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秋の旅行シーズンを迎えて~早めの対策で誘客を図ろう~

2012年9月3日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

    「秋きぬと 目にはさやかに 見えねども
                           風の音にぞ おどろかれぬる」
                                藤原敏行:古今和歌集

日中は猛暑が続いていますが、赤とんぼが飛び交い、朝晩はひんやりとした風が吹き抜け、秋の気配を感ずる季節となりました。

諏訪神社.jpg

上の短歌は、立秋の頃に詠まれた歌として知られていますが、立秋は、夏至と秋分の中間で、昼夜の長短を基準に季節を区分する場合、この日から立冬の前日までが秋となります。暦の上ではこの日が暑さの頂点となり、翌日からの暑さを「残暑」といい、手紙や文書等の時候の挨拶などに用いられます。

ところで、日本の四季の移り変わりは、美しい自然景観を作りだしています。秋は紅葉が美しく、また、多彩な食材が収穫され1年を通して、人々が一番旅行に出かけたくなる雰囲気をつくりだしています。

鹿児島県は日本列島の南に位置することから残暑が厳しく、紅葉も11月後半になりますが、北の北海道ではこれから一ヶ月間が、紅葉を楽しむ観光の最盛期となります。 まず大雪山系が色づき、全道に広がり、阿寒湖周辺では、10月8日から10日までの「まりも祭り」が終わると冬支度に入ります。札幌の大通公園は、「とうもろこし売り」のお店が並び賑わいを増します。

漂泊の詩人、石川啄木の歌碑と銅像が大通公園にあり、多くの観光客が訪れています。

        しんとして 幅広き街の 秋の夜の
                   玉蜀黍(とうもろこし)の 焼くるにほいよ

新幹線×2.jpg

昨年の3月九州新幹線が全線開業しましたが、10月から12月まで3か月間に渡って、JR6社による「熊本・宮崎・鹿児島DCキャンペーン」が、さらに今年の3月まではJR九州による「列車で巡る極上の旅南九州キャンペーン」が展開され、多くの観光客が南九州を訪れました。

県内の宿泊者数は、大きく伸び、特に県境を越えて広域に観光客が増加しました。

しかし新幹線開業から一年6か月経過して、新幹線効果の勢いに陰りが見えるのが、最近の状況と判断しています。今年の秋は、同様なキャンペーンがないことから、従来通りの販促活動では、かなりの苦戦が予想されます。また、総選挙が実施されると、旅行意欲は減少することも考えられます。早めにエージェントとタイアップした企画商品や間際の需要を取り込むためのネット販売への迅速な対応が求められます。

秋の予約動向を見ると、外国人と修学旅行は順調に伸びていますが、一般の旅行が低迷しており、募集ツアーの集客状況も昨年の勢いが感じられません。
秋は個人旅行が主流で、しかも熟年層の旅行がメインとなり、空港や終着駅の案内所等での相談や問い合わせが多くなっており、親切な対応が求められます。

釜蓋神社.jpg

タクシーを利用する観光客も増えており、乗車された際ドライバーの方の最初の挨拶が地域の印象となります。今までコラムで何回も取り上げましたが、車中ではドライバーとお客様との会話が大切であり、そのことが翌日の予約につながるケースが多々あります。近距離でも温かい心で接して欲しいと思います。

期待を超える対応が感動を呼び、また、「価格」以上の価値を提供することがリピーターになります。

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宿泊施設では、周辺の観光地や名産品等を問われたら、きちんと情報提供してあげることが大切です。最近観光客で多いのが、一泊目は温泉地、二日目は鹿児島市内というケースが増えています。一日目は、会席料理で満足しますが、二日目は自分の好む店で、好きなものを食べるスタイルが定着しています。お客様の期待に応えるためには、日頃から周辺の飲食店のメニューや味、お客様の口コミ等を入手することが顧客の要望に応えることになります。

