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No.406 鹿児島版DMOの定着にむけて~地域づくりの中心に成りうるか~

2016年4月4日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光

 先週末は花見や夜桜見物で、楽しい時を過ごされた方が多かったのではないでしょうか。満開の桜も散り始め今週末には葉桜となりそうです。
 職場では新しい部署の歓迎会も終わり、本格的に新年度のスタートです。日本では年度初めに人の異動等もあることから送別会や歓迎会が開かれており、あらたな気持ちで業務をスタートできるのではないでしょうか。
 熱い思いをもって社会人になった若者も迎えました。先輩の皆様方の温かいご指導をお願いしたい。

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 鹿児島県の28年度予算では観光関係の予算が大幅に増額され、農業とともに基幹産業としての役割が益々期待されています。
 観光庁では、観光地域づくりの舵取り役を担う新しい法人が設立されることを期待しています。それは、「観光地経営」の視点にたって観光地域づくりを行う組織・機能「DMO」(Destination Marketing / Management Organization)です。

 「日本版DMO」には、マーケティングに基づく観光戦略の策定・推進や、地域内の団体や住民等の幅広い合意形成など、観光事業のトータル的なマネージメントを担う役割が求められています。登録候補法人は、広域連携DMO2件、地域連携DMO11件、地域DMO11件の24件が予定されています。(平成28年2月28日現在)

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 エリアでの観光地経営が求められる背景には、現在の旅行スタイルの変化があげられます。高度経済成長期からバブル全盛期頃までは団体旅行が主流であり、大都市圏での営業力を活かし旅行エージェントが多くの客を集客し送客してくれました。観光地や温泉地では慰安旅行や招待旅行客であふれ、連日多くのお客で昼夜賑わいを見せていました。発地型観光の典型的な姿であり、地域や観光関連施設は大きな努力を求められることもなく、旅行エージェント頼りで経営が十分成り立っていました。

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 しかしバブル崩壊後団体旅行は減少していき、旅行スタイルは個人旅行へと変化し、ニーズも複雑・多様化して、体験や交流を求める観光客が増加しています。
 エージェントだけの送客に頼るのではなく、地域自らが地域資源を活用した商品化をすすめ、情報発信し集客できる態勢づくりが求められてきています。着地型観光の推進が不可欠になっています。

 一方で、地域は旧来の受入態勢からなかなか脱却できず、着地型観光の推進は一部の地域以外を除いて、十分な成果が上がっていないのが現状です。また、急増している外国人対策も急がれ新しい地域づくりが求められています。

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 そこで、観光立国推進会議は昨年6月「観光立国実現に向けたアクションプログラム2015」を決定し、2020年に向けた訪日外国人の増加を目標に掲げ、その一つに「日本版DMO」の確立をあげています。
 「まち・ひと・しごと創生基本方針2015」では、「欧米の先進事例も踏まえ、望ましい機能を備えた日本版DMOを早急に育成する」こととされています。
 地域の風土・文化にあった組織をつくりあげることで、地域を活性化させるビジネスモデルの形成を目指すものです。

 今回の候補法人登録予定24件に、県内では「地域DMO」として(株)薩摩川内市観光物産協会があがっています。今後登録を目指す地域もありますが、これから登録にあたっての課題や方向性について整理したいと思います。

 現在、地域で観光業務に携わっている組織には、宿泊観光施設、運輸、商工業、農林水産業、観光協会、旅館組合、NPO法人等がありますが、それぞれが独立している組織であり、会費や自治体の補助金で運営されています。

 地域でのDMOの設立にあたり、各団体で行っている日々の活動を分析し、一つにまとまって地域づくりを行うことについて、多様な関係者の合意形成が重要です。
 地域全体の宿泊・観光施設の現状や観光資源など現在のマーケットを明らかにして、どのような需要があり、年間のいくらの収益が見込まれるのか経営の見通しを予測する必要があります。各種データの収集・分析を行うことで戦略策定も可能となります。マーケティングが次の行動を生み出します。
 設立当初は国の支援金等を受けられますが、組織の維持・発展には経営の黒字化が不可欠です。

