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No.388 2016年の対策を怠りなく~ここ5年間で一番厳しい年に~

2015年11月30日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


 強い日本経済の復活に向けて、政府は地方創生の名のもと様々な施策を推進しています。観光の分野では旅行需要を喚起するため「プレミアム商品券」や「旅行商品造成支援策」等が各県で展開されています。
 その効果もあり、特にインバウンドが好調に推移しており、円安、ビザ取得要件の緩和、免税品目の拡大、和食の世界文化遺産登録、LCC就航効果等で、年内には2,000万人に到達する勢いです。


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 鹿児島県では、口永良部島の新岳噴火、桜島の噴火警戒レベルの一時アップ、「錦江湾サマーナイト大花火大会」の中止等で、最大の需要が見込める8月の宿泊客が落ち込みました。9月以降は、プレミアムお得旅キャンペーンの展開、「第30回国民文化祭・2015かごしま」開催等があり、比較的順調に推移するものと思われます。
 オープンから2年目に入った「薩摩藩英国留学生記念館」の人気も定着してきました。 近代日本の若き原動力となった薩摩人の偉業を学ぶことができる施設で、学校の一日遠足や視察旅行が多くなっています。
 LCCが就航している奄美大島への観光客が伸びています。沖縄と違った自然の魅力や島唄、伝統芸能等の情報発信が都会の人々の心をとらえていると感じます。


 ところで2016年は、「薩長同盟締結150年」の年ですが、他に大きなイベントも 少なく、ここ5年で一番厳しい年になると、覚悟して取り組まねばなりません。
 県民が県内の魅力を知り、自らPRできることが重要であり、県と観光連盟では引き続き次の3つの施策を展開します。

  1. 主要観光地域(指宿・霧島・鹿児島)発の広域観光周遊ルートの整備
  2. 源泉数全国2位を誇る本県温泉地の優位性を生かした温泉地めぐりルートの整備
  3. 鹿児島のNO1の観光素材である桜島の再評価と眺望スポットめぐりルートの整備
を中心にPRの強化と受入体制の充実も図っていきたいと考えています。



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 県内の話題としては、JR九州の観光列車でもっと人気のある「ななつ星in九州」が、 4月から「肥薩おれんじ鉄道」を走ります。「ななつ星in九州」が運行されている沿線の魅力を発信し誘客に結び付けることが重要です。車内で使用されている特産品や食材はブランド化を図らねばなりません。また、「おれんじ食堂」や「おれんじカフェ」の乗客を増やす努力も求められます。


 県内には28の有人離島がありますが、FDAやJACを活用し、オンラインのない空港からのチャーター便を増やし、時間的短縮を図ることで旅費の割高感を払しょくできると思います。新たなLCCの就航も待たれます。また、時間にゆとりのある熟年層には豪華なクルーズ船の寄港を、若者には夏の美しい海や大学のゼミのフィールドとして売り込まねばなりません。


 国定公園に指定された「甑島」、世界で一番美しい宇宙基地がある「種子島」、世界自然遺産の「屋久島」、平成30年に世界自然遺産登録を目指す「奄美大島・徳之島」等は、他県の島にない魅力を秘めており、オンリーワンの情報発信が必要です。


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 7月には「明治日本の産業革命遺産」、世界文化遺産に登録されました。その構成資産は3箇所です。「明治日本の産業革命遺産」は鹿児島がスタートであることと、そのストーリー性を語ることで遺産の価値が高まり誘客に結び付くと思います。登録された翌年の取り組みが重要と考えており、そのことが2018年の明治維新150年につながるのではないでしょうか。


 鹿児島市は、日本を代表する都市型観光の魅力を備えた街で、歴史、自然、温泉に加え、食の魅力が観光客の滞在を可能にしています。県内各地域の魅力が増すことが結果として鹿児島市に宿泊することになります。桜島のさらなる情報発信、アクセスや大会運営設備の充実等を活かし、MICEの積極的誘致が重要です。また、県庁所在地で温泉の泉源数が日本一であることのPRが求められます。


