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2008年11月25日
「南さつま海道八景」は、南さつま市内国道226号沿線から眺望できる雄大な自然景観や文化遺産など、南さつま市の代表的な八つの景観です。この海道は、県内で残された数少ない未開拓の観光ルートと捉えています。この度福岡市内の旅行エージェントの皆様とこの海道を見学・体験する機会がありました。2回にわたって海道の魅力と課題について報告いたします。
はじめに「石垣の里 大当(うとと読む)」です。海から急速に上昇している丘陵地の南東下りの斜面に、強い北西の風を避けて石垣が形成されております。総延長千二百五十メートルに及ぶ石垣路は、地山に多く含まれる転石を集め無造作に積み上げられています。集落を取り囲むように通された道路の最高部からは、リアス式海岸の神之島、立羽島が見渡せ、まさに絶景のポイントとなっています。沿道を歩くと、庭先の柿の木が赤い実をたわ
わに実らせ、海の青さに映えて秋の風情を感じさせます。案内のガイドさんによると、お年寄りが多く、空き家も目立つようになり、また地域の小中学生が少なくなり将来が不安だと語られていました。地域に住むお年寄りの知恵をいかし、手作りの工芸品や伝統食を観光客に提供するなど、交流を主体とした地域づくりが必要と感じました。
また、大当地区だけでなく黒瀬集落、高崎山集落、谷山集落などにも段々畑の景観を見ることができ、先人が築いた「石」文化のすばらしさをぜひ後世に残していきたいものです。
次に「杜氏の里笠沙」を紹介します。風光明媚な笠沙の地に伝えられた焼酎作りの技術は、黒瀬の集落にまたたく間に広まり、ここで学んだ男たちは季節になると九州一円の酒造場に出稼ぎにおもむき、杜氏、蔵子として腕を振るったといわれています。彼らは「黒瀬杜氏」と呼ばれ焼酎醸造の一切をまかされました。機械化が進む中で、ここでは手作りの焼酎にこだわり、笠沙に息づく黒瀬杜氏の技を垣間見ることができます。ここで7時間に及ぶ焼酎作りを体験することができました。洗浄されたサツマイモの切り落とし、製麹、一次仕込み、一次モロミの管理、イモの仕込み、二次仕込み、貯蔵、ビン洗浄、紐の結びと重労働の工程は続きます。決められた蒸し時間、モロミをゆっくりかき混ぜ均等に変化させながら炭酸ガスを抜く作業と、タイミングや温度の加減など重要な工程がきちんと管理されており、焼酎ができるまでの苦労を理解することができました。
杜氏の里では、4人の職員が2人交代で寝泊りし、8月から12月まで24時間勤務で、焼酎の管理にあたっているとのことです。一本の焼酎ができるまでの時間と重労働を考えると、焼酎の価格は安すぎると思う次第です。現在ここで作られた焼酎は、現地だけでの販売となっており、人気の「一どん」は抽選のみとなっています。抽選は月1回のみで約20倍の倍率とのことです。当選者は
宅配便を受け付けていますが、現地購入を義務付けることも観光振興につながると思います。
「杜氏の里笠沙」には資料館も併設され、焼酎に関する興味深い展示品がところ狭しと並べられています。また、向かいにある「笠沙美術館」は風光明媚な場所にあり、東シナ海が望め、ゆっくりと美術を鑑賞するには最適な環境です。
地域に根付いた杜氏の文化が、これからも受け継がれていくことを心から期待し、心地よい疲れを感じながら現地を後にしました。
参考資料「南さつま海道八景」パンフレット
2008年11月17日
これからの温泉地の活性化について、「わざわざ泊まりに行く温
泉地の魅力とは」何なのか、社会的な存在意義を含めて問い直してみたいと思います。
1つには地域の素材を点検し、地域内にあるものを観光に活かすことが大切と思います。地域に残る伝統的踊り、太鼓、祭り、などを観光客に提供する仕組みづくりや、美しい小川、渓谷、田畑、など自然が残る地域を案内し、なつかしい日本のふるさとを体感させることが必要です。いま物より「癒しや心の豊かさ」を求める層が増えています。
2つ目には温泉地全体での地産地消への取り組み強化です。いま日本では食の偽装が厳しく問われています。地元の食材を使ったメニューを提供し、安全・安心を追及している温泉地としての評価を高めることが、誘客に繋がります。また、地元の農協や農家などとタイアップし安定的に供給できるシステムをつくり、観光客に提供できれば農家にとって生産意欲が高まり、就農人口が増えて農村振興にも役立つと考えます。
