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No.401 本物は顧客を裏切らない~品質と味は保証します。値は少し張りますが~

2016年2月29日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


 寒さが和らぎ、一足早い春を求めて県外からの観光客の姿が目に付くようになりました。鹿児島中央駅近くの黒豚の店の前に並んでいる若者に声をかけると、卒業旅行で鹿児島を旅行していると話してくれました。友人から鹿児島に行ったら黒豚が美味しいと薦められたという。まさに口コミの効果です。


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 鹿児島県は全国第3位の農業県であり、中でも黒豚、肉用牛、鶏(鶏卵、ブロイラー)、かつお節、うなぎ、ぶり類、クロマグロ、さやえんどう、そらまめ、かんしょ等は第1位の生産量を誇ります。鹿児島県は農業と観光振興を主要政策に掲げており、先日発表された平成28年度の予算概要にもそれが反映されています。
 また、「食」の魅力は人が旅行の行先を選択する際に重要な判断基準になっています。
「本物。鹿児島県」の魅力をPRし、それを来訪者に提供することが観光客の満足度を高め、リピーターを創出することになります。


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 特産品である「かごしま黒豚」には次の定義があります。
 鹿児島県黒豚生産者協議会の会員が、県内で生産・肥育出荷・と畜したバークシャー種であること。肥育後期にはさつまいもを10~20%添加した飼料を出荷直前の60日前から与えて、かつ、出荷時に1頭当りの拠出金を納めた場合認められています。
 「かごしま黒豚」という名称は1999年に商標登録されています。
 黒豚と呼ばれるバークシャー種は、一般的には、六白と呼ばれる白い部分が顔面、体の後ろ・4本の足の先端部の6ヶ所にあります。


 並んでまで食べたくなる黒豚の生産には、これまで苦難の歴史がありました。県内で生産される豚は、昭和30年代前半まではほとんど黒豚でした。しかし黒豚は飼育期間が長く生まれる子供も少ないために、生産者は経済効率が良い白豚に飼育を移し、昭和50年頃には黒豚は全体の2%近くまで生産量が落ち込みました。


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 その頃、黒豚こそがかごしまが誇る宝物であるとして、昭和53年に黒豚料理「あぢもり」を天文館にオープンさせたのが、現在の佐藤光也社長です。
佐藤社長は黒豚の魅力に若いころから注目し、「黒豚料理」を鹿児島のブランド品に育て上げた張本人です。
 オープンして経営危機にも直面しましたが、そこを家族一丸となって乗り越えました。肉質にこだわり食べ方に工夫を凝らすなど、黒豚の美味しさが認知されるまでには20年の年月を要しました。
 黒豚に対する熱い思いをもってPRを続けてきたことが、今の人気を生み出したと思います。


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 社長の出身地は北海道ですが、サラリーマン生活をやめ、奥様のふるさとである鹿児島に移り今の店を始められました。
 学生時代は東京6大学に属する大学で応援団長を務められ、神宮球場では名物の団長として名を馳せました。時には10数キロもある校旗を持ち、神宮のスタンドが興奮のるつぼと化す伝統の早慶・慶早戦を指揮していたとは、謙虚で紳士な装いからは想像もできませんが、経営者として語る言葉には黒豚復活にかけた熱い思いを感じます。


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 今でこそ黒豚料理を掲げている店はたくさんありますが、「あぢもり」を始めた頃は1軒だけで、生みの苦しみを味わう日々でした。黒豚の味を知ってもらうためにCMを作りラジオで流し、試食会を何回も開いていくうちに、昭和60年前後から首都圏を中心に黒豚ブームが起こり、その魅力が知られるようになりました。
 平成元年には自らテレビに出演し、黒豚のおいしさや食べ方を消費者に直接呼びかけたこともありました。


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 平成9年から10年にかけて、全国のタウン誌を発行している会社や多くの観光関連団体を訪ね、黒豚料理の美味しさや食べ方を精力的にPRしてきました。学生時代の応援団長が黒豚の応援団長へ衣替えした感じです。まさに学生時代の経験がフットワークの良さとして表れ、黒豚の認知度を高めることになったのではないでしょうか。