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 一方、指宿地域が苦戦を強いられています。各施設の設備やおもてなし等は問題ないと考えています。「指宿のたまて箱」の乗車率は好調であることから、多くの観光客が日帰り観光になっています。「砂蒸し温泉」頼みでなく、女性層、ファミリーが滞在したくなる仕組みづくりが必要です。駅前通りや2次交通の整備、小物店・カフェの設置、ブランド品の開発、大隅半島に渡りやすい環境整備、県内の子供たちの球技大会等の誘致が不可欠です。


 2016年も、筑紫地区、関西地域からそれぞれ集約臨時列車で中学生が訪れます。農業・漁業体験のメニューの充実、鹿屋、知覧の平和学習、桜島や霧島の火山・自然学習、鹿児島市の「明治日本の産業革命遺産」や歴史探訪等が優位性を発揮しています。
 県内全域に、約1000軒の農家民泊の供給が広がる中で、「簡易宿所営業」の取得を強力に進めていかねばなりません。宮崎県が態勢を整え、受け入れ学校を増やしています。


 キャンペーンの中心は、今年も最大のマーケットである関東地域や、身近に来ることができる福岡地区でのPRに努めていくことが得策と考えます。東京線は航空機の供給量が多く、商品企画が容易であり、MICEの誘致しやすいことも上げられます。JR九州が12月から3月まで、大手4社のエージェントと共同キャンペーンを展開します。九州管内では福岡県からの宿泊者が多いことから、大きな効果が期待できます。
 特に九州新幹線全線開業から5年目の節目の年であり、是非成功させなければならないキャンペーンです。


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 今後日本の人口は確実に減少することから、外国人観光客の誘致は欠かせません。イン バウンドについては上海線の利用促進やソウル線の夏場の搭乗率アップ、台湾線は宮崎線が週3便となり両県で7便体制となり、職場旅行や個人旅行誘客対策が必要になっています。また、12月14日から熊本~香港の便が就航し、南九州3県でデーリー運行となります。インバウンドは4泊もしくは5泊するツアーが多く、また、個人旅行が増加しており、レンタカーの乗り捨て料金の軽減、マップの多言語化等南九州3県の連携が重要です。


 ビザ支給要件緩和等で急増しているタイ、インドネシア、マレーシア等ASEAN諸国からの誘客に対しては、ハラールの態勢整備が不可欠です。
 クルーズ船が増えていますが、現状を分析して過分に期待せず、地域経済効果をもたらす観光ルートの設定を優先しなければなりません。


 WEB販売が急激に伸びる中で、情報化社会に対応できる新たな需要吸収の仕組みづくが必要となっています。楽天やじゃらん等とタイアップしている施設は、季節波動やイベント等需要をきちんと把握し、料金設定が必要です。
 また、インターネットの普及で可視化が進んでいることから、コンプライアンスの向上と迅速・正確な情報提供が求められています。


 2016年は土曜日を入れた3連休が7回ありますが、4日以上の休日はなく、旅行需要を喚起するには不十分です。平日対策、オフ対策など早目の仕掛けを準備し、季節感あふれる企画が必要です。周辺市町村の祭りや、花、食、伝統行事等を組み込み、「こだわり」「ここでしかない」「今が旬」等の生活・文化の香りがする商品企画が求められています。


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 鹿児島県は南北600キロに及び魅力多彩な観光資源があります。県民が足元の魅力を知り、住んでいる街を誇りに思うことが「郷土愛の構築」につながります。販促活動は、県外が主になりがちですが、宿泊施設等ではもっと県民向けの企画に工夫を凝らす必要があります。


 ここ数年で一番厳しい1年になると覚悟して、エージェントやキャリアとの商品造成やキャンペーンの展開、実効性のあるPR活動等スピード感をもって果敢に挑戦する気概で取り組まねばなりません。危機感を共有し、攻めの2016年でありたいと願っています。


       

      熟田津(にきたず)に 船乗りせむと 月待てば
                 潮もかなひぬ 今は漕ぎ出でな
                      額田王~万葉集~




No.387 武家屋敷と着物のコラボが話題に~地域に経済効果をもたらす視点で~

2015年11月24日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


     秋の田の かりほの庵(いほ)の 苫(とま)を荒み
                  わが衣手は 露に濡れつつ

                    天智天皇 ~小倉百人一首より~

 師走まで1週間、日の入りも早くなり、冬の訪れが近いことを知らせてくれます。自然の移ろいは正確にやってきます。

 今年も冬の使者ツルが、出水平野に飛来しています。11月7日の第1回目の羽数調査で、すでに昨年実績を超える14,086羽が確認されています。ピークは12月になることから、さらに数が増えるのではないでしょうか。平成9年度より19季連続で1万羽を超えることになります。

