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No.317 JR九州「鹿児島VS大分」キャンペーンの展開~他県の良さを学ぶ機会に~

2014年6月30日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 温泉の源泉数・湧出量ともに圧倒的に全国1位を誇るのが大分県ですが、鹿児島県も源泉数第2位、湧出量第3位と全国指折りの温泉県です。

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 JR九州は、温泉、豊富な食材、おもてなし等両県の観光素材を対比することで、より両県の良さを発見していただこうと、「鹿児島VS大分」のキャンペーンを、2014年10月1日~2015年3月31日まで展開します。両県の同様なキャンペーンは平成17年10月1日~平成18年3月31日に行われており、今回が2度目の対決です。平成19年から平成20年の同期間には、「鹿児島VS佐賀」を展開しています。


 JR九州のキャンペーンは、対決素材を楽しめる温泉、グルメ等を組み入れた旅行商品が発売されます。また、新しい観光素材の発掘、地域の評価や課題等が浮き掘りになり、今後の観光振興にも役立てることができ、大きなPR効果をもたらすキャンぺーンとなります。

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 対決する大分県の観光地の特徴をあげてみたいと思います。従来大分県と言えば、日本一の温泉源を誇る「別府八湯」と、イベントや街の雰囲気が魅力の「湯布院」が、二大観光地として、全国的に知られています。また、「筋湯温泉」、「壁湯温泉」、「長湯温泉」、「鉄輪温泉」、「日田温泉」、」「天ケ瀬温泉」等個性的な温泉が県内に点在し、メディアでも良く紹介されます。

 「うすき竹宵」、「日田千年あかり」、「たけた竹灯籠」は、観光客の利便性を確保するため、11月に日を変えて開催され、竹灯りのイベントとしては九州一の動員力を誇ります。鹿児島県は竹林面積が日本一ですが、竹を活用した灯りのイベントとしては先を越された感じです。

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 大分県は、海の幸「関アジ」、「関サバ」が、全国ブランドとなっています。最近では、日豊海岸の海鮮グルメも人気です。佐伯市、津久見市、臼杵市周辺の飲食店では、黒潮に育まれた豊後水道の幸が満喫できます。特に東九州自動車道が開通し(一部区間除く)、北九州方面から宮崎に至るルートの時間短縮が図られ、多くの観光客が訪れています。

 歴史的には、福沢諭吉誕生地で、今年のNHKの大河ドラマの主人公「黒田官兵衛」のゆかりの地「中津」や、両子寺や富貴寺等の古刹がある国東半島が有名です。

 観光列車「ゆふいんの森」、「ソニック」は、鹿児島県内を走る「はやとの風」や「指宿のたまて箱」を手掛けた水戸岡鋭治さんに手によるものです。大分県出身の建築家磯崎新氏が設計した「由布院駅」と、100年を超える木造の駅舎「嘉例川駅」や「大隅横川駅」の対比も興味が湧きます。

 焼酎対決も楽しみです。大分県は「二階堂」や「いいちこ」等麦焼酎生産量が日本一で大きな蔵元があるのが特徴です。鹿児島県には芋焼酎の蔵元が100軒余り、銘柄も2000を超えて、しかもほとんどの市町村に蔵元があり、地元住民に育てられ愛されていることです。芋焼酎は生活に根付いたいろいろな飲み方があり、それを観光客に語ることでまた来たいと言う思いに駆られるのではないでしょうか。

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 ところで鹿児島県の平成25年の宿泊者数は703万人余りで、九州7県の中で第3位となっていますが、大分県は、604万人余りで第5位となっています。しかし大分県に大きく引き離されているのが外国人の宿泊者数で、鹿児島の1.7倍の33万人にもなっています。


 大分県は北部九州に近いことで、福岡空港からの外国人が誘客しやすいことや、杉の井ホテル等が早くから韓国人の誘客に力を注いできたことなどが増えた要因です。

 大分はアクセス面でみると、鹿児島からは九州の中で訪ねるのに一番時間がかかる位置 にあります。大分県からの鹿児島県への宿泊客数は、佐賀県に次いで少なく、両県にとって需要開拓の余地が残されていると言えます。

