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No.383 地域資源をヘルスツーリズムに生かす ~温暖な気候、花粉の少ない島、温泉、食等を商品に~

2015年10月26日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


 2012年度の「国民医療費」の総額は、39兆2,000億円余りで、6年連続で過去最高を更新しました。
(2012年度厚生労働省調査)

内訳では、65歳以上の医療費は65歳未満の4倍以上となっており、仕事をリタイアし比較的年金受給者が多い世代の医療費がかさんでいます。高齢化社会の進展で今後も医療費が増加していくのは、確実な状況です。
日ごろから病気にならない体づくりや、食事の改善など予防医学の推進等が求められます。健康づくりの機会を提供し、増大し続ける医療費の抑制が重要な課題となっています。

 このような中「医学的な根拠に基づき健康回復や維持・増進につながる観光」すなわちヘルスツーリズムが注目されています。


 日本では2006年に観光立国基本法が成立し、国として観光政策がすすめられています。「国民が健康で文化的な生活を享受できること」を政策の基本理念に掲げており、観光の重要性が示されています。
2009年に観光庁が作成したアクションプランでは①1泊2日の旅から2泊3日以上の滞在型の旅行者を受入易い環境づくりに努める。②国内観光を行う国民の満足度を高め、連泊・リピート客の増加を図ることなどを掲げています。

 ヘルスツーリズムは国民の健康づくりに貢献し、観光客の連泊・滞在客の増加を生みだし、地域に経済効果をもたらすものとして期待が高まっています。
 
最近の旅行のスタイルは、団体旅行から個人旅行に変化し、体験・交流型の旅行が増加していることから、滞在先での多様な観光資源を活用したメニューづくりが重要になっています。

 ヘルスツーリズム推進上のメリットや課題について整理したいと思います。

 地域のメリットとしては
・「地域住民が主体となった健康街づくり」を掲げることで、運動や食等に興味を持ち健康的な街づくりの推進が展開できます。そのことが医療費の軽減化につながります。
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・「健康街づくり」は、自治体の政策の柱として、地域の新たなイメージアップや知名度が向上できます。埼玉県の東松山市で毎年開催される「スリーディマーチ」は、全国から15万人を超えるウォーカーが集まり、市民あげて歓迎し、健康街づくりに努力しています。
・地域資源を活用して滞在メニューやイベントを売り出すことで、誘客が容易となり経済効果が見込めることです。たとえば、温泉療法、世界自然遺産地ウォーキングやマラソンコースを設定することで、地域の新たなインフラが整備され、町づくりが進み、観光客を誘致しやすくなります。
 
 観光関連業者のメリットは
・リピーターの創出や宿泊回数の増加は、観光関連会社の取扱の増につながります。
・新たなビジネスモデルが構築され、雇用増等新たな経済効果を創出できます。
 
 受入れ地域の推進上の課題について触れたいと思います。
・単独での運営は厳しく、「産」、「学」、「官」、「民」の連携に基く組織を確立することが持続できる地域となります。
・各自治体の政策の一つとして、ヘルスツーリズムを推進できる体制づくりが必要です。例:教育委員会や健康増進課、観光課等に担当者を配置することが不可欠です。
・「健康街づくり宣言」だけに終わらせず、市民参加型の健康イベントを年間スケジュールに組み込み、家庭、地域での取り組みを推進することです。
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・発地、着地双方のエージェントが商品開発しやすいメニューも導入することが重要であり、プログラムの効果等を顧客が理解しやすい「ストーリー化」が必要です。
・温泉や森林、海等の自然の恵みを都会の人々にいかに楽しく体験させるかが重要であり、人材育成や清潔で洗練された施設の設置が必要になります。
・花粉症対策等には、リピーター化を推進して長期の滞在者を増やすことが大切です。
 
 ヘルスツーリズムの具体的事例として伊勢鳥羽志摩地域では、経済産業省の「サービス産業創出支援事業」を活用し、2泊3日の旅行「透析ツアー」を実施しました。透析施設、宿泊施設を同時に予約できるシステムを作り、食事メニューや患者の体調に配慮したプログラムを作成しました。
 
