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No.357 広告の規制や看板の統一がまちの魅力を醸し出す~これから街づくりに欠かせないものとは~ 

2015年4月13日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 1週間前まで県内の観光地を彩っていた桜の花が、風雨にさらされ、いつのまにか葉桜となり、変わって山の新緑が一段と美しい季節となりました。自然の移ろいは早いものです。

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 霧島高原の「まほろばの里」の芝桜が満開となり、紫の絨毯を敷いたような光景は、自然の色の美しさとともに、周りの緑の木々とのコントラストが見事です。切子制作や焼き物の体験もでき、家族で楽しめる施設です。長島町では沿道の至る所に植えられた花が開花し、ドライブを楽しませてくれます。「夢追い長島花フェスタ」も始まりました。是非皆さんでお出かけください。


 これから家々の庭から「こいのぼり」が高く泳ぐ姿が見られ、地方に出かける楽しみが増えます。最近では、川岸にポールを立てて、家庭で眠っている「こいのぼり」を泳がせている地域もあり、美しい日本の原風景がいたるところに見られるのはうれしい限りです。

 また、おぼろに景色がかすむ様子は日本の春の風景です。下の唱歌が浮かんできます。
          朧(おぼろ)月夜   作詞:高野辰之  作曲:岡野貞一
  1 菜の花畠に   入り日薄れ   見渡す山の端(は)  霞ふかし
      春風そよふく  空を見れば   夕月かかりて    にほひ淡し

  2 里わの火影(ほかげ)も  森の色も   田中の小路を  たどる人も
      蛙(かわず)のなくねも  かねの音も  さながら霞める  朧月夜

   歌の場所は、現在の長野県飯山市の付近で、作詞者の高野辰之が小学校に通う途中に見 た菜の花畑を思い出して作詩したと言われています。

  与謝野晶子は春の情景を菜の花に託して次の歌を詠んでいます。
      「はてもなく 菜の花つづく 宵月夜 母が生まれし 国美しき」

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 ところで海外で感動する光景に、広告や看板がなく、ゴミが無くて落ち着いた美しい雰囲気を醸し出している観光地があることです。オランダのチューリップ畑、スイスのアルプスへの登山電車の沿線風景やドイツのロマンチック街道、アメリカやカナダのロッキー山脈周辺、バンフなど景観に配慮したまちづくりが施されています。

 日本でも景観法が施行され、その対象は多岐にわたっています。基本理念には、《良好な景観は国民共通の資産》であると位置づけられており、地域の自然、歴史、文化等、地域の特性や特色を伸ばす必要性が指摘されています。

 景観を守ることは、観光まちづくりの根本をなすものと考えます。いちき串木野市と、日置市が景観法に基づく景観行政団体となったことから、両市の景観づくりが動き出しており、市民向けのセミナーも開催されました。

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  「薩摩藩英国留学生記念館」がある羽島は150年前、19名の留学生が船出した港であり、その雰囲気を復活すべく整備が始まりました。また日置市の「美山地域」は、薩摩焼発祥の地であり、博物館、古民家、工房、竹林等があり、落ち着いた街の雰囲気が魅力です。

 電柱の地中化、駐車場の整備、看板等の規制などに取り組み、県を代表する景観保護モデ地域として発展していくことを望みたい。鹿児島市内から30分余り、観光客誘致には便利な場所です。

 鹿児島市は錦江湾をはさんで、目の前に雄大な桜島がそびえ、その景観は世界に誇れるものです。しかし、いつのまにかその雄姿がさえぎられるポイントが増えており、高さ制限の必要性を感じます。

 県内の有名な観光地でも、旗の林立や派手な商品広告にがっかりさせられることがあります。看板の大きさ、字体等を統一する等、公共空間や公的施設を整備する際には配慮が必要です。

