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No.439 『人間万事塞翁が馬』の精神では危機は乗り越えられない~先を読み的確な対応を~

2016年12月5日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


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 月日は百代の過客にして、
 行かふ年も又旅人也。
 舟の上に生涯をうかべ、
 馬の口とらえて老いをむかふる物は、
 日々旅にして旅をすみかとす。・・・
 草の戸も 住替る代ぞ ひなの家
                             松尾芭蕉 ~奥の細道~


 師走に入り、街も一段とせわしくなりました。商売を生業としている人にとっては、クリスマス、年末商戦と忙しい日々が続きますが、今年の総決戦の覚悟で最後まで努力したいものです。


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 『人間(じんかん)万事塞翁が馬』という故事がありますが、注釈は下記のとおりです。  昔中国の北の方に占い上手な老人が住んでいました。北には胡という民族がすみ、国境には城塞がありました。ある時老人のかっている馬が、胡の国の方に逃げて行ってしまいました。この地域の馬は良い馬が多く、高く売れるので近所の人は気の毒に思って、この老人を慰めに行きました。
 しかし、老人は落ち込んだ様子もなく、「これが福につながらないとも限らないよ」と言いました。
 数か月過ぎたある日、逃げた馬が胡国の名馬をたくさん連れて帰ってきました。近所の人がお祝いにかけつけると、老人は「このことが不幸になることだってある」と首を振って言いました。しばらくすると、案の定、老人の息子が名馬から落ちて足の骨を折るという事故にあいました。
 住民が同情して見舞いに行くと、老人は平然と微笑んで「このことが幸せにならないとはかぎりません」と言い放しました。
 1年が経過した頃胡の国が攻めてきて、城塞近くの若者は兵隊としてすべてかり出され、10人のうち9人までが戦死しましたが、何とか城塞は胡人から守ることができました。息子は足を負傷していたので、戦いに行かずに済み、九死に一生を得ることができました。城塞に住む老人の馬がもたらした運命は、福から禍へ、また禍から福へと人生に変化をもたらしました。人間の一生は予測できないことの例えです。


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 人の一生は多くの場合ピンチとチャンスの連続ですが、どちらかというとチャンスが到来しているときほど、後にピンチに陥りやすいのではないでしょうか。ピンチの時には必死になってそれを乗り越えようと努力しますが、チャンスの時は、安心感が漂い努力を怠りがちでやがてピンチが訪れます。
 天気は雨の日もあれば、晴れの日が続くこともあります。朝の来ない夜はなく、寒い冬の後には、温かい春が訪れます。
 苦労ばかりが続いていると嘆いても成功は訪れません。人生の前半で苦労した人は後半で取り戻す覚悟も必要です。


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 ところで今年の鹿児島の観光は、谷あり山ありの状況ではなかったかと思います。年初 から苦戦が予想されていましたが、4月の熊本地震で大きな影響を受け、特に教育旅行は関西からの修学旅行専用列車が1校を除いてすべて取り消しとなりました。再度鹿児島を旅行先に選んでいただくべく、明治維新150周年や世界遺産の魅力等が教育旅行に最適であることをPRして情報発信を図ることが大切です。NHK大河ドラマ「西郷どん」は、大きな誘因効果をもたらします。


 「九州ふっこう割」が7月から導入され宿泊施設では一息ついているところですが、施策も12月末で終了することから、次の対策を打たねばなりません。
 緊急対策による交付金の活用は大変有効な施策です。しかしカンフル剤として一時的な効果を発揮しますが、これだけに頼っていては施設、地域は持続することはできません。「九州ふっこう割」が導入されている期間に、地域や施設は次の展開につなげる取組を行うことが大切です。

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 ところで、今年の年末年始は日並びが悪く、宿泊施設では満室になる日が限られることから大きな需要は期待できません。年明け後の対策を急ぐことが今求められています。
 予約状況を確認し、地元対策や周年(記念)旅行、同窓会、卒業旅行等節目を目当てに需要を喚起する企画提案が求められます。