出水のツル飛来.jpg  国の特別天然記念物として、動物は21件が指定されていますが、出水平野のツルも「鹿児島県のツル及びその渡来地」として、約245ヘクタールの地域とともに指定されています。

 これほどのツルが永年にわたり飛来してくるのは、行政、地域の人々、ツル監視員など皆様の温かい保護活動が、これまでの実績づくりにつながっていると思います。

 ツルの越冬期間中は、餌やりや傷ついたツルの保護、観光客への対応、乗用車やバス・タクシーの交通整理のほか鳥インフルエンザ防止対策など地元に課せられた業務も多く、その苦労が察しできます。けがで弱ったツルが、監視員のもとで保護、治療を受けて元気になり、春先には仲間と一緒に飛び立っていく姿は感傷的な気持ちになります。


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 毎年越冬地としてツルが飛来してくるのは、大事に育て見守ってくれる地域の人々への「ツルの恩返し」として捉え、感謝の念で迎えることが大切です。ツルはまさに出水のリピーター客です。
 ツルは縁起の良い動物で、長寿やお祝いの象徴として重宝されます。今年も年末年始にかけて多くの観光客が訪れるものと期待されます。
朝日・夕日に映えるツルの姿はまことに秀麗です。皆様もツルの見学にぜひお出かけください。


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 出水平野を走る「肥薩おれんじ鉄道」は、沿線の景観がすばらしいことから、東南アジアの観光客に人気の鉄道となっています。また、観光列車「おれんじ食堂」や「おれんじカフェ」では、温かい食事を提供するなど外国人に配慮したおもてなしを提供しています。

 11月4日には、九州産業大学で観光を学ぶ学生50人が、昨年度に引き続き「おれんじ鉄道」を利用し、研修を行いました。出水、阿久根、薩摩高城、川内駅で市や観光協会の歓迎を受け、大感激の様子でした。琴線に触れる旅になったのではないでしょうか。


 ところで、外国人を中心に、「着物で出水武家屋敷を散策しませんか」のツアーが大人気です。着物と帯は持ち帰ることができ、履物、足袋、長襦袢などのレンタル料と着付け代も含んで5,500円です。武家屋敷の中にある「税所邸」の和室では、お茶、お菓子のおもてなしもあります。

武家屋敷_散策1.jpg  今着物を着る人が減少し、呉服屋さんは多くの在庫を抱えており、安く仕入れることが可能となっています。そこで自分で選んだ着物で、日本の伝統的建物群である「武家屋敷」を散策するというストーリー性が女性の心を揺さぶります。日本文化を体験できるメニューであり、地域資源も生かされます。
 また、料金の安さに加えて、持ち帰ることができることが人気の要因かもしれません。県内の大学生にも人気が浸透し、毎回満員の盛況です。


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 課題は、参加していただいた観光客に出水の食や特産品を購入していただき、経済効果をもたらす仕組みづくりです。散策の途中に昼食をとっていただき、最後の見学場所でオリジナルなお土産品を買っていただくことが必要です。そのためにはストーリー性のある食材やお土産が不可欠です。「いずみ親子ステーキごはん」や「糖度の高いみかん」「海産物」「クマエビ」等です。
 参加人員を限定し、着物着付けという本物の日本文化体験が、外国人を喜ばせます。出水のオリジナル商品として定着させることが重要です。
 人口減少が続き経済のスモール化が進む中で、交流人口の拡大には感動・感激をもたらす取組が不可欠です。急増している外国人を出水に誘致するには、他地域にないメニューが欠かせません。


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 出水市では、今秋、市の人口と同じ数の竹灯篭を武家屋敷等に陳列するイベントを創出し、多くの観光客を集めました。これからはストーリー性を加えて、地域資源を活用することが求められます。そのことが地域の価値を高めることにつながると信じます。




          稲刈りて 淋しく晴るる 秋の野に
                                                      黄菊はあまた 眼をひらきたり
                                    ~長塚節~




