鹿児島県観光サイト かごしまの旅

    • 学校・法人の方へ
    • 観光

トップページ > プロデューサーズコラム

No.392 2015年を振り返る~インバウンドが顕著な伸びに、火山の風評被害対策に力を~

2015年12月28日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


 今年も残り4日となりました。3月の北陸新幹線開業に伴い、需要が大きい首都圏、中部、関西地域から観光客の流れが金沢方面に加速され、鹿児島への入込客も減少しました。
 加えて5月の口永良部島新岳の噴火に伴う屋久島への全島民避難や、8月には桜島の警戒レベルが一時アップしてマスコミ等で大きく報道されたこともあり、観光にとっては厳しい1年でした。
 県全体の宿泊客数でみると、前年を超えたのは2月、5月、9月、10月です。(10月までの集計)
 秋以降には国の「地方創生交付金」を活用したプレミアム旅行券の発行や、県の屋久島・桜島風評被害対策の補正予算等が組まれたことによる販促施策を展開中です。
 11月には県内全市町村で「第30回国民文化祭 かごしま2015」が開催され、また大型コンベンション等もあり、秋以降少し回復基調にあります。県と観光連盟では、2015年の宿泊者数が前年を上回るべく販促活動に努めてきました。


1228_1.jpg

 ところで、日本人の国内旅行は厳しい状況ですが、外国人の宿泊者数は全国的に好調で鹿児島も例外ではありません。10月までの主要施設の累計では、2014年の実績を超えており、最終的には35万人近くまで伸びるものと想定しています。
 台湾、香港便が顕著に推移しており、あらたに釜山からのチャーター便も運航されて冬場のゴルフ客が伸びています。南九州3県で香港、台湾線はデーリー運行となり相互の誘客がしやすくなっています。共同PRの機会も必要ではないでしょうか。


1228_2.jpg

 また、クルーズ船は半日の滞在ですが、鹿児島マリンポートへの海外船籍の寄港は過去最高となり、鹿児島を訪れた外国人の数は、日帰り客を含めると40万人を超えるのではないでしょうか。今後のインバウンド客誘致には、旅行エージェントやメディア等の招聘事業の積極的取組、鹿児島のイメージを伝える情報発信の多様化、受入態勢の強化が求められます。経済効果を生み出す努力が問われます。


 県観光課が進めている「魅力ある観光地づくり事業」は、毎年10億円の予算をかけ地域づくりに貢献しており、それを活用した基盤整備が進み、地域の旅行商品化も多くなり、観光客を広げる取組につながっています。


1228_3.jpg

 地域別では鹿児島、北薩、大隅、奄美地域が前年を超え、特にLCCが就航している奄美や、個人客に対応しやすい宿泊施設が多くある鹿児島市が安定しています。
 苦戦を強いられているのが、指宿、霧島、種子島、屋久島地域です。特に指宿地域が昨年の第2四半期以降ずっと減少しています。観光列車「指宿のたまて箱」の乗車率は安定しているのに、宿泊に結び付いていません。今年の低迷の要因として、口永良部島噴火に伴う屋久島の落ち込みが、関連していると捉えています。


1228_4.jpg

 従来、指宿に宿泊して高速船での屋久島への日帰り客や、鹿児島から屋久島へ行き、帰りに指宿に泊まる客が多くありました。しかし口永良部島の噴火以来激減し、「あらためて屋久島との連携の重要性を感じた。」とある宿泊施設の社長は語っていました。
 また、開聞町の登山ガイドさんによると、口永良部島と桜島の噴火騒ぎ以来ガイドが同行する開聞岳登山者がほとんどいないということです。火山の風評被害を一日も早く収束させることの必要性を感じます。
 指宿温泉が低迷する要因を洗い出し、街づくり、宿泊体系の見直し、新たな体験メニューの開発等早急に対策を急ぐ必要性に迫られています。


1228_5.jpg

 北薩地域の出水市では着物で武家屋敷を散策するツアーが、毎回満員となる盛況ぶりです。ツアーの最後には武家屋敷にある邸宅で、お茶や生け花の作法、琴の演奏等があり、自分で選んだ着物は持ち帰ることができます。日本の伝統文化をうまく組み合わせ活かしています。思い出づくりには最適な体験メニューですので、若い女性や外国人観光客に支持されています。県内に埋もれている地域資源の点検が必要です。
 薩摩川内市の甑島(こしきしま)が国定公園に指定され、また数年後には島全体が一つにつながり観光客誘致に拍車がかかると期待されます。