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 また、ここまでくるには、大学やサラリーマン時代に築いた人脈の助けがあり、そのことへの感謝の念を忘れません。毎朝神棚の前では、影日向に支えてくれた50人ほどの名前を読み上げ頭を下げてから、仕事を始めることが日課となっています。
 『後ろ姿に感謝する』という言葉がありますが、社長は常にお客様の意見を大事にされており、今の隆盛は「お客様に感謝する」経営姿勢が支えていると感じます。


 黒豚料理店が県内で増えていることは、鹿児島の黒豚生産農家の大きな励みにもなります。今は国内だけでなく、海外からの来店客も増えています。海外メディアの取材やファムトリップに対して、懇切丁寧な情報発信の場を提供いただいており、海外での認知度向上にも大変寄与しています。香港では黒豚のことは「しゃぶしゃぶ」と呼ばれています。 1993年には黒豚しゃぶしゃぶの発祥の店として「黒しゃぶ」を商標登録しています。


 鹿児島を訪れた観光客が、「黒豚を食べたい」とタクシーのドライバーに尋ねると、「品質と味は保証します。値はちょっと張りますが」と「あぢもり」を紹介すると、「そこの店へお願いします」と言う客がほとんどです。


 口コミサイト「トリップアドバイザー」では、鹿児島市の2771軒のグルメ・レストランで第3位となり、黒豚料理店では1位となっています。まさに一度食べた人の舌は正直です。本物だけが感動をもたらし、リピーターの創出につながっています。


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 鹿児島県のPRキャラクターの「グリブー」は黒豚がモデルであり、今では子供が7人生まれてグリブーファミリーは9人となり、各種イベントで食や観光のPRに頑張っています。
 グリブーファミリーにあやかり、黒豚を扱う店舗が増え、観光客が本物の美味しい「黒豚料理」に出会える機会をどんどん提供したいものです。
みなさんも黒豚しゃぶしゃぶ発祥の店「あぢもり」に是非足を運び、一度本物の味をご堪能ください。



     けふもまた こころの鉦を 打ち鳴らし
               打ち鳴らしつつ あくがれて行く
                          ~若山牧水~

      参考 ①かごしま黒豚:ウィキペディア ②LEAP12月号

No.400 県と県都のさらなる連携強化を~無駄を省き相乗効果を高めるために~

2016年2月22日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光



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 鹿児島のシンボルである桜島が142日ぶりに噴火し、爆発的噴火の瞬間がテレビや翌日の新聞で報道され、国内外に大きな衝撃となって伝わったのではないでしょうか。
 日本人は御嶽山の噴火事故以来火山活動に敏感であり、しかも桜島の久しぶりの爆発的噴火ということで、大きなニュースになったと感じています。県民は比較的冷静で通常の姿に戻ったと捉えており、風評被害を少なくするべく情報発信に努めているところです。


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 鹿児島中央駅に新幹線が到着すると、初めて鹿児島を訪れた観光客が驚くのが錦江湾に雄大にそびえ噴煙を上げる桜島の姿です。
 桜島は5千人あまりの住民が普通の生活を営み、また、災害に備えて日頃から安全対策の徹底や避難訓練も行われています。今まさに、湯の平展望所からの雄大な景観、有村海岸での温泉掘り、袴腰での日本一の足湯等、火山がもたらす恩恵を観光客が間近で楽しんでいる姿を発信していかねばなりません。


 平成27年の8月に桜島の警戒レベルが引き上げられたこともあり、鹿児島地区への入込客が心配されましたが、年間の鹿児島地区の宿泊者総数は伸びています。
(鹿児島地区の22施設が対象:平成27年観光動向調査『サンプル調査』:鹿児島県観光交流局発表)


 鹿児島県は九州本島最南端に位置していることからアクセスが課題でしたが、九州新幹線全線開通で新大阪駅以西からの時間短縮が顕著となり、「新幹線南の終着駅」効果が鹿児島市への集客効果を高めています。乗継が便利な観光特急「指宿のたまて箱」は、運行からまもなく5年目を迎えますが今でも高乗車率を誇っています。


