トップページ > プロデューサーズコラム

No.375 与論島の目指すものとは~景観整備を進め、沖縄との差別化を~

2015年8月24日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 与論町で景観セミナーが開催され、講師として参加しました。46年前、学生時代に初めてクラブ合宿で訪れて以来、美しい海と豊かな人情に魅せられ幾度となく訪れています。

与論の海2015.jpg

 与論島は鹿児島から南へ563km、沖縄本島の北23kmに位置し、周囲23kmの隆起珊瑚礁の島です。島はリーフに囲まれ、海は透明度が25~35mと非常に高く、色とりどりの熱帯魚が生息し、まさに水族館の雰囲気が満ちあふれています。

 昭和43年NHKテレビ「新日本紀行」で取り上げられ、当時日本最南端の島は自然の美しさが話題となり、一気にその名が全国的に知られるようになりました。(沖縄県は昭和47年に日本に復帰しました。)

 昭和40年代から奄美航路は、夏は若者で溢れ目的地は与論島でした。当時日本で一番美しいと評判の与論の海で泳ぐことが、憧れとなっていました。島内には60の白砂のビーチがありますが、中でも潮流により浮かびあがる神秘の白い砂浜「百合ヶ浜」が人気で、グラスボートで渡る途中、透き通る海と熱帯魚の群れる姿に驚かされます。

百合ヶ浜.jpg

 昭和44年頃からヨロンブームが始まり、60年まで入込客は、10万人台を維持していました。当時民宿は100軒程あり、どこも隆盛をきわめていました。一方、百合ヶ浜周辺や茶花のメイン通りは、水着姿の若者で溢れ深夜まで騒ぎ、風紀が乱れると社会問題になったこともありました。

 沖縄県が日本に復帰してからは、相次ぐリゾートホテルのオープンや航空会社の大型キャンペーンが展開され、飛行機を使って短時間でいける沖縄に観光客は移ってしまいました。

 また沖縄は、国の優遇措置による航空運賃の低廉化や免税の措置が施され、観光客誘致が容易となりました。全国各地の空港から沖縄路線が開設され、先島諸島の宮古島、石垣島への航空路線も整備され、航空路線が少ない与論島は敬遠され、観光客が減少するという結果となっています。

 平成25年の入込客は約5万人で最盛期の3分の一程度ですが、増加傾向にあり地道な誘客活動が実を結びつつあります。個人旅行が主流となり、また飛行機利用が圧倒的に多い中で、アクセスの不便さをいかに克服して来島者を増やすかが問われています。

与論森瑤子の墓.jpg

 今後の観光振興や景観の在り方についてについて、関係者の皆様と一緒に議論しました。観光客を再び呼び込み、観光ビジネスを復活させるためには、ハード、ソフト両面からの整備が必要です。


 昭和40年代は、若者を中心とした船旅が主流でした。現在でも若者は時間的な自由度があると思われるので、奄美群島を周遊でき、他社にも乗船できる切符や、航空運賃の低廉化、沖縄との相互観光がしやすい状況を作ることが、観光客を増やすことにつながると思います。

 与論の全盛期を支えたのは若い女性グループでした。その世代は多くがリタイアしており、再び訪れたくなる仕掛けづくりが必要です。

 40年前と変わらない与論の美しい海と砂浜の魅力を、商品企画に繋げるかが課題です。比較的安い運賃で、大都市圏や主要都市と結ばれている沖縄本島に来た客を与論までいかに誘客するか、メディアや航空会社とタイアップしたキャンペーンが必要と感じます。

船の歓迎(与論).jpg

 大都市圏からの女子大生のモニターツアーを実施して、ドローンで撮影した「百合ヶ浜」の景観やマリンスポーツ等を提供し、フェイスブックやツイッター等で情報発信してもらう取組も必要です。


 また、香港や台湾の若者は、日本の美しいビーチで結婚式を挙げることが憧れの一つになっています。外国語表記、指差マップの制作等の整備も急がねばなりません。マリンスポーツ等自然を活かした体験メニューを揃えることが、外国の若者の滞在を可能にします。併せて外国メディアの招聘も与論の魅力の浸透度を速めることになります。

 与論島は今、グリーンツーリズムやブルーツーリズムの魅力を前面に「島をあなたの学校で貸切」のキャッチフレーズで、教育旅行の誘致につとめています。平成2年は2校、500名でしたが、26年は10校、2,737名が来島しています。交通手段は、ほとんどが沖縄経由で、飛行機と船を利用します。