 全国的に景観形成に積極的に取り組んで成功している事例として、「伊勢市」、「川越市」、「彦根市」、「松本市」、「長野県の小布施町」などが上げられます。これらの街は、屋外広告物の表示・掲出の制限等を行っています。歴史や自然を活かしたまちづくりを促進するため、市街地の建物の高さを制限し地域の特性を活かした取り組みを進め、観光客誘致に努めています。

 県内では、武家屋敷群の残る「出水」、「入来」「知覧」は、「伝統的建造物群保存地区」として広告や旗等を制限しており、四季折々の魅力が醸し出されます。

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 宿泊地では各ホテルの標識や位置を、ひとつの看板にまとめることで十分と考えます。インターネットの普及やカーナビを装置した車が多くなり、目的地の検索は容易になっており、「黒川温泉」、「由布院温泉」はすでに実施しています。


 景観を維持していくために、地域の体制やまちづくりをどのようにすすめていくか、市民を交えた議論も重要です。今まで景観の重要性について考える機会や、その背景も希薄であったと思います。

 県内には28の有人の離島がありますが、広告のない島があっていいのではないでしょうか。全国的に注目されることで、住民の意識も変わりPRにもなります。

 子どもの頃から景観保護の重要性を、学校教育で教えることも大切です。美しい景観が地域の誇りであることを認識し、地域の景観形成についてどのようにして合意形成を進めていくか、先進地を研究する必要もあります。美しい景観を、先祖代々まで残していくことが、我々の責務であると考えます。

No.356 地方創生事業で誘致間競争は激化する~持続可能な地域が勝ち残る~

2015年4月6日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 今年の鹿児島の桜は予想に反し、全国で一番早く開花となり、満開の桜の下で、美しい日本の春を楽しんでいる方が多いのではないでしょうか。桜前線はこれから日本列島を北上し、北海道に上陸するのは5月になります。桜は日本人が最も愛する花の一つです。

 六歌仙の一人である在原業平は、桜を次のように詠んでいます。
「世の中に 絶えて桜のなかりせば 春の心は のどけからまし」
                             ~古今和歌集より~

 この世の中に全く桜の花がなかったならば、春を迎える人の心は、おだやかでいられるだろう。と訳されますが、実際は美しい桜があるせいで、いつ咲くだろうか、いつ散ってしまうだろうかと、どうか散らないでほしいと心配しながら過している。という意味に解釈されています。「美しい花よどうぞ散らずに、このままずっと咲いいてほしい」と、はかない桜の命を惜しむ思いをこめており、裏返しの意味で表現した歌です。

 平安時代の歌人で、江戸時代の松尾芭蕉が最も影響を受けたと言われる「西行法師」は
「願わくは 花の下にて春死なん そのきさらぎの望月の頃」
と詩っています。

 情熱の詩人「与謝野晶子」は
「清水へ 祇園をよぎる桜月夜 こよひ逢ふ人 みなうつくしき」
と夜桜に映える京都の街や行きかう人々の楽しい姿を詠んでいます。日本人の心が伝わってくる情緒豊かな詩ではないでしょうか。

 また、桜は文部省歌や校歌、歌謡曲にも多く取り上げられています。「弘前城のしだれ桜」、「福島県三春町の滝桜」、「岐阜県根尾村の薄墨桜」、「伊那市の高遠城址公園の桜」は全国的に知られた桜の名所です。

 桜前線を追うように桜のツアーも北上していきます。2ヵ月間に渡り、花のツアー企画ができるのも、桜の花だけだと思います。これほどまでに日本人の心を惹きつける桜の魅力とはなんでしょうか。冬の寒さに耐え、土筆が芽を出す頃美しく咲いて、ぱっと散るところが、日本人の心を捉えます。

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 アメリカ合衆国の首都ワシントンD・Cのポトマック河畔の桜並木は、世界の名所の一つになっています。1912年当時の尾崎行雄東京市長がプレゼントして植えたもので、今では盛大に「桜まつり」が開催され、「桜の女王」が選ばれる等全米から観光客が訪れます。

