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「六月灯」を日本の祭りに~郷愁の思いがつのる伝統行事に触れる機会を~

2013年7月1日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 通勤の途中に見かける団地の庭先に植えられた朝顔が、一雨ごとに上に伸びていく姿が見え、花が咲くのも間近であることを感じます。七月に入り八坂神社を皮切りに県内各地の神社、お寺では「六月灯」が始まります。

照国神社六月灯(縦).jpg

 「六月灯」の始まりは、江戸時代2代藩主島津光久候が上山寺新照院の観音堂を造り仏像を安置した折、供養のために旧暦6月18日に沿道に灯籠を掲げ、道の明かりにしたのが始まりといわれ、鹿児島の夏の風物詩となっています。

 子供の頃浴衣姿に着替えて、金魚すくいや、かき氷、風船、綿飴、アニメの仮面等夜店が並ぶ参道を親に連れられて、そろぞ歩きした思い出があるのではないでしょうか。六月灯が始まると梅雨明けが間近となり、夏休みへ思いをはせる時期でもあります。

 ふるさとを離れた人々にとって「六月灯」は、郷愁を感じさせる場所であり、また子どものころを懐かしむ時間でもあります。今年も多くの場所で「ふるさとのかおり」を求めて出かける人が多いのではないでしょうか。


        ふるさとの 訛りなつかし 停車場の
                  人ごみの中に そを聴きにゆく
                                ~石川啄木~

         はなび花火 そこに光を 見る人と
                   闇を見る人いて 並びおり
                                 ~俵 万智~

 鹿児島市の照国神社の六月灯は、7月15日、16日の2日間にわたって開催され、境内には大小1000個あまりの燈篭が献燈され、沿道にはたくさんの夜店が並び、毎年多くの市民で賑わいます。その数は2日間で10万人を超え、県下最大の「六月灯」となっています。

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 ところで今年の5月に鹿児島でオールロケを敢行した「六月燈の三姉妹」がクランクアップしました。11月から鹿児島では先行ロードショーが行われます。

 大型ショッピングセンターの進出により客足が減少し、経営に苦しんでいる家族経営の菓子屋の再建物語です。複雑な家庭環境をかかえながら、一つの目標に向かって、夏祭り六月燈の夜にそれぞれが必至に起死回生の大作戦に出るが、その結末は・・・


 今、人口減少やモータリゼーションの発達、大型店の郊外進出、インターネットの普及等で消費構造の急激な変化がおこり、かつて賑わっていた商店街は苦戦を強いられています。 日本各地で同じような現象が起きていますが、映画は「六月灯」という地域に残る伝統的祭りを通して、家族の再結集を図り、お互いの信頼関係を取り戻す心温まる協奏曲です。

 主演は鹿児島出身の西田聖志郎が、他に、市毛良枝、吹石一恵、吉田羊、徳永えり、井上順等が出演します。市内の神社が舞台となり、地元の多くの人がエキストラとして映画づくりに参加しまし た。公開が楽しみな映画です。

六月灯3.jpg

 ところで鹿児島の「六月灯」は県外の方には意外と認知度が低いと感じます。京都の「祇園祭」、博多の「祇園山笠」、熊本県の「山鹿灯籠まつり」等に比べてもメディアに登場することもなく、地域の祭りに終わっている気がします。

 一か月以上にわたって県下全域で行われている祭りは、全国にはなく大変貴重な祭りです。旅行パンフレットでの紹介や宿泊施設、飲食店、運輸機関等では期日ごとの開催場所を記載したパンフレットの設置や、「県人会」を通して知らせることが、誘客につながるのではないでしょうか。

 特に7月は鹿児島県への観光客が減少する時期であり、鹿児島らしさを感じる「六月灯」をもっと活かして宿泊客を増やす努力が必要です。

子ども(火の島祭り).jpg

 鹿児島には「六月灯」以外にも様々な夏祭りがありますが、長年人々の生活や風習に育まれ、四季の風情を感じさせる地域ならではの伝統行事となっています。 特に夏休み期間の祭りは、都会に出た人々の帰省の時期と相まって、懐かしい人との再会など感慨深いものがあります。