 沖縄までは大型機が飛んでおりアクセスは問題ありません。農業やマリンスポーツ等の体験メニューの充実、地域住民と生活・文化に触れる機会を増やすなど、島あげての取組みを推進し、年間を通じての受け皿づくりが必要と感じます。

与論看板.jpg

 また、景観整備の必要性を感じます。主要ポイントには、白く塗られた台座に青色でナンバー入りの地域名が書かれており、パンフレットの表示番号と一致することから、場所が分かり易くなっています。


 一方では、美しい白浜の周辺に真っ赤な自動販売機が設置されており、景観上良くありません。桜島では、コンビニも周りの雰囲気をこわさないよう店舗のデザインやカラ―を変えている場所があります。統一された表示が景観の保護と美しい島のPRになります。

 今度、大金久海岸のビーチ沿いに遊歩道が整備される予定であり、雑木や廃墟となった施設等を撤去して、美しい白砂が望めるコースにしてもらいたい。

ハイビスカス.jpg

 また島の沿道には、ハイビスカスやブーゲンビリア等の草花を植栽し、フラワーアイランドとしてPRすることで癒しの島となり、年間を通して観光客が来る場所になるのではないでしょうか。韓国で人気の「オルレ」のコース認定も目指してほしいと思います。

 「望郷」、「嫉妬」、「情事」、「デザートはあなた」等の人気小説や多くのエッセイを残している森瑤子さんは、与論をこよなく愛した作家であり、お墓はサンゴ礁の石積みに囲まれ、美しい白砂の海岸が望める高台にあります。今でもファンが訪れます。

 映画「めがね」は、与論の美しい海が舞台で、ロケ地の表示と一緒に観光客が写真に収める姿がありました。CMやモデルさんの撮影場所としても最適ではないでしょうか。

 島には3色信号機は1つしかなく、時を忘れてしまいそうな気分に駆られます。島の唯一の信号機であることの表示が話題性となります。また、都会の人々に2地域2居住を勧めることで、定住対策にも繋がるのではないでしょうか。

与論の海2015-2.jpg

 今回1泊2日の滞在でしたが、昔と変わらない与論の美しい自然の姿に安心しました。与論献奉を取り入れた宴席は、一度で島のおもてなしの心が伝わります。いつまでも残したい習慣です。


 農業と観光が主要産業であり、これからの人口減を考慮すると新たな観光客誘致による経済効果の創出・維持が重要であり、沖縄との差別化が不可欠となります。広告や看板を極力なくすることで、自然の美しさが際立ち、永遠に輝き続ける島になるのではないでしょうか

 久しぶりに訪れた与論島に思いを込めて一首、

        なつかしき
            百合の浜辺は 海の中
                現れる時を 待つも楽しき

 残暑が厳しい時期です。夏休みも残り1週間、人影が少なくなった島へいかがですか。

No.374 観光施設の入館者数をいかに増やすか~見せ方や情報発信に工夫が必要~

2015年8月17日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 県内には、動物園、水族館、植物園、博物館、歴史資料館、アミューズメント等の観光施設がありますが、ここ数年ほとんどの施設で入館者が減少しています。

アサガオ.jpg

 平成25年の入館者数でみると、鹿児島中央駅から徒歩7分の位置にある鹿児島を代表する観光施設「維新ふるさと館」は、167,038人(対前年比 88.9%)、桜島桟橋に隣接する「かごしま水族館」は643,195人(同 96.6%)、指宿に行く途中にある「平川動物公園」は569,715人(同92.5%)でいずれも減少しています。


 「フラワーパークかごしま」の平成25年度の入園者数は、147,855人(対前年比95.6%)で、九州新幹線全線開業翌年から再び減少しており、平成8年の開業年度(309,474人)と比較すると半数以下となっています。

 一方、体験観光が主流の「かごしまぶらりまち歩きは」、平成25年は3,718人(同117.5%)、「桜島ビジターセンター」は117,935人(対前年比117.5%)と増加しています。

維新ふるさと館(西郷隆盛像).jpg

 平成26年の鹿児島県内の宿泊数は、九州新幹線が全線開業した平成23年から約80万人増加していますが、宿泊者の伸びに対して観光施設の入館者は連動していません。要因として少子高齢化、人口減少等社会的構造上の問題もあげられますが、生活者のニーズの変化に的確に対応できてない施設の状況が伺えます。
主な要因としては、