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 また、来年は大きなイベントもなく早めに動かないと今年以上の苦戦が予測されます。大河ドラマ放映前年は鹿児島への旅行手控えが懸念され、前広な招聘事業やキャリア・エージェントと連携した具体的な商品造成が求められます。中国人の爆買を伴う旅行が減少し、日本の生活・文化に触れる旅が人気を博しつつあります。




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 鹿児島は冬も温かく、東アジアからの誘客には優位性が発揮できます。冬の魅力をもっと前面に、温泉やゴルフ、食に加えて菜の花畑、桜、祭り、武家屋敷、日本庭園等の美しさも売り込みたいものです。「体験価値」を創り、「感動消費」をもたらすことが、リピーターとなります。
 西郷隆盛ゆかりの地では、ストーリー性を前面に他地域との連携したルートづくりが重要であり、早めの仕掛けと情報発信力が問われます。


 最後に、平成27年に県内の宿泊施設に泊まっている人を発地別で見ると、地元鹿児島県も含めて九州管内人が一番です。足元の需要をもっと大事にすべきではないでしょうか。
 「人間万事塞翁が馬」の姿勢では、需要開拓は厳しいと言わざるをえません。積極果敢な取組が今求められています。
参考資料:https://mizote.info/image/02profile/30kaisetu_jinkan.html


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 けふもまた こころの鉦(かね)を
 打ちならし 打ちならしつつ
 あくがれてゆく
          ~若山牧水~


No.438 地域を支えるボランティアガイドさんに感謝~生活文化を語ることの大切さ~

2016年11月28日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


 昨日といひ 今日と暮らして 明日香川 流れてはやき 月日なりけり
                      春道列樹 ~古今和歌集~


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 月日が経つのも早くあと3日で師走です。街中にはクリスマスの飾りつけやジングルベルの声が響き、歳末商戦の始まりを知らせてくれます。
 飲食店やホテルなどは忘年会の獲得で忙しくなります。厳しかった今年の商売の遅れを取り戻すべく、それぞれアイデアをだし顧客獲得に精をだしていることでしょう。
 他店と何が違うか、年代、男女によってどのように差別化するかが大切なことです。最近「女子会」なるネーミングのプランが多くみられますが、飲み放題やケーキ付プランはもう古くなりました。
 女性の声を聴き、顧客は何を求めているか、お店としてどのようなアイデアを提供できるかが鍵です。特に女性はみんなでひとつの鍋を箸でつつく「鍋物プラン」は敬遠しがちです。
 お店の奮闘に対して、心からの期待と声援を送りたい。


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 ところで、鹿児島市内の「維新ふるさと館」、「西郷隆盛銅像」、「南洲神社」、「五代友厚像」、「城山展望台」周辺等で、青いジャンバーを身に付けた人の回りを10数名の観光客が取り囲んで、説明を聞いている姿をよく見かけます。ボランティアガイドさんが観光案内をしている姿です。
 鹿児島市には、歩きながら観光地の案内をする人と、決められた場所に常駐して(定点ガイドと呼ばれる)案内をしている人がいます。合わせて約230名余りのガイドさんが登録しており、観光客の要望に応えています。
 県内には「鹿児島県観光ボランティア連絡協議会」に加盟している団体だけで47あり、約1000名のガイドさんが登録しており、九州では長崎県に次いで多くなっています。


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 今年もボランティアガイドさんの総会と研修会が開催されました。今までで最高の100名余りの参加者があり、NHK大河ドラマ「西郷どん」の放映も決まり、特に関心が高かったように感じます。
 「NPO法人ディスカバリーくまもとボランティアの会 創立者&理事長」で、熊本学園大学 招聘教授の野田恭子氏による、「外国人観光客が喜ぶおもてなしとは」と題した講演があり、眼からうろこが落ちるような話が多く感動しました。


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 30年近いアメリカでの生活を通してのグローバルな視点から、異文化や多文化共生の認識の大切さを語られました。相手の国の文化や習慣を知ることの重要性をまず強調され、そのためには宗教による表現の仕方の違い、食文化の違いなどを理解すべきであると。
 また、コミュニケーション能力を高めることが、おもてなしの心につながることになると強調され、英語の単語の羅列でも思いは伝わると恐れず外国人に接してほしいと話されました。


