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美日常の、いいまちをつくる

2011年8月15日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 『富嶽三十六景』や『北斎漫画』で知られ、江戸時代に活躍した浮世絵師 葛飾北斎をご存じですか。晩年の北斎が4年間過ごしたのが信州小布施(現・長野県上高井郡小布施町)です。信州の北東部、善光寺と志賀高原のまん中、千曲川の東岸に位置する町です。

  小布施の町を20年ぶりに訪ねました。前回は一面雪の銀世界に覆われた時期でしたが、今はりんごや栗の木がたわわに実を付けており、秋の収穫に向けて農家の方々が手入れに忙しい時期で、あちこちでその姿が見られました。
 小布施は全国的にも極めて雨量の少ない地域で、扇状地で酸性の礫質土壌はりんごやぶどうなど味の良い果物と、色合いや風味に秀でた特産の栗を産出しています。「栗ようかん」は全国的なブランドとして確立しています。

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 現在は、果樹栽培が盛んな農村として、美しい自然環境に恵まれ、人間性豊かな地域社会を形成しており、先覚の残した文化遺産を継承、発展させ、「北斎と栗の町」「歴史と文化の町」として全国から注目されています。近年は「花の町」小布施のコンセプトを加え、人口1万1千人の町に年間120万人もの観光客が訪れています。

 小布施のまちを歩いて感じることは、「懐かしい」「ほっとする」「安らぐ」「癒される」ことなどです。歩道には、栗の木の丸太が埋め込まれており、木の感触が足に優しい安らぎを与えます。また、北斎館と鴻山館の脩然楼をつなぐ細道は、「栗の小径」と呼ばれ、樹木が生い茂り、落ち着いた雰囲気を醸し出しています。少し町の外に出ると、道路の両側には果樹の並木が続き、遠方には信州の山々が美しくそびえて、美しい景観が広がっています。町の観光案内所の職員は親切であり、我がまちに誇りを持っているという印象でした。

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 地元NPO法人の調査によると、長野県内の観光客の平均リピート率は、小布施町が3.91と最も高く、上高地3.74、松本城3.21、黒部ダム1.95となっており、しかも半数以上が近辺の温泉地に前泊しています。観光による経済波及効果は105億円にもなっています。

 その小布施の町で出版社を営んでいる『文屋』さんが創立10周年を記念して『美日常のたより』を発刊されています。その創刊号の中に興味ある一節がありましたので紹介いたします。

 小紙の名前は「美日常のたより」です。「美日常」は小布施で生まれた言葉です。 みんなが「いいまちだねー」と心から思い、語り合えるまちをつくる。これは崇高な理念であり、やすやすと実現できるものではないと思います。
 出発は、ある疑問。

 「旅は日常から非日常への脱出」と言われます。小布施には日常と大きくへだたった非日常の場、たとえば全国的・世界的な遺産と認められるような文化や自然の資源はありません。ではなぜ、人口の100倍もの人が訪れるのでしょうか。いっとき隆盛を極めた"観光地"が衰退していくのはなぜでしょうか。小布施がそうならないためにには、そして日本の地域社会が、そこに暮らす人々、訪れる人々が幸福を感じられるまちになるためには、どうしたらいいのでしょうか。小布施人たちの、こうした疑問への回答につながる仮説として、「美日常」は生まれました。

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 「美日常」。「たいくつな日常」と「たいへんな非日常」のどちらでもない、「たおやかな日常」の営み。日常と非日常の中間にあるグレーな存在を「美日常」と呼んでみました。「美日常」の時空間を大切に育むことが、生活者と来訪者の満足が調和した独自性の高い生活文化・経済文化の創造には欠かせないと考えます。
 美しくない思い、美しくない言葉や姿勢に明確なノーと言うこと。「いま、ここ」の日常を礼賛しながら、明るく楽しく生きる。「いいまち」を目指して幸福に生きる生活者の日常は「美日常」であり、来訪者にとっても日常生活から一歩踏みだしたところにある「美日常」となる。「美日常」においてはじめて、双方の満足は調和し、好循環が末永く続く風土が生まれるのではないでしょうか。(文屋 代表 木下豊)

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 これからの観光地は、地域住民(生活者)の理解なくしては存続・維持することが厳しい。そしていかに美しい日常空間を創り上げるかが、まちにとって大切であることを問うています。乱立している看板の撤去や、建物の色や高さの制限など景観の保護も大切です。

 2010年10月1日に「観光庁」が発足しましたが、観光立国宣言では、「住んでよし、訪れてよしの国づくり」が基調となっています。
 観光は6次産業で、地域の多くの産業との関わりがあり、雇用創出など経済波及効果も大きいものがあります。訪れた観光客に地域の生活文化をふれさせることで、地産地消を推進し、地域経済が循環することになります。
 滞在して満足できるまちとは、掃除が行き届いた清潔な通り、花が咲き季節感を感じる路、知的文化をくすぐるゾーンなど歩いて楽しいまちです。そして何よりも人の温かさが必要です。

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 生活者と来訪者の双方が満足する美しい日常を創り上げるために、参考にしたい場所、それが小布施のまちです。ぜひ訪ねてみませんか。

参考:小布施観光案内帖:美日常のたより:小布施町ホームページ


プロフィール

古木 圭介プロデューサー
鹿児島県
観光プロデューサー
古木 圭介
(平成29年4月より就任)
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