 鹿児島県民に訪ねて欲しい大分県の町は、景観に配慮した街づくりが魅力の「湯布院町」、レトロな昭和の町づくりで成功している「豊後高田市」、ご当地グルメの開発や天領ひな祭りが開催され、古い街並みが残る豆田町のある「日田市」、グリーンツーリズム受入の先進地「安心院」等です。人材育成や街づくり・観光地づくりの手法を学び、地域で活かして欲しい。

 鹿児島県としては、鉄道、温泉、食に加えて秋から冬にかけて、大分県にはない新たな魅力発信が求められます。地域としては、観光高速船が新たに就航した甑島、世界自然遺産の「屋久島」、新設された「薩摩藩英国留学生記念館」、紅葉の名所「千本いちょう園」、無料で行ける「佐多岬」、JR最南端の終着駅で、出汁で売り出し中の「枕崎」等です。

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 イベントとしては、「おはら祭り」、全国的に有名な「マラソン大会」や「ウォーキング大会」等で誘客促進を図らねばなりません。キャンペーンが半年に及ぶため、季節感を感じさせるめりはりのある企画が重要であり、紅葉、菊、ツル、梅、菜の花等の魅力も一緒にPRしなければなりません。

 特に県が勧める「拠点地域(指宿・霧島・鹿児島)発の広域観光周遊ルート」は、その魅力を徹底させるチャンスです。

 今回のキャンペーンでは、九州を中心に両県への誘客を図ることが主目的ですが、相互にPRしていくことが大切です。東九州自動車道を活用した新たな観光ルートの開拓を進めなければなりません。

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 最後に「鹿児島VS大分」に多くの観光関係者が参画して、我がふるさとの魅力を自慢し、いかにおもてなしの心を持って対応できるかが勝敗を左右します。各地域も新たな情報を発信できる機会として捉え、鹿児島への誘客を図るチャンスにしたいものです。 


(参考:観光庁:25年宿泊旅行統計 全てのホテル・旅館・簡易宿所を対象)
(参考:大分県観光ガイドブック  発行:公益社団法人ツーリズムおおいた)

No.316 屋久島里めぐりツアーの魅力~オフ時期の誘客強化につなげよう~

2014年6月23日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 屋久島は平成5年に、白神山地とともに日本で初めて「世界自然遺産」に登録され、昨年20周年を迎えました。屋久島は、観光関連の業界紙の調査によると、日本にある世界遺産の中で、行きたい場所のトップになっており、多くの日本人が一度は訪れたいあこがれの島です。



 屋久島は、面積約500平方キロメートル、周囲約130キロメートルのほぼ円形の島です。全面積の約9割が山岳地帯で、海岸沿いの平地に24の集落があります。それぞれの集落は、永年の伝統の中で育まれた歴史や文化が残されています。

 6月に入ってから、屋久島への登山客が増えています。ヤクシマシャクナゲは、年によって花の咲き具合が変わりますが、今年は花の状況が例年になく良い状態です。宮之浦岳至る登山道周辺では、美しい花が見られるのではないかと思います。

 ところで屋久島は、宮之浦岳、永田岳、縄文杉、白谷雲水峡、屋久杉ランドなど登山やトレッキングをメインとした山岳観光が注目されていますが、もう一つは里の魅力であり、各集落にさまざまな観光資源があります。「屋久島里めぐり協議会」では屋久島を訪ねる方々に、地元の歴史、文化、自然、産業など集落の見所を、地元の語り部のガイドさんと一緒に巡るツアーを実施しています。

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 今回は5つの里めぐりを紹介します。最初に吉田集落です。島の北西部に位置し、平家の落人が屋久島で最初に上陸した地と言われていることから、「屋久島最古の集落」として語り継がれています。屋久島に多い名字の「日高姓」のルーツとされる「日高神社」や、海岸の石を温めてつくる温泉「トンボレ」、サバ節の工場等が見ものです。平成14年から15年かけて放映されたNHKの朝の連続テレビ小説「まんてん」の舞台にもなりました。