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 次に人材の発掘です。新しい組織の設立には中核となる人材の登用が欠かせません。地域資源を磨きあげ新しい着地型商品づくりやプロモーション、ランドオペレーター機能の仕組みづくり、地域を俯瞰しコーディネートできる人材が求められます。特に設立から3年間ぐらいは組織の調整が一番大切であり、運営を軌道に乗せることでその後の展開も可能となります。
 そして地域の運営会社として新たな雇用を生み出すことが重要と考えます。

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 現在、地域の取組として成果をあげているのが、長崎県の小値賀町の「株式会社小値賀観光まちづくり公社」があげられます。都会から移り住んだ劇団出身のTさんが2004年に移住して取り組みを始めて、何もない島に年間宿泊客約1万4000人が訪れるようになりました。民泊受入70軒が生まれ、公社には20人の雇用も生まれています。10年間でIターンの移住者が120名にもなっています。地域資源を活用した滞在メニューが交流人口の拡大につながっています。アメリカの高校生も毎年訪れています。
 1人のリーダーが島民の意識改革と合意形成を取り付け、島の魅力を磨き、価値ある島へと変革させたのです。観光協会・自然学校・民泊組織を1つにまとめて予約を1本化したことが大きいと感じます。

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 これから県内でDMOを設立するには、離島が一番取り組み易いのではと感じます。入込客は、船や飛行機に限定されており、入口で観光客を把握しやすくワンストップで予約ができる仕組みづくりが可能になるからです。

 候補地としては、屋久島、甑島、与論島、奄美大島などが取り組みやすいと思います。屋久島を例に取ると、「世界自然遺産登録地」という価値が一定の入込客を呼び込みます。

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 登山ガイド、宿泊、レンタカー等の手配、オプショナルツアーの企画販売、来年から始まる入山協力金の徴収受託、特産品の販売など総合的にプロデュースすることで、一定の収益や雇用の確保も見込まれます。
 他の島も魅力ある観光資源があり、体験メニューの商品化もすでに進んでいます。
 またグリーンツーリズムに特化している地域は、教育旅行をすでに受け入れていることから、他の地域資源と組み合わせることで、組織の拡大が図られると感じます。

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 いずれにしても、持続できる組織であり続けるためには、十分なマーケティングと人材の育成、戦略的な組織運営が鍵となります。単なる組織統合と費用削減の観点だけでは、展望は開けないと感じます。
 DMOの登録はスタートしたばかりです。十分な議論を重ね将来的には、補助金なしで運営できる会社に育てる長期的な戦略が求められます。(株)薩摩川内市観光物産協会に続く「鹿児島版DMO」が登録されることを期待します。

    親馬の 道をいそげば きりにぬれて
             子馬も走る いななきながら
                        ~橋田東声~


 ※参考:観光庁「日本版DMO」とは

No.405 旅人は花の魅力に誘われる~フラワーツーリズムの推進~

2016年3月28日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光



        宿りして 春の山辺に 寝たる夜は
                夢のうちにも 花ぞ散りける
                      紀貫之~古今和歌集~


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 桜の開花宣言が続き、鹿児島は今週末が見ごろとなります。北国ではいまだ降雪があり、厳しい寒さが続いているところもあります。日本の中でこれほど気象の差があるのかと感じます。
 桜前線は例年、5月上旬に北海道に上陸し、松前城や五稜郭公園の桜が話題となります。


 桜は奈良、平安の時代から多くの短歌や随筆、物語集、日記等の中で取り上げられています。源氏物語、万葉集、土佐日記、古今和歌集、新古今和歌集、徒然草などがあります。

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 江戸時代には、松尾芭蕉、与謝蕪村、小林一茶の俳句に多く詠まれています。また明治以降文人墨客にも愛され多くの文学作品に描かれ、映画やテレビドラマでは欠かせない情景となっています。


 アメリカ合衆国の首都ワシントンD.C.のポトマック河畔の桜並木は、世界の名所の一つに数えられます。ここの桜は、明治45年(1912年)当時の東京市長であった尾崎行雄氏が贈ったもので、毎年3月末から4月のはじめにかけて、盛大な「桜まつり」が開催され、多くの人が訪れます。在米の日本人は特に楽しみにしているイベントです。是非一度お訪ねください。


