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「第6回かごしま観光人材育成塾」を開催~おもてなしの極意は人の感動にあり~ 

2013年12月2日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 今年もカレンダーが1枚となり、街角にはジングルベルの音が賑やかな季節となりました。年末年始は日並びが良く、観光関連業界の方にとっては明るい話題ですが、おもてなしの心を持って対応したいものです。

 県内の観光の概況は、宿泊客数で見ると5月から前年を越えて、9月までは前年をクリアーしており高止まりで推移している状況です。今年は奄美群島日本復帰60周年、屋久島世界自然登録から20年、イプシロンの打ち上げ成功や佐多岬の無料化等による大隅地域への観光客の増加、関西、中国地域からの修学旅行専用列車の運行による教育旅行の増加、インバウンドの好調等に支えられています。

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 また、「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連施設」が、ユネスコの世界文化遺産への推薦が決定し、2015年に正式登録を目指しています。県内には5つの遺産群がありますが、県民がその価値を認識し、明治日本の原動力になった薩摩藩の偉業を世界にPRして行かねばなりません。

 ところで日本の人口はこれから減り続け、少子高齢化が顕著となり、鹿児島県では30年後には、約40万人減少します。地域の活性化には交流人口の拡大が不可欠であり、観光振興による地域づくり・観光地づくりが求められています。

 観光客誘致には、地域素材の商品化やPR戦略が不可欠であり、人材育成も欠かせません。その手法を学ぶ一つとして、今年も「第6回かごしま観光人材育成塾」を開催しました。従来の2日間全講座受講から、希望の講座だけでも受講できるように変更したこともあり、過去最高の86名の参加者がありました。

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 今年の講義の主眼は、明治維新150周年を5年後に控えて、かごしまの魅力をどのようにPRし、誘客に繋げていくかでした。 全国的に話題となっているJR九州の列車「ななつ星in九州」の取組や、観光振興に特に力を入れている薩摩川内市の観光客受入態勢づくり、誘客に欠かせないおもてなしの心の極意等について学ぶ7つの講座を開催しました。



 まず、県観光課の森対策監が「鹿児島の観光の現状と佐多岬の今後の展望について」、5月から宿泊観光客が増加している現状や、外国人誘致の重要性についての説明がありました。九州本島最南端の佐多岬については、無料化以降前年の2倍近い観光客が訪れている現状や今後の開発・整備についての概要の報告がありました。

 特に最南端佐多岬への入込客を増やすことが、大隅地域だけではなく、薩摩半島の活性化につながるとの指摘がありました。かつての賑わいが復活すべくこれからの整備が楽しみです。

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 第1講座は、霧島山上ホテル営業支配人の内山竹文氏が「まちの駅ネットワークを活かした地域づくり」について講演しました。
 まちの駅は、「みちの駅」に比べて認知度は低いものの、設置数は138駅にもなり、今では観光を強く意識した取組も行っています。「休憩」、「案内」、「交流」、「連携」のルールのもと、観光客が迷った時に何でも相談できる「よろず相談所」の役割も果たしています。

 地域コミュニティの活性化のために「ストリートピアノ」を11台寄贈するなど、社会奉仕にも取り組んでいます。また、「まちゼミ商店塾」を開催し、人と人、そして経済が循環する活動等まちづくりに取り組んでいます。200の駅づくり取組むという力強い発表もありました。県内全域のネットワークを活かし、地域産品の販売や観光PRなど大きく飛躍できる仕組みが出来上がりつつあると感じます。

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 第2講座は、有限会社 オフィスフィールド代表 砂田光紀氏が、「★鹿児島ななつ星プラン★民官チームで描く最良の観光未来像」として鹿児島をどのようにデザインしていくか」について講演しました。砂田氏は、来年いちき串木野市にオープンする「薩摩藩英国留学生記念館」を手掛けており、1865年の旅立ちを思い出させるそのコンセプトについて詳しく語りました。

 また、観光が「地域を開き発展の一助となり、定住促進につながり雇用や生きがいを生み出す。住民とっても快適な豊かな生活がそこにあることが求められる。デザインが観光の真の価値をもたらす」と携わる人の周辺や立ち振る舞いが問われると厳しい注文を付けました。海外の街並や伝統的文化財を例に「古きを守り、新しきを拒まず」の姿勢を貫くことが大切であると説いていました。