 ところで、観光庁より「宿泊旅行統計調査」の平成26年年間値(暫定値)が発表されました。調査によると、鹿児島県の延宿泊者数は7,584千人泊で、3,57%増となり、うち外国人は、269千人泊で25,28%増となっています。(全施設を対象にした実績)

 九州内における延宿泊者数の順位は、福岡県に次いで第2位となり、平成25年からこの位置をキープしています。4回の台風襲来や大きなイベントがない中で、前年を超えることができたことは、関係者の誘客の努力に加えて、鹿児島県の魅力が定着しつつあると感じています。

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 全施設を対象とした統計ではあることから、小規模施設への入込状況も把握できます。個人旅行化が進み、また旅行ニーズが多様化している中で県内各地域への分散傾向も見られ、少しずつではありますが、受け皿づくりが整いつつあると感じます。九州新幹線開業による時間短縮効果もそれを可能にしています。



 また、「拠点地域(指宿・霧島・鹿児島)発の広域観光周遊ルートづくり」、「かごしま・風呂マラソン」、「桜島七十七景ルートづくり」、着地型メニュー等を充実させて、地域への誘客を進めなければなりません。

 外国人延宿泊者数は大きく伸びましたが、九州の中では第5位となっています。全国的には、外国人の宿泊者数は30,8%の伸びであり、4つの海外路線を持つ鹿児島としては、もっと伸びる要素があります。

 韓国人の入込数で大きな差が出ており、熊本まで来ている外国人をいかにして鹿児島まで誘致できるかにかかっています。課題は、鹿児島までの交通費であり、新幹線の特別料金の設定や福岡空港と鹿児島空港を発着としている同一キャリアを活用することで、効率的ルートの設定が可能となります。

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 上海線、香港線の増便や、新たに宮崎~香港線の就航等は追い風となります。個人旅行が増加しており、外国語表記、免税店の対応改善などさらなる誘致策が求められます。



 ところで貸切バスの新運賃制度が本格的に導入され、バス料金が30%程度アップしています。企画商品を中心に集客状況が懸念されますが、料金値上げは、乗務員の待遇改善や安全運航確保の必要条件であり、事業者、エージェントも消費者に理解してもらう努力が必要です。

 地方創生事業で、旅行商品の割引や地域商品券など、多くの県が観光客誘致にしのぎを削っています。割引のみでは一過性の客となる懸念があり、訪れる方に感動をもたらしリピーターに繋げる「おもてなし」が大切です。「本物。鹿児島県」を提供し、「一期一会」の心で対応しなければなりません。

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 今年は「世界文化遺産」登録や「第30回国民文化祭」が開催されることから誘客の目玉はそろっています。特に国民文化祭は、43市町村が競って誘客に努め、我が町をPRする機会としなければなりません。

 地域資源を点検し、ストーリー性を持った商品開発が不可欠であり、常に話題を提供し、進化し続ける地域であることをPRし、官民一体での努力が求められます。そのことが持続できる地域になる要因ではないかと思います。23年から4年連続で鹿児島県の宿泊客数は伸びています。27年も慢心することなく、誘客に努めたいものです。

No.355 「第30回国民文化祭」を「明治維新150周年」につなげよう~市町村の事前取組が課題~

2015年3月30日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 今年は、国、最大の文化イベントである「第30回国民文化祭」が、10月31日から16日間、県下43全ての市町村で開催されます。テーマは、「本物。鹿児島県 ~文化維新は黒潮に乗って~」、また、愛称は「ひっとべ!かごしま国文祭」となっています。 

 国民文化祭は、全国各地からアマチユアを中心とした文化団体や愛好者が集まり、各種文化活動の成果や発表・競演・交流することにより、国民への文化活動への参加の機運を高め、新しい芸術文化の創造を促すことを目的に開催されてきました。 

