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No.342 2014年を振り返る~外国人観光客が顕著に、交流人口のさらなる拡大が重要~

2014年12月22日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 今年も残り9日となりました。大型台風の襲来や集中豪雨、木曽御嶽山の噴火と自然災害に見舞われた年でした。冬季オリンピックで41歳の葛西選手の銀メダル、羽生選手の金メダル獲得や、ゴルフ界では地元鹿児島出身の15歳勝みなみ選手の史上最年少優勝の活躍など明るい話題もありました。

 選抜高校野球大会に、21世紀枠として、大島高校が鹿児島の離島から始めて選抜され、島の人々に大きな勇気を与えました。九州新幹線全線開業から3年9カ月経過し、開業効果に陰りが見える鹿児島の観光ですが、地域は必死になって誘客に努めています。2014年の取組等を振り返ってみたいと思います。

 鹿児島県全体の入り込み客は2月以降苦戦が続いていましたが、9月から回復基調にあります。県観光課が進めている「魅力ある観光地づくり事業」は、毎年10億円の予算をかけ地域づくりに貢献しており、それを活用した整備が進んでいます。

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 頴娃町地域では、官民の枠を超えた「NPO法人頴娃おこそ会」が頑張っており、定期的に会合を開き、地域づくりの勉強会や視察等を受入れています。地域づくりは、まさに人の存在が重要であると思います。


 垂水市でも、「千本イチョウ園」に加えて牛根地域の「埋没鳥居展望公園」、「宇喜多秀家候ゆかりの地」が整備されました。大隅地域は佐多岬や雄川の滝の整備が進み、新たな観光地になるのではないでしょうか。

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 北薩では、川内港から甑島へ水戸岡鋭治さんデザインによる高速観光船が就航し、多くの観光客が訪れ、ゴールデンウイーク中は昼食がとれないほど賑わいました。英国への留学生が船出したいちき串木野市の羽島には、「薩摩藩英国留学生記念館」が完成し、すでに3万人の来館者があり、人気となっています。来年が本当の勝負の年となります。


 鹿児島を訪れる観光客は、九州管内に次いで関東地域からが多いのが現状です。7月から、LCCのバニラ・エアが成田から奄美大島に就航し話題となりました。今まで羽田から1便しかなく、運賃が高くて商品企画が難しく、観光客の誘致に不便をかこっていただけに朗報となりました。

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 就航以来80%を超える搭乗率で、新たな需要開拓に繋がっています。年間を通じての誘客対策が重要です。格安航空運賃を武器に、ピーチ、ジェットスターなどが鹿児島線に就航しており、LCCの人気は定着していくものと思います。 


 着地型観光は、今まで知られていなかった地域の生活、文化、人、祭り、食等にスポットを当て、地域資源の掘り興しや人材育成等地域活性化につなげることが重要です。

 鹿児島中央駅前の「かごっまふるさと屋台村」は、来年が店舗の更新の時期であり、新たな出店も予想されており楽しみが増えます。屋台村は、25軒の個性あふれる屋台と1軒の焼酎専門店が軒を並べます。店は小規模ですが家族的な雰囲気が味わえるのが特徴で、鹿児島の食文化を堪能できる場所としての魅力が浸透し、外国人も多く訪れています。地域づくりのヒントになる施設です。

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 また、指宿枕崎線の観光列車「指宿のたまて箱」は、好調を維持しています。地域の皆様方が観光客に手を振るなど温かいおもてなしが評価されています。大雨によるがけ崩れに列車が巻き込まれる事故が発生しましたが、近くの指宿商業高校の生徒さん達が機敏な対応を行い、負傷者の救護にあたりました。



 日頃からの訓練と、おもてなし心が活かされ、乗客から多くの感謝の声が寄せられました。献身的な行動に対してJR九州より表彰を受けました。地域でのおもてなしの心が確実に醸成されつつあります。

 種子島宇宙センターから「はやぶさⅡ」が打ち上げられ、多くの見学者が訪れました。6年後の帰還に夢がふくらみます。屋久島は、JTBの調査で、日本にある世界遺産の中で日本人が一番行きたい場所に選ばれ、今後の誘客に弾みがつきます。