3つ目は地域全体に経済的効果をもたらすことが大切です。施設での囲い込みをやめて、積極的に観光客が外に出ることを可能にしなければなりません。地域の名産店を紹介したり、グリーンツーリズムが体験できる施設への送迎、文化施設への誘導など地域全体へ波及させ、滞在効果を高めなければなりません。また、連泊を可能にするには、2泊目は夕食をフリーにするなど他の飲食店での利用を促進することが大切です。
4つ目は従来型のエージェント依存体質から脱却し、自ら情報発信し誘客に努める必要があります。まち歩き、トレッキング、産業観光、エコツーリズムと旅行の形態も変化しています。地域の旬の情報を必要としている層に、タイムリーに伝達していくことが求められています。そのために施設の従業員が自らの地域を知ることが大事であり、定期的に地域独自で社員研修を実施して、自らのまちに誇りを持つことが大切です。
最後に温泉地活性化のためには、おもてなしの心を地域全体でいかに醸成させるかです。
観光客の旅の一番の思い出は、旅先で受けたおもてなしの心だと思います。それぞれの職場の長が自ら率先してこそ効果があがり、地域全体の評価を高くすることになります。そのことがリピート客に繋がります。サービスとは感動とロマンの提供と考えます。
いま温泉を活用したまちづくりを標榜する自治体が増加しています。温泉地が昔の賑わいを取り戻すためには、不振の要因を外に求めるのではなく、課題はむしろ自らの地域にあることを認識し、解決していかなければ再生は難しいと思います。日本のすばらしい温泉文化を復活させたいものです。
2008年11月10日
温泉所在地自治体の首長が集結して、温泉を核としたまちづくりを考える「温泉フォーラムin霧島」が10月30日から2日間霧島市で開催されました。全国から市長(代理含)14名と関係者を含めて150名が参加し、活発な意見が出されました。各都市の実践事例が報告され、活性化に向けての課題も浮き彫りにされたのではないかと思います。
鹿児島大学生涯学習教育研究センター長の原口泉氏からは、今話題の大河ドラマ「篤姫」を題材にして、小松帯刀や坂本龍馬、西郷隆盛らが温泉を舞台にいかに政治的交渉を重ねたかの興味深い楽しい話が披露されました。
また谷崎潤一郎、志賀直哉、川端康成など文人、墨客が滞在して小説を書く場所として温泉地をなぜ選んだのか、その魅力を確認すべきとの指摘がありました。温泉地の本来あるべき姿は何なのか、地域素材の点検と検証が必要と感じました。
商業ジャーナリストの桑原聡子氏からは、繁盛している商業施設のサービス、それをつくりあげる協働作業についての成功事例の話があり、顧客の熱い支持を得るためには、価値ある情報をいかに消費者に伝えるかが鍵であるとの指摘がありました。温泉地の旬の情報を、タイムリーにPRすることで誘客する必要性を痛感しました。
伊東市の佃市長からは、「健康保養地づくり」の1つとして、大学と連携し温泉とジムを組み合わせた健康づくり「健脳健身教室」の成功事例の発表がありました。また、まちの魅力を市民に知ってもらうため1月10日を「市民感謝の日」と定め、入館料を110円とか、宿泊施設を二人で1泊2食付1万1千円とか、イトー(1・10)になぞらえて利用しやすい価格で提供して多くの市民が親しんで利用し、まちの活性化に役立っている事例も報告されました。市民が自分のまちを誇りに思うことが「住んでよし、訪れてよし」の第一歩になると思います。
地元霧島市の前田市長からは、大河ドラマ「篤姫」で紹
介された坂本龍馬、おりょうさん夫婦の新婚旅行が日本で最初のものであり、しかもその地が霧島の塩浸温泉であることのPRがありました。また、温泉と森林セラピー、ホースセラピー、タラソセラピー、来年30周年を迎える「霧島国際音楽祭」など多彩な観光素材を組み合わせて、「良い癒しの時間を提供する霧島」の魅力を熱く語られました。「日本の原点・霧島市を、日本一のふるさとに。」を合言葉に日頃から霧島市のPR本部長として全国を飛び回ってらっしゃいます。
霧島市は、国際空港があり、高速道路のインター、JRなどが交差し交通の要衝です。1市6町が合併した霧島市は、観光を切り口に地域の融和を図ることが適切と考えます。ところころで日本の温泉地は、バブル崩壊時までは隆盛を極めていましたが、その後低迷し再生できない大型温泉地が多くあります。
熱海市長は、低迷の要因を宴会と飲食、花火大会に頼り過ぎ、宿泊客が全盛期の半分に落ち込み、今街づくりに苦労しているとの報告がありました。宿泊者が伸びない要因は、温泉地の魅力喪失と旅行者サイドの志向の変化があげられます。観光形態の多様化、特に団体旅行から個人旅行への趣向が強まり従来の宴会型宿泊が減少し、個人旅行に対応できない大型旅館を中心に苦戦をしいられています。
