員で最高のおもてなしを提供することを目指しています。女将がすべての客室に出向いて挨拶するなどトップ自らおもてなしを実践しています。 

おもてなし(お辞儀).jpg

 お客様の来館の目的を事前に察知すれば、可能な限りそれに沿ったサービスを提供しています。還暦の旅行と知れば、赤い帽子や服装の準備を、法事の等に関する旅行では、亡くなったひとのために陰膳を準備します。期待を超えるサービスを、お客様から言われる前に提供して行くことを徹底しているのが加賀屋の流儀です。

 また、過去に宿泊した顧客のデータベース化を進め、サービス提供につなげています。人は自分の名前を呼ばれた時に、その存在を認められたものとして、喜びを感じるものですが、一度の出会いで感動を提供し、リピーターになってもらうため、積極的に相手の名前と顔を知ることにも努めています。

 寝床の枕の硬さの具合、薬を常用される方の部屋には、氷無しの水だけのポット、アレルギーの有無、食事の好き嫌い等事前のチエックを十分行っています。

旅館のお部屋.jpg

 お客様が到着してお部屋に案内するまでの間に、館内の説明や翌日の予定を聞き的確な方法でサービスを提供できるよう心がけています。体の不自由な方が、翌日の指定券が取れていない場合は、乗車予定の列車の席を確保する為、前の駅まで職員が行きそこで自由席に座り、「和倉温泉駅」で交代してその席に座らせる努力も惜しまないといいます。

 「お客様の思い」を具体的な「こと」に変えて提供することが、「価格」を超えた「感動」を生みます。それは人の行動であり、これこそがホスピタリティです。

 和風旅館で高品質のおもてなしを機械化することは難しいことです。加賀屋では、料理の運搬等の機械化を進め、客室係がお客様にサービスを提供する時間をできるだけ長く確保できるよう改善を図っています。そのことで盛り付けの崩れや食器等の破損も少なくなるなどの効果も生まれています。

 従業員の定着や子供の教育環境改善にも努めており、企業内保育所の設置や母子家庭の社宅も併設されています。そのことが客室係にとっては、おもてなしに専念できる精神的な支えとなっています。

日本酒2.jpg

 加賀屋では、誰がやっても同じサービスを提供できる仕組みづくりや、経験豊かな客室係が、新しく入ってきた客室係に伝承していくことなど社員教育にも日頃から取組んでいます。年間3万通のアンケートを分析し、指摘された課題は速やかに対応し、お褒めの言葉は掲示するようにして、すべての従業員が共有できるようにしています。

 また、従業員の仕事の効率化をすすめ、チェックアウト時は人手が要るため、フロント や売店やコーヒーショップ等へ作業の支援を行っています。人をお送りするとき細かい配慮がなされています。

和食2.jpg

 顧客への「満足」が創り出すものは、次回の宿泊先として、たくさんある選択肢の一つに残してもらえることです。サービスに接する時、お客様はこれまでの体験から事前期待を持ちます。この期待を超えた時に、感動が生まれます。 加賀屋の従業員一人ひとりが、感動・感激を与えるサービスを提供するんだという自信と誇りを持っていることが、施設への信用と人気となっていると感じます。


 ところで、大手情報誌リクルート社「じゃらん宿泊旅行調査2013」の調査によると、鹿児島県の観光地としての総合評価は、沖縄県に次いで2位、おもてなし好感度は第4位となっています。鹿児島弁でおの出迎え、新茶とふるさとの駄菓子によるおもてなし、野に自然に咲く花をお部屋に飾る、火山灰の入った灰皿を置く、見送りは車が見えなくなるまで手を振る等鹿児島らしい優しい対応が求められます。

 観光客の地域の最終的評価は、そこに住む「人」です。一度訪れた観光客が、リピーターとなり、居住してみたいと思わせる環境づくりも必要です。

まごごろ県民運動.gif

 鹿児島県では、観光客を温かく迎える「観光まごころ県民運動」を展開しています。しかしながら企業によって取組みに差があり、十分徹底してないところもあります。 「司馬遷」の「史記」の中に「桃李もの言わざれども 下自ずから渓を成す」という言葉があります。信頼される施設への努力を日頃から全従業員で取組む必要性を感じます。  企業経営における顧客に対するおもてなしの姿勢が問われます。

 日本の和食が、昨年ユネスコの世界の無形文化遺産に登録されました。日本旅館での「おもてなし」が今以上に国内外から注目されています。アベノミクス効果も徐々に表れており、宿泊単価の上昇も見られるようになり、高品質を売りとする宿泊施設の稼働が顕著となっています。

 日本は成熟社会を迎え、モノの豊かさより心の豊かさが求められる時代となっています。 加賀屋のおもてなしに学ぶべきことが多いのではないでしょうか。

          参考:「最強のサービス」の教科書 内藤耕 講談社現代新書

焼酎文化でおもてなしの提供~焼酎の消費拡大につなげよう~

2014年1月14日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

平成26年観光連盟新年互礼会.jpg

 1月も半ばとなり、開聞山麓は菜の花が見ごろを迎え、観光客の目を楽しませています。年明けの各種会合では、焼酎での宴会が例年になく話題となったのではないでしょうか。焼酎は鹿児島県の特産品であり、平成22年度の本県製造品の出荷額としては、配合肥料、部分肉(冷凍肉含む)に次いで第3位で、約1,260億円となっています。

 また、焼酎は製造に従事する製造業者が、特定の企業の独占状態ではなく、全県的に分布していることが他県との違いです。また、原料生産者(農家)、酒販業、料飲業等関連産業が多い産業です。

黒糖焼酎2.jpg

 第一次産業として、さつまいも、米、さとうきびの活用、第2次産業として、包装資材、燃料、飼料製造、第3次産業としては、運送業、宿泊施設、料飲店、酒販店等多くの分野に経済効果をもたらしています。本県の農産物を加工・販売を行うという農商工等連携のモデルと位置づけられています。

 県内の焼酎蔵元数は111あり、銘柄は1000種類を超え、さつまいもを主原料とする「薩摩焼酎」と、奄美群島に限って製造が認められている「奄美黒糖焼酎」があります。出荷量については、本格焼酎ブームがおきた平成18年度が最高となり、1升瓶換算で約1億2千万本相当となっていましたが、その後減少し平成24年度では、1億本相当(18年比84%)となっています。焼酎の販売を維持・拡大していくためには、県内産のさつま芋の安定的確保が不可欠です。

 ところで観光庁では、昨年「酒蔵ツーリズム推進協議会Ⓡ」を設立し、日本の伝統的酒である日本酒をPRし販売拡大につなげるとともに、酒蔵を観光資源として地域の活性化に活かす取組を推進しています。時あたかも、日本の伝統的な和食文化が認められ、ユネスコの無形文化遺産への登録が決定しました。外国人の入込客が1,000万人を超えたこともあり、日本酒文化を定着させる良い機会が訪れたと思います。

焼酎で乾杯.jpg

 全国的に「日本酒での乾杯」をすすめる条例の施行が相次いでおり、すでに京都市を皮切りに9市町と佐賀県で成立しています。県内では、いちき串木野市が「焼酎で乾杯」条例をつくり、地元焼酎での乾杯の習慣を広めようと、市や業者、市民が協力して取り組んでいます。

 鹿児島県議会は昨年のⅠ2月の議会で、特産品の焼酎の普及を目指し、県外からの来客を焼酎でもてなすことを求めた「かごしま本格焼酎の産業振興と焼酎文化おもてなし県民条例」を全会一致で可決し、今年の1月1日から施行されました。条例に規定する取組等が強制とならないよう「個人の嗜好と意思を尊重する」ことも明記されており、また、乾杯だけにこだわらず焼酎によるおもてなしに努めることを盛り込んでいます。

 特産品の焼酎の普及を目指し、県外からの来客を焼酎でおもてなしすることを目的に、需要拡大、鹿児島のイメージアップにもつなげる必要があります。 販路拡大や認知度向上の取組としては、「ボージョレヌーボー」の解禁日がメディアで大々的に宣伝され国民にも定着しています。

 「新酒まつり」や「本格焼酎の日」、「黒糖焼酎の夕べ」、「焼酎ソムリエのイベント」等を開催することで、新たな需要開拓が可能となります。他の業界では『バレンタインデー』や『ホワイトデー』等の事例が需要拡大につながっています。