 人口減少が進む中地域の守り神の象徴である神社・寺院に集まり、年一回の祭りを集落の人総出で準備しているのがこの頃の祭りの姿ではないでしょうか。地域に残る先祖崇拝、神々への感謝の心は根強いものがあります。伝統的祭りを引き継いでいくことで、ふるさと意識が目覚め、魅力ある地域として生き残っていけるのではないでしょうか。

六月灯2.jpg

 しかし最近の祭りは、厳粛な行事というよりも華やかさも組み込まれた祭りに変化しており、屋台(縁日広場)、特設舞台での歌謡ショーや、アニメのヒーローを中心としたキャラクターショーなども行われています。そのことは子どもの参加が増え賑わいの演出に繫がっているのかもしれません。

 今年の夏は、近くの六月灯に家族で出かけ、「ふるさとのかおり」を味わいましょう。そして秋に公開される「六月燈の三姉妹」のPRに努力したいものです。
  参考:「六月燈の三姉妹」のパンフレット

三県連携による教育旅行の誘致~各県の優位性を活かす~

2013年6月24日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

沖縄はすでに梅雨明けとなりましたが、本土では梅雨も中休み、紫陽花の花に雨が恋しいこの頃の暑さです。

紫陽花に 草子干す時 暑さかな  ~飯田蛇忽~

修学旅行(新幹線のホーム).jpg

5月の連休以降鹿児島中央駅は関西・中国地域からの修学旅行生で連日賑わっていましたが、春の集約臨時列車の運行も終わり、今一段落という状況です。

県内への平成24年の修学旅行の入込状況がまとまりました。学校数は674校で、前年の642校と比較すると32校増加し、人数(延宿泊者数)も94,348人で、前年か1,143人の増となっています。

地区別では指宿地区、鹿児島地区、種子・屋久地区が大きく伸びたのに対し、奄美地区、南薩摩地区が減少しています。奄美地区は台風の来襲でヨロン島の受入が大幅に減少したことが影響しています。

農家民宿お迎えの風景.jpg

南薩摩地区は、県内における農家民泊受入のパイオニア的な存在でしたが、県内全域で受入が可能になっていることで、分散化傾向となりつつあることが減少の要因です。大隅、伊佐地区は、従来修学旅行の行先でなかった地域ですが、民泊の受入態勢が整い増加傾向にあります。

子ども達は生物の生態、農産物の植え付け・収穫体験を通して、自然の営みの大切さ・不思議さに感動します。両地域は元来農業生産地帯であり、体験メニューが豊富でありこれからが楽しみな地域です。

垂水市漁業体験201306.jpg

最近の学校現場の修学旅行のニーズは、平和学習、農漁業体験、環境・自然学習、まちあるき等ですが、鹿児島県はそれに対応できる豊富なメニューが揃っており入込増の要因となっています。また、九州新幹線の全線開業による時間短縮効果も関西・中国地域からの誘客を可能にしています。

現在、熊本県、宮崎県、鹿児島県の三県で「南九州修学旅行誘致受入対策会議」を組織して、南九州への修学旅行誘致に努めています。三県全体での修学旅行の受入実績は、平成22年度187,571人となっています。

ちなみに長崎県は、433,710人、沖縄県は、426,163人で圧倒的に差を付けられており、今後三県の連携による誘致促進が求められています。

南九州修学旅行誘致受入対策会議2.JPG

ここ10年来首都圏、関西地域からの修学旅行の行先は沖縄が主ですが、九州方面では福岡~長崎~佐世保方面がメインのコースとなっています。長崎に行く理由としては、原爆に関する平和学習、ペーロン競争など海の体験、松浦、島原地区での民泊体験等が充実していることがあげられます。

また、永年に渡り、集約列車の運行や民泊の条件整備、市民を巻き込んだ「まちあるきボランティアガイド」育成等官民あげて修学旅行誘致に取り組んできたことが実績として表れています。

毎年東京、名古屋、大阪等で九州観光推進機構主催による「九州七県修学旅行誘致説明会」が開催されます。東京での説明会の終了後は、三県合同による教育旅行関係支店を訪問しPRと誘致に努めています。

