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No.434 地域の生活・文化の魅力を語れるPR大使に~人の郷土愛はどこまでも深い~

2016年10月31日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


  ふところに 銭かぞへつつ 寄る店の 酒のあぢはひ 涙なりけり

                           ~若山牧水~

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 今、ビール業界でK社が製造している「47都道府県の一番搾り」の販売戦略が話題となっています。鹿児島版のラベルには、「鹿児島づくり」、「鹿児島の誇りを限定醸造」と書かれており、商品愛着度を高め売り上げ増加につながっているのではないでしょうか。
 このメーカーは鹿児島に工場がないため福岡で生産していますが、各県ごとに味や個性を変えて製造されています。
 人気NO1のアイドルグループ「嵐」のメンバーをCMに起用し、西郷隆盛を主役に鹿児島弁での語りが、何となく買って飲んでみたくなる感情を抑えることができません。


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 CMやビデオレターでは、著名な観光地、観光施設の館長と元館長、従業員も登場し、地域特性に合わせたプロモーションにこだわっているところが、視聴者を引き付けています。県名が入っているため郷土料理と一緒に飲んでいる人が多く、取扱店増加にも一役貢献しています。



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 やはり郷土愛をくすぐり、また、地元にゆかりのある人を起用することで商品に対する愛着を高める営業戦略が功を奏しているのではないでしょうか。長い年月を経て育まれた風土や食文化は、故郷の人にとって忘れられません。特産品の活用のヒントが隠されているようです。


 ところで、熊本地震の影響で九州新幹線と九州自動車道が一時不通となり、GWの宿泊や修学旅行の取消が相次ぎ、4月~6月は大きく落ち込んだ鹿児島の観光ですが、「九州ふっこう割」等の導入で7月からは回復基調にあるのが現状です。
 「九州ふっこう割」は12月まで続きますが、1月以降の反動が懸念されます。県では「らくらくかごしま巡り事業」を1月まで展開しており、県内の広域観光周遊を促進し、各地への誘客を図る計画です。


 鹿児島県は九州本土最南端に位置することから、需要が大きい大都市圏からの旅行商品は交通費の負担が大きくなります。また、自然災害が発生すると、近隣の県まで風評被害が発生しキャンセルが増加するケースが繰り返されています。南九州3県での対策が急がれます。


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 ところで、今年も地元に誘客を図る大切な役割を担っているPR大使のスキルアップを目的に、「鹿児島観光PRスタッフ研修」を実施しました。18名の親善大使・PR大使が自治体の職員と一緒に参加しました。
 まず、県観光課の郡山係長が最近の観光動向を説明し、県内各方面への入込状況や、明治維新150周年への取組、2018年NHK大河ドラマ「西郷どん」の放映、地域資源の商品化の重要性を説明しました。


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 鹿児島市の「第11代 かごしま親善大使」である永田沙織さんは、PR大使の仕事の役割やPRの手法について、1年間の実践を通して感じたことを解りやすく話してくれました。鹿児島市のPRだけでなく、県内各地域の説明もできるだけ鹿児島弁を使うように心がけたこと、また、自分の印象が鹿児島の印象となる、いつも笑顔でおもてなしすることの大切さを述べていました。永田さんの成長振りに目を見張りました。


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 今回の研修会の講師である「キャプラン(株)トレーニングプランナーチーム」の三宅晶子さんから、PR大使としての心構えや礼儀作法、話し方、聴き方、PRトークの仕方等実践に役立つ研修が2時間あまりありました。
 特に言葉遣いの3原則として「明るく」「やさしく」「美しく」という言葉が印象的でした。


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 これからのPR大使に望むことは、主役はいつもお客様であり最初の印象が大切です。いつも笑顔を忘れず、自ら先に頭を下げることを心がけて欲しいと願っています。
 地域を愛し語れる人になるために日頃から地域を回り、歴史、食、温泉、特産品、生活・文化などの知識も吸収し、ストーリーを語ることが大切です。
 そして、「もう一度あの人に会いたい」、「大使のふるさとを訪ねたい」と言われる人になり、かごしまのファン作りに努力して欲しい。