 鹿児島地域では、いちき串木野市の「薩摩藩英国留生記念館」がオープンして1年が経過しましたが、すでに8万人を超える来館者があり人気が続いています。留学生のヒストリーを前面にだし、展示の工夫や地域の小中学生も参加したPR活動等地域をあげての取組が好感をもって迎えられているのではないでしょうか。


1228_7.jpg

 「明治日本の産業革命遺産」の世界文化遺産登録が実現しました。鹿児島が誇る文化遺産を学び、先見性や人材育成等薩摩の偉大さを知る機会にしなければなりません。日本の近代化は薩摩から始まったことのストーリーを語ることが誘客には不可欠です。
 2016年は薩長同盟150周年、2018年は明治維新150周年と続きます。鹿児島の歴史を再認識させる取組が大切です。
 鹿児島ゆかりの人物や歴史を題材にした大河ドラマや番組の制作を要望するため、官民一体で定期的にNHKへの働きかけを行っています。メディアの観光への波及効果は大きく、しかも県全体に及ぶことから何としても実現しなければなりません。


1228_8.jpg

 大隅地域はスポーツ合宿が安定しています。さんふらわあの新造船や佐多岬の整備計画が発表され、これからの誘致対策の後押しになります。自然や宇宙開発、スポーツ施設の充実、食の魅力についてターゲットを絞って発信することが求められます。


 奄美は、LCCのバニラ・エアが成田から就航して以来観光客が伸びています。従来羽田からの運賃が高くて商品造成が厳しく、誘客が厳しい面がありました。
 奄振事業やプレミアム旅行券との組み合わせで沖縄並みの旅行商品が造成され、美しい自然と世界自然遺産の登録を目指している島の認知度が高まっています。
 羽田からの便と合わせて2航空会社となったことも競争に拍車がかかったと言えます。今後他の島々にいかに渡ってもらうかが課題です。


1228_9.jpg

 鹿児島中央駅前の「かごっまふるさと屋台村」は、新たにリュニューアルオープンし、25軒の個性あふれる屋台と1軒の焼酎専門店が軒を並べます。家族的な雰囲気が味わえ、鹿児島の食文化を堪能できる場所としての魅力が浸透し、ビジネスマンや個人観光客、多くの外国人が訪れています。特に東南アジアの観光客は夕食を外で食べる習慣があり、それに対応できる施設があることが滞在を可能にしています。


 教育旅行は、JR西日本とJR九州による修学旅行専用列車の設定がなされ、合わせて57校、約1万人の学生が利用しました。オフ期の定期の新幹線を利用した教育旅行も増えています。引き続き鹿児島を行先として選択してもらうためには、火山の風評被害をなくする取組が重要であり、受入地域と一緒に学校現場を訪問し、安全対策等の説明が重要になっています。


1228_11.jpg

 農漁業体験や民泊が人気となっており、民泊について提起されているのがコンプライアンスです。他県は、「簡易宿所営業の許可」を取得している農家・漁家が多くなっていますので、旅館業法で定められた許可を取得することが学校の信頼を得ることになります。 宮崎県の小林地域が「簡易宿所営業の許可」を取得して営業を強化しており、受入校数が増えて鹿児島にとってはライバルとなりつつあります。


 修学旅行は、一度に多くの生徒が動き、不況時でも実施され、取消しがなく、受入機関にとっては経営の見通しが立てられるなど安定した顧客といえます。来年から、改定バス料金が適用されることから、旅費の上限に抵触する方面は行先変更も考えられます。
 佐賀県や北九州、山口、広島地域からの誘致に力を注ぐ必要があります。
明治維新150周年の関連史跡や世界文化遺産を市内循環バスで巡るなど旅費を軽減化できるコースの提案を、エージェント及び学校側にきちんと説明する必要があります。


