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感動・感激をもたらすおもてなしとは~加賀屋の流儀に学ぶ~  

2014年1月20日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 北陸の能登半島は冬場は厳しい寒さにさらされ、観光客も少なくなります。その玄関口にある七尾湾に面し、温泉旅館が立ち並ぶ場所が全国有数の高級温泉街と知られる和倉温泉です。

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 その中でも旅館「加賀屋」は、「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」(旅行新聞社主催)の総合部門で、34年間第1位の表彰を受けている日本を代表する旅館の一つです。ちなみに、指宿温泉のホテル秀水園が料理部門で30連覇しています。

 加賀屋は客室数248、総宿泊客室定員が1450人、年間宿泊者は約22万人、客室稼働率は70~80%であり、それを従業員650人で支えています。徹底したサービス精神の姿が、口コミで伝わり多くの顧客の支持を得ています。2010年には、台湾に「加賀屋 北投」をオープンしています。

 加賀屋は、建物、客室、浴場、オープンスペースともすばらしい造りとなっていますが、企業理念として「笑顔で気働き」を掲げ、おもてなしのサービスを最大の商品として位置づけ、宿泊者に対しそこで働く従業員で最高のおもてなしを提供することを目指しています。女将がすべての客室に出向いて挨拶するなどトップ自らおもてなしを実践しています。 

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 お客様の来館の目的を事前に察知すれば、可能な限りそれに沿ったサービスを提供しています。還暦の旅行と知れば、赤い帽子や服装の準備を、法事の等に関する旅行では、亡くなったひとのために陰膳を準備します。期待を超えるサービスを、お客様から言われる前に提供して行くことを徹底しているのが加賀屋の流儀です。

 また、過去に宿泊した顧客のデータベース化を進め、サービス提供につなげています。人は自分の名前を呼ばれた時に、その存在を認められたものとして、喜びを感じるものですが、一度の出会いで感動を提供し、リピーターになってもらうため、積極的に相手の名前と顔を知ることにも努めています。

 寝床の枕の硬さの具合、薬を常用される方の部屋には、氷無しの水だけのポット、アレルギーの有無、食事の好き嫌い等事前のチエックを十分行っています。

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 お客様が到着してお部屋に案内するまでの間に、館内の説明や翌日の予定を聞き的確な方法でサービスを提供できるよう心がけています。体の不自由な方が、翌日の指定券が取れていない場合は、乗車予定の列車の席を確保する為、前の駅まで職員が行きそこで自由席に座り、「和倉温泉駅」で交代してその席に座らせる努力も惜しまないといいます。

 「お客様の思い」を具体的な「こと」に変えて提供することが、「価格」を超えた「感動」を生みます。それは人の行動であり、これこそがホスピタリティです。

 和風旅館で高品質のおもてなしを機械化することは難しいことです。加賀屋では、料理の運搬等の機械化を進め、客室係がお客様にサービスを提供する時間をできるだけ長く確保できるよう改善を図っています。そのことで盛り付けの崩れや食器等の破損も少なくなるなどの効果も生まれています。

 従業員の定着や子供の教育環境改善にも努めており、企業内保育所の設置や母子家庭の社宅も併設されています。そのことが客室係にとっては、おもてなしに専念できる精神的な支えとなっています。

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 加賀屋では、誰がやっても同じサービスを提供できる仕組みづくりや、経験豊かな客室係が、新しく入ってきた客室係に伝承していくことなど社員教育にも日頃から取組んでいます。年間3万通のアンケートを分析し、指摘された課題は速やかに対応し、お褒めの言葉は掲示するようにして、すべての従業員が共有できるようにしています。

 また、従業員の仕事の効率化をすすめ、チェックアウト時は人手が要るため、フロント や売店やコーヒーショップ等へ作業の支援を行っています。人をお送りするとき細かい配慮がなされています。

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 顧客への「満足」が創り出すものは、次回の宿泊先として、たくさんある選択肢の一つに残してもらえることです。サービスに接する時、お客様はこれまでの体験から事前期待を持ちます。この期待を超えた時に、感動が生まれます。 加賀屋の従業員一人ひとりが、感動・感激を与えるサービスを提供するんだという自信と誇りを持っていることが、施設への信用と人気となっていると感じます。


 ところで、大手情報誌リクルート社「じゃらん宿泊旅行調査2013」の調査によると、鹿児島県の観光地としての総合評価は、沖縄県に次いで2位、おもてなし好感度は第4位となっています。鹿児島弁でおの出迎え、新茶とふるさとの駄菓子によるおもてなし、野に自然に咲く花をお部屋に飾る、火山灰の入った灰皿を置く、見送りは車が見えなくなるまで手を振る等鹿児島らしい優しい対応が求められます。

 観光客の地域の最終的評価は、そこに住む「人」です。一度訪れた観光客が、リピーターとなり、居住してみたいと思わせる環境づくりも必要です。

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 鹿児島県では、観光客を温かく迎える「観光まごころ県民運動」を展開しています。しかしながら企業によって取組みに差があり、十分徹底してないところもあります。 「司馬遷」の「史記」の中に「桃李もの言わざれども 下自ずから渓を成す」という言葉があります。信頼される施設への努力を日頃から全従業員で取組む必要性を感じます。  企業経営における顧客に対するおもてなしの姿勢が問われます。

 日本の和食が、昨年ユネスコの世界の無形文化遺産に登録されました。日本旅館での「おもてなし」が今以上に国内外から注目されています。アベノミクス効果も徐々に表れており、宿泊単価の上昇も見られるようになり、高品質を売りとする宿泊施設の稼働が顕著となっています。

 日本は成熟社会を迎え、モノの豊かさより心の豊かさが求められる時代となっています。 加賀屋のおもてなしに学ぶべきことが多いのではないでしょうか。

          参考:「最強のサービス」の教科書 内藤耕 講談社現代新書

プロフィール

古木 圭介プロデューサー
鹿児島県
観光プロデューサー
古木 圭介
(平成29年4月より就任)
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