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今後三県へ誘致するにあたっては、下記の点に配慮しながら誘致を強化する必要があります。まず首都圏のターゲットとしては、旅費と日程の関係で高校生が中心となり、輸送手段としては、航空機が主流となります。長崎は福岡空港を利用することで大量輸送が可能です。三県では往路と復路の発着地を変えるなど効率的なルート設定が可能です。

関西・中国地域からは九州新幹線が全線開業し、集約臨時列車の運行による時間短縮効果が顕著となり、高校、中学校とも誘致しやすくなりました。南九州三県ならではの教育ニーズにマッチしたメニュー提供や地域の特徴を活かしたコースを作ることが重要です。

ホーストレッキング(イメージ).jpg

阿蘇地域でのホーストレッキング、天草での化石採掘、水俣の環境学習、人吉のラフティング、宮崎青島でのマリンスポーツ体験、霧島や桜島での火山・防災学習、垂水での漁業体験、鹿屋・知覧での平和学習、内之浦や種子島での宇宙基地見学、鹿児島市での歴史探訪と多彩なカリキュラムが提供できます。

今後は日修協や全修協の組織を活用して先生方に、三県の新たな魅力を直接見ていただく機会を提供しなければなりません。また、エージェントの新人の営業マンを対象に現地視察を積極的に勧める必要があります。

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ところで、経費や日程に制限のない学校に対しては、離島の屋久島や種子島、甑島等をお勧めします。世界自然遺産の屋久島は環境学習に、種子島にはロケット発射基地がありSSH校を、甑島は地形・地質など特徴があり地学の学習に最適です。 最近では、海の体験を望む学校が増えており、農業体験の後、砂浜での貝殻採集、砂像作り、海に沈む夕陽の見学などが都会の子ども達は喜びます。

先日開かれた「南九州修学旅行誘致受入会議」では、バスとガイドさん不足が指摘されました。単県での解決は難しく、運輸局、教育委員会、学校、エージェント等に対し、実施時期の平準化、JR輸送の拡大などの要望が出されました。三県で関係機関への陳情も必要です。

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特に県内の春の学生の修学旅行は、関西・中国地域からの入込時期と重なり、バス不足に拍車がかかっています。課題解決の一つが、JRの運賃、料金が半額となる鹿児島中央発の集約臨時列車を活用できる仕組みをつくりあげることです。このことが行先の選択肢を広げ、バス問題解決の糸口にもなります。

新幹線を活用した修学旅行の実施に向けて、教育委員会の理解を得るための粘り強いアプローチが重要です。各県にとっては、実施時期の平準化と安定的入りこみが最も求められています。

最後に教育旅行の利点は、一度に多くの生徒が動く団体旅行であり、又、好、不況に関係なく実施され、しかも2年前に決定することから経営的にも経済的効果も大きいと言えます。

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教育旅行の際に取り入れられる農業体験などのグリーンツーリズムの推進は、地域活性化にも繫がります。 宿泊、運輸、食事等の機関にとって、修学旅行の受入は経営の見通しが立てられるなど 安定した顧客といえます。今の時代に修学旅行に変わる大型団体は見つかりません。それほど重要な顧客です。

修学旅行は1887年(明治20年)に始まり、教育課程の中でずっと続いてきた伝統行事で日本独特の文化の一つです。これからも子供達の思い出づくりの場として、大切にされる時間であり、「温かいおもてなしの心」で迎える環境づくりが必要です。 各県の優位性を尊重し、また、不足するメニューは補完し合い、新しいメニューの開発、共同セールスの実施等で三県への修学旅行の誘致に努めたいものです。

上海線の重要性について~環黄海経済地域の発展を学ぶ機会に~

2013年6月17日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 昨年から就航している格安航空会社ピーチや、中華航空台北線はこの1年順調に推移してきましたが、一方、上海線は現在週2便体制ですが、尖閣問題や環境問題等の影響もあり利用者が伸び悩み、フライトキャンセルの便がでるなど苦戦を強いられています。そこで県では、この路線の重要性に鑑み、上海派遣短期特別研修として民間の方々も含め1,000人を派遣する計画です。