 市場におけるインターネットの利用は拡大し、しかも情報量の選択肢が増え、ネット販売は勢いを増しています。県と観光連盟では専任の担当者を配置し、地域の旬の情報やイベント、祭り、食等の魅力を4か国語で掲載しています。海外からのアクセスが伸びています。主要観光地を抱える市町村と連携し、シームレスでワンストップサービスのできるシステム作りが重用となっています。そのことが鹿児島への誘客の第一歩につながります。


 来年は九州新幹線全線開業から6年目に入ります。大きなイベントもなく厳しい年になりますが、開業時の熱気を思い起こし、地域で様々な取り組みを行い誘客に努めなければなりません。今年、全市町村が参画した国民文化祭のように、県民挙げて「おもてなしの心」で観光客を迎えたいものです。


1228_15.jpg

 最後に今年も毎週コラムを配信でき、通算392号となりました。1年間ご拝読いただき心から感謝申し上げます。ありがとうございました。
 来年の干支はサルで、オリンピックイヤーです。飛び回るサルのごとく、軽いフッワークで精力的に活動することが求められます。


   来年は1月4日から配信します。皆様良いお年をお迎えください。


             我が春も 上々吉よ 梅の花
                             ~小林一茶~

No.391 肥薩おれんじ鉄道を活用した広域観光連携について~地域資源を磨き経済効果をいかにもたらすか~

2015年12 月21日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


          こがらしや 海に夕日を 吹き落とす
                       ~夏目漱石~


鶴.jpg

 出水平野には今年も1万羽以上のツルが飛来し、地域の人々の温かい保護のもと、越冬の時期を楽しんでいます。
 ロ―カル列車で田舎を旅する番組が人気です。鉄道会社にとっては、イベント、伝統的祭りや食、珍しい景観をPRする機会となり、ファンを開拓するチャンスとなります。
 日本の原風景が多く残る県内でも、車内から見る東シナ海に沈む夕陽は格別に美しく、それを見るために肥薩おれんじ鉄道に乗りに来る旅人もいます。


おれんじ鉄道.jpg

 肥薩おれんじ鉄道は、平成16年3月13日九州新幹線部分開業に伴い、JR九州から 八代~川内間を承継し開業しました。沿線には28の駅がありますが、駅の業務や施設管理については八代駅のみ肥薩おれんじ鉄道の直営であり、その他の有人駅はすべて業務委託駅または簡易委託駅として、沿線地域のNPO法人や財団法人が受託して管理しています。


 少子高齢化の進展で肥薩おれんじ鉄道沿線の人口が減少し、地元住民の日頃の利用も少なく現在利用者の7割は高校生の通学利用者です。
 学校の統廃合や生徒数の減少もあり利用者は減少していくことから、沿線住民の利用だけでは経営収支は厳しくなっており、他の地域からの利用客増大をいかに図るかが路線存続の大きな課題となっています。
 イベント等創出による沿線住民の利用頻度を高め、国内外の観光客を増やす取組が不可欠となっています。


 ところで最近の観光は、団体旅行から個人旅行へシフトしており、また、宴会型旅行から地域の生活文化に触れる旅行が人気となっています。温泉地や著名な観光地はすでに訪れている人が多く、その意味では国内旅行は成熟の時代へと移っており、地域へ誘客できる機会と捉えなければなりません。「おれんじ食堂」や「おれんじカフェ」の人気がそれを表しています。


 沿線の各自治体も観光振興に力を注いでいますが、単独の自治体では限界があり、連携しての誘客対策が求められています。肥薩おれんじ鉄道の沿線自治体で構成される利用促進協議会の担当者会議に、講師として参加しました。参加自治体の担当者は鉄道が置かれた危機感を共有し、今後連携して取り組む必要性を感じたのではないかと思います。


 肥薩おれんじ鉄道沿線の魅力と、今後の誘致策について述べてみたいと思います。
 まず、各駅が九州新幹線駅との併設や比較的近い場所にあることや、熊本、鹿児島空港とも東南アジア路線を持ち海外からの誘客がしやすい位置にあります。肥薩おれんじ鉄道を組み込んだコースを商品化し、和食や日本の伝統文化を組み入れることで、東南アジアの人が喜ぶ日本の美しい四季折々の自然景観やおもてなしの心を堪能できるのではないでしょうか。