さつま料理(黒ぢょか).jpg

 一方観光客や県外客に対し新商品開発やおいしい飲み方の提案が欠かせません。度数の低い焼酎、口当たりまろやかな飲物、スパークリング、季節(夏用、冬用)や食材(肉料理、魚料理)、場所(ビヤホール、結婚式、法事)等にあった焼酎の提供も求められます。

 また、時間をかけて寝かせる前割、お茶割、水割、ロック割、お湯との配分を変える割り方等原料の味を失わない中で、飲み方の工夫や伝授が必要です。目盛りのついたグラスを用意することも喜ばれます。

焼酎蔵元.jpg

 外国人観光客が急増する中で、飲食時に焼酎を提供しファンになっていただき、PR効果をもたらす取組が必要です。焼酎は蒸留酒であり、ワイン好きの外国人には親しみやすい飲みものではないかと思います。原料や製造法について書かれた外国語表記のパンフも欠かせません。

 観光地のルート上にある蔵元を訪ねるツアーを提案し、焼酎づくりの体験や購入予約をパッケージにした旅行商品の企画も求められます。記念品として、ラベルにオンリーワンの工夫をしたマイボトルを作ることをお勧めします。

 薩摩の焼酎造りは、明治時代薩摩半島の風光明媚な笠沙の地で、3人の若者が焼酎造りの技術を伝え、黒瀬の集落にまたたく間に広がり、彼らは季節になると九州一円の酒造に出稼ぎにおもむき杜氏、蔵子として腕をふるったと言われています。「杜氏の里笠沙」に行くとその歴史を学ぶことができます。鹿児島の経済を支えている焼酎を、県外客にもっと広める意味でも、おもてなしの視点で、焼酎文化を作り上げることが重要です。

 ところで、子供の頃正月や祭りの宴席で大人たちが、木の棒を手に隠して、面白い言葉で数当てをし、焼酎を楽しく飲みながら親睦を図っている光景がよく見られました。南九州に古くから伝わる「なんこ遊び」です。

なんこ大会2013.jpg

 なんこは対戦する二人が向き合い、固い樫の木でつくられた10センチ程度のなんこ珠を3本後ろ手に隠して持ち、その何本かを右手に移して畳の上(なんこ盤)に突き出し、合計数を予想して言い、互いに手を開いて持っている本数を見せ合い、勝ち負けを決める遊びです。負けた方が、事前に盃に盛られた焼酎を飲むことになります。

 手つきでなんこ棒を出す姿は滑稽であり、仲間の笑いを誘います。次から次に選手が交代し、座は一変に盛り上がっていき、焼酎の量も増えていきます。又外国人に教えると、手のしぐさや数字の言い方になど伝統的日本文化の遊び方に興味を示します。

 焼酎の需要が足踏みしている中で、なんこ遊びを定着させ焼酎の新たな楽しみ方を提供し、おもてなしの一環として焼酎のファンを開拓して売り上げにつなげたい思いがあります。又、特産品の薩摩焼の一つである「黒じょか」に焼酎を入れ盃につぐという伝統的飲み方を教えることで、お土産としてセットで買ってもらうことにもつながります。

トシドン.jpg

 なんこは漢字では「南交」と書き、南方と交易が盛んであった薩摩藩が取引の祭、接待の一つとして活用した高尚な遊びと言われています。県外の方がみえた時、なんこ遊びを教えることで交流も深まり、思い出に残ります。 鹿児島の伝統的遊びである「なんこ遊び」を復活させ、焼酎文化の復活に一躍を担いたいものです。

 かごしまの固有の歴史、伝統、自然が育んだ地域の食文化を保護・継承し発展させていくことも重要なことです。県内のいたるところに焼酎の蔵元が点在しており、今回の「かごしま本格焼酎の産業振興と焼酎文化おもてなし県民条例」の制定を機に、食と一緒に地域ならではのおもてなしを提供したいものです。
 参考:かごしま本格焼酎の産業振興と焼酎文化でおもてなし県民条例の制定について

2014年を果敢に戦い抜こう ~足元を見つめ自ら行動する年に~

2014年1月6日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

開聞岳初日の出.jpg

 明けましておめでとうございます。年末年始は最大で9連休となり、1泊以上の旅行に出かけた人は、過去最高の旅行者数となったのではないでしょうか。近隣の温泉地で正月を過された方も多いのではないですか。


 今年の干支は「午」で、動物にあてはめると馬になります。十二支の7番目、午の刻は、昼の12時およびその前後2時間のことで、そのため昼の12時を「正午」といい、「午前」「午後」という言葉が生まれました。

午2014.jpg

 日本では、初詣や受験前に「絵馬」に願い事を書いて奉納します。神様が乗る神馬を奉納する習わしが、馬の絵を描いて代用する「絵馬」の由来です。 今年は、怒涛の如く走りだす馬にあやかり、年初からスピード感を持って対処していくことが求められます。

 アベノミクス効果等で日本経済は、ゆるやかな回復基調にあり、個人消費も伸びています。また、円安効果でインバウンドが好調で、昨年の12月20日念願の1000万人を達成しました。

和食.jpg

 ところで日本経済は、4月に消費税が8%に上がることから、3月までは駆け込み需要で多くの分野で拡大が望めますが、その後は買い控えなどの動きが顕著となり、レジャー等への支出は減速しかねません。

 また、世界中が1カ月間熱狂する「2014FIFAワールドカップ」が、6月12日から7月13日までブラジルで開催されます。4年に一度のサッカーの祭典には、日本チームも参加することから、その期間中は国内旅行に出かける人が少なくなることが、前回大会でも示されています。

 日本経済が回復傾向にあることから、政府も様々な施策を推進し、消費税アップに伴う経済減速の歯止めに期待しているところです。昨年後半から国内旅行の回復基調が見られるのは明るい話題です。和食がユネスコの世界の無形文化遺産に登録されたことも、日本食の価値を高めています。

 今年の取組について触れたいと思います。まず県民が県内の魅力を知り、県外の方々に自らPRできることが重要であることから、域内観光の販促にも力を注ぎます。 県と観光連盟では次の3つの施策を展開します。
 ①主要観光地域(指宿・霧島・鹿児島)発の広域観光周遊ルートの整備
 ②源泉数全国2位を誇る本県温泉地の優位性を生かした温泉地めぐりルートの整備
 ③鹿児島のNO1の観光素材である桜島の再評価と眺望スポットめぐりルートの整備
  を中心にPRの強化と受入体制の充実も図っていきたいと考えています。  

 県内の話題としては、4月2日から川内港から甑島(里、長浜)へ高速船の運行が開始 されます。JR九州の観光列車を手掛けた水戸岡氏のデザインによるものです。

ナポレオン岩.jpg

 初夏に「ニシノハマカンゾウ」が黄色い花を咲かせると、その後を追うように薄紅色の「カノコユリ」が草原一体に咲き乱れ、甘い香りを漂わせます。テレビドラマ「Drコトー」や、椋鳩十の小説「孤島の野犬」ゆかりの島が脚光を浴びると思います。


 次に「吹上浜砂の祭典」が従来のGW期間中から、5月2日~31日まで会期が延長さ れて開催されます。連休中はバスが渋滞に巻き込まれる懸念があることから、エージェントがツアー企画を渋っていましたが、平日の企画が可能となり、バスツアー等の企画が多くなることが想定され、周辺の観光地、宿泊地は新たな需要が発生します。

薩摩英国留学生渡欧の碑.jpg

 7月20日には薩摩藩英国留学生記念館がオープンします。近代日本の若き原動力とな った薩摩人の偉業を学ぶことができる施設で、教育旅行には最適な施設であり、一日遠足や修学旅行誘致の目玉にしなければなりません。また、留学生にちなんだ飲料やグッズ等の開発も求められます。甑島とセットでコースが組めるのではないでしょうか。

 3月16日は、霧島国立公園が指定80年周年を迎えます。日本で初めての国立公園で あり、様々な誘客対策が計画されています。えびの高原一帯のトレッキングや韓国岳登山、変化した新燃岳の姿等、登山愛好者だけでなく、外国人、霧島温泉の連泊対策としてぜひ PRしていただきたい。周辺の人吉市、えびの市、曽於市、都城市との連携も不可欠です。

 地域の隠れた観光素材の商品化には、エージェントと自治体との連携が欠かせません。着地型観光については、「鹿児島県旅行業協同組合」が「魅旅」のネーミングで商品化に努めており、地域の活性化に寄与しています。今後も積極的な支援体制が地域への交流人口の拡大や人材育成に繫がると考えています。地域は素材を提供し、主要観光地からの誘客を働きかけて欲しい。