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 奄美大島では、「タラソ奄美」において海の資源を活用したヘルスツーリズムのエビデンスづくりを実施し、科学的に検証した長寿食やタラソテラピー、亜熱帯のウォーキング、島唄・島踊りを加えたモニターツアーを実施しました。
 
 指宿にある「メディポリス指宿」では、温泉地としての滞在の魅力を活かし、粒子線治療によるガンの最先端医療を行っており、多くの体験者を生み出しています。

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 また指宿ロイヤルホテルでは、砂蒸し温泉の活用や食事、運動等を組み合わせた「IT湯治」というシステムを開発し、データに基づく健康増進をPRしています。指宿の新しい魅力となっており、「IT湯治」は特許を取得しています。

 
 最後に本来の「ヘルスツーリズム」は医学的な根拠に基づく健康回復・維持・増進につながる行為が不可欠ですが、医療的な拘束時間にとらわれると、「転地医療」と同じとなり、観光的な要素は少なくなります。
 これからの「ヘルスツーリズム」は"医療的な要素"と"観光と云う楽しみな要素"を組み合わせることで、楽しみながら元気回復を実感することも必要ではないでしょか。
 ツアーに参加して、食事の改善や生活スタイルの変化を自然に改善できるかも大切なことです。
 
ヘルスツーリズムで重要なことは、医科学的な根拠、裏付けがなければ、健康になるという表示は違法であり、「薬事法」、「景品表示法」、「特定商取引法」、「消費者契約法」等に抵触する恐れがあります。効果確認には、滞在先や帰省後、病院で検診を受けることです。

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ヘルスツーリズムは、温泉やウォーキング、健康食、温暖な地での滞在等、異日常的な体験をすることで、健康回復を実感し、生活スタイル改善などにつなげていくきっかけづくりとなり、再び訪れたい地域になることが重要です。

花粉の少ない龍郷町では、春先の花粉症に悩まされる人が本土から逃れて、一定期間移り住む人がいます。2地域2居住等の推進にもヘルスツーリズムは、貢献できるのではないでしょうか。

    小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば
               今ひとたびの みゆき待たなむ
                    ~貞信公 小倉百人一首より~ 
   
※異日常的な体験・・地域住民にとっては日常的な活動であるが、旅行者にとっては珍しく体験してみたいと感じられるもの。田植え、稲刈り、森林歩き、
参考:ヘルスツーリズムの手引き 平成22年3月 社団法人:日本観光協会




No.382 焼酎文化を生かす取り組みを ~焼酎の消費量を増やすために~

2015年10月19日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 それほどに うまきかと人の 問ひたらば
         なんと答えむ この酒の味
                               
若山牧水「白梅集」より

 新酒が出回る頃となりました。10月31日から、全市町村で開催される「第30回国民文化祭」期間中には、多くのイベントがあり、焼酎による「おもてなし」も行われるのではないでしょうか。

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 県内には105の焼酎の醸造所と、2000を超える銘柄があり生産量は日本一です。
しかし、10年連続で全国1位だった本格焼酎の出荷量は、宮崎県に抜かれて第2位となりました。
(2014酒造年度:14年7月~15年6月の実績、鹿児島県酒造組合発表)
企業別でも、都城市にある霧島酒造が焼酎売上高で3年連続トップになっています。


 鹿児島は杜氏の発祥地であることから、多くの市町村に焼酎の蔵元があり、地域住民に永く愛されてきました。これからも地域の文化として、蔵元を守り、育てていかねばなりません。県民が地元の焼酎を愛し、事あるごとに利用の頻度を高めることが大切です。

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 県議会では、焼酎の消費拡大を図るため「かごしま本格焼酎の産業振興と焼酎文化でおもてなし県民条例」を制定して、乾杯の際焼酎を使う等県内焼酎の愛飲者を増やす努力を行っています。
*条例第8条「個人の嗜好及び意思を尊重するものであり」決して強制ではありません。

 焼酎は鹿児島で育まれた大切な地域資源であり、焼酎文化を見つめなおし、安定した需要を確保していく取組が求められています。 一部企業だけが恩恵を受けるのではなく、鹿児島の焼酎として全体のイメージアップを図り、全国ブランドとしての地位を確立することが重要です。

