2011年12月26日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光
今年も残り1週間となりました。話題の多かった2011年を振り返ってみたいと思います。
今年鹿児島の最大の話題は、九州新幹線の全線開業でした。
九州新幹線の整備計画決定から38年、3月12日6時58分、N700系の新型車両「みずほ600号」は、満員の乗客を乗せ、新大阪に向けて出発しました。
鹿児島県は九州の最南端に位置し何かにつけて不利性をかこっていましたが、「鹿児島中央駅」が新幹線最南の終着駅になることから、開業前から大きな話題となっていました。
しかし、開業日前日に東日本大震災が発生し、スタートは厳しい状況でしたが、県内の観光地では4月の後半から動きが活発となり、11月まで前年を大きく上回る観光客が訪れています。 関西や中国地域からの伸びが顕著であり、鹿児島が初めての方が多いのではないかと思います。
地区別では、離島や大隅地域は十分ではありませんが、特に指宿地域は、「指宿のたまて箱」効果もあり、大河ドラマ「篤姫」が放映された平成20年を超える数字となっています。 新燃岳噴火や東日本大震災の影響から完全に回復基調にあると言えます。今後も誘客のため官民一体となった取組が求められます。
1月に新燃岳が噴火し、霧島温泉地区は、夏頃まで大きな影響が残りました。メディアがトップニュースで連日放映し、風評被害を打ち消すため、県や観光連盟では大都市圏のエージェントや、福岡、鹿児島のメディア等を訪問し、霧島温泉地域の正常な姿も報道していただくよう要請を行いました。
今後の噴火に備えて、県、関係自治体、連盟等連携を密にし、迅速な報道等への対応が必要と感じています。
九州新幹線全線開業の最大のイベントである第28回全国都市緑化かごしまフェア「花かごしま2011」は、66日間の会期中に、目標の80万人を上回る約96万人が訪れました。
今回の「花かごしま2011」では、多くの県民がこのイベントに参画し、特に各エリアの会場や街角にさまざまな花壇が設置され、観光客だけでなく地域住民も花に対する興味をいっそう抱いたと思います。今後花作りに興味を持つ人が増え、花壇や垣根に花が咲き誇る場所が増えることが期待されており、そのことで地域は魅力が確実にアップします。
学生を中心とした農家民泊も順調に伸びています。民泊は、2004年が360名でしたが、今年は約10,000人の受入となり、修学旅行の仕向地として鹿児島の人気が高まっています。県内では受入可能な家庭は、現在2町12市におよび、782家庭にもなっており、県全体に広がっていることがあげられます。
ところで、民泊について提起されているのがコンプライアンスです。現在の受入家庭のほとんどが、旅館業法で定められた「簡易宿泊所営業の許可」を取っていないということです。一旦問題が起こると厳しい対応が求められます。法的な対応を着実に進めていくことがこれから一番重要な事です。
教育旅行の誘致にとって、鹿児島には大きな朗報がありました。JR西日本とJR九州による修学旅行専用列車の設定がなされることとなり、25年度関西地域から25校5,200名の新たな需要開拓ができました。これからも学校のニーズに応えるべく体験メニューづくりが欠かせません。
修学旅行は、行先を決定すると数年続くのが普通であり、地域全体の学校が同調することもあり、安定的顧客にもなります。修学旅行は、一度に多くの生徒が動き、不況時でも実施され、取消しがなく、受入機関にとっては経営の見通しが立てられるなど安定した顧客といえます。これからも誘致に力を注ぎたいと思います。
毎年着実に伸びているスポーツキャンプ・合宿を誘致すべく、10月には大阪、京都で誘致のためのセミナーを開催しました。県内の14の自治体が参加し、2日間で関西地区の20大学から52団体119名の参加がありました。
学生のスポーツ合宿は、プロに比べて宿泊施設や運動施設の条件が厳しくなく、十分に運動ができる環境が整っていることが大切であり、大隅地域などはもっと伸ばせる条件がそろっていると思います。
熊本・宮崎・鹿児島の3県とJRグループ6社では10月1日から12月末まで、デスティネーションキャンペーン(DC)を展開しています。3県が誇る「温泉」、「自然」、「観光列車」、「伝統」、「美味」等の観光素材が前面に出て、PR効果も高まり、新幹線を利用して全国から多くの観光客が訪れています。
また、JR九州は来年3月末日まで、DCと連動して「列車でめぐる極情の旅 南九州キャンペーン」も展開しており、温かい南九州に途切れることなく多くの観光客が訪れるものと思われます。
新幹線の開業に合わせて、各自治体がバスを走らせるなど2次交通の整備が進み、開業効果を広げる取組が進んでいます。「あいらびゅー号」、「新幹線リレーバス」、「ちらんシャトルライナー」、「鹿児島市内まち巡りバス」、「ディスカバリーIBUSUKI号」、「霧島連山周遊バス」等です。
桜島にも新しいバス路線が誕生しました。「サクラジマ アイランドビュー」です。桜島に渡ってからの2次交通が課題となっていただけに、観光客にとっては、「よりみちクルーズ」を組み合わせることで、海からと陸上から見る桜島の景観が違った印象として残ると思います。
また、2010年3月から休止していた山川~根占航路が1年5か月ぶりに再開しました。大隅半島への観光が便利となりました。誘客対策として、大隅地域レンタカー無料プランの事業もスタートしました。
アクセスに恵まれない大隅半島にとってもっとPRして、地域の活性化に繋げて欲しいと思います。