 鹿児島開催まで半年あまり、県民あげての盛上げが必要であり、各市町村の事前取組が 大会の成功を左右すると考えていますが、住民への浸透度は今一歩です。主要拠点にカウントダウンボードも設置されました。文化、教育、観光、農水産業、商工関連団体等が連携強化して我が町の魅力を発信し、参加者増を図らねばなりません。

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 文化イベントは、スポーツイベントに比べて市民の関心が低く、集客に苦労します。国体等代表選手が参加する大会には経費等の補助がありますが、国民文化祭は趣味を同じにする人たちの発表の場であり、自費参加が主体となっています。


 ここに国民文化祭に対する集客の厳しさがあり、いかにして各事業への参加者を増やすかが問われています。県では国民文化祭のイベントを通して、多くの人に鹿児島に来ていただく対策として、地方創生に関連した予算も計上され、団体の参加を促すことにつながると思います。

 昨年の秋田大会の経済波及効果は133億5500万円とする推計を、秋田銀行のシンクタンクである「秋田経済研究所」は発表しています。鹿児島県が誇る歴史、温泉、自然遺産、食等は、秋田県に優るとも劣らない魅力が十分揃っています。九州本島最南端の県と言う魅力も活かし、関連団体への事前のPRが何よりも大切です。

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 6月には、「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」の「世界文化遺産」登録が予定されており、鹿児島市内にある5つの関連施設が対象で、登録が実現すると、「世界文化遺産」の視察を兼ねて多くの参加者があると期待され、国民文化祭の開催にも弾みがつくことが想定されます。

 薩摩藩は、明治維新の原動力となった多くの偉人を輩出し、「旧集成館事業」や「薩摩藩英国留学生」、「郷中教育」等の歴史に触れることで、薩摩の文化の高さや先進性を学ぶことができるのではないでしょうか。また、食、祭り、くらし等地域文化を情報発進することで、行って見たい大会としての魅力付けが大切になっています。各市町村が競争と協調を図り、文化祭終了後にわが町への誘地を図る努力も求められています。

 鹿児島県は南北600キロに広がり独特の文化を育んできました。中でも焼酎は、110余りの蔵元と2000を超える銘柄があり、地域に根付いています。与論では与論献奉という独特のおもてなしの手法で接待します。

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 県議会においては、本格焼酎の産業振興とそれに関する郷土の伝統文化への理解の促進を図るため「かごしま本格焼酎の産業振興と焼酎文化でおもてなし条例」を制定し、平成26年1月1日から施行されました。参加者と住民との交流の機会を多く設け、地域ならではの「ふだん着のおもてなし」が求められています。

 一方インバウンドに目を向けると、円安やビザ取得要件の緩和、和食の「世界無形文化遺産」登録、「安全安心の国日本」への関心が高くなり、外国人が急増しています。県内在住の外国人にも、鹿児島の文化の発信者になってもらうことも大切です。本県では、ソウル、上海、台北、香港の4国際航空定期路線があり、また、市町村は姉妹都市との交流を定期的に進めており、国民文化祭を機に海外からの参加者を増やし、さらなる文化交流も深めてもらいたいと思います。

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 大会のテーマは、南に広がる鹿児島のイメージを象徴しています。県内に28の有人の離島があることは意外と知られていません。大会後に離島を訪れる参加者が多くなることが期待されます。「奄美・琉球」は、平成29年の「世界自然遺産」登録を目指しており、PRのよい機会となります。



 国民文化祭を開催することで県外の出演団体に加えて、交流の機会の場が増えることは、地域の活性化につながることが期待されます。また、地域文化の継承には後継者の養成が不可欠で、子どもやお年寄りの出演の機会をつくることが求められています。そのことで、地域の伝統文化を学ぶ、郷土愛を育てることになります。

 「世界文化遺産」登録、来年の「薩長同盟150周年」、鹿児島を舞台とした2017年の「NHK大河ドラマ」の誘致、そして、2018年の「明治維新150周年」につなげる国民文化祭にしなければなりません。「第30回国民文化祭」の成功が、これからの鹿児島にとっても重要なインパクトになるイベントであることを認識し、県民一人ひとりが参画意識を強く持ち「おもてなしの心」で迎えたいものです。