 仙厳園地域一帯の「近代化遺産群」、が世界文化遺産に推薦することが決定した今、都市と地方の未来像と「鹿児島ならでは観光」の創出について考えさせられる講演でした。

 第3講座は、山口県観光連盟の専務理事松井邦昭氏による「薩長連携による観光振興と紙芝居を通した地域づくり」でした。薩摩と長州は明治維新に深く関わり、また観光客誘致においても連携した取組を推進しています。

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 紙芝居への取組は、平成20年から始まりイベントへの参画、ボランティア活動を通じての地域振興に役立てています。また、紙芝居を通じて高齢者の生きがいや社会参加の促進等幅広い波及効果が表れています。


 現在我々の日常生活における娯楽は、テレビや映画、ゲームなど一方向のメディアです。紙芝居は読み手と観客の双方向のメディアであり、特に人間的な温かさが必要であり、そこに詠み手の演技力も問われますが、松井専務の演じる姿は、プロ顔負けの演技でした。鹿児島でも各地に残る民話を紙芝居に変えて伝えるのも一つの方策ではないかと思います。  

 第4講座は、JR九州のクルーズトレイン本部次長の仲義雄氏が、『JR九州の地域づくり戦略「ななつ星in九州」』について講演しました。

 10月15日からスタートした列車は、3泊4日コースの最高金額が55万円もする豪華な旅ですが、来春6月の出発分までは完売となっています。なぜ今この豪華列車に人気が集まるのか、JR九州の熱い想いが語られました。

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 唐池社長と水戸岡デザイナーの二人三脚での一流・本物へのこだわり、車内で使われている調度品の選択にも熟慮を重ね、微塵の妥協も許さない姿勢が随所に見られます。九州という地を売るため、ターゲットはヨーロッパの客層であり、そのことが九州各県のPRにつながるという壮大な考えが、ななつ星の魅力を作り上げていると感じました。

 ななつ星の構想発表以来、メディア効果は100億円を超え、製造コスト33億円の3倍以上となっています。社員教育に1年を重ねるなど、おもてなしの心にも細心の注意を払う姿勢にも感激しました。今後どのように進化していくのか夢多い列車です。

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 第5講座は、観光ネットワーク奄美の水間忠秀氏が、「奄美のエコツアーの歩みと世界遺産登録に向けた取組」について講演しました。奄美群島は、特異な動植物群の生態系が保護されていることから、本年2月「世界遺産暫定一覧表」に「奄美・琉球」を記載することが決定しました。

 水間さんは日頃から、観光客に美しい奄美の自然の姿を案内しながら、動植物の保護に努めています。自然と観光が共生することの大切さを強く訴えており、小さな虫一匹も轢かないように車の運転にも気をつけている姿勢が講義の中で感じられました。世界遺産登録に向けて今後の活動が楽しみであり、県民ももっと奄美の自然の美しさを学んで欲しいと思います。

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 第6講座は、「薩摩川内市のシティセールス~観光による地元盛り上げ作戦」と題して、薩摩川内市の古川英利氏が講演しました。薩摩川内市は九州新幹線の終着駅一つ前の駅であり、全線開業後も苦戦が予想されていました。


 地域の活性化には交流人口の拡大が不可欠であり、周辺の観光資源の磨き上げと商品化が必要と考え、着地型観光の推進(きゃんぱくの開催)、甑島の商品化、観光人材の発掘、観光協会と特産協会が合併した株式会社の設立、高速船の運行(24年春予定)等新しい取組を次々に推進しています。地域サポーターが4300人を超え、住民を動かし地域を愛する人が育っていることが薩摩川内市の強みです。

 これといった観光の目玉がない中で、地域をいかに盛り上げるかの取組がひしひしと伝わってくる講義内容でした。自治体からの参加した人にとって良い研修の場になったと思います。

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 第7地講座は、「おもてなしの極意」と題してのトークショーでした。旭交通のドライバーで、顧客から多くの礼状が寄せられている稲満和明氏と、JTBの顧客満足度90点以上を13年連続受賞している城山観光ホテルで、フロント業務を担当している西田朱里さんです。お二人とも常におもてなしの心を持って顧客に接しており、企業の信頼度アップにも貢献しています。