・大型団体が減り、個人旅行が7割〈県の宿泊統計〉となり旅行形態が変化している。
・少子高齢化で子供の数や家族旅行が減少し、観光施設に行く機会が少なくなっている。
・都市圏のアミューズメント施設に流れている。TDL、USJ、ハウステンボス等
・年金削減等の影響で高齢者の旅行が減少し、旅行会社のツアーの集客が良くない。
・園内で親子が体験や交流を楽しめる施設が少なくなっている。
・県民への四季折々の魅力発信が必要であり、また、平日の誘客対策が不足している。
・スマートフォンや各種インターネットの普及で、リアルに情報入手が可能となり、施設に行かなくても、一定の知識が得られることなどです。

 個々の施設についての現状を分析すると、課題も見えてきます。最近海外からの観光客は増加していますが、現状では中国のクルーズ船客は入園料がかかる施設は、敬遠しがちとなっています。

出水武家屋敷着物体験02.jpg

 外国人に人気がある施設は、日本文化が体験できる仙巌園や出水の武家屋敷等です。着物や甲冑を身につけて、お茶、生け花、着物、武道等ができることです。薩摩焼、切子等高級品を求める外国人も多く、富裕層の誘客対策が必要です。

 学生に人気な施設は、「維新ふるさと館」です。西郷隆盛や大久保利通など歴史上著名な人物が動くキャラクターとして登場し、生徒たちの眼を釘づけにして人気となっています。静止画像より動いている姿が、人の印象に残ります。学校行事の誘致は思い出づくりとリピーターの創出となります。

 植物園や動物園等は見せ方が大事だと感じます。四季の草花苗の植え付けを体験させ、開花時に再度来てもらい、自分が植栽した植物の成長が肌で感じられる演出が必要です。 植栽した畑に、名前の札を立てるなどの工夫が求められます。(花が終わるまで限定)

平川動物園の動物.jpg

 水族館や動物園では、動物の1日の生態系をじっくり観察できる展示方法が人気です。細長い水槽を泳ぐアザラシや、木と木の間を綱渡りするオランウータン、施設の外を散歩するペンギン等、大人にも人気の旭山動物園は、「人間が動物から観察されている」というコンセプトです。また、小動物と遊んだり、餌やりの体験等も喜ばれます。

 リピーターを創ることが一定の入場者確保には不可欠です。会員への情報発信、参加型イベントで若者が共感できる賑わいの演出、貸しスペースがある施設は場所の提供等です。比較的平日の時間が取りやすい主婦層に対しては、子どもと参加できるイベント、「女子会」向けの講演会、ものづくり体験、ケーキや小物等が展示即売されているコーナーを設けることで、滞在時間の延長にもなり経済効果が生まれます。

 歴史資料館では、ストーリーを語る人が不可欠であり、また、大学生のゼミやカルチャーセンターの年間カリキュラムに組み入れてもらうことが、安定的な顧客確保に繋がります。

 これから入場者を増やす課題と方策として
①県民が施設の魅力を知らない。個々の魅力の発信や県民デー等を設けて割引やイベントの創出で認知度アップを図ることが大切。
②旅先でついでに観光施設に訪問する人は多い。宿泊した施設のフロント、メイドさんの口コミやレンタカー会社等と連携したPRが不可欠。
③観光客は広域に廻ることから、周辺の観光地と連携した共同企画が必要。スタンプラ リー、共通入場券、農家レストランや直売所の紹介等。
④入館者の参画イベントを増やし、体験することでリピーターに繋げる取組が必要。 
⑤看板やパンフレットの外国語表記、WiFiの整備等受入態勢の整備が不可欠である。
⑥植物園等は、開花時に花文字やキャラクターができる植栽を心掛ける。
⑦オンリーワンや希少価値のある展示等を、旅行商品に組み入れて誘客を図る。
⑧高齢化社会に入り、バリアフリー対策を充実することで、介護者も同伴し入場者が増加することとなります。
⑨屋外や屋内の施設を活用して子供向けや女子会(女子高校生等)のイベントを開催す るなど「楽しめる空間」を築く必要があります。
⑩天気予報やモーニングショー等中継場所として、メディアの露出効果を高めること等 が波及効果が大きい。「おやっと」と思わせる、サプライズの演出が必要です。
⑪動物園や水族館は、形態展示から行動展示に重きを置くことで、入館者の感動が違い ます。