心のこもったサービスを特別に意識しなくても自然体で行うことが、「感動を与えるサービス」となります。日頃からお客さまに喜んでもらうことを提供することが、自分自身の喜びや満足感にもつながります。これからはリピート率をいかにあげるかが地域の勝ち残りの要諦と思います。

霧島連山831.jpg

ところで、秋の鹿児島の話題と言えば霧島への登山が上げられます。7月に新燃岳の周 辺の登山規制が一部緩和され、韓国岳や高千穂峰、大浪池等に登ることができるようになり、新燃岳の火口の変貌や紅葉を見ることができます。また、天降川の渓谷沿いの国道は整備が進み、美しく紅葉した木々を身近に見ることができます。

また、新燃岳の様子が観察できる「神話の里公園」からは、紅葉と錦江湾と桜島の景観も一緒に見ることができる絶景のポイントです。

霧島温泉は「人気温泉地ランキング2012・満足度第一位」に輝きました。新燃岳噴火で観光客が激減した際、地域全体で努力した結果の賜と思います。そのことを忘れず今後の地域での取組を期待します。

南薩方面では、頴娃町の「釜蓋神社」が人気を博しています。頭に釜の蓋をかぶって、最後まで落とさずに参拝すると願いがかなうというストーリーが人気で、「なでしこジャパン」の福元選手や澤選手が、ロンドンオリンピックを前に祈願に訪れた神社として有名になっています。今では、竜宮神社、枚聞神社と3箇所をパワースポットとして売りだしています。休日は駐車場が満杯になるなど話題のスポットで、今が旬の観光地です。

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ぜひ一度見て欲しいのが、2010年度の鹿児島県の「景観大賞」に輝いた「垂水千本 イチョウ」です。夫婦二人で開墾した山に30年かけて植え育てた1200本のいちょうの木があります。昨年の休日は、垂水市内の昼食場所が一杯になるなど、多くの観光客が訪れました。

北海道大学のキャンパスや東京の神宮外苑を彷彿させる程、黄色に色づいた美しいイチョウの並木は見応えがあります。見ごろは、11月の下旬から12月の初旬です。新しい大隅の観光地で、大阪から「さんふらわあ」を利用したツアーが人気です。

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その他、新曽木大橋が開通した曽木の滝公園、曽於市の悠久の森と都城市の関之尾の滝、垂水市牛根麓埋没鳥居展望公園、大隅地域の志布志湾大黒イルカランド、吾平山上陵、花瀬自然公園、二つの鳥居のある諏訪神社等知られていない観光地がまだまだ多くあります。

誘客のターゲットとして大都市圏ばかりが注目されますが、もう少し隣県、県内の方々に来ていただく努力が必要と感じます。近隣の客は、何回も来ていただく顧客になります。また、年末の忘年会などの需要を取り込むため、新しい企画も求められます。

秋の旅行需要は、夏休みが明けて暑さが落ち着いた頃から動き出します。各施設は早め の準備と情報提供を密にして誘客に繋げて欲しいものです。

参考:ウィキペディア

心豊かなおもてなしの宿 ~修学旅行受入の名旅館に学ぶ~

2012年8月27日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

夏休みが明け2学期になると、県内各地には多くの修学旅行生が訪れます。先陣を切って、福岡県から筑紫地区の中学校23校が訪れ、平和学習、農水産業体験、まち歩きなど鹿児島ならではの体験型修学旅行を楽しみます。

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筑紫地区の中学校は、30年にも渡って鹿児島を訪れており、今年は地区の全学校が訪れます。鹿児島県教育旅行受入協議会では、毎年学校に出かけて事前打合会や反省会にも積極的に参加してきましたが、今年も鹿児島中央駅や宿泊施設で歓迎(出迎え)のセレモニーを実施します。

最近の教育旅行のニーズは、名所旧跡巡りの旅行から農業・漁業などの自然体験、工場でのものづくり、街を歩きながらの歴史の勉強、戦争史跡を通しての平和学習、ゴミ問題や水質汚染についての環境学習、火山や地震に関する防災学習、月や地球、ロケット等の科学学習等さまざまであり、複数のカリキュラムを取り入れる学校が増えています。