 日本は四季がはっきりしており、そのことが美しい国土を創り出し、桜の魅力もその恩恵を受けていると感じます。桜の開花予想についてはソメイヨシノの木が対象となっており、全国54地点(沖縄・沖縄地方をのぞく)の開花日を発表しています。気象庁の発表では、今年の鹿児島での開花予想日は29日となっています。


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 全国に桜の名所は数多くあり、日本の「三大桜」と言えば、福島県の三春滝桜、山梨県の山高神代桜、岐阜県の根尾薄墨桜です。桜の木の大きさや形、花の咲いている姿が特に印象に残ります。
 他にも北海道の松前城や五稜郭公園、東北の弘前城公園、角館、東京の新宿御苑や上野公園、長野県の高遠城址公園が有名です。西日本では豊臣秀吉が最晩年に1300人の招待者を集めた醍醐寺、岡崎公園、吉野山、大阪造幣局、福岡舞鶴公園、熊本城、一心行の大桜、都城市の母智ヶ岡公園などが有名です。


 弘前城公園には約2600本の桜がありますが、特にお堀端の枝垂れ桜が有名で、水辺に映える夜桜見学がおすすめです。毎年4月下旬から5月上旬に開かれる「弘前さくらまつり」は、200万人を超える観光客が訪れ、必見の価値があります。
翌日は「津軽鉄道」に乗り、金木町の太宰治の生家である「斜陽館」や、鹿児島出身の彫刻家中村晋也氏製作の「太宰治銅像」や文学碑がある芦野公園を訪ねる旅はいかがですか。


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 戦時中は、桜は戦争に行く兵士の激励や戦争で亡くなった人々の弔いの花として崇められていました。軍歌にも歌われています。
 これほど桜が慕われるのは色鮮やかさと木全体の彩り、開花から散るまでの期間が短く、ぱっと咲いてぱっと散る清らかさが日本人の心を捉えるのでしょう。
 また桜の開花は、入学式や社会人のスタートの時期と重なり、思い出に残る花として一緒に写真に納まる光景が見られます。


 県内でも桜の花を背景に見る仙巌園からの桜島、石垣から垂れ下がる桜並木を牛車や着物姿で巡る出水の武家屋敷、特攻隊員の想いに心をはせながら歩く知覧特攻記念館前の桜並木、伊佐市の忠元公園や曾木の滝公園など、県内の名所を訪ねませんか。


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 数年後に鶴丸城の御楼門が復元されます。お堀端の桜は石垣とともに風情を醸し出し風格を感じます。完成の暁には、ライトアップして夜まで開放することで、鹿児島の桜の名所の一つとして話題になるのではないでしょうか。そのことが中心市街地への回遊性をもたらします。


 桜の名所の開花日は、旅行商品の企画には重要なポイントとなります。桜は開花から満開、葉桜へと長くて2週間程度で推移するため、予測が難しく短期間での販売を余儀なくされます。
 特に開花日は雨や気温の差で早まったり遅くなったりで、商品を造成する側にとっては天気が気がかりとなります。京都の桜見学ツアーは特に人気があり、首都圏から京都へは、新幹線貸切列車による商品が多く販売されます。


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 ところで、これからの季節は皆様の地域でも、桜以外に、芝桜、藤、つつじ、ジャカランダ、あやめ、アジサイ等次々に様々な花が咲きます。その美しい姿を観光資源として捉え、食、歴史遺産、直売店、イベント等を組入れて、地域全体の魅力付けをして商品化することが重要です。商品化したものはエージェント等の企画に反映させる努力も必要です。


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 魅力付けには、花のストーリーを語ることが重要です。100年前の卒業記念に植えた木に咲く花、友好の証として他の地域から送られた小さな苗を育てて、毎年多くの花を咲かせている藤の木、夫婦で苦労しながら育て、家の周辺一帯が芝桜に包まれた光景等、そこに至るストーリーがお客様の共感を呼びます。
 ホームページやフェイスブック等での情報発信や、メディアが取り上げたくなる話題作りが欠かせません。前広に地域の人を絡めた情報発信が大切です。


 県内をドライブしていると、あちこちの山に白やピンクの花をつけた山桜を見ることができます。人が植えたわけでもなく、肥料も与えていないのにこの時期になると決まったように美しい花を咲かせます。自然の移ろいは素晴らしい景観を創り出します。