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 鹿児島市は、自然、歴史、温泉、錦江湾や桜島、伝統的祭り、世界文化遺産、食、アクセスの利便性等国内屈指の観光資源に恵まれた県都です。
 鹿児島を訪れる観光客は、まず1泊目は2食付の温泉地に、2泊目は1泊朝食型の宿泊施設が多い鹿児島市内に泊まり、夕食は外で食べるというスタイルが主流となっています。


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 鹿児島中央駅から徒歩5分のところにある「かごっまふるさと屋台村」は外国人にも人気で、地域の産品を活用した食や焼酎の提供、おもてなしの心等、観光客誘致の条件整備がなされており、店作りが成功している場所です。さらに日本文化が味わえる場所として、体験メニューや県内各地域の情報発信基地、外国語表記を増やすなどの取組が求められます。


 また、平成27年度は海外クルーズ船がマリンポートに51隻寄航予定で、中国からのショッピング目的の観光客が増えており、宿泊客は台湾、香港、韓国、中国の順となっています。
 クルーズ船誘致に新八代港や油津港も力を入れており、県、市、民間組織による受入態勢充実が求められます。


 ところで、多くの自治体が地方創生の柱に観光振興を掲げており、地域間の誘致競争も激しくなっています。まちづくりや国内外へのPRなど、相乗効果を発揮すべく県と県都の連携がこれまで以上に重要になっています。


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 鹿児島市のシンボルとするべく鶴丸城御楼門の復元に向けて、経済界が中心となり募金活動を推進してきました。目標金額に目途がついたことから、県と鹿児島市も協力し平成32年頃には完成の予定で整備が進められています。
 一帯は鶴丸城址を中心に博物館、美術館、かごしま近代文学館、黎明館等県と市がそれぞれ管轄する施設が集まっており、まさに文化ゾーンといわれる地域です。今後の街づくりは、そこから中央公園、天文館通り、いづろ通り、ウオーターフロント地域への回遊性が求められます。


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 特にウオーターフロント地域の再開発には、市電の延伸、MICEが誘致できる施設の建設、商業施設、港湾の整備等昼夜を問わず人が集まりやすい魅力ある拠点づくりが不可欠です。国、県、市の合意なしには推進できないプロジェクトです。少子高齢化の進行や人口減少が顕著となる中で、百年の体系を見据えた街づくりが重要と考えます。


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 次に国内外に対するPR態勢の強化です。鹿児島県のイメージアップを図り、持続的に誘客に繋げる取組が求められます。九州観光推進機構では、九州の認知度向上に努めていますが、海外での認知度は大都市圏に比べるとまだ低いのが現状です。九州への誘客を図り、そこから鹿児島に誘致するためのPR活動が不可欠です。


 県と県都は「かごしま」という同じネーミングであり、相手側が覚えやすい地名です。海外路線網や九州新幹線終着駅のメリットを活かすべく、一緒にPRすることで相乗効果が発揮できます。鹿児島地域の宿泊者総数は、平成26年実績で県全体の約40%を占め、年々その比率は高くなっており、観光客を県内に広げる取組は、鹿児島市の観光施策も大きく影響を及ぼします。


 海外のJNTO事務所やエージェントを訪問すると、日々日本の自治体が個々に訪れることから、対応に苦慮していると語っています。せめて県と県都は一緒に来てくれたらとJNTOの職員は言います。鹿児島県は、「世界自然遺産」と「世界文化遺産」を有する唯一の県であり認知度を高めるチャンスです。 


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 物産展などについては県、市が一緒に出店し、観光もPRすることで県都の認知度も高まると思います。自治体も高齢化の進行や人口減少に伴い財政状況は厳しくなっています。費用対効果も考え、より有効的な宣伝手法が求められます。


 海外へは週4路線12便が就航していますが、300便余りが就航している福岡空港からの誘客をいかに進めるが鹿児島のインバウンドの課題です。平成26年観光庁の統計では、九州内での鹿児島県の宿泊者総数は第2位ですが、外国人だけに限ると第5位であり、北部九州からのシャワー効果をもたらすためには、交通費の軽減化や他県にない魅力ある商品開発が課題です。県、市、経済団体等が連携しJR九州への働きかけも重要です。