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 観光客が最初に降り立つのが駅や空港であり、第1印象がその地域の印象となります。 案内所、タクシー、バス、街の人等の接遇の大切さが問われています。じゃらんリサーチセンターが実施した「じゃらん宿泊旅行調査2015」によると、鹿児島県は「旅行先に対する総合的な満足度」で沖縄県に次いで2位になっています。
 また、「地元の人のホスピタリティを感じた」と「魅力ある特産品や土産物が多かった」項目でも2位にランクされています。
 宿泊施設、運輸機関、観光・食事施設、特産品、そこで働く従業員、住民に対して高い評価が与えられていることは、大いに喜ぶべきことです。


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 評価された点としては、「空港に着いたらおいしい湯茶のサービスがあり疲れが癒された、その場でお土産に買った。」「初めての鹿児島であったが、行先への交通、名物料理、お土産等について地図を広げ親切に説明してくれた。」また、「ガイドブックを持って街を散策していたら、どこかをお探しですかと聞いて目当ての美術館まで道案内をしてくれた。鹿児島の人は親切ですね」等と、鹿児島には「心温まるおもてなしの心」を実践する人がたくさんいらっしゃることはうれしい限りです。


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 鹿児島の観光は、このように地域の人々の日頃の「温かいおもてなしの心」に支えられています。PR大使が鹿児島の観光伝道師として、生活者が訪れてみたいという旅心を誘う役割を担って欲しいと思います。観光地の最終的な評価は人です。Kビール会社の成功は、消費者に寄り添い、各県のふるさと意識を高揚する戦略が成功していると思います。
 PR大使も故郷のすばらしい魅力に徹底的にこだわり、初めてのお客様に是非行ってみたいという衝動を与えてほしいと思います。


 2018年のNHK大河ドラマは「西郷どん」です。鹿児島の歴史を勉強し、地域とのかかわりを知ることもPR大使としての自信にもなります。皆様の成長を楽しみにしています。



        ふるさとの なまりなつかし 停車場の

        人ごみの中に そを聴きに行く

                      ~石川啄木~


*ふるさとを遠くはなれていると、ふるさとのなまりがなつかしい。
ふるさとからの列車が着く駅の人ごみの中へ、それをわざわざ聴きに行ったことだ。
ふるさと=岩手県渋民村   停車場=上野駅
「なまり」=方言      「そ」=それ(なまりを指す)
上野駅構内にこの短歌の歌碑があります。


No.433 「奄美・琉球」の世界自然遺産登録へ前進~「奄美群島国立公園(仮称)」指定へ~

2016年10月24日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


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 大型台風が去り、鹿児島もようやく本格的な秋の訪れです。ふるさとの山は、「あけび」や「柿」等の実が熟していますが、取る人もなく野鳥の格好の餌となっています。
 運動会も終わり、これから文化祭のシーズンです。昨年の今頃は、全市町村が「国民文化祭」の準備に追われていたのではないでしょうか。文化の灯を継承すべく県民のみなさまもあの熱気を思い出してほしい。


 私は北九州の或る小学校でこんな歌を習った事があった。


           更けゆく秋の夜 旅の空の
           侘しき思いに 一人なやむ
           恋しや故郷 なつかし父母


 私は宿命的に放浪者である。私は古里を持たない。父は四国の伊予の人間で太物(ふともの)の行商人であった。母は、九州の桜島の温泉宿の娘である。


 林芙美子著『放浪記』の冒頭の部分です。かごしま近代文学館・かごしまメルヘン館には、鹿児島ゆかりの作家海音寺潮五郎、向田邦子、梅崎春生、椋鳩十、島尾敏雄たちと一緒に林芙美子のコーナーがあります。是非見学ください。