武家屋敷(着物)4.jpg

 地域資源を活用した取組みとして伝統文化の体験が人気を博し、若い女性や外国人が火 付け役となっています。出水市では着物で武家屋敷を散策するツアーが、毎回満員となる盛況ぶりです。ツアーの最後には武家屋敷にある「税所邸」で、お茶や生け花の作法、琴の演奏等があり、自分で選んだ着物は持ち帰ることができます。思い出づくりには最適な体験メニューですので、若い女性や外国人観光客に支持されています。今後肥薩おれんじ鉄道を利用してきた参加者には特典を与えるなどの差別化を図ることで、列車の魅力が浸透します。
 また、参加者に食や地域の特産品購入の機会を提供し、経済効果を生み出すことで持続できる地域となります。


出水グリーンツーリズム.jpg

 出水市では学生への農漁業体験と民泊が人気となり、今年は2,500人を受け入れています。先日訪れた関西のある中学校の校長先生の話では、出水市での民泊の良い点として「新幹線の下車駅からすぐスタートできる」、「受入態勢が整っている」、「おもてなしの心が充実している」ことなどをあげていました。行程の一部に肥薩おれんじ鉄道を利用するコースを組み込むことで、生徒たちの新たな思い出づくりになると思います。エージェントへの働きかけが重要です。


 地域色・田舎の魅力を前面にだすことが都会の住民を魅了します。沿線の珍しい四季折々の景観、古刹、匠の人、秘湯、民泊、伝統食、古民家レストラ等「希少性」「社会性」「経済性」を鋭くアピールできる地域資源を活かし、ストーリー性を加えて商品化することで、メディアの目に止まり全国的にPRが可能となります。


華の50歳.jpg

 沿線にある休耕田、古民家の活用支援等PRも欠かせません。Iターン、Uターン者の受け皿作りに努め、2地域2居住や定住促進が地域の活力となります。遠足や郊外学習等の学校行事、大学のゼミ旅行、自転車を乗せて駅を基点とするサイクリング大会等のイベントの開催も鉄道の利用促進につながります。また、阿久根市の「華の50歳組」に代表される同窓会、住民を対象とした市町村号、老人クラブ、成人式等人生の節目節目の記念号を運行するのも地域への愛着を感じる機会になるのではないでしょうか。


 今65歳以上の高齢者が四分の一を超えており、旅行需要が旺盛なこの層を取り込むためには、バリアフリー対策等の環境整備が欠かせません。駅の改修時は特に配慮が必要です。


おれんじ鉄道と夕日2.jpg

 最後に、来年の4月から「ななつ星in九州」の運行が予定され、肥薩おれんじ鉄道を走ります。「薩摩高城駅」では、東シナ海に沈む夕陽を乗客に見ていただくため、数分間停車することから肥薩おれんじ鉄道のイメージアップにもつながります。



出水海苔.jpg

 甑島(こしきしま)や阿久根の魚、出水の海苔、エビ、果物等地域ならではの食材を乗客に提供し、感動・感激を与えることがブランド化につながります。また、看板の形や色に配慮し、沿線の雑木の伐採等景観を守る取組や走る列車に手を振り、駅では地域ならではのおもてなしの心の提供が乗客の印象に残ります。人の魅力が地域の評価になります。
 来訪者が、また行きたいと言える地域になりうるかが重要です。


 日本の鉄道は最北端稚内駅から最南端の終着駅枕崎駅までつながっています。利用促進に当たっては肥薩おれんじ鉄道管内だけで完結させるのではなく、熊本、鹿児島両県、九州管内、全国、海外に目を向けて誘客に努めることが、路線維持につながると信じてやみません。
 沿線自治体は様々な取り組みを推進し、我町の宝として肥薩おれんじ鉄道を地域で守っていくんだという気概が求められるのではないでしょうか。




 『重なり合った山々や原生林や深い渓谷の秋に見惚れながらも、私は一つの期待に胸をときめかして道を急いでいるのだった。そのうちに大粒の雨が私を打ち始めた。折れ曲がった急な坂道を駈け登った。ようやく峠の北口の茶屋に辿りついてほっとすると同時に、私はその入口でたちすくんでしまった。余りに期待がみごとに的中したからである。そこで旅芸人の一行が休んでいたのだ。』
                     小説「伊豆の踊子」川端康成著より