説明会(大阪).jpg

鹿児島を選ぶ学校が増加している要因としては、九州新幹線全線開業による時間短縮効果、知覧の平和学習や県内各地での農業体験、垂水での漁業体験、屋久島での環境学習、鹿児島市のまち歩き等が学校のニーズに合致していることがあげられます。

体験型宿泊旅行においては、大分県の安心院、長崎県の松浦や平戸、佐賀県の唐津が人気を博していますが、鹿児島の優れた自然・環境・科学・歴史等を活かし、他地域との差別化を図ることが、新たな需要の開拓が可能となります。

生徒が宿泊する農家の多くは、簡易宿所の登録や食品衛生法に基づく飲食店営業許可を取っていません。料理はみんなで作るというのが絶対的なルールであり、学校のキャンプの延長線として捉えなければなりません。また、保健所の指導により、手洗いの励行、生ものを出さないなど保健衛生面での格段の配慮が必要です。コンプライアンスの徹底が不可欠です。

新幹線の全線開業は、鹿児島への観光客の誘因効果を高めていますが、永続的に利用客を確保するためには、京都に代表されるように修学旅行生を誘致することが、一番の方策です。

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この度受入協議会では、修学旅行受入のサービス改善を図るため、京都の老舗旅館の視察をおこないました。その旅館は、年間9万人余りの学生が宿泊しており、鹿児島を訪れる修学旅行生とほぼ同じ人員を1施設で扱っており、年間約250日が修学旅行生で埋まる程の人気旅館です。

小説の中でも取り上げられていますのでご紹介します。
「京都に、聖護院という天台宗の名刹がある。光格天皇や孝明天皇が、一時、御所に使われたこともある由緒ある寺院で、七千坪もある広大な境内には、重要文化財に指定された建物もある。ただ、檀家がないため、戦後は一時、寺の経営が苦しくなった。このため、客殿の一部を「御殿荘」として、修学旅行の宿に当てることにした。(中略)

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古びてはいるが、いかにも古都の宿らしいし、環境は抜群。収容力が大きく、分宿の必要がないし、いざとなれば、広い庭に避難できるとあって、たちまち評判になり、他の旅行代理店からの申し込みも殺到するようになった。」以下続く
小説「臨3311に乗れ」:城山三郎著:集英社文庫より

この旅館の特徴についてご紹介します。
ハード部分においては
・由緒ある聖護院の境内にあり、建物は2階建で全ての部屋が庭に面しています。
・京情緒豊かな広い庭園は、緊急時の避難場所にもなります。
・緊急避難時に、廊下が迷路とならないように、回廊式設計となっています。
・境内の中にあり、他校とのトラブルがほとんど無く安心して滞在できます。
・生徒の癒しの場として、庭には足湯がつくられています。
・大文字の送り火が見える部屋もあります。
・夜間は、フロント宿直者1名、専任の警備員が3名、管内を巡回し防犯・防災につとめています。
・日々の防火訓練に対し、市より優良防火事業所京都市消防局長賞を受賞しています。
・館内8箇所に赤外線暗視モニターを設置し、24時間、防犯・防災に努めています。
・自動火災通報装置、煙感知器、熱感知器、屋内消火栓、屋外消火栓などの最新防災設備を完備しています。
など徹底して、生徒さん方の安全確保に努めています。

ハード部分に加えて、学校の支持を得ているのがソフトの充実です。
・到着時には、京都名菓と飲み物のサービスがあります。
・連泊する際、見学から帰った生徒に京の和菓子で出迎え、夏はおしぼりや冷蔵庫に麦茶が用意されています。
・雨雪の日など濡れた靴、制服などを乾かす乾燥室を完備しています。
・メインデッシュには、4つのカテゴリーから自由にチョイスできます。
・朝食は要望に応じて洋食も選択できます。
・仲居さんが親切で、家族的な雰囲気が感じられる施設です。
・部屋がどこも整理整頓されており、清潔感が感じられます。
・病院が近くにあり緊急時の対応がスムーズにできます。

