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No.313 「簡易宿所営業」許可取得がなぜ必要か~民泊の受け入れ条件になる可能性が~

2014年6月2日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

修学旅行(新幹線のホーム).jpg

 今日も鹿児島中央駅には、関西からの修学旅行生を乗せた集約臨時列車が到着しました。平成25年から運行開始された新幹線専用列車は、鹿児島への修学旅行をより可能にしています。秋には筑紫地区の連合中学校23校約4,000人が、九州新幹線の専用列車で鹿児島を訪れます。

 平成25年に鹿児島県に宿泊した修学旅行生は、前年比1万5611人増の10万9959人となりました。

 大幅増の要因として、新幹線臨時列車を利用して、近畿地区の中学校25校約5.000人の生徒が来鹿したことなどです。また、鹿児島が誇る歴史、自然、温泉や、農水産業を活用した体験メニューが学校のニーズにマッチしていることもあげられます。

 地区的には、霧島、鹿児島地域が大幅な伸びとなりましたが、種子・屋久地区だけが減少しています。一度に多くの学生の受け入れが難しいことや、SSHのように関連する学科を持ち、専門性を学ぶ少人数の学校が増加していることも減少の要因です。今後種子・屋久地域を増やす方策としては、宇宙や世界自然遺産を前面に、体験メニューの差別化が必要です。

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 種子島では、千座の岩屋、鉄浜海岸等奇岩や美しい砂浜の散策、JAXA種子島宇宙センターの施設見学等が優位性を発揮します。来島中にロケットの発射日に重なり、打ち上げの瞬間に遭遇できるかもしれない楽しみもあります。種子島地域でもグリーンツーリズムの取組も始まっています。

 屋久島では縄文杉登山や屋久杉ランド、白谷雲水峡見学等、世界自然遺産に触れる機会や里ツアーの充実と地域住民との交流が年間を通してできれば増加が期待できます。

 鹿児島県は、豊かな自然と多彩な観光資源に恵まれ、農業産出額は、4,069億円で北海道、千葉県に次いで第3位となっており、鹿児島の経済を支えている基幹産業です。 (平成23年県政概況統計)

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 鹿児島で農業体験し、南さつま地域からスタートした農家民泊は、県下全域に広がり、25年は教育旅行の取扱が2万人を超えました。1泊2日の滞在期間、さつまいもや果物の収穫、家畜の世話など、日頃農家の方が行っている仕事を子供たちも体験し、食事は農家の人と一緒に作るなど家庭の一員として一日を過ごします。

 都会の子供たちは、土に触れる機会が少なく、日常食べている野菜、果物等がどのような姿で生育し、収穫されるか興味津津です。また、寝るのを忘れて懇談し、日頃家では味わえない心温まる体験が、子供たちの心を動かします。

 食事は農家の方と生徒が一緒に作るということも当然のことです。コンプライアンスの徹底が不可欠です。このように鹿児島が誇る農業が修学旅行の誘致や子供たちの情操教育に役立ち、また農家の人々の生き甲斐づくりになることを考えると、これからもっとグリーンツーリズムを推進しなければなりません。

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 一方鹿児島県の農家受入の課題として、旅館業法に基づく「簡易宿所営業許可」の取得が遅れていることが上げられます。現在県内での取得状況は、受入農家1000軒の約2割程度です。先進地の長崎県松浦や大分県安心院地区では90%を越えており、「宿泊料」を収受して人を宿泊させることができる営業許可取得が、今後学校に対しての信頼にもつながります。


 韓国のフェリー事故もあり、学校現場は安全対策には敏感となっています。学校からの仕様書の条件に「宿泊先は簡易宿泊営業許可をもつ民泊」が求められると営業許可を受けていない農家は、宿泊地として除外される可能性があります。消防署の点検を受け、障子や襖、絨毯等防火対策をきちんと整えることが不可欠です。許可申請には約25,000円の費用がかかりますが、積極的に取り組んでいかねばなりません。

 これからの体験メニューとしては、カンパチ等への「えさやり体験」、吹上浜等での地引網や砂浜散策等海の体験が人気となるものと思います。

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 また、明治維新150周年の舞台を巡る「歴史学習」、知覧や鹿屋での「平和学習」、桜島や霧島での火山・防災に関する「自然学習」、世界自然遺産屋久島での「環境学習」、種子島や内之浦での先端技術を知る「科学学習」、どれをとっても他県に負けないカリキュラムになっています。