 稲満さんは日頃から地域の観光地を廻り勉強し、各種の試験も受けて資格を取る等自己研鑚に努めています。知覧の特攻記念館にある兵士の手記を暗記して、車中で観光客に語る等涙ぐましい努力をされています。その一端を会場でも披露されました。 また、自分はタクシードライバーとして、当然のことを自然に日々行っており、そのことで評価されることについて謙遜されていました。

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 西田さんは、忙しいフロント業務でもいつも笑顔を絶やさず、外国語の会話や業務知識の習得に勤しんでいます。クレームへの的確な対応処理、帰路につく外国人に対して航空券の手配等献身的に対応し、感謝の礼状が届くなどおもてなしの達人でいらっしゃいます。二人とも常に満足を超えた感動・感激を提供しています。このような従業員が増えて欲しいと願うばかりです。

   今回の講師の方々はそれぞれの部署で活躍され、経験とそれに裏打ちされた話は、皆さんの心を捉え、これからの業務に必ず役立つものと信じます。 地域づくりには、人材の育成が重要と考えています。今まで人材育成塾を受講した方の多くが、それぞれの地域で頑張っていることは、鹿児島の観光にとって大きな財産となっています。

   2014年には「薩摩藩英国留学生記念館」のオープン、甑島航路への水戸岡氏デザインによる観光高速船の運航、2015年には「国民文化祭」の開催、2016年は薩長同盟、霧島への坂本龍馬新婚旅行から150年と続きます。 そして2018年が明治維新150周年の節目の年になります。それぞれ節目の年でイベントが予定されています。

 この講座を受講された方々が、地域でのイベントに積極的に参画し地域活性化に取り組んでいただけたら幸いです。来年の参加もお待ちしています。

第30回国民文化祭・かごしま2015の開催の意義とは~文化を県民の身近なものに近づける好機に~

2013年11月25日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 甲斐の守護大名であり、軍旗に「風林火山」の文字を掲げ「甲斐の虎」の異名を取った武田信玄(晴信)は、領国経営に優れた戦略家といわれています。

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 「甘柿も渋柿も、ともに育てよ」、「渋柿は渋柿として使え、継木をして甘くすることなど小細工である。」、「晴信の弓矢は欲の為でなく、民百姓を安楽にするためだと民に知らせれば、わしが軍を進めるのを待ち望むようになる。」、「人は城、人は石垣、人は掘、情けは見方、仇は敵なり」等多くの名言を残しており、現在でも通用する組織運営や人身掌握の術を語っています。

 甲府駅前には高さ3.1mの台座の上に、同じ高さの信玄侯の銅像が鎮座しており、像は川中島の戦いの陣中における姿を模したものといわれ名将にふさわしい堂々とした姿です。

 その山梨県で「第28回国民文化祭・やまなし2013」文化まるごとフェスティバルが開催され、第30回鹿児島大会の参考にするため視察に出かけました。富士山が世界文化遺産に正式に登録されたこともあり、夏は観光を兼ねた参加者が多かったと関係者が語ってくれました。

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 県立図書館会場で開催された茶道の祭典には、多くの県民が訪れており、日本古来の文化に親しんでいるようでした。隣の会場では華道の31の流派の作品の展示がされており、足を止めて静かに観賞しているご婦人方を多く見かけました。


 また、初めての経験でしたが、公益財団法人「お香の会」による香木の香りを聞く会に参加しました。香二種四包を聞き、各々の聞きに応じて名目を書き添える優雅な香の世界に浸る遊びです。  次の歌が証歌となっています。

        秋風の 吹きあけにたてる 白菊は
                花かあらぬか 波の寄するか
                          ~古今集 菅原道真~

 めったに体験できない伝統文化ですが、「公益社団法人お香の会」の事務局長は鹿児島の大会にも参加したいと意欲を語ってくれました。鹿児島での再会が楽しみです。

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 秋のステージ総合フェスティバル閉会式は、富士吉田市で開催され、大会の裏方で活躍した県民やボランティア団体、次期開催県秋田県の関係者の姿がそこにあり、富士山のモチーフやナマハゲに扮した人物も登場し印象的なフィナーレでした。