フラワーパーク(縮小).jpg

 最後に、観光客誘致には県外に目が向きがちですが、まず県民を対象に誘致拡大することが第一です。県外客は鹿児島まで来るのに経費がかかることから、何度も来てくれるお客様を開拓することに取り組まねばなりません。


 お客様にいかに感動してもらえるのか、継続して来ていただけるか、個々の施設も根底から考え直して誘客につなげたいものです。

        暁(あかつき)の 紺朝顔や 星一つ
                        ~高浜虚子~

No.373 先祖のルーツを訪ねて~お盆を故郷で過ごす~

2015年8月10日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

盆のちょうちん.jpg

 夏休みも後半に入り、県外ナンバーの車を良く見かけます。県内では、昔から正月とお盆は古里で過ごす人が目立ちます。鹿児島県は、高度成長期を中心に、学校を卒業した若者が大都市圏に就職していきました。団塊の世代が退職する時代となり、墓参りを兼ねて毎年帰省する人が増えているのも当然と言えます。

 帰省を機に、季節外れの成人式や同窓会も開かれます。一緒に遊び勉強した仲間との再会を祝し、しばし童心に帰れるのもふるさとのありがたさです。

 お盆は、旧暦の7月15日を中心に日本で行われる祖先の霊を祀る一連の行事です。現在では、多数派である8月中旬(新暦8月15日)を「お盆」と称するため、「お盆」というと月遅れのお盆を指すことが全国的になっています。また、人が亡くなり49日法要が終わって最初に迎えるお盆は初盆と呼ばれて、厚く供養する風習があり多くの親戚、仲間が集まり故人を偲びます。

精霊流し.jpg

 お盆は全国的にはさまざまな風習がありますが、比較的どこの家庭でも行われているのは、12日や13日の夕刻に行う「迎え火」と15日や16日の「送り火」です。京都では「五山の送り火」が、奈良では「高円山大文字送り火」が行われます。

 長崎では「精霊流し」が行われるなど多くの観光客もが訪れます。夏祭りとお盆行事は深く結びついていますが、観光の面からも魅力あふれるものが多く観光客誘致に力を注いでいる所も多くあります。

 ところでお盆の時期は夏休みと重なり、子供たちを始め兄弟、親戚が集まり、先祖のお墓参りをする良い機会となります。先祖の名前が刻まれた墓前に静かに手を合わせ、お祈りすることで、家族の大切さを確認する場となります。子供たちにとっても、自分の命は一人だけではなく先祖から長く引き継がれているものであり、大切にしなければならないと自ら悟る機会にもなります。

火の島祭りのこども.jpg

 最近、同級生のいじめによる自殺や、親子の悲しい殺人事件、保険金事件等人の命がないがしろにされる出来事を聞くたびに、命の大切さを教えることの場がもっとほしいと願っています。身内の葬祭等には出席させて、荘厳な雰囲気を肌で感じることが大切です。

 先日も、同級生からいじめを受け、それを苦に自殺するという痛ましい事件が起こりました。繰り返される事件に、周囲は気づかなかったのかと残念でなりません。殺伐とした世の中を変えるのは、家庭の温かい愛情ではないかと思います。伝統的文化である日本のお盆の習慣を、皆さんとともに大切にしていかねばなりません。

 鹿児島県は一人あたりの生花の消費量が、日本一です。その要因は定期的にお墓参りに行き、その度に新しいお花を購入しお供えする習慣もあるからです。嫁ぎ先では姑さんが、先祖とお墓参りの大切さをお嫁さんに教えており、そのことが日々の生活の中で習慣として定着しています。

u 鰻地区 お墓01.jpg

 離島や南薩方面は、特に先祖崇拝の文化が強く残っている地域ではないかと思います。鰻池の湖畔の集落では、夏は花や水が枯れるため1日3回お墓参りする姿が見られます。観光バスが南薩地域を通ると、バスガイドさんが道路沿いのお墓を指差し、日々の習慣や新鮮な花が飾られていることを説明すると、観光客は掃除の行き届いたお墓に驚きの声をあげます。

 また、鹿児島には屋根付のお墓が多いのに感激します。風雨と桜島の降灰から、先祖の霊を守る大切さが示されているのではないでしょうか。お盆は人の命の尊さを確認する良い機会です。今年も家族でお盆に里帰りし、先祖の墓に線香とお花を供えて、元気で生かされている自分の感謝の気持ちを伝えたいと思います。