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 ところで、環境省は、奄美群島5島の12市町村の陸・海域計7万5393ヘクタールを国立公園に指定する計画案を公表し、2017年春にも指定される予定です。県内では、雲仙天草[長島町の一部が入る]、霧島・錦江湾、屋久島に続いて4カ所目の国立公園です。世界自然遺産登録への大きな一歩が踏み出されたと言えます。


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 今回の国立公園指定地域の中で、国内最大規模の亜熱帯照葉樹林が広がり、希少生物が生息する奄美大島と徳之島の計1万3千ヘクタールを中心に、世界自然遺産候補地になる予定です。沖縄本島北部、西表島を加えて4島を軸に「奄美・琉球」として登録を目指しています。
 早ければ2017年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)へ推薦し、2018年夏の世界自然遺産登録実現を目指しています。


 「奄美・琉球」が世界自然遺産に登録されると、県内では屋久島、明治日本の産業革命遺産に次いで3つ目の世界遺産となり、鹿児島県の知名度が飛躍的に上がるのは確実です。


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 また、国内では屋久島、白神山地(青森県、秋田県)、知床(北海道)、小笠原諸島(東京都)に次いで5つ目の世界自然遺産登録となります。
 長い年月を経て育まれた奄美の豊かな自然、貴重な動植物の保護とともに、地域住民の自然保護に対する意識向上、自然との共生をいかに図っていくかが問われています。


 1993年に日本で初めて世界自然遺産に登録された屋久島は、登録年度の入込客数は約21万人でしたが、2014年度は28万5千人となっています。今では登山家の憧れの島として人気が定着しています。
 しかし、登山者の増加に伴い、植生の荒廃、し尿処理問題等が大きくクローズアップされています。屋久島町では環境保全に充てる名目で、2017年4月から「入山料」として協力金を徴収するようになりました。
 屋久島町では自然保護と観光振興の狭間で、世界自然遺産の島を守りながらいかに経済的価値を求めていくかが問われています。


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 ところで、県外の方々だけでなく県民も、意外と奄美群島の位置や魅力を知りません。首都圏からの旅行商品を比較すると、同じ2泊3日でも沖縄に比べて数万円高くなっています。今回、奄美群島の各自治体が国立公園指定をPRの絶好の機会と捉えて、群島の知名度アップを図り誘致に努め、経済的浮揚に繋げる必要があります。


 一方、沖縄県は多岐に渡る振興策が進められています。旅行商品の価格を左右する航空運賃の低減化が図られており、また、20数県から直行便が飛んでいることも観光客誘致がしやすくなっています。


 奄美群島へのゲートウェイは港と空港に限定されることから、キャリアやエージェントと連携した商品企画が不可欠です。
 首都圏から奄美空港へは2社が運行していますが、増便や機材の大型化、又は、オフラインの空港からのチャーター便なども欠かせません。


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 奄美群島には手つかずの美しい海や珍しい自然現象、森林地帯が多く、多種にわたる動植物が生息していることから、自然の生態系をいかに見せるかが大切です。
 島唄や伝統的踊り、島料理など本土と異質な生活・文化も残っています。群島を訪れる観光客はフリータイム型が多くなっており、これらの客が参加しやすい商品のラインナップを充実させて、訪れて飽きない地域づくりを目指さなければなりません。
 そのためには、滞在型観光の受け皿として「DMO」の機能強化が重要であり、人材育成と情報発信力が求められます。


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 奄美群島は、すでに世界自然遺産に登録されている「白神山地」、「知床」に比較すると、温暖な気候に恵まれ1年中行くことができます。また、「小笠原諸島」は飛行機の定期便がなく、東京から船で24時間かかります。同じ離島にありながら奄美大島と徳之島は、飛行機の定期便もありアクセス的には恵まれています。
 名瀬港は大型クルーズ船の寄港が容易であり、世界自然遺産登録後は外国人観光客が増加することから、外国語表記、通訳ガイド等受入体制の充実も求められます。