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 『木曽路はすべて山の中である。あるところは岨(そば)づたいに行く崖の道であり、あるところは数十間の深さに臨む木曽川の岸であり、あるところは山の尾をめぐる谷の入口である。一筋の街道はこの深い森林地帯を貫いていた。』
              夜明け前:島崎藤村

*小説「夜明け前」の冒頭の部分です。今では観光地となっている馬籠と妻籠が舞台です。
*鹿児島大会では、「最南端佐多岬旅の文学フェスティバル」が南大隅町で開催されます。

No.354 離島の活性化に若者の発想を生かす~変わらない美しい自然と人々の温かさ~

2015年3月23日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 先日、奄美海運が運航する新造船「フェリーきかい」の就航記念披露会に出席しました。新造船は2,500総トン型で、旅客定員196名、トラック18台、乗用車11台、コンテナ60個を積む能力があり、従来の船よりも高速運行が可能となりました。


 バリアフリー化や各種の設備を整え、鹿児島~喜界~名瀬~古仁屋~平土野~知名の奄美群島の各港を結びます。小生の学生時代の頃に比べると、離島航路は船の大きさ、設備、スピード等格段の進化を遂げています。

 40数年前から訪れている離島の魅力について触れたいと思います。鹿児島県は南北600kmに広がり、また、28の有人離島が点在し、独特の文化や日本では珍しい生態系が見られます。昭和47年に沖縄が日本に復帰するまで、与論島が日本の最南端の島であり、都会から女子大生を中心に多くの若者が訪れていました。昭和45年の奄美航路の利用者は、約35万人で43年の3.5倍にも達し、離島ブームの到来を感じさせてくれました。

 高校時代から地理という科目が好きで、将来は高校の社会の先生を夢見ていました。大学入学後、迷いなく入部したのが「地理学研究会」でした。部員は20名足らずでしたが、各県出身の旅好き仲間が集まり、アルバイトの資金で、休みの度に離島の生活・文化の調査を兼ねて合宿を行っていました。   

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 奄美航路の船はデッキまで人が溢れるほど混んでおり、佐多岬を過ぎ、大海に出ると大きく揺れましたが、夏場は潮風に吹かれながら満天の星空を眺め、ざこ寝した思い出が懐かしく思い出されます。早朝の名瀬港は荷降し作業や出迎えの人でごった返し、「島育ち」の曲が流れ、今とは考えられないほど賑わっていました。

 南海の海はコバルトブルーに輝き、ズーニーブーの「白いサンゴ礁」という曲が若者の心を捉えて、与論の浜辺では水着姿の若者が闊歩し、民宿も多く誕生し、商店街はさながら与論銀座の様相を呈していました。

 我々のクラブ活動は離島の人口動態、経済、生活等の調査が目的であることから、自治体は、集落の公民館等を好意的に宿舎として提供してくれました。農家を訪ねると、黒砂糖やお茶でおもてなしを受け、島の人々の温かさに胸が熱くなり、日本にこんなに素晴らしい地域があるのだと部員で語り合ったことが懐かしく思い出されます。

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 昭和44年の沖永良部島での調査では、発見されてまもない「昇竜洞」を見学することができました。十分整備されていない洞窟の中は、裸電球が付けら島の住民が案内役をかってくれました。昇竜洞の美しさにただ目を見張るばかりで、今ではケイビングツアーのメッカとして全国的に知られるようなりました。

 研修先として次の訪問地の与論島に渡る計画でしたが、南方海上で台風が発生し急遽台風を避けて帰ることになり、島の西側の伊延港に移動して、沖合に停泊している船にはしけで渡り帰途につきました。当時から伊延港は避難港としての役割を果たしていました。離島の生活環境の厳しさに触れた出来事でもありました。