No.386 噴煙を上げる桜島の姿が観光客を魅了する ~県民の皆様がまず桜島に渡ろう~

2015年11月16日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 2週間にわたり県内全市町村で開催された「第30回国民文化祭・かごしま2015」が、無事終了しました。全国から1万人を超える参加者があり、自然、歴史、食、文化等、鹿児島の魅力に触れるまたとない機会になったのではないでしょうか。県民も鹿児島の文化の素晴らしさを知る大会になったと思います。今後に繋げていくことが大切です。

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 最近の県内の観光動向は、一時桜島の噴火警戒レベルが引き上げられて、3地域の住民が避難したことや、また、夏休みの鹿児島市最大のイベント「錦江湾サマーナイト大花火大会」が中止されたこともあり、8月の鹿児島の宿泊客は減少しました。(現在桜島の警戒レベルは、通常のレベル3です。)

  9月は前年を上回りましたが、今後の誘客には懸念材料も抱えています。特に教育旅行は火山活動について敏感であり、日々桜島で暮らす住民の生活ぶりや、緊急避難対策等安心感を与える情報提供が求められています。

 学校側は2~3年先の行先を決定する時期でもあり、県、観光連盟、教育旅行誘致委員会等で、関連箇所への状況説明に努めているところです。地元テレビ局を訪問し、適切な報道のお願いや、店頭販売やメディアツアーを主要に扱っている大都市圏のエージェントに対して、企画募集展開の強力な要請も行いました。

 活火山桜島から「地球の営み」や、「防災対策」等を学ぶことができることから、教育旅行のカリキュラムとして取り入れる学校が増えてきていました。

  しかし噴火警戒レベルが上がり、連日マスコミで桜島の状況が放映されたこともあり、一部の学校で行先変更や取り消しが出ているのも実情です。教育現場の方々に桜島の実際の姿を見ていただけるような取組みが大切になっています。

 教育旅行の体験メニューを提供している「NPO法人桜島ミュージアム」では、桜島に渡らない学校に対して、桜島フェリーターミナルビル内のホールを使って「出前講座」も準備するなど桜島の魅力発信に取り組んでいます。

  風評被害が懸念されることから、県では桜島支援対策として補正予算が計上されました。内容は、メディアでの情報発信強化、お得な「桜島もくもくクーポン」の発行、教育旅行の下見支援制度等です。

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 「桜島もくもくクーポン」は額面1000円のクーポン券を500円で購入できる、つまり2倍お得なもので、島内の宿泊施設、タクシー、売店、飲食店等26店舗で利用でき、期間は11月1日から来年の2月29日までです。まず県民が利用して、桜島の自然の雄大さに触れ、噴火しても観光には支障がないことを県外の方々に発信してもらいたい。

 教育旅行では、行先が決定している学校や、これから鹿児島に行先を変更したい学校などを対象に、直接学校関係者やエージェントの皆様に桜島の実情を見ていただくことで、鹿児島への誘致のきっかけづくりにもなることから研修下見支援を行うものです。施策発表以来、下見に行きたいという学校が多くなっているのは有難いことです。ハザードマップを示し、緊急避難対策等きちんと説明することで、まず行く先として検討してもらうことが重要です。

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  例年は日々噴火する桜島ですがここ2か月噴火がありません。湯之平展望所や有村溶岩展望所からは、天気の良い日は山肌まできれいに見ることができ、海岸では温泉堀体験もでき、生きている桜島の息吹を感じることができます。鹿児島滞在中に噴火している山の姿を見たかったと残念がる観光客もいます。

  ところで、鹿児島中央駅の案内所の職員に尋ねると、「桜島へは渡れますか」と訪ねる旅行者が増えていると言います。桜島では約5、000人の住民が暮らし、また、「通常と変わらない観光ができますよ」と職員の皆様は説明しています。これからも桜島の日々の姿を伝えていく努力が必要です。

  桜島は鹿児島の観光のシンボルであり、城山の展望台に立つと錦江湾を挟んで目の前にその姿が真っ先に飛び込んできます。

  県内の人はその位置関係はよく解りますが、県外から訪れる観光客は、錦江湾をはさんで市内に以外と近いことや、展望台から間近に見える噴煙たなびく桜島の雄姿に驚かされます。