 県と県都の連携にあたっては大胆な決断も必要です。平成30年は「明治維新150周年」の記念すべき年であり、近代日本の建設に尽力した多くの偉人達は、薩摩が輩出しました。その使命感と行動力に学ぶとき、鹿児島が一つになることの大切さを改めて感じます。


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 大河ドラマ「篤姫」放映時には県の観光課に、鹿児島市、霧島市、指宿市から人が派遣され、「鹿児島市観光未来戦略」作成にあたっては県の観光課も参画しました。県と県都鹿児島市が観光振興において連携することで県内への影響力も増し、その必要性は益々大きくなっています。

 これからの人口減少と高齢化社会を見据えて極力無駄を排除し、「小異を捨てて大同に就く」選択肢も必要ではないでしょうか。



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 山路を登りながら、こう考えた。
 智に働けば角が立つ。
 情に棹させば流される。
 意地を通せば窮屈だ。
 兎角に人の世は住みにくい。
 住みにくさが高じると、安い所へ
 引き越したくなる。
 どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生まれて、画が出来る。
 人の世を作ったものは神でもなければ鬼でもない。
 やはり向う三軒両隣りにちらちらするただの人である。
                     夏目漱石 ~草枕~



 今回のコラムで400回を迎えました。毎回拙稿にお付き合いいただき心から感謝申し上げます。
 47都道府県や多くの国々を旅した経験を観光振興に活かすべく、これからもコラムで伝えていきたいと考えています。ご指導方よろしくお願いいたします。
                 (2月21日 出張先韓国釜山にて) 


No.399 ボランティアガイドの支援態勢強化を~活動の領域が広がり人材育成が重要に~

2016年2月15日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光



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 熊本県の北に位置する山鹿市には、江戸時代に建てられ歌舞伎の興行が行われる「八千代座」、由緒ある酒蔵「千代の園」、西南戦争ゆかりの寺である「光専寺」等があり、通りにはこうじ屋、米蔵、せんべい屋が並び懐かしい風情が残ります。また、隣の植木町の田原坂は、明治10年官軍と薩軍による日本近代史上最大の内戦となった西南戦争の舞台となった場所です。


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 「九州観光ボランティアガイド研修会in熊本・山鹿」が、九州7県から85団体220名が参加して盛大に開催され、鹿児島県からは県としては最高の21団体54名が参加しました。事例発表会や分科会では、「ガイドが地域で果たす役割」や「ガイド団体のネットワークづくり」、「外国人観光客への対応」、「世界遺産など地域資源を生かす取組」、「ガイド(団体)の現状とこれから」等について、これまでの成果や課題について真剣な議論が展開されました。


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 はじめに「長崎さるく博'06」をプロデユースされた茶谷幸治氏が「おもてなし外国 人観光客へのガイドについて」と題して基調講演を行いました。
長崎さるく博は、県民を中心に延べ1000万人を超える人々が運営やまち歩きに参加しました。また、博覧会の最大の効果は、長崎県民が住んでいる街の魅力に気付く機会になったと言っています。
 同様なイベントは、歴史的遺産が多くアクセスに恵まれている鹿児島市内でも開催が可能ではないでしょうか。
 自ら街を歩くことで今まで知らなかった魅力を発見し、それを語る市民や機会が増えることから、多額の宣伝費用をかけるより効果があると感じます。


 ここ数年インバウンドが急激に伸びており、外国人の受入態勢充実が求められています。
 外国語表記の看板やパンフレットの作成、簡単な外国語での挨拶の仕方、習慣を学ぶ研修会等の開催も必要です。


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 2015年の外国人宿泊者総数は40万に迫る勢いであり、今後も増加が見込まれます。県内各地域では、まち歩き等に日本人と一緒に観光する外国人の姿が目立つようになっています。
 英語や片言の日本語で質問をする人も珍しくなくなり、どのようにおもてなしするかが 問われています。外国語表記もあるパンフレットを渡し、手振り身振りでも案内に努力し、笑顔を絶やさないことが相手の心を動かします。
 なぜ自分の地域に来てくれたかその疑問に応えるためには、地域のことを分かりやすく説明することで満足を与えられるのではないでしょうか。