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全体を通して、入館時からチェックアウトの時間までくつろいだ時間を過ごすことができ、京都らしさを至る所に感じることができます。特に庭にある木々は、春から夏にかけては新緑、秋は紅葉が美しく部屋から秋の京都を堪能できます。



「御殿荘」は3年前から予約を受け、しかも3年間予約する学校も少なくなく、常連校が多いのが特徴です。鹿児島の学校でも宿泊希望がありますが、1年前に修学旅行の行く先を決める学校が多く、予約する時点で満館のケースが多いのが実情です。夏休みや12月の後半には一部空き日があります。一般の方も宿泊できますので、ぜひ一度はお泊まり下さい。きっと「しばし京都人」になれると思います。

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「御殿荘」の素晴らしい所は、設備やサービスが優れた施設でありながら、常に学校、生徒の要望を聞いて、改善に努めているところです。生徒の滞在時間中は最大の注意を払い、快適に過ごしていただく環境整備に努めていると感じます。



一方、修学旅行でのホテルの利用も増えて危機感を感じているのも事実です。日本の伝統文化の一つである修学旅行を生徒さんの思い出づくりの場とするため、和室の良さを最大限活かし、施設ができることを最大限提供したいと支配人は熱い思いを語ってくれました。修学旅行に懸ける想いを感じた懇談会となりました。

2日目に参加者でミーティングを開催し、鹿児島の施設でもできることから実行し、受入体制の充実を図ろうと誓い、また泊まりたいという念に駆られながら施設を後にしました。 一度鹿児島を訪れた子供達は、成人したらまた来てくれるリピーターにもなります。温かいおもてなしで、子供達に大きな夢をもって帰ってもらうよう努力したいものです。

参考:史跡旧仮皇居聖護院:御殿荘 / 光淳

ホスピタリティNo.1の県を目指して

2012年8月20日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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「じゃらんリサーチセンター」が、実施した「じゃらん宿泊旅行調査2012」の結果が公表されました。 この調査は、観光などを目的とした宿泊を伴う旅行実態を把握するために行っている調査で、昨年度1年間(2011年4月~2012年3月)の出張・帰省・修学旅行などを除いたマーケットの動向が把握できます。

鹿児島県においては、昨年の3月九州新幹線が全線開業しましたが、その後1年間の状況が把握できる興味あるデータです。

8つのテーマ別・都道府県ランキングは下記の通りです。

・地元ならではのおいしい食べ物が多かった
1位:高知県 2位:沖縄県 3位:北海道 8位:鹿児島県
*鹿児島県は、前年度圏外からトップ10入りしている。

・魅力ある特産品や土産物が多かった
1位:沖縄県 2位:京都府 3位:北海道 8位:鹿児島県

・魅力的な宿泊施設が多かった
1位:大分県 2位:沖縄県 3位:千葉県

・現地で良い観光情報が入手できた
1位:沖縄県 2位:京都府 3位:奈良県 5位:鹿児島県

・子供が楽しめるスポットや施設・体験が多かった
1位:千葉県 2位:沖縄県 3位:和歌山県

・大人が楽しめるスポットや施設・体験が多かった
1位:千葉県 2位:沖縄県 3位:京都府

・若者が楽しめるスポットや施設・体験が多かった
1位:千葉県 2位:沖縄県 3位:大阪府

・地元のホスピタリティを感じた
1位:沖縄県 2位:山形県 3位:秋田県
*2010年鹿児島県は2位、2011年は3位でした。

この調査で、鹿児島県の評価について、
①九州新幹線全線開業で、郷土料理や黒牛、黒豚など地域の食材の評価が高まった。
②駅、ホテル、運輸機関、観光スポット等で地域の詳細な情報入手が容易にできることや顧客満足の高い情報が多くなっている。