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 外国人は日本人の普通の人々の考えや生活習慣を知りたがっており、自らも体験したいと思っている。日本人の宗教観が日々の暮らしにどのように影響しているのか、日本人の生活習慣の基盤がどのようなものなのか、知りたがっているとも話しました。
 我々は外国人に会うと言葉が十分通じないなど心配が先に立ち、引っ込み思案になりがちです。今回の講義を通して外国人に対し、少しは肩の荷がおりた参加者が多かったのではと感じました。


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 ところで、最近の旅行形態は、団体旅行から個人旅行への流れが顕著であり、しかも外国人も急増しており、地域の生活、文化に触れるニーズが多くなっています。街歩き、歴史探訪等ボランティアガイドさんの役割が求められており、加えて地域のおもてなし力が問われています。


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 ガイドをする上で日頃の準備や行程での心掛けも大切な要素で、日頃から街の成り立ち、くらし、地域の名産品等を勉強し、ストーリーを加えて語ることで印象に残ります。 専門的な知識の羅列だけでは、参加者は飽きてしまいます。客の表情を伺い、案内の内容を変え、場所によっては説明の濃淡をつけることも必要と考えます。ボランティアガイドさんを活用した蘊蓄のあるツアーが人を惹きつけます。


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 全員のスキルアップを図るため、日頃の勉強会を増やすなどの取組みも大切です。 野田先生は、あらかじめガイド料金を決めて収受し、交通費や勉強会の経費に充てるなど資金面の充実も必要であると強調されました。
 観光客の案内やおもてなしに関わっており、その対価としては必要なことではないでしょうか。
 今では、傷害保険を組み入れてガイド料金を収受している地域がほとんどで、その資金でスキルアップ研修を実施している団体もあります。自己負担を減らして行く取組が、永続的な活動につながると思います。


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 来年の2月、ボランティアガイドの九州大会が指宿市で開催されます。「指宿のまるごと観光ガイド」は、大河ドラマ「篤姫」放映決定を機に発足した団体で、今では山川~根占間の船上ガイドやホテルでの出前講座も行っています。来年の大会では、地元開催と言うことで楽しい演出が期待されます。


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 日本文化の良さが海外に浸透し、外国人の観光客が増大しており、多くの国々から鹿児島を訪れるようになりました。言葉のハンデイを乗り越える「おもてなしの心」が求められます。
 最後に、地域住民も地域の魅力を知り、語ることが地域の発展に求められている時代になっているのではないでしょうか。


No.437 観光振興は県境を越えて~旅行商品や外国人の行動に学ぶ~

2016年11月21日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


  都をば 霞(かすみ)とともに 立ちしかど 秋風ぞ吹く 白河の関
                         後拾遺集より~能因~


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 霧島温泉周辺の山々の紅葉が美しくなってきました。紅葉は日中の寒暖の差が大きくなると、一気に色づくと言われます。新燃岳周辺は登山規制がありますが、高千穂河原、大浪池周辺は見頃です。紅葉はこれから山を下り平地でも色づき始めます。


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 『幸せを象徴する黄色』が辺り一面を埋め尽くす垂水市の「千本イチョウ」は、月末から12月上旬が見頃となります。ご夫婦が30数年かけて育てて来たイチョウは、黄色の絨毯の山となり、木々のトンネルを歩く様は映画のワンシーンを思い浮かべます。夫婦のイチョウにかけた思いが多くの観光客を呼んでいるのです。


 ところで熊本、宮崎、鹿児島の南九州3県が協力して観光振興を図ることを主眼に、「第24回南九州観光振興会議」が鹿児島で開催されます。3県の観光議員連盟、自治体、観光関連業者、NPO法人等約250名が参加します。


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 2015年の宿泊実績でみると鹿児島県に宿泊する人は、九州管内では福岡県に次いで熊本県、宮崎県となっています。宮崎県からは多くの修学旅行生が訪れています。やはり隣県ということで気軽に来られることがあげられます。
 大都市圏からの旅行商品を見ると、熊本空港~高千穂峡~宮崎~鹿児島、宮崎~霧島~鹿児島市~指宿のコースや、新八代駅~人吉~霧島~鹿児島中央駅等隣県を跨ぐコースが各エージェントとも見られます。東回り自動車道や九州自動車道、九州新幹線がそれを可能にしています。