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 ところで最近の旅行形態は、団体旅行から個人旅行への流れが顕著であり、しかも地域の生活、文化に触れる旅が多くなっています。博物館・美術館、歴史探訪、地元商店街や食のルーツ等を語ることで観光客も地域への興味をそそることにもなります。
 ボランティアガイドさんの案内する領域が広がり、加えて地域のおもてなし力が問われています。ガイドをする上では事前の準備が大切であり、予約を受けた団体については、出発される地域の歴史や食の魅力等を把握して、最初の挨拶でふれると親近感が高まります。


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 専門的な知識の羅列では、参加者は飽きてしまいます。客の表情を伺い、案内の内容を変え、場所によっては説明の濃淡をつけることも相手に対する配慮と考えます。
 また、最近は熟年の参加が増えており、観光ルート沿いの病院やトイレの場所、休憩場所等も頭にいれておくと緊急の際に助かります。地元産品の魅力を語ることで、後のお土産品購入や飲食など消費行動にもつながります。


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 日常活動の運営には一定の予算も必要ですが、実情は会員のボランティア活動に支えられています。多くの団体で課題となっているのが、ガイド料金や参加者保険の収受です。  日常の連絡体制、研修会の経費や参加者の万一の事故等を考えると、ガイドの有料化は不可欠と思います。有料化することで、案内マップの充実や他の団体との交流も促進されることになります。交通費の支給等は不可欠であり、運営費用の蓄積が組織運営には欠かせません。
 ボランティアガイドの組織がうまく機能するためには、会員のスキルアップの機会を増やして日常の勉強会を増やす取組や、案内の機会をできるだけ均等に入れ込むことが大切です。


 日頃から観光客の案内やおもてなしに尽力されていますが、九州大会は研修会の要素が強く、他県の活動を学ぶ良い機会です。今回のような大会への参加については、バス代等の支援も必要ではないでしょうか。


 また、遠方から来る観光客は広域に回り、県境の意識はありません。これからも隣県と連携し、ボランティアガイドさん仲間を紹介しあう取組がお客様を安心させることにもなります。
 地域住民も地域の魅力を知り、街角で観光客に訪ねられたら笑顔で語ることが街の魅力にもなります。人の魅力がその街の印象にもつながります。


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 2018年は「明治維新150周年」を迎えることから、維新の原動力となった薩摩の歴史を学びたいと国内外から多くの観光客が訪れるものと思います。
 着地型観光が脚光を浴びる中、地域を知るボランティアガイドさんの存在が欠かせません。
 現在、県内には47団体、920名のボランティアガイドさんが登録しています。
 来年は鹿児島大会が予定されています。
 温かいおもてなしの心で皆さんを迎えたいものです。


           ふるさとに 帰り来りて 先ず聞くは
           かの城山の 時告ぐる鐘

                            ~若山牧水~


*宮崎県延岡市の延岡城址の頂上にある「城山の鐘」は、明治11年から現在まで人の手によって1日6回市民に時を告げています。市内にはこの歌の歌碑があります。 また、近くにある可愛岳は西南戦争ゆかりの地で、明治10年8月16日西郷隆盛が明 治天皇から賜った日本でただ一つの軍服を焼却し、薩軍に解散命令を出した場所です。

No.398 屋久島の新しいPR手法を考える~縄文杉だけに頼らない魅力発信を~

2016年2月8日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光



         分け入っても 分け入っても 青い山
                      ~種田山頭火~


 「屋久島は一月に35日雨が降る」という不思議な文章の一節があります。林芙美子の小説「浮雲」に描かれており、屋久島の雨の多さを表現しています。


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 彼女が屋久島滞在中に小説の構想を練り上げるために宿泊した宿は、今でも「ホテル屋久島山荘」として営業を続けています。安房川を見下ろす川岸の高台に位置し、宿泊した部屋からは、屋久島の美しい山々と静かに佇む安房の街の様子が望めます。
 夏の夕方には屋形船の灯りが印象的で、旅情をいっそう深めてくれます。



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 屋久島は白神山地とともに、1993年日本で始めて「世界自然遺産」に登録されました。春から秋にかけては、特に縄文杉や宮之浦岳の登山客で賑わいます。
 一方、登山客の増加と供に自然環境をいかに守っていくかが問われており、入山料等の徴収が議論されているところです。