No.390 クルーズ船の経済効果を高めるために~事前に鹿児島の魅力をいかに届けるか~

2015年12月14日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


蜜柑.jpg

街をゆき 子供の傍(そば)を 通る時
     蜜柑の香せり 冬がまた来る
                ~木下利玄~



 2015年も残り2週間余り、今年の10大ニュースや流行語大賞などの発表もあり、世相を反映した出来事が選ばれています。今年の流行語大賞は「爆買い」に決定し、急増している中国人の旅行スタイルが国民に大きな印象を与えたことを表しています。


 2011年に国立社会保障・人口問題研究所が発表した鹿児島県の総人口将来推計は、2010年と比較すると2031年には25万2千人減少し、人口減少に伴う県内消費額は20年間、毎年約152億円も減少していきます。
 また、「日本創生会議」の調査報告では、子供を産む年代の若者女性の数が2040年には2010年と比較すると、県内の30市町村で半減すると指摘されています。
 人口減少は、各市町村にとって深刻な課題であり、「地方創生」の名のもとにいかに実効あるプランを作り上げていくかが課題です。持続的な経済発展には、外国人旅行者の誘致推進による交流人口の拡大も不可欠となっています。


 ところで、伊藤知事は今後の鹿児島の発展には、農業と観光の振興が最重要課題であると明言されており、交流人口の拡大に合わせて、観光客等に対する特産品の販売、国内外への販路拡大を図る取組が重要となっています。


 観光庁の試算では、定住人口の1人当たりの年間消費額(124万)は、旅行者の消費に換算すると外国人旅行者10人分、国内旅行者(宿泊)26人分、国内旅行者(日帰り)83人分にあたるとしています。少子高齢化と人口減少に対応し、地域の活性化には持続的な交流人口の増大が必要であり、外国人の誘致は不可欠となっています。


 今、インバウンドがのびている要因として、ビザ発給要件の緩和、免税品目の拡大と取扱店の増加、和食の世界無形文化遺産登録、円安等があり、2015年の年間累計では2,000万人を超える勢いです。


 県内でも誘致に向けての態勢づくりが急がれています。鹿児島県の2014年の外国人宿泊者数は26万6,000人で、前年から123.8%増加しています。国別宿泊者数は、台湾、韓国、中国、香港の順で、台湾が全体の40%を占めています。


 しかし、鹿児島県の外国人宿泊者数は、長崎県、熊本県と比較すると2分の1程度で、宿泊者全体における外国人の割合は3.5%です。福岡県8.8%、長崎県6.7%、大分県6.5%、熊本県6.9%と比較すると低くなっています。
 東アジアから九州への入込観光客は、交通アクセスが充実している北九州、中九州方面がメインで、鹿児島県まで及んでいないことが示されています。


城山観光ホテルs.jpg

 鹿児島空港は4都市と結ばれ週12便なのに対し、福岡空港は22都市へ週301便もあります。博多駅から九州新幹線利用で1時間17分で結ばれていますので、わかりやすく使い勝手の良い切符の導入等、移動コストの軽減化が何よりも求められています。
 鹿児島県の今年の外国人宿泊者数の累計は、25万8,150人(1月~8月)で、前年比157.7%の大きな伸びとなっています。
 熊本空港や宮崎空港にも東南アジア路線が増えて、観光ルートに県内の観光地や宿 泊地が組み込まれていることもあり、3県との連携がますます重要になっています。


クルーズ船.JPG

 ところで外国人旅行客の誘致には、クルーズ船の誘致も欠かせません。クルーズ船は一度に多くの観光客を運ぶことができ、観光コースに入ると、入場施設や飲食店は多くの経済効果が期待できます。
 今年マリンポートに寄港する海外のクルーズ船は47隻(4月~12月)で、過去最高になるものと思われます。特に中国からの船が25隻となっています。多くの中国人が訪れていますが、入港後の観光コースや食事のあり方について課題も多く指摘されています。
 団体でめぐる観光バスは有料の観光施設には寄らず、昼食は車内やフェリーの中で軽食を提供されるツアーが多く消費は限られています。また、ショッピングについては、郊外の空店舗を使用した雑貨店等数店舗に集中しています。経済波及効果は運輸機関を除けば限定的ではないでしょうか。