 また、奄美群島は、特に個人客が増加するものとみられ、群島全体を巡る利便性のある周遊切符の導入や宿泊施設の整備が欠かせません。大型リゾート建設は規制が厳しいこともあり、洒落たペンションや登録許可を取得した民泊の推進も重要課題です。


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 昭和40年代には、大都市圏から多くの若い女性が美しい海を求めて奄美群島への船旅を楽しんでいました。与論の浜辺は若者であふれていたことが脳裏から離れません。島旅をリードするのは若者です。ミレニアル世代にフィットするホームページの充実や旅行商品化を図り、誘客を強化する必要があります。


 2017年はキャリアやエージェントの招へい事業を推進し、群島の魅力を認知させる取組が必要であり、そのことが商品企画に結び付きます。首都圏からはエアー商品の展開、冬場のスポーツキャンプ誘致も不可欠です。


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 2018年はNHK大河ドラマ「西郷どん」が決定し、西郷隆盛が住んだ奄美大島、徳之島、沖永良部等ブームが起きるものと推測されます。周到な準備が必要です。
 世界自然遺産登録後は、世界各国から観光客を誘致しなければなりません。国立公園指定を大きなチャンスと捉え、おもてなし研修や地域住民の環境保護への理解を深めるなど世界自然遺産登録時には万全の態勢で臨む必要があります。
 交流人口を増大させ、新たな産業や雇用創出の機会に繋げることも重要です。県民あげて盛り上げを図りたいものです。 


       それとなく 故郷(くに)のことなど 語りいでて
       秋の夜に焼く 餅のにほ(お)(い)かな
                        ~石川啄木~



No.432 ミレニアル世代に選ばれる観光地へ~シニア世代の旅行需要は減少していく~

2016年10月17日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


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 彼岸が過ぎて昼間の残暑も和らぎ、ススキの穂が色付き満開のコスモスが風に揺れる様は本格的な秋の訪れを告げています。
 繊細な四季の変化、美しい自然美が日本人の美的感覚を育み、伝統工芸品等ものづくりまでその細やかさが活かされています。美しい紅葉や陶芸の里、また、豊かな食の魅力は人々を旅に誘い、一年を通して一番旅行に出かけたくなる雰囲気をつくりだしています。


 北海道では、阿寒湖や摩周湖周辺の紅葉が終わり、札幌の大通公園には、とうもろこし売りのお店が並び夜の賑わいが増します。
 紅葉前線はこれから津軽海峡を渡り、十和田湖一帯が見頃となり、八幡平、日光、アルペンルート沿い、香嵐渓、京都、耶馬溪などへ南下し、日本各地で約2か月間に渡って見られます。


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 ところで、秋の旅行は熟年層の個人旅行がメインとなり、空港や駅の案内所等での相談や問い合わせが多くなり、親切な対応が求められます。
 今年は「らくらくかごしま巡り事業」の一貫として、タクシー商品助成事業を展開していることから、今後タクシーを利用する観光客が増えるものと予測されます。
 乗車された際、ドライバーの最初の歓迎の挨拶が大切で地域の印象にもなります。車中でドライバーはお客様と会話をすすめ、近距離でも温かい心で接して欲しいと思います。期待を超える対応が感動を呼び、リピーターの創出につながります。


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 地元の人は周辺の名所や名産品等を問われたら、きちんと情報提供してあげることが大切です。日頃から観光地の由来や歴史遺産のストーリー、郷土料理店、お土産品など観光客の要望に応えることが「おもてなし」です。
 心のこもったサービスをいつもと変わらず行うことが、「感動を与えるサービス」となり、自分自身の喜びや満足感にもつながります。
 これからはリピート率をいかにあげるかが地域の勝ち残りの要諦と思います。