 次に宮之浦集落です。人口3300人、約1500世帯が生活しており、屋久島の海の玄関口で、銀行や郵便局、大型スーパーや総合病院等が集中する屋久島の中心地となっています。屋久島奉行所跡や伊能忠敬の碑、石敢当等が見られ歴史豊かな集落でもあります。 最近は大型クルーズ船の入港も増えています。

 春牧集落は屋久島の南東に位置し、安房から安房川を渡ってすぐの集落です。ヤクスギランドや縄文杉、宮之浦岳など雄大な自然への玄関口として観光客も多く訪れます。農業や漁業、屋久杉工芸のお店や焼酎工場、飲食店、民宿等があり、屋久島の1~3次産業が集まっている集落です。屋久杉作り木工体験(別料金)もできます。夜は安房川に屋形船が浮かび、ほのかな灯りが旅情を掻き立てます。

 平内集落は屋久島南東部に位置し、島の中でも温暖な気候で沢山の自然に囲まれており、屋久島ポンカンの発祥の地として知られています。また、干潮時のみ入浴できる露天風呂「平内海中温泉」が特に有名で、ここをめざして訪れる観光客も多くいます。潮時の確認が必要です。

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 最後に中間集落です。島の南西に位置し、七五岳から流れ下る中間川の河口に広がっています。集落のシンボルは川沿いのガジュマルで、大木やその根が作りだす空間は、観光客だけでなく住民の憩いの場となっています。集落は、古い石垣や古民家など昔ながらの町並みが残っています。各家が軒を寄せ合い、全戸が家族のような雰囲気が漂う集落です。

 島の24の集落のほとんどに喫茶店があり、地域の人々が集まる団欒の場となり、コミュニティの確立にも役立っています。集落の生活・文化は、永年に渡って築かれた地域の財産であり、集落の団結の強さを醸し出しているのではないでしょうか。

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 「屋久島環境文化村センター」や「屋久杉自然館」は、環境保護の取組や世界自然遺産の島の全体像を把握でき、雨が多い屋久島ですが雨の日でも安心して見学できる施設です。



 また、屋久島は文学の舞台にもなりました。児童文学者の椋鳩十は、命の尊さと人間と動物とのふれ合いを題材に「片耳のオオシカ」、「ヤクザル大王」を書いており、小学校の教科書に登場します。宮之浦港近くの「なごりの松原公園」の中に、「道は雑草の中にあり」という著者の文学碑があります。

 林芙美子は長編小説の「浮雲」の最終章を安房の地にしています。彼女が「浮雲」を執筆するため宿泊した旅館が安房川の橋の近くにあり、その部屋からは当時の街の面影を垣間見ることができます。安房川の水の清らかさが、主人公の最後を美しく表現しているように感じる場所です。

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 また、36歳の時家族と共に屋久島に移り住み、農作業をしながら屋久島の自然と人々の暮らしを、「生命の島」という本で紹介しているのが日吉眞夫さんです。残念ながら数年前に本人は亡くなられましたが、奥様と息子さんが空港の近くで喫茶店を営み、店内には創刊号から最終号までの「生命の島」が展示されており、島の自然を守りたいという熱い思いが伝わってきます。是非店をお訪ねください。


 ところで屋久島への観光客は、4月から10月までが多く、秋から冬の期間の誘客が課題です。西部林道は日本最大級の照葉樹林で、海岸の亜熱帯性植物から照葉樹林、針葉樹へとつながり、標高差1900メートルに及ぶ植生の垂直分布が見られます。このような照葉樹林帯は非常に貴重であり、世界遺産の根拠となった大きな要因でもあります。

 冬の屋久島は山頂付近では雪が積もり、登山者は冬山対策が必要です。集落の魅力をもっとPRすることで1年中観光客を呼ぶことができ、島の更なる活性化につなげられます。種子島、指宿との連携や、交通費の軽減化、商品造成に支援を行うなどの取組も必要です。