種子島ロケット基地.jpg

 離島については、FDAやJACを活用し、オンラインのない空港からのチャーター便を増やし、時間的短縮を図ることで旅費の割高感を払しょくできると思います。また、時間にゆとりのある熟年層には豪華な船旅を、若者には夏の美しい海や大学のゼミのフィールドとして売り込まねばなりません。

 種子島の宇宙基地、屋久島の世界自然遺産、「奄美・琉球」の世界自然遺産を目指す取組等が、離島の魅力を引き出すことになります。

 鹿児島市は、日本を代表する都市型観光の魅力を備えた街で、歴史、自然、温泉に加え、食の魅力が観光客の滞在を可能にしています。県都として県内全域を見据えた観光振興策が重要であり、県内各地域の魅力が増すことが結果として鹿児島市に宿泊することになります。アクセスや大会設備の充実等を活かし、MICEの積極的誘致も不可欠です。

 2015年には「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」が、世界文化遺産に正式登録の準備が進められており、そのリストに「近代化産業遺産」の5箇所が入っています。明治維新150周年と文化遺産の価値をセットでPRしなければなりません。

 大都市圏からの若者層を誘客すべく、体験を主とした現地研修を進めてきました。今年は具体的に商品造成し誘客する年です。若者に共感されるパワースポット、貴重な動植物の生態系、ストーリー性のある旅、マリンスポーツなどゼミの教材にも使える情報等の提供が、九州本島最南端の県に向かわせるきっかけになると思います。

スポーツキャンプ6.jpg

 スポーツツーリズムの推進も求められます。スポーツ合宿は「さんふらわあ」の活用で大隅地域が特に増加しています。昨年県内3箇所で、韓国のプロ野球チームが秋季キャンプを張りました。今後はサッカーのキャンプ誘致も必要であり、プロが使用できるサッカー場として整備することで、温暖な気候と宿泊施設の充実がそれを可能にします。

 温泉地指宿は野球場の整備を急ぎ、プロ野球のキャンプ誘致が不可欠です。2020年には、東京オリンピック開催が決定しており、事前キャンプ誘致等もスタートします。

教育旅行(桜島).jpg

 今年も比較的順調に伸びるのが教育旅行です。関西地域から集約臨時列車で6,000人の中学生が訪れます。農業・漁業体験を実施する学校が増加し、知覧の平和学習、桜島や霧島の火山・自然学習、鹿児島市の歴史探訪等が、優位性を発揮しています。県内全域に、約1000軒の農家民泊の供給が広がる中で、「簡易宿所営業」の取得を強力に進めていかねばなりません。

 キャンペーンの中心は、今年も最大のマーケットである関東地域や、身近に来ることができる福岡地区でのPRに努めていくことが得策と考えます。東京線は航空機の供給量が多く、商品企画が容易であり、MICEが誘致しやすいことも上げられます。

外国人の後ろ姿.jpg

 今後日本の人口は確実に減少することから、外国人観光客の誘致は欠かせません。イン バウンドについては上海線の利用促進やソウル線の夏場の搭乗率アップ、台湾線は宮崎線が週3便となり両県で7便体制となり、職場旅行や教育旅行の誘客対策が必要になっています。    

 特に上海線については、上海からの誘客が課題であり、現地エージェントの招聘と企画 商品造成支援、現地でのPR体制の強化が、鹿児島の認知度を高めることになります。またFITが主流となってきており、ブロガー対策や有力メディアの招聘、鹿児島でのWiFiや外国語表記の充実が求められます。ビザ解禁で観光客が急増しているタイ、マレーシア等ASEAN諸国からの誘客態勢の整備も必要です。

異人館.jpg

 WEB販売が急激に伸びる中で、情報化社会に対応できる新たな需要吸収の仕組みづくが必要となっています。楽天やじゃらん等とタイアップし、旬の情報提供が欠かせません。また、インターネットの普及で可視化が進む中、コンプライアンスの向上と迅速・正確な情報提供が求められます。

 今年は土曜日を入れた3連休以上が8回あり、旅行需要を喚起する取組を各機関自ら早目に展開することが必要です。春は、卒業式や入社式等の歓送迎会、GWのファミリー対策、夏は納涼や滞在型企画、秋は熟年旅行や企業のインセンティブ、冬は慰労会や忘・新年企画と早目の季節感あふれる企画が必要です。周辺市町村の祭りや、花、食、伝統行事等を組み込んだ、生活・文化の香りがする商品企画が求められています。

 鹿児島県は南北600キロに及び魅力多彩な観光資源があります。これからは、県民が足元の魅力を知り、住んでいる街を誇りに思うことが「おもてなしの心」につながります。厳しい1年になりますが、スピードをもって果敢に挑戦する気概で取り組まねばなりません。2014年が皆様にとって素晴らしい年になりますよう心からお祈りいたします。

  新しき 年の初めの 初春の
              今日降る雪の いやしけ吉事(よごと)
                             ~大伴家持~ 万葉集  


2013年を振り返る~地域連携の取組が始まる~

2013年12月24日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 今年も1週間余りとなりました。日本経済はアベノミクス効果等もあり、少しずつではありますが回復基調にあるのではないでしょうか。日経平均株価が久しぶりに1万5千円を超え、個人消費の拡大が観光業界にも好影響を与えています。また円安効果も寄与して、インバウンドが好調であり外国人の入込客は念願の1000万人に達することが確実視されています。

東京スカイツリー .jpg

 大きな周年行事や大河ドラマの舞台は、日本列島の東がメインとなった年でした。 東京ディズニーランドが開業30周年を迎えて、新しいアトラクションが次々に導入され、1年を通して賑いました。大人から子供まで幅広く人気が定着し、入場者数は、2,000万人を超え過去最高が予想されています。また1昨年オープンした「東京スカイツリー」効果も続き、富士山が「世界文化遺産」に登録されたこともあり、東京周辺の観光地は盛況の1年でした。

   今年のNHKの大河ドラマは「八重の桜」で、戊辰戦争では銃を持って勇敢に戦い、後に同志社大学の創始者新島襄と結婚した「新島八重」が主人公でした。前半は会津若松、後半は京都が舞台となりましたが、関連する地域には多くの観光客が訪れました。あらためて大河ドラマ放映の効果が示されています。東日本大震災で大きな被害を受けた東北地域は、官民挙げての取組が成果を上げ観光客が戻りつつあります。

西郷隆盛銅像2.jpg

 県では官民あげて27年の大河ドラマに誘致に努力しましたが、長州が舞台となる「花燃ゆ」に決定しました。「八重の桜」には西郷隆盛や大山巌等薩摩ゆかりの人物が登場し、幕末における薩摩藩の影響力の強さを感じました。

 「花燃ゆ」は吉田松陰の妹が主人公で、幕末の動乱期の物語ですが、薩長同盟の関係もあり観光面では、プラスになると思います。28年の大河ドラマ誘致に向けて官民挙げての動きがスタートしました。粘り強い誘致活動を展開していきたいと思います。  

 三重県の伊勢神宮では、20年に一度の式年遷宮が開かれ、近年のパワースポットブームが追い風となり、予想をはるかに上回る約1300万人が訪れました。また出雲大社も式年の行事が行われ、周辺の玉造温泉や松江地域の宿泊施設は、連日満員という盛況でした。

 このように日本列島の東に話題が多かった中で、九州新幹線開業3年目を迎えた鹿児島の現状はどうだったでしょうか。宿泊人員でみると、5月から9月までは前年を超え、大きなイベントがない中、頑張っている地域の取組が実績としてあらわれています。宿泊施設では、高額商品の販売が好調となっています。日本食が、ユネスコの世界無形文化遺産に登録され、日本旅館の良さが再認識された年であったと思います。

クルーズトレインななつ星2.jpg

 3月から「おれんじ食堂」が運行し、エージェントの企画や台湾、韓国の観光客に大好評でした。10月からは「ななつ星イン九州」の豪華観光列車も運行され、霧島温泉地域が宿泊地に選ばれ話題となりました。沿線のおもてなしも話題となり、来年の6月出発分までは予約が埋まるほどの人気です。

 2014年4月には、川内港から甑島に高速船が運行予定です。JR九州の観光列車を手掛ける水戸岡悦治さんのデザインによるもので、甑島への来島者が一段と増えるものと思われます。