 お盆の頃良く流れる有名な「精霊流し」の曲で、大好きな歌です。是非長崎をお訪ねください。今年は「世界文化遺産登録」効果もあり、例年以上の人出が予想されます。

        精霊流し       作詞:作曲:さだまさし
     去年のあなたの想い出が テープレコーダーから こぼれています
     あなたのためにお友達も 集まってくれました
     二人でこさえたおそろいの 浴衣も今夜は一人で着ます
     線香花火が見えますか 空の上から
     約束通りに あなたの愛したレコードも一緒に流しましょう
     そしてあなたの 舟のあとをついてゆきましょう

     私の小さな弟が 何も知らずに はしゃぎまわって 
     精霊流しが華やかに始まるのです
     あの頃あなたがつま弾いたギターを 私が奏いてみました
     いつの間にさびついた糸で くすり指をきりました
     あなたの愛した母さんの今夜の着物は浅黄色
     わずかの間に年老いて 寂しそうです

     約束通りに あなたの嫌いな涙は見せずに 過ごしましょう
     そして黙って 舟のあとをついてゆきましょう
     人ごみの中を縫う様に 静かに時間が通り過ぎます
     あなたと私の人生をかばうみたいに

参考資料 出典:フリー百科事典『ウィキぺディア』

No.372 「域内旅行」の薦め~夏休みは子ども達に県内の魅力に触れる機会を~

2015年8月3日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 猛暑が続く日本列島ですが、甲子園球場では、まもなく全国高等学校野球選手権大会が始まり、郷土代表への熱心な応援が繰り広げられます。夏休みも佳境に入り、家族旅行等を準備されている方も多いと思います。海や山に出かけ自然の魅力に触れていただきたい。

 下記の唱歌は、作者が初夏の頃訪ねた尾瀬の情景を想い出し、詩に託したもので、美しい花の群生と涼しさが伝わってきます。

尾瀬.jpg

 昭和24年6月13日にNHKのラジオ番組で放送されると、多くの日本人の心を捕え、その後曲に歌われている尾瀬の人気は飛躍的に高まっていきました。小生も東京に住んでいたころ、5月末から6月にかけてのミズバショウが咲く頃よく訪ねました。

 雪解けの湖沼に白い花を付けたミズバショウの可憐な花が、尾瀬沼の北部にそびえる2356mの燧ヶ岳(ひうちがたけ)の姿と対比して、美しい情景を醸し出しています。遊歩道では色とりどりのリュックを背負った多くのハイカーとすれ違います。

 ミズバショウの花が終わり、7月中旬頃になるとニッコウキスゲの可憐な花の群生が見られることから、夏休みはファミリーの姿が多くなります。 ぜひ一度は訪れたい美しい日本の情景に会える場所です。     

              夏の思い出
   歌:童謡・唱歌    作詞:江間章子    作曲:中田喜直

    夏が来れば思い出す    はるかな尾瀬 とおい空
    きりの中に浮びくる    やさしい影  野の小路
    みず芭蕉の花が咲いている 夢見て咲いている水のほとり
    しゃくなげ色にたそがれる はるかな尾瀬 とおい空

    夏が来れば思い出す    はるかな尾瀬 野の旅よ
    花の中にそよそよと    ゆれゆれる 浮島よ
    みず芭蕉の花が匂っている 夢見て匂っている水のほとり
    まなこつぶればなつかしい はるかな尾瀬 とおい空

白谷雲水峡2.jpg

 県民の皆様、涼を求めて今年は屋久島へ出かけてみませんか。高速船で2時間足らずで行くことができ、登山しなくても涼しさを味わえる場所が多くあります。「もののけ姫」の舞台となった標高600m~1,050mの地にある「白谷雲水峡」は、ヤクスギなどの原生的な森林を鑑賞できます。

 日本の滝100選に選ばれている「大川(おおこ)の滝」、雄大な岩盤を水が下り落ち、飲料メーカーのCM撮影が行われた「千尋(せんぴろ)の滝」、世界自然遺産地域が広がる「西部林道」等涼しいスポットがあなたの心を癒してくれます。「屋久島環境文化村センター」や「屋久島環境文化研修センター」ではエコ学習ができます。