  桜島は天気の良い日は、7回その姿が変わると言われます。鹿児島市民は、借景としてその姿を毎日見ていますが、もし桜島がなければ、鹿児島市は味気ない街になるかも知れません。県民がまず桜島に渡り、そのすばらしさを多くの県外客にPRしもらいたい。

 第30回国民文化祭の式典出席のために、鹿児島をご訪問された皇太子ご夫妻は、桜島桟橋に隣接する水族館「いおワールド」をご覧になりました。曇り空で桜島の雄姿をお見せできなかったのは残念です。

 桜島が噴火しても観光には支障はありません。友人等に桜島の正確な状況を発信していただき、風評被害を少しでも軽減できればと思っています。今回の「桜島もくもくクーポン」や教育旅行の現地研修補助金等を活用して、多くの人が桜島に渡ってほしいと願わずにはいられません。

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「垂水千本イチョウ」も黄色く色づき始めています。漁協のレストラン、道の駅や温泉への立ち寄りもお勧めです。

 桜島は噴煙を上げている姿が美しく、我々はそれが普段の姿であり、そのことが訪ねてみたいと旅心をかりたてます。

 今度の休日は桜島に渡り、晩秋の美しい日本を満喫しましょう。

大久保利通像.jpg我が前に 桜島あり 西郷も
    大久保も見し 火を噴く山ぞ
           ~海音寺潮五郎~

*桜島の有村溶岩展望所に歌碑が、鹿児島中央駅新幹線のコンコースにある大型ステンドグラスにも歌詞が刻まれている。

No.385 残したい鹿児島の農村風景 ~サツマイモの収穫と故郷~

2015年11月9日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


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 県内各地域でサツマイモの収穫が盛んです。鹿児島県は日本一の生産県であり、焼酎やでんぷんの原料となり、鹿児島の農業を支える基幹作物の一つです。


 私の小学校は周りが美しい田園に囲まれており、しかも子どもたちはほとんどが農家の子弟であり、学校から帰ると田畑の手伝いや風呂沸かしが日課となっていました。塾通いの子はいない、のんびりとした田舎の生活がありました。

 休日になると今の時期は、親戚・家族一同でサツマイモの収穫です。馬が掘り起こした畝から芋を集めて、根をもぎ取り、籠に入れて麻の袋に入れる仕事です。

 根をもぎ取るとき白い液が出て手に付き、それが土に触れて黒くなり、石鹸で洗ってもなかなか落ちず、石油を少しかけると落ちるものでした。翌日学校に行くとみんな同じ手をしており、芋掘りの手伝いをしたのかと笑って語り合う楽しさがありました。

 籠に盛り重たくなったサツマイモを運ぶ作業は、子どもにとっては重労働でしたが、近所総出で仕事をした後の楽しさは格別でした。


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 休憩時間になるとおやつは、茹でたサツマイモや飴、団子、柿、ミカン、お漬物等でしたが、みんなでワイワイ言いながら食べていたのが懐かしく思い出されます。ほとんどが家で収穫し、加工したもので美味しさは格別でした。あたりが薄暗くなるまで総出で作業し、芋畑は一日で黒い土の畑に変わりました。芋の蔓は、次の作物の「肥料にする」ため燃やしていました。(今は燃やすことは禁じられています。)


 中学校に入るとクラスごとの農園があり、春先には家から持ち寄った芋の苗を植え、秋には全員で収穫して、近くの農協へリヤカーで運び、売上げは学級費に組み入れていました。金額は大きくありませんでしたが、全員で育てて収穫した喜びは何ものにも代えがたい経験でした。家庭からの納入費を少しでも軽減するための対策だったと思います。


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 今都会の学生たちは農家・漁家民泊をしながら、いも掘り、みかんの収穫、花の栽培、いちご狩、餌やり等の体験を行っています。サツマイモが土から掘り起こされると、自然の営みに驚きの声を上げます。

 全国的に民泊しながら農業・漁業体験等が増えており、農業や漁業が大変盛んな鹿児島県としては、他県に負けない受入態勢の充実が求められます。


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 甑島には「島立ち」という伝統的風習が残っています。中学3年生になるとサツマイモの苗を植え、秋に収穫して島の蔵元で焼酎をつくってもらい、5年間寝かせて成人式の時島に帰ってきて同級生が集まり、その焼酎を開けて飲むという行事です。