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 今、鹿児島を訪れる観光客の主流はシニア層です。しかし高齢化社会を迎えて、大きな需要拡大は厳しくなることが予測され、新たな客層へのアプローチが求められています。 情報に敏感で旅行意欲が高いミレニアル世代への取組です。ミレニアル世代とは、1980年頃から2000年初め頃に誕生した人々であり、インターネットを使いこなし、FacebookやTwitterなどSNSを活用している世代です。


 インバウンドの層も同様であり、日本の歴史、自然、ロケ地、聖地、食、買物等に敏感であり、情報交換に積極的でリピーターになりやすい層です。


 県のホームページの充実も急がねばなりません。また、県観光の新しいキャチコピーの制作が予定されています。生活者に鹿児島のイメージを伝えるべく、10文字程度で強烈なキャッチコピーが求められます。
 幸にも2018年NHK大河ドラマ「西郷どん」が決定しました。林真理子、中園ミホのコンビで描かれるこの大河ドラマは、ミレニアル世代、特に鹿児島を知らない女性層を開拓するものと大きな期待がかかります。
 この世代が、鹿児島の魅力についてどのような印象をもって帰るかが、継続的な顧客になるかどうかの判断基準となります。


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 ミレニアル世代は、求めるものが厳しく差別化も求めます。歴史、聖地巡礼、マリン体験、コンサート、スポーツ観戦等行動的な面だけでなく、健康志向で豊かな食や高級な宿に宿泊するなど一流を求める女性も多いのが特徴です。
 大河ドラマを通して、新しい客層の開拓につなげなければなりません。
 従来の名所旧跡の観光、宴会型の宿泊スタイルから泊食分離を選択する旅行が増えており、受入施設として選択基準の充実が不可欠です。


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 ところでインバウンドが回復基調にあります。熊本地震で4月~6月の3か月間大幅な減少が続いていましたが、7月から前年を上回っています。
 日本全体で見ると、8月までの累計は1600万人を超え、昨年より2カ月も早く1500万人を超えました。年間では2300万人を超えるものと予測されます。
 2020年の目標は4000万人で、これだけの外国人が来るとなると、大都市圏から地方にいかに誘客するかが問われます。
 インバウンドもミレニアル世代が引っ張っており、その意味でも外国語表記、通訳業務の充実、日本文化の提供等受入体制の充実が重要になっています。


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 最後に、2010年度の鹿児島県の「景観大賞」に輝いた「垂水千本イチョウ」を紹介します。夫婦二人で開墾した山に、30数年かけて植え育てた1200本のイチョウの木があります。北海道大学のキャンパスや東京の神宮外苑を彷彿させる程、黄色に色づいた美しいイチョウの並木は見応えがあります。
 見ごろは、11月の下旬から12月の初旬です。新しい大隅の観光地で、大阪から「さんふらわあ」を利用したツアーが人気です。シニア層にもミレニアル世代にも人気があり、映画のワンシーンを見る想いがします。
 このような観光地を増やし、持続的な観光地づくりを目指したいものです。



      山里は 秋こそことに わびしけれ
                 鹿の鳴く音に 目をさましつ
                         ~壬生忠岑~


No.431 NHK大河ドラマ「西郷どん」放映前の取組~前年の誘客に力を注ごう~

2016年10月11日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


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 2018年NHK大河ドラマに「西郷どん」が決定し、県民は歓迎ムードで一杯です。また、明治維新150周年と重なり、鹿児島は全国的にスポットが当たることから、その効果を最大限活かす取組が求められています。
平成2年「翔ぶが如く」、平成20年「篤姫」が放映された際の県外観光客の伸びは顕著であり、大きな経済効果をもたらしました。