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 3県を走る肥薩線は、「SL人吉」、「いさぶろう・しんぺい号」、「はやとの風」の3つの観光列車が人吉駅、吉松駅で利用客の利便性を図るべくうまく時間でつながれています。
 球磨川沿いの「川線」、山岳部の「山線」と呼ばれる沿線の風景、大畑駅に至るループ線、幸せの鐘が鳴る宮崎県の真幸駅、日本の三大車窓、横川駅や嘉例川駅の100年を超える木造の駅舎等いつまでも残したい日本の原風景が各地に残り、旅人の旅情をいっそう高めてくれます。乗車率を高めるためには、もっとPRしなければなりません。


 外国人は広域に回ることから日程も長くなり、3県を回る人も多くなっています。最近大きなリュックを背負ったイギリスからの男女の若者二人に鹿児島市内で会いましたが、7日間かけて、南九州と屋久島を旅していると語ってくれました。
 3県には、上海、台北、高雄、香港、ソウルからの国際便が就航しており、2県もしくは3県を周遊する団体ツアーが多く、日本人のツアーより長く4日から7日間となっています。招聘事業では3県を巡るコースを提案し喜ばれています。


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 一方では、3県には阿蘇山、桜島、新燃岳、えびの高原の硫黄山等火山があり、大規模爆発や警戒情報が出るたびに、周辺の観光地や温泉施設では取消が発生し大きな影響が出ることも紛れもない事実です。
 通常の生活を営んでいるのに、隣県も風評被害に悩まされています。先の熊本地震では、鹿児島へのアクセスは新幹線や九州自動車道が不通になりましたが、市民生活は通常通りでした。あらためて正確な情報発信の必要性を感じました。
 これからも噴火や地震は発生することが想定されます。南九州3県が一体となって、情報発信や関係省庁への支援など対策を講じる必要性を感じます。


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 ところで、肥薩おれんじ鉄道は、熊本県の八代駅と鹿児島県の川内駅を結んでいます。 今、全国を走る観光列車の中で一番人気の高い「ななつ星in九州」がこの路線を走って います。
 車内では沿線の食材を使った食事の提供や、景勝地では長めの停車時間を設けており、東シナ海に沈む美しい夕日が乗客を堪能させます。最高のおもてなしも沿線の魅力があればこそ引き立ちます。この列車の運行が長く続くよう両県の沿線自治体は努力が必要です。


 出水市の武家屋敷を着物で散策し、着た着物を持って帰れるツアーは国内外から注目を浴びており、隣県からの参加者も多く日本の伝統文化が観光客の心を捉えています。地域資源を活用した商品づくりのアイデアが消費者の心を捉えています。


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 江戸時代は、他国から薩摩にいたる街道は、出水街道、大口街道、日向街道の三本が主要街道であり、関所では常に厳重な取締を行い他国との交流を制限していました。
 今さまざまな交通機関が発達し、他県に簡単に行くことができます。しかしながら意外と3県の魅力は十分浸透しているとは言えず、トータル的な魅力発信が求められています。


 九州観光推進機構の調査によると、首都圏女性の九州観光に対するイメージは、北海道、沖縄に比べてかなり劣っています。南九州の魅力ある観光ルートを定着させるためには、県境を越えた連携が不可欠です。


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 最後に、2018年のNHK大河ドラマは「西郷(せご)どん」に決まりました。熊本城、田原坂、人吉、延岡、日向など西郷隆盛ゆかりの地があり、3県をつなぐ観光ルート設定には事欠きません。
 遠方から来る観光客は広域に回り、県境の意識はありません。3県の活動に於いて、まず南九州のPRを優先し協調しながら誘客に努め、一方では競争して地域を磨くことも必要ではないでしょうか。3県会議の意義をもう一度検証したいものです。