 学校のニーズに合うユニークな体験メニューの提供、また、受入側の安全面に対する意識を向上させ、体験学習における安全性を確保することが不可欠です。

 教育旅行は県内に2泊する学校が多く、1泊は市内や温泉地でのホテル宿泊がほとんどです。農家民泊と既存の宿泊施設との摩擦が懸念されますが、新しい需要開拓という視点に立ち、「競争」と「協調」の姿勢が、全体的な入込客増大に結びつきます。

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 鹿児島県には、最盛期には約25万人の修学旅行生が来ていました。生徒数の減少や行先分散化で、急激な増加は厳しいものがありますが、3年後には20万人の誘致を目指しています。目標達成に向けて官民挙げて課題解決に努力し、安全・安心が第一の教育旅行に関係者の心を一つにして頑張りたいものです。

No.312 文化の香りが漂う地域に ~芸術や日本の伝統文化を守ることの大切さ~

2014年5月26日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 夏目漱石、志賀直哉、川端康成、太宰治氏らは、多くの名作を残しています。その名作には日本旅館に滞在した宿の雰囲気や、地域の情感が醸し出されています。夏目漱石は、阿蘇で「二百十日」、道後温泉では「坊っちゃん」を、志賀直哉は城崎温泉で「城の崎にて」、川端康成は伊豆を舞台に「伊豆の踊子」、越後湯沢温泉では、「雪国」を書き上げています。



 太宰治は静岡県の三津浜・大瀬崎で「斜陽」を執筆しています。また、歌人若山牧水、与謝野鉄幹・晶子夫妻、北原白秋、斎藤茂吉等は、全国を旅して多くの歌を詠んでいますが、ゆかりの宿には記念の硯や色紙等が残されて、宿泊客の旅情を誘います。

    水鳴れば 谷かと思ひ 遠き灯の
               見ゆれば原と 思ふ湯場の夜
                             ~与謝野晶子~
*与謝野晶子夫妻が宿泊した市比野温泉旅館「みどり屋」の近くに歌碑があります。

 日本旅館はこれまで、多くの文人墨客に愛されてきました。落ち着いた畳の間、窓越しに聞こえる渓谷の水の流れ、四季折々に変化する田園の姿、温泉の湯けむり等が、作家たちの疲れをいやし、作品の構想を創り上げるのに最適な場所と思われます。

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 今その旅館の数が減少傾向にあり、日本の伝統文化を提供してきた施設が、厳しい経営環境にさらされています。現在日本旅館協会に登録している施設は、約3,200軒ありますが、その数は毎年減少しています。

 要因として、バブル崩壊後宴会が主体の団体需要が激減し、それに頼っていた温泉地の大型旅館の倒産があげれらます。また、人口減少等による日本人の国内旅行や宿泊者数の伸び悩みが続き、将来の経営見込みが不透明であることから、後継者不足もあって、廃業する施設が多くなっています。

 さらにここにきて、耐震診断の義務化と補強工事等で経費がかかることから、営業を断念している施設が多くなっていることも事実です。国の何らかの支援の必要性を感じます。

 一方では、宿泊とバス料金をセットにして低価格で販売し、運営を続けている施設が多く見られます。このような施設は、メイドさんのおもてなしや部屋食等のサービスをなくして、二食ともバイキングにするなど効率を第一に考えた経営を進めています。

 ところで、昨年「和食」がユネスコの世界無形文化遺産に登録され、日本食が注目されています。日本食は、調理人が創り出す匠な包丁さばき、盛り付け、料理をのせる皿、また、日本独特のみそ、しょうゆ、干物等から作りだされる出汁等が特徴の一つです。

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 日本には伝統的陶磁器の産地が各地にあり、日本料理を引き立たせる茶碗や皿を作り出しています。九州の旅館では、有田焼、伊万里焼、薩摩焼、京都の清水焼等の器がよく使われます。日本料理は器が命であり、自ら窯元を尋ねる調理長も多くいます。


 最近日本の出汁が外国人にも注目されています。料理に化学調味料を使用する機会が増える中で、日本料理は、みそ、しょうゆ、煮干し、こんぶ、かつお節等自然加工した食材がメインです。安全・安心の食材や伝統的料理方等が、和食が世界無形文化遺産に登録された要因でもあります。

 枕崎市は日本一の鰹節の産地であり、それを活用した出汁や地域グルメを積極的にPRしており、メディアで取り上げられる機会も増えてきました。鰹節から作られる出汁が注目を浴び、需要拡大と地域の経済活性化につながるものと期待されます。日本人は今食の安全・安心に敏感であり、まず観光客に鰹節の魅力を広めていかねばなりません。

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 ところで、毎年霧島温泉地域で開催される「霧島国際音楽祭」が35周年の節目の年を迎えます。世界一流の音楽家の演奏が、身近で安い料金で聴くことのできる機会は全国的にみても、少ないのではないでしょうか。