 今回のドラマ制作は、原作者林真理子氏、脚本家中園ミホ氏ともに今を時めく人物であり、特に女性層に人気があります。林真理子氏は、「白蓮れんれん」、「不機嫌な果実」等話題の小説や「野心のすすめ」等エッセイストとしても有名であり、彼女の講演会はいつも満員となる人気です。
一方、中園ミホ氏は、NHK朝のテレビ小説「花子とアン」でその人気が不動のものになりました。また「ハケンの品格」、「ドクターX」、「はつ恋」なども発表し、ち密で積極的な取材に基づく脚本は、女性ファンの心を捉えて離しません。
 この二人が描く「西郷どん」は新たな女性ファンを開拓するものと期待が膨らみます。


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 大河ドラマは1回終了ごとにその週の舞台になった地域について、その後のストーリー、現在の様子やアクセス等が紹介されます。毎回鹿児島を宣伝してくれるような番組でもあり、その場所を訪ねてみたいという人を創出してくれます。
「篤姫」放映の際は、「その時薩摩では」というシーンが何回もあり、視聴者が薩摩のことを知る機会にもなり、多くの女性達が鹿児島を旅するきっかけともなりました。
 また、「篤姫」が高視聴率を誇ったのは、従来大河ドラマに無縁であった女性層を引き付けたことが大きな要因の一つに上げられます。やはり消費と同様に女性層が魅力と感じるドラマ作りが欠かせません。


 ところで、鹿児島を訪れたいと思っている人は、せっかくだったら大河ドラマの放映に合わせて行こうという心理が働き、前年は旅行控えが起こることも懸念されます。 事実、平成19年に首都圏のキャリア、エージェント等に対して鹿児島への送客依頼に伺った折、担当者から翌年大河ドラマが予定されているので、鹿児島への旅行を前年は遠慮する傾向があると指摘されました。


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 その意味で前広な取組が必要であり、西郷ゆかりの地や明治維新の舞台を巡るツアーなどをエージェントに働きかけ、前年に商品造成支援や女子社員を中心とした招へい事業を強化する等鹿児島の魅力を発信し、誘客に努めることが大切ではないでしょうか。
 特に、ゆかりの地はまたとない売り込みのチャンスであり、地域づくりにも弾みが付きます。明治維新150年が重なる2018年に向けて、態勢づくりが強化され本番につながるのではないでしょうか。


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 一方、「篤姫」の放映時は、毎日満室状態が続きサービスの提供が追い付かず、クレームの寄せられた宿泊施設や、近距離の送迎を断り観光客目当てのタクシーが横行するなど地域の評判を落とした事例もありました。同じ轍を踏まないよう前広な社員教育やおもてなしの取組が重要です。
 長野オリンピックの際、中央タクシーと言う会社は、他社が特需狙いに奔走したのに対し、社員の意見を聞き入れて、まず従来の顧客を優先する姿勢を貫きました。
 オリンピックが終わった後、他社は顧客離れが起き、倒産に追い込まれた会社もありました。


 中央タクシーは従来の顧客を大切にしてきたため、安定した経営が続けられています。 「篤姫」放映時のサービス低下という二の舞を避ける意味でも、従来の顧客を大事にしながら観光客をしっかりとおもてなしする心が大切であり、前年はそれを再確認する期間でもあります。



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 ところで、熊本震災で多くの修学旅行が取り消しになりました。2018年の行先決定はこれからが本番です。明治維新誕生に貢献した偉人を多く輩出し、関連する史跡が多い鹿児島を行先として選択していただくよう誘致対策が必要です。
 近代国家建設に奔走し、「敬天愛人」や「子孫に美田を買わず」等西郷隆盛の教育や足跡をPRするのも、学校現場の選択肢の一つになるのではないでしょうか。
 隣県の熊本県、宮崎県にも西郷隆盛ゆかりの地があります。連携を強化して誘客に努めたいものです。