 大分県は「温泉県おおいた」のキャッチフレーズや大胆なCMで、温泉ブランドの確立に力を注いでいます。

 鹿児島焼酎のブランドイメージの確立には、まず焼酎のルーツを語ることが必要であり、取次店や居酒屋には簡単なルーツを書いたパンフレットを置くことが求められます。 また、伝統的焼き物「黒じょか」での作り方、美味しい焼酎の飲み方等の伝授も欠かせません。

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 焼酎に付きものは、地元伝統的料理です。さつま揚げ、鳥刺し、きびなご、黒牛、黒豚等です。特に地域ならではの料理が好まれると思います。地元の人が行く店で、地元流の飲み方を伝授することで、自然と交流も深まります。
 宿泊施設ではできるだけ地元の焼酎を提供する意識が必要ではないでしょうか。名前が浸透している銘柄を提供しがちですが、地元のものを一緒に勧めることで新たな需要開発につながるのではないでしょうか。
広告・宣伝力が需要開拓に一番必要なことですが、小規模の会社では限界があります。組合全体として、鹿児島焼酎の魅力を伝え、浸透させていかねばなりません。

 かつてあるビールメーカーの支店長は、地元でのシエアが低かったために、宴席には必ず栓抜きを以て望み、自社のビールビンの栓を抜いてまわり需要開拓に務めたとそのエピソードを語ってくれました。貪欲な営業姿勢におどろかされました。 杜氏が大事に守り抜いた地域の焼酎を、鹿児島の文化として発信し、観光資源としても今後も活用していきたいと考えています。
皆様ぜひ県内焼酎を愛飲し、PRに努めていただきたい。

 ところで、子供の頃正月や祭りの宴席で大人たちが、木の棒を手に隠して、面白い言葉で数当てをし、焼酎を楽しく飲みながら親睦を図っている光景がよく見られました。

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 いまではあまり目にする機会は少なくなりましたが、南九州に古くから伝わる「なんこ遊び」です。 具体的には、なんこは対戦する二人が向き合い、固い樫の木でつくられた10センチ程度のなんこ珠を3本後ろ手に隠して持ち、その何本かを右手に移して畳の上や、なんこ盤に突き出し合計数を予想して言い、互いに手を開いて持っている本数を見せ合い、勝ち負けを決める遊びです。負けた方が、事前に盃に盛られた焼酎を飲むことになります。

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 「なんこ遊び」は、昔は祝宴の中では必ず見られた光景でしたが、今ではあまり見られなくなりました。核家族化が進み、親戚、地域の人が一緒に集まる機会が少なくなっています。又地域の伝統祭事も高齢化が進み、行事の後に必ずおこなっていた宴会も減ってきており、なんこ遊びを伝授することも難しくなっています。地域コミュニティの崩壊が、伝統的遊びにも影響しています。 「なんこ」は漢字では「南交」と書き、南方と交易が盛んであった薩摩藩が取引の祭、接待の一つとして活用した高尚な遊びと言われています。県外の方がみえた時、なんこ遊びを取り入れて、遠来の客を歓待してはいかがでしょうか。

 酒肴の変化や業界の販売競争も激化し、加えて人口の減少が顕著となり大きな需要拡大は厳しくなっています。なんこ遊びをしながら、特産品の薩摩焼の一つである「黒じょか」で盃につぐという伝統的飲み方を教えることで、お土産としてセットで買ってもらうことにもつながります。

 最近では、度数の低いものや季節感溢れるもの、女性に優しい焼酎も販売され飲みやすくなっています。 焼酎文化の復活を図り、合わせて需要拡大を図りたいものです。

    白玉の 歯にしみとほる 秋の夜の
             酒は静かに 飲むべかりけり
                                   ~若山牧水『路上』~

No.381 個人タクシー乗務員は選ばれた運転手である~琴線に触れるおもてなしを~

2015年10月13日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 『道がつづら折りになって、いよいよ天城峠に近づいたと思うころ、雨脚が杉の密林を白く染めながら、すさまじい速さでふもとから私を追ってきた。・・・』
                      川端康成「伊豆の踊子」より