佐多岬01.jpg

 九州本土最南端の佐多岬への道路が無料化され、また老朽化した施設の撤去などが進み、昨年1年間の1,5倍の観光客が訪れています。(10月末現在)大隅地域は、交通の不便さや宿泊施設が少ないこともあり、旅行商品化やPRが課題となっていました。今年から指宿地域と連携したルートづくりを進めています。

 第一次産業を活用した教育旅行への「民泊」の推進や、「さんふらわあ」を利用したスポーツ合宿が伸びています。「鹿屋航空基地史料館」は、新たな学習先として人気が高まっています。

 霧島地域は新燃岳の噴火が落ち着き、温泉地としての魅力が復活してきました。霧島は「九州オルレ」の認定コースとなり、韓国からのウオーカーも増加しています。ホテルの従業員自ら山に登り、コースを確認するなど地域を学ぶ取組も始まりました。

霧島温泉2.jpg

 南薩地域では、「釜蓋神社」、「番所鼻公園」、「タツノオトシゴハウス」が脚光を浴びています。「茶寿会」を中心に、お茶を観光に活かす取組を始めており、温泉地指宿と連携したさらなる活動が期待されます。枕崎や坊津等を組み込んだ着地型商品の定着がかぎとなります。

 世界で一番美しいロケット基地のある種子島へは、「SSH」(スーパーサイエンスハイスクール)の修学旅行が、「世界自然遺産登録20周年」を迎えた屋久島では、縄文杉登山に加えて新たに里を廻るツアーが商品化され、オフ時期の誘致強化になるのではないかと思います

奄美中央林道.jpg

 奄美群島は本土復帰60周年を迎え、また、「琉球・奄美」が世界自然遺産の暫定リストに記載されました。今後国立公園の指定を経て、2016年の登録に向けて環境整備が進むものと思います。

 着地型観光の推進については、「鹿児島県旅行業協同組合」が「魅旅」のネーミングで各地域の隠れた観光素材を商品化に努めています。今後も積極的な支援体制が地域の活性化と人材育成に繫がると考えています。

 九州新幹線全線開業による時間短縮効果もあり、関西地域から修学旅行専用の集約臨時列車を利用して、5,200人の中学生が訪れました。初めて鹿児島を訪れる学校が多く、農業・漁業体験や知覧での平和学習、鹿児島市内の歴史散策等鹿児島が誇る体験メニューが優位性を発揮しています。また、県内全域に、約1000軒の農家民泊の供給が広がる中で、学校の信頼を得る意味でも「簡易宿所営業」の取得を強力に進めていかねばなりません。

 若者層の誘客を進めるべく「鹿児島カレッジ」を展開し、エージェントの商品化を推進しました。柏木由紀さんをモデルにした鹿児島の観光PRが若者に共感を与え、パワースポット、食、マリンスポーツ等の認知度が高まっており、息の長い情報発信が必要になっています。

教育旅行(農業体験).jpg

 ターゲット先としては、最大のマーケットである首都圏での誘客をさらに強化していくことが得策と考えます。東京線はJAL.ANA,スカイマーク、ソラシドエア等航空機の供給量が多く、商品企画が容易であり、また、修学旅行やインセンティブの仕向地としても選択肢が広がります。

 ところで日本人の国内旅行は成熟しており、大きな伸びは期待できず、加えて日本の人口減少による経済規模縮小は明らかであり、アジアの時代における鹿児島県の将来の発展の基盤づくりとして、地理的優位性を活用した交通ネットワークの拡大が求められており、海外との交流人口の拡大は不可欠です。

上海1.jpg

 上海は大きな経済成長が見込まれる環黄海地域の主要都市の一つです。南に開かれたアジアの玄関口として、上海はその中心に位置し、また、鹿児島県と同緯度にあり、100分程度で行けることからも、益々重要な都市となります。中国東方航空の上海線利用率アップが課題となっています。

 上海での鹿児島の魅力を紹介するメディアの出稿を増やす取組や、上海経由の東アジアへの商品企画の充実等官民挙げての支援が必要であり、相互交流が重要です。

 一方、台湾線については、宮崎便が3便となり、両県でデーリー化され、福岡とも連携した新たなコースの設定が可能となりました。修学旅行や職場旅行など安定的な需要開拓が必要です。

 ソウル線は12月22日から3月2日までデーリー化されますが、ゴルフ客や富裕層を中心に誘客に努め、年間のデーリー化が必要です。秋には韓国のプロ野球3球団が、鹿児島市、日置市、薩摩川内市で1カ月間秋季キャンプを張りました。延約5,000人が宿泊し経済効果は1億円を上回ると想定されます。地理的に近く、温暖な気候をPRしてキャンプ地定着に努めなければなりません。

 香港へは定期便はありませんが、ブロックチャーター等の取組で今年も多くの観光客が訪れました。また、シンガポール、タイ、マレーシア等ASEAN諸国へのアプローチも求められています。

鹿児島県観光サイト「本物。の旅かごしま」トップ画面.jpg

 インターネットやスマホを活用したWEB販売等の急速な進展に伴い、情報発信力の強化を図り、新たな需要層の獲得が不可欠です。県のホームページには毎日約6,000件のアクセスがあります。英語、韓国語、中国語「簡体字、繁体字」の4カ国語の対応も行っており、観光連盟に専門の担当者を配置し、観光地、歴史、アクセス、施設、イベント、食等の情報提供を行っています。また各自治体と連携を強化し、解りやすくシームレスな対応ができるよう改善に努めているところです。

 県のキャラクター「ぐりぶー」の動きも活発になっています。県民にどんどん利用され、国内外での宣伝のチャンスを増やすことが重要です。

尚古集成館1.jpg

 ところで、「明治日本の産業革命遺産 九州・山口その関連地域」が、世界遺産の国内候補地に選ばれ、2年後の世界文化遺産の登録を目指しています。薩摩藩が始めた「集成館事業」は後に日本が飛躍的な近代化を果たす大きな原動力になりました。「日本近代化の原点は鹿児島にあり」と世界の人々に伝えることが、県民としての誇りであり永続的な誘客につながると考えます。

 鹿児島県は南北600キロに及び魅力多彩な観光資源があり、域内観光も推進しなければなりません。観光客は、地域に残る行事、祭り、花、地元の人が食べる食材や居酒屋、田舎流のおもてなし、地域で輝いている人等に魅力を感じます。

 住民が地域の魅力を知りPRできることが、何回も訪れたくなる施設・地域になることにつながります。リピーターを増やすことが何よりも大切です。「観光立県」の確立には、県民一人ひとりの「おもてなし」が不可欠です。

ぐりぶー(イラスト).jpg

 最後に今年も毎週コラムをお届けでき、292回目となりました。叱咤激励をいただき感謝申し上げます。来年の干支は「午」です。怒涛の如く駆け抜ける馬のようにスタートから頑張りたいものです。よいお年をお迎えください。

身近な場所に貴重な観光資源が~かごしまの石橋文化を訪ねる~

2013年12月9日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 

楓 橋 夜 泊  張継

月 落 烏 啼 霜 満 天
江 風 漁 火 対 愁 眠
姑 蘇 城 外 寒 山 寺
夜 半 鐘 声 到 客 船

 楓橋の近くに泊めた船の中で休んでいたが、チラチラする漁火に照らされた赤いもみじが眼にしみる。寒山寺から真夜中を告げる鐘の音が船まで届いてきた。何ともいえない旅愁をそそる旅人の心を歌にしたものです。

寒山寺2.jpg

 東洋の「ベネチア」と呼ばれる蘇州は、江蘇省の東南部、長江下流のデルタ地帯に位置する江南地方を代表する都市です。蘇州の旧市街から西に約5キロの場所にあるのが、「楓橋夜泊」に歌われている寒山寺です。蘇州は水郷を中心として発展し、いたるところに小さな石橋がかけられていますが、有名なのが江村橋とこの楓橋です。

 上海から1時間半の位置にある蘇州市の寒山寺は、大晦日の除夜の鐘で良く知られており、年末年始多くの日本人が訪れます。また、世界遺産で中国四大名園の一つ「拙政園」やイタリアのピサの斜塔と並び称せられる「虎丘」、冬の味覚「上海蟹」も有名です。鹿児島からの上海便を利用してぜひお気軽にお出かけください。