ことなどです。

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一方、大変残念なことは、「地元の人のホスピタリティを感じた」評価がトップ10からはずれたことです。開業後には多くの観光客が訪れることが予測され、新幹線開業前後に県内7箇所で「おもてなしセミナー」や接遇研修を実施してきました。東日本大震災が発生して、観光客の動向が心配されましたが、昨年の5月から今年の5月までは、大きな伸びとなりました。

しかし、一部の宿泊施設やタクシー会社、休憩施設等では、観光客の増加に対し「おもてなしの心」が追いつかず、クレームが発生したのも事実です。このことが調査に反映しているのではと思います。

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ところで、新燃岳の噴火で観光客が大幅に落ち込んだ霧島温泉地域は、地域ぐるみで観光客をもてなし、じゃらんの「人気温泉地ランキング2012・満足度一位」に輝きました。

また、東日本大震災で観光客が大きく落ち込んだ東北4県(山形県、秋田県、福島県、岩手県)が、「地元のホスピタリティを感じた」調査の項目では、2位から5位となっており、必至になって観光客へのおもてなしをしていることが、顧客の心を捉えていると思います。
また、沖縄県は、2012年度調査の8つのテーマで、全て3位以内にランクインしており、県民あげて観光客の受入に当たっている姿勢が伺えます。

もう一度「おもてなしの心」の定着に向けてを職場、地域ぐるみでその取組を強化していく必要があります。

取組として

・リピーターを確保するには、自ら県内の多くの場所に出かけて鹿児島の魅力を知り、語る必要があります。特に大隅地域や離島の魅力が伝わっていない。

・「顧客満足」は当たり前であり、「琴線に触れる対応」で「顧客感動」が求められています。 鹿児島弁で語り、鹿児島に来たことを感じさせることも必要です。

・観光客が初めての土地で立ち寄るのは、空港や駅の案内所です。お客様が自分の方に歩いてきたら立ち上がり、「いらっしゃいませ」とまず挨拶することです。案内所の雰囲気 が、旅人が訪れる街の最初の印象となり。最高のホスピタリティは、お客様に言われる前に挨拶することから始まります。

・「もの」の価値の行き着く場所は「価格競争」になりがちです。「もの」を「こと」に変えて取り組むことが、「価格」を超えた「感動」を生みます。「こと」に必要な要素は、人の心であり、ホスピタリティの原点です。

・施設等においては、売上など業績による管理から、顧客満足度を従業員評価の中心に据 えることで顧客目線の経営管理が浸透し、お客様への「おもてなし向上」につながると思います。

・人は自分の名前を呼ばれた時に、喜びを感じるものです。事前に予約されている方には、名前で呼ぶことが安心感にもつながります。特に駅等での迎えでは、名前を書いたボードを見ると観光客は安心します。

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一度の出会いで感動を提供し、リピーターになってもらうためには、積極的にお名前を笑顔で呼んでいただきたい。サービスを受けるということは、当たり前の行為と消費者は捉えています。「サービス イズ アワ ビジネス」を基本にホスピタリティへの取組強化を、経営者自ら実践し、おもてなしの心を職場、地域ぐるみで醸成していくことが重要です。

顧客の不満を解消し、温かいおもてなしの心でお迎えするため、地域ぐるみの新たな取組が始まっているのも事実です。挨拶の励行や観光列車に手を振ったり、到着時に駅等での湯茶の接待も実施しています。また、新しい地域グルメの開発も進められています。

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最後に、観光客の地域の最終的評価は、そこに住む「人」です。一度訪れた観光客が、リピーターとなり、「日本にもこのように素晴らしい県があった」、「また訪れたい」、「友人に鹿児島の魅力を紹介したい」、「あの従業員のいるホテルにまた泊まりたい」と認識していただくよう、「おもてなしの心」の再構築を目指したいと思います。