 屋久島の観光の現況に触れたいと思います。世界遺産登録後屋久島への観光客は増加し、ピーク時の入込客数は40万人を超えましが、最近では30万人前後で推移しています。
 昨年は、口永良部島の噴火や桜島の噴火警戒レベルの引き上げによる風評被害等で、指宿と屋久島を巡る観光客が減少したこともあり、苦戦を強いられました。
 屋久島は世界遺産登録後、往復でも約8時間かかる縄文杉登山が一躍有名となりました。
 ゴールデンウイークや夏休みは、一日1,000人を越える登山者があり、自然破壊も懸念されています。



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 従来屋久島のPRは、縄文杉に代表される山岳観光の魅力を中心に進められてきた経緯がありますが、登山が困難であるオフ時期にいかに集客するかが課題となっています。
 そのためには、登山以外の魅力を伝えていく必要性に迫られているのではないでしょうか。
 屋久島は海岸線を一周する道路沿いに集落が点在し、集落独特の文化が育まれています。岳参りという山岳信仰や、珍しい動植物や美しい海岸景観などがあります。地元の語り部と巡る里めぐりはいかがでしょうか。



 バスで巡れる「千尋の滝」、「大川の滝」、「志戸子のガジュマル園」、「白谷雲水峡」、「屋久杉ランド」は、大雪で道路が不通にならない限り冬場でも行くことができます。



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 島の南側は、温暖で温泉が沸き、著名な露天風呂もあります。西部林道からは「世界自然遺産」登録地域の植物の垂直分布を見ることができます。
 この一帯を車で走ると、サルやシカの群れに遭遇し、屋久島ならではの景観が広がります。
 また、冬場の観光は12月~1月頃は「屋久島ぽんかん」、1月後半から~2月は「たんかん」の収穫体験が可能です。屋久島に行ったことがない人たちに、登山だけではない屋久島の魅力をいかに伝えることができるかが課題となっています。


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 新鮮な「トビウオ」や「首折れサバ」は地元でしか食べることが出来ない食材であり、是非賞味していただきたい。
 また、急峻な山肌が海岸に迫り断崖絶壁が多く、良好な釣り場やダイビングポイントに恵まれ、アウトドア派にも最適な滞在場所でもあります。



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 屋久島の動物たちとの触れ合いを題材に多くの児童文学を発表した「椋鳩十」や、屋久島の美しい自然を詩として残した「山尾山省」の足跡を語ることも、島の旅を一層興味深くするのではないでしょうか。



 屋久島空港の近くにある喫茶「樹林」には、20年の長きにわたり島内外の人々に親しまれてきたタウン誌が展示されています。


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「生命の島」という本を全巻閲覧でき、直接買うこともできます。喫茶店は、発行者の意思を継いだ奥様と息子さんが営業を続けており、仕事の合間をぬって、作者の生き様を語ってくれます。テラスで太平洋の美しい海と、屋久島の山々を望みながら、コーヒーを頂くのも至福の時間となります。
 「屋久杉自然館」では、屋久杉伐採で栄えていたころの小杉谷集落の様子を記録したビデオを見ることができ、江戸時代から昭和44年頃に廃村になるまで、屋久杉がその生活を支えていたことがよく理解できます。



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 首都圏でのエージェントの調査では、屋久島は日本にある19の世界遺産の中で一番行きたい場所に選ばれています。最近では欧米からの個人客も増加しています。
 登山の魅力だけではなく、屋久島全体の魅力を情報発信し語る必要があります。町と観光協会では島をPRするパンフレットを全面的に改訂する準備に入っています。


 登山に集中しがちなPRを、生活や文化、地域住民の生業を通して屋久島全体の魅力を訴える紙面に変えていく予定です。



 3年後には「奄美・琉球」が世界自然遺産登録を目指しており、2つの自然遺産をつなぐツアーも期待されます。
 屋久島観光の復活が鹿児島の観光の新たな一ページを切り開くチャンスとなることを信じてやみません。



プロフィール

古木 圭介プロデューサー
鹿児島県
観光プロデューサー
古木 圭介
(平成29年4月より就任)
詳しいプロフィールはこちら

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