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 屋久島合宿では、安房からトロッコの軌道を小杉谷まで15キロを5時間かけて歩きました。縄文杉(当時は大岩杉)や大王杉は今ほど有名ではなく、途中の小杉谷荘(今は廃業されている)が、宮之浦岳登山客で賑わっていました。


 昭和45年、自然保護運動の高まりの中でヤクスギ伐採も終わり、営林所や家族が住んでいた小杉谷集落、そして小杉谷小・中学校も廃校となりました。訪ねた頃は校門跡に残された記念碑や、生徒たちが走り周った校庭に残る僅かのグランドが、賑わっていた時代を物語っていました。今では雑草が生え、昔を知るすべもありません。

 林芙美子の小説「浮雲」は屋久島が舞台ですが、自然の美しさは46年前とあまり変わっていないと思います。平成5年日本で初めて「世界自然遺産」に登録され、多くの観光客が訪れていますが、今の自然環境を守って行くことが、屋久島の価値を高めることになると信じています。

 その後も喜界島、奄美本島、徳之島、甑島、種子島、新島と休みの度に各島を訪れ、美しい海、人々の温かい心に触れすっかり離島のファンとなりました。離島の魅力を国内外の人々にPRしたい思いで就職活動を行い、結果として旅行エージェントに籍を置くこととなりました。

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 営業活動で離島を訪ねることも多く、修学旅行の添乗では、生徒を港から沖合の定期船迄、漁師の協力も得て小さなはしけで運ぶこともありましたが、今では港の改修で大型フェリーの接岸が可能となり、浴場や個室を備えた豪華船となり、隔世の感があります。

 仕事で多くの国々や全都道府県を訪ねましたが、鹿児島の離島の魅力は世界に誇れるものがあると思います。今年秋には「第30回国民文化祭」が、全市町村で開催されます。全国から多くの参加者が離島を訪れることを期待しています。

 2017年に「奄美・琉球」が「世界自然遺産」登録を目指しており、登録後は屋久島と奄美群島をつなぐ新たな観光ルートの誕生が期待されています。奄美群島全体の観光振興につなげたい思いです。

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 離島の島々は国防の観点からも、住民が暮らし続けていける環境を保っていくことが重要なことです。人口減が顕著となり、交流人口の拡大が不可欠となっています。今離島の自治体にとっても、大学とコラボして、商品開発や情報発信に努めることが地域活性化につながるのではないでしょうか。

 スポーツ合宿、ゼミの研修先、避暑地としての役割も果たせるものと思います。学生時代の貴重な離島体験が今でも役立ち、私の人生の原点は、大学時代のクラブ活動にあると思っています。

      春の岬  旅の終りの  かもめ鳥
                        浮きつつ遠く なりにけるかも
                               ~三好達治(『測量船』)~

No.353 甑島(こしきしま)が新たに国定公園に~多様な海岸景観が観光客を魅了する~

2015年3月16日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 薩摩川内市の西に位置する甑島は、多様な海岸景観をはじめとした景観等が評価され、「甑島国定公園」として、3月16日誕生します。国定公園は、日本において国立公園に準ずる景勝地として自然公園法に基づいて、自然の保護と利活用を目的に指定される「自然公園」の一種です。 今回の指定は国内で57カ所目、鹿児島県内では、奄美群島、日南海岸に続き3カ所目の国定公園となります。


 甑島周辺沿岸が日本の重要湿地500に、鹿島断崖に見られる特異な地質構造である「甑島の白亜紀―古第三紀層」が日本の地質100選にされています。また、「甑島の鹿の子断層」が日本の地質構造100選に選定されるなど、その自然環境は高く評価されています。

 薩摩川内市の川内港から「高速船甑島」で40分で上甑島の里港に到着します。高速船は、JR九州の観光列車を手掛けている水戸岡鋭治さんデザインによるもので、話題性に富み多くの利用客で賑わっています。