 県はPR等最大の支援をしており、県民が気軽に一流の音楽を聴く機会を提供しています。期間中はホテルでのロビーコンサートも開催されます。県民のみなさまも国際音楽祭に対する関心をもっと高めてほしいと思います。

 霧島温泉地域は、この音楽祭をPRすることで「文化の香りのする街」として、日本旅館の魅力を世界に発信できる機会を見逃してはなりません。霧島温泉地区は、9の泉質があり全国的に知られた地域です。

 オーストリアの「ザルツブルク」は人口15万の小さな街ですが、「ザルツブルク音楽祭」開催の5週間に、世界中から観光客が訪れます。 松本市で開催される小澤征爾氏らを中心として開催される「サイトウキネン・フェスティバル松本」は鹿児島からも愛好家が訪れます。

 また、湯布院では定期的に音楽祭や美術展が開催され、周りの環境も幸いし多くの滞在客があります。これから観光客を滞在させるには、文化的な香りのする街の魅力が求められます。地域住民はその街に住んでいる誇りと、自信を持つべきです。

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 指宿にも「岩崎美術館」や、中国古来の美術品が展示されている「薩摩伝承館」があり、必見の価値ある施設です。指宿は著名な温泉地で日本旅館も多く、地域が誇る優れた両施設を地域全体でPRして、街の知名度を上げることも大切なことです。


 日本の人口はこれからも減少していきます。外国人の誘客は不可欠であり、日本旅館での和食、おもてなし等日本の伝統的文化の提供が求められています。日本人のサービスは親切で、人手を要します。安価な料金では永続性がありません。

 日本旅館は、お茶の接待、お風呂(大浴場)、夕食、寝具や洗面具の提供、夕食、朝食等のサービスを提供し、また昼夜にわたり宿泊者の安全・安心確保に努めており、応分の対価を払うことは、当然のことと思います。

 2020年には東京オリンピックも開催され、多くの外国人が日本各地を観光するものと考えられます。日本旅館が多くある鹿児島をPRし、質の高いおもてなしでお招きしたいものです。

No.311 鹿児島の魅力を再発見~「旅のスパイス鹿児島」を活用してPRを~

2014年5月19日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 鹿児島に永年住んでいると、素晴らしい景観が当たり前のこととなり、四季の変化にさえ気づかなくなります。鹿児島市内から美しく眺められる桜島は、天気の良い日は山の姿が7回変化すると言う。朝起きると目の前にある桜島はあって当然であり、今日も降灰が市内に来なければと願っている市民が多いのではないでしょうか。

     志ろ山と さくら島 かけあなさやけ
                  正月虹の 立ちわたりたり  ~牧暁村~
     (注)志ろ山とは、城山のことです。桜島にこの歌碑があります。

 しかし県外から初めて訪れた観光客や外国人は、錦江湾に浮かぶ桜島の雄姿や、噴火して黙々と上がる噴煙を身近に観察できることに、この世で初めて遭遇したような驚きと喜びの声を表わします。

旅のスパイス鹿児島表紙(サイズ縮小).jpg

 我々鹿児島には何気なく過ごしている日常の暮らしの中に、県外の方が"びっくり"するような光景や生活があります。それらは鹿児島ならではの風土や習慣、文化です。

 この度鹿児島県ホテル旅館組合青年部の皆さんが、鹿児島での旅に味を加えてもっと楽しくなるようにと「旅のスパイス鹿児島」というタイトルの絵はがきを完成させました。2012年から取り組み、1年かけて約1000の観光客の"生"の声を集めることができ、そこには気づきやたくさんの再発見がありました。

 絵はがきの裏にあるタイトルの文を紹介します。(文章は絵はがきの原文の通り)

「克灰袋」・・桜島の火山灰を入れる袋です。以前は「降灰袋」でしたが、桜島の灰に負けないぞ(克服するぞ!)という意味で「克灰袋」に改名されたそうです。

「のんかた」・・鹿児島のお湯割りの焼酎グラスにはメモリがついています。メモリに合わせて焼酎とお湯を混ぜると美味しく呑めます。お湯を先に入れないと「先輩」に怒られることもあるので、お気をつけて。おつまみにはガランツがおすすめ。意味は鹿児島の誰かに聞きましょう。

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「桜島の風向」・・鹿児島のニュース・天気予報には桜島上空の風向きが表示されます。みんな風向の予報を見て火山灰の流れに注意し洗濯物や洗車のタイミングを考えたりします。洗車したあとには、だいたい火山灰に降られ、灰まみれに。とても残念な気分になります。