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 出水市の上場公園に咲く25万本のコスモスが見頃となり、絨毯を敷き詰めたような幻想的な美しさが訪れる観光客を魅了しています。訪れる客は、帰りには武家屋敷を散策し、近くの農園でミカン狩りを楽しむのも良いかもしれません。

 北海道からも紅葉の便りが届きました。年間を通して一番快適に過ごせる季節であり、美しい日本の原風景が至る所にみられる時期ではないでしょうか。

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 秋は熟年の個人旅行が主流であり、比較的ゆっくりとした旅が好まれ、レンタカーやタクシーを利用する人も多くいます。
 鹿児島中央駅でも、観光客目当てのタクシーの待機が多くなっています。しかし、乗車した際のタクシードライバーの態度が気になります。

 出張帰りで時間が無く、近くの会議場を行先として告げると、乗った途端に「お客さん場所は近いですよ。」と、また、小声で「ついてないな。」と嘆きの恨み節。到着までの車内の冷たい無言の雰囲気、二度とその会社のタクシーに乗るものかと、しっかりドライバーの名前を確認して下車。車は急発進して去って行きました。

 次は、あるホテルで打ち合わせがあり、「近いですけどすみません」と告げると、「結構ですよ。基本料金でもありがたいです。これからもいつでもご乗車ください。」と逆に感謝され、恐縮のあまり思わず目頭が熱くなり、下車する時千円からの「お釣りは結構です」と素直に言葉が出ました。皆さんも同様な経験があると思います。

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 先日鹿児島個人タクシー事業組合の300名のドライバーを対象に、スキルアップ研修会があり講師を務めました。演題は「リピーターを創造する究極のおもてなし」でしたが、皆さん真剣に聴いていただき感謝しています。

 タクシーに関して、今まで寄せられた主なクレームは次のような事柄です。

・乗車して行き先を告げたら、「歩いた方が早いです」と言われた。近間であったせいか急発進、急ブレーキをかけて運転された。
・乗ったら「1時間待ってワンメーターか」とぶつぶつ言われた。
・30分間一言も喋らなかった。地域のことを訪ねたが、「解りません」の一言しかない。
・土産店へ行くことを再三勧められた。行きたい店は料金が高いといわれた。
・乗下車の際、「こんにちは」、「ありがとうございます」の一言もない。帽子もかぶらず服装もだらしない。乗車中ガムを噛み続けていた。
・大きな荷物があるのにトランクを開けず、お願いして開けたが自分で積んだ。身障者の親が乗り終わらないうちに、発車しそうで危なかった。
・料金を払う際、「ありがとうございます」の一言もなかった。

 逆に感謝された点は
・乗降する際外に出て丁寧に挨拶しドアを開け閉めした。笑顔が印象的であった。
・いつも通っている道があったら、そのルートを走りますので教えてくださいと言われ、良心的なドライバーと感じた。
・短い距離であったが沿線のことを丁寧に説明してくれた。「5分間で620円はありがたい商売です」と感謝された。
・子ども連れのため、女性の運転手の細かい配慮が嬉しかった。制服を身につけ、安心感があった。
・時間を聞いてルート以外の場所も追加料金を取らず案内してくれた。知覧では戦争の悲惨さを涙ながらに語ってくれた。
・ホテルに着いたら玄関まで荷物を持ってくれた。帰りも良かったら利用くださいと、名刺を渡された。
・目的地が分らなかったが、いろいろ手を尽くして調べて案内してくれた。
・前日の記念写真をプリントして、駅までわざわざ届けてくれた。

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   クレームと感謝の事柄を比べると、その差は歴然です。感動をもたらす「おもてなしの心」には、次のような接客姿勢が必要ではないでしょうか。