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 道路沿いに花を植栽して四季折々の魅力づくりを進めている長島町は、フラワーツーリズムを推進しており、多くの来訪者を創出しています。町民の積極的参加も地域づくりの参考になります。花の魅力は人を動かし、旅人の心を癒してくれます。


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 自然に咲き誇る花や植栽した公園の多種の草花、それに伝統の食等を加えて地域全体の魅力をもっとPRし、交流人口の拡大に活かしたいものです。




      春霞 たなびく山の 桜花
           見れども飽かぬ 君にもあるかな
                      紀友則~古今和歌集~

No.404 ふるさとの魅力を語れる人に~若者の旅立ちを祝す~

2016年3月22日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光



 秋に植え厳しい冬の寒さを乗り越えたチューリップが、温かい陽気に誘われいつの間にかつぼみとなり、開花間近という状況です。今週には桜の開花宣言が発表されます。
 官公庁や企業では人事異動の季節です。新聞発表や友人から、昔のクラスメイトの動向 を知り、複雑な心境になられる方も多いのではないでしょうか。


       石川啄木の短歌です。
           友がみな 我よりえらく見ゆる日よ
                  花を買い来て 妻としたしむ


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 周りの友人たちが立身出世し、自分がひとり取り残されたように感じる時期にもなります。花でも買って帰り、妻と友人の栄達を心からお祝いしてあげようという素直な心境にもなりたい。
 なんとなくわびしく切なくほろりとくる歌です。皆さんもこのような感情を持ったことはありませんか。


 人事とは、企業やトップから本人に与えられる最大のメッセージではないでしょうか。与えられた場所で精一杯努力することが重要と考えます。若い人たちは多くの人々との出会いや困難を経験して成長していくものと思います。


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 高校、大学の卒業式が終わり多くの若者がふるさと鹿児島を離れる季節となりました。
 若者にとっても旅立ちの季節で、家族や友人との別れがつらくなります。
 数年前関東地方を旅したとき、駅の待合室の掲示板に次のような張り紙がありました。
 「ご卒業おめでとうございます。永年当社をご利用いただき感謝申し上げます。寒い冬の朝、雨の日、風の日重いかばんを持っての通学大変だったと思います。ふるさとを離れてもこの地を忘れず、帰郷の際はご利用をお待ちしています。異郷の地でのご活躍を心からお祈りいたします。」
 学生さんたちへの心温まるメッセージが託されています。


 ところで、最近地元の高校から国公立大学に進学する生徒さんに、お祝い金を支給する自治体があります。少子化等で高校の統合・再編や廃校になる学校もあり、何とか地元の学校に通って欲しいという切ない願いが表れています。先日発表された県内の公立高校の志願状況を見ると定員割れの学科が多くあったのも事実です。これからもこのような状況が続くことが想定され、教育現場でも少子化の流れは深刻です。


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 旅立ちの姿は各地域で異なりますが、離島の多い鹿児島では送別にあたっては、格別の想いが託され盛大な別れのシーンが見られます。甑島では、1年前から5年後の成人式に向けての焼酎作りも始まり、「島立ち」と言う記念ボトルがつくられます。



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 交流人口の拡大は地域活性化には欠かせません。旅立つ若い皆様にもふるさとの魅力を是非知ってもらいたい。鹿児島県は南北600キロに及び、多彩な観光資源に恵まれています。
 昨年は、口永良部島の新岳噴火、桜島が膨張しているという報道もあり、風評被害等で教育旅行の取消し、企画旅行等の不振もあり前年割れが懸念されましたが、先日発表された2015年の鹿児島県の宿泊者総数は、787万人で5年連続前年を超えました。地方創生事業のふるさと割引旅行券、奄美振興事業、外国人に対する特典キャンペーン、貸切バス助成、風呂マラソン等の取組が新たな需要喚起につながったと感じています。


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 今年に入り外国人は引き続き好調ですが、国内旅行は4月以降厳しい状況が予想されます。
 「世界自然遺産」と「世界文化遺産」の2つの世界遺産を持つ鹿児島の魅力を発していかねばなりません。奄美大島は、バニラ効果や世界自然遺産登録を2年後にひかえ、メディアでの発信も多く、来島者が増えています。