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 旅行エージェントの屋久島のパンフレットは、縄文杉、ヤクスギランド、大川の滝、千尋の滝等観光地の掲載がほとんどであり、今後里めぐりのツアーも一緒に掲載してもらう努力が必要です。また、メディアで著名人の屋久島ツアーが紹介されますが、里で地域住民との触れあう機会を増やし、発信していくことも重要なことです。

 最後に屋久島の自然は、日本が誇る世界の遺産です。世界自然遺産登録20周年を経て、住民、観光客、自然が共生していくことの大切さが、今また問われています。 観光客にも屋久島の自然保護の実情を理解してもらい、応分の負担をお願いする時期に来ているのではないでしょうか。
      参考:屋久島里めぐり 発行:屋久島里めぐり推進協議会事務局

No.315 最大の需要月をいかに取り込むか~夏休みの対策は十分ですか~

2014年6月16日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 南九州は梅雨入りし、田植えが終わった田には青々とした苗が育ち、田いっぱいに張られた水が、そよ風に揺れています。鹿児島県においては、笠ノ原台地や野井倉台地等不毛と言われた大地が、通水のおかげで緑なす豊かな大地として生まれ変わりました。美しい日本の田園風景が残っているのは、先人たちの畑かん事業の賜物であると思います。

       紫陽花(あじさい)の 藪(やぶ)を 小庭の 別座敷  ~松尾芭蕉~

 梅雨が明けると本格的な夏の到来です。24年の県の観光統計でみると県内の宿泊人員は、8月が74.5万人余りで、1年の内で一番宿泊者が多い月となっています。地域別で見ると、鹿児島地区に次いで霧島、指宿が大きな宿泊先となっています。霧島地区は避暑地としての役割も果たしています。一方指宿地域は、海が近いことやプールを備えたホテルが多いことから、ファミリー層で賑わいます。

 夏休みの特徴として家族連れが主流で連泊が多いことがあげられます。隣県や県内の方が多く、数日間滞在するグループもあり、日替わりの滞在メニューの提供が求められます。

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 霧島地区は池巡り、トレッキングに加えて、隣接する曽於市や都城市との連携も欠かせません。特に霧島温泉は9種類の泉質に恵まれています。また、近隣の山は、昆虫採集や植物採集には最適の場所です。嘉例川駅、横川駅など歴史ある鉄道遺産があり、日帰りで人吉への鉄旅などもお勧めです。

 また、奥天降渓谷のエコツアーは、小学校の高学年以上には、スリルがあって大自然を満喫できるツアーではないかと思います。是非ガイドさんの同行をお勧めします。霧島から曽於地域の「悠久の森」、「桐原の滝」、「溝ノ口洞穴」、都城市にある「関之尾の滝」等は、車で気軽にまわれる場所で、いたる所に清流や滝が点在し、森林浴やキャンプ地として賑わいます。

 錦江湾に面した指宿は、大隅半島やロケット基地見学ができる種子島、世界自然遺産の屋久島方面、南薩摩地域の拠点として、便利な位置にあります。市内には「岩崎美術館」や「薩摩伝承館」、「COCCOはしむれ」等カルチャー施設も整い子供たちの学習教材にも最適です。

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 大隅半島に渡り無料となった佐多岬、滝壺の近くまで行ける雄川の滝、清流が美しい花瀬、内之浦ロケット基地見学等多彩なコースがあり、県と観光連盟が作成した拠点地域からの「南大隅広域観光周遊ルート」が参考になるのではないでしょうか。


 また南薩地域では、JR最南端の駅西大山駅、番所鼻自然公園や釜蓋神社が整備されています。大野岳周辺での「茶もみ体験」など受入態勢が整ってきました。また、「杜氏の里笠沙」や「明治蔵」など鹿児島が誇る焼酎文化にも触れていただきたい。坊津は、梅崎春生の小説「幻化」の舞台であり、密貿易で栄えた街の面影が、随所に残り街歩きにも最適な地域です。