・感謝の気持ちを込めて「○○タクシーの誰々です。○○様ありがとうございますと」と帽子を取り挨拶、名刺を渡す等、特に第1印象が大切です。
・車中では、できるだけ話しかける。どこから来られたかや、目的を聞いてみる。話しかけることで、翌日の予約が入ることが多くなります。
・プロとして、鹿児島の歴史や観光地の魅力を勉強することが大切で、車中でのお客様の退屈感が減少します。
・ハンディキャップのある人や老人の方にはきめ細かい配慮が必要です。乗降の際の手助けや見学地でのサポートが欠かせません。
・マニュアルにないことをさりげなく実行し、満足を超えたところに感動があります。
 デジカメで写真を撮ってあげたり、夏場は簡単なお手拭きを準備すると喜ばれます。
・真の仕事とは「お客様を感動させることである」。感動を自ら体験してこそ、「おも てなしの心」が提供できます。「もう一度あの人に会いたい」、「あの人のいる会社の車に乗りたい」と言われるドライバーのみが勝ち残れます。
・タクシーで伸びているのは、社員教育に力を入れている会社です。継続は力なり、指名・信頼される個人タクシーにならなければなりません。
・「忘己利他の心」で接することが、結局自分に善が戻ってくることになります。

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 タクシーは、観光客が駅で降り立ち初めて乗る交通機関であり、その対応が地域の印象となります。観光客は行先の位置関係がわからず、タクシーを利用します。車内では地域の話題の提供や名刺を渡し、「帰りの用があったら電話ください」等次につながるよう気軽に声をかけ、さわやかな印象を残すことが大切です。

 ところで、タクシー乗務員の皆さまのマナーもずいぶん改善され感謝の手紙も多数寄せられています。親切な運転手が増えることが「観光かごしま」のイメージアップにつながります。
 個人旅行が主流となり、鹿児島の観光について聞かれる機会も増えていますので、地域の歴史、文化、食などについて自ら知ることが重要です。観光客に聞かれて、「この地域には魅力的なところはありません」と応える方がいますが、わが町を誇りに思わないところには人は来ません。わが町、隣町、県内各地の魅力を伝え、周遊し泊まっていただく取組が求められます。

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 旅行者の心に残るものは人の印象(おもてなし)です。真心のこもったおもてなしが、観光客の鹿児島に対する評価となり、リピーターになります。「明治日本の産業革命遺産」が、世界文化遺産に登録されたこともあり、タクシー乗務員は、現地を訪ねてその知識を深める必要があります。

   お客様に喜んでもらえることが、タクシー乗務員としての最大の喜びであり、それが「サービス イズ アワ ビジネス」の実践です。
 個人タクシーのみなさんは選ばれた人であることを自覚して、他のドライバーの模範となるよう頑張ってもらいたいと願っています。
 最後に今回が345回目の節目となる講演となりました。ありがとうございました。

    大門の いしずゑ苔に うづもれて
             七堂伽藍(しちだうがらん) ただ秋の風
                          佐々木信綱『思草』
       *作者が奥州平泉の毛越寺に旅した折の作です。

No.380 消費者のニーズに対応できる態勢づくり~滞在して飽きない地域に人が集まる~

2015年10月5日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

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 10月に入り、県内の観光名所はお客様が目立つようになりました。世界文化遺産の登録地がある仙巌園は、休日になると昨年の約2倍の入園者で賑わっています。新岳の噴火で影響を受けている屋久島も、登山者の数が少しずつですが回復基調となっています。

 しかし桜島へ渡る人は、レベル4が出される以前の数には程遠く、風評被害が続いています。大都市圏での安全性のPR強化や桜島に渡り易くする仕組み作りを急ぎ、観光客を呼び込むことが求められています。

 阿蘇山や諏訪之瀬島でも噴火が発生していますが、桜島では約5千人が普段と変わらない生活を営んでおり、また桜島アイランドビュー号は運行し、湯之平展望所、有村溶岩展望所等従来と変わらず行くことができます。メディアでの発信や招請事業を強化していきたいと考えています。

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 ところで、「じゃらんリサーチセンター」が、実施している「じゃらん宿泊旅行調査2015」の結果が公表されました。

 この調査は、観光などを目的とした宿泊を伴う旅行実態を把握するために行っている調査で、昨年度1年間(2014年4月~2015年3月)の出張・帰省・修学旅行などを除いたマーケットの動向が把握できます。

 8つのテーマ別・都道府県ランキングは下記の通りです。
・地元ならではのおいしい食べ物が多かった
 1位:高知県 2位:北海道 3位:富山県 4位:鹿児島県 5位:沖縄県
・魅力ある特産品や土産物が多かった
 1位:沖縄県 2位:鹿児島県 3位:京都府 4位:石川県 5位:北海道
・魅力的な宿泊施設が多かった
 1位:沖縄県 2位:大分県 3位:千葉県 4位:熊本県 5位:神奈川県
*鹿児島県はトップ10に入れず