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 最後に大河ドラマの誘致は、毎年熾烈を極めています。鹿児島県として官民一体となり活動に努めてきましたが、他県も知事を筆頭に陳情に来ましたという話を聞くたびに、その誘致競争に一層意欲が湧いたのも事実です。
 そのような中で、鹿児島が主舞台となる3度目のドラマが放映されることに感謝の気持を忘れず、最大限の受入態勢を確立することが重要です。


 来年の取組をプレイベントとして位置づけ、県民への理解を深め、本番に備えて足固めの年にしなければなりません。


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 2018年は、新造船「さんふらわあ」の就航、佐多岬のリニューアルオープン、「奄美・琉球」の世界自然遺産登録(予定)等大河ドラマ以外でも話題が豊富で、多くの観光客が訪れることが想定されます。
 2018年を見据え、関連するすべての市町村が今から連携して、大河ドラマの受け皿づくりや誘客態勢を整え、新しい地域づくりに邁進したいものです。


              偶成  西郷隆盛

             幾歴辛酸志始堅
             丈夫玉砕恥甎全
             一家遺事人知否
             不為児孫買美田

      何度か辛いことにぶつかって私の志は始めて固まった。
      男児は玉のように立派に死ぬべきである。
      つまらぬ者となって生きながらえるのは恥だ。
      私の家の家訓を誰か知っているかね。
      「子孫のために財産など遺すな!」


No.430 かごっまふるさと屋台村を観光の拠点に~県民と観光客が交流できる場所であり続けたい~

2016年10月3日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光


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 日の入りも日ごとに早くなり、夕方の涼しさに誘われて行きつけの飲食店に寄り道するサラリーマンが多くなってくるのではないでしょうか。
 鹿児島の蔵元では焼酎の仕込みが始まり、新酒まつりの準備に余念がありません。



 本好きの方にとっては、秋の夜長は読書にふける楽しみが増えます。市内にはかつて多くの書店がありましたが、今では大型書店のみが目立ち往時の面影はありません。
 インターネットやSNSの普及により、簡単に情報が入手できることから、読書人口も減少しており、活字離れが一層進むのではと懸念しています。日本人全体で1カ月に1冊の本も読まない人の割合は46.1%にも上っています。[文化庁資料 2009年]


 「一日4回の飯を食え。そのうち1回は読書という飯を食え」と新入社員時代に薫陶を受けました。あらためてその人の人格や品格に感謝しています。
 皆様もたまには大型書店を覗いてみませんか。そこにはジャンル別に整然と配列された書籍や、本の検索コーナー、本以外の販売品の多さ、くつろげるスペース等読者に配慮した最近の書店の姿があります。
 中国の朱熹の詩です。若い頃から読書の習慣を身に付けることが大切です。


             偶成 ~朱熹~

          少年老い易く  学成り難し
          一寸の光陰   軽んず可からず
          未だ覚めず   池塘春草の夢
          階前の梧葉   己に秋風


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 ところで鹿児島中央駅前にある「かごっまふるさと屋台村」が、2012年4月オープンから4年が経過しましたが、県内にある飲食店の集合体の中では、一番繁盛している施設ではないでしょうか。
 最近は外国人観光客が目立つようになり、海外でのプロモーションではPRが欠かせない場所です。


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 「かごっまふるさと屋台村」は、25軒の個性あふれる屋台と1軒の焼酎専門店が軒を並べます。それぞれの店は小規模で8席しかなく、隣席の方とすぐに仲良くなれるなど家族的な雰囲気が味わえるのが特徴です。
 また、県内各地域の旬の食材を活かした手作りの料理と焼酎をリーズナブルな価格で提供しており、鹿児島の食文化を堪能できる場所としての魅力が浸透しています。


 屋台村の利点は、鹿児島中央駅やバスターミナル、市電の駅が近く、出張のビジネスマンの時間調整や帰りがけのサラリーマンにとって便利な場所にあることです。また、通りに面しており宣伝効果は抜群で、懇談している姿が目に入りレトロ調の入口が、旅人に暖簾をくぐってみたいという気持ちを駆り立てます。


