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No.301 小説の舞台や、童謡・唱歌に歌われた景観とは ~美しい日本の原風景を大切に~

2014年3月3日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

道がつづら折りになって、いよいよ天城峠に近づいたと思う頃、雨脚が杉の密林を白く染めながら、すさまじい早さで麓から私を追って来た。
                ~川端康成『伊豆の踊子』から

 上記の文章は、ノーベル文学賞を受賞した川端康成の「伊豆の踊子」の冒頭の文です。何回読んでも素晴らしい文章です。川端康成は、「上海」や「旅愁」の著で知られる横光利一と並んで、新感覚派を代表する作家の一人です。「伊豆の踊子」や「雪国」は、過去何回も映画化され、小説の舞台となった伊豆の湯ヶ島や下田、越後湯沢温泉等はロケ地として有名になりました。

 伊豆の天城峠を訪ねると、苔の生えた石造りの天城トンネルやスギ林に囲まれた坂道が続き、小説の舞台がそのままあり、川端康成が愛してやまなかった伊豆の魅力を醸し出しています。

棚田(縮小).jpg

 ところで、童謡や唱歌は、日本の美しい田園風景や四季の移ろいが詩となり、それにメロディが付けられ、子供のころから口ずさんでいる歌が多いのではないでしょうか。「故郷」、「春の小川」、「夏の思い出」、「赤とんぼ」等美しい日本の四季が浮かび上がります。

 小学生のころ音楽が苦手で、いつも口をもごもごして声を出さないでいると、先生に叱られた記憶や、中学生になり声の変性期と重なり「椰子の実」の歌を男子生徒が歌わず、音楽の先生を泣かしたのを覚えています。

 今ではその頃のやんちゃな頃を忘れて、日本の美しい情景が唱歌と一緒に流れると、菜の花やレンゲ畑の畔道を、ミツバチを追いながら自転車で中学校に通った頃を思い出します。「メダカ」や「うなぎ」が泳ぐ小川が校庭の隅を流ており、美しい田舎の原風景がそこにはありました。

冬景色.jpg

 国語学者金田一春彦氏は、ある式典で同席された美智子皇后様から、「私が好きな唱歌は『朧月夜』と・・・・『冬景色』です」とお聞きして、自分と同じ曲であるとポンとひざを打ちたかったという。二つの曲は、春と冬の日本の自然の情景が美しく描かれ、目の前に出てくるような錯覚を覚える素晴らしい曲です。

 奈良時代に編纂された「万葉集」やその後の「古今和歌集」、「新古今和歌集」には、美しい四季の歌がありますが、自然現象に託して故郷への想いや恋心を伝えています。

 日本は四季がはっきりし、気候の変化は美味しい農水産物をも生み育てます。穀物やくだもの、野菜、近海の豊饒な海では、タイやアジ、キスなどが獲れます。山林や火山が多い地形は、美味しい水が湧きでるという恵みをもたらしています。また、冬は赤い椿が白い雪に映え、春になると桜前線が日本列島を縦断し、夏は朝顔やひまわりが咲き、秋になると野山は紅葉し、色とりどりの景観が列島を南下します。

 桜や紅葉の美しさは日本人だけでなく、多くの外国人の心をひきつけます。外国人は桜や紅葉の美しさに憧れて日本を訪れます。訪日外国人が1000万人を超えた今、鹿児島が持つ自然の美しさ、温泉、食、おもてなしの心を持って誘客に努めなければなりません。

出水武家屋敷(CD).jpg

 鹿児島では「郷中教育」、「日新公のいろは歌」、「出水兵児修養掟」など、人として生きる心構えを教えており、薩摩の偉人が育つ環境づくりに役立ったと感じます。 子供のころから、古里の美しい田園風景や、歴史、祭り等を学ぶ機会を増やして行かねばなりません。そのことが故郷を愛する心を育むことにつながります。

 また、日本の伝統的生活や文化、歴史、美しい自然が歌われている、童謡・唱歌の舞台を訪ねるのも旅の楽しみではないでしょうか。

 鹿児島にはいたるところに、日本の原風景が残されています。白砂青松の海岸、レンゲソウの美しい畑、田植えの後のきれいに水を張った棚田、整然と植えられた杉林、石を積み重ねて造られた段々畑等人々の知恵が生きています。

 都市周辺部では、開発が進み昔フナやコイが泳いでいた小川は、コンクリートの蓋で隠れて見る影もありません。滝廉太郎が作曲した「花」では、当時の隅田川は次のように表現されています。

桜(ふんわり).jpg

春のうららの隅田川 上り下りの舟人が 
櫂(かい)のしずくも 花と散る
ながめを何に たとふべき
見ずやあけぼの 露浴びて われにもの言ふ 桜木を
見ずや夕ぐれ 手をのべて
われさしまねく 青柳(あおやぎ)を

 明治時代の隅田川は清流の川でした。われわれは、美しい日本の原風景をいつまでも残していくことが求められています。そのことが、外国人にも支持される国になるのではないでしょうか。

プロフィール

古木 圭介プロデューサー
鹿児島県
観光プロデューサー
古木 圭介
(平成29年4月より就任)
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