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 2回目の「鹿児島カレッジ」では、若者の意見を商品企画に活かすべく現地研修会を実施しました。今回は「教育旅行」をテーマにしており、新鮮なアイデアが寄せられています。今後関西、中国地域からの新たな教育旅行の商品として期待されます。


 教育旅行の誘致は確実に成果が上がっています。JR西日本とJR九州による修学旅行専用列車の設定がなされ、関西地域から34校、5,500人、筑紫地区から23校、4,520人の学生が利用しました。

 体験する農家民泊も順調に伸びています。県内で受入可能な家庭は約1000軒にもなり、県全体に広がっていることがあげられます。民泊について提起されているのがコンプライアンスです。農家民泊先進地の長崎県の松浦地区は、年間50,000人の受入を行っていますが、ほとんどの農家・漁家が「簡易宿泊所営業の許可」を取得しています。旅館業法で定められた許可を取得することが学校の信頼を得ることになります。

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 修学旅行は、一度に多くの生徒が動き、不況時でも実施され、取消しがなく、受入機関にとっては経営の見通しが立てられるなど安定した顧客といえます。今後は、バス料金のアップが予定されており、行先変更も考えられます。旅費の上限を考慮すると、佐賀県や山口、広島地域からの誘致に力を注ぐ必要があります。マリンスポーツの体験メニューの充実も求められます。

 また、学生のスポーツキャンプ・合宿を誘致すべく、福岡、大阪、京都でセミナーを開催しました。学生のスポーツ合宿は、宿泊施設や運動施設等の条件が厳しくなく、十分に練習時間が取れ、夜遅くまで使える施設が整っていることがあげられます。

 大隅地域は「さんふらわあ」利用による関西からの誘客がしやすく、支援策等も充実しており人気が高まっています。廃校となる高校跡地にスポーツキャンプの新たな構想がまとまり、誘致に拍車がかかるものと思います。

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 販促活動は、需要の多い首都圏対策が重要と捉えています。また、鹿児島市、霧島、指宿の3拠点地域から県内に広げる取組が必要であり、関係者によるモニターツアーを実施しました。北薩、南薩、大隅、離島地域とのさらなる連携も重要です。


 県民の方々が、それぞれの地域の魅力を語ることで観光の広域化が可能となり、持続的に観光客が訪れる「観光立県鹿児島」の確立に繫がるものと思います。地域・ふるさとに愛着を持つ人をどれだけ創るかが求められています。

 インバウンドは香港線の就航、宮崎~台湾線の増便、円安、免税品目の拡大等で追い風となり、過去最高の来訪者数となっています。官民あげて誘致策が効果をあげています。今年も韓国、上海、台北、香港、シンガポール、マレーシア、タイへ官民一体の誘致セールスを展開しました。他県と違う多様な観光資源の魅力を発信するため、メディア事業者の招聘を強化する必要があります。

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 エージェントの選択、招聘事業の絞込み、需要層にあった支援体制が必要と感じます。今後も国内旅行の大幅な伸びが期待できない中で、インバウンドの推進にあたっては、継続した人脈作りの重要性を感じています。日本全体で2014年は、1、300万人を達成すると予測されています。鹿児島でもさらなる誘客態勢が望まれます。

 市場におけるインターネットの利用は拡大して、しかも急速な変化も見られ、ネット販売は勢いを増しています。スマホ、タブレットPC、facebook等は旅行ツールとしての重要性が高まり、県のホームページの改修も定期的に実施しています。改修後のアクセス数は1日8,000件を超え140%の伸びとなっています。

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 2015年の「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」の世界遺産登録や「第30回国民文化祭・かごしま2015」の開催に向けての準備が着実に進められています。鹿児島の文化遺産を県民が学び、伝える機会にしなければなりません。

 2016年は薩長同盟150周年、2018年は明治維新150周年と続きます。鹿児島の歴史を再認識させる取組も大切です。鹿児島ゆかりの人物や歴史を題材にした大河ドラマや番組の制作を要望するため、官民一体で定期的にNHKへの働きかけを行ってきました。メディアの観光への波及効果は大きく、年間を通してしかも県全体に及ぶことです。

 2015年のNHK大河ドラマは「花燃ゆ」で、幕末の長州が舞台となることから、薩摩も関連があり、登場する機会が多くなるのではないでしょうか。観光客は西の方に向くことが予想されます。