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 3月26日に北海道新幹線が「新函館北斗駅」まで開通します。北海道では新幹線南の終着駅「鹿児島中央駅」まで行く片道新幹線利用の弾丸ツアーが人気となっています。
 北海道新幹線開業後、これから6年間は新たな新幹線開業はなく新幹線の話題も少なくなります。九州新幹線を利用した商品企画やコンサートツアー、2つの世界遺産をつなぐツアー、教育旅行の新規市場開拓等の取組が不可欠です。
 地域資源を磨きストーリー性のある感動をもたらす商品化が求められます。


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 学校を巣立ち、県外に出て行く皆さん、是非ふるさと鹿児島を忘れず、一人ひとりがPR大使の役割を果たして欲しい。皆様の口コミが鹿児島の魅力を確実なものとします。いつかまた、鹿児島で生活してくれることを期待しています。皆様の将来に幸せあれと祈りたいと思います。


       元二の安西に使ひするを送る  ~王維~

    渭城の朝雨  軽塵を潤おし  客舎青青柳色新たなり
    君に勧む   更に尽くせ   一杯の酒
    西の方陽閑を 出づれば    故人無からん

    *王維とその友人であった元二と呼ばれる人物との別れを読んだ句です。
    *「陽関」は前漢時代に建設された、かつてのシルクロードの重要な関所です。

No.403 市民が支えるマラソン大会に~鹿児島市の情報発信に生かす~

2016年3月14日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光



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 鹿児島は明治維新にあたり多くの偉人を輩出しましたが、その鹿児島市の中心市街地を駆け抜ける記念すべき第一回目の「鹿児島マラソン 2016」が開催されました。
 11,854名の参加者があり、ウオーターフロント地区、天文館、西郷隆盛銅像前、鶴丸城跡、そして、世界文化遺産に登録された旧集成館事業の建物がある仙巌園を横目に見ながら、島津義弘侯ゆかりの地である姶良市重富を折り返すコースの沿道では、ボランティアや多くの市民が声援を送りました。


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 今全国各地で、地域活性化に繋げるべく市民マラソン大会が開催されており、隣の熊本や福岡での大会には多くの参加者があります。
 鹿児島マラソンは市内の中心街に加えて国道10号線を走ることから、錦江湾に浮かぶ桜島や日豊本線沿いの風光明媚な景観が、ランナーの励みになったのではないでしょうか。



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 前夜には招待選手、ゲストランナーの石原良純さん、宮下純一さん、往年の名ランナー荒木久美さん、千葉真子さん、郷土出身のタレント国生さゆりさんを迎えて、レセプションが開催され大会を盛り上げました。
 大会当日は曇天が予想されていましたが、スタート時点から雨や風もなく、参加者には心地良いコンディションの中での大会になったのではないかと思います。



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 小生はコース沿いにある天保山シーサイドブリッジで友人の応援をしました。先頭から最後尾まで40分程かかり、12,000人近くが走ることのすごさを肌で感じました。
 ランナー達はゴール後、市内で銭湯に入り疲れを癒していました。鹿児島市は県庁所在地で泉源数が日本一であり、参加者にも良いPRができたのではないでしょうか。



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 約5,000人が県外選手で家族を含めると1万人近くの宿泊者があり、飲食店は賑わいを見せていました。中央公園ではおもてなしのイベントが開催されており、足湯や特産品の販売、飲食店も列をなし多くの市民も訪れていました。



 ところで、大会開催に伴い市内を中心に長時間公共交通機関がストップし、道路規制も行われ移動に不便を感じた方も多かったと思います。このようなビッグイベントの実施は、市民の協力無しには開催できません。2年前から様々な課題を調整しながら大会開催にこぎつけました。



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 今回は各所でボランティアの姿が目に付きました。折り返し地点では姶良市の皆さんが、名物の加治木まんじゅうやキャンディ、湯茶等の接待で選手を元気づけました。2つの市が連携して取組んでいる大会であり、来年につながる好印象をもたらしました。
 1月の「いぶすき菜の花マラソン」が35回も開催できているのは、多くの市民ボランティアに支えられていると感じます。


 今年は大きな行事や、イベントが少なく観光客誘致にとっては苦戦が予想されます。桜島、霧島の硫黄山の風評被害を払拭するべく情報発信に努めていますが、十分とはいえません。マラソン大会の開催や市民の通常の生活ぶりを伝えることが、一般消費者に安心感を与えます。特に桜島がある鹿児島市での開催は、参加者に対して火山に関する不安感を少しは取り除くイベントになったのではないでしょうか。