「ちけもん」・・鹿児島のだいたいのラーメン屋さんではラーメンと一緒に漬物が出されます。漬物を食べお茶を飲みながらラーメンが出るのを待ちましょう。鹿児島では「ちけもん」ともいいます。


「両棒餅(じゃんぼもち)」のような甘いものと一緒に出されることも多いです。両棒餅は、仙巌園付近で食べることができます。

「おはな」・・鹿児島の人はお墓や記念碑をこまめに掃除をしてお花をたやしません。

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「温泉」・・鹿児島市内の銭湯は、ほとんどが温泉。家族風呂も日常のヒトコマです。鹿児島の誰かにおすすめを聞きましょう。指宿の海岸には砂むし温泉もあります。

「まゆげ」・・西郷さんの様にまゆげが太く濃い人が多いです。太く濃いまゆげと鹿児島弁はとても安心感を与えます。

「さくらじま」・・桜島を見るとホットします。そんなあなたは、もう鹿児島人です。 その他「しろくろ」と「へへへ」の絵はがきがあります。

 どの絵はがきも私たちの日々の生活の中で当たり前に感じている事柄ですが、文を読んでみると、あらためて先人が育んだ知恵と行動に驚かされます。桜島の降灰を物語風に面白く描き、掃除の苦労も忘れてしまいます。

 また、お墓について生花が飾られている光景に出合うと貸切バスのガイドさんは、先祖代々受け継がれている鹿児島の先祖崇拝の風習を語ります。メモリがある焼酎グラスは、県外の観光客と一献傾ける際には説明し易く、鹿児島のお土産としても勧めています。

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 鹿児島県ホテル旅館組合青年部の方々は、新幹線全線開業を控えて着地型観光の定着に積極的に取り組んできました。宿泊者を対象に、早朝の鹿児島魚類市場見学ツアーもその一つです。夏休みには子供たちの参加も多く、市場内での食堂で新鮮な魚を食べる朝食も人気を博しています。青年部の日々の努力が、鹿児島の観光を支えていると感じます。

 最近の観光は、宴会型団体旅行から、地域の生活・文化に触れる個人旅行が主流となっています。今回の取組は、それを面白く楽しく伝えることができる絵はがきであり、書いた方の温かさも伝わります。

 「旅のスパイス鹿児島」の絵はがきは、県内の36青年部施設を中心に配布・販売しており、5枚セット300円です。宿泊者に一声かけることで、絵はがきの認知度も高まります。今「郷土愛」の構築や「旅育」という取組が大切になっています。ふるさとの良さを伝える良い教材にもなります。この絵はがきも活用して、県外の友人に鹿児島の四季折々の魅力や伝統文化を伝える機会にしたいものです。
      参考:鹿児島県ホテル旅館組合 青年部事業 ~旅のスパイス鹿児島~

No.310 発信力より受信力に十分な検証を~ 顧客に届ける有効な情報戦略とは~

2014年5月12日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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くれないの 二尺伸びたるばらの芽の

         針(はり)やわらかに 春雨の降る

                    ~正岡子規~

 ゴールデンウィークが終わり、観光地はしばし静けさが戻っていますが、鹿児島中央駅は修学旅行生の姿が目につきます。関西方面からの集約臨時列車の運行が大きく寄与しています。

 これから各地域とも夏から秋に向けての誘客に熱が入ります。各自治体、観光協会等が地域へ観光客を誘致するため、パンフレット、情報誌やインターネットなどメディアを使った宣伝手法が多く見られます。又キャラバン隊を組織して、大都市のデパートや東京駅や大阪駅の地下街で通行人に観光宣伝を行うケースもあります。最近ではホームページを充実させて、最新の情報を掲示することが日常的に行われています。

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 旅行先や宿泊施設の決定手段として、インターネットによる情報を参考に、経験者の話(いわゆる口コミ)が一押しとなっています。総務省の調査によると、日本人の75%に当たる約9千万の人がインターネットを利用しており、今後も拡大すると予想しています。ホームページは24時間利用できることから、家庭での情報収集の有効な手段となっています。 



 ところで、地域の宣伝をする手法として、自治体や観光協会の職員が大挙し、○○大使を帯同し大都市圏の地下街等で、パンフレットや地域産品を通行人に配るなどしてPRするケースを良く見かけます。通行人がどっと押し寄せ、たちまちのうちに配布物がなくなることが多くあると思います。担当者はパンフレットが何万部配布できたと喜んでいます。