 ところで中国では隋~唐の時代からアーチ式石橋が独自に発展します。7世紀初め架橋された河北省の安斉橋には、洗練された意匠と高度な技術が使われています。

 また、北京市の南西約15Kmの場所に「盧溝橋」がありますが、マルコポーロが「東方見聞録」の中で「世界中どこを探しても匹敵するものはないほどの見事さ」と書いた橋です。「日中戦争」の発端となった衝突事件が発生した場所で、源頼朝が征夷大将軍に任命された1192年に架橋されています。今では観光地として多くの人が訪れます。

 鹿児島でも江戸時代に造られた石橋を見ることができます。 石橋記念館展示解説書 鹿児島城下と五石橋によると「近世鹿児島の城下町は、鶴丸城を中心に整備され、文政9年(1826年)には人口が約7万2千人達し、名古屋、金沢と並ぶ有数の都市になります。

桜島(石橋記念公園から).jpg

 しかし、西から南へ城下を囲むように流れる甲突川はたびたび氾濫する暴れ川でした。天保9年(1838年)の氾濫を契機に、新上橋から下流の河川工事が行われ、合わせて4つの木橋を石橋に架け替え、さらに玉江橋が新しく架けられます。


 石工は肥後(熊本)から招かれた岩永三五郎で、4キロメートルの区間に5つの長大石橋が架かる城下町が誕生することになったのです。架橋に至る経緯が書かれています。

 その五つの石橋は、創建以来150年余の間、鹿児島市内の街々を結ぶ重要な橋として利用されてきました。しかし平成5年8月6日の集中豪雨で2つの橋(新上橋と武之橋)が流失したことから、残された3つの橋(玉江橋、高麗橋、西田橋)を貴重な文化遺産として後世に残すことになりました。5石橋の歴史や架橋技術を伝える「石橋記念館」が整備され、石橋記念公園として平成12年にオープンしました。

石橋.jpg

 かつて薩摩藩主が参勤交代で通行した西田橋は、石橋記念公園に、また、高麗橋と玉江橋は隣接の祇園之洲公園に移設されました。特に城下の玄関口にあった西田橋は、欄干の擬宝珠や扇状の石積みなど薩摩藩の威厳を示す豪華な橋として造られています。

 NHKの大河ドラマ「篤姫」では、江戸に興入れの際の一行の行列シーンが撮影されました。アーチ越しに眺める桜島の絶景はすばらしく、旅番組や映画のロケもよく行われています。橋の下の「水の流れ」は、水道水が循環されており、子供たちの格好の遊び場として提供されています。一日遠足や家族連れで弁当を広げているシーンを見かけます。

石橋記念公園子供ガイド.jpg

 石橋記念公園では、全国的にめずらしい子供ガイドが活躍しています。授業の合間に勉強を重ね、休日には観光客にガイドを行っており、大好評を博しています。子供の頃から地域の歴史に親しみ、おもてなしの心を習得することは観光鹿児島にとって大変ありがたいことです。

 その努力に対し心から敬意を表したいと思います。資料館も公園も無料開放となっており、皆様もぜひ石橋記念公園を訪れて鹿児島の石橋文化を学び、公園から見る桜島の雄大さを確認してください。

東郷平八郎12.jpg

 石橋記念公園の周辺には多賀山公園、仙巌園、水族館、桜島桟橋、ドルフィンポート等など散策コースとして楽しめるスポットが点在しています。一方では、鹿児島駅を基点に、海岸線等の整備も急がれます。


 また、磯地域の5つの近代化遺産群が、2015年世界文化遺産への正式登録を目指しています。2018年は明治維新150周年の節目の年を迎えます。これからイベントの開催も多くなりますが、身近にあるすばらしい歴史遺産や観光施設を訪ねて、鹿児島の先人たちの偉業とその価値を確かめ、国内外に発信することが求められているのではないでしょうか。

参考:鹿児島県立石橋記念公園 鹿児島県発行

心がなごむ時を持とう~見えないものに感謝する心の大切さ~

2013年11月11日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

     けふもまた こころの鉦(かね)を うち鳴らし
                    うち鳴らしつつ あくがれて行く
                                     ~若山牧水~

お地蔵さん.jpg

 会社の行き帰りに利用するバス停の近くに、小さなお地蔵さまが立っています。誰が掃除をしているのか、いつも小さな季節の花が飾られています。私は毎朝必ずこのお地蔵さまに手を合わせて、「いつも見守ってくれてありがとうございます。今日も一日よろしくお願いします」と数秒頭を垂れます。こうすることで、なんとなく心が落ち着き安心して一日がおくれるのです。


 松尾芭蕉の「奥の細道」では、旅に誘う神様として道祖神が冒頭に登場します。

 月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人なり。舟の上に生涯を浮かべ、 馬の口とらへて老いを迎ふる者は、日々旅にして、旅を栖とす。・・・・途中略
 やや年も暮れ、春立てる霞の空に、白河の関越えんと、そぞろ神の物につきて心を狂はせ、道祖神の招きにあひて取るもの手につかず、ももひきの破れをつづり、笠の緒つけ替へて・・・・・・以下略     「奥の細道」より

 かつて民間の旅行エージェントに勤めていたころ、添乗員として国内外に多くのお客さまをお連れしていましたが、そのお客様の道中の無事を祈り、朝夕近くのお地蔵様に頭を下げる習慣が身に着きました。信州の安曇野の里を歩くと、500体を超える道祖神に会うことができ、昔から地域の人々の暮らしや旅人の安全を見守っているように感じられます。

田の神さぁ.jpg

 鹿児島でも農村地帯を歩くと、ユーモラスでにこやかな顔をした田の神様(さあ)が、田畑の片隅やあぜ道の曲がり角に鎮座しいています。姿も様々で、手にしゃもじやたすきを持ったものや、頭にシキの網目の傘、田植えをしている姿など見て回るだけでも楽しいものです。南九州の農村地帯ではおよそ2000体あると言われています。

 大地に生きる人たちは、風水害や干ばつなど人の力ではどうすることもできない自然の脅威を、昔から伝え聞いて育っています。だからこそ太陽、水、風、土など自然に日頃から感謝する心を持ち「今年も豊作でありますようにと」と石像を作り祭ってきたのです。

 小生が子供のころは、田の神様を1年ごとに持ち回りで農家に預ける習慣があり、集落の若者が籠に乗せて次の家に運んでいました。預かった家では、守り神としてひな壇に据えて、毎朝掃除とお供え物をしていました。県内には姶良、加治木、蒲生周辺や大隅地域にさまざまな形をした田の神さまが見られます。稲刈りの終わった田んぼを歩くと、ほほえましい田の神さまに会うことができ、先人たちの心に思いをはせることがあります。

 ところで日本人は初詣で神社やお寺に参拝する習慣が定着しています。境内に掲げられた絵馬には、「大学受験に合格しますように」、「家族全員が一年無事に暮らせますように」、「いい就職口が見つかりますように」等のお願い事が書かれています。

出水のツル飛来.jpg

 無理なお願いごとと思いながら、静かな祈りに時間を忘れます。旅の途中車中からでも通りすがりの神社に手を合わせ、また道すがら出会うお地蔵さまに自然と頭を下げることで、感謝の気持ちが生まれ、心に余裕ができるのではないでしょうか。


 県内には、日本一のお地蔵さまが出水市の八坂神社の境内にあります。一刀彫りの石像で台座まで含めると高さが4・15mにもなります。近くに寄るとさすがにその大きさに驚かされます。

出水日本一の大鈴2.jpg

 また、近くの箱崎八幡神社の境内には、日本一の大鈴があり、直径3.4m、重さ5tにもなり総金箔の鈴で作られています。社殿、神門の上に吊下がっている光景は、参拝者の度肝を抜く感じです。

 米どころ出水平野には今年もツル飛来の知らせが届きました。冬の訪れが近いことを知らせてくれます。来年の初詣はこの2箇所を廻り、縁起もののツルを見学し御利益を祈願したらいかがですか。

 小さいころから人だけではなく、見えないものにも感謝する心を持つということは、大切なことと思います。
           参考 かごしまよかとこ100選:かごしま再発見「浪漫の旅」

先人が成し遂げた改革に学ぶ~明治維新150周年~

2013年8月26日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

明治維新と鹿児島みて歩き.jpg

 2018年は、明治維新150周年の節目の年となり、偉人たちの足跡をたどり、薩摩の新進気鋭の精神を学び、受け継いでいく取組が求められています。 250年以上続いた幕藩体制に終止符を打ち、新しい政治体制を作り上げたのが薩摩藩、長州藩、土佐藩、肥前藩を中心とする西南の雄藩でした。