 来年の開催県に大会旗が引き継がれ、10ヶ月にわたる大会の幕が下ろされました。 来年の秋田での閉会式では鹿児島大会を印象付け、参加したくなる余韻を残す演出が必要ではないかと思いました。

 鹿児島大会の意義は、県民一人ひとりが先人が創り上げてきた誇るべき鹿児島の風土や文化芸術に触れ親しむなかで、我々が「違い」に寛容で、進取と含羞の心を併せ持つ「鹿児島県民」であることへの誇りを共有し、再認識することです。

 また、県、国境を越えた地域や人々との連携交流などから生まれる新たな文化芸術の創造や脈々と受け継がれてきた伝統的な文化芸術の価値や重要性を尊重しつつ、未来へと繋ぐ契機となるような国民文化祭にしたいとしています。(大会要綱から抜粋)

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 開催期間は、
(1)主催事業 2015年 10月31日(土)~11月15日(日)[16日間 ]
(2)協賛事業 2015年  7月 ~ 11月 [5か月間 ]です。
 テーマは、「本物。鹿児島県」~文化維新は黒潮に乗って~で、  愛称は、「ひっとべ!かごしま国文祭」となっています。

 県内全ての43市町村で何らかの文化イベントが開催されることから、地域での国民文化祭への関心を高めることが第一です。各自治体ではすでに実行委員会がスタートしていますが、来年の秋田大会には関係者が参加し、多くの来訪者の誘致につなげてもらいたい。

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 ところで文化イベントは、集客が難しい大会です。そのためには、地域の自然や文化、 周辺の観光地などを定期的に所属団体にPRするなど情報発信力が問われます。さらに、参加者との事前の接点を増やす努力や「お茶一杯の心」、「お客様に手を振る」等地域のおもてなし醸成の機運を高めていかねばなりません。

 鹿児島大会は離島でも各イベントが開催されることから、大会スローガンにある黒潮に乗ってのイメージを大切にしたいと思います。県内には28の有人の離島がありますが、それぞれ独特の文化や風土があり、観光を兼ねて多くの大会参加者が島に行くことが考えられます。世界自然遺産、ロケット基地、島唄、美しいサンゴ礁の魅力等が旅情を誘います。

 また、2015年は、「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」が世界遺産登録を目指しています。鹿児島の近代化産業遺産が5つ含まれており、関心を集めることになります。国民文化祭において、薩摩藩が日本の近代化に貢献したストーリーを発信し、その価値を知るいいチャンスにしなければなりません。

 教育の現場でも、地域の文化を知る機会を増やし郷土愛を育てるきっかけにしてほしいと思います。開催まで県民の関心をいかに引き寄せることができるかが問われています。

地域を知ることの大切さ~故郷の山に登りかごしまの魅力を体感しよう~

2013年11月18日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 霧島市の牧園町にある霧島ホテルでは、従業員有志によるトレッキング部が発足し、火口湖めぐりや韓国岳登山、大浪の池めぐりを実施しました。部員は現在15名で、フロント、客室、調理、警備等管内の多くの部署から集まっており、職員の結束とホテルのPR強化につながると信じます。

 霧島に住みながら初めての登山の方もおり、今後宿泊客に対し積極的な情報伝達ができるのではないでしょうか。特に若い職員には山歩きの注意点やコースの特徴など自らの足で体験できたことは、大きな収穫と思います。 霧島には温泉の魅力に惹かれた観光客が大半ですが、連泊して楽しんでいただくには、職員自らが霧島山の季節ごとの魅力を知り、それらの魅力を職員自らの言葉で語ることが大切です。

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 また、観光客は施設の魅力ではなく、地域の魅力に惹かれます。職場などで、観光客を温かくお迎えする心を醸成するなど、地域総力戦で取り組む必要があります。来られた方々が、「また来たい」と感じられる魅力ある地域であり続けることが大切です。霧島ホテルの動きが霧島地域全体に広がる取組になることを期待します。

 リピーター創りには強力なリーダーシップのもと、人材育成も欠かせません。なお一層のサービス態勢づくりが必要であり、日頃と変わらないおもてなしが何よりも求められています。