 2月のはじめに韓国を1週間訪問し、25のエージェントを訪問しました。企画担当者からは桜島の情報を常に発信することが、集客に結びつくと念押しされました。今回も韓国や台湾、香港等から100名余りの参加者がありました。国際大会への一歩を踏み出すチャンスにしなければなりません。
 鹿児島は九州本島最南端に位置する県であり、冬でも暖かくスポーツイベント誘致には好条件がそろっています。また、温泉、歴史、世界遺産、新幹線や国際線のある空港、豊富な食等に恵まれており、来訪者を楽しませる要素にも事欠きません。



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 今回のマラソン大会のように市民生活に大きく関わるイベントは、前広な準備と告知が必要です。大きな混乱もなく開催できたことは、関係者に加えて市民の皆様の理解があってこそと思います。伝統的祭りや四季折々の美しい景観を求めて、一度に多くの観光客が訪れる地域は、市民が日常生活を送る上で一定の負荷がかかっているのは事実です。市民に理解を求める努力も欠かせません。そのことが「おもてなしの心」を醸成すことにつながります。


 本格的な人口減少時代を迎えて交流人口の拡大は不可欠です。マラソンに参加する人は、自分で時間をつくりお金を払ってくれる有難い観光客でもあり、リピーターになる可能性が大です。今大会開催がもたらす経済効果も大きいものがあるのではないでしょうか。


 一方では市民マラソン大会が多くの県で開かれるようになっており、集客も厳しくなっています。鹿児島県が持つ多くの観光資源を活かして同伴者を増やすと共に、また走って見たいという魅力あるマラソン大会として定着させることが重要です。


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 今回は第1回大会ということで参加者が集まり易かったということもいえます。来年以降も多くの参加者が集まるよう今年の問題点を分析し、改善していきたいものです。大会関係者のご苦労に心から敬意を表します。



        梅が香に のっと日の出る 山路かな
                      ~松尾芭蕉~


No.402 九州新幹線全線開通5周年を迎えて~開業時の熱気を忘れない~

2016年3月7日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光



 2011年3月11日東北地域を襲った大震災は、死者15,894人、行方不明者2,563人と未曾有の自然災害となりました。また、福島第一原発の事故も重なり、ふるさとから遠く避難生活を余儀なくされる住民もあり、被災地域の復興の厳しさも感じます。政府による力強い支援と、東北地域の一日も早い復興を祈りたいと思います。『死者、行方不明者数は2016年1月8日現在』


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 ところで、翌日の3月12日は九州新幹線の全線開業日でした。重大な自然災害が発生したこともあり、開業日のイベントはほとんど中止になりました。
 多くの関係者が見送る中一番列車は鹿児島中央駅を無事出発しました。最速で博多駅まで 1時間17分、新大阪駅までは3時間42分となり、時間短縮が日帰り旅行を可能にしています。長年に亘る要望が実現し、開業時の皆様の喜びにあふれた顔が忘れられません。


 県では、各自治体、経済団体、メディア、キャリア、エージェント等による「新幹線効果活用プラン」を策定し、開業効果を県内全域に広げる取組を推進してきました。 
 交流人口を増やすことで、観光客が「本物。鹿児島県」の魅力に触れる機会が増え、消費拡大や持続的な観光客誘致に結びついています。


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 全線開業にあわせて、JR九州や各自治体、民間企業等も2次交通の整備にも取り組んできました。観光特急「指宿のたまて箱」、肥薩おれんじ鉄道の観光列車「おれんじ食堂」、「おれんじカフェ」、鹿児島中央駅~鹿屋間直行バス、鹿児島中央駅~志布志港までの「さんふらわあライナー」、「あいらビュー号」、出水~天草ロマンシャトルバス、山川~根占航路の再開等地域への利便性を図るべくアクセスの改善もなされてきています。