 枕崎駅は本土最南端の終着駅で駅舎も復元されたことから、全国から観光客が訪れています。今鰹節を活用した出汁が全国的に注目を浴びています。「Show-1グルメグランプリ本大会」で優勝し、殿堂入りの「枕崎鰹船人めし」や「かつおラーメン」なども是非ご賞味ください。「指宿から始まるかごしマップ 南薩摩広域観光周遊ルート」を参考にしてください。

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 夏休みは特に、宿泊施設や観光地でのファミリー向きの企画を充実させることが必要です。昼間は、森林でのカブトムシ獲り、魚やえび、かに等を網で掬う等小川での水遊びが楽しみです。また、裸足で砂浜を歩かせ、貝殻拾いや漂流物の観察をさせることは、子供にとって環境の大切さを学ぶチャンスです。

 夜は星空観測やホテルのロビーに縁日をもうけ、かき氷、花火等を提供することで、大人も童心に帰り一緒に楽しめるのではないでしょうか。

 ところで、7月1日から成田~奄美大島間にLCCの「バニラ・エア」が就航します。大市場を抱える関東圏からの就航は、新たな需要開拓につながります。特に低価格帯の運賃は若者に支持され、今年の奄美はサーフィンやダイビングに加えて、多様性の動植物が生育する島の「金作原原生林」、「住用のマングローブ」、「加計呂麻島」等人気のスポットになりそうです。世界自然遺産登録候補地として、その魅力をPRするとともに、「おもてなしの心」を忘れず対応していただきたい。

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 4月から高速の新造船が就航した甑島も、人気スポットの一つになるのではないかと 期待しています。5月の連休中は昼食する場所が少なく、来島者に不便をおかけしました。宿泊施設、食事施設が少ない島だけに、キャンプ施設の整備点検や浜辺でのバーベキュー等島ならではのおもてなしが、求められます。

 夏に向けて、キャンプ場の整備や担当者の教育も不可欠です。特に海や川遊び、登山等は天気予報等最新の注意が必要です。長期予報によると、今年の夏はエルニーニョ現象で冷夏の予想になっています。平成5年の夏には鹿児島は未曽有の大雨となり、いわゆる8・6水害で大きな事故が発生しました。自らの施設や周辺のアクセスの状況等には常に配慮し、最盛期の需要を取り込み、鹿児島の魅力をさらに広げる機会にしたいものです。                   

No.314 地域活性化は若者の雇用拡大から~観光関連産業は受け皿になりうるか~

2014年6月9日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 鹿児島市内に、夜はホテルやレストランで等で働き、昼間は宿泊関連業務、鹿児島の観光の魅力、おもてなしの心等を学ぶ専門学校「鹿児島ホテル短期大学校」があります。

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 先日、今年の新入生35名に講義する機会がありました。学生さんは朝の仕事を終えて、午前中1番目の授業でしたが、きちんとした挨拶を受け、授業中誰一人頭をたれる学生もなく真摯な態度に、職場や学校での教育が行き届いていると感じました。観光立県鹿児島にとって、このような教育を受けた学生さんたちの雇用の拡大が図られることを期待しています。

 日本の観光教育の現状と課題等について述べたいと思います。日本において、観光について学べる大学は、現在国公立では和歌山大学と山口大学、琉球大学、奈良県立大学の4校です。私立大学は、立教大学、文教大学、長崎国際大学等35大学に関連する学部、学科があります。

 また、専門的な分野を勉強する大学院では、国立は北海道大学と琉球大学、私立は札幌国際大学等4大学のみです。観光学部は、人文科学を中心としたもの、観光地・地域づくりに主眼を置いたもの、観光産業における接遇者養成を主にしたもの、経営学を主眼としたもの等に分けられます。

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 大きな課題としては、これらの大学を卒業しても観光関連の企業、団体に就職できる保 証はなく、学生時代に学んだ観光の知識が、入社に優位性を発揮できる企業は多くありま せん。多くの企業が学部を問わず、オープンで人材を求めていることがあげられます。