 一方、宿泊施設に恵まれた鹿児島市、霧島地域、指宿地域から、周辺地域に観光客を広げることができるかが、鹿児島への観光客の安定的確保につながると信じます。 誘客活動は激化しており、常に新しい感動に出会えるというワクワクする情報を提供し ていく必要があります。

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 観光客が求めているものは、地域のオンリーワンの情報です。「今だけ、ここだけ、あなただけ」の情報をタイムリーに届けて行くことが重要です。生産者が運営している直売店や居酒屋など地域を感じる店等、「本物。鹿児島県」の魅力を積極的に提供することが求められています。

 県のホームページを英語、韓国語、中国語(簡体語、繁体語)の表示にしていますが、 海外からのアクセスもかなり増加しています。バナーを増やすなどワンストップで検索でき、シームレスな情報提供に向けて努力していきたいと思います。

 毎年2,000万人を超える入場者数を誇る東京ディズニーランド(TDL)は、リピーター率が、2回以上で98%と驚異的な数字となっています。社員、アルバイトが同じ気持ちで、入場者(ゲスト)に対し「おもてなしの心」をもって接しています。常に社員教育に力を注いでおり、「子供とは同じ目線で話をする」、「トイレは子供が遊べる状態に掃除を徹底する」、「誰に尋ねても園内のことは答えることができる」等サービスに対する徹底がなされています。来園者に常に感動を与える姿が支持を得ています。

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 県と観光連盟では観光関連業界の皆様を対象に、「おもてなしの心」を徹底すべく研修会を定期的に実施してきました。サービスの改善に努めている機関も多くありますが、クレームが発生しているのも事実です。乗客に名前を名乗り、挨拶を励行し評判の良かったタクシー会社が、最近では挨拶もしない運転手が多くなっているのが気になります。 「観光立県」の確立には、県民一人ひとりの「おもてなし」が不可欠です。

 鹿児島県は南北600キロメートルに及び、鹿児島市から大阪市までの距離になり、また、有人の離島が28あるなど観光資源は豊富です。子どもたちは学校を卒業すると県外の大学や企業に就職する生徒が多く、ふるさとを離れてしまいます。生まれた土地の魅力をできるだけ多く吸収して旅立ち、県外でのPR役を務めて欲しいと願っています。

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 ところで鹿児島県の人口は、1956年(昭和31年)には210万人でしたが、2010年(平成22年)の国勢調査によると、約170万人となっています。これからも人口は減少し、2030年には145万人になると予想され、25万人も減少します。 これからは交流人口の拡大は地域活性化に欠かせない取組です。

 地域に行くと、自分の町には観光客が来るような魅力はありませんと、そっけなく語る人が多いのは残念なことです。日本人の国内旅行は成熟しており、温泉地で豪遊し、名勝旧跡を主とする観光客は減少しています。観光客は、地域に残る行事、祭り、神社・仏閣、地元の人が食べる食材や居酒屋、田舎流のおもてなし、地域で輝いている人等に魅力を感じます。住民が地域を知ることにもっと力を注ぎたいものです

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 新規顧客の開拓には、リピーターを確保するより大きなエネルギーと時間を要します。来ていただいたお客様を大事にし、リピーターに変える努力が今必要です。都会からの誘客に力を注ぐことも欠かせませんが、まず地元の客を大事に、何回も訪れたくなる施設・地域になることが求められています。


 2年後に世界文化遺産の登録を目指す「集成館事業」の価値を県民が知り、「日本近代化の原点は鹿児島にあり」と世界の人々に伝えることが、県民としての誇りであり永続的な誘客につながると考えます。

 民俗学者で知られた宮本常一は、父から旅に出たら地域の一番高い所に登り、町の景観を確かめよと諭されたという。皆さんも故郷の山に登り、住んでいる我がまちの魅力を確認しませんか。

  ふるさとの 山に向かひて 言ふことなし
               ふるさとの山は ありがたきかな  ~石川啄木~

心がなごむ時を持とう~見えないものに感謝する心の大切さ~

2013年11月11日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

     けふもまた こころの鉦(かね)を うち鳴らし
                    うち鳴らしつつ あくがれて行く
                                     ~若山牧水~