鹿児島県の評価が2013年の調査では、トップ3に返り咲くよう皆さんで努力したいと思います。

参考:じゃらん宿泊旅行調査2012、おもてなしセミナー 2010

知名町・田皆岬の魅力~景観保護と観光振興~

2012年8月13日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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県本土から約552キロの南に位置する沖永良部島は、沖縄本島に近く知名町と和泊町の2つの町があり、琉球文化の流れをくみ、「花と鍾乳洞の島」として知られています。 世界的に有名なエラブユリをはじめ、色鮮やかな草花が一年中咲き、島内には300あまりの鍾乳洞があり、隆起さんご礁の海岸は変化にとんでいます。

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空港の近くにある「フーチャ」は、東シナ海の荒波に浸食されてできた大きな洞窟で、海が荒れると海水を10m以上も豪快に吹き上げ、ハワイにある潮吹き岩に似て見ごたえがあります。
また、ウジジ浜は巨大な隆起さんご礁の奇岩が並び、特に朝焼けの浜は幻想的で必見の価値があります。

鍾乳洞の代表格が「昇竜洞」で、長い時をかけて大自然がつくりだした彫刻は、東洋随一といわれる美しさで、鹿児島県の天然記念物に指定されています。一般公開されているのは、全長の3.3kmのうち600mのみとなっています。最近メディアで、昇竜洞の美しさが報道され、洞窟探検アウトドアスポーツ「ケイビング」の聖地として、注目を浴びている場所です。

南西諸島に多く自生しているのが、幸福をもたらす精霊が宿るといわれているガジュマルの木です。和泊町の国頭小学校校庭には枝ぶり日本一のガジュマルの大木があり、観光客にも公開されています。その際は当日学校の了解をとることが大切です。

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1898年に第一回卒業生が植栽したもので、高さは7mながら円形に広がった枝の直径は22mあります。枝は現在鉄柱で支えられており、木陰は涼しく、訪れたとき子供たちが木の下で無邪気に遊んでいる姿が印象的でした。

今回知名町の北西部に位置する「田皆岬」の景観づくりのセミナーに参加しました。

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奄美屈指の景勝地「田皆岬」は、東シナ海に突き出た高さ40m~50mの断崖があり、「奄美十景」の一つで、奄美群島国定公園にも指定されています。岬の周辺一帯は、侵食された石灰岩の石塔原で代表される「カルスト地形」になっており、遊歩道も一部整備されています。

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遊歩道沿いには奇岩が並び、まさに自然の芸術が鎮座しているように感じられます。また放し飼いされたヤギが野生化し、群れながら岩と岩との間を散歩している姿や青い海では、数匹のウミガメが遊泳しているのが印象的でした。田皆岬では、昭和40年代まで石灰岩が再結晶化してできるトラバーティン大理石が採取され、高級建築資材として利用されていました。今はその石切場の跡が残っており、貴重な産業遺産です。

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ところで知名町と田皆集落の人々は、この岬の魅力ある景観と自然を活かした観光地づくりを目指しています。住民が自ら地域づくりに動き出すことは、地域活性化の重要な事と考えています。セミナーに参加された方は、学校長、区長、Iターン者、歴史研究家、植物研究者、農業・商業従事者、青年団、婦人会等の方々でしたが、地域を何とか活性化しようという意気込みが伝わってきました。

セミナーで議論した事は
・岬の景観を保護するため、廃墟になっている施設(休憩、売店、レストラン)を整備するか、撤去する。
・岬に群生している貴重な植物の写真をとり、パンフレットを作成し観光客に渡す。
・看板は色、形、素材を統一する。藪を払い海を美しく見せる
・奇岩については公募してネーミングをつける。
・30分程度の遊歩道を整備し、海の傍には転落防止の枠を設ける。
・砕石跡の建物は産業遺産として残す。ボランティアガイドを養成し、ストーリーを語ることが大切。
・地域ならではの食・お土産を開発し、地域全体に経済効果をもたらす。
・景観を活用し、テレビ、映画、CMの舞台としてPRする。
・岬にある広い芝生、奇岩、海と空の青さ等南の島を活かす定期的イベント等の開催が必要。
・沖永良部全体で誘客に努める。