 最後に今年も毎週コラムを配信でき、通算342号となりました。1年間ご支援いただき心から感謝申し上げます。ありがとうございました。来年は1月5日からスタートします。皆様良いお年をお迎えください。

            初雪や 水仙の葉
                      たわむまで
                             ~松尾芭蕉~

No.341 「先用後利」の精神 ~富山の薬売りの心に学ぶ~

2014年12月15日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 今年は日本列島例年になく冬の訪れが早く、北国から大雪の便りが届きます。雪の少ない鹿児島でも、慌ててストーブを出した家庭も多いのではないでしょうか。私の故郷大隅半島は鉄道が廃止され、今では車が移動の手段です。小学生の物心ついたころ、大きな袋を抱えて、年に数回家を訪問する薬売りのおじさんを良く見かけました。



 箱から薬を出して畳に並べ、在庫を数え少なくなった種類の薬を確認し、新しいものを箱に詰めている様子が印象的で、子供全員で取り囲んで見ていました。薬屋さんが最後にくれる四角い紙風船をもらうのが、何よりもうれしかったのを覚えています。空気を吹き込み破れるまで遊んだ経験をお持ちの方が多いのではないでしょうか。体の具合が悪いとすぐ箱から薬を取り出して、母親が飲ませてくれました。

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 富山の薬売りは、「越中売薬」と言われ、300年以上の歴史があります。医者が少なく、交通機関もない江戸時代から全国津々浦々を回り、貧富の差を問わず家に薬を置かせてもらっていました。しかもくすり屋さんは、「先用後利」という考え方に立ち、「先に使ってもらい、使った分だけ後で料金をいただく」というシステムです。

 まず、各家庭を訪ねて薬の箱を置いてもらう。この時点ではお金はいただかない。箱には「風邪薬、塗り薬、腹痛の薬、虫下し、傷薬、赤チンキ等」が入っており、緊急の際大変役に立っていました。数か月後、また、薬を置いた家庭を一軒一軒訪ねてまわり、使った分の薬代を払ってもらうシステムでした。信頼関係、助け合いの精神がなければ成り立たない商売です。

 苦しかった時代に農家の方々を励まし助けたエピソードが残っています。昭和の始めの頃、北海道が2年続けて凶作に襲われ、農家は大きな被害を被りました。苦しかったのは農家だけでなく、「富山の薬売り」にとっても大きな痛手となりました。

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 くすりの入れ替えに農家を訪問しても、凶作で十分食事も取れてない家庭もあり、子供たちの顔を見ると、とても代金は取れない心境になり「お金のことは心配せずに、病気になったら薬を飲ませて子供を元気にしてください。私は富山に帰ったら畑や田がありますから大丈夫です。」と新しく薬だけ補充して帰って行ったといいます。

 農家の人を励まし、笑顔を絶やさず、「越中おわら節」を唄いながら村を歩き、中には富山からお米を取り寄せ、袋に少しずつ分けて配って歩いた薬売りもいました。厳しい時代には富山の自分の畑や田を売って薬売りの仕事を続けた方もいたと言います。

 その後北海道は、大豊作に恵まれました。それまで滞っていた薬代が、一度に回収できるようになり、薬屋が宿泊している宿まで届ける農家の方もいたと言います。また、「他の支払いを後回しにして、薬代を先に払わなければ」と恩義を感じて、雪解けを待ち続けた家もあったと言う。「お客様は家族同然」という強い信頼関係の構築までには、永年にわたる家庭と「富山の薬屋さん」との、琴線に触れる助け合いの物語があると思います。

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 最近はテレビショッピングが盛んで、薬、健康器具、食品、電気製品、衣類等ほとんどの品物が電話一本で買えます。「効果抜群」、「30日以内は返品自由」、「今電話いただいたらプラス1本サービス」等巧みな言葉に引きこまれ、製品を購入している方も多いと感じます。

 購入は本人の自由判断であり、止める理由もありません。しかし「富山の薬売り」と比べると、心の通い方が全然違います。直接会って商売することと、効率よく電話で注文を取ることの違いだけですが、「富山の薬売り」は、直接目の前で説明されることで安心感と信頼関係が生まれるような気がします。永年顧客から信頼されている企業は、なるほどと言う取り組みが定着しています。160年の歴史を誇る老舗の菓子屋さんは、お釣りは必ず新札で渡します。