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 会社の行き帰りに利用するバス停の近くに、小さなお地蔵さまが立っています。誰が掃除をしているのか、いつも小さな季節の花が飾られています。私は毎朝必ずこのお地蔵さまに手を合わせて、「いつも見守ってくれてありがとうございます。今日も一日よろしくお願いします」と数秒頭を垂れます。こうすることで、なんとなく心が落ち着き安心して一日がおくれるのです。


 松尾芭蕉の「奥の細道」では、旅に誘う神様として道祖神が冒頭に登場します。

 月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人なり。舟の上に生涯を浮かべ、 馬の口とらへて老いを迎ふる者は、日々旅にして、旅を栖とす。・・・・途中略
 やや年も暮れ、春立てる霞の空に、白河の関越えんと、そぞろ神の物につきて心を狂はせ、道祖神の招きにあひて取るもの手につかず、ももひきの破れをつづり、笠の緒つけ替へて・・・・・・以下略     「奥の細道」より

 かつて民間の旅行エージェントに勤めていたころ、添乗員として国内外に多くのお客さまをお連れしていましたが、そのお客様の道中の無事を祈り、朝夕近くのお地蔵様に頭を下げる習慣が身に着きました。信州の安曇野の里を歩くと、500体を超える道祖神に会うことができ、昔から地域の人々の暮らしや旅人の安全を見守っているように感じられます。

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 鹿児島でも農村地帯を歩くと、ユーモラスでにこやかな顔をした田の神様(さあ)が、田畑の片隅やあぜ道の曲がり角に鎮座しいています。姿も様々で、手にしゃもじやたすきを持ったものや、頭にシキの網目の傘、田植えをしている姿など見て回るだけでも楽しいものです。南九州の農村地帯ではおよそ2000体あると言われています。

 大地に生きる人たちは、風水害や干ばつなど人の力ではどうすることもできない自然の脅威を、昔から伝え聞いて育っています。だからこそ太陽、水、風、土など自然に日頃から感謝する心を持ち「今年も豊作でありますようにと」と石像を作り祭ってきたのです。

 小生が子供のころは、田の神様を1年ごとに持ち回りで農家に預ける習慣があり、集落の若者が籠に乗せて次の家に運んでいました。預かった家では、守り神としてひな壇に据えて、毎朝掃除とお供え物をしていました。県内には姶良、加治木、蒲生周辺や大隅地域にさまざまな形をした田の神さまが見られます。稲刈りの終わった田んぼを歩くと、ほほえましい田の神さまに会うことができ、先人たちの心に思いをはせることがあります。

 ところで日本人は初詣で神社やお寺に参拝する習慣が定着しています。境内に掲げられた絵馬には、「大学受験に合格しますように」、「家族全員が一年無事に暮らせますように」、「いい就職口が見つかりますように」等のお願い事が書かれています。

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 無理なお願いごとと思いながら、静かな祈りに時間を忘れます。旅の途中車中からでも通りすがりの神社に手を合わせ、また道すがら出会うお地蔵さまに自然と頭を下げることで、感謝の気持ちが生まれ、心に余裕ができるのではないでしょうか。


 県内には、日本一のお地蔵さまが出水市の八坂神社の境内にあります。一刀彫りの石像で台座まで含めると高さが4・15mにもなります。近くに寄るとさすがにその大きさに驚かされます。

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 また、近くの箱崎八幡神社の境内には、日本一の大鈴があり、直径3.4m、重さ5tにもなり総金箔の鈴で作られています。社殿、神門の上に吊下がっている光景は、参拝者の度肝を抜く感じです。

 米どころ出水平野には今年もツル飛来の知らせが届きました。冬の訪れが近いことを知らせてくれます。来年の初詣はこの2箇所を廻り、縁起もののツルを見学し御利益を祈願したらいかがですか。

 小さいころから人だけではなく、見えないものにも感謝する心を持つということは、大切なことと思います。
           参考 かごしまよかとこ100選:かごしま再発見「浪漫の旅」

プロフィール

古木 圭介プロデューサー
鹿児島県
観光プロデューサー
古木 圭介
(平成29年4月より就任)
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