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 新しい取組も生まれています。「頴娃のグリーンティリズム」、「枕崎の出汁ツアー」、「甑島や入来の地域おこし隊」、「長島町のフラワーツーリズム」、「着物で出水武家屋敷を歩こう」、「垂水の千本いちょう園」、「薩摩藩英国留学生記念館」、「桜島ミュージアムのジオツアー」、「地域グルメの開発」、「鹿児島市や各地域のボランティアガイドによる着地型観光」、「グリーンツーリズムを活用した教育旅行」等観光客の誘致につながっています。


 様々な取り組みの成果もあり、宿泊客数は開業から5年間毎年伸びてきました。
 平成27年の宿泊客総数は787万人で過去最高となり福岡県に次ぎ第3位となっていますが、外国人宿泊客数は第5位に甘んじています。福岡空港への入込客は、交通アクセスが充実している北部九州、中九州方面がメインです。
(全宿泊施設の宿泊者総数:平成23~27年観光庁統計)


 九州新幹線を利用して鹿児島への誘客を進めるには、南九州周遊切符や新幹線特定便の割引拡大等移動コストの軽減化が求められます。先般韓国を訪問した際エージェントからは、九州へのリピーター客は南九州に行きたい意向が強く、時間短縮と旅費軽減を強く言われました。
 日本人の国内旅行は成熟し大きな伸びが期待できない中で、インバウンドの拡大に必死で取り組まねばなりません。


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 2年後には「明治維新150周年」を迎えることから、鹿児島にゆかりのある人物や維新を題材とした大河ドラマの誘致を進めています。
 幕末から明治維新に至るストーリーは、薩摩を抜きにしては語れません。鹿児島をPRする絶好の機会と捉え、前広な情報発信が求められます。合わせて案内板の整備や外国語表記の充実等街づくりが重要になっています。


 また、安定的な顧客維持には教育旅行の誘致が欠かせません。関西や北九州地域から新幹線集約臨時列車の利便性とメリットを強調し、鹿児島が誇る歴史、自然、温泉、宇宙、平和教育や、農林水産業を活用した民泊体験メニューの優位性をPRしていくことが求められます。
 桜島の風評被害が懸念され、行く先を変更する学校もでています。正しい情報発信が安全・安心を確実なものとします。引き続き教育委員会、校長会、修学旅行関連団体への営業を強化しなければなりません。


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 今の旅行形態は団体旅行から個人旅行への流れが加速し、趣味や体験を望む観光 客が増えています。地域資源を点検し、ストーリー性のある商品化を進め、エージェントの旅行企画への参画やメディアでの発信が重要になっています。


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 顧客を捉えるのは、本物の心に響くストーリーです。地域の商品をPRするには、「その商品はどのようにして生まれて、どのように育ててきたのか」が重要であり、消費者に共感をもたらすことが、持続できる地域にもなります。
 鹿児島県は「世界自然遺産」と「世界文化遺産」を有する唯一の県であり、新幹線で鹿児島まで来て、2つの遺産を巡る行程が容易にできることも強調しなければなりません。


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 観光は、多くの分野と関連がある総合産業として位置づけ、経済効果を創出し雇用を拡大することが重要です。鹿児島が誇る農水産物、伝統工芸、郷土芸能など地域文化に触れる機会を提供することが鹿児島の魅力となります。それを発信する動画サイトの充実も求められています。


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 「鹿児島はすばらしかった。また行きたい。」と心に残る「感動」と「感激」を与え、リピーターを増やすことが大切です。
 指宿市役所の皆様は、近くを走る「指宿のたまて箱」号に旗を振って歓迎しています。まさに「一期一会の心」のおもてなしが定着しています。


 3月26日に北海道新幹線が「新函館北斗駅」まで開通しますが、これから約6年間新しい新幹線の開業はなく、話題も乏しくなりがちです。
 「鹿児島中央駅」が南の終着駅であることをもっとPRして、北海道から鹿児島までの日本列島縦断の旅を若者にもっとPRしたいものです。


 新幹線は「魔法の杖」ではありません。全線開業時の喜びと熱い思いを忘れず、誘客対策に取り組まねばなりません。自ら行動して地域を動かす努力が求められる5周年とし、新たな目標に向かって挑戦したいものです。



      何となく 汽車にのりたく 思ひしのみ
            汽車を下りしに ゆくところなし
                       ~石川啄木~



プロフィール

古木 圭介プロデューサー
鹿児島県
観光プロデューサー
古木 圭介
(平成29年4月より就任)
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