 観光関連の企業が、観光学部卒の採用の枠を設けることができれば入学者数も増えると考え られます。出口の確保が不可欠です。観光関連の学部は、学生確保に苦労している現状が あり、来年度募集を停止している大学もあります。

 次に最近重点施策の中に、観光振興をあげている自治体が多く見られます。その意味で授業の一環として、地域創生や情報発信の方策について学ぶことが役に立つのではないでしょうか。観光地づくりは、地域づくりにつながります。

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 日本の国内旅行は成熟し、従来の団体旅行やエージェント依存だけでは、今後大きな発展は期待できません。日本の第1次・2次産業をもっと観光に活かすべく、都会との交流を増やすことで、グリーンツーリズム、ブルーツーリズム、ものづくり、産業遺産、伝統工芸、食、祭り、伝統行事等が魅力になります。これからは、都会の人が田舎を学ぶ時代にしていかねばなりません。

 宿泊施設で見ると、従来の1泊2食の形態から泊食分離が進み、地域の飲食店等で食事 をとる客が増えているのも事実です。日本旅館で食事を取っていただくためには、「おもてなしの心」や「和食の魅力」を伝えることが大切であり、人手と教育を要し応分の経費もかかります。日本の旅館文化を継承していくため、大学のカリキュラムに、接遇、日本料理、器、出汁等について学ぶ機会をつくってほしいと思います。

 今後益々増加するインバウンドへの対応や6年後のオリンピックを控えて、おもてなし の心の醸成や、和食の世界無形文化遺産登録による「日本の文化の伝承」が重要になってきます。産学連携によるしっかりとした人材育成が求められています。

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 またビジネスホテルやシティホテルは、WEBを活用し、弾力的な価格体系で顧客獲得に力を注ぐ一方、低価格が常態化して苦戦を強いられている施設もあります。インターネットの普及は今、ホテルにとって諸刃の剣になりつつあります。特に地方のホテルが厳しく、資金力を武器に全国展開しているホテルは、安売り攻勢をかけています。

 最近のマーケットは、団体旅行から個人旅行にシフトし、しかもインターネットの急激な普及で、販売方法や商品体系が変化し、コンピューターに精通した人材も必要です。地域のホテルが生き残るには、地域からの希少な情報発信、着地型ツアーの提供、手書きのレターを添える等、宿泊者に感動をもたらす「おもてなしの心」が必要です。

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 ヨーロッパの観光地では、景観整備や環境を守る取組が徹底されています。看板や登り旗等はほとんど見られません。日本でも子供ガイドやボランティアガイドの組織運営に、今以上の支援が必要です。地域を愛する「郷土愛」の構築が不可欠です。

 日本の人口は確実に減少していきます。その対策として交流人口の拡大が不可欠であり、外国人の誘致は欠かせません。2013年、訪日外国人が1千万人を超えました。これから東アジアを中心にインバウンドの増加が期待できます。

 現在の受け入れ状況は、価格、宿泊、観光のありかた等業界にとってすべてOKという状況ではありません。外国人が観光地で動きやすく、また、一定の経済効果をもたらす仕組みを整えることが迎える側にも求められます。若者も外国の文化を大いに勉強しなければなりません。

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 最後に和食は、鰹節、昆布、味噌、しょうゆ等日本の出汁文化に特徴があり、調理人が作りだす包丁の巧みな技、器、盛り付け等が、世界の人々を魅了します。この素晴らしい日本の伝統文化を国内外の人にPRするのが、観光の役割の一つです。観光を日本の重要な産業とするには、人材教育の徹底と雇用をきちんと確保することです。

 持続できる観光地とは、そこに住む人が地域の文化をしっかりと守り、観光客にとって居心地の良い場所でなければなりません。鹿児島が真の意味で、観光立県になるためには、若者が観光に興味を持ち、雇用の拡大が図られることではないでしょうか。 

プロフィール

古木 圭介プロデューサー
鹿児島県
観光プロデューサー
古木 圭介
(平成29年4月より就任)
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