 甑島には高校がないためほとんどの子供が島を出て進学、就職して行きます。島での思い出づくりがサツマイモの植え付けと焼酎造りに繫がっているのです。

焼酎造り.jpg 毎年約800本程製造され、卒業生の家や関係者しか手に入らず、「幻の焼酎」として人気があります。15歳の時全員で育てたサツマイモで焼酎を造り、5年間寝かせて成人式の時飲むという「ストーリー」が、感動を呼んでいるのではないでしょうか。

 各地で開かれる成人式は、中学校時代の思い出に一番話が弾むと言われます。いつまでもふるさとを忘れない人間でいたいものです。


 鹿児島県の農業算出額は第4位です。品目では、「サツマイモ」、「そらまめ」、「豚飼養頭数」、「肉用牛(黒毛和牛)飼養頭数」は、全国第1位です。また、水産物でも「クロマグロ」、「カンパチ」、「ブリ」、「ウナギ」の養殖生産量が、そして「カツオ節生産量」も1位です。食の安全・安心や本物を求める消費者が多くなっており、鹿児島が誇る第一次産品を活用した、特産品の新たな開発が望まれます。また、人口が減少していく日本にとって雇用確保問題も深刻です。地元の人材を活用して生産を増やし、販路拡大していくことで地域創生につながります。


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 今外国人が急増しています。円安、日本食の世界無形文化遺産登録、免税品の拡大、LCCの就航等が大きな要因ですが、地域への誘客には美しい日本の原風景のPR、祭り、食、温泉、世界遺産、おもてなし等世界に誇る日本文化の提供が欠かせません。指宿地域では、観光列車「いぶすきのたまて箱」に手を振る学生や市の職員、一般の方々の取組が外国人にも大好評であり、その取組は全国に広がっています。まさに、日本の文化です。


 先日、久しぶりにふるさとに帰り、深まり行く秋を楽しみました。家の裏山には柿の実がたわわになっていますが、採って食べる人もなく、鳥たちの餌になっています。

 寂しくなる里山ですが、まもなく紅葉が始まり人々の心をときめかしてくれるはずです。いつまでも残したい農村の風景がそこにありました。

             「旅愁」
       作詞:犬童球渓 作曲:オードウェイ
         ふけゆく秋の夜 旅の空の
         わびしき思いに ひとり悩む
         恋しやふるさと なつかしき父母
         夢路にたどるは さとの家路
         ふけゆく秋の夜 旅の空の
         わびしき思いに ひとり悩む

No.384 歴史に残る「国民文化祭」に県民も参画しよう ~県内の観光PR大使も一役を担う~

2015年11月2日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

      妹の小さき歩み いそがせて
           千代紙(ちよがみ)買いに 行く月夜かな
                         ~木下利玄~


 「第30回国民文化祭 かごしま・2015」が始まりました。国民文化祭は、各種の文化活動を全国規模で発表、競演する機会を提供することにより、国民の文化活動への参加の機運を高め、新しい芸術文化の創造を促すことを目的に開催されてきました。

 今回の国民文化祭の特徴は、県下43全ての市町村で何らかの文化的行事が開催されることです。
開催期間は、11月15日(日)まであり、県民が多くの会場に足を運んで欲しいと願っています。
県内に28の有人の離島があることは意外と知られていません。大会後に離島を訪れる参加者が多くなるのではないでしょうか。


 大会成功には県民あげての盛上げが必要であり、出演者のみならず地域住民が参加することで、参加者との交流が深まり、地域の魅力を発信する機会にもなります。


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 また、地域文化の継承には後継者の養成が不可欠であり、子どもやお年寄りのために出演の機会をつくってあげなければなりません。地域文化を掘り起こし、地域の文化を学ぶことは郷土愛を育てることになります。


 7月には「明治日本の産業革命遺産」が、「世界文化遺産」に登録されました。鹿児島市内にその3つの構成資産があることから、国民文化祭の開催期間中にも多くの見学者があると期待されます。
 2018年には明治維新150周年を迎えます。とりわけ、薩摩は多くの偉人を輩出し、近代日本の礎を築く原動力になりました。「近代化産業遺産群」や「郷中教育」、「薩摩藩英国留学生」等の歴史を学ぶことで、薩摩の先見性や技術力、教育・文化水準の高さを感じることができます。大会参加者に薩摩の歴史・文化を認識してもらえる絶好の機会としなければなりません。