 現在、口永良部島新岳噴火の風評被害等で、屋久島への観光客が低迷しています。口永良部島と屋久島は海を隔てて12km離れており観光には全く支障はありません。口永良部島の島民は、今屋久島で避難生活を送っています。島民にお会いする機会があったらぜひ励ましていただきたい。

 鹿児島県には28の有人離島があり、島ごとに多彩な生活・食文化、伝統的祭り、美しい海岸線など、魅力的な観光地が点在しています。夏休みという期間を利用して家族で離島にも足を延ばしてください。

悠久の森0.jpg

 県本土でも涼を感じる場所が点在しています。大隅半島では「悠久の森」、錦江町の「照葉樹の森」、「花瀬自然公園」があります。また、「鹿屋航空基地史料館」では、日本の防衛や平和の大切さを学ぶことができます。


 霧島温泉は、鹿児島市内より朝・夕の温度が5度程度低く、夏でも過ごしやすい地域で、親子でのトレッキングが人気です。標高700mの高原にある「霧島アートの森」は、有名アーティストの野外作品に触れることで、子ども達の感性を高める機会になるのではないでしょうか。

 ところで、7月5日に、旧集成館(反射炉跡、旧鹿児島紡績所技師館、機械工場)、関吉の疎水溝、寺山炭窯跡の3つの構成資産が、「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」として、世界文化遺産に登録されました。

 国内で自然遺産と文化遺産の2つの世界遺産を持つ唯一の県となり、県民にとっても大きな誇りです。

寺山炭窯跡.jpg

 「関吉の疎水溝」と「寺山炭窯跡」の2か所には、土日と祝祭日にはボランティアガイドが常駐し、案内業務を行っています。1851年にスタートした集成館事業は、「明治日本の産業革命遺産」の先駆けであり、薩摩の先見性と技術力を国内外に示す重要な構成資産です。

 県民が登録遺産を直接見て、歴史的背景を語ることの大切さが問われています。夏休みの学習教材として、「明治日本の産業革命遺産」を勉強していただきたいと願っています。 観光振興にも大いに活用していかねばなりません。

   10月31日から「第30回国民文化祭・かごしま2015」が開催されることから、全国の約30の旅行エージェントが9月から誘客キャンペーンを展開します。世界遺産や各地域の観光資源を活用したお得な商品企画が進められており、秋以降は大いに盛り上がるものと思います。

鹿屋航空基地資料館2.jpg

 噴火活動や長雨による列車の不通期間もあり、6月、7月と観光客は低迷しました。 これからの取組が国民文化祭の認知度を高め、その後の観光客増という成果となって表われます。県民の皆様も夏休みを利用し、身近にある観光資源を家族で訪ねて、郷土の良さを知る機会にしていただきたい。

 県民自らがPRしていただくことが何よりも求められているのではないでしょうか。

参考:夏の思い出:Wikipedia

No.371 中間幹夫氏の(株)全旅の社長就任を祝す~5500の会員各社に鹿児島をPRするチャンスに~

2015年7月27日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 梅雨明けが遅れましたが、夏休みに入り国民の大移動が始まりました。家族旅行や海外旅行の手配、イベントの集客、高校野球の選手・応援団の輸送、外国人の受入、地域への誘客等旅行会社の役割も多岐にわたっています。

一般社団法人全国旅行業協会(ANTA)ロゴ.jpg

 日本には1万社に近い旅行会社があり、観光庁長官登録が必要な第1種旅行業と、本社所在地の都道府県知事の登録が必要な第2種旅行業、第3種旅行業があります。業界の団体組織としては、一般社団法人日本旅行業協会(JATA)と一般社団法人全国旅行業協会(ANTA)があります。

 JATAは、正会員1127社と協力会員446社、賛助会員93社、在外賛助会員や旅行業に密接な関係のある者517社が加入し、全国8支部が設けられており比較的全国的に営業を展開しているのが特徴です。(2015年7月10日現在)

 一方、ANTAは、全国47の都道府県に支部を置き、日本全国5500社を超える会員により、地域に密着した営業をしているのが特徴です。

中間支部長1.jpg

 この度ANTAの事務受託会社である(株)全旅の代表取締役社長に、鹿児島県の中間幹夫氏が就任しました。(株)全旅は、会員の取引先である宿泊、観光施設、キャリア等の保証会社としての役割も担い、クーポン決裁事業や各種旅行商品、電子クーポン等を取り扱っています。2014年度は、取扱額、利益とも過去最高の実績を達成しています。