田皆岬に行く途中、車を止めるとユリ農家の方が農作業の手を休めて、収穫中のユリの球根を袋一杯プレゼントしてくれました。島の方々の温かさにふれた思いです。

田皆集落の皆様方の活動が、今後の地域の発展につながることを期待します。

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最後に景観についての考え方を整理したいと思います。
日本でも景観法が施行されましたが、その対象は多岐にわたっています。基本理念に <良好な景観は、国民共通の資産>であると位置づけられており、地域の自然、歴史、文化等、地域の特性や特色を伸ばす必要性が指摘されています。

景観を守ることは、観光まちづくりの根本をなすものと考えます。鹿児島市は錦江湾を はさんで、目の前に雄大な桜島がそびえており、その景観は世界に類の無いものです。しかし最近では至るところに高層ビルが建ち、いつのまにかその雄姿が見れないポイントが増えており、高さ制限の必要性を感じることがあります。有名な観光地に行っても、旗の林立や派手な商品広告にがっかりさせられます。

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歴史的遺産や美しい自然を望める地域周辺では、看板の大きさ、字体を統一することが景観を守ることにつながります。また、古い建物や庭園が残る場所では、広告物そのものを規制することで地域としての評価が高まり、落ち着いた雰囲気が観光客の人気となります。

景観を守ることの大切さについては、小さい頃から学校や家庭で教えることも重要です。また、景観保全に取組んでいる先進地を視察し、地域の景観保護についてどのようにして合意形成を進めているか研究する必要があります。美しい日本の原風景や歴史遺産、自然景観等を大事にする心を育てたいものです。

観光客に県境(けんざかい)はない ~地域連携の必要性

2012年8月6日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

江戸時代、他国から薩摩にいたる街道は、出水街道、大口街道、日向街道の三本が主要街道であり、関所では常に厳重な取締を行い他国との交流を制限していました。 中でも出水街道の「野間の関」は肥後に出入りする本街道として、出水の麓(外城)とともに肥後に対する防衛上からもっとも重要視されていた拠点でした。かつて坂本龍馬は、始めての薩摩を訪れようとした際には、野間の関所を通過することができず、長崎に引き返しています。

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この度出水市と水俣市は、観光面で相互に連携して活動する「県境観光連携協定」を結び、調印式がその「野間の関」で行われ、小生も立会人として出席しました。江戸時代には通過することが厳しかった場所での調印式は、これからの観光交流へ懸ける両市の想いを伝えているように思います。

出水市への観光客は、九州新幹線が部分開業した平成16年は伸びましたが、その後は苦戦し、全線開業の23年度以降は少し回復基調にあります。しかし3月のダイヤ改正で新大阪までの直通が17本に増発されたことを考えると、その効果を十分に活かしきれてないと思います。

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出水市の荒崎の田畑には、秋から冬にかけてツルが越冬し、その数は世界一で多くのツル見客で賑わいます。また武家屋敷は、知覧、入来と並んで伝統的建造物保存地区に指定され、薩摩の外城制度を残す貴重な文化財のひとつです。また、武家屋敷は規模が大きく見応えがありますが、敷地内の自動販売機は木の枠組みで囲み、宣伝広告板や旗は禁止するなど景観保護に努める工夫が必要です。そのことが魅力アップになります。

一方観光資源に恵まれながら、温泉や宴会施設を備えた和室の宿泊施設が少ないことで、観光客は日帰りとならざるを得ません。少しでも滞在時間を確保するためには、宿泊施設の多い地域との連携が欠かせません。

水俣市も九州新幹線の部分開業時に「新水俣」駅ができましたが、期待した程の観光客は増えていませんが、同市は、環境先進地「エコタウン水俣」として、全国的に脚光を浴びている市です。ゴミの分別収集は、教育旅行の体験メニューとして、いち早く取り入れられました。又、水俣湾を埋め立ててできた「エコパーク水俣」の入口には「バラ園」があり、600種類5千株のバラが栽培されており、訪れる観光客を楽しませてくれます。今後の観光客の増加に期待しています。

