
私たち現代人が温泉を好むように、昔の人々も温泉に親しんできた。その名残りは、地域の神社の記録や記念碑、古文書などに残された記述に求めることができる。それらには、温泉発見の由来や歴史上の有名人が入浴したことなどが記されており、温泉を違う角度からも見ることができる。歴史に触れながら湯を巡るー。そんな楽しみがここではできるかもしれない。


慶応2年(1866年)、坂本竜馬と妻おりょうは、京都寺田屋の難を逃れ、鹿児島に入った。これが日本で最初の新婚旅行と言われている。そのとき竜馬は、手に傷を負っていた。そんな竜馬の傷を癒し、二人の愛を確認させてくれたであろう湯の一つが塩浸温泉。二人が入った浴槽は、施設の脇にひっそりと残っているだけで現在入ることはできないが、同じ泉質の湯には浸かることができる。

「入来文書(いりきもんじょ)」は、鎌倉期から明治初めにかけて現在の入来町一帯の領主だった入來院氏の記録。大正14年(1925年)、米国エール大学 朝河貫一教授によって解読出版され、世界中の日本中世研究者から高い評価を受けた重要史料だ。文書の中には、領地の相続、土地の売買、裁判などが詳細に記されており、入来温泉も「副田温泉」として記述されている。 また、江戸期の「三国名勝図会」には、御前湯、和尚湯、網代(あぜろ)湯などの湯の名称と二人の郷士が管理していたという記録もある。