 心なき 身にもあわれは 知られけり 鴫(しぎ)たつ沢の 秋の夕ぐれ
                             ~西行~


No.436 スポーツ合宿は社会人・プロチームの誘致も~練習会場整備や相談窓口の確保を~

2016年11月14日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


          旅人と 我名よばれん 初しぐれ
                         芭蕉


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 出水平野に飛来しているツルの第一回羽数調査が行われ、今年も1万羽を超え20年連続の記録となりました。長年に渡る地域の方々のツルに対する温かい保護対策により、越冬地として最適な場所となっています。
 毎年飛来し多くの観光客を楽しませてくれるツルは、地域に対する「ツルの恩返し」と捉え、これからも大事に保護したいものです。
 ツルは古来より絵画に描かれ、短歌にも詠われる等目出度い鳥の象徴です。来春の北帰行まで事故や病気が発生しないよう祈りたいものです。


 北海道からは大雪の便りが届き県内も急な寒さが訪れていますが、鹿児島県は、北に位置する県に比べると温かさは格別で、日中は20度を超えます。これから隣国韓国ではゴルフ場が閉鎖されるため、日本でのプレイを希望する観光客が増加し、鹿児島のゴルフ場は春先まで賑わいます。


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 ところで、日本ではプロ野球がシーズンオフに入り、奄美大島、沖縄、宮崎などで秋期キャンプを行うチームがあります。本格的なキャンプinは、年明けの2月1日となります。
 大学では、春、夏、秋、冬休みを中心にスポーツ合宿する傾向が強く、合宿の後半には周辺の観光地を巡って帰る傾向があり、学習の一環として訪れていることが伺われます。


 今そのスポーツ合宿の受け皿づくりが、県内全域に広がりつつあります。
県の統計によると、平成23年度に10万人を超え、平成27年度は過去最高の14万1千人となっており、今では教育旅行を上回る人員になります。  増加している理由として、官民による積極的な誘致活動を継続して来たこと、県に専任の担当者を配置していることや、一度訪れた学校の口コミ等で鹿児島の魅力が浸透していることがあげられます。


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 平成27年度の市町村別では、鹿屋市、志布志市、南さつま市の順で、競技別では、野球、サッカー、陸上の順となっています。
 大隅地域での合宿が増えているのは、大阪からの「さんふらわあ」の利便性があげられます。夕方大阪を出港した船は翌朝志布志港に到着し、その日からキャンプがスタートできます。また帰りも夕方出港することから、昼過ぎまで練習ができることです。
 2年後には「さんふらわあ」の新造船が就航することから、さらに人気が定着するのではないでしょうか。
 また、旧有明高校の跡地には、東京オリンピック、国体を見据えて、陸上競技のトレーニングに特化したスポーツ拠点基地が整備される予定です。完成が待たれます。


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 スポーツ合宿誘致のため、福岡市と大阪市で毎年大学生向けの説明会を開催しています 。
 今年は12月15日に、関西地区の学生を対象に大阪市内で誘致説明会を開催します。
 神戸、京都地区からも授業終了後にも参加しやすいように、交通の利便性の高い新大阪駅近くのホテルが会場です。
 県内の参加自治体からは地元の食材を提供してもらい、料理やスイーツも会場に並び、学生達に供されます。地元の食材を提供することで、合宿先の選定にも役立つと毎年好評です。今年も多くの自治体が参加することを期待しています。


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 毎年の相談会で学生達から寄せられる意見として、「宿泊施設」、「自治体の補助金」、「運動施設利用時間」、「温泉」、「食」、「懇親会ができる」、「近くに観光地がある」ことなどがあげられています。
 特に十分な練習時間が確保できることが、鹿児島まで足を伸ばすことの大きな理由になっているように思います。宿泊地が温泉地で、練習会場が他の自治体というケースもあります。宿泊施設が少ない自治体では、練習会場の提供にご協力願いたいと思います。昼食は練習会場近くで取ってもらうことで、地域全体でのメリットが共有できます。


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 また、学生の財政事情を考えると、合宿経費に対する一定の支援制度がある自治体は、選択肢の条件になるのではないかと思います。
 合宿は長期に渡るので、自治体の担当部署と担当者を明確にし、合宿期間中の相談窓口を設けることが持続的に合宿地に選ばれる条件ではないかと思います。