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市内には海辺の「湯の児温泉」と山あいの「湯の鶴温泉」があり宿泊施設は整っています。しかし一般に知られた観光地は少なく、宿泊客を増やす方策には、他地域との連携が欠かせません。
両市の連携は従来民間の組織が中心となって進められてきました。出水市元気再生創出協議会では、NPO法人環不知火プランニングと協力して、農家民泊体験と環境学習のプログラムづくりが進み、教育旅行の実績が上がっています。

新幹線の利便性を前面に出し、駅からスタートできるグリーンツーリズムのメリットが誘致をより可能にしており、24年度は11校、2,326名の農家民泊が決定しています。対象エリアは関西・中国地域で到着が他地域よりも早く、より充実した体験ができることが他地域との差別化につながっています。今後は簡易宿所の登録拡大やコンプライアンスの徹底により、学校に対して安全・安心をアピールする取組も求められます。

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また出水と水俣・芦北地域が連携し食のイベントやウォーキング大会なども開かれており、出水市の新ご当地グルメ「いずみ親子ステーキごはん」が、人気を呼んでいます。また、新しい出水ブランドの『いずみさん』の展開を進めており、6つの商品を選定しました。出水市の自然や文化を継承し、地域の食材にこだわった商品であり、観光客に指示されるものと信じています。観光振興には地域の食の魅力が欠かせません。

昨年武家屋敷の中にオープンした「麓・なごみ亭」は、竹林や四季の草花が咲き落ち着いた雰囲気を醸し出しています。大阪で予約の取れないフレンチレストラン「ル・クロ」のオーナーシエフ黒岩功氏がプロデユースしており、訪ねる価値があるお勧めの施設です。

九州新幹線全線開業を機にスタートした出水駅と蔵ノ元港を結ぶ「出水・天草ロマンシャトル」は、8月1日から1日5往復となり、天草地域との交流がさらに深まると思います。

また、海外からの誘客も重要です。昨年シンガポールの旅行エージェント招聘を実施しましたが、農家民泊や農園レストラン、肥薩おれんじ鉄道への期待が高かったと思います。

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肥薩おれんじ鉄道で両市は結ばれていますが、今後観光列車の運行も計画されており、車内では琴の演奏、日本舞踊、お茶、生け花、ゆかた着付等伝統的日本文化を堪能していただく仕掛けも重要です。3月25日から就航した台湾便や、香港からのチャーター便では鉄道の旅が人気です。

今後祭りやイベントでは、両市の若者の相互交流を積極的に進め、お互いの地域を知る機会を提供しなければなりません。子ども達の野球やバレーボール大会を開催することで、親の移動も多くなり、経済活動も活発になります。市民が協定の意義を実感することが必要と感じており、特に若者のリーダーを前面に出しPRをしていくことが重要です。

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ところで、各自治体とも人口の減少や税収の伸び悩みで各種の事業展開が厳しくなっています。観光振興に国の公募事業を活用するのも一つの方策で、国土交通省、農林水産省、経済産業省、総務省などの支援事業や、県の魅力ある観光地づくりにも積極的に応募して欲しいと思います。

九州観光推進機構の調査によると、首都圏女性の九州観光に対するイメージは、北海道、沖縄に比べてかなり劣っています。南九州の魅力ある観光ルートを定着するためには、県境を越えた連携が不可欠です。

昨年秋にはJR6社の「デスティネーションキャンペーン」が展開され、大きな成果がありました。遠方から来る観光客は広域に回り、県境の意識はありません。両市とも観光客誘致で不足する部分をそれぞれ補完し、協調しながら誘客に努め、一方では競争して地域を磨くことも必要ではないでしょうか。両市の活性化の方策の一つとして、今回の「県境観光連携協定」を最大限に活かすことが求められており、他の地域にも波及することを期待しています。

プロフィール

古木 圭介プロデューサー
鹿児島県
観光プロデューサー
古木 圭介
(平成29年4月より就任)
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