 日中国交回復に貢献した故田中角栄首相の心を動かしたのは、中国の故周恩来首相が指示して出した新潟県柏崎市の味噌と言われます。

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 田中首相が訪中した折、田中首相の好みを事前に調べ、徹底的に研究し、首相の好みの天保2年創業の「越後みそ西」の、田舎みそを使ったみそ汁を朝食に出したところ、本人が大感激し、周恩来さんの気配りに心を動かされ、交渉がスムーズに進んだと言われています。

 これからの企業発展には、経営者の「志」が反映され、「オンリーワン」、「ファ―ストワン」の商品を提供し、商品のストーリを語ることが勝ち残る条件になると思います。

 「富山の薬売り」の信頼関係構築に学ぶことが多くあります。成熟時代を迎え、物が売れにくい環境にありますが、顧客との信頼関係を構築することで、価値の高い「こだわりの品」が売れる時代ではないかと思います。
                            参考:おもいやりの心:木村耕一著

          薬のむ ことを忘れて 久しぶりに
                    母にしかられしを うれしと思へ(え)る
                                    ~石川 啄木~

No.340 商品と地域のブランドづくりに必要なものとは~差別化、品質保証、優位性、住民への浸透がかぎ~

2014年12月8日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 日本の各地域が交流人口拡大につなげようとブランドづくりに努力しています。ブランドづくりの方策として、商品開発や魅力あるまちづくり等があげられます。地域が「世界遺産」に登録されると知名度は一気に上がり、ブランド化が取り組み易くなります。

 ブランドの語源は、ヨーロッパのアルプス地方で行われている羊や牛などの家畜に押す焼印(BURNED)に由来すると言われています。他人の家畜と区別するために使われ、現代では他の類似品との違いを明確にするために使われています。

 ブランドとは、他との比較において優位性を認める記号であり、かつその記号に象徴される世界観であると定義されます。ブランドは生活者の心の中につくられるもので、認証マークやネーミングを作り、商品に付けたとしてもブランドが作られるものではありません。

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 地域ブランドとは、地域発の産品・商品・サービスのブランド化と地域のイメージそのもののブランド化(統合された地域ブランド)が相互に作用しあって形づくられたものです。屋久島や尾瀬、富良野など特徴のある自然・景観を有する地域は、地域イメージから新たな商品を生み出し、経済的効果の創発も可能となります。



 地域イメージの特徴の薄い地域では、地域の商品やサービスを開発することで、地域そのもののイメージのブランド化を図ることが可能となります。一度形成されたブランドも常に新しく変革して行かねば、生活者の心の中に留まることはできません。

 地域をブランドすることで得られる効果も大きいものがあります。他の地域と明確に違う優位性を確保できれば、「商品」は高く販売でき、多くの利用者が集まることになります。軽井沢や神戸、湯布院が良い例です。

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 継続して価値を創造し、地域ブランドを拡張していくことで、地域の商品への波及効果も大きくなります。地域をブランディングすることは、消費者から選んでもらえる地域にもなることです。他の地域ない優位性や独自性を発信し続ける努力も必要です。

 また、地域をブランディングすることで地域住民が地域に誇りと愛着心を持つことにも繋がります。来訪者の増加にもつながり、地域経済への波及効果も大きくなります。

 日本各地で地域資源を活用してブランド価値を高めている町を紹介します。町並み保存では、福島県の「大内宿」、愛媛県の「内子町」、南九州市の「知覧町」等があります。国の重要伝統的建造物群保存地域がその代表的な例です。

 大内宿には、かやぶき屋根の古民家が並び、訪れる人が参勤交代の途中の宿に立ち寄る雰囲気に浸ります。3つの地域に共通していることは、看板の制限や古民家の保護、生垣や庭園等が整備されているのが特徴であり、小奇麗な町並みが保全されていることです。歴史的遺産を地域住民がきちんと守ってきたことが、地域ブランド化を図ることに結びついていると感じます。

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 生態系の保護地区では、釧路湿原、尾瀬沼、四国の四万十川、屋久島等があげられエコツーリズムの推進には最適な地域です。JTBが調査した「日本人が行きたい世界遺産地域」として、屋久島が第一位に選ばれました。