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 ところで、遠来のお客様には、「心温まるおもてなしの心」の提供が不可欠です。観光の顔として地域を売り出すのが、親善大使やPR大使の役目の一つです。

 国民文化祭開催を前にして、今年もPRスタッフの役割と「おもてなしの心」の極意を学ぶ研修会を開催しました。県内12地区から23名のPRレディーが参加し、ANAビジネスソリューションズの倉園恵美子さんが講師を担当しました。
最初に県観光課の井立田課長補佐が「観光かごしまの現状と課題について」、入込状況や観光振興策等を説明しました。
PR大使も鹿児島の観光の概要を理解してもらい、自らの地域のPRや今後の活動に活かして欲しいと思います。


 「第10代かごしま親善大使」である小原茉莉花さんは、11月2日「おはら祭り」の前夜祭を機に、後任に引き継ぎます。「親善大使の役割やPRの際の注意点」など1年間の経験を通して学んだことを解りやすく話してくれました。
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 「大切なのは真心。一生懸命な想いは聞き手に必ず伝わる。」、「自分なりの切り口で、鹿児島を再発見し体験することが、自分のPRに幅を広げることになる。」と自ら地域を知ることの大切さについて語ってくれました。
また、親善大使の役割は、「鹿児島を愛する一市民として、等身大の情熱を傾けて、かごしまをPRすること」、自信を持って活動するには、「自分なりの見つめ方、学び方、感じ方で鹿児島の魅力を再認識し、それを鹿児島の言葉で伝えることです」と語りました。

最後に「私が思い描く理想の親善大使像は、善く親しみ、自然体で臨む」ことですと、気取らない姿の大切さも語ってくれました。
 小原さんの自信に溢れた堂々とした発表の姿に1年間の努力の成果が凝縮されているように感じました。親善大使としての役割は終わりますが、引き続き鹿児島の魅力発信に努めて欲しいと、彼女の今後の活躍に期待したいと思います。

 
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 今回の研修会では、講師の倉園恵美子さんが「人を引き付ける表情の作り方」、「立ち居振る舞い」、「PRとあいさつの仕方」、「品物の受け渡し方」等について2時間あまり実践スタイルの研修を行いました。
「人の印象は最初の15秒で決まる」という言葉が印象的でした。講師の緊張の中にユーモアあふれる話に、各PR大使も時間を忘れて勉強していました。


 これからの親善大使、PR大使に望むことは、自ら地域を愛し語れる人になってほしい。そのためには、日頃から地域を回り、歴史、食、温泉、自然、特産品、地域の文化等への造詣を深めることです。
 特にストーリーを交えて自分の言葉で地域を楽しく語れる人が印象に残ります。最近の観光は個人旅行が主流で、地域の生活・文化を学び、体験・交流を求める人が多くなっています。
 また、PRの際は、滞在したときの「時間」の過ごし方や「旬の情報」を伝授して、「一度PR大使の住む鹿児島を訪れたい」等、かごしまのファン作りに努力して欲しい。 
 今回の研修を通して、PR大使同士のコミュニケーションも深まりました。相互に切磋琢磨しながら、実践力を培って鹿児島の観光の誘客に努力して欲しいと思います。


 東京オリンピック招致に於ける滝川クリスタルさんの「お・も・て・な・し」のPRが大好評でした。
 観光地の最終的な評価は人の魅力です。県民一人ひとりが、観光客を温かく迎える態勢づくりが求められます。
 最後に国民文化祭開催を機に、鹿児島に新しい文化を根付かせる良いチャンスにしなければなりません。


 第30回国民文化祭の成功に向けて、PR大使の活躍に期待するとともに、県民一人ひとりが参画意識を持って、おもてなしのこころで迎えたいものです。
 
       りんてん機 いまこそ響け
                うれしくも
                    東京版に 雪のふりいづ
                         土岐善麿~黄昏に~

プロフィール

古木 圭介プロデューサー
鹿児島県
観光プロデューサー
古木 圭介
(平成29年4月より就任)
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