・現地で良い観光情報が入手できた
 1位:沖縄県 2位:奈良県 3位:京都府 4位:青森県 5位:鹿児島県
・子供が楽しめるスポットや施設・体験が多かった
 1位:千葉県 2位:沖縄県 3位:和歌山県 4位:長崎県 5位:大阪府
 *TDLや水族館、USJ、ハウステンボス等の大型施設がある県が多い。
・大人が楽しめるスポットや施設・体験が多かった
 1位:沖縄県 2位:千葉県 3位:京都府 4位:長崎県 5位:奈良県
・若者が楽しめるスポットや施設・体験が多かった。
 1位:千葉県 2位:沖縄県 3位:大阪府 4位:長崎県 5位:東京都
・地元のホスピタリティを感じた
 1位:沖縄県 2位:鹿児島県 3位:岩手県 4位:宮崎県 5位:青森県

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 最後に、総合的な満足度の高かった都道府県は
1位:沖縄県 2位:鹿児島県 3位:京都府 4位:熊本県 5位:広島県
となっており、鹿児島県は2013年度以来2位に返り咲きました。


 また、沖縄県は、5つのテーマで1位にランクインし、総合的評価もトップです。県民あげて観光客の受入に当たっている姿勢が伺えます。

 この調査で、鹿児島県の評価について、
①九州新幹線全線開業年には多くの宿泊者があり、「おもてなし」が追い付かず総合的な評価が下がりました。その後、研修会の実施や送迎態勢の強化等を推進したこともあり、2位に返り咲いたことはいい教訓としなければなりません。
②観光情報の入手先としては、駅、ホテル、運輸機関、観光施設、飲食店等を対象にしていますが、様々な接点で地域の詳細な情報が容易に入手できる態勢が整いつつあるのではないでしょうか。日頃からのホームページ等での最新情報発信が重要になっています。

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 これからの取組の課題として
・宿泊者の7割は個人客です。宿泊先からの2次交通の整備や体験メニューなどの充実を図り、連泊しやすい環境整備が必要です。一人旅が増えており、温泉地では効率的な経営をすべく、シングルの部屋や素泊まり対策が急がれます。

・1泊朝食型の観光客も増えており、地域のグルメや、地元生活者が訪ねるお店での接遇アップが求められます。そのことが消費につながります。
・品質に優れた安全・安心の食材を使い、地域を感じるお土産品の開発が必要です。世帯の構成人員は小さくなっており、チョイスできる特産品の販売が必要です。
・外国人が増加しており、多言語マップ、免税店、外国語表記のメニュー、簡単な会話集等、多くの施設に配置する必要があります。
・施設のバリアフリー化やベッドを備えた旅館の要望が多くなっています。日本文化を体験できる施設への転換も必要です。
・自ら県内の多くの場所に出かけて鹿児島の魅力を知り、発信することが求められています。特に世界文化遺産や離島の自然、生活、文化が新しい鹿児島の魅力です。ストーリーを語ることが大切です。
・「もの」の価値の行き着く場所は「価格競争」になりがちです。「もの」を「こと」に変えて取り組むことが、「価格」を超えた「感動」を生みます。「こと」に必要な要素は、人の心であり、ホスピタリティの原点です。

 最後に、観光客の地域の最終的評価は、そこに住む「人」です。リピーターとなる創客作りが重要で、「日本にもこのように素晴らしい県があった。また訪れたい」、「友人に鹿児島の魅力を紹介したい」、「あの従業員のいる宿泊施設にまた泊まりたい」、「あの親切なタクシードライバーと旅をしたい」と言っていただけるよう、県全体で「おもてなしの心」の構築に努めなければなりません。

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 2016年の調査では、鹿児島県の評価が多くの項目で上がるよう、顧客満足度を高め、一日も早く口永良部島や桜島に対する風評被害を払しょくしたいものです。

   参考:じゃらん宿泊旅行調査2015

プロフィール

古木 圭介プロデューサー
鹿児島県
観光プロデューサー
古木 圭介
(平成29年4月より就任)
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