 ところで、プロチームの誘致には、整備されたグラウンド、充実した宿泊施設、飲食店やレジャー施設等が近くにあることなど条件が厳しくなりますが、経済効果は大きなものがあります。プロサッカーチームを誘致するには、数年かけて芝を植栽する等グラウンド整備をしていくことも求められます。
 プロチームの合宿地となると、ファンとの交流会やオープン戦が開催されるなど多くの動員が図られます。


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 県内でもプロ野球やサッカーのJリーグのキャンプが行われていますが、チーム数では沖縄県、宮崎県に大きく差をつけられています。冬場に韓国から多くのゴルフ客が訪れていることを考えると、韓国のプロ野球やサッカーチームの誘致に力を注ぐことも一つの方策です。



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 県内各地に温泉が湧き、選手の体力維持管理には事欠きません。豊富な食材とおもてなしの心など他県には負けない要件が揃っているのも鹿児島の魅力です。是非学生の受入で学んだノウハウを一般のチームの受入に活かしていきたいものです。



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 鹿児島県を訪れる観光客は、鹿児島市、霧島地域、指宿地域がメインですが、これからは県内各地に観光客を広げ、受入態勢を確立することが鹿児島のイメージアップにつながると思います。
 スポーツ合宿を誘致することでファンも訪れ、その後リピーターとなり地域の活性化にもなります。大分県、宮崎県は今、学生のスポーツ合宿にも力をそそいでいます。多くの自治体が今後もスポーツ合宿誘致に力を入れることを望みます。


             故 郷 の 空
         作詞:大和田建樹 曲:スコットランド民謡

    夕空晴れて 秋風吹き 月影落ちて 鈴虫鳴く
    思えば遠し 故郷の空 ああ わが父母 いかにおわす

    澄みゆく水に 秋萩垂れ  玉なす露は 芒(すすき)に満つ
    思えば似たり 故郷の野辺 ああわが兄弟(はらから) たれと遊ぶ


No.435 変わる中国人の旅行スタイル~日本文化の提供と滞在しやすい環境づくりを~

2016年11月7日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


        紅き日の 落つる野末の 石の間の

        かそけき虫に 聞き入りにけり

                        ~斉藤茂吉~


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 10月まで実施していたクールビズが終わり、衣替えの時期となりました。
今年も出水平野にツルの一陣が飛来してきました。朝陽、夕日に映える姿は、まさに秀麗の美しさで、他に例えようがありません。冬の訪れが近いことも知らせてくれます。
 紅葉はこれから南下し日本列島に錦秋をもたらします。国内の個人旅行が低迷しており、紅葉の名所から美しい情景を発信して旅行喚起を図りたいものです。


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 ところで、2016年(1月~12月)は84隻の外国からのクルーズ船がマリンポートに寄港します。そのうち8割は中国の港を発着し、ほとんどが中国人観光客です。
 先日、初寄港となる『グローリーシー』号の歓迎行事に参加しました。バハマ船籍の船には、629名の中国人観光客と他国の1名が乗船していました。


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 外国船が入港するたびに、県、市、商工会議所、観光連盟、鹿児島観光コンベンション協会、ゆめみなと鹿児島等で構成する「観光船受入協議会」で歓迎セレモニーを行っています。
 天気が良ければ雄大な桜島の姿を目の前に見ることができ、他港への入港時より素晴らしい感動を与えているのではないでしょうか。


 特に中国の港を発着する船が増えている理由として、中国人の旅行意欲や上海周辺地域の経済力のアップ、日本文化に対するあこがれがあるのではないでしょうか。
 また、上海や経由地のプサンから時間的に鹿児島が寄港地として最適な場所に位置していることもあげられます。


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 最近の中国人の旅行スタイルにも変化が起きています。従来は港に到着後、城山の展望台からの風景を楽しんだ後、大型ショッピングセンターでの大量の買い物・所謂『爆買い』が主流でしたが、最近のツアーを見てみると買物の量が減っていることが特徴です。
 電気製品や大量の物品等は中国での持ち込み時の課税が強化されたこともあり、健康食品や薬、化粧品等生活必需品が主となり、安全・安心の品物を買う傾向が顕著となっています。