 しかしその効果の程はどうでしょうか。近くの地下街のトイレやくず箱に、パンフレットは捨てられていることがよくあります。イベントの開催状況を調べて、単に景品をもらうためだけに繰り返し並んでいる人も多いと感じます。不特定多数への宣伝には十分研究すべきです。むしろマスコミ各社等を訪問して地域情報をきちんと伝え、番組で取り上げてもらう努力が必要です。

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 このように日頃からパンフレット、メディア等を利用して、また多くの需要を抱える大都市圏での情報発信に力を注いできました。発信することに時間と経費をかけ、地域の盛りだくさんの最新の話題を伝えることが、誘客につながる有効な手段であると捉えてきました。

 しかし発信することにエネルギーを注ぐあまり、相手に十分受信されているかの検証が十分なされてないのではないかと思います。何万部というパンフレットを配りながら、必要とする消費者に地域の情報がどの程度伝わり、旅行につながっているかを検証することには関心が疎かったのではないかと思います。

 メディア販売を主としている旅行社の担当者は、初めから全国紙を広告媒体に利用するのではなく、ミニコミ紙や折り込みで消費者の反応を探るテストマーケティングを行っています。各自治体とも多くの媒体に広告を載せていますが、効果のほどを検証するまでには至っていないのではないでしょうか。

日南宮崎大隅パンフレット.jpg

 たとえばパンフレットの活用度合いを検証するため、情報誌に半券を付け、それを持参した方に特典を提供したり、スタンプカードに訪問先の印鑑を押してもらい回数に応じて特産品のプレゼント等の交換などを可能にすることで、情報誌の反応度合が把握できます。また情報誌がどの地域で一番読まれているのか、どのような読者層に届けられるかも重要なマーケティングとなります。


 そのことで情報の価値や配布先の需要層等が把握できるのではないでしょうか。複数の情報誌やメデイアを組み合せて、地域によってその配布方を変えることも必要です。また、セグメントされた顧客を抱える媒体の活用も求められています。いずれにしても、消費者にきちんと情報が届く仕組みが必要です。

 自治体の観光パンフは地域の情報を網羅するため、豪華でしかも多くのページを用いることがあります。しかし利用者にとってはわかりにくい場合が多く、オンリーワンのイベント・祭り、桜や紅葉の隠れた名所、伝統の食や話題のグルメ等季節ごとの特化したパンフを作ることが、成熟した国内旅行には必要かもしれません。

 自治体等で運行している無料観光バスが盛況を博しています。しかし無料であるから乗っているということもあります。訪れた人が地域で、「お土産」や「食事」等にどれだけ消費しているのか、また、リピーターになっているのか、毎回アンケートを取り分析する必要があります。それを今後の観光振興に活かすことが、無料観光バス運行に求められる課題です。

 最近ではエージェントの商品企画に反映させるために、大都市圏で説明会や、個別の相談会を開催して効果があがっています。商品企画に当たっては、エージェントは半年先の情報が必要であり、そうすることで企画に反映させることができます。自治体の観光素材がどのような過程で商品化され、流通させていく仕組みを理解せずして単なる宣伝は、効果が得られません。

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 一方観光客には県境はなく、初めて訪れる人は広域に回ります。自治体の宣伝は、広域の観光協議会を組織して活動することで効果があると思います。九州観光推進機構は定期的に大都市圏で、「九州は一つ」の合言葉で、九州7県の広域の宣伝活動を展開しています。エージェントやメディアとの人脈づくりにも役立っています。

 海外から見ると九州は小さな島であり、九州全体の位置付けをPRし、その中で鹿児島の『優位性』・・東アジアに近く、世界自然遺産、桜島、食、砂蒸し温泉、宇宙基地、世界文化遺産と明治維新150年等・・PRすることで、他県との差別化となります。人脈づくりにも役立っています。

 有効な宣伝方法とは、費用対効果を検証することです。もう一度自分の地域の宣伝手法を見直してみませんか。これから夏休み、秋から来春に向けての積極的な提案をしていかねばなりません。夏休みはファミリー、秋はシニア市場であり、春は卒業を控えた学生マーケットです。シニア世代は平日も動けるフットワークのいいお客様で、しかも料金にあまり左右されず質の良い旅行を求めます。

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 従来の観光パンフレットから脱却し、読んでみたくなるキャッチコピーの表示、拠点から動きやすいアクセスの説明、地域の生活文化に会える場所、パワースポット、トレッキング、地元の食を堪能できる施設、旅人を楽しませてくれる人や居酒屋等、受信力が高まる発信の取組が今求められています。

プロフィール

古木 圭介プロデューサー
鹿児島県
観光プロデューサー
古木 圭介
(平成29年4月より就任)
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