 ANTAの各社が企画造成しているのが、着地型旅行「地旅」と呼ばれるもので次の特徴があります。
①「テーマや目的」が明確で、生活文化など地域資源を活かした旅行商品が多い。
②地域住民、各種団体(自治体、観光協会、NPO法人)等と協力し企画造成している。
③地元の食材や伝統工芸、祭り、イベント等を活用し地域振興に貢献している。
④地元との交流や体験、地域ならではの生活・文化などの魅力を語り、伝えるための観 光素材(ボランティアガイドの確保)などが含まれている。
日頃から地元と密着している会社ならではの商品が特徴です。

 ANTAでは、毎年「国内旅行活性化フォーラム」を開催し、地元の観光素材を生かしたさまざまなモデルプランを造成し、旅行需要の拡大を図っています。

出水武家屋敷(CD).jpg

 ANTA主催の国内観光フォーラムと全旅主催の「第2回地旅博覧会inかごしま」が2016年3月16日~19日までの4日間、鹿児島での開催が決まり、2万人余りの参加者が予定されています。参加者の宿泊先を分散させることで、「市町村と地元ANTAがアイディアを出す機会」にしたいと中間会長は、力強く語っています。

 記念講演は、2010年4月5日に「スペースシャトル ディスカバリー」に搭乗し、宇宙に滞在した山崎直子氏です。県内には日本で唯一の宇宙基地が2箇所あり、多くの会員が見学に訪れるのではないでしょうか。

 日本の国内旅行は、大手エージェントによる「発地型団体旅行」を中心に拡大してきましたが、地域主導・地域密着による「着地型旅行」も人気を博しています。

 大手旅行社が、積極的には取り組んでいない地方の生活・文化等を商品化しているのがANTAの会員であり、地域を熟知している住民や観光協会、NPO法人、自治体職員等と共同で、創意工夫に満ちた新規な商品も造成しています。

佐多岬01.jpg

 ところで、鹿児島県内に宿泊するお客様の70%が個人旅行となっており、宿泊した翌日にどのような行程で地域を巡るかが課題です。その際、周辺を半日でも観光できるメニューがあれば、地域の魅力に触れる機会にもなりリピーターに繋がります。

 そこで、地域の人々との触れ合いや地元食材を十分に活用したレストラン等が組み込まれた商品企画が必要になるのです。ANTA会員の情報収集力が求められるのです。

一方、著名な観光地が少なく、大きな宿泊施設を持たない地域では、マニアックな旅が好きな客を対象に、様々な情報手段を活用し、地域の魅力を届けることが重要となっています。

諸鈍シバヤ.jpg

 集落の伝統的祭り、1年に1回しか公開されない神社・仏閣の宝蔵品、域内でしか流通してない旬の食材、珍しい植物、めったに見ることができない自然現象等地域資源を点検し、誘客に繋げる手段が必要です。


 鹿児島県旅行業協同組合は、従来から中間氏を中心に積極的に事業展開をしています。今、「魅旅」という着地型商品を開発し、大手エージェントにも販売ルートを開拓しています。最近では、バリアフリーツアーや過疎地域に特化したツアーなど社会貢献や地域経済の活性化等積極的に取り組んでいます。

 鹿児島県は南北600kmに及び、県下全域に観光客を広げることが大きな課題であり、そのことが経済波及効果をもたらすことになります。

曽木発電所遺構.jpg

 「魅旅」では、「第30回国民文化祭・かごしま2015」の参加者に地域の魅力も知ってもらうために、地域発のツアーが商品化されており、鹿児島を訪れる皆さんに新たな感動を与えるのではないでしょうか。


 中間会長のもと、地元の会員が全国のANTA会員に鹿児島の地域の魅力を発信し、地域の活性化に努力されることをご期待申し上げます。

 最後に、昭和40年代頃までは、夜になると蚊に刺されないように多くの家庭で蚊帳を釣って寝ていました。家族全員が雑魚寝して寝ていた頃が懐かしく思い出されます。

  垂乳根(たらちね)の 母が釣りたる 青蚊帳を
                すがしといねつ たるみたれども
                            ~長塚節~

プロフィール

奈良迫プロデューサー
鹿児島県
観光プロデューサー
奈良迫 英光
詳しいプロフィールはこちら