 28代当主島津斉彬は、日本の近代化を牽引した名君と称せられます。早くから海外事情や科学、文化などに造詣が深く、欧米列強の力が日本に及ぶことをいち早く察知して様々な事業を展開します。

若き薩摩の群像.jpg

 1865年串木野の羽島港を出立した14名の「薩摩藩英国留学生」は、斉彬公の生前の発案と言われ、国禁を犯して渡欧した若き薩摩の俊英たちは、帰国後多くの分野で近代日本の礎となり活躍しました。

 初代文部大臣となった森有礼、東京国立博物館を創設した町田久成、東京開成学校(後の東京大学)初代校長の畠山義成、日本初のビール工場の設立に尽くした村橋久成、アメリカに渡り、ぶどう農園の経営に成功してカリフォルニアのぶどう王と呼ばれナガサワワインで有名な磯長彦助(後の長沢鼎)らです。

 2014年春には、羽島の地に記念館がオープンします。鹿児島の小・中・高校生に必ず見ていただき、海外への夢を抱いて欲しいと思います。(島津斉彬は1858年急死している。)

薩摩英国留学生記念館.jpg

 また、斉彬公は近代国家建設には、新しい産業の創出が不可欠と考え、反射炉、製鉄溶鉱炉、ガラス製造所、紡績工場など日本で初めて近代的な工場群「集成館」事業を展開します。当時アジア地域では最大の工場群といわれています。


 また、新田開発、かんがい事業などの農業、真珠やコンブの養殖等の漁業、錫の増産する鉱業等の事業にも着手します。それはやがて明治維新の「富国強兵」や「殖産興業」という大きな政策として受け継がれていきます。

島津斉彬公像.jpg

 一方、斉彬公は人を見抜く才能に長けており、身分を問わず積極的に人材登用につとめ、西郷隆盛、大久保利通、小松帯刀らは、幕末・明治維新体制の中枢として活躍していきます。

 大局を見抜く能力、将来の人材として見抜き育てる力、新しい産業の創出と、島津斉彬が展開した日本近代化への道筋には、学ぶべき事が多くあります。彼なくして日本の変革はありえず、このことは世界にも十分PRしていかねばならないことです。  不透明感のぬぐえない現在の時代において、十分活かせるものがあるのではないでしょうか。

 勝海舟は、著書『開国起源』の中で「幕末において世界の大勢を察する活躍を有した人は、薩摩侯斉彬だけだった。・・・・その辛苦経営の力によって開国の基礎はできた」と称賛しています。

尚古集成館1.jpg

 幕末から明治にかけて西郷隆盛、大久保利通らの活躍は、現在放映中のNHK大河ドラマ「八重の桜」でも描かれています。 明治維新150周年まで5年足らずです。「近代化遺産事業」の世界遺産登録は、150周年事業の最大のテーマであり、鹿児島の魅力を世界に発信する最大の力となります。

 薩摩藩とりわけ島津斉彬が先見の明を持って日本の近代化に取組んだ偉業を、県民の皆様がもっと関心を持ち広げていくことが、明治維新150周年の意義であり、鹿児島の風土や文化を受け継いでいくことになります。

 県、市町村、経済界、観光団体と一緒になり、薩摩を題材とした次の大河ドラマ制作の働きかけを行っています。新幹線開業効果が、一段落しつつある中で継続した運動が必要です。明治維新150周年という年に向けて、毎年話題性のある取組を展開していきたいと思います。

参考:かごしまよかとこ100選

志ある経営者~顧客と家族を思う心に感謝~

2013年7月29日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 最近経営者の熱い思いに触れる機会がありました。ある運輸機関のバスの座席の前に次の言葉が書かれたステッカーがありました。「朝は希望に起き、昼は努力に生き、夜は感謝に眠る」と。

バスの座席.jpg

 経営者は、社員の皆さんに訴えています。仕事を始める前は朝日に手を合わせて一日の無事を祈願し、昼間は事故なく一生懸命に自分と顧客のために働き、夜眠る前には事故なくお客様を運ぶことができたことに対しての感謝の気持ちを、そして自分自身の行動を反省することの大切さを問うていると思います。                   

 常に感謝の気持ちを忘れず、また、一日一度は冷静な空間に自分を置き、明日に備えることの心構えの大切さを教えています。社員を大事にする心が企業の発展には不可欠と思います。「おもてなしの心」はこのような企業風土から生まれるのではないでしょうか。

食堂.jpg

 先日ある役所での会議を終え、国道沿いの小さな食堂に入りました。従業員の女性が明るい声で「お疲れ様です」と大きな声で挨拶し、すぐおしぼりと冷たい麦茶が出てきました。猛暑の折疲れた体に一服の清涼剤となりました。

注文の品を頼み何気なく壁を見ると、「祖先と親を忘れるな、親あっての子。90歳以上のお年寄りと同居されている方は、レジで申し出てください。そばをお持ち帰りいただきます。」の言葉の書かれた手書きの張り紙が目に付きました。

おそば.jpg

 食事をしながら経営者の心に思いを馳せました。日頃親のお世話で疲れている人へのご苦労さんの気持ちと、同居している年寄りにそばを持って帰ることで、両方に喜んでもらいたい思いがこめられています。鹿児島では子供の頃は、親がそばを作って家族に食べさせてくれました。特に年越しそばは各家庭で準備したものであり、小生も親戚総出でそばづくりに励んでいた姿を覚えています。今は家でそばを打つ人はほとんどいません。

 また食糧難の時代は「そばがき」などを食べて飢えをしのいでいた時期がありました。かつて身近な場所にあったそば屋も少なくなり、お年寄りが気軽に食べる機会も少なく なっていると感じます。持ち帰ったそばを、お年寄りが喜んで食べている姿が連想されます。いつまでも元気で過ごしていただけたらという思いがつのります。

 ところで、連日メディアで子供や親の虐待、親子殺人、また老人の孤独死等が伝えられる等、悲しい出来事が多く残念でなりません。 家族の構成状況を表す「日本の世帯数の将来推計調査」によると、親子3世代で住んでいる家庭は、2010年で全世帯の11%程度ですが、2035年には7%程度になると推計しています。(人口問題研究所:平成25年調査)。

 これから核家族化が一段と進み、親・兄弟全員が揃うことさえも少なくなるのではと危惧しています。少子化とともに高齢化に拍車がかかる日本の悩める将来の姿があります。

お墓.jpg

 まもなくお盆の入りです。人の命は先代からずっと続いてきて尊いものです。家族全員で祖先のお墓参りに出かけて自分が生かされていることへの感謝と、命の大切さを子供に悟らせる良い機会ではないでしょうか。

 訪ねた食堂の経営者の心には、いつも祖先や親への感謝の気持ちがあり、そのことが来店者への接遇にもつながっていると感じました。暑い夏の日心が和んだ時間でした。

ひまわり.jpg

ひまわりは金の油を身にあびて            ゆらりと高し日のちいささよ                            ~前田夕暮~

高校野球とふるさと意識~母校の後輩の活躍に声援を~

2013年7月16日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 梅雨空が晴れて、入道雲が見られるようになり本格的な夏の到来です。近くの山の木々の間からセミの鳴き声が賑やかに聞こえてきます。これから約1ヶ月が鹿児島は一番暑い時期を迎えます。

      さじなめて 童(わらべ) たのしも 夏氷      ~山口誓子~
      夏の風 山よりきたり 三百の
               牧の若馬 耳吹かれけり     ~与謝野晶子~

 第95回全国高校野球選手権鹿児島大会が、82校の参加のもと開幕し、順調に進めば 23日には出場校が決定して、8月8日から15日間阪神甲子園球場で開かれる全国大会 に出場します。

野球場の照明.jpg

 鹿児島の高校野球といえば従来鹿児島市内の学校が甲子園行くのが常連でしたが、ここ 数年地方の学校も甲子園に出場するようになり、実力伯仲で楽しみが増えます。文武両道をめざす学校や優秀な選手が地元の高校に入学し入部するようになり、指導者も甲子園への夢を求めて練習に熱が入るのではないでしょうか。

 連日県立鴨池球場と鴨池市民球場で熱戦が繰り広げられていますが、皆様は母校の応援に行きましたか。母校の名前が刻まれたユニホーム姿や、後輩たちのプレーに一喜一憂しながら懐かしい高校時代に思いを馳せているのではないでしょうか。応援団席では在校生やOB、父母の会、ふるさと会などが校歌や応援歌などで応援を送っており、その仲間の列に自然に入っている自分の姿があります。