沈壽官s.jpg

 せっかく鹿児島を訪れながら、観光客は鹿児島の食、特産品、おもてなし、日本の伝統文化、世界文化遺産等に触れる機会がなく、慌ただしく帰っていくだけの印象です。
 現地エージェントの手配する旅行費用に限度があると思いますが、少なくともシヨッピングや街を散策できる自由な時間を与え、鹿児島の良い印象を持って帰っていただくことで、リピーターになるのではないでしょうか。


仙巌園と桜島.jpg

 また、受入を担当している6団体で構成された「鹿児島海外観光客受入協議会」の機能強化を図って、歓迎行事・案内中心の業務から、積極的に鹿児島の魅力ある観光ルートの提案や街並み、食、特産品等の魅力を、事前に参加者に告知する取組が重要です。そのことがクルーズ船寄港の際、消費を増やし経済効果をもたらす取組につながります。
 来年度は、博多港には400隻余りのクルーズ船の寄港が予定されています。鹿児島県は、九州本島の最南にあり、横浜、神戸、博多港から南に下るクルーズ船にとっては、中継基地の役割も果たせます。
 一方、ある県では経済効果が見込めない船については、寄港を断りたいという情報も伝えられています。


はやとの風.jpg

 外国人が自由に楽しめるためには、市中の案内表示、アクセスの同一化、銀聯カードの拡大やWi-Fiの整備、多言語表示等受入態勢整備も不可欠です。
 今後富裕層を対象としたクルーズ船については、桜島、砂蒸し温泉、世界遺産、観光列車、食、祭りなど他地域にない観光資源のPR、招聘事業を積極的に推進し、認知度向上を図らねばなりません。


 最後にインバウンドの拡大には、まず南九州3県に就航している定期便を活用した観光客誘致が第一です。FIT(個人旅行者)が増加しており、アクセスや食等WEBでの情報提供やレンタカーの乗り捨て料金の軽減化等が重要になっています。


 次に九州最大の海外路線を持つ福岡空港からの誘客が重要であり、新幹線活用による時間短縮効果のPRやインバウンド専用のさらなる割引キップが不可欠です。航空機利用の観光客は、宿泊につながるメリットがあります。


武家屋敷散策s.jpg

 それに加えて、一度に多くの観光客が乗船するクルーズ船の誘致も重要です。CIQの改善、1日という短い滞在時間の中で楽しく過ごせる魅力ある観光コースの設定、自由に散策できる多言語マップ、外国語対応可能の店の表示等安心して散策できる魅力ある情報発信が必要です。これからは経済効果をいかにもたらすかの視点で取組みたいものです。


No.389 バリアフリーの対応が経営を左右する~多くの人々に旅の感動を与えたい~

2015年12月7日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


        うしろから 追はるるやうな 師走哉
                         ~正岡子規~

 師走に入り街角にはクリスマスの飾りが多くなり、人々の歩く姿も早く感じられます。 木枯らしが吹くとコタツが恋しい季節となり、飲食店では忘年会の準備で忙しくなります。 1泊旅行を兼ねて温泉地で忘年会を開く企業も少なくありません。一頃は送迎付きのホテルが多くありましたが、今では人手不足もあり遠方までの送迎は少なくなっているように感じます。年1回の旅行ぐらいは豪華に楽しくいきたいなと思っている方が多いのではないでしょうか。
 風評被害等で桜島の宿泊や観光施設が厳しい経営環境に置かれています。今年の忘年会は桜島に渡ってはいかがですか。「桜島もくもくクーポン」を活用して観光も楽しんでください。


 ところで観光庁が発表した26年宿泊統計によると、日本人の国内での総宿泊者数は4億2868万人余りとなっており、総人口で割ると一人当たり3.4泊していることになります。前年より若干増えていますが、せめて4泊ぐらいはしていただき国内経済の活性化につなげたいものです。


ユニバー大隅6.jpg

 日本は少子高齢化が進行し、65歳以上の人口が全体の4分の1を占めており、その割合は毎年高くなり、これらの層をいかに取り込むかが、国内旅行の需要拡大につながるものと思っています。(人口は平成25年9月15日推計)
観光庁は高齢者や障害などの有無にかかわらず、多くの人々が気兼ねなく旅行を楽しむ「ユニバーサルツーリズム」を推進しており、その環境整備に努めています。
 健常者と障がい者が安心して旅行を楽しむことができる「バリアフリー旅行」のマーケットが拡大しています。しかし受入機関や地域によって対応に差があり、積極的に取り組んでいる宿泊施設では宿泊者が10倍に増えた旅館もあります。