ところで、今年一番苦戦したのが外国人の誘客です。年初は順調に伸びていましたが、東日本大震災と原発事故で状況は一変し、日本全体としてインバウンドの回復は見られません。
10月に、香港、広州、深セン地域でエージェントへの営業活動を展開しましたが、各社は、円高で日本のランドフィーが上がっており、九州新幹線のインバウンド料金の適用拡大や、「かごしま水族館」など中国人が関心の高い入場施設料金を特別に割り引いて欲しいという要望がありました。また、ショッピングができる場所の紹介や案内業務の充実も挙げていました。
ほとんどの旅行商品の1日当たりの滞在費は、かなり厳しい条件が課せられており、現状の旅行商品は、安値志向がかなり強いのが事実です。
魅力ある鹿児島の観光への期待は高く、中国の富裕層をはじめとして東名阪などゴールデンルートに向かっている人たちを誘客するためには、各旅行社との信頼関係づくりがまず重要だと感じています。今後国内旅行の伸びが期待できない中で、外国人特にアジアからの誘客は重要になってきます。
JNTOの調査によると、外国人観光客の訪日動機は、自然景観、ショッピング、温泉となっており、鹿児島はそれに十分対応できます。
3月25日から中華航空が、週3便就航することになりました。ソウル、上海、台北と定期便が3路線となり、東アジアに向けた新たな展開が可能となりました。鹿児島は、南に開かれた国際空港として、福岡空港や九州新幹線と結び大きな飛躍が期待されます。県民も大いに利用し、物流の促進も図られるものと思います。
ところで、宿泊施設、運輸機関、入場施設、お土産品店、飲食店は、新幹線の開業特需で潤っていますが、観光客からは多くのクレームが寄せられているのも事実です。
「接遇が事務的で笑顔がない」、「電話で問い合わせたが冷たく断られた」、「質問しても答えがない」、「近くまで乗ろうとしたら断られた」、「中央駅西口の混雑がひどい」等です。
これではリピーターになるどころか、鹿児島の悪評が口コミで広がっていきます。各企業のトップの方々も、自らのこととして改善して欲しいものです。
「おもてなしセミナー」を県内各地で開催していますが、研修に参加するだけに終わらせるのではなく、現場で「おもてなしの心」を定着させなければ意味がありません。観光施設の評価は、最終的には人(従業員)の評価だと思います。
新幹線の開業効果は、来年のGW頃までは続くものと想定しており、その後が正念場です。離島や北薩、南薩、大隅地域への新たな商品企画と首都圏や瀬戸内海沿線での販売促進が重要であり、「篤姫」放映後の二の舞にならないよう努力したいものです。
県民の方々が、霧島、鹿児島市、指宿、屋久島等のメインな観光地だけでなく、それぞれの地域の魅力を語ることで開業効果を広め、持続的に観光客が訪れる「観光立県鹿児島」になるものと思います。地域を想う人をいかに増やすかが大切です。
最後に今年も毎週コラムを配信できました。ありがとうございました。
来年は1月4日からスタートします。良いお年をお迎えください。
農家民泊の受入をコーディネートしている「エコリンク」代表の下津公一郎氏の調査によると、21年度で南さつま地域には、5000人を超える民泊の予約が入っています。

ここ数年鹿児島でもグリーンツーリズムの受入の機運が高まってきました。現在関東、関西地区からの高校生、中学生が主体で、日程は1泊2日の滞在となっています。到着日の午後から農業体験を行い、夕食を全員で作り、翌日は午前中別メニューの農業体験を行い、昼食後農家に別れを告げて近隣の観光地に移動します。
受入家庭は初対面時には、大人顔負けのお化粧や学生に似つかわぬ髪の色や髪型に驚きを隠せないそうです。不安がよぎる中で受け入れますが、芋ほりや野菜の収穫作業などを体験するうちに、生徒たちは打ち解け、土の中から掘り起こす農産物の自然の姿に感動し、時間を忘れて農家の方と一緒に過ごします。 生まれて初めて畑の土に触れたり、落花生が木になっていると思っていた子もいたり、驚きの連続だそうです。夜の食事時間になると、自分たちが収穫した農産物を共同で料理し、食卓を囲みながら農家の皆さんと団欒し、時間が立つのも忘れて語り明かすことも多いとのことです。
都会の生徒にとって農家での生活は生まれて初めての体験でもあり、自然の恵みの偉大さに触れる機会となります。また農家の人々との語らいに親近感を覚え、都会の生活では味わえない温かい人の心と人間性に触れることで、子供がもつ本来の純朴さが表に出てきます。
わずか1泊2日の体験ですが、別れる時生徒たちは涙を流し抱き合って別れを惜しむと言います。24時間の農家での滞在がこれほどまでに生徒の心を動かすことに、受入農家の方々も共感を覚え最初の心配事を忘れて、また次の生徒たちを受け入れようという気持ちが高ぶってくると言っておられるそうです。生徒たちが農業に関心を持つ機会になるだけでなく、農家の人にとっても励みになります。グリーンツーリズムの体験は比較的農家の閑散期に実施されており、しかも経済的効果もあり、農業の置かれている状況を考えると、地域活性化の一つになると思います。
今農村は、後継者不足と高齢化が進み農業を断念する家が増加しています。限界集落が増え空き家が目立ち、田畑の荒廃も進んでいます。しかしここにきて農業の見直しの機運が高まってきました。外国産の食糧への農薬の混入、食の偽装など食への安全・安心が問われています。
また、世界的に食料危機が叫ばれる中で、日本の食糧の自給率は40%を割り込んでおり、食糧確保の議論も高まってきました。農業を続けていくためには、農家の安定的な食糧の供給と収入確保が無ければなりません。しかし生産農家は高齢化しており、若者が農業に従事するためには、魅力ある農業にしていかねばなりません。