野球のスコア.jpg

 高校野球は日本の夏の一大行事で、メディアで毎日話題になることから、ふるさと意識を高揚させるスポーツではないかと思います。鹿児島市内には市町村のふるさと会や各高校の同窓会がありますが、甲子園出場校が決まると関西地域のふるさと会が大阪で激励会を開いてくれます。

 なぜそれほどまでにふるさと意識が高揚するのでしょうか。美しい自然に囲まれた環境や幼い頃から無心に遊んだ仲間が多い地域で育つと、人は郷愁が強くなるのではないでしょうか。特に伝統的祭りや、地域の運動会、文化祭、食育祭り等大人も子供も一緒になって、地域の活動に参加していたことも影響しています。そのような経験を持つ人々は母校の試合があると、ふるさとの仲間や田舎の近況を尋ねて、暑い中球場に足を運びます。

ひまわり.jpg

   小生は何回となく、甲子園出場校の添乗で甲子園に行きました。かつては夜行バスや臨時列車が多くありましたが、最近では排出ガス規制などで環境基準をクリアーしたバスしか球場周辺への乗り入れができないため、利用交通機関も多様になっています。

 甲子園球場は選手にとって憧れの場所で、独特の雰囲気があり、試合では多くのドラマが生まれます。また、将来プロ野球で活躍しそうな選手がいるチームとの対戦は、興味がそそります。勝ったチームの応援席にいると、甲子園球場に流れる校歌に涙するOBやふるさと会の方々が多く感動を覚えます。校歌は、自分のふるさとを自覚させるものです。

校舎.jpg

 やはり、ふるさとは心のよりどころであり、元気をかきたてる場所です。特に伝統ある学校が初出場となると、同窓会が資金集めに奔走し、選手の出場を支えています。出場にあたっての経費は、初戦は全校応援の学校が多く交通費、統一ガウン、帽子、メガホン、旗等数千万円かかるといわれます。地域、卒業生の支援は、ありがたいものです。

 甲子園出場は、地域に多くのメリットをもたらします。生徒募集に苦労していた学校が翌年から志願者が増え、勝ち進むと学校名も浸透し、観光ルート上にある学校は地域の名所として紹介されることもあります。

 昭和41年初出場で初優勝した「三池工業高校」は、炭鉱の街として知られた大牟田市にありますが、当時は労働争議の最中でしたが、沈滞していた街をよみがえらせ、ひときわ歓喜に包まれました。

 今年の選抜大会に出場した志布志市の「尚志館高校」は、大隅半島から初めての快挙であり、しかも地元の生徒だけのチームとして話題となりました。志布志市は今スポーツ合宿に力を入れており、全国にPR効果をもたらしました。

入道雲.jpg

 高校野球のすばらしいところは、生徒たちが一球一球に真剣であり、全力疾走でベンチへ戻るなど、教育的にも教えられることが多くあります。試合後は勝敗にかかわらず、応援席に向かって一列に並んで、一礼をする姿にはさわやかな印象を感じます。

 今年の鹿児島大会は激戦が予想されています。どこの学校が優勝するか楽しみですが、甲子園出場校には県民として大きな声援を送りたいと思います。 鹿児島に深紅の大優勝旗が凱旋することを夢見ているひとりです。選手諸君にとって青春の一ページを飾るすばらしい試合を期待します。

「六月灯」を日本の祭りに~郷愁の思いがつのる伝統行事に触れる機会を~

2013年7月1日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 通勤の途中に見かける団地の庭先に植えられた朝顔が、一雨ごとに上に伸びていく姿が見え、花が咲くのも間近であることを感じます。七月に入り八坂神社を皮切りに県内各地の神社、お寺では「六月灯」が始まります。

照国神社六月灯(縦).jpg

 「六月灯」の始まりは、江戸時代2代藩主島津光久候が上山寺新照院の観音堂を造り仏像を安置した折、供養のために旧暦6月18日に沿道に灯籠を掲げ、道の明かりにしたのが始まりといわれ、鹿児島の夏の風物詩となっています。

 子供の頃浴衣姿に着替えて、金魚すくいや、かき氷、風船、綿飴、アニメの仮面等夜店が並ぶ参道を親に連れられて、そろぞ歩きした思い出があるのではないでしょうか。六月灯が始まると梅雨明けが間近となり、夏休みへ思いをはせる時期でもあります。

 ふるさとを離れた人々にとって「六月灯」は、郷愁を感じさせる場所であり、また子どものころを懐かしむ時間でもあります。今年も多くの場所で「ふるさとのかおり」を求めて出かける人が多いのではないでしょうか。


        ふるさとの 訛りなつかし 停車場の
                  人ごみの中に そを聴きにゆく
                                ~石川啄木~

         はなび花火 そこに光を 見る人と
                   闇を見る人いて 並びおり
                                 ~俵 万智~

 鹿児島市の照国神社の六月灯は、7月15日、16日の2日間にわたって開催され、境内には大小1000個あまりの燈篭が献燈され、沿道にはたくさんの夜店が並び、毎年多くの市民で賑わいます。その数は2日間で10万人を超え、県下最大の「六月灯」となっています。

六月燈の三姉妹パンフレット.jpg

 ところで今年の5月に鹿児島でオールロケを敢行した「六月燈の三姉妹」がクランクアップしました。11月から鹿児島では先行ロードショーが行われます。

 大型ショッピングセンターの進出により客足が減少し、経営に苦しんでいる家族経営の菓子屋の再建物語です。複雑な家庭環境をかかえながら、一つの目標に向かって、夏祭り六月燈の夜にそれぞれが必至に起死回生の大作戦に出るが、その結末は・・・


 今、人口減少やモータリゼーションの発達、大型店の郊外進出、インターネットの普及等で消費構造の急激な変化がおこり、かつて賑わっていた商店街は苦戦を強いられています。 日本各地で同じような現象が起きていますが、映画は「六月灯」という地域に残る伝統的祭りを通して、家族の再結集を図り、お互いの信頼関係を取り戻す心温まる協奏曲です。

 主演は鹿児島出身の西田聖志郎が、他に、市毛良枝、吹石一恵、吉田羊、徳永えり、井上順等が出演します。市内の神社が舞台となり、地元の多くの人がエキストラとして映画づくりに参加しまし た。公開が楽しみな映画です。

六月灯3.jpg

 ところで鹿児島の「六月灯」は県外の方には意外と認知度が低いと感じます。京都の「祇園祭」、博多の「祇園山笠」、熊本県の「山鹿灯籠まつり」等に比べてもメディアに登場することもなく、地域の祭りに終わっている気がします。

 一か月以上にわたって県下全域で行われている祭りは、全国にはなく大変貴重な祭りです。旅行パンフレットでの紹介や宿泊施設、飲食店、運輸機関等では期日ごとの開催場所を記載したパンフレットの設置や、「県人会」を通して知らせることが、誘客につながるのではないでしょうか。

 特に7月は鹿児島県への観光客が減少する時期であり、鹿児島らしさを感じる「六月灯」をもっと活かして宿泊客を増やす努力が必要です。

子ども(火の島祭り).jpg

 鹿児島には「六月灯」以外にも様々な夏祭りがありますが、長年人々の生活や風習に育まれ、四季の風情を感じさせる地域ならではの伝統行事となっています。 特に夏休み期間の祭りは、都会に出た人々の帰省の時期と相まって、懐かしい人との再会など感慨深いものがあります。

 人口減少が進む中地域の守り神の象徴である神社・寺院に集まり、年一回の祭りを集落の人総出で準備しているのがこの頃の祭りの姿ではないでしょうか。地域に残る先祖崇拝、神々への感謝の心は根強いものがあります。伝統的祭りを引き継いでいくことで、ふるさと意識が目覚め、魅力ある地域として生き残っていけるのではないでしょうか。

六月灯2.jpg

 しかし最近の祭りは、厳粛な行事というよりも華やかさも組み込まれた祭りに変化しており、屋台(縁日広場)、特設舞台での歌謡ショーや、アニメのヒーローを中心としたキャラクターショーなども行われています。そのことは子どもの参加が増え賑わいの演出に繫がっているのかもしれません。

 今年の夏は、近くの六月灯に家族で出かけ、「ふるさとのかおり」を味わいましょう。そして秋に公開される「六月燈の三姉妹」のPRに努力したいものです。
  参考:「六月燈の三姉妹」のパンフレット