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 上海線の重要性について述べてみたいと思います。日本の人口減少による経済規模縮小は明らかであり、アジアの時代における鹿児島県の将来の発展の基盤づくりとして、地理的優位性を活用した交通ネットワークの拡大が求められており、交流人口の拡大は不可欠です。

 また、農林水産物の輸出促進は、アジアの活力を取り込み、地域活性化の観点から極めて重要なことです。上海は大きな経済成長が見込まれる環黄海地域(中国では、北京市、天津市、河北省、遼寧省、上海市、江蘇省、山東省。韓国では釜山、仁川、光州、太田、京幾道、中清南道、済州道、全羅北道、慶尚南道)の主要都市の一つです。  南に開かれたアジアの玄関口として、上海はその中心に位置し、また、鹿児島県と同緯度にあり、100分程度で行けることからも、これから益々重要な都市となります。

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 中国の環黄海地域の沿岸部には、3億人の人口がおり比較的富裕層が多いとされており、3千万人が海外旅行に行くともいわれ、日本への渡航者も増えています。これからも医療、観光、物流等上海との交流は、鹿児島として大きな経済効果が期待されます。特に鹿児島が誇る「温泉」、「世界自然遺産」、「おもてなし」、「食」、「ゴルフ」等は、魅力です。

 鹿児島から上海経由で中国の主要都市、ヨーロッパ各地へも行けます。また、全線開通した九州新幹線と福岡空港・鹿児島空港を組み合わせることで、ベトナム、タイ、シンガポール、台湾、ソウル、香港等アジアの主要都市との交通ネットワークが形成されます。

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 今回の研修で、発展する都市上海の姿をつぶさに勉強し、人脈を広げることで鹿児島との大きな経済交流が広がります。また、教職員にとっては、中国3千年の歴史に触れ、古い中国と新しい中国の姿をみて、将来の若者の交流に繋げて欲しいと思います。路線開設当初は多くの青少年交流団体が往来し、両国の絆を強くしました。

 また、「歴史部会」、「地理部会」、「書道部会」、「国語部会」等教職員の専門分野の訪中団も活発でした。修学旅行先として、県内の多くの高校が上海を訪れ、事前の生徒同士の交流や学校訪問も行いました。観光は平和のパスポートです。中国への再訪を期待したいと思います。

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 ところで上海周辺には、歴史的遺産を始め多くの観光地がありますが、その魅力についてご紹介します。上海市から1時間の距離にある蘇州は、絹織物の一大産地でシルクの工場が多いことで知られています。また、運河による水運が生活に溶け込んでいることから、旧市街地及び周辺の水郷地帯を含めて運河が多く、「東洋のヴェニス」とも呼ばれます。


 また、世界遺産の拙政園は池や堀が多くあり、四季の草花が池に映え、その景観を参考にする日本の造園業者の視察が絶えません。虎丘は、8角7層の虎丘塔からなり、現在少し傾いているため「イタリアのピサの斜塔」と比べられます。 高校の国語の教科書にも出てくる寒山寺の旅情を詠った「楓橋夜泊」の漢詩は有名です。

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 江蘇省の省都である南京市の郊外には、広大な敷地に中山陵がありますが、近代中国建国の祖孫文の墓陵です。孫文は日本に通算約9年間滞在していたこともあり、日本での生活を支えていた人は千人をこえていると言われており、彼の人物像が日本でも語り継がれています。

 「無錫旅情」で有名な無錫は、太湖に接し典型的な中国の古い城壁に囲まれた都市で、日本からの進出企業が多いことでも知られています。 杭州は、かつてマルコポーロが東洋一美しい街と賞賛した中国八大古都の一つです。市の西側には世界遺産の西湖があります。

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 上海は、中華人民共和国の経済の中心地であり、その発展にはすさまじいものがあります。京セラやSONY、トヨタ等日本の一流企業が進出し、鹿児島県人も多く働いています。中心部にある外灘(ワイタン、バンドとも呼ぶ。)は、昔の面影が残る黄浦区にあり、上海随一の観光エリアです。外灘の「観光地下トンネル」の演出には驚かされます。