 また、大型バスでの同一行動がほとんどでしたが、最近では天文館のドラッグストアやデパートで買い物をしている小グループをよく見かけます。個人行動が顕著になっています。


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 国慶節の期間に飛行機で鹿児島を訪れた中国人客の中に、旅行会社の団体ツアーはほとんど見かけませんでした。FITが主流で、市内のホテルに4~5日滞在して指宿、霧島、桜島、屋久島等の観光を、市内ではショッピングを楽しんでいる人が増加しています。やはりリピーターが増えている証です。
 クルーズ船は今後も増加すると予測されますが、寄港後の観光スタイルが変化していくことは確実です。急激に変化するクルーズ市場に適格に対応していくことが今求められています。


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 観光庁では2020年の外国人観光客数の目標を4千万人に置いています。この目標を達成するには、大都市圏集中から地方に分散させ、いかに地域の魅力に触れさせる機会を提供できるかが課題の一つです。
 始めて日本を訪れた中国人は、日本の自然や街の美しさ、温泉、食文化、安全・安心な生活環境に驚きの声をあげます。そのことがリピーターの創出につながっています。


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 地域ではFITの増加に対応すべく、日本の伝統文化や食文化、温泉地でゆっくり滞在できるよう態勢作りが求められます。外国語表記、通訳業務の充実、銀聯カード取扱店の増加等の対策が必要です。情報については、BtoBからBtoCへの発信強化が急がれます。
 鹿児島は東アジアに近いこともあり、九州の中でも際立った温泉、桜島、世界遺産、食文化、伝統文化など鹿児島らしさを提供ししたいものです。


 ところでクルーズの良さは荷物の移動がなく、寄港地では市街地までのシャトルバスの運行や観光地巡りと旅客の利便性を確保することが求められます。
航海中は、昼間は講演会や船上パーティ、プールなどで過ごし、夜はナイトショーやパーティーが開催され、ダンスの踊れる人は楽しみな時間です。
 夜のイベントでは着衣する服装がカジュアル、フォーマルなどと決められており、事前の準備が必要であり、女性にとっては着替えの楽しみがあります。


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 鹿児島に寄港する欧米系の客が主流の外国船は、夫婦参加が多くみられます。日本人は急ぎ足の旅行には慣れていますが、船内で長時間滞在する旅行は苦手の方が多いのではないでしょうか。
 自分の趣味を持ち読書など時間をうまく活用できる人、また他人と気軽に話すことのできる人は長い船旅に退屈しないと思います。
 また、今のクルーズ船はホテル並みの豪華さで、長期の船旅は医者も常駐し安心して過ごせる環境が整っています。皆様もぜひ豪華客船に乗り、のんびりとクルーズの旅を楽しみませんか。


 最後に中国の三峡下りは日本人にも人気があります。唐の時代の有名な詩人李白が描いた三峡の光景です。


         早発白帝城     李白

     朝辞白帝彩雲間     朝に辞す白帝彩雲の間

     千里江陵一日還     千里の江陵一日にして還る

     両岸猿声啼不住     両岸の猿声啼いて住まざるに

     軽舟已過萬重山     軽舟已に過ぐ萬重の山


[詩の略]     朝早く白帝城を出発する
朝早く朝日に映える白帝城を出発する。千里先の江陵へは
一日の行程である。舟が行く両岸の崖からは、悲しい猿の
鳴き声が聞こえ旅情をさそう。軽やかな私の舟は、幾重にも
重なる山並みを見ながら、通り過ぎて行く


 白帝城は長江の上流に位置し、川の両岸は延々200キロの峡谷が続き、切り立った崖からは猿の鳴き声が聞こえ、旅人の旅情を誘います。白帝城は「三国志」にも登場しますが、蜀の劉備玄徳が、自分の死後のことについて、部下の諸葛孔明に託した場所としても有名であり、内部にはその様子を紹介している塑像があります。
 2009年に三峡ダムが完成し周辺の景観が変わっていますが、長江の雄大さは変わらず当時を偲ぶ史跡が多く残っています。


 一度ぜひ三峡下りをお楽しみください。


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