環霧島周遊観光列車の運行に向けて

平成24年2月13日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

霧島は日本で最初に国立公園に指定された地域で、毎年国内外から多くの観光客が訪れていますが、新燃岳の動きが気になる状況が続いています。

霧島連山-2.jpg

「霧島山」をふるさとの山と捉える自治体が、それぞれの行政区域を越えて連携し、環境、観光、防災及び教育等に関わる様々な施策・事業について、お互いに知恵を出し合い、協同することにより、地域活性化を図ることを目的に環霧島会議が組織されています。

参加しているのは宮崎県側が、都城市、小林市、えびの市、高原町、鹿児島県側は、霧島市、曽於市、湧水町の5市2町で、人口は合わせて426,536人です。霧島山系は、豊富な水資源、温泉等を生み出し、また、沿線の肥沃な田畑では四季折々の農作物が収穫され、地域住民は恩恵にあずかっています。

一方、昨年1月の新燃岳噴火では、高原町、都城市方面に大量の火山灰が降り、大きな被害をもたらしたのも事実です。観光面では、霧島温泉地区で6月から宿泊客が前年を上回るなど回復基調にありますが、霧島山周辺地域全体としては観光客が減少しています。

この度、九州新幹線の全線開業効果を生かす新たな取組として、日豊本線、吉都線、肥薩線を結ぶ周遊観光列車の実現を目指して、モニター列車が運行されました。 沿線には34の駅がありますが、ほとんど無人駅となっています。かつて沿線の駅は、街の中心であり多くの地域住民が利用していましたが、若者の都会へ流失、高速道路の開通等で過疎化に拍車がかかり、今では駅舎だけが昔の面影を留めており駅の活用策が求められています。 

環霧島1.jpg

今回の行程は、隼人駅発着で、霧島神宮、都城、小林、えびの、吉松、栗野、嘉例川の各駅を廻る4時間33分の列車の旅で、途中4つの駅では、地元の人たちによるお茶や手作りの菓子等の提供、地元女性グループの踊りや幼稚園児の小旗を振っての出迎え等温かいおもてなしに触れ感激しました。

車内では、5市2町の担当者が沿線の案内や観光の見所を説明し、周遊列車にかける思いを感じました。
私もオブザーバーとして参加しましたので、今後の課題について整理したいと思います。

今回の列車は、日頃通勤・通学に利用するディーゼル列車での運行でした。日豊本線は電化されていますが、吉都線と肥薩線は電化されていないため、鹿児島本線に運行していた電車「つばめ号」や日豊本線のかつての「きりしま号」は運行できません。

はやとの風.jpg


今後もディーゼル車での運行になりますが、将来的には、「はやとの風」や「いぶすきのたまて箱」タイプの観光列車の運行が不可欠です。観光の主役は女性であり、トイレの清潔さや車内の雰囲気作りは特に大切と感じます。

また、車内で歓談しながら弁当を食べるなど、非日常の時を過ごさせるための演出が求められており、車内でのエンターテイメントの充実も必要になります。

今回は4時間33分の乗車時間ですが、観光列車としては長いと時間と思います。「いぶすきのたまて箱」が52分、「はやとの風」が、1時間43分です。
外国人にはローカル列車は人気がありますが、1時間30分程度の時間が適当かと思います。各自治体を周遊する関係で長い時間になりますが、観光列車運行の際は、停車駅や出発時刻等の検討が必要と考えています。

発着駅については隼人駅でしたが、新幹線の利用客を取り込む必要があり、乗車率を高める意味でも鹿児島中央駅の発着が望ましいと思います。
「いぶすきのたまて箱」の利用率が高いのは、新幹線との乗り継ぎが便利なためであり、多くの乗降客のある鹿児島中央駅はPR効果も大きいと判断しています。特に乗り継ぎ割引や時間短縮効果が発揮されます。

環霧島3.jpg

また、沿線の自治体に経済的効果をもたらすことが一番重要なことです。下車したくなる地域になるには、温泉やオンリーワンの観光素材、食のPR、祭りやイベントの事前告知などが欠かせません。1回乗車した観光客がリピーターとなり次は宿泊してもらう取組が必要です。

列車の利用率を高めるためには一般の観光客だけでなく、地域団体のイベント貸切列車として、教育旅行の学習の機会に利用することも考えられます。
環霧島会議では、「霧島ジオパーク」を「世界ジオパーク」としての認定を目指しています。沿線住民が霧島山の重要性を認識する取組も必要であり、この列車に乗車してそれを体感することをお勧めしたい。
沿線には日本の原風景がいたるところに残り、四季折々の景観は車内でしか見ることができません。

ところで新燃岳が噴火して1年以上が経過し、その後の山の状況に関心が集まっています。再噴火した場合は、環霧島地域が一番の影響を受ける地域であり、連携して迅速で正確な情報を発信することが求められます。
昨年の噴火では霧島温泉地域は、風評被害で5月までかなりの痛手を受けました。もし同様な噴火が起きた場合は、早急に温泉地、施設の正確な情報を的確に伝え風評被害を防止しなければなりません。

現在の「霧島屋久国立公園」は、3月16日に「霧島錦江湾国立公園」と「屋久島国立公園」に分かれます。この機会に霧島山の魅力を再度発信して多くの観光客に来ていただく努力も必要です。

環霧島2.jpg

2012年度に4回の貸切臨時列車の運行が計画されていますが、将来的には観光列車で巡る旅を、環霧島会議自治体の売りにしていきたいものです。

転勤者に送る ―鹿児島の観光PRを―

2009年3月9日

  2009030910390323418.jpg  サラリーマンにとって最大の関心ごとである転勤の時期がやってきました。県外に行く人、来る人、離島に行く人、離島から出る人それぞれさまざまです。
中国の唐の時代の詩人である王維が、友人を送る心情を書いた詩を紹介します。シルクロードを旅した方は、現地のガイドさんがこの詩を紹介することがあり、ご存知の方が多いと思います。

       元二の安西に使するを送る  王維 作

     渭城朝雨潤軽塵    渭城の朝雨軽塵をうるおす
     客舎青青柳色新    客舎青青柳色新たなり
     勧君更盡一杯酒    君に勧む更に盡くせ一杯の酒を
     西出陽関無故人    西のかた陽関を出ずれば故人無からん

[語訳]
*元二・・元は姓 二は次男
*安西・・安西都護府
*渭城・・長安の渭水をはさんだ対岸の町
*客舎・・宿泊施設
*青青・・柳の葉の青さ
*陽関・・南の関所
*故人・・友人

[文訳]
渭城の町は昨夜来の雨で、軽い砂ぼこりがしっとりと濡れている。
宿舎の周りの柳の葉が、雨に洗われ一段と青くあざやかに見える。
昨夜は楽しく、酒を飲んだがもう一杯飲みたまえ。
西の方にある陽関を過ぎると、もう共に酒を飲み交わす友人はいないよ。

 とても情感がこもった友人への、惜別と激励の詩です。中国では別れに際して、柳の枝を手折って、はなむけにする習わしがあります。日本では送別会を開き、花束を渡し励ましにすることが日常行われています。
 転勤は住居と仕事内容など環境が変わり、人にとっては自分を変える大きな転機となると思います。小生も福岡、北九州、東京、福岡など7回の転勤を重ねましたが、それぞれの土地での出会いが、自分にとっていい経験になりました。また、古里である鹿児島のすばらしさを、他の県に住んではじめて知る機会になったと感じています。

 鹿児島県は南北600キロにおよび、その距離は大阪までの長さになります。官公庁や企業においては、本土と離島との転勤が多くあり、年中行事となっています。
2009030910391923441.jpg
 離島の生活を経験した人は、ぜひ島の魅力をPRし観光客誘致に一役かってほしいと思います。また、鹿児島を離れて他の県に行く人は、鹿児島の温泉、食、祭り、おもてなしなどの魅力を、任地で是非多くの人に伝えてほしいものです。インターネットが普及し、情報の入手は簡単になりましたが、口コミの力には説得力があります。鹿児島は昨年「篤姫」の放映効果で、全国的に注目をあびました。鹿児島の生きた情報が全国に発信されることで、観光客増加に繋がることを期待します。

プロフィール

奈良迫プロデューサー
鹿児島県
観光プロデューサー
奈良迫 英光
詳しいプロフィールはこちら