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 特に各店舗が市町村の代表という意識で経営にあたり、地産地消を中心とした地元食材にこだわっていることが人気の要因です。
 各店舗が腕によりをかけたメニューを提供し、来店客をもてなします。屋台でしか味わえない楽しさや、隣人ともすぐうち解けることができ、入りやすい雰囲気が繁盛の要因の一つではないでしょうか。


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 従来県外にある「ラーメン横丁」や「お好み焼き専門店街」等が並ぶ場所では、人気店舗とそれ以外の店舗との格差が付き、店舗同志のコミュニケーションがなくなっていきます。結果として施設全体への来店者が減少し、閉店に追い込まれている施設が全国的にはあります。


 「かごっまふるさと屋台村」はそのような弊害を少なくする方策の一つとして、定期的イベントや1店1品オリジナルの飲み物を提供するなど、個の店がそれぞれ繁盛することで屋台村全体の発展を目指す取組を行っています。
 また、同業種が少ないことや、それぞれの店が切磋琢磨しながら、競争と協調の心をもって一体感を維持しながら各店が差別化を図っています。


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 これからも屋台村は、貪欲に鹿児島らしさにこだわる必要があり、鹿児島の魅力を発信する場所にしなければなりません。従業員は今以上にふるさとの言葉で、鹿児島の魅力を語ることが求められます。
 「かごっまふるさと屋台村」は、青森県の「八戸屋台村 みろく横丁」がモデルとなっています。屋台村の成功は、若い起業家の誕生をサポートする機会にもなり、これからの成長が期待されるプロジェクトになると信じます。


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 ところで、鹿児島市は錦江湾越しに桜島を望み、「九州新幹線の終着駅」、「D&S列車」、「世界文化遺産」、温泉、食、歴史、文化施設、海が近くにあることなど県都の魅力が集約され、各地へのアクセス、宿泊施設の充実等観光客受入には大変恵まれた環境にあります。


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 屋台村の周辺は、近代日本の礎を築いた偉人を輩出した地域であり、中でも「維新ふるさと館」は、資料展示がリアルでわかりやすく大変人気のある施設です。夜は甲突川がライトアップされ一段と魅力的な一帯となりますが、天文館までの客足は伸びず、街全体に経済が循環するまでには至っていません。オーナーの皆さんには、天文館の魅力を語って欲しいと思います。


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 一方、新幹線の時間短縮効果でビジネスマンの日帰出張が多くなり、鹿児島市内はホテルが供給過多で、中央と地元資本との競争にもなっています。屋台村で県内の各種イベントや旬の情報提供を行うことで、遠方まで足を伸ばすきっかけをつくり、滞在させる取組が求められます。


 また、「おもてなしの心」を持ってサービスの向上に努め、リピーターを増やす努力が欠かせません。近隣のホテルの方々も積極的に屋台村をPRすることで、各施設への連泊につなげて欲しいと思います。


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 現在海外路線は、台北、ソウル、上海、香港便合わせて週18便が就航しており、今後さらにアジアからの観光客が増加するとものと思います。
 アジアの人々は、外で食事することが定着しており、外国語標記の徹底や簡単な会話、相手国の慣習を理解することで、海外客との交流が深まる場所になればと思います。県民にも屋台村の魅力が浸透しており、地元客が入ることでその魅力が広がっていきます。
 2代目の古木理事長は、海外に精通した方であり、外国人の受入態勢は日々改善されています。また、休業日の設定や従業員の研修会等スキルアップにも力を注いでいます。


 「ふるさとかごっま屋台村」に行けば「本物。鹿児島県」に会うことができ、情報発信基地としての機能がますます充実していくことを期待します。


プロフィール

古木 圭介プロデューサー
鹿児島県
観光プロデューサー
古木 圭介
(平成29年4月より就任)
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