 また、上海は、租界時代の行政と経済の中心であったことから、現在でも金融関係や官庁が多くありますが、大型のブランドショップや洋装店、レトロな雰囲気を活かした飲食店が多く、おしゃれな街に変貌をとげています。最近の街づくりも参考としたいものです。

 さらに、空港から市内までリニアモーターカーで結ばれており、時速400キロの高速鉄道の快適さを堪能して欲しいと思います。また、高さ492m、101階を誇る上海ヒルズからの眺望は必見の価値があります。

 小生は、これまで中国には40数回渡航し、変化する中国の姿を見てきました。鹿児島とほぼ同じ緯度に位置する上海は、東京より近く、気軽に行ける国際観光都市です。今、アジアの拠点である上海とのアクセスが無くなると、鹿児島の将来にとって、大きな損失となります。上海線の路線維持については、官民挙げての支援が必要であり、相互交流が重要です。

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 県交通政策課にある鹿児島空港国際化促進協議会(099-286-2459)では、鹿児島空港国際線ご利用の6人以上の団体・グループに、渡航経費の一部を助成しており、6月から補助金額も増額されています。県民の皆さんもこの補助制度を利用して、NOビザで行くことができる上海へでかけませんか。                     

大隅半島と薩摩半島を繋ぐ取組~田舎の魅力発信とアクセスの整備が課題に~

2013年6月10日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 拠点地域と各地域双方の活性化を目的としたツアーの第2弾を実施しました。今回は、指宿発の広域観光周遊ルート(南大隅方面)モニターツアーを実施し、指宿のホテル、運輸、メディア、行政関係者50名が参加しました。行きは山川港から新造船「フェリーなんきゅう」(136トン)に乗船しました。

 船は大型バス2台と乗用車6台、旅客95人が同時に乗船出来るようになっていますが、客室に全員が入れるスペースがないために、半分近くは到着までの50分デッキで過ごすことになります。冬場や年寄りが多いツアーへの対応が課題となります。

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 根占港からバスに分乗して、無料開放となった佐多岬を訪ねました。あいにくの雨と突風で、灯台も煙に巻かれている感じでしたが、九州本土最南端の自然の姿を見ることができたように感じます。展望台や廃墟となっていたレストラン跡地は更地となり、本来の自然の姿に戻っていました。建物がないことが逆に新鮮に映ります。

 霧に煙っていた佐多岬灯台は、九州本土最南端の太平洋に突き出した半島の先端にあり、「日本の灯台50選」に選ばれています。太平洋の黒潮が押し寄せる海は荒く、錦江湾や南の島へ行き交う船舶の目印として重要な役割を果たしています。対岸には薩摩半島の開聞岳を望み、東シナ海に沈む夕日は格別です。晴れた日には、種子島、屋久島を望むことができます。岬には下記の句碑があります。

 「黒潮の海に昇りし天津日は 佐多乃岬を日ねもす照らす」 川田順

 ところで佐多岬は、かつて「宮崎~日南海岸~鹿屋~佐多岬~根占~山川~指宿」を巡る新婚客のゴールデンルートとして賑わいました。その後新婚旅行が海外に移り、団体旅行も激減し、また、フェリーの休止等もあり佐多岬への観光客も減少し、広範囲に影響がでてきました。

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 しかし、団塊の世代の退職や国内旅行の個人化・多様化が進み、今では交通の便が悪く秘境と呼ばれる地域が脚光を浴びています。その意味でも佐多岬の魅力づくりが、宿泊者の多い指宿方面からの観光ルート定着につながり、双方にメリットが出てくると思います。今年度は県の予算で調査費が付いており、佐多岬の課題が改善されることを期待しています。

 次に訪ねたのが、雄川の滝です。県の魅力ある観光地づくり事業で、錦江町側から滝を臨む場所に展望台が設置されました。南大隅町側からも行くことができますが、駐車場までの道路の拡幅が課題です。川岸を歩いて滝まで行くこともお勧めします。

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 昼食は花瀬公園でした。地域興しグループ「うんめもんの会」の方々が、地元で取れた食材を中心に盛り付けた「竹皮弁当」で環境にも配慮した包装でした。旅の楽しみは食であり、やはり安全・安心が旅人の心に残るのではないでしょうか。