 屋久島の住民は、世界自然遺産の島に住んでいることをもっと誇りを持っていいのではないでしょうか。四万十川は清流がブランドであり、尾瀬沼の景観は、「夏の思い出」の唱歌にでてくる自然が人々を惹きつけます。

 「奄美・琉球」が世界遺自然産に登録されると、奄美ブランドとしてその魅力が世界中に発信され多くの観光客が訪れるものと思います。外国語表記の充実、通訳案内人の養成、おもてなしの心の醸成等がブランド価値を高めます。

 民話・伝統芸能も地域のブランドづくりに欠かせません。岩手県の遠野市は、柳田国男の「遠野物語」で紹介され、「民話の里」として有名になりました。市民演劇も開催され、日本の原風景に憧れ多くのファンが訪れています。

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 富山市八尾町の「おわら風の盆」は、越中おわら節の哀切感に満ちた旋律にのって、町の道筋で無言の踊り手たちが洗練された踊りを披露します。哀愁のある音色を奏でる胡弓の調べなどが観光客を魅了します。元々旧八尾町の町内の住民が大切に守り育んだ民謡行事です。9月1日から3日にかけて行われており、今では25万人もの観光客が訪れます。 

 町の踊りが、全国的に有名となり、富山県を代表するブランドとして人気が高まっています。高山市、金沢市等近隣の県まで宿泊客が及びます。

 「東北4大祭り」、「京都3大祭り」、奈良「東大寺2月堂のお水取り」、「博多どんたく」、「徳島の阿波踊り」、「高知のよさこい踊り」、「長崎おくんち」等ブランド力のある祭りがありますが、地域の生活文化に根差して全国的に人気が定着していることがブランド価値を高めています。

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 約300年前から伝承される薩摩川内市の「東郷文弥節人間浄瑠璃」は、国内で4か所にのみ伝承される貴重な伝統芸能です。もっと出演の機会を提供し、日本の伝統文化を引き継ぐ若者を養成するなどして大切に保存して行く努力が求められます。そのことがブランド化に繋がるのではないでしょうか。



 商品のブランド化には、品質保証、差別化、優位性、地域住民にも浸透していることが不可欠です。わが町をブランド化するには、本物のストーリー性を持った商品展開と継続した情報発信ができる態勢づくりが重要ではないでしょうか。
             参考:旅のもてなしプロデユーサー技編 ぎょうせい

    津軽の雪
         こな雪 つぶ雪 わた雪 みづ雪 かた雪 ざらめ雪 こほり雪
                              ~太宰治の小説『津軽』から~

No.339 国内外からの交流人口をいかに増やすか~地域総力戦で誘客を~

2014年12月1日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 今年も残り1カ月となりました。衆議院の解散で、12月14日投票日となり、年末商戦をひかえて、旅行需要が停滞することが想定されます。後半の忘年会旅行等を取り込まねばなりません。

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 ところで、2011年に国立社会保障・人口問題研究所が発表した県の総人口将来推計は、2010年と比較して2031年には25万2千人減少します。人口減少に伴う県内消費額は20年間、毎年約152億円も減少していきます。


 また、「日本創生会議」からショッキングな調査データも発表されました。子供を産む年代の若者女性の数が、2040年には 10年と比較すると、県内の30市町村で半減すると指摘しています。地域別将来推計人口が公表され、大きなショックを受けた方が多いのではないでしょうか。消滅する市町村も想定されるなど人口減少は、今深刻な課題を我々に突き付けています。

 観光庁の試算によると、定住人口の1人当たりの年間消費額(124万)は、旅行者の消費に換算すると外国人旅行者10人分、国内旅行者(宿泊)26人分、国内旅行者(日帰り)83人分にあたるとしています。『観光交流人口増大の経済効果(観光庁:2013年試算)』

 少子高齢化と人口減少に対応し、地域の活性化には持続的な交流人口の増大が不可欠となっています。

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 ところで、JNTOから外国人の入込客の速報値が発表されました。1月~10月までの国全体の累計では1,100万9,000人となり、すでに昨年の年間実績を上回っています。このままで推移すると、1,300万人に達すると上方修正しています。