 甑島は、上甑、中甑、下甑3島などからなり、現在中甑島と下甑島を結ぶ架橋が平成29年の開通を目指して工事中であり、完成後は島が一つに結ばれてさらに魅力が増すのではないでしょうか。

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 最初に船が着く里港は里の中心地です。里は島の中では、平坦地が多く美しい入り江と自然が造った景勝地がいたるところにあります。里はトンボロと呼ばれる地形の上に発展した町で、海底の砂礫が海岸流によって運ばれ、波の作用によって水面上にあらわれたものです。函館市も同じような地形の所に発展した町です。

 里町には、丸い石を丹念に積み重ねた玉石垣の美しい街並みが残っており、昔の風情が感じられる通りがあります。その石垣から四季の花々が顔を出し観光客を和ましてくれます。上甑島の「長目の浜」は、およそ4キロにわたって延びる砂州とその内陸部に並ぶ、なまこ池、貝池、鍬崎池という3つの池からなる甑島有数の景勝地です。

 上甑と中甑を結ぶ「鹿の子大橋」から見る夕日は、絶賛に価します。浦内湾には30キロを超えるクロマグロが、いけすの中で養殖されており、漁師の巧みな手さばきで一瞬のうちに捕獲され、内蔵を取りのぞき大きな箱に格納されていきます。

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 定期的に大都市圏の市場に出荷しています。甑島はクロマグロの養殖場としては、水温、海流、海面の深さなど好条件に恵まれた場所であり、漁場拡大が今後の地域経済への発展につながると思います。


 下甑島の入口にある鹿島海岸は、高さ200mにも及ぶ険しい断崖が続き、池矢崎、門口、鶴穴など様々な名称の奇岩や大岩が点在し大自然の威容を見せています。断崖絶壁の岩の巣には、ウミネコが生息しており、クルージングをしながら餌をやる体験ができます。船上からきびなごの餌を空中に投げると、あっという間に餌を捕まえて飛んでいきます。その姿は壮観であり学生が喜ぶ海の体験の一つになります。

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 また、市の花にも指定されている鹿の子百合の自生地もあります。初夏になると、二シノハマカンゾウが黄色い花を咲かせます。鹿の子百合はそのあとを追うように、草原一帯に、薄紅色の花がじゅうたんを敷きつめたように咲き乱れます。百合の野生の花や球根を取ることは禁じられています。

 昼食を港の近くの浜辺で、取れたてのあじやきびなご、いかなどの海の幸のバーベキューをいただくのも島ならではの醍醐味です。

 甑島で忘れてならない魚にキビナゴがあります。近海で獲れたキビナゴは、その日のホテルの朝食に並びます。刺身やちょっと火であぶることで甘みが残り、おいしく食べられます。メニューに工夫をこらし観光客に提供することで、島のブランド品にもつながります。

   数年後には中甑島と下甑島が橋で結ばれますが、完成後は里から下甑島の手打まで2時間程度となり島も大きく変貌すると思います。下甑島には、ナポレオン岩、瀬尾観音三滝等の景勝地に加えて、椋鳩十の小説「孤島の野犬」の像、「おふくろさん」の歌碑もあり、観光客にとっても魅力のコースです。また、テレビドラマ「ドクターコトー」のモデルとなった医師と診療所があり、写真を撮る観光客の姿も見られます。

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 甑島では「地域おこし協力隊」が頑張っており、関西・中国地域から新幹線と高速船を利用した観光客誘致に努めています。今後のさらなる観光客誘致を図るためには、国定公園の島として何が売りなのか、他の島にない魅力をPRすることです。


 素朴な自然を活用した体験メニューを充実させ、都会の人々と島の人々との交流の機会を増やすことが重要です。また、大学生の地理や地学のゼミ研修場所として最適な場所です。 一方では、国定公園指定を受け地域の自然を守る取組も強化しなければなりません。島を上げて国定公園指定を喜び、観光客を温かく迎える心を醸成したいものです。

                資料:薩摩川内市ホームページ、薩摩川内観光マップ

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