 花瀬には、歴代の薩摩藩主が訪れたお茶亭跡や、2kmに及ぶ千畳敷の石畳があり、春から秋にかけて花や紅葉が水に映えて一段と魅力的になります。

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 その後高さ25m、幅30mもある神川の大滝を訪ねました。雨の影響でいつもより下り落ちる水量が多く一段と迫力を感じました。これからの季節、近くの「大滝の茶屋」は、そうめん流しで賑わいます。是非大隅地域で訪れたい場所です。

 港に向かう途中に二つの鳥居が並ぶ「諏訪神社」がありますが、参拝者が増えています。吾平山上陵と諏訪神社、佐多岬にある御崎神社の3箇所をパワースポットとして売りだすのも期待がもてます。かつてヒットした「岬めぐり」にあやかり都井岬、佐多岬、長崎鼻を巡るツアーの復活も楽しみです。

 帰路、根占ドームで「NPO法人愛・あいネット」の皆さんによる「地元産の十割そば」の提供があり、参加者一同大感激です。移動販売を通して、障がい者と健常者との交流を増やし、健常者の方々の「心のバリアフリー」の推進と同時に障がい者の方々の「社会参加の意欲」の後押しに繫がると事業を推進しています。地元産の食材にこだわり、高齢化対策にも貢献している事業に感動しました。

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 最後の「なんたん市場」では、参加者のほとんどが地元の旬の魚や野菜を買いもとめていました。旅先にこのような直売店があると、立ち寄りたくなります。直売店の職員も多くの物産が売れたことに喜びを感じ、全員が手を振って見送りしてくれました。地域の温かさに触れた旅でした。

 北海道の最北端宗谷岬はこれからの季節、本州方面から多くの観光客が訪れます。最北端と最南端を訪ねた方には、抽選で記念品を渡す取組を両地域で計画し、発信すればおもしろいと感じます。九州本土最南端の地に来たことを実感できる岬でありたいと思います。

 ところで人口と観光客の減少は、地域経済にも大きな影響を与えており、観光振興による交流人口の拡大が求められています。今、日本人の国内旅行は成熟し、旅行スタイルも変化してきており、地域のニューツーリズムが注目をあびてきています。グリーンツーリズム、ブルーツーリズム、エコツーリズム、まち歩きなどがその代表です。

 従来の物見遊山的な観光、温泉での豪遊などから、個人の趣味や価値観を大切にする時間消費型の観光スタイルに変化してきています。田舎の良さを活用した旅が求められています。

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   大隅地域は海、山、川の豊穣な自然がつくりだした食の宝庫であり、スローライフ、スローフードに最適な地です。 今グリーンツーリズムの体験は、教育旅行には欠かせない素材です。担い手の育成を図 り、地域をコーディネートする人の存在が大事になってきました。

 新幹線の全線開業で鹿児島への観光客は伸びています。鹿児島市から垂水経由で大隅地 域を観光して1泊し、翌日は内之浦、田代、佐多岬などを廻り山川に渡るコースも出来るようになりました。大隅地域で活用できる「無料レンタカープラン」も是非利用してもらいたい。

 今国内旅行の7割は個人旅行です。公共交通の整備されていない観光地へは、車での移動が主流となりますが、移動の足のない客には目的地までの利便性を図ることが大切です。そのためには、港を集合場所として、観光地までの巡回バスやタクシープランを充実させることも一つの方法と考えます。指宿のあるホテルでは、プランを作り宿泊者に案内しています。

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 県内を回って感じることは、大隅半島に行ったたことのない県民が多いことに驚かされ ます。日本の原風景が至るところに残る大隅路を訪ねて、地域の生活・文化にも触れてほしいと思います。指宿地域と大隅地域が連携し、それぞれに恩恵をもたらし持続できる観光地になるには、アクセスの改善と行きたくなる地域としての魅力の発信が今以上に求められています。  

プロフィール

古木 圭介プロデューサー
鹿児島県
観光プロデューサー
古木 圭介
(平成29年4月より就任)
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