 好調の要因として円安効果、入国ビザの緩和、LCCの就航、免税品目の拡大、和食や祭り等伝統的日本文化の魅力が浸透していることなどがあげられます。本県においても外国人の宿泊客は20%以上の伸びとなっており、今年は過去最高の外国人が訪れるものと思います。

 このように市場環境の変化を考えると、地域は国内外を問わず積極的に交流人口拡大を推進する必要に迫られています。地域資源を活用して、県外か県内、海外、教育旅行等、わが町にどの地域からどのような需要層を誘客するのか、具体的な対応を講じていかねばなりません。観光のスタイルも変化しており、それに対応できる地域づくりも求められます。

 まず団体旅行から個人旅行の流れが顕著となり、個人旅行が全体の7割となっていることから、駅や拠点地域からのルート整備が不可欠です。鹿児島市はシティビューが運行され、観光地巡りには事欠きません。地域に於いて周遊バスの運行は、経費の面で難しい面がありますが、拠点地域や駅と連動した送迎バスの運行、レンタカーやタクシーの常駐など利便性の確保が重要です。

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 また流通構造が変化しており、予約行動にも大きな変化をもたらしています。インターネットはすでに日本人の約8割が活用しています。宿泊施設では空室状況が検索でき、直接予約できるシステムの構築が必要であり、それに対応できる人材の配置が不可欠です。

 観光協会、地域おこし団体等では、ホームページの日々の更新等が求められます。鹿児島県観光サイト「本物。の旅かごしま」には毎日約8,000人のアクセスがあり、前年比で140%の伸びとなっています。

 観光のニーズも変化しています。名所旧跡巡り、宴会を主とした狭義の観光から生活、文化等地域の魅力に触れる旅へと広がっています。観光は6次産業の視点で、地域の総合産業として捉える必要があります。異業種、異分野と経済が循環することが持続できる地域となります。農業、漁業、商工業、歴史、生活・文化、住民等を観光資源として捉え、ストーリーを加えて商品化することが求められます。

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 体験・交流が顧客のニーズであり、安全・安心、本物の提供が観光客の心を捉えます。特にイベントは一過性に終わらせるのではなく、他地域と連携する等いかに継続できるかが地域ブランドとして育っていきます。指宿の「菜の花マラソン」や「菜の花マーチ」は、全国から人が集まるまでに5年はかかっています。行政頼みではなく、民間の活力、人材の育成等が継続の力となります。

 また、外国人誘致も今後地域活性化の重要な課題となります。日本人の国内旅行は、少子・高齢化でマーケットは縮小していきます。台湾、香港、韓国、中国、ASEAN諸国等からは確実に増加しています。相手国の生活・習慣を知り、外国語表記、通訳案内人の育成、留学経験者や受入外国人を活用して、地域の魅力を発信し告知力を高めることです。

 他県にない鹿児島ならではのメニュー提供が差別化となります。砂蒸し温泉、桜島の噴火、世界自然遺産、漁業体験、武家屋敷での着物や華道等日本文化体験が喜ばれます。

 最後に観光客に県境はありません。隣県や同じ観光資源を持つ競争地域と連携することも知名度が上がり誘客につながります。市町村を繋ぐ観光地の整備や着地型商品の充実が、広域観光ルート定着の鍵となります。

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 自分の町は知られていないという考え方に立って、食、特産品、お祭り等をPRして、地域のことを解り易く発信することも重要です。旅行者の満足度を向上させるためには、おもてなしの心をいかに定着させるかも問われます。


 今年は、大きなイベントもなく観光客誘致には厳しい面もありました。甑島への高速観光船運行、「薩摩藩英国留学生記念館」オープン等北薩摩地域で話題が多い年でした。2年目以降も、観光客を維持できるかはこれからの取組にかかっています。常に新しい情報の発信に努め、市民もわが町の魅力を語り伝えることが大切です。

 来年は、「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」の世界文化遺産登録目標や、「第30回国民文化祭」の開催が大きな目玉となります。交流人口拡大は地域活性化の重要課題です。ポテンシャルの高い優れた地域資源を活用し、地域総力戦で戦う時ではないでしょうか。

       「寒いね」と話しかければ
                「寒いね」と答える人のいるあたたかさ
                                   ~俵万智~

プロフィール

古木 圭介プロデューサー
鹿児島県
観光プロデューサー
古木 圭介
(平成29年4月より就任)
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