ユニバー大隅.jpg

 このような状況の中、昨年に引き続き、「ユニバーサルツーリズム」の普及に積極的取り組んでいる「特定非営利活動法人日本バリアフリー観光推進機構」の中村元氏を招いて、屋久島町と鹿屋市で研修会を実施しました。また、地元鹿児島で活動されている「特定非営利活動法人eワーカーズかごしま」の理事長である紙屋久美子氏等を交えてパネルディスカッションも実施しました。


ユニバー大隅2.jpg

 中村氏の本業は水族館プロデユーサーで集客対策を専門とされおり、伊勢の鳥羽水族館にバリアフリー対策を講じ、入館者数が大幅に増加した実例を発表されました。中村さんがプロデュースされた東京の「サンシャイン水族館」、北海道北見市の「北の大地の水族館」でも、来館者が大幅に増加しています。増加の要因として、障がい者の為の環境整備が挙げられます。障害者手帳を持っている人は日本の人口の約3%ですが、鳥羽水族館の入館者の調査によると、一人での来館者は少なく、同行者を含めると4人程度で来る方が多く、障害者手帳を持った方の入館者が増えると、全体の入館者増に繋がると話されました。


ユニバー大隅4.jpg

 今後バリアフリー旅行のマーケットが広がることは確実です。また、来訪者を増やす対策としては、旅行者個々の身体状況に合わせたパーソナル基準の順守や認知度を高めることが重要で、トラブル防止のために受け入れに当たっては、精通した各地のバリアフリー相談センターを活用して欲しいと思います。


 バリアフリーと福祉を混同し、福祉の面の施設改善が最優先と思っている経営者や、マーケットは小さいと思っている人が多く、受け入れに消極的な考え方があることも事実です。障がい者が利用しやすいように出入口のスロープ化、最低限の手すり、洋式トイレの等態勢整備が必要です。
 2020年の東京オリンピック、パラリンピックを見据えて全国的にバリアフリー相談センターを増やし、海外からのお客様への対応も考慮しなければなりません。
 また、住民への理解不足を解消すべく情報を広げることも大切です。


ユニバー大隅5.jpg

 旅行エージェントの企画商品には、「旅をあきらめない!夢をあきらめない!」、「誰にでもやさしい旅」等バリアフリーの旅が増えています。また専門の部署を持ち、「介護士と行くツアー」等障がい者に特化している会社もあります。
 エージェントだけでなく、鉄道、バス会社、宿泊機関やその他関係機関の協力、それに従事する職員の努力が顧客の安全と満足に繋がります。
 バリアフリーのマーケットは確実に拡大すると想定され、受入機関の綿密な連携が必要であり、「バリアフリー相談センター」を十分活用して欲しいと思います。


 バリアフリーは、物理的障害を取り除くだけではなく、情報、文化、規範、そして我々の心や考え方等様々なところに存在する「バリア」を取り除くことが、まず大切ではないでしょうか。ソフト面の充実が重要であり、障がい者への言葉遣いやおもてなしの心を学ぶ勉強会が必要です。そのことが施設全体の評価を高めます。
 国民の意識の中にもバリアフリーの考え方を理解して浸透させることが、日本においてユニバーサルツーリズムが定着できるかの「鍵」になると信じます。


クラブツアー2.jpg

 最後に、是非旅行に連れて行きたい高齢者や障がい者が、皆さまの周囲にも多くいらっしゃると思います。旅は人の心をわくわくさせます。多くの方々に旅行の感動を味あわせたいものです。心の中の「バリア」を取り除き、一緒に旅に出ましょう。旅の感動に境界はありません。




          ほととぎす 嵯峨へは一里 京へ三里
                    水の清滝 夜の明けやすき
                          与謝野晶子『みだれ髪』

プロフィール

古木 圭介プロデューサー
鹿児島県
観光プロデューサー
古木 圭介
(平成29年4月より就任)
詳しいプロフィールはこちら

月別アーカイブ