また施設の中に、カラオケルームや飲食店など街の機能まで取り込んだため宿泊客が外に出ず、まち自体の活力がなくなり結果として温泉地が寂れることになりました。
2007年と98年を比較すると、旅館の数で1万3千軒減少している現実があります。温泉地の活性化には、そこの温泉地だけでなく周辺部の観光素材の掘り起こしと、現在観光客が求めている体験観光のメニューづくりが必要になっています。宿泊者が、翌日滞在しても飽きない魅力ある地域になることが重要と考えます。昔の栄光を捨て新しい取り組みが今求められています。
次回は温泉地の再生について述べます。
2008年11月4日
指宿で開催された「観光カリスマ塾」に参加しました。「観光カリスマ」は、次のような経緯で誕生しました。平成14年6月の閣議決定を受けた経済財政諮問会議の下、生活産業創出研究会(座長:島田春雄内閣府特命顧問)が発足し、「観光産業の活性化」および「健康の産業化」等について、今後取り組むべき生活課題についての検討がなされ、その報告書を受けて観光カリスマが提案されました。カリスマ選考委員会は、内閣府、国土交通省、農林水産省の三府省により組織・運営され、平成17年に100人の観光カリスマが認定されるに至りました。
観光カリスマ選定の趣旨は、次のとおりになっています。(国土交通省のホームページより)
「従来型の個性のない観光地が低迷する中、各観光地の魅力を高めるためには、観光振興を成功に導いた人々のたぐいまれな努力に学ぶことが極めて効果が高い。各地で観光振興に頑張る人を育てていくため『観光カリスマ百選』選定委員会を設立し、その先達となる人々を『観光カリスマ百選』として選定する。」とあります。観光振興にいかに人の存在が大事であるかが解ります。
今回、塾長を努められた観光カリスマの「有村佳子氏」は、現在指宿ロイヤルホテルの会長の要職にあります。九州管内では10人の観光カリスマが認定されていますが、ただ一人の女性です。
今回のテーマは「鹿児島オンリーワンの観光」と題して、1つは「温泉」と「食」、「運動」を活用し、新たな産業の創造を目的とした実証実験の事例発表がありました。2つ目は、内閣府が本年度公募した地方の元気再生事業に応募され、採択された「長寿の国 かごしま発 『平成版 IT湯治』 」の概要の説明がありました。
特に今年採択された事業は、地元の食材を生かした低カロリー食、ウォーキング、砂むし入浴等を組み合わせた滞在プログラムを提供するとともに、身体状況計測機器・ICTを活用して滞在者の健康状態を計測し即時的に食事・運動のアドバイスなどをおこなう「平成版 IT湯治」の商品化を進め、健康保養滞在型の観光地づくりを進めるものです。日常の生活をしながら検証するという画期的な提案であり、採択は当然のことと思います。参加者も関心をもって講話を聴いていました。
最近温泉地の活性化について、長期滞在による健康
増進基地を標榜する地域が多くなりました。しかし、温泉地が長期滞在に耐えうるだけの魅力が無ければ観光客は集まりません。温泉地周辺の生活文化を取り込んだ魅力発信とともに、そこの温泉地が他の温泉地に無いものがあることが、誘客に繋がると考えます。指宿は他の温泉地には無い「砂むし温泉」があります。その砂むし温泉を活用した「平成版 IT湯治」は他の地域にはない事業と思います。すばらしい成果が生まれ、事業として発展することを期待しています。
有村氏は「これからの観光地は競争に勝っていくオンリーワンの要素が必要である。鹿児島は本土最南端に位置し、南北600キロにもわたる海がある。活火山や離島もある。こんな恵まれた土地はどこにもない。観光は人を幸せにする産業であり、人の究極の幸せは健康でいながら年をとること。「スパドゥ(温泉=「する~=do」)」はこうしたニーズに応えることができる。しかも指宿のオンリーワンである砂むしをいかした事業で、指宿まで足を運んでもらわなければ体験できない滞在型のプランである。」と語り、我々が協賛することがらがたくさんあります。
また観光カリスマと呼ばれるためには、たぐいまれな努力が必要と思います。有村氏は、何事においても情熱をもってあたられ、地域に根ざした活動をされ、多様な人材と交流し常に新しい情報をもってらっしゃいます。地元の食材を活用した食のメニューを、観光客に提供する「地産地消」にも積極的に取り組んでいます。今後のますますの活躍を期待するとともに、指宿地区が新たな事業で発展し続けることを祈っています。
参考資